JP2022109212A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温時の強度に優れると共に、成形性、耐冷熱衝撃性、耐湿熱性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品を提供する。【解決手段】(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)異形断面ガラス繊維を85~200重量部配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、示差走査熱量計にて観察される結晶化に伴う発熱ピ-ク温度(Tmc)が195℃以上215℃以下であると共に、ISO 178に準拠し100℃にて測定した曲げ強度が200MPa以上であることを特徴するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は高温時の曲げ強度に優れると共に、成形性、耐冷熱衝撃性、耐湿熱性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合もある)は、高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、絶縁特性および寸法安定性などに優れることから、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。
かかる特性からPPS樹脂は、200℃までの高温環境下にて連続使用可能であるが、ガラス転移温度が90℃付近に存在するため、この温度を境にして強度が不連続に低下する。
特許文献1には、熱可塑性樹脂と特定の短径および長径を有する断面が扁平形状のガラス繊維からなる樹脂成形品が開示されている。
特許文献2には、PPS樹脂と断面が扁平な繊維状無機充填剤および非繊維状無機充填剤とオレフィン系共重合体を含有する樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、PPS樹脂と扁平な断面形状を有するガラス繊維を配合してなるモーターのステータコア成形品が開示されている。
特開2019-52323号公報 特開2020-109135号公報 特開2019-195909号公報
高温環境下での使用が想定されるPPS樹脂製部品については、ガラス転移温度以上での強度低下を加味した製品設計が必要である。一方で、ガラス転移温度以上においても高強度を保持できるPPS樹脂を用いることで、各種部品の製品設計の自由度は大きく向上する。
特許文献1では、ナイロン6に対し、特定の短径および長径を有する断面が扁平形状のガラス繊維を配合することで、機械強度は向上しているが、高温での強度低下が大きく、流動性などの成形加工性も低下するなどの課題があった。
特許文献2では、PPS樹脂に断面が扁平な繊維状無機充填剤および非繊維状無機充填剤とオレフィン系共重合体を配合することで、高低温衝撃性が向上し、反りも抑制されるが、高温での強度低下が大きく、流動性などの成形加工性も低下するなどの課題があった。
特許文献3では、PPS樹脂と扁平な断面形状を有するガラス繊維を配合することで、流動性を犠牲にすることなくウエルド強度が向上しているが、高温での強度低下が大きく、結晶化速度も速すぎるため、成形加工性が低下するなどの課題があった。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
(1)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)異形断面ガラス繊維85~200重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を示差走査熱量計にて340℃まで昇温し溶融させてから、20℃/分の速度で降温した際に観察される結晶化に伴う発熱ピ-ク温度(Tmc)が195℃以上215℃以下であると共に、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られる成形品について、ISO 178に準拠し100℃にて測定した曲げ強度が200MPa以上であることを特徴するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(2)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中における(B)異形断面ガラス繊維の重量平均ガラス繊維長が、250μm以上500μm以下であることを特徴とする(1)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)ISO 178に準拠し23℃にて測定した曲げ強度に対する前記100℃にて測定した曲げ強度の比の百分率である曲げ強度保持率が、64%以上であることを特徴とする(1)~(2)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(4)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃ 、金型温度140℃ 、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec 、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長が、85mm以上であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(5)前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の灰分が、0.1重量%以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(6)前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、315.5℃で5分間溶融滞留させ、荷重5000gにて測定したメルトフローレートが400g/10min以上700g/10min以下であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(7)前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、250℃で20倍重量の1-クロロナフタレンに5分間かけて溶解させた後、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下であることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(8)(1)~(7)いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
本発明によれば、特定のPPS樹脂に、異形断面ガラス繊維を特定の割合で配合すると共に、その結晶化温度を制御することにより、PPS樹脂のガラス転移温度を超える高温での強度が向上し、優れた成形性、耐冷熱衝撃性、耐湿熱性を兼ね備えたPPS樹脂組成物および成形品を提供することができる。
耐冷熱衝撃性評価用試験片の概略図である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
Figure 2022109212000001
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2022109212000002
以下に、本発明で用いるPPS樹脂の製造方法を述べる。まず、使用するポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p-ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からスルフィド化剤を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィド化剤を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどのN-アルキルピロリドン類、N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1~20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1~3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル~0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1~0.6モルの範囲が好ましく、0.2~0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いることは、流動性と高靭性が高度にバランスした樹脂組成物を得る上で有効な手段の一つである。その場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.5モル~15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6~10モルの範囲が好ましく、1~5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02~0.2モル、好ましくは0.03~0.1モル、より好ましくは0.04~0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することがより好ましい。
次に、前工程、重合反応工程、および回収工程を、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
PPS樹脂の重合において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温~150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180~245℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5~10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂粉粒体を製造することが好ましい。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温~215℃、好ましくは100~215℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃~290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01~5℃/分の速度が選択され、0.1~3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250~290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25~50時間、好ましくは0.5~20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃~245℃で一定時間反応させた後、270~290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃~245℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25~10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
[回収工程]
PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分~3℃/分程度である。徐冷工程の全工程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化し析出するまでは0.1~1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用してもよい。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃~250℃の範囲が選ばれる。
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物を回収することができ、また回収時間も比較的短くできることから、経済性に優れた回収方法である。この回収方法では、固化過程でNaに代表されるイオン性化合物や有機系低重合度物(オリゴマー)がポリマー中に取り込まれやすい傾向がある。
[後処理工程]
本発明では、PPS樹脂は、上記前工程、重合反応工程、および回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものを用いてもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80~200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上となってもよく、例えばpH4~8程度となってもよい。酸処理を施されたPPS樹脂から残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。
また、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温~300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温~150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することが、不純物除去の観点から好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合工程前、重合工程中、重合工程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属を導入する際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、成形性および耐熱性の優れたPPS樹脂組成物を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水処理を数回繰り返すことにより残留オリゴマーや残留塩を除いた後、酸処理もしくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理したものを用いてもよく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、上記酸処理、熱水処理、アルカリ金属、アルカリ土類金属処理、有機溶媒による洗浄をした後に、熱酸化処理を行うことで得られたものを用いてもよい。熱酸化処理とは、PPS樹脂を、酸素雰囲気下においての加熱またはH等の過酸化物もしくは硫黄等の加硫剤を添加しての加熱による処理を施すことであるが、処理の簡便さから酸素雰囲気下においての加熱が特に好ましい。
本発明の熱酸化処理のための加熱装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。熱酸化処理の際の雰囲気における酸素濃度は2体積%以上が望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、安全操業的に50体積%程度が限界であり、25体積%以下がより好ましい。本発明の熱酸化処理温度は、160~270℃が好ましく、より好ましくは160~220℃である。270℃を上回る温度で熱酸化処理を行うと、熱酸化処理が急激に進行するため、その制御が困難となり流動性が著しく低下するため好ましくない。一方、160℃未満の温度では、熱酸化処理の進行が著しく遅く揮発成分の発生量が多くなるため、好ましくない。処理時間は、0.2~50時間が挙げられ、0.5~10時間がより好ましく、1~5時間がさらに好ましい。処理時間が0.2時間未満であると十分な熱酸化処理が行えず揮発成分が多いため好ましくなく、処理時間が50時間を超えると熱酸化処理による架橋反応が進行して流動性が低下する。
本発明で用いられるPPS樹脂は、温度315.5℃、滞留時間5分間、荷重5000gの条件下、ASTM D-1238-70に従って計測したメルトフローレート(MFR)が5g/10分以上であることが好ましく、50g/10分以上がより好ましく、100g/10分以上がさらに好ましく、400g/10分以上が最も好ましい。上限としては、1000g/10分以下が好ましく、700g/10分以下がより好ましく、600g/10分以下がさらに好ましく、500g/10分以下が最も好ましい。なお、PPS樹脂のMFRを上記の好ましい範囲とする方法としては、特に限定はされないが、例えば、酢酸ナトリウムのような重合助剤をアルカリ金属硫化物1モルに対し、0.05~0.50モルの範囲で添加して重合反応する方法や、得られたPPS樹脂粉末を処理温度160~220℃、酸素体積濃度を2体積%以上25体積%以下、処理時間を0.2~10時間に設定し熱酸化処理する方法などが例示できる。
本発明で用いられるPPS樹脂は、550℃で灰化させたときの灰分率が1.0重量%未満であることが好ましい。灰分率が1.0重量%以上になることは、PPS樹脂の金属含有量が過度に多いことを意味する。金属含有量が多いと電気絶縁性が劣るだけでなく、溶融流動性低下による成形加工性悪化が起こり易くなるため好ましくない。更に好ましい灰分率の上限としては、0.5重量%以下であり、より好ましくは0.3重量%以下であり、0.2重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下が最も好ましい。また下限としては、0.01重量%以上が望ましい。本発明で用いられるPPS樹脂の灰分率を1.0重量%未満にする方法として特に制限はしないが、重合後のPPS樹脂粉末を80~200℃に加熱したpH4の酢酸水溶液中に浸漬し、30分間撹拌して洗浄する方法などが例示される。
本発明で用いられるPPS樹脂は、250℃で20倍重量の1-クロロナフタレンに5分間かけて溶解させ、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下であることが好ましい。残渣量が4.0重量%を上回ることは、PPS樹脂の熱酸化架橋が過度に進行し、樹脂中のゲル化物の増加を意味する。PPS樹脂の熱酸化架橋を過度に進行させることでPPS樹脂の靭性が低下し可撓性が低下する場合がある。残渣量の下限については特に制限しないが、0.01重量%以上である。
なお、上記残渣量は、PPS樹脂を約80μm厚にプレスフィルム化したものを試料とし、高温濾過装置および空圧キャップと採集ロートを具備したSUS試験管を用いて測定されるものである。具体的には、まずSUS試験管にポアサイズ1μmのメンブランフィルターをセットした後、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂および20倍重量の1-クロロナフタレンを秤量して密閉する。これを250℃の高温濾過装置にセットして5分間加熱振とうする。次いで空圧キャップに空気を含んだ注射器を接続してから注射器のピストンを押し出し、空圧による熱時濾過を行う。残渣量の具体的な定量方法としては、濾過前のメンブランフィルターと濾過後に150℃で1時間真空乾燥したメンブランフィルターの重量差より求める。本発明で用いられるPPS樹脂の残渣量を4.0重量%以下にする方法として特に限定はしないが、処理温度を160~220℃、酸素体積濃度を2体積%以上25体積%以下、処理時間を0.2~10時間に設定しPPS樹脂を適度に熱酸化処理することが例示される。この酸化処理の温度が高すぎるまたは時間が長すぎるなどして過度な酸化架橋が進むと、PPS樹脂の残渣量が4.0重量%を超えるため好ましくない。
本発明の(B)異形断面ガラス繊維は扁平形状の断面を有するガラス繊維(以下扁平ガラス繊維と略す場合がある)であり、ガラス繊維を長さ方向に垂直に切断した場合の断面において、長径(断面の最長の直線距離)と短径(長径と直角方向の最長の直線距離)の比(以下扁平率と略すことがある)が1.3以上であることが好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。この扁平率が1.3以上であると、得られたPPS樹脂組成物の高温での曲げ強度が向上し易く、耐冷熱衝撃性も優れる。扁平率の上限は特に限定しないが、10以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。最も好ましい扁平ガラス繊維として日本電気硝子(株)社製T-760FGF(3mm長 短径7μm、長径28μm、扁平率4)を例示する。
扁平ガラス繊維は、その断面の長径が10μm以上であることが好ましく、20μm以上がより好ましい。こうすることで、ガラス繊維の紡糸が容易となり、ガラス繊維の強度を高く維持することができる。長径の上限は特に限定しないが、80μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましい。また、その断面の短径は2μm以上が好ましく、5.5μm以上がより好ましい。短径の上限は特に限定しないが、20μm以下が好ましく、15μm以下がさらに好ましい。
なお、扁平ガラス繊維断面の長径/短径の比(扁平率)は、走査型電子顕微鏡により観察し、無作為に選択した50本のガラス繊維の断面の長径と短径を測定してその比を算出し、その数平均を算出することにより求めた値である。
本発明に用いる(B)異形断面ガラス繊維の配合量は、上記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、85~200重量部である必要がある。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)異形断面ガラス繊維が85重量部未満では100℃環境下での曲げ強度が200MPaに満たない。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)異形断面ガラス繊維が200重量を超えると流動性、耐冷熱衝撃性が損なわれる。(B)異形断面ガラス繊維の配合量の好ましい下限量は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、90重量部以上が好ましく、100重量部以上がより好ましく、105重量部以上が更に好ましい。(B)異形断面ガラス繊維の配合量の好ましい上限量は特に限定しないが、180重量部以下が好ましく、150重量部以下がより好ましく、130重量部以下が更に好ましい。
また、(B)異形断面ガラス繊維を、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
本発明では、機械強度を向上する目的で(C)シラン化合物を任意で添加することができる。シラン化合物としては、γ-イソシアネートトプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有する変性シリコーンオイルなどのシラン化合物を挙げることができる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れた曲げ強度を得る上で特に好適である。かかるアルコキシシラン化合物の配合量として(A)PPS樹脂100重量部に対し0.1重量部以上が好ましく、0.2重量部以上がより好ましく、0.3重量部以上がさらに好ましい。添加量の上限については、2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。添加量が多すぎると、得られたPPS樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形加工性が損なわれる恐れがある。
本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において冷熱衝撃性の向上を目的に、エラストマーを添加してもよい。エラストマ―とは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、イソブチレンなどのα-オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α-オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β-不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。さらに、これらの共重合体に対し、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルを導入することも可能である。そのα,β-不飽和酸のグリシジルエステルの例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体などが挙げられる。これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、オレフィン系(共)重合体を(共)重合する際に共重合させたり、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入させたりするなどの方法を用いることができる。これらエラストマーの配合は、靱性や耐冷熱衝撃性を向上する観点では有用であるが、100℃での強度は低下する傾向があり、配合したとしても5%以下であることが好ましく、更には1%以下であることがより好ましい。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲において、(B)異形断面ガラス繊維に該当しない繊維状および/または非繊維状充填材を配合して使用することも可能である。かかる充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、セルロースナノファイバー、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。これら無機フィラーの配合は、寸法安定性を向上する観点では有用であるが、100℃での強度は低下する傾向があり、配合したとしても5%以下であることが好ましく、1%以下がより好ましい。
更に本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、高い耐熱性及び熱安定性を保持するために、フェノール系、およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を配合することが好ましい。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の点からは(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用することは、特に耐熱性及び熱安定性保持効果が大きく好ましい。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に(A)成分以外の、他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シロキサン共重合ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。
なお、本発明で用いるPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば前記以外の酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、顔料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱安定剤、滑剤、強度向上材、紫外線防止剤、および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法には特に制限はないが、各原料を混合して、単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して混練する方法などを代表例として挙げることができる。
なかでも、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比L/Dが10以上100以下である二軸押出機を用いて溶融混練する方法が好適である。L/Dは20以上100以下がより好適であり、30以上100以下が更に好適である。
本発明のPPS樹脂組成物を溶融混練して製造する際の原料の混合順序は特に制限はなく、全ての原材料を配合後、上記の方法によりメインフィード口から投入し溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも可能である。
本発明のPPS樹脂組成物は、示差走査熱量計にて340℃まで昇温し溶融させてから、20℃/分の速度で降温した際に観察される結晶化に伴う発熱ピ-ク温度(Tmc)が195℃以上215℃以下である必要がある。当該範囲に結晶化ピーク温度を制御することにより、高温での強度が向上するのみならず、耐冷熱衝撃性が向上する。結晶化ピーク温度が195℃を下回る場合には、成形サイクルが悪化して生産性は低下し、215℃を上回る場合には、成形品外観が悪化し、特に大型の成形品には不利益に働く。結晶化ピーク温度のより好ましい下限範囲としては、200℃以上が好ましく、205℃以上がより好ましい。結晶化ピーク温度のより好ましい上限としては、210℃以下が例示できる。なお、結晶化ピーク温度は、本発明のPPS樹脂組成物約10mgを秤量し、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC-7を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間保持後、20℃/分の速度で降温させた時の結晶化ピーク(発熱ピーク)温度により決定する。結晶化ピーク温度を195℃以上215℃以下に制御するためには、(A)PPS樹脂として、洗浄時にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理したPPS樹脂を用いることが好適な手法として挙げられる。本発明では、(A)PPS樹脂100重量部の内、これらアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理したPPS樹脂および/またはカルシウム(Ca)イオン濃度が200ppm以上であるPPS樹脂を、20重量部以上配合することが好ましく、30重量部以上配合することがより好ましく、40重量部以上配合することが更に好ましい。上限については、特に限定しないが、80重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物から得られる成形品について、ISO 178に準拠し100℃にて測定した曲げ強度が200MPa以上である必要がある。これにより、最終的に得られるPPS樹脂組成物からなる成形品部材の信頼性が大きく向上すると共に、製品適用範囲が広がる。100℃にて測定した曲げ強度のより好ましい下限としては、205MPa以上であり、210MPa以上であることがより好ましく、215MPa以上であることが更に好ましい。100℃にて測定した曲げ強度の上限は特に限定しないが、耐冷熱衝撃性の観点からは、230MPa以下が好ましく例示できる。100℃にて測定した曲げ強度を200MPa以上とするためには、(B)異形断面ガラス繊維の配合量を、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、85~200重量部にすると共に、灰分が0.1重量%以下であり、315.5℃で5分間溶融滞留させ、荷重5000gにて測定したメルトフローレートが400g/10min以上700g/10min以下である(A)PPS樹脂を採用することが好ましい手法として例示できる。これにより、(A)PPS樹脂と(B)異形断面ガラス繊維との反応が促進されると共に、過度な溶融粘度の上昇を抑制することができる。前記した灰分が0.1重量%以下であり、315.5℃で5分間溶融滞留させ、荷重5000gにて測定したメルトフローレートが400g/10min以上700g/10min以下である(A)PPS樹脂の配合量は、PPS樹脂組成物に配合される全ての(A)PPS樹脂100重量部に対して、40重量部以上であることが好ましく、50重量部以上であることがより好ましく、60重量部以上であることが更に好ましい。配合量の上限は特に限定しないが、80重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。また、100℃にて測定した曲げ強度を200MPa以上とするための別の方法としては、250℃で20倍重量の1-クロロナフタレンに5分間かけて溶解させた後、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下である(A)PPS樹脂を採用する手法も好適に例示できる。これにより、(A)PPS樹脂と(B)異形断面ガラス繊維との反応が促進されると共に、耐湿熱性が向上する点からより好ましい。熱酸化処理された(A)PPS樹脂の配合量は、PPS樹脂組成物に配合される全ての(A)PPS樹脂100重量部に対して、40重量部以上であることが好ましく、50重量部以上であることがより好ましく、60重量部以上であることが更に好ましい。配合量の上限は特に限定しないが、80重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。さらに、前記した灰分が0.1重量%以下であり、メルトフローレートが400g/10min以上700g/10min以下である(A)PPS樹脂と併用して使用することも勿論可能である。なお、曲げ強度測定については、まず、PPS樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:320℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-50D)に供給し、ISO 20753(2008)に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形して試験片を得た後、この試験片の中央平行部を切り出し、タイプB2試験片を得る。次いで、得られた試験片について23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、ISO 178(2010)法に準拠し、スパン64mm、試験速度:2mm/secの条件で曲げ強度測定を行うことができる。
本発明のPPS樹脂組成物は、高温時の強度に優れると共に、成形性、耐冷熱衝撃性、耐湿熱性に優れる。かかる特性を得るためには、PPS樹脂組成物中の重量平均ガラス繊維長が250μm以上であることが好ましく、500μm以下であることが望ましい。重量平均ガラス繊維長を250μm以上とすることで、曲げ強度、ウエルド引張強度が著しく低下することを抑制でき、500μm以下の長さとすることでウエルド部の引張強度が著しく低下することを抑制すると共に、耐冷熱衝撃性の低下を抑制できる。更に好ましい重量平均ガラス繊維長の下限としては、300μm以上が例示でき、上限としては400μm以下が例示できる。なお、PPS樹脂組成物の重量平均ガラス繊維長は、以下の方法で測定する。本発明のPPS樹脂組成物ペレットを600℃のマッフル炉で1~3時間加熱して有機物を分解する。次いで、残存するガラス繊維をガラスシャーレに移し、水を用いてガラス繊維をシャーレの表面に分散させる。シャーレ表面に分散したガラス繊維1000本について、光学式顕微鏡を用いて倍率120倍にて観察し、重量平均ガラス繊維長を測定する。重量平均ガラス繊維長は下記式から算出した。
重量平均ガラス繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
本発明のPPS樹脂組成物中の重量平均ガラス繊維長を250μm以上500μm以下に制御する方法は特に限定はしないが、例えば、二軸押出機にて溶融混練する際のスクリュー回転数を100rpm以上600rpm未満に制御することが挙げられる。更に好ましくは、スクリュー回転数を300rpm以上500rpm以下に制御する手法が例示できる。また、二軸押出機にて溶融混練する際のスクリュー回転数を前記の通り制御すると共に、押出機のシリンダー温度設定について、とりわけ(B)異形断面ガラス繊維を押出機に投入してから以降のシリンダー温度を300℃以上340℃以下にする手法を組み合わせることも好ましく例示できる。
本発明のPPS樹脂組成物から得られる成形品について、ISO 178に準拠し23℃にて測定した曲げ強度に対する100℃にて測定した曲げ強度の比の百分率である曲げ強度保持率が、64%以上であることが好ましい。こうすることにより、最終的に得られるPPS樹脂組成物からなる部材の信頼性が向上すると共に、製品適用範囲が広がる。前記曲げ強度保持率のより好ましい範囲としては、66%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物は、1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃ 、金型温度140℃ 、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長が85mm以上であることが好ましい。85mmを下回ると、流動性が不足し、成形品の外観不良、充填不足が発生する場合がある。流動長のさらに好ましい範囲としては、90mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましく例示できる。流動長の上限は特に限定しないが、強度、耐冷熱衝撃性の観点から、150mm以下であることが好ましく、130mm以下であることが拠り好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形品の耐冷熱衝撃性は、以下に規定するテスト方法において110回以上であることが望ましく、クラック発生までの処理回数が多いほど耐冷熱衝撃性に優れる。150回以上がより好ましく、180回以上が更に好ましい。ここで、耐冷熱衝撃性は以下の方法で評価する。シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で、中央部に2つの孔を有するカセット形状の金属をインサート成形した、図1に示す金属インサート成形品を用いる。これを130℃×1時間で処理後、-40℃×1時間で処理することを1回とする冷熱衝撃処理を施し、5回毎に目視によりクラックの発生有無を確認する。本成形品は、中央部に孔を設けることで、ウエルド部を意図的に発生させた成形品であり、ウエルド部の耐冷熱衝撃性を想定したものである。クラック発生が認められた冷熱衝撃処理数を耐冷熱衝撃性とする。
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形品の耐湿熱性は、プレッシャークッカー(PCT)処理後の曲げ強度が215MPa以上であることが望ましく、230MPa以上がより好ましく、250MPa以上が更に好ましい。また、PCT処理前後の強度保持率((PCT処理後の曲げ強度/PCT処理前の曲げ強度)×100)は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、83%以上が更に好ましい。ここで、耐湿熱性は以下の方法で評価する。ISO 20753に規定されるタイプA1試験片を121℃、100%RH、2atm、100時間の条件下で、ダバイエスペック社製高度加速寿命試験装置(EHS-221M)を用いて、PCT処理を100時間行い、処理後の試験片の曲げ強度を測定する。また、処理前の曲げ強度から強度の保持率を算出し、これを耐湿熱性の指標とする。
このようにして得られる本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形以外に、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することも可能である。
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂のガラス転移点を超える100℃環境下で測定した曲げ強度に優れると共に、23℃環境下で測定した曲げ強度に対する強度保持率が優れていることから、繰り返し高温環境下で使用される部品の設計自由度を高くすることができる他、成形加工性や耐冷熱衝撃性にも優れることから、大型の成形品、とりわけ金属がインサートされた大型成形品に好適である。
このようにして得られる本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形以外に、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することも可能である。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(1)(A)PPS樹脂のメルトフローレート(MFR)
測定温度315.5℃、滞留時間5分間、5000g荷重とし、ASTM-D1238-70に準ずる方法で測定した。
(2)(A)PPS樹脂の残渣量
空圧キャップと採集ロートを具備したセンシュー科学製のSUS試験管に、予め秤量しておいたポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターをセットし、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂100mgおよび1-クロロナフタレン2gを計り入れてから密閉した。これをセンシュー科学製の高温濾過装置SSC-9300に挿入し、250℃で5分間加熱振とうしてPPS樹脂を1-クロロナフタレンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を空圧キャップに接続した後、ピストンを押出して溶液をメンブランフィルターで濾過した。メンブランフィルターを取り出し、150℃で1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後のメンブランフィルター重量の差を残渣量(重量%)とした。
(3)(A)PPS樹脂の灰分
(A)PPS樹脂5.0gをルツボに秤量し、トーマス科学器械株式会社製TMF-5電気炉にて550℃で6時間焼成した。その後乾燥剤入りのデシケーター内に取り出し冷却した後、回収した残渣の重量を秤量し、(A)PPS樹脂単位重量当たりの残渣重量百分率として灰分を計算した。
(4)PPS樹脂組成物の曲げ強度及び曲げ強度保持率測定
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:320℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-50D)に供給し、ISO 20753(2008)に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形を行い、試験片を得た。この試験片の中央平行部を切り出し、タイプB2試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、ISO 178(2010)法に準拠し、スパン64mm、試験速度:2mm/s、温度:23℃、および100℃の各条件で曲げ強さを測定した。100℃環境下で測定した曲げ強度を、23℃環境下で測定した曲げ強度で除した百分率を曲げ強度保持率として計算した。
(5)PPS樹脂組成物の流動長測定
1mm厚み(1mmt)のスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形し、流動長測定(単位:mm)を行なった(使用射出成形機:住友重機製“SE-30D”)。この値が大きいほど流動性に優れる。
(6)PPS樹脂組成物の耐湿熱性
(4)と同様に射出成形して得られたISO 20753(2008)に規定されるタイプA1試験片を121℃、100%RH、2atm、100時間の条件下で、ダバイエスペック社製高度加速寿命試験装置(EHS-221M)を用いて、PCT処理を行い、処理後の試験片の曲げ強度を測定した。また、処理後の試験片の曲げ強度を処理前の曲げ強度で除した百分率として強度の保持率を算出し、これを耐湿熱性の指標とした。
(7)PPS樹脂組成物の耐冷熱衝撃性
シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で、中央部に2つの孔を有するカセット形状の金属をインサート成形した(図1)。これを130℃×1時間で処理後、-40℃×1時間で処理することを1回として、冷熱衝撃処理し、5回毎に目視によりクラックの発生有無を確認した。本成形品は、中央部に孔を設けることで、ウエルド部を意図的に発生させた成形品であり、ウエルド部の耐冷熱衝撃性を想定したものである。クラック発生が認められた冷熱衝撃処理数を耐冷熱衝撃性とした。
(8)PPS樹脂組成物の降温結晶化温度(Tmc)測定
本発明のPPS樹脂組成物のペレット約10mgを秤量し、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC-7を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間保持後、20℃/分の速度で降温させた時の結晶化ピーク(発熱ピーク)温度を測定した。
(9)PPS樹脂組成物のウエルド引張強度
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:320℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-50D)に供給し、ISO 20753(2008)に規定されるタイプA1準拠ウエルド試験片形状の金型を用いて、射出成形を行い、試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、ISO 527-1,2法に準拠し、つかみ具間距離:114mm、試験速度:5mm/sの条件で引張強度測定を行なった。
(10)PPS樹脂組成物成形品のガラス繊維長
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを600℃のマッフル炉で1~3時間加熱して有機物を分解した。次いで、残存するガラス繊維をガラスシャーレに移し、水を用いてガラス繊維をシャーレの表面に分散させた。シャーレ表面に分散したガラス繊維1000本について、光学式顕微鏡を用いて倍率120倍にて観察し、重量平均ガラス繊維長を測定した。重量平均ガラス繊維長は下記式から算出した。
重量平均ガラス繊維長=Σ(Mi×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの強化繊維の個数。
(A)PPS樹脂
[参考例1]PPS(A)-1の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp-ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られた(A)-1は、メルトフローレート(MFR)が100g/10min、残渣量が0.02重量%、灰分率が0.04重量%であった。
[参考例2]PPS(A)-2の調製
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られた(A)-2は、メルトフローレート(MFR)が300g/10min、残渣量が0.02重量%、灰分率が0.04重量%であった。
[参考例3]PPS(A)-3の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2962.50g(71.10モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム516.60g(6.30モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら230℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.017モルであった。
次にp-ジクロロベンゼン10363.50g(70.50モル)、NMP9078.30g(91.70モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で140分保持した。その後、250℃まで1.3℃/分の速度で冷却しながら2520g(140モル)のイオン交換水をオートクレーブに圧入した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られた(A)-3は、メルトフローレート(MFR)が600g/10min、残渣量が0.02重量%、灰分率が0.03重量%であった。
[参考例4]PPS(A)-4の調製
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た後に酸素濃度2%、215℃、3時間で熱酸化処理を行った。得られた(A)-4のMFRは450g/10分、残渣量は1.9重量%、灰分率が0.14重量%であった。
[参考例5]PPS(A)-5の調製
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。これをMFR値が140g/10分となるまで酸素気流下200℃で熱処理し、(A)-5を得た。得られたポリマーのMFRは140g/10min、残渣量は5.9重量%、灰分率が0.13重量%であった。
[参考例6]PPS(A)-6の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp-ジクロロベンゼン10362.03g(70.49モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム一水和物水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥することにより、(A)-6を得た。(A)-6のMFRは100g/10分、残渣量が0.03重量%、灰分率は0.25重量%であった。
(B)異形断面ガラス繊維
(B)-1:日本電気硝子(株)社製T-760FGF(3mm長 短径7μm、長径28μm、扁平率4)
(B)-2:重慶国際複合材料有限公司製 ECS309A-3-M4(3mm長 短径7μm、長径28μm、扁平率4)
(B)-3:日東紡績(株)社製 異形断面ガラス(3mm長 短径7μm、長径28μm、扁平率4)
(B)-4:日東紡績(株)社製 異形断面ガラス(3mm長 短径10μm、長径20μm、扁平率2)
(B)-5:日東紡績(株)社製 異形断面ガラス(3mm長 短径5.5μm、長径33μm、扁平率6)
(B)-6:日東紡績(株)社製 異形断面ガラス(3mm長 短径7μm、長径42μm、扁平率6)
(B’)円形断面ガラス繊維
B’-1:日本電気硝子(株)社製T-760H(3mm長 平均繊維径10.5μm)
B’-2:3B社製DS 8800-11P(直径11μm 4mm長 平均繊維径11μm)
(C)添加剤
(C)-1:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製SH6040(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(C)-2:信越化学工業(株)社製KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)
(C)-3:信越化学工業(株)社製KBE-9007N(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)
(C)-4:信越化学工業(株)社製KBE-903(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)
Figure 2022109212000003
Figure 2022109212000004
Figure 2022109212000005
〔実施例1~13〕
シリンダー温度を310℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM-26SS L/D=64.6)を用いて、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂および(C)添加剤をメインフィード口から、(B)異形断面ガラス繊維を中間添加口から表1および表2に示す重量比で供給し、吐出量40kg/hr、スクリュー回転数 350rpmの混錬条件で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットをまた130℃、3時間熱風乾燥し、高温結晶化温度を測定した。また、射出成形に供して各種成形品を得た。各種成形品に関して曲げ強度、曲げ強度保持率、流動長、耐湿熱性、ウエルド引張強度、ガラス繊維長、冷熱衝撃性を評価した。結果は表1および表2に示すとおりであった。
〔実施例14〕
二軸押出機のスクリュー回転数を100rpmの混練条件に変更した以外は実施例1と同条件で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、高温結晶化温度を測定した。また、射出成形に供して成形品を得た。得られた成形品に関して曲げ強度、曲げ強度保持率、流動長、耐湿熱性、ウエルド引張強度、ガラス繊維長、耐冷熱衝撃性を評価した。結果は表2に示すとおりであった。
〔実施例15〕
二軸押出機のシリンダー温度を280℃に設定した以外は実施例1と同条件で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、高温結晶化温度を測定した。また、射出成形に供して成形品を得た。得られた成形品に関して曲げ強度、曲げ強度保持率、流動長、耐湿熱性、ウエルド引張強度、ガラス繊維長、耐冷熱衝撃性を評価した。結果は表2に示すとおりであった。
〔比較例1~5〕
シリンダー温度を310℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM-26SS L/D=64.6)を用いて、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂および(C)添加剤をメインフィード口から、(B)円形断面ガラス繊維を中間添加口から表3に示す重量比で供給し、吐出量40kg/hr、スクリュー回転数 350rpmの混練条件で溶融混練してペレットを得た。溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、高温結晶化温度を測定した。また、射出成形に供して各種成形品を得た。各種成形品に関して曲げ強度、曲げ強度保持率、流動長、耐湿熱性、ウエルド引張強度、ガラス繊維長、耐冷熱衝撃性を評価した。結果は表3に示すとおりであった。
〔比較例6〕
二軸押出機のスクリュー回転数を600rpmの混練条件に変更した以外は比較例1と同条件で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、高温結晶化温度を測定した。また、射出成形に供して各種成形品を得た。各種成形品に関して曲げ強度、曲げ強度保持率、流動長、耐湿熱性、ウエルド引張強度、ガラス繊維長、耐冷熱衝撃性を評価した。結果は表3に示すとおりであった。
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂のガラス転移温度を超える高温環境下で連続使用される射出成形品、とりわけ大型の射出成形品に好適である。
1.ゲート
2.インサート金属
3.金属インサート成形品

Claims (8)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して、(B)異形断面ガラス繊維85~200重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を示差走査熱量計にて340℃まで昇温し溶融させてから、20℃/分の速度で降温した際に観察される結晶化に伴う発熱ピ-ク温度(Tmc)が195℃以上215℃以下であると共に、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物から得られる成形品について、ISO 178に準拠し100℃にて測定した曲げ強度が200MPa以上であることを特徴するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中における(B)異形断面ガラス繊維の重量平均ガラス繊維長が、250μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. ISO 178に準拠し23℃にて測定した曲げ強度に対する前記100℃にて測定した曲げ強度の比の百分率である曲げ強度保持率が、64%以上であることを特徴とする請求項1~2いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長が、85mm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の灰分が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、315.5℃で5分間溶融滞留させ、荷重5000gにて測定したメルトフローレートが400g/10min以上700g/10min以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、250℃で20倍重量の1-クロロナフタレンに5分間かけて溶解させた後、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024048558A1 (ja) * 2022-09-01 2024-03-07 ポリプラスチックス株式会社 ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物

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