JP3699777B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子量の分布の狭いポリアリーレンスルフィドおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは電気、電子分野、高剛性材料分野で特に有用な、機械的強度、長期耐久性に優れ、かつ耐薬品性の低下の少ないポリアリーレンスルフィドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS樹脂)は、一部熱硬化性を持つ熱可塑性樹脂であり、広い温度範囲にわたり、耐薬品性、機械的特性、耐熱性等に優れると共に、特に高い剛性を有するエンジニアリング樹脂として知られており、電子・電気機器部品の素材や各種の高剛性材料として有用である。
【0003】
従来の重合方法により得られるポリアリーレンスルフィドは、その重量平均分子量と数平均分子量との比(MW/MN)が、通常2.5〜10程度の範囲にあり、近年改善されてはいるが、比較的分子量分布の広いものである。分子量分布が広いと極端な高分子量成分が成形性の低下を招き、かつ低分子量成分が機械的強度、長期耐久性、及び耐薬品性の低下を招くという問題がある。また、洗浄操作によりMW/MNを2〜5に制御する方法も提案されているが、有機極性溶媒のみを用いた操作であるため分子量分布を狭くする効果が十分でない。
従って、分子量分布が狭く、機械的強度、長期耐久性に優れ、かつ耐薬品性の低下の少ないポリアリーレンスルフィド、およびその製造方法が望まれている。
【0004】
このような観点から、下記の技術が提案されている。すなわち、
中性な有機極性溶媒中で、ポリアリーレンスルフィドが溶融相を成す最低温度以上の温度で、水の存在下、溶媒相と、ポリマー溶融相とに相分離させ、金属分を熱抽出する方法、または、冷却後に顆粒状のポリマーを析出させ回収する方法(特公平1−25493号公報、および特公平4−55445号公報)
【0005】
高温非プロトン性有機溶媒中で、低分子量分を抽出除去する方法によりMW/MNを2〜5に制御する方法(特開平2−182727号公報)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特公平1−25493号公報および特公平4−55445号公報に記載された方法は、熱抽出効果、ポリマーの造粒効果は認められるものの、中性な有機極性溶媒を用いているため分子量分布を狭くする効果が十分ではない。
【0007】
また、特開平2−182727号公報に記載された方法は、中性な有機極性溶媒を用いているため分子量分布を狭くする効果が十分ではなく、最も狭い分子量分布の例であっても、MW/MN=2.9であるにすぎない。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、分子量分布が狭く、機械的強度、長期耐久性に優れ、かつ耐薬品性の低下の少ないポリアリーレンスルフィドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、重量平均分子量と数平均分子量との比(MW/MN)が、2.0未満の分子量分布を有することを特徴とするポリアリーレンスルフィドが提供される。
【0010】
また、その好ましい態様として、1−クロロナフタレンに、0.4g/dlの濃度となるように溶解し、206℃の温度で、ウベローデ粘度計を用いて測定した溶液粘度(ηinh )が、0.1dl/g以上であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドが提供される。
【0011】
また、非プロトン性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物とを重合し、得られたポリアリーレンスルフィド重合反応物を含む重合溶液中に、水を溶液全体の5〜50重量%並びに無機及び/又は有機の酸を、前記重合溶液が酸性になるように添加し、かつ溶液中のポリアリーレンスルフィド重合反応物が溶融相をなす最低温度よりも高い温度下で溶媒相とポリマー溶融層とに相分離させ、ポリマー溶融相を回収することを特徴とするポリアリーレンスルフィドを製造する方法が提供される。
【0012】
さらに、その好ましい態様として、前記無機及び/又は有機の酸の添加後であって相分離前の、ポリアリーレンスルフィド重合反応物を含む重合溶液の水素イオン濃度(pH)が、イオン交換水(pH=7)で10倍に稀釈したときの値として、6.5以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
I.ポリアリーレンスルフィド
1.分子量分布
本発明のポリアリーレンスルフィドは、重量平均分子量と数平均分子量との比(MW/MN)が、1.0以上2.0未満の分子量分布を有することを特徴とする。
2.0以上の場合は、機械的強度、長期耐久性、および耐薬品性の向上の効果が十分に発現されない。
【0014】
本発明において、分子量分布の測定は、以下のようにした。すなわち、
分離・乾燥により得られたポリアリーレンスルフィドを、エーエムアール社製PL−GPC210装置を用い、GPCによる分子量分布の測定を行った。測定条件を下記に示す。カラム:PLgel 10μm MIXED−B 300×7.5mm 2本、溶媒:1−クロロナフタレン、広島和光純薬社製特級、測定温度:210℃、流速:1.0ml/分、試料濃度0.2%、チャージング量:200μl、検出器:RI(示差屈折率計)、検量線:ポリスチレンスタンダード(PLcalib)。
【0015】
2.溶液粘度(ηinh )
本発明のポリアリーレンスルフィドは、1−クロロナフタレンに、0.4g/dlの濃度となるように溶解し、206℃の温度で、ウベローデ粘度計を用いて測定した溶液粘度(ηinh )が、0.1dl/g以上、好ましくは0.12dl/g以上で、さらに好ましくは0.15dl/g以上である。
0.1dl/g未満であると機械的強度および、耐薬品性等が低くなり、実用的でない。
【0016】
II.製造方法
1.重合工程
本発明においては、まず、非プロトン性有機溶媒中でアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物とを重合する。
この重合方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体例を以下説明する。
(1)重合成分
▲1▼非プロトン性有機溶媒
本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、一般に、非プロトン性の極性有機化合物(たとえば、アミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,環式有機リン化合物等)を、単独溶媒として、または、混合溶媒として、好適に使用することができる。
【0017】
これらの非プロトン性の極性有機化合物のうち、前記アミド化合物としては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミドなとを挙げることができる。
【0018】
また、前記ラクタム化合物としては、たとえば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドンなどを挙げることができる。
【0019】
また、前記尿素化合物としては、たとえば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などを挙げることができる。
【0020】
さらに、前記有機イオウ化合物としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホランなどを、また、前記環式有機リン化合物としては、たとえば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホランなどを挙げることができる。
【0021】
これら各種の非プロトン性有機化合物は、それぞれ一種単独で、または二種以上を混合して、さらには、本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
【0022】
前記各種の非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいのはN−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0023】
▲2▼アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物
(i)本発明に用いられるアルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等を挙げることができる。これらの中で、好ましいのは硫化リチウム、硫化ナトリウムであり、特に好ましいのは硫化リチウムである。
(ii)本発明に用いられるアルカリ土類金属としては、硫化カルシウム、硫化マグネシウム、硫化ストロンチウム等を挙げることができる。
なお、▲1▼と▲2▼とを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0024】
▲3▼ポリハロゲン化芳香族化合物
本発明に用いられるポリハロゲン化芳香族化合物としては、特に制限はないが、ポリアリーレンスルフィドの製造に用いられる公知の化合物を好適例として挙げることができる。
【0025】
たとえば、m−ジハロゲンベンゼン、p−ジハロゲンベンゼン等のジハロゲンベンゼン類;2,3−ジハロゲントルエン、2,5−ジハロゲントルエン、2,6−ジハロゲントルエン、3,4−ジハロゲントルエン、2,5−ジハロゲンキシレン、1−エチル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ジハロゲンベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジハロゲンベンゼンなどのアルキル置換ジハロゲンベンゼン類またはシクロアルキル置換ジハロゲンベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジハロゲンベンゼン等のアリール置換ジハロゲンベンゼン類;4,4’−ジハロビフェニル等のジハロビフェニル類:1,4−ジハロナフタレン、1,6−ジハロナフタレン、2,6−ジハロナフタレリチウムを除くアルカリ金属の水酸化物とを反応させてN−メチルアミノ酪酸4,ン等のジハロナフタレン類などを挙げることができる。
【0026】
これらのポリハロゲン化芳香族化合物における複数個のハロゲン元素は、それぞれフッ素、塩素,臭素またはヨウ素であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0027】
これらの中でも、好ましいのはジハロゲンベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロロベンゼンを50モル%以上含むものである。
【0028】
(4)使用割合
前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物との重合開始時の配合割合は、モル比で、ポリハロゲン化芳香族化合物/アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属の硫化物=0.90〜1.30とすることが好ましく、0.95〜1.25がさらに好ましく、中でも0.95〜1.20とすることが最も好ましい。モル比を0.90〜1.30とすることにより重合反応が円滑に進む。
【0029】
前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と非プロトン性有機溶媒との配合割合は、モル比で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物/非プロトン性有機溶媒=0.05〜0.30とすることが好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましく、中でも0.10〜0.25とすることが最も好ましい。モル比を0.05〜0.30とすることにより重合反応が円滑に進む。
【0030】
非プロトン性有機溶媒中に含まれる水分量は、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物1モル当り、2.5モル以下とすることが好ましい。2.5モルを超えると、重合が進行せず、高分子量のポリアリーレンスルフィドを得ることができない。
【0031】
本発明においては、必要に応じて、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、1分子中に3個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物、およびハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐剤を適当に選択して反応系に添加し、これを使用することもできる。
【0032】
必要に応じて使用される前記分岐剤の使用割合は、前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物1モルに対し、通常、0.0005〜0.05モル、好ましくは0.001〜0.02モルである。
【0033】
(2)重合条件
非プロトン性有機溶媒におけるアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物との重合反応としては、ポリアリーレンスルフィドが生成する条件であれば特に制限はない。具体的には、予備重合後本重合することが、より高分子量のポリアリーレンスルフィドを重合することができ、反応時間も短くすることができるため好ましい。まず予備重合の条件としては、重合温度が、180〜245℃が好ましく、さらに好ましくは200〜245℃である。また、このポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が好ましくは80%以上、さらに好ましくは80〜95%となる条件で予備重合を行なうことが好ましい。重合温度が180℃未満であると予備重合が不十分になり、245℃を超えると重合系において、ポリマー相が攪拌翼に凝集、付着するおそれがある。
本重合としては、重合温度が235〜280℃が好ましく、特に好ましくは240〜280℃である。また、このポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が90〜99%となるまで重合させることが好ましい。
【0034】
2.ポリマー溶融相の分離工程
次に、前記重合工程で得られたポリアリーレンスルフィド重合反応物を含む重合溶液中に、所定量の水および酸を添加し、かつ、所定温度で相分離させ、ポリマー溶融相を分離回収する。
(1)水の添加
添加する水の量は、ポリマー溶融相を分離するために必要な最低限の量、具体的には、溶液全体の5〜50重量%、好ましくは5〜20重量%とする。
5重量%未満であるとポリマー溶融相が分離せず、50重量%を超えると分子量分布制御効果が十分に得られない。
【0035】
(2)酸の添加
本発明に用いられる無機および/又は有機酸としては、ポリアリーレンスルフィドを分解する作用を有しないものであれば、特に制限はなく、酢酸、塩酸、リン酸、珪酸、炭酸、プロピル酸等を挙げることができる。中でも後処理のしやすさから酢酸、塩酸が好ましい。硝酸のような分解、劣化作用のあるものは好ましくない。
酸の添加量は、pHを1〜5に制御するのに十分な量とする。また、酸の添加後であって相分離前のポリアリーレンスルフィド重合反応を含む重合溶液のpHは、イオン交換水(pH=7)で10倍に稀釈したときの値として、6.5以下であることが好ましく、1〜5がさらに好ましく、2〜5であることが最も好ましい。
6.5を超えると、溶液が中性からアルカリ性となり、分子量分布を狭くする効果が不十分となる。
【0036】
(3)温度
本発明においては、ポリマー溶融相の分離は、ポリアリーレンスルフィドが溶融相を成す最低温度よりも高い温度で、通常は230〜270℃、好ましくは240〜260℃で行なう。
270℃を超えると、ポリマーの分解が起こるおそれがあり、230℃未満であると、ポリマーの固化が起こる場合がある。
【0037】
(4)分離回収操作
液相分離したポリマー溶融相は、適宜の手段を用いて相分離槽から抜き出すことができる。例えば、溶媒相とポリマー溶融相とに相分離した状態で攪拌を停止して静置し、相分離槽から抜き出し槽へポリマー溶融相を圧相、又はポンプを用いて送る。また、溶媒相とポリマー溶融相とに相分離した状態で攪拌を停止して静置し、室温まで冷却した後、粉末状で得られる低分子量ポリマーを除去し、ケーキ状で得られるポリマーを回収してもよい。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
本合成例においては、水酸化リチウムと硫化水素から合成した、硫化リチウムを主成分とする原料を用いた。
[合成例1]硫化リチウムの合成
攪拌翼のついた5リットルセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製、以下NMPと略記)3.09kg(31.17モル)、無水水酸化リチウム(広島和光純薬社製、特級−水和物を減圧下150℃にて24時間乾燥したもの)359.25g(15モル)を仕込み、攪拌しながら130℃まで昇温した。昇温後、硫化水素を0.7リットル/分の供給速度で、130℃を保ちながら、7時間供給した。次いで、硫化水素の供給を停止し、代わりに窒素を0.2リットル/分の供給速度で供給しながら180℃まで昇温し、180℃を保ちながら脱硫黄し、同時に水硫化リチウム生成時に生じた水の大部分を脱水した。さらに、トルエン0.1リットル加え、窒素を0.8リットル/分の供給速度で供給しながら、2時間脱水を続け、硫化リチウムを主成分とするNMP溶液を3.323kg得た。
得られた硫化リチウムを主成分とするNMP溶液を分析した結果、1g当たりのS、Li、NMP量はそれぞれ:2.24×10-3(モル/グラム)、Li:4.51×10-3(モル/グラム)、NMP:0.897(モル/グラム)であった。
【0039】
[合成例2]ポリフェニレンスルフィド(PPS)の合成
1リットルオートクレーブに、合成例1で合成した硫化リチウムを主成分とするNMP溶液335.27g(0.75モル)、パラジクロロベンゼン(広島和光純薬社製、特級、以下PDCBと略記)99.22g(0.75モル)、無水水酸化リチウム0.59g(0.24モル)、NMP23.77g(0.24モル)を仕込み、窒素パージ後、攪拌下密閉系で240℃まで昇温し、240℃を保ちながら1.5時間予備重合を行った。次いで、260℃まで昇温後、260℃を保ちながら3時間重合を行った。冷却、開放後、水、アセトンで順次洗浄し、減圧下80℃にて10時間乾燥後、淡黄色ビーズ状ポリマーを75.44g(収率93%)得た。
得られたポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略記)を、1−クロロナフタレンに0.4g/dlの濃度になるように溶解し、206℃の温度でウベローデ粘度計を使用して粘度測定を行った。その結果、このPPSの溶液粘度(以下ηinh と略記)は0.281dl/gであった。
GPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=2.87であった。
【0040】
[実施例1]
2リットルオートクレーブに、合成例2で合成したPPS50g(0.46モル)、NMP800.0g(8.07モル)、イオン交換水200.0g(11.11モル)、酢酸3.0g(0.05モル)を仕込み、窒素パージ後、攪拌下密閉系で260℃まで昇温し、260℃を保ちながら1時間攪拌し、次いで攪拌を停止し、260℃を保ちながら1時間静置した。攪拌を停止したまま、リアクターを室温まで放冷し、開放した。得られたケーキ状に固まったポリマーと、パウダー状のポリマーとを分離し、ケーキ状ポリマーをほぐした後、それぞれを水、アセトンで順次洗浄した。減圧下80℃にて10時間乾燥後、顆粒状ポリマー(ケーキ状ポリマーをほぐしたもの)を38.45g(収率76.9%),粉末状ポリマーを9.90g(収率19.3%)得た。
なお、洗浄操作に先立って、調整した溶媒1mlをサンプリングし、イオン交換水9mlを加えて10倍希釈した時のpHをpHメーター(日立−堀場H−7型)で測定したところ3.86であった。
それぞれのηinh を測定したところ、顆粒状ポリマーが0.297dl/g、粉末状ポリマーが0.120dl/gであった。
顆粒状ポリマーのGPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=1.92であった。
【0041】
[合成例3]
1リットルオートクレーブに、合成例1で合成した硫化リチウムを主成分とするNMP溶液335.27g(0.75モル)、PSCB99.22g(0.75モル)、無水水酸化リチウム0.59g(0.24モル)、NMP23.77g(0.24モル)、イオン交換水2.03g(0.11モル)を仕込み、合成例2と同様の操作で重合を行い、洗浄、乾燥後、ビーズ状ポリマーを76.32g(収率94.1%)得た。
得られたPPSのηinh を測定したところ0.179dl/gであった。
GPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=2.93であった。
【0042】
[実施例2]
2リットルオートクレーブに、合成例3で合成したPPS50g(0.46モル)、NMP905.5g(9.13モル)、イオン交換水94.5g(5.25モル)、酢酸3.0g(0.05モル)を仕込み、実施例1と同様の操作で溶融洗浄を実施し、洗浄、乾燥後、顆粒状ポリマーを40.15g(収率80.3%),粉末状ポリマーを8.75g(収率17.5%)得た。
なお、洗浄操作に先立って、調整した溶媒のpHを実施例1と同じ方法で測定したところ3.85であった。
それぞれのηinh を測定したところ、顆粒状ポリマーが0.202dl/g、粉末状ポリマーが0.118dl/gであった。
顆粒状ポリマーのGPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=1.89であった。
【0043】
[比較例1]
2リットルオートクレーブに、合成例2と同一条件で合成したPPS50g(0.46モル)、NMP905.5g(9.13モル)、イオン交換水94.5g(5.25モル)を仕込み、実施例1と同様の操作で溶融洗浄を実施し、洗浄、乾燥後、顆粒状ポリマーを38.34g(収率76.7%),粉末状ポリマーを9.89g(収率19.8%)得た。
なお、洗浄操作に先立って、調整した溶媒のpHを実施例1と同じ方法で測定したところ7.83であった。
それぞれのηinh を測定したところ、顆粒状ポリマーが0.276dl/g、粉末状ポリマーが0.121dl/gであった。
顆粒状ポリマーのGPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=2.43であった。
【0044】
[比較例2]
2リットルオートクレーブに、合成例2と同一条件で合成したPPS50g(0.46モル)、NMP905.5g(9.13モル)、イオン交換水94.5g(5.25モル)、無水水酸化リチウム0.24g(0.01モル)を仕込み、実施例3と同様の操作で溶融洗浄を実施し、洗浄、乾燥後、顆粒状ポリマーを38.34g(収率76.7%),粉末状ポリマーを9.89g(収率19.8%)得た。
なお、洗浄操作に先立って、調整した溶媒のpHを実施例1と同じ方法で測定したところ12.13であった。
それぞれのηinh を測定したところ、顆粒状ポリマーが0.283dl/g、粉末状ポリマーが0.121dl/gであった。
顆粒状ポリマーのGPCによる分子量分布の測定を前記方法で行ったところ、MW/MN=2.51であった。
【0045】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【表1】
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、分子量分布が狭く、機械的強度、長期耐久性に優れ、かつ耐薬品性の低下の少ないポリアリーレンスルフィド、及びその製造方提供することができる。
Claims (3)
- 非プロトン性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物とを重合し、得られたポリアリーレンスルフィド重合反応物を含む重合溶液中に、水を溶液全体の5〜50重量%、並びに無機及び/又は有機の酸を、前記重合溶液が酸性になるように添加し、かつ溶液中のポリアリーレンスルフィド重合反応物が溶融相をなす最低温度よりも高い温度下で溶媒相とポリマー溶融相とに相分離させ、ポリマー溶融相を回収し、重量平均分子量と数平均分子量との比(M W /M N )が1以上2.0未満の分子量分布を有するポリアリーレンスルフィドを得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記ポリアリーレンスルフィドが、1−クロロナフタレンに、0.4g/dlの濃度となるように溶解し、206℃の温度で、ウベローデ粘度計を用いて測定した溶液粘度(ηinh)が、0.1dl/g以上であることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記無機及び/又は有機の酸の添加後であって相分離前のポリアリーレンスルフィド重合反応物を含む重合溶液の水素イオン濃度(pH)が、イオン交換水(pH=7)で10倍に稀釈したときの値として、6.5以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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