JP4983316B2 - 航空機用内装材 - Google Patents

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本発明は、航空機の内装材に関し、軽量で高い力学特性を兼ね備え、さらに詳しくは高い弾性率を有することから薄肉による軽量化とキャビンスペースの確保が図れるとともに、その特性安定性に優れ、かつキャビン内での火災時に可燃ガスや有毒ガスの発生を抑える航空機用内装材に関する。
近年、自動車、二輪車、航空機などの移動体において、その軽量化が強く要望されるようになった。この背景には、燃費向上による排ガス量の緩和、燃料コスト削減、航続距離の増進などがあり、今後もこの動向は加速されると予測される。そこで、これら移動体の材料も、金属材料から繊維強化樹脂材料が採用されるようになり、とりわけ軽量で力学特性に優れた炭素繊維複合材料の使用が高まっている。例えば、航空機の構造材にはアルミ合金から、連続した炭素繊維で強化された熱硬化性樹脂材料への代替が進んでいる。
一方、航空機の軽量性という観点では、構造材だけでなく、キャビン部分においても同様に軽量化が重要である。特に、キャビン全体を保護する内装パネルや、手荷物ロッカー壁、座席などの内装材は、使用量も多く、軽量材料が要望される。ここで、発泡材などを使用して成形品を厚くすることで曲げ剛性を高めることもできるが、この場合、キャビンスペースが極めて狭小となるだけでなく、肉厚化により逆に重量が増加することが懸念される。
また、航空機用材料を考慮する場合、最優先されるべきは安全性である。特に旅客用航空機では、キャビン内部での防火・難燃対策は充分に講じられている。しかし前記内装材は、発煙性の熱可塑性樹脂を多量に使用しているために、火災時の発熱による可燃ガスや有毒ガス発生が問題となる。
かかる問題に対し、火災時の延焼、有毒ガス発生を防ぐため、特許文献1には、セラミック繊維を含むシートと、金属箔を積層した内装用積層体が開示されている。この方法は力学特性やその安定性にも航空機用材料としては使用可能であるが、金属材料を使用しているため軽量性を満足することが困難である。
特開平8−276536号公報(第2頁、第2行)
本発明の課題は、かかる従来技術に鑑み、薄肉軽量かつ航空機用材料として十分な力学特性を兼ね備え、かつ火災時の延焼、有毒ガスの発生を抑制する航空機用内装材を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、以下の構成を採用するものである。すなわち、
(1)重量平均繊維長(Lw)が1〜15mmの範囲である炭素繊維(A)が、熱可塑性樹脂(B)に、重量含有率が25〜80重量%の範囲で、単繊維状に分散された繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)を構成要素として含む航空機用内装材であり、前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178法で測定される曲げ弾性率が20〜50GPaの範囲であり、かつ、ASTM E662で測定される20分燃焼時の発生ガス量が0〜100の範囲内である、航空機用内装材。
(2)前記炭素繊維(A)の分散パラメーターが0〜30%の範囲にある、(1)に記載の航空機用内装材。
(3)前記炭素繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1〜4の範囲にある、(1)または(2)に記載の航空機用内装材。
(4)前記熱可塑性樹脂(B)の、加熱による重量減少が下記式を満足する、(1)〜(3)のいずれかに記載の航空機内装材。
△Wr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
(ここで、△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下である、()に記載の航空機内装材。
)前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のボイド率が0〜5%の範囲内である、(1)〜()のいずれかに記載の航空機用内装材。
)曲げ弾性率の変動率が0〜20%の範囲内である、(1)〜()のいずれかに記載の航空機用内装材。
)前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178法で測定される曲げ強度が200〜1000MPaの範囲である、(1)〜()のいずれかに記載の航空機用内装材。
)曲げ強度の変動率が0〜20%の範囲内である、()に記載の航空機用内装材。
10)前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の密度が1.3〜1.8の範囲である、(1)〜()のいずれかに記載の航空機用内装材。
11)さらに、連続繊維強化樹脂からなる部材(II)が一体化されてなる、(1)〜(10)のいずれかに記載の航空機用内装材。
12)さらに、表皮材(III)が一体化されてなる、(1)〜(11)のいずれかに記載の航空機用内装材。
である。
本発明に係る航空機用内装材は、炭素繊維と、熱可塑性樹脂として環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させて得たポリアリーレンスルフィド樹脂で構成されることで、薄肉軽量性と形状維持に充分な力学特性を兼ね備えることができる。また、内装材として使用した場合、キャビン内外での火災において可燃性ガスおよび有毒性のガスによる災害を防止することができる。
以下、本発明の航空機用内装材について、さらに詳細に説明する。
本発明の航空機用内装材は、重量平均繊維長(Lw)が1〜15mmの範囲である炭素繊維(A)が、熱可塑性樹脂(B)に、重量含有率が25〜80重量%の範囲で、単繊維状に分散された繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)を構成要素として含むものである。この繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)は、炭素繊維(A)で補強されることにより軽量で力学特性に優れ、かつマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いることにより内装材を熱プレスのような簡便なプロセスで製造することができる。
ここで、炭素繊維(A)としては、例えば、ポリアクリロニトリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石炭タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、および炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維などが挙げられる。さらに、これらの黒鉛繊維でも良い。また、これらに、ニッケル、イッテルビウム、金、銀および銅などの金属を、メッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および蒸着法などにより、少なくとも1層以上被覆してなる金属被覆炭素繊維でも良い。また、これらを2種類以上ブレンドして構成しても良い。なかでも、強度と弾性率などの力学的特性とコストとのバランスに優れているPAN系炭素繊維がとりわけ好ましく用いられる。
上記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中に含まれる炭素繊維(A)は、熱可塑性樹脂中に単繊維状に分散されていることを特徴とするものである。分散された形態とすることで、複雑な形状を容易に、かつ低コストで賦形することができる。ここで、単繊維状の炭素繊維が熱可塑性樹脂中に分散されているとは、図1に示すように、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の厚み断面において、炭素繊維が実質的に斑なく均一に分散している状態を示す。図2に示すように、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中に単繊維状に分散されていない状態、すなわち、炭素繊維が束の状態で存在すると、広い領域にわたり炭素繊維がなく樹脂のみで構成される部分(以下、樹脂リッチ部と称することがある。)が発生し、炭素繊維の分散にバラツキが生じる。また、熱可塑性樹脂は溶融粘度が高いため、炭素繊維が束の状態で存在すると、その炭素繊維束内に熱可塑性樹脂が十分含浸されない部分(以下、未含浸部と称することがある。)が生じる。このような樹脂リッチ部や未含浸部が繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)内に存在する場合、荷重下において破壊の起点となり、力学特性を十分に発揮できなくなる場合がある。
本発明においては、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中の炭素繊維の分散状態を示す「炭素繊維の本数のバラツキ」で示される炭素繊維の分散パラメーターが0〜30%である状態が好ましく、0〜20%がより好ましく、0〜10%がとりわけ好ましい。
この「炭素繊維の本数のバラツキ」は、下記の方法で測定される値のことである。繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の厚み断面を一部切り出し、研磨を行い、観察用試験片を作成する。研磨して得られた前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の断面を光学顕微鏡で観察し、無作為に0.1mm×0.1mmの範囲を10カ所選び出し、その範囲に含まれる炭素繊維の本数を測定する。選び出された10カ所の炭素繊維の本数の平均値をnとし、標準偏差をσとし、次式により炭素繊維の本数のバラツキを求める。
炭素繊維の本数のバラツキ(%)=100×n/σ。
炭素繊維を単繊維状に分散させる方法としては、特に制限はなく、例えば、(1)チョップドの形態を有する炭素繊維束と熱可塑性樹脂を気流ジェット下で混合し、その混合物をコンベアベルト上に集積させ搬送しながら加熱する気流ジェット法、(2)炭素繊維束と熱可塑性樹脂を押出機に供給し、混練する押出法、(3)チョップドの形態を有する炭素繊維束と熱可塑性樹脂を液中で分散混合し、有孔支持体上に抄紙し、加熱、加圧する抄紙法、および(4)チョップドの形態を有する炭素繊維束と熱可塑性樹脂をカード機により開繊し繊維ウェブを作成し、ニードルパンチ処理を施した後に、加熱、加圧するカーディング法などが挙げられる。本発明では、より好ましくは、炭素繊維の分散性に優れ、かつその炭素繊維の繊維長を長く保持することができる、気流ジェット法あるいは抄紙法が用いられ、さらに好ましくは生産性の観点から、抄紙法が用いられる。
ここで繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中に分散されている炭素繊維の繊維長としては、重量平均繊維長(Lw)で1〜15mmの範囲であり、好ましくは1.5〜10mmの範囲内、より好ましくは2〜5mmの範囲内である。重量平均繊維長(Lw)が1mmより短いと十分な力学特性が得られない場合があり、重量平均繊維長(Lw)が15mmより長いと、炭素繊維の絡み合いによる立体障害が生じたり、部材内にボイドが多く残るなどして十分な力学特性が得られない場合がある。
ここで、重量平均繊維長(Lw)の測定方法は、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)内の炭素繊維のみを、無作為に少なくとも400本以上抽出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にて測定して、その重量平均長さを算出することにより行う。炭素繊維の抽出方法としては、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の一部を切り出し、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒により熱可塑性樹脂を十分溶解させた後、濾過などの公知の操作により炭素繊維と分離する方法や、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の一部を切り出し、熱可塑性樹脂を加熱炉にて焼却除去して炭素繊維を取り出す方法が例示できる。
さらに、本発明においては、該炭素繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)は、力学特性を十分に高める観点から、1〜4の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1〜3.5の範囲であり、さらに好ましくは1〜3の範囲である。ここで、重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1とは、同じ長さの繊維のみで構成されることを表し、Lw/Lnが大きくなるに従い繊維長の分布が広くなることを意味する。
本発明における繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中の炭素繊維の重量含有率は25〜80重量%の範囲であり、好ましくは30〜75重量%の範囲であり、さらに好ましくは35〜70重量%の範囲である。炭素繊維の重量含有量が25重量%未満であると、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の弾性率が不足する場合があり、重量含有率が80重量%を超えると、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)内にボイドが発生する場合がある。なお、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中の炭素繊維の重量含有率は、配合量で決定されるが、重量平均繊維長の測定で用いた方法で、成形品から炭素繊維を抽出して重量割合を求めてもよい。また、濾過などの公知な操作において、炭素繊維以外の充填剤や、熱可塑性樹脂の炭化物などを十分に分離すると、より正確な重量含有率を求めることができるため好ましい。
前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178に基づき測定した曲げ弾性率は、軽量設計の観点から、20〜50GPaの範囲であり、好ましくは25〜45GPaの範囲内であり、より好ましくは30〜40GPaである。曲げ弾性率が20GPa未満であると、本発明の目的である薄肉軽量の観点で不十分な場合がある。曲げ弾性率の上限は50GPa以下であれば、経済性を満足しつつ、本発明の効果を十分達成させることができる。
さらに、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)はASTM E662で測定される20分燃焼時の発生ガス量が0〜100の範囲内である。この発生ガス量は、航空機用内装材における、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のみで試験し、無炎モードにて規定の熱量を加えて、20分燃焼した時の発煙量を光学的に評価した指標である。また、ここで言う燃焼とは、必ずしも発火を伴ったものでなくとも良い。発生ガス量が100を越えると、キャビン内外での火災発生時、初期消火時および延焼時に、可燃ガスによる火災の二次延焼、有毒ガスによる乗客、乗員への被害が生じる場合がある。従って、発生ガス量は低い方が望ましく、好ましくは0〜80の範囲内であり、とりわけ好ましくは0〜60の範囲内である。
本発明に使用される熱可塑性樹脂(B)としては、加熱による重量減少が下記式(1)を満たすことが好ましい。
△Wr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)・・・(1)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
発生ガス量を抑制する観点で、△Wrは低いほど好ましく、0.12%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることがさらに好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。
△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能であるが、この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは、酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを示す。
また、△Wrの測定においては50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。なお、本発明においては、50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。
本発明に使用される熱可塑性樹脂(B)としては、本発明の目的である発生ガス量を抑制する観点から、さらには、熱可塑性樹脂の加熱による熱減量を抑える観点から、また、成形加工性や、経済性の観点から、ポリアリーレンスルフィド(PAS)を用いる必要がある。
熱による重量減少を低減する目的で、不純物、未反応のモノマー、オリゴマー、低分子量体を抑制する方法、具体的には、環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる製造方法で得られたPASを用いることで、PASの重量減少を低減することができる。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はないが、航空機用内装材の力学特性の観点から、2,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜150,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000である。
また、熱可塑性樹脂として用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量分布の広がり、すなわち、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下がさらに好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。分散度を2.5以下に抑えることは、ポリアリーレンスルフィド樹脂に含まれる低分子量成分が少なく、本発明の目的である有毒ガスの発生を抑制する観点から好ましい。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
熱可塑性樹脂には、機能性を高める観点から、充填材や添加剤が添加されていてもよい。例えば、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤およびカップリング剤である。とりわけ、無機物を添加する場合には、その分散サイズが小さい方が、炭素繊維への接着性の観点からより好ましい。特にナノオーダーの分散サイズを有するものは、少量添加で機能向上効果を発現できる点からさらに好ましい態様である。
さらに繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のJIS K 7075(1991)に基づき測定した成形品のボイド率は、力学特性の観点から、0〜5%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0〜3%の範囲内であり、さらに好ましくは0〜2%の範囲内である。繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)中のボイド率を好ましい範囲に調整する方法としては、特に制限はないが、炭素繊維の分散を十分に高めること、成形する際の加熱と圧力を適正な範囲に設定することが挙げられる。
また、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の曲げ弾性率の信頼性を高める観点から、上記曲げ弾性率は等方的な性質を有することが好ましく、曲げ弾性率の変動率は0〜20%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0〜15%の範囲内であり、さらに好ましくは0〜10%の範囲内であり、最も好ましくは0%である。ここで変動率とは、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)から複数の方向(少なくとも任意の一方向とその90度方向)から試験片を切り出し、測定数の平均値aおよび標準偏差σを用い、次式を用いて変動率(%)を求める。
変動率=100×σ/a
ここで、変動率を好ましい範囲内に調整する方法としては、特に制限はないが、2つの観点から好ましい方法を示す。すなわち、(1)試験片の状態が力学特性を十分に発現する構造であること、(2)強化繊維が試験片のいずれの方向にも実質的に均一に配置されていること、である。(1)に対しては、製造工程で異物混入を防ぐ方法、脱泡工程でボイドを除去する方法、樹脂リッチ部や未含浸部が形成されないよう強化繊維の分散性を高める方法、強化繊維が屈曲しないよう繊維長を好ましい範囲内でカットする方法などが挙げられる。(2)に対しては、成形基材を製造する工程で強化繊維の配向をランダムにせしむる方法、強化繊維の方向を実質的に均一になるように積層したプリフォームを製造する方法などが挙げられる。
同様に、前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178法に基づき測定した曲げ強度は、200〜1000MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは300〜900MPaの範囲であり、さらに好ましくは400〜800MPaの範囲である。ここでも、曲げ強度の変動率は0〜20%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0〜15%の範囲内であり、さらに好ましくは0〜10%の範囲内であり、最も好ましくは0%である。
前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の密度は、軽量設計の観点から、1.3〜1.8の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.35〜1.75の範囲であり、さらに好ましくは1.4〜1.7の範囲である。
前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)は、航空機用内装材としての剛性を高める観点から、凸凹形状が形成されていても良い。凹凸形状としては、例えば、山型、丸型、波型、角型、W型、M型、I型、H型、台形型などが挙げられる。凹凸の高さは、10〜70mmの範囲内が好ましく、より好ましくは10〜50mmの範囲内であり、さらに好ましくは10〜30mmでの範囲内ある。
さらに、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の剛性を補強する観点から、連続繊維強化樹脂から構成される部材(II)が一体化されていてもよい。ここで部材(II)は、連続した強化繊維とマトリックス樹脂から構成される。ここでの連続した強化繊維とは、少なくとも一方向に、20mm以上の長さにわたり連続した多数本のフィラメントから構成されているもの、または、積層構造を有する部材においては、各層の強化繊維の90%以上が部材端部以外に切断部を持たないものを示し、部材全体にわたって全てのフィラメントが連続している必要はなく、一部のフィラメントが途中で分断されていても良い。
前記連続した強化繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維などの有機繊維、およびガラス繊維、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維や黒鉛繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維などの無機繊維がある。これらは、単独または2種以上併用して用いられる。これらの繊維素材は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。繊維素材としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である炭素繊維が、好ましく使用される。
強化繊維の形態の例としては、多数本のフィラメントからなるフィラメント束(繊維束)、この繊維束から構成されたクロス、多数本のフィラメントが一方向に配列されたフィラメント束(一方向性繊維束)、この一方向性繊維束から構成された一方向性クロスがある。力学特性、意匠性や生産性の観点から、クロス、一方向性繊維束が好ましい。強化繊維は、同一の形態の複数本の繊維束から構成されていても、あるいは、異なる形態の複数本の繊維束から構成されていても良い。
前記部材(II)のマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、成形体の剛性、強度、耐熱性などの観点から熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミドなどを好ましく用いることができる。また、これらの共重合体、変性体、および/または、これらの2種以上をブレンドした樹脂などを適用しても良いがある。これらの中でも、特に、エポキシ樹脂は、成形体の力学特性や、耐熱性の観点から好ましい。さらにエポキシ樹脂は、その優れた力学特性を発現するために主成分として含まれるのが好ましく、具体的には樹脂組成物当たり60重量%以上含まれることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂を挙げることができるが、本発明の目的である発生ガス量を抑制する観点から、PEEK、PEI、ポリエーテルサルホン、PASが好適に用いられる。とりわけ前記した加熱による重量減少の低い樹脂がより好ましく用いられる。
また、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)と部材(II)の一体化の形態としては、特に制限はなく、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の一部に部材(II)が一体化されている形態、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の片側全面に部材(II)が一体化されている積層形態、さらには繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の両側全面に部材(II)が一体化されているサンドイッチ形態などが例示でき、これらを目的に応じて設計できる。
また、本発明の航空機用内装材には、表皮材(III)が配置されていることが好ましい。すなわち、航空機用内装材の実質的意匠面を構成する部分であり、例えば、フィルム状、板状、不織布、織布、メッシュ等や、これら2種以上積層した形態のものを用いることができる。この表皮材(III)は、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の表面に配置されていてもよく、また繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)と連続繊維強化樹脂から構成される部材(II)が一体化された部材の表面に配置されていてもよい。航空機用内装材の好ましい形態としては、航空機構造部材側に、剛性を補強する連続繊維強化樹脂から構成される部材(II)の層、次いで繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の層、そして客室側に表皮材(III)の層からなる積層構造が挙げられる。
ここで、各部材の一体化には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、予め所定のサイズに加工した繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)を、金型にインサートして、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)および表皮材(III)を同時にプレス成形する方法や、各部材を個別に製造し、所定のサイズに加工したものを通常公知の接着剤にて接合する方法が例示できる。
また、意匠性の観点から、前記表皮材(III)は幾何学的または非幾何学的な模様を有していても良い。幾何学的な模様とは、三角形、方形、菱形、多角形、円形等、およびこれらを組み合わせた形状からなる模様のことである。非幾何学的な模様とは、文字、数字、絵、マーク等、およびこれらを組み合わせた形状からなる模様のことである。
航空機用内装材の表皮材(III)に幾何学的または非幾何学的な模様を付与する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予め模様がプリントされた表皮材を使用する方法、成形型の製品面に模様を型取りしておく方法、成形型の製品面に模様となる部品をインサートし成形用基材と一体成形する方法、航空機用内装材の成形品を穴あけ、削り等の2次加工し模様を付与する方法、航空機用内装材の成形品にメッキ、塗装、蒸着、レーザー照射等することで模様を付与する方法等が挙げられる。
また、本発明の航空機内装材には、軽量化の観点から、成形品に複数個の貫通穴が形成されていても良い。ここで貫通穴とは、表皮材を含む航空機用内装材の厚み方向に貫通した穴のことである。航空機用内装材に形成する貫通穴の大きさは、3000cm以下が好ましく、より好ましくは2000cm以下であり、更に好ましくは1500cm以下である。また、航空機用内装材に形成する貫通穴の形状は、例えば、円形、楕円形、多角形、角Rのある多角形であっても、2種類以上の形状が併用されていても良い。これらの貫通穴は航空機用内装材の接合穴や窓枠などとして使用することが出来る。
本発明の航空機内装材の適用機としては、例えば、固定翼機、飛行機、グライダー、回転翼機、ヘリコプター、オートジャイロ等の重航空機、飛行船、および気球等の軽航空機などが挙げられる。
本発明の航空機用内装材は、例えば、機長席、副操縦士席、客室乗務員用座席、乗客座席、クローゼット、調理ユニット、化粧室壁、手荷物ロッカー壁、収納ロッカー壁、ドア内張、キャビン天井パネル、キャビン内装パネル、キャビン床面、床下貨物室天井パネル、床下貨物室内装パネル、貨物室床面、エンジン室内装パネル、エンジン室天井パネル、エンジン室床面、コックピット天井パネル、コックピット内装パネル、コックピット床面、機内用食器、機内用トレイなどに適用可能である。
以下、実施例により本発明の航空機用内装材についてさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。
本発明の説明で用いられた航空機用内装材の諸特性の測定手法は、以下のとおりである。
(1)ボイド率
成形品の一部を切り出し、JIS K 7075(1991)に従い、ボイド率(Vv)を測定した。
Vv=100−(Vf+Vr)
Vf=Wf×ρc/ρf(単位:vol%)
Vr=(100−Wf)×ρc/ρr(単位:vol%)
ここで、ρcは成形品の密度、ρfは炭素繊維の密度、ρrは熱可塑性樹脂の密度である。Wfは成形品の炭素繊維の重量含有率(重量%)、Wrは成形品の熱可塑性樹脂重量含有率(重量%)である。成形品の密度はJIS K 7112(1999)の5に記載のA法(水中置換法)に従い測定した。繊維強化熱可塑性樹脂成形体から1cm×1cmの試験片を切り出し、60℃の温度で24時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却したものを試験片とした。浸積液には、エタノールを用いた。
(2)繊維長
成形品の一部を切り出し、電気炉にて空気中500℃で30分間加熱して熱可塑性樹脂を十分に焼却除去して炭素繊維を分離した。分離した炭素繊維を、無作為に少なくとも400本以上抽出し、光学顕微鏡にてその長さを1μm単位まで測定して、次式により重量平均繊維長(Lw)および数平均繊維長(Ln)を求める。
・重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×Wi/100)
・数平均繊維長(Ln)=(ΣLi)/Ntotal
・Li:測定した繊維長さ(i=1、2、3、・・・、n)
・Wi:繊維長さLiの繊維の重量分率(i=1、2、3、・・・、n)
・Ntotal:繊維長さを測定した総本数。
(3)密度
JIS K 7112(1999)の5に記載のA法(水中置換法)に従い測定した。成形品から1cm×1cmの試験片を切り出し、耐熱性ガラス容器に投入し、この容器を80℃の温度で12時間真空乾燥し、吸湿しないように注意しながらデシケータ内で室温まで冷却したものを試験片とした。浸積液には、エタノールを用いた。
(4)分散パラメーター
成形体の縦断面(繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の厚みに平行な方向)を一部を切り出し、研磨を行い観察用試験片を作成した。研磨して得た繊維強化熱可塑性樹脂基材の縦断面を光学顕微鏡にて観察し、無作為に0.1mm×0.1mmの範囲を10カ所選び出し、その範囲内に含まれる炭素繊維の本数を測定した。選び出した10カ所の炭素繊維の本数の平均値をn、標準偏差をσとし、次式により炭素繊維の本数のバラツキ(%)を求める。
炭素繊維の本数のバラツキ=100×σ/n
繊維強化熱可塑性樹脂基材中の炭素繊維の分散性の指標(炭素繊維の分散パラメーター)として、次の4段階で評価した。○○と○であれば炭素繊維の分散性が優れており、合格である。
○○:炭素繊維の本数のバラツキが20%未満である。
○ :炭素繊維の本数のバラツキが20%以上30%未満である。
△ :炭素繊維の本数のバラツキが30%以上35%未満である。
× :炭素繊維の本数のバラツキが35%以上である。
(5)発生ガス量
成形体から長さ76.2mmと幅76.2mmの直方体を切り出し試験片とした。発生ガス量の試験はASTM E662−03に従い試験を行った。発生ガス量測定時のサンプル燃焼時間は20分とした。試験は規定のチャンバーを用い、25kW/mの熱量を有する電熱ヒーターを用いて加熱を行った。発生ガス量は6回以上測定し、測定値の和を測定回数で除した平均値とする。
(6)加熱による重量減少
使用する熱可塑性樹脂の加熱時重量減少率は熱重量分析機(パーキンエルマー社製TGA7)を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
測定雰囲気:窒素(純度:99.99%以上)気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
重量減少率△Wrは(b)の昇温において、100℃時の試料重量を基準として、330℃到達時の試料重量から前述の式(1)を用いて算出した。
(7)ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量および数平均分子量
ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。溶離液は1−クロロナフタレンを用い、示差屈折率検出器にて、カラム温度210℃、検出器温度210℃、流量1.0mL/minの条件で測定を行った。
(8)曲げ特性およびその変動率
成形体の平坦な部分を選び、幅15mm×長さ80mmの大きさの曲げ特性評価用試験板を、任意の方向およびその90度方向それぞれ5枚づつ(合計10枚)切り出した。得られた試験片を、ISO 178法(1993)に従い、試験機としてインストロン社製の“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型を使用し、支点間距離を試験片厚みの16倍に設定し、試験速度5mm/minで曲げ試験を行い、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。測定数n=10の平均値aおよび標準偏差σを用い、曲げ弾性率および曲げ強度の変動率を、次式を用いて求めた。
変動率=100×σ/a
(参考例1)
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体を紡糸し焼成処理を行い、総フィラメント数24000本の炭素繊維連続束Aを得た。この炭素繊維連続束Aの特性は次のとおりであった。
・単位長さ当たりの質量:1.7g/m
・比重:1.8g/cm
・引張強度:5GPa
・引張弾性率:235GPa
・炭素繊維表面の表面比炭素濃度O/C:0.1
・サイジング付着量:1.5wt%。
(参考例2)
ポリエーテルイミド樹脂(GEプラスチック社製、「URTEM1000」(登録商標))を液体窒素中に3分間浸積し、粉砕機(ホソカワミクロン(株)製、“AP−S”(製品名))にて凍結粉砕した。得られた粉砕粒子を14mesh(開孔径1.18mm)のふるいにより分級し、14meshのふるいを通過した粉砕粒子をさらに60mesh(開孔径0.25mm)のふるいにより分級し、60meshのふるい上に残った粉砕粒子を採取し、14〜60meshのポリエーテルイミド樹脂粒子を得た。ポリエーテルイミド樹脂粒子の加熱による重量減少は0.04%であった。
(参考例3)
1000Lのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム82.7kg(700モル)、96%水酸化ナトリウム29.6kg(710モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する)を114.4kg(1156モル)、酢酸ナトリウム17.2kg(210モル)、及びイオン交換水100kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水143kgおよびNMP2.8kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン103kg(703モル)、NMP90kg(910モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水12.6kg(700モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、さらに200kgのNMPで希釈しスラリーを得た。
80℃に加熱したスラリー(B)100kgを25kg/1バッチスケールで、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状ポリフェニレンスルフィド(PPS)と、濾液成分として第2のスラリーを約75kg得た。第2のスラリーのうち、75kgを25kg/1バッチで脱揮装置に仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。この固形物にイオン交換水100kgを加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのフィルターで減圧吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水100kgを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してPPS混合物を0.9kg得た。
得られたPPS混合物を500g分取し、溶剤としてクロロホルム12kgを用いて、浴温約80℃でソックスレー抽出法により3時間PPS混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物210g(PPS混合物に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド骨格を有する化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSおよびGPCによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環状PPSを主要成分とする混合物であり、環状PPSの重量分率は約87%、13%は直鎖状PPSオリゴマーとm=13以上の環状PPS化合物(Mw=2000)であることがわかった。
得られた環状PPS化合物(プレポリマー)を窒素雰囲気で、300℃に温調した電気炉内に設置し60分間加熱した後、取り出し室温まで冷却した。赤外スペクトルより、生成物はPPS樹脂であることがわかった。また、PPS樹脂の重量平均分子量は61700、分散度は1.94であり、加熱時重量減少率△Wrは0.075%であった。
上記要領でPPS樹脂を所定量製造し、シリンダー温度350℃に設定された押出機に投入し、シートダイにて引き出し、幅1000mm、厚み0.3mmのPPS樹脂フィルムを得た。
比較実施例1)
参考例1で得られた炭素繊維連続束Aを、カートリッジカッターで切断し、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。得られたチョップド糸4500gと参考例2で得られたポリエーテルイミド樹脂粒子4500g(Wf=50重量%)を抄紙法により炭素繊維を絡ませウェブとした。ウェブの長さ2000mm、幅1000mmであった。
得られたウェブを、130℃で15分乾燥させて水分を除去させた後、390℃の温度の電気炉中で5分間予熱した後、金型の製品面にTORAYというロゴ入っている航空機用内装材成形用金型内に配置後、80℃で3分間冷却プレスした。金型内で樹脂が十分固化した後に脱型し、重量約7.6kg、長さ約1900mm、幅約900mm、厚み3mmの航空機内装用の繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)を得た。また、上述した測定手法にて、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の状態を測定したところ、ボイド率0%、重量平均繊維長(Lw)は2.8mm、繊維長分布(Lw/Ln)は1.6、密度1.49であった。諸特性を測定したところ、分散パラメーターは8%であり炭素繊維の分散は良好(評価は○○)であった。発生ガス量は35、曲げ弾性率は35GPa、変動率は5%、曲げ強度は500MPa、変動率4%であった。
得られた繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)に、表皮材として、ポリエステル製の意匠フィルムを貼り合わせた後、成形体をパンチング加工にて所定形状に加工し、図3に示すTORAYのロゴ入り航空機用内装材を得た。
(実施例
参考例1で得られた炭素繊維連続束Aを、カートリッジカッターで切断し、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。得られたチョップド糸900gを抄紙法により、長さ1000mm、幅1000mmのウェブとした。ウェブは130℃で15分乾燥させて水分を除去させた。同様の方法でウェブを5枚調整した。
参考例3で得られたPPSフィルムを長さ1000mmにカットしたものを5枚用意して、上記ウェブと交互に積層し、プリフォームとした。(Wf=50重量%)
得られたプリフォームを、300℃の温度の電気炉中で5分間予熱した後、手荷物ロッカー壁用金型内に配置後、130℃で3分間冷却プレスした。金型内で樹脂が十分固化した後に脱型し、図4に示す重量約4kgの手荷物ロッカー壁を模した部材(I)を得た。ボイド率1%、重量平均繊維長(Lw)は3.2mm、繊維長分布(Lw/Ln)は1.5、密度1.54であった。諸特性を測定したところ、分散パラメーターは9%であり炭素繊維の分散は良好(評価は○○)であった。発生ガス量は48、曲げ弾性率は34GPa、変動率は6%、曲げ強度は420MPa、変動率7%であった。
本発明の航空機内装材は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂を使用することで軽量かつ力学特性に優れるだけでなく、有毒ガスの発生が極めて少なく安全面で有用である。
図1は、単繊維状の炭素繊維が熱可塑性樹脂中に分散している、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の厚み方向に平行な断面の模式図である。 図2は、炭素繊維が束の状態で存在する、繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の厚み方向に平行な断面の模式図である。 図3は、本発明の一実施態様に係る航空機用内装材の斜視図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る航空機用手荷物ロッカー壁の斜視図である。
符号の説明
1:炭素繊維の単繊維
2:熱可塑性樹脂
3:窓枠
4:表皮材の非幾何学的な模様

Claims (12)

  1. 重量平均繊維長(Lw)が1〜15mmの範囲である炭素繊維(A)が、熱可塑性樹脂(B)に、重量含有率が25〜80重量%の範囲で、単繊維状に分散された繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)を構成要素として含む航空機用内装材であり、前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178法で測定される曲げ弾性率が20〜50GPaの範囲であり、かつ、ASTM E662で測定される20分燃焼時の発生ガス量が0〜100の範囲内であるとともに、前記熱可塑性樹脂(B)が環式ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させて得たポリアリーレンスルフィド樹脂である、航空機用内装材。
  2. 前記炭素繊維(A)の分散パラメーターが0〜30%の範囲にある、請求項1に記載の航空機用内装材。
  3. 前記炭素繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1〜4の範囲にある、請求項1または2に記載の航空機用内装材。
  4. 前記熱可塑性樹脂(B)の、加熱による重量減少が下記式を満足する、請求項1〜3のいずれかに記載の航空機内装材。
    △Wr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
    (ここで、△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)
  5. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下である、請求項に記載の航空機内装材。
  6. 前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のボイド率が0〜5%の範囲内である、請求項1〜のいずれかに記載の航空機用内装材。
  7. 曲げ弾性率の変動率が0〜20%の範囲内である、請求項1〜のいずれかに記載の航空機用内装材。
  8. 前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)のISO 178法で測定される曲げ強度が200〜1000MPaの範囲である、請求項1〜のいずれかに記載の航空機用内装材。
  9. 曲げ強度の変動率が0〜20%の範囲内である、請求項に記載の航空機用内装材。
  10. 前記繊維強化熱可塑性樹脂部材(I)の密度が1.3〜1.8の範囲である、請求項1〜のいずれかに記載の航空機用内装材。
  11. さらに、連続繊維強化樹脂からなる部材(II)が一体化されてなる、請求項1〜10のいずれかに記載の航空機用内装材。
  12. さらに、表皮材(III)が一体化されてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の航空機用内装材。
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