JP5499548B2 - 炭素繊維不織布、炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体 - Google Patents

炭素繊維不織布、炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体 Download PDF

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Description

本発明は炭素繊維不織布、炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体に係り、詳しくは、面内で等方的に高弾性、高熱伝導、低熱膨張という優れた特性を有する面状の炭素繊維強化樹脂成形体の実現に有効な炭素繊維不織布および炭素繊維強化樹脂シートとこれを用いた炭素繊維強化樹脂成形体に関する。
炭素繊維と樹脂を複合化してなる炭素繊維強化樹脂成形体は、金属材料に匹敵する強度・弾性率を有しながら、金属材料よりも比重が小さいため、部材の軽量化を図ることができ、また発錆の問題もないことから、燃費の低減を目的とした航空機や自動車への採用が着実に増加している。
なかでもピッチ系炭素繊維を使用した炭素繊維強化樹脂成形体は、ピッチ系炭素繊維に特有の超高弾性、高熱伝導、低熱膨張という利点を活かして、例えば、液晶ディスプレイ製造工程において大型のガラス基板を搬送するロボットハンドや、製紙工程やフィルム製造工程で使用されるシャフトロール等に適用され、部材の長尺化や、軽量化による高速化に寄与している。
しかしながら、炭素繊維強化樹脂成形体は、炭素繊維の配向している方向とそれに直交な方向とでは弾性率や、熱伝導性、熱膨張性等の特性が大きく異なる異方性の高い材料であるため、使いこなしが非常に難しく、限られた一部の設計者にしか扱えないことが、その普及を妨げる一因となっている。
また、上述したロボットハンドやシャフトロールのような、細長い構造体で長さ方向に高い特性を要求される部材の場合には、その長さ方向に炭素繊維を配向させるように設計・製造することで、炭素繊維の優れた特性を有効に発揮させることができるが、パネルのような面状の部材の場合は、その異方性が不都合である場合が多い。即ち、面状の部材においては、その面内のどの方向でも弾性率や熱伝導率などが同等である、つまりは等方性であることが望まれる。
炭素繊維強化樹脂で等方性の面状成形体を製造する方法としては、これまで以下のような様々な手法が提案されているが、いずれもそれぞれに欠点があり、普及には至っていないのが現状である。
(1) 一方向に引き揃えられた長繊維または連続繊維に樹脂を含浸したシートを作成し、複数枚のシートを、層毎にシートの配向角度(繊維の延在方向)を変えて、全体として各方向に均等に配向するように積層して加圧成形する。
(2) 各種の方向に炭素繊維を均等に配した織布を作成し、この織布に樹脂を含浸し、その複数枚を積層して加圧成形する。
(3) 短繊維を面内でランダムに分散させたシートを作成し、これに樹脂を含浸させたものを複数枚積層して加圧成形する(例えば特許文献1)。
(4) 短繊維を樹脂と混練してペレットを作成し、このペレットを射出成形する。
上記(1),(2)の方法は、複数枚の樹脂含浸シートを各方向に均等に配向するように積層する必要があることから、必要な積層枚数が多く、結果として厚さの厚いものしか成形することができず、様々な厚さの要求に対応できない。また、成形体の歪みや反りを防ぐために、厚さ方向の中央面部分に対して厚さ方向で対称となるように積層されるため、例えば、得られた成形体の一方の面の表層の一部を加工研削すると、その対称性が崩れて歪みや反りが発生してしまう。さらには、長繊維または連続繊維が一方向に引き揃えられたものの集合体であるため、複雑な凹凸型形状への追従性が悪く、立体的な曲面形状の成形は難しい。加えて、長繊維や連続繊維をさらに加工して原料シートを製作するために、コストが高くなってしまうという問題もある。
上記(3),(4)の方法では、このような問題は解消できるものの、繊維長が短く、シート化またはペレット化プロセスで繊維が損傷を受けてさらに繊維長が短くなってしまうことから、十分な補強効果を発揮できず、金属材料並みの特性を発現するまでには至っていない。特に、高弾性・高熱伝導性の炭素繊維ほど、脆さが増して折れやすくなり、その効果を発揮し難いという二律背反の構図があり、その取扱性は困難を極める。ただし、(3)の方法は(4)の方法よりは繊維長を長く保持できることから、より高い特性を発現できると考えられる(例えば、特許文献1)。
特開平3−106619号公報
本発明は、上記従来の実状に鑑みて優れたものであって、金属材料と比べて軽量であり、面内で等方的に高弾性、高熱伝導、低熱膨張といった優れた特性を有し、金属材料の代替材料として発錆の問題を解決すると共に、大幅な軽量化を達成することが可能な炭素繊維強化樹脂成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高弾性・高熱伝導性の炭素繊維を用い、この炭素短繊維を繊維が折れないように二次元ランダムに分散させた不織布とし、これに樹脂を複合化することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 繊維長10〜30mmのピッチ系炭素繊維の短繊維を湿式抄紙してなり、該炭素繊維の短繊維が二次元ランダムに分散している炭素短繊維のみからなる不織布であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上900GPa以下で、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上600W/mK以下であり、かつ、該不織布を構成する炭素繊維のうち、繊維長が5〜30mmのものの重量割合が60wt%以上であることを特徴とする炭素繊維不織布。
[2] 該炭素繊維が、コールタール・ピッチおよび/または石油タール・ピッチを原料とするものであることを特徴とする[1]に記載の炭素繊維不織布。
[3] 該炭素繊維不織布を用いた炭素繊維強化樹脂成形体について、曲げ弾性率、熱伝導率、及び線膨張係数を測定した場合、面内方向(この面内方向とは、成形体に含まれる不織布の不織布面方向である。)のどの方向で測定しても、その測定値の方向別の平均値の差が15%以内である炭素繊維強化樹脂成形体を得ることができることを特徴とする[1]又は[2]に記載の炭素繊維不織布。
] [1]ないし[]のいずれかに記載の炭素繊維不織布に樹脂を複合化させてなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂シート。
] 該炭素繊維不織布に樹脂の融液または溶液を含浸させてなる[]に記載の炭素繊維強化樹脂シート。
] [1]ないし[]のいずれかに記載の炭素繊維不織布と樹脂フィルムとを積層し、加熱加圧成形してなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体。
] [又は5]に記載の炭素繊維強化樹脂シートまたは該炭素繊維強化樹脂シートを複数枚積層してなる積層体を加熱加圧成形してなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体。
] 嵩密度が1.0g/cm以上1.8g/cm以下で、面内方向の特性が等方性であり、面内方向の曲げ弾性率が40GPa以上100GPa以下、かつ、面内方向の熱伝導率が20W/mK以上100W/mK以下であることを特徴とする[又は7]に記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
] 面内方向の線膨張係数の絶対値が1×10−7/℃以上3×10−6/℃以下であることを特徴とする[]ないし[]のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
10] 炭素繊維の含有率が15〜75wt%で、樹脂の含有率が85〜25wt%であることを特徴とする[]ないし[]のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
本発明の炭素繊維不織布は、所定の長さを有する、高弾性・高熱伝導性の炭素短繊維が二次元ランダムに分散してなるため、面内で等方的に高弾性、高熱伝導性を示す。このため、この炭素繊維不織布に樹脂を複合化させてなる本発明の炭素繊維強化樹脂シート、更には、この炭素繊維不織布や炭素繊維強化樹脂シートを加熱加圧成形して得られる本発明の炭素繊維強化樹脂成形体は、軽量でありながら、面内で等方的に高弾性、高熱伝導、低熱膨張という優れた特性を有する。また、炭素繊維不織布自体が面内で等方的に優れた特性を有するため、炭素繊維強化樹脂成形体の製造に当たり、炭素繊維不織布や炭素繊維強化樹脂シートの積層枚数に制約を受けることがなく、また、歪や反りの問題もない。
このような本発明の炭素繊維強化樹脂成形体は、従来、金属材料が使われていた分野を初めとして各種の幅広い用途に適用可能であり、金属材料の代替材料として、部材の大幅な軽量化を図ると共に、発錆等の問題を解消することができる。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体は、例えば、自動車の外板などに適用することで、燃費の改善に寄与できる。あるいは、モバイルパソコンやデジタルビデオカメラ、携帯電話などの筐体に適用することで、その可搬性をさらに高めることができる。また、大型フラットパネルディスプレイの筐体に適用することで、軽量化と放熱性の問題を解消でき、一般の家庭への大型壁掛けテレビの導入に寄与し得る。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本発明は、
・炭素繊維不織布
・炭素繊維強化樹脂シート
・炭素繊維強化樹脂成形体
の3つの態様を含むものであるが、各態様については以下に定義する。
・炭素繊維不織布:樹脂が炭素繊維の繊維間に含浸・充填されておらず、炭素繊維がそれぞれ独立しているもの(未複合化)。
この炭素繊維不織布には、炭素繊維と共に、樹脂繊維や樹脂粉末を混抄したものも含まれるが、この場合においても、各繊維及び樹脂は単なるからみ合いで一体化しており、それぞれ独立している。
・炭素繊維強化樹脂シート:樹脂が上記炭素繊維不織布の繊維間に含浸・充填されて複合化されている、シート状の成形基材。
従って、炭素繊維強化樹脂シートは、一般に、炭素繊維不織布に樹脂の溶液又は融液を含浸させて得られるが、炭素繊維と共に樹脂繊維や樹脂粉末を混抄した炭素繊維不織布を加熱加圧しても、炭素繊維間が樹脂で充填されて複合化されることにより炭素繊維強化樹脂シートとなる。
・炭素繊維強化樹脂成形体:樹脂が炭素繊維の繊維間に含浸・充填されて複合化されて、所望の製品形状・寸法に成形されたもの。
{炭素繊維}
本発明の炭素繊維不織布は、特定の物性の炭素短繊維が二次元ランダムに分散したものである。
まず、このような本発明の炭素繊維不織布に含まれる炭素繊維について説明する。
本発明において、炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維を用いる。即ち、炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できるが、市販のPAN系炭素繊維の引張弾性率は一般的なグレードでは230〜400GPa程度にとどまる。また、熱伝導率は標準的なグレードで10W/mKよりも小さく、高品位なグレードでも100W/mKを下回る。これに対して、ピッチ系炭素繊維は一般にPAN系炭素繊維に比べて高弾性率、高熱伝導率を達成しやすい。ピッチ系炭素繊維は、原料ピッチを溶融紡糸してピッチ繊維を得、次いで不融化、炭化或いは更に黒鉛化することによって得られる。
ピッチ系炭素繊維の炭素質原料としては、配向しやすい分子種が形成されており、光学的には異方性の炭素繊維を与えるようなものであれば特に制限はない。例えば、石炭系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、石油系の重質油、タール、ピッチ、または、ナフタレンやアントラセンの触媒反応による重合反応生成物等が挙げられる。これらの炭素質原料には、フリーカーボン、未溶解石炭、灰分、窒素分、硫黄分、触媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等の周知の方法であらかじめ除去しておくことが望ましい。
また、前記炭素質原料を、例えば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出するといった方法、あるいは、水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水添処理するといった方法で予備処理を行っておいても良い。
本発明で用いる炭素繊維の繊維径は3〜20μm、特に5〜12μmであることが好ましい。炭素繊維の繊維径が細過ぎると、取り扱い性に劣り、また、一般に極細の炭素繊維は高コストであるため、製品コストを押し上げる原因となる。炭素繊維の繊維径が太過ぎると、繊維強度が低下し、折れ易くなるため、好ましくない。
また、本発明で用いる炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率は400GPa以上、好ましくは440GPa以上、例えば500〜900GPaで、また、繊維軸方向の熱伝導率は、60W/mK以上、好ましくは110W/mK以上、例えば120〜600W/mKである。
このように、それ自体、引張弾性率および熱伝導率の高い炭素繊維を用いることにより、得られる炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体の曲げ弾性率および熱伝導率を高くすることができる。
炭素繊維は黒鉛化処理することにより、引張弾性率や熱伝導率が向上することが知られており、従って、本発明に係る炭素繊維不織布には黒鉛化炭素繊維を用いてもよく、また、黒鉛化していない低弾性率・低熱伝導率の炭素繊維を不織布とした後に、樹脂と複合化する前の段階で黒鉛化処理して、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率や熱伝導率を高めるようにしてもよい。
なお、ここで、炭素繊維の繊維径は、炭素繊維の顕微鏡観察またはレーザー計測器により20〜30個の繊維径を測定し、その測定値の平均値で求められる。また、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率は、炭素繊維とエポキシ樹脂の一方向材を作製し、その繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率を測定した値を、複合則に則って、炭素繊維の体積含有率で割り返して、繊維単体の物性としたものである。さらに具体的には、引張弾性率については、JIS K7073に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、JIS R1611に準拠し、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−3000」で測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
{炭素繊維不織布の製造方法}
次に、本発明の炭素繊維不織布の製造方法について説明する。
炭素繊維不織布は、前述した炭素繊維を所定の長さに切断して短繊維状とし、それを面状にランダムに分散させてシート状とすることにより製造することができる。
炭素短繊維から不織布を製造する方法としては、湿式法による作製方法として、繊維を溶媒中に分散させ、製紙工業で使われるビーター、パルパーなどの装置を使用して解繊させた後に網上に抄き上げ、付着した溶媒を乾燥除去してシート化する所謂湿式抄紙法がある。
なお、高弾性の炭素繊維から不織布を製造する場合、繊維にダメージを与えにくく、繊維の折れを少なくできる、湿式法を採用する。
不織布の製造に使用する炭素短繊維の繊維長さとしては、5〜50mm、特に10〜30mmであることが好ましい。炭素短繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなり不織布を形成し難くなり、また得られる成形体の曲げ弾性率や熱伝導率を十分に高めることができない恐れがある。一方、炭素短繊維の長さが長過ぎると、不織布の作製および樹脂との複合化が困難になる恐れがある。
湿式抄紙法による不織布の製造において、炭素短繊維を均一に分散させるための溶媒としては、好ましくは水、あるいはアセトン、炭素数1〜5のアルコール、アントラセン油等が用いられるが、その他の有機溶媒を用いてもよい。また、このような溶媒中にフェノール樹脂、フラン樹脂あるいはピッチ等を分散もしくは溶解させておくと、炭素繊維同士が接着された状態となり、次工程での取り扱いをより容易とするので好ましい。更に、繊維素グリコール酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース等の増粘剤を溶媒中に加えておくと、その効果が更に増大するので好ましい。
上記の方法で不織布を作製する際には、炭素短繊維単独を用いてもよく、後述の炭素繊維と複合化する樹脂からなる繊維や粉体などと混合してシート化してもよい。その際の樹脂の混合割合としては、得られる炭素繊維不織布に対して更に樹脂を複合化するか否かによっても異なり、一概には言えないが、最終的に得られる成形体の特性発現を考慮して、後述の本発明の炭素繊維強化樹脂成形体における樹脂の含有割合の上限値以下とすることが好ましく、例えば、炭素短繊維と樹脂との合計に対して85wt%以下、例えば30〜55wt%程度である。
湿式抄紙法による不織布の製造において、炭素短繊維と共に後述の樹脂の短繊維を湿式混抄して炭素繊維/樹脂繊維含有不織布とする場合、用いる樹脂繊維としては、平均繊維径0.5〜15μm、特に1〜18μmで、長さ1〜50mm程度のものを用いることが好ましい。
上記範囲よりも樹脂繊維の繊維径が細過ぎると取り扱い性が悪くなり、また、コスト高となる。また、太過ぎると、不織布段階での均質度が劣り、樹脂を溶融させて炭素繊維の間に含浸・充填させることが困難になる。また、樹脂繊維の繊維長さが長過ぎると、不織布の作製および炭素繊維との複合化が困難になる恐れがあり、短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなり不織布を形成し難くなる。
また、炭素短繊維と樹脂粉体とを湿式混抄する場合、用いる樹脂粉体としては、重量平均の平均粒径として、0.1〜100μm、特に0.5〜20μm程度のものを用いることが好ましい。樹脂粉体の平均粒径が上記範囲よりも大き過ぎると不織布段階での均質度が劣り、樹脂を溶融させて炭素繊維の間に含浸・充填させることが困難になる。また、小さ過ぎると、取り扱い性が悪くなり、また、コスト高となる。
さらに、上記とは異なる不織布の作製方法として、炭素繊維の原料繊維を紡糸する段階で、連続繊維を形成するのではなく、スパンボンド法またはメルトブローン法などにより、直接的に原料短繊維の不織布を形成し、それを不融化、炭化して炭素繊維不織布とするか、更に必要に応じて黒鉛化して黒鉛化炭素繊維不織布とする方法が挙げられる。
{目付}
本発明の炭素繊維不織布における炭素短繊維の目付、すなわち単位面積あたりの炭素短繊維の重量(Fiber Areal Weight、以下FAWと記す)は20〜500g/m、特に100〜250g/mであることが好ましい。FAWの小さいものは、所望の厚さの成形体を得るためには、後述する成形工程で不織布および/または炭素繊維強化樹脂シートの積層枚数を多くする必要があり、製造工程が煩雑となる。逆にFAWの大きいものは、樹脂の含浸性が悪く、樹脂の複合化が困難となる。
{炭素短繊維の長さ}
炭素繊維不織布にあっては、不織布を作製する過程で炭素繊維が損傷して折れてしまうことが多いため、不織布の作成に用いた炭素短繊維の長さがそのまま保持されない場合が多い。このため、最終的に得られる成形体で、用いた炭素短繊維が有する優れた特性を十分に発現させるためには、不織布の状態で、それに含まれる炭素短繊維のうち、繊維長が5〜50mmのものの重量割合が60wt%以上、好ましくは75wt%以上となるように、不織布の製造工程における操作を工夫することが重要である。
本発明においては、特に、5〜50mm程度に切断した炭素短繊維を用いて、湿式抄紙法により不織布を製造することにより、このような炭素繊維不織布を確実に製造することができ、好ましい。
前述の如く、炭素短繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなり不織布を形成し難くなり、また得られる成形体の曲げ弾性率や熱伝導率を十分に高めることができない恐れがある。一方、炭素短繊維の長さが長過ぎると、不織布の作製および樹脂との複合化が困難になる恐れがある。繊維長5〜50mmの炭素短繊維であれば、良好な不織布を形成することができ、また、樹脂との複合化も容易であり、曲げ弾性率や熱伝導率に優れた成形体を得ることができる。
炭素繊維不織布を構成する炭素短繊維のうち、このような好ましい繊維長である繊維長が5〜50mmのものの重量割合が60wt%未満では、繊維長5〜50mmのものを用いることによる上記効果を十分に得ることができない。
なお、不織布中で特定の繊維長を有する炭素繊維の重量割合の評価法としては、次のような方法がある。
不織布とした後の炭素繊維を、炭素繊維に対するぬれ性の高い、アセトン、メチルエチルケトン、エタノールなどの分散媒が、不織布に対して10倍以上の体積を有する中に浸漬し、容器ごとゆっくり揺動させて、炭素繊維を十分に分散させた後、目開きが5mm間隔のメッシュで濾過する。不織布の段階で既に樹脂と複合化されている場合は、炭素繊維にダメージを与えて繊維を折ることのないよう十分に注意しながら、溶剤等で樹脂のみを溶解除去した後、上記のような分散、濾過を行なう。炭素繊維全体の重量に対して、メッシュ上に残った炭素繊維の割合をもって、繊維長5〜50mmの炭素繊維割合とする。不織布とする前の、原料の炭素繊維の繊維長の上限が50mm以下であることによって、不織布中の炭素繊維の長さの上限は50mmと規定する。
{樹脂}
次に、本発明において、炭素繊維と複合化する樹脂について説明する。
本発明において、炭素繊維と複合化する樹脂については特に制限はなく、各種の硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロリレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。上記、熱硬化性樹脂の熱硬化剤の代りに紫外線硬化剤を配合した紫外線硬化樹脂であってもよい。
これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの樹脂には、難燃剤、カップリング剤、導電性付与剤、無機フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、各種染顔料等、通常、樹脂に配合される各種の添加剤を配合してもよい。
{炭素繊維と樹脂の複合化}
次に、本発明において炭素繊維と樹脂とを複合化する様々な方法について説明する。
本発明における炭素繊維と樹脂との複合化方法としては、例えば、前述したように、炭素繊維不織布を製造する際に、炭素短繊維と同時に、繊維状または粉体状の樹脂を添加して、2種類以上の材料が混抄された炭素短繊維/樹脂含有不織布を製造し、これを加熱加圧する方法がある。また、他の方法として、炭素繊維不織布に樹脂の溶液または融液を含浸させ、必要に応じて乾燥してシート状のプリプレグとする方法もある。さらに別の方法として、後述する成形工程において、炭素繊維不織布と樹脂製フィルムとを交互に積層した後に加熱加圧成形する方法が挙げられる。なお、いずれの方法においても、熱硬化性樹脂の場合には、未硬化段階の材料を使用して複合化を行う。
{炭素繊維強化樹脂成形体の成形方法}
次に、上述のような本発明の炭素繊維不織布を用いた本発明の炭素繊維強化樹脂成形体について説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の成形方法としては、次のような方法が挙げられる。
(1) 炭素短繊維のみからなる炭素繊維不織布および/または炭素短繊維/樹脂含有不織布に、樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂シートを製造し、この炭素繊維強化樹脂シートの1枚またはその複数枚の積層シートを加熱加圧成形する。
(2) 炭素短繊維/樹脂含有不織布の1枚またはその複数枚の積層シートを加熱加圧成形して炭素繊維強化樹脂シートを製造し、この炭素繊維強化樹脂シートの1枚またはその複数枚の積層シートを加熱加圧成形する。
(3) 炭素短繊維のみからなる炭素繊維不織布および/または炭素短繊維/樹脂含有不織布と樹脂フィルムとの必要枚数を交互に積層し、積層シートを加熱加圧成形する。この場合、樹脂フィルムに替えて、上記(1),(2)の炭素繊維強化樹脂シートを用いることもでき、樹脂フィルムと炭素繊維強化樹脂シートとを併用することもできる。
(4) 炭素短繊維/樹脂含有不織布の1枚またはその複数枚の積層シートを加熱加圧成形する。この場合、炭素短繊維のみからなる炭素繊維不織布や、樹脂フィルム、或いは上記(1),(2)の炭素繊維強化樹脂シートを併用して積層することも可能である。
(1)〜(4)のいずれの方法においても、最終的に得られる炭素繊維強化樹脂成形体の炭素繊維と樹脂の含有率が好ましくは後述の範囲となるように、用いる材料の組み合わせや、積層枚数を適宜調整すればよい。
なお、上記の炭素繊維強化樹脂シートとしては、この炭素繊維強化樹脂シートと積層する炭素繊維不織布や樹脂フィルムの有無などによってもその炭素繊維含有率は異なるが、通常、炭素繊維含有率10〜60vol%、特に30〜55vol%、重量割合として15〜75wt%、特に45〜70wt%、樹脂含有率が25〜85wt%、特に30〜55wt%で、その厚さが0.1〜1mm程度のものが好ましく用いられる。
また、樹脂フィルムとしては、目付50〜300g/m程度のものが好ましく用いられる。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の成形方法の一例としては、例えば、上述の炭素繊維強化樹脂シート(プリプレグ)を、成形体に所望の形状・寸法に合わせて必要に応じて裁断した後、所望の成形体厚さに応じて複数枚を積層し、樹脂に適した方法に従って成形する方法が挙げられる。この成形方法としては、例えば、樹脂がエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の場合は、プリプレグを熱盤で加圧しながら所要温度まで加熱することで硬化させる方法が挙げられる。また、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の場合は、樹脂が軟化する温度までプリプレグを予め加熱した後に、加圧しながら軟化点以下の温度まで冷却することで固化させる方法が挙げられる。
{炭素繊維/樹脂含有率}
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の炭素繊維および樹脂の好適な含有率は、以下の通りである。
炭素繊維含有率としては、10〜60vol%、特に30〜55vol%、重量割合として15〜75wt%、特に45〜70wt%であることが好ましい。この範囲よりも炭素繊維含有率が少ないと得られる成形体の物性が低下し、所望の熱伝導率および曲げ弾性率を達成し得ない。この範囲よりも炭素繊維含有率が多いと成形時の加圧力を大きくする必要が生じ、実用的ではない。なお、樹脂含有率は、重量割合として25〜85wt%、特に30〜55wt%であることが好ましい。
{特性}
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体は、好ましくは、嵩密度が1.8g/cm以下であり、かつ、面内方向の特性が等方性であり、面内方向の曲げ弾性率が40GPa以上、面内方向の熱伝導率が20W/mK以上、面内方向の線膨張係数が3×10−6/℃以下である。
ここで、成形体の面内方向(この面内方向とは、成形体に含まれる不織布の不織布面方向である。)の特性が等方性であるとは、当該成形体について、曲げ弾性率、熱伝導率、線膨張係数を測定した場合、面内方向のどの方向で測定しても、その測定値の方向別の平均値の差が15%以内であることを言う。この等方性を正確に把握するためには、成形体の面内方向について全方向360°に対して、各特性値を評価する必要があるが、一般的には、面内方向の一方向についての測定値と、この方向に対して直交する方向についての測定値とを比較すれば、おおまかな等方性を評価することができる。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体がこのように面内方向の特性が等方性であることは、炭素短繊維が二次元ランダムに分散した本発明の炭素繊維不織布を用いたことによる。
なお、成形体の嵩密度は、成形体の寸法及び重量を測定し、測定された寸法から体積を計算した後、重量の測定値を体積の計算値で割ることにより算出され、成形体の面内方向の曲げ弾性率、熱伝導率、線膨張係数は、いずれも後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の成形体の嵩密度が1.8g/cmを超えると、本発明で目的とする、金属材料の代替材料として軽量化を十分に図ることができない。従って、成形体の嵩密度は1.8g/cm以下、好ましくは1.7g/cm以下である。成形体の嵩密度の下限については特に規定しないが、前述の好適な樹脂含有率を満たす上で、通常1.0g/cm以上である。
本発明の成形体の面内方向の曲げ弾性率が40GPa未満では、本発明で目的とする、金属材料の代替には不適切である。従って、成形体の曲げ弾性率は40GPa以上、好ましくは50GPa以上である。曲げ弾性率の上限については特に規定しないが、曲げ弾性率向上のためのコスト等を勘案した場合、通常100GPa程度である。
本発明の成形体の面内方向の熱伝導率が20W/mK未満では、本発明で目的とする、金属材料の代替には不適切である。従って、成形体の熱伝導率は20W/mK以上、好ましくは30W/mK以上である。熱伝導率の上限については特に規定しないが、熱伝導率向上のためのコスト等を勘案した場合、通常100W/mK程度である。
本発明の成形体の面内方向の線膨張係数は、金属材料で標準的な1×10−5/℃前後を下回れば、金属材料よりも寸法安定性が向上し、金属材料の代替に値するものであるが、本発明の成形体では、線膨張係数を更に小さくすることも可能であり、絶対値として5×10−6/℃以下、さらには3×10−6/℃以下のものも実現することができる。線膨張係数の下限については特に規定しないが、線膨張係数低減のためのコスト等を勘案した場合、絶対値として1×10−7/℃程度である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
以下において、得られた炭素繊維強化樹脂成形体の物性の評価は、以下の方法により行なった。
<嵩密度>
厚さ2mmの成形板の長さ、幅、厚さをノギスによって測定し、それらを掛け合わせて体積を計算した。また、天秤により成形板の重量を測定した。そして、重量の測定値を体積の計算値で割ることにより、嵩密度を算出した。
<繊維長5〜50mmの炭素繊維の割合>
成形前の不織布の段階で、該不織布をサンプリングし、重量を測定してから、不織布に対して10倍以上の体積を有するアセトン中に浸漬し、容器ごとゆっくり揺動させて、炭素繊維を十分に分散させた後、目開きが5mm間隔のメッシュで濾過・乾燥し、メッシュ上に残った炭素繊維の重量を測定した。そして、炭素繊維全体の重量に対するメッシュ上に残った炭素繊維の割合を求めた。
<曲げ弾性率の測定>
厚さ2mmの成形板から、曲げ弾性率を測定する方向を試験片の長さ方向とした、長さ100mm、幅15mm、厚さ2mmの短冊状試験片を切り出し、JIS K7074に準拠して、万能試験機により、支点間距離を80mmとした3点曲げ試験により、曲げ弾性率の測定を行った。
成形板からは、面内の直交する2方向が測定方向となるように互いに直交する方向に2つの試験片を切り出し、それぞれの試験片について曲げ弾性率の測定を行って、面内の直交する2方向(X方向とY方向)についての曲げ弾性率の測定値を得た。
<熱伝導率の測定>
厚さ2mmの成形板を5枚貼り合せて接着して10mmの厚さの板を得た。そして、その板から、熱伝導率を測定する方向を試験片の厚さ方向とした、直径10mm、厚さ2mmの円盤状試験片を切り出し(即ち、接着した板の厚さ方向が試験片の直径となる。)、JIS R1611に準拠して、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−3000」により熱伝導率の測定を行った。
試験片は、接着した板から、その厚さ方向において、直交する2方向に試験片を切り出し、それぞれの試験片について熱伝導率の測定を行って、面内の直行する2方向(X方向とY方向)についての熱伝導率の測定値を得た。
<線膨張係数の測定>
厚さ2mmの成形板から、線膨張係数を測定する方向を試験片の長さ方向とした、長さ20mm、幅4mm、厚さ2mmの短冊状試験片を切り出し、JIS K7197に準拠して、TMA法により、昇温速度2℃/分で−30℃または常温から90℃までの温度範囲で、線膨張係数の測定を行った。
成形板からは、面内の直交する2方向が測定方向となるように互いに直交する方向に2つの試験片を切り出し、それぞれの試験片について線膨張係数の測定を行って、面内の直交する2方向(X方向とY方向)についての線膨張係数の測定値を得た。
[実施例1]
繊維長さ方向の引張弾性率640GPa、熱伝導率140W/mK、平均繊維径11μmのピッチ系炭素繊維を長さ30mmに切断加工して得られた短繊維(三菱樹脂(株)製ダイアリード「K6371T」)を使用し、これを水に分散させて、製紙用の湿式解繊装置によって、FAW250g/mの炭素繊維不織布を作製した。この不織布に、未硬化のエポキシ樹脂(三菱樹脂(株)製「C333E」)をメチルエチルケトン溶媒に溶かして含浸させ、乾燥して溶剤を除去して樹脂含有率45wt%の炭素繊維強化樹脂シートを得た。これを8枚積層し、125℃に加熱した熱盤プレスで挟み込み、60kg/cmの圧力をかけて20分間保持し、エポキシ樹脂を硬化させて、厚さ2mm、炭素繊維含有率45vol%、樹脂含有率45wt%の炭素繊維強化樹脂成形体を得た。
この炭素繊維強化樹脂成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様にして作製した炭素繊維不織布8枚と、140g/mのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム9枚とを交互に積層し、熱盤プレスで挟み込んだ後、290℃まで加熱してPETを溶融させ、60kg/cmの圧力をかけてPETを炭素繊維不織布内に含浸させた後に、そのまま室温まで冷却してPETを固化させ、厚さ2mm、炭素繊維含有率50vol%、樹脂含有率40wt%の炭素繊維強化樹脂成形体を得た。
この炭素繊維強化樹脂成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で用いたものと同様の炭素短繊維と、平均繊維径3μm、繊維長さ5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維とを、重量比が55:45となるように秤量して混合し、これを水に分散させて、実施例1で用いたと同様の製紙用の湿式解繊装置により、炭素繊維のFAW250g/mの炭素繊維/PET繊維混抄不織布を作製した。これを8枚積層して、熱盤プレスに挟み込み、実施例2と同じ条件で加熱加圧して、厚さ2mm、炭素繊維含有率45vol%、樹脂含有率45wt%の炭素繊維強化樹脂成形体を得た。
この炭素繊維強化樹脂成形体の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
ピッチ系炭素繊維の代りに、繊維長さ方向の引張弾性率230GPa、熱伝導率6W/mK、平均繊維径7μmのPAN系炭素連続繊維(三菱レイヨン(株)製パイロフィル「TR50S」)を用いて実施例1におけると同様にして作成した炭素繊維不織布を用いたこと以外は、実施例2と同様にして厚さ2mm、炭素繊維含有率50vol%、樹脂含有率40wt%の炭素繊維強化樹脂成形体を得た。
この炭素繊維強化樹脂成形体の評価結果を表1に示す。この成形体では、目標とする曲げ弾性率、熱伝導率は達成できなかった。
[比較例2]
実施例1で用いたと同様のピッチ系炭素繊維を使用し、カード式の乾式解繊装置によって炭素繊維不織布の作製を試みた。しかし、解繊過程での炭素繊維の折れが激しく、シートとして取り扱い可能な不織布を得ることはできなかった。
Figure 0005499548
表1より、本発明の炭素繊維強化樹脂成形体は、面内方向の熱伝導率、曲げ弾性率および線膨張係数が等方的に良好で、各種用途に有用であることが分かる。

Claims (10)

  1. 繊維長10〜30mmのピッチ系炭素繊維の短繊維を湿式抄紙してなり、該炭素繊維の短繊維が二次元ランダムに分散している炭素短繊維のみからなる不織布であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上900GPa以下で、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上600W/mK以下であり、かつ、該不織布を構成する炭素繊維のうち、繊維長が5〜30mmのものの重量割合が60wt%以上であることを特徴とする炭素繊維不織布。
  2. 該炭素繊維が、コールタール・ピッチおよび/または石油タール・ピッチを原料とするものであることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維不織布。
  3. 該炭素繊維不織布を用いた炭素繊維強化樹脂成形体について、曲げ弾性率、熱伝導率、及び線膨張係数を測定した場合、面内方向(この面内方向とは、成形体に含まれる不織布の不織布面方向である。)のどの方向で測定しても、その測定値の方向別の平均値の差が15%以内である炭素繊維強化樹脂成形体を得ることができることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維不織布。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭素繊維不織布に樹脂を複合化させてなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂シート。
  5. 該炭素繊維不織布に樹脂の融液または溶液を含浸させてなる請求項4に記載の炭素繊維強化樹脂シート。
  6. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭素繊維不織布と樹脂フィルムとを積層し、加熱加圧成形してなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体。
  7. 請求項4又は5に記載の炭素繊維強化樹脂シートまたは該炭素繊維強化樹脂シートを複数枚積層してなる積層体を加熱加圧成形してなることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体。
  8. 嵩密度が1.0g/cm以上1.8g/cm以下で、面内方向の特性が等方性であり、面内方向の曲げ弾性率が40GPa以上100GPa以下、かつ、面内方向の熱伝導率が20W/mK以上100W/mK以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
  9. 面内方向の線膨張係数の絶対値が1×10−7/℃以上3×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
  10. 炭素繊維の含有率が15〜75wt%で、樹脂の含有率が85〜25wt%であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂成形体。
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