JP6686283B2 - 繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートおよびその製造方法 - Google Patents
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[1] 強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有するウェブ層と、熱可塑性樹脂からなり通気度が0cm3/cm2・sを超える樹脂層であって、繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの少なくとも1つの表面に位置する樹脂層と、を含む積層体が加熱処理されて形成されたシートであることを特徴とする、繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[2] 前記ウェブ層は、熱融着性樹脂をさらに含むことを特徴とする、[1]に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[3] 前記樹脂層が不織布であることを特徴とする[1]または[2]に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[4] 前記ウェブ層はエアレイド法で形成されたエアレイドウェブであることを特徴とする[1]から[3]のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[5] 前記樹脂層は、前記エアレイド法において前記エアレイドウェブの搬送に用いられたキャリアシートであることを特徴とする[4]に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[6] 前記ウェブ層を複数含むことを特徴とする[1]から[5]のいずれか1つに記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
[7] [1]から6のいずれか1つに記載の強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの単体または積層体を成形加工して得られた繊維強化熱可塑性プラスチック成形品。
[8] 強化繊維からなる繊維集束体を切断したチョップドファイバーを、空気流および/または機械的シェアによって解繊して解繊チョップドファイバーを得る解繊工程と、前記解繊チョップドファイバーと熱可塑性樹脂と熱融着性樹脂とを混合してウェブ原料を得る混合工程と、前記ウェブ原料からウェブを得るウェブ形成工程と、熱可塑性樹脂からなり通気度が0cm3/cm2・sを超えるシート状物上の前記ウェブを加熱処理して、前記解繊チョップドファイバーおよび前記熱可塑性樹脂を前記熱融着性樹脂によって結着させる結着工程と、
を有する、繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの製造方法。
[9] 前記ウェブ形成工程は、前記ウェブを前記シート状物上に配置することを含むことを特徴とする[8]に記載の製造方法。
本発明の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートは、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有するウェブ層と、熱可塑性樹脂からなり通気度が0cm3/cm2・sを超える樹脂層であってプレシートの少なくとも1つの表面に位置する樹脂層と、を含む積層体が加熱処理されて形成されたシートである。
本発明のプレシートの層構成として、ウェブ層の少なくとも1つの表面に樹脂層が積層された構成が含まれる。また、本発明のプレシートの層構成として、複数のウェブ層の積層体の少なくとも1つの表面に樹脂層が積層された構成が含まれる。複数のウェブ層の層間に樹脂層が配置されていてもよい。
本発明に適用可能な強化繊維としては、炭素繊維(ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系異方性炭素繊維等)、無機繊維(ガラス繊維、バサルト繊維、チタン酸カリウムウィスカ等)、有機繊維(アラミド繊維等)などが挙げられる。
ここで、チョップドファイバーとは、繊維集束体が切断された短繊維のことである。また、繊維集束体とは、数百本から数千本の強化繊維が、水または樹脂等の結束剤によって集束したものである。また、解繊チョップドファイバーとは、チョップドファイバーを解繊することによって得られた多数本のファイバーである。
本発明において、熱可塑性樹脂は、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂となる。
必要に応じて配合されていてもよい本発明における熱融着性樹脂は、プレシート作製時に強化繊維と熱可塑性樹脂とを結着させるバインダ樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂にもなり得る。このように、本発明において、熱可塑性樹脂および熱融着性樹脂はいずれも、繊維強化熱可塑性プラスチックにおけるマトリクス樹脂になり得るが、以下、本明細書中において単に「マトリクス樹脂」というときは、熱可塑性樹脂を指すものとする。
上述の熱可塑性樹脂および熱融着性樹脂は、複合化されて複合体を形成していてもよい。
プレシートが熱融着性樹脂を含まない場合、プレシートにおける、強化繊維の含有質量Aと、マトリクス樹脂となる熱可塑性樹脂の含有質量Bと、の比率A/Bは、例えば10/90〜90/10であることができ、20/80〜80/20であることができる。比率A/Bが前記範囲にあると、プレシートから得られる繊維強化熱可塑性プラスチックの機械的物性を充分に高めることができる。
プレシートの坪量は40〜4000g/m2であることが好ましく、100〜3000g/m2であることがより好ましく、200〜3000g/m2であることがさらに好ましい。プレシートの坪量が前記下限値以上であれば、成形品を製造する際の熱プレス工程において、プレシートの積層枚数を減らすことができ、作業を簡略化できる。一方、プレシートの坪量が前記上限値以下であれば、プレシートを容易に得ることができる。
本発明のプレシートは、少なくとも1つの表面に樹脂層を含む。樹脂層に含有される熱可塑性樹脂の特性に基づき、このプレシートから得た繊維強化熱可塑性プラスチックから、光沢度に優れた良好な面感を有する成形品を得ることができる。
本発明のプレシートの製造方法は、ウェブ層の形成と、樹脂層の形成とを含む。例えば、エアレイド法、湿式抄紙法、スパンレース法、ニードルパンチ法などの知られている不織布の製造方法により、樹脂層を有さないウェブ層のみを得て、得られたウェブ層と別途作製した樹脂層となるべきシート状物とを積層して一体化することにより、プレシートを作製することができる。例えば、エアレイド法によりウェブ層を作製する際に、エアレイド法のキャリアシートを、本発明に係る樹脂層用のシート状物としてもよい。
次に、エアレイド法を用いた実施形態のプレシートの製造方法について詳細に説明する。本実施形態のプレシートの製造方法は、解繊工程と混合工程とウェブ形成工程と結着工程とを有する。各工程について、以下に説明する。
解繊工程は、チョップドファイバーを空気流および/または機械的シェアによって解繊して、解繊チョップドファイバーを得る工程である。
混合工程は、解繊チョップドファイバーと、熱可塑性樹脂と、熱融着性樹脂と、を混合してウェブ原料を得る工程である。必要に応じて添加する難燃剤等の助剤は、この混合工程において添加することができる。
ウェブ形成工程は、ウェブ原料からウェブを形成する工程である。本実施形態ではエアレイド法を採用してエアレイドウェブを得る。ここで、エアレイド法とは、空気流を利用して繊維を3次元的にランダムに堆積させてウェブを形成する方法である。
結着方式は、ケミカルボンド方式、サーマルボンド方式、マルチボンド方式より選択される。いずれの方式を選択しても構わないが、強化繊維との結着性という観点からサーマルボンド方式を使用する場合が多い。サーマルボンド方式による結着工程は、エアレイドウェブを加熱処理して、解繊チョップドファイバー同士を熱融着性樹脂によって結着させる工程である。
<プレシートの製造>
チョップ状のPAN系炭素繊維(繊維径7μm、繊維長6mm)を、旋回流式ジェット気流解繊装置を用いて解繊処理して、解繊チョップドファイバー(CF)を得た。解繊機での処理風速は45m/分であり、装置内に設けたバッフルにより乱流とした。
上記プレシートを20cm×20cmに裁断し、これにより得た裁断片を2枚積層し、20cm×20cm、深さ2mmの開口部を有するステンレス製の金型内に配置した。次いで、前記金型を熱プレス機にセットし、温度をマトリクス樹脂の融点+30℃に設定し、圧力2MPaで3分間予備プレスし、さらに5MPaに加圧して10分間プレス処理した。その後、5MPaで冷却して、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品(第1の成形品)を得た。
エアレイドウェブ部分に関する坪量が1500g/m2になるように繊維混合物の供給量を調整した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートの坪量は1560g/m2であった。
第1のキャリアシートとして、坪量および通気度の異なる6ナイロンスパンボンド不織布(坪量60g/m2、通気度115cm3/cm2・s)を使用した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートの坪量は840g/m2であった。プレシートを積層する際、薄い方のキャリアシートが向き合うように重ねた以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
解繊チョップドファイバー、6ナイロン繊維、および芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PET複合芯鞘繊維)を70/20/10の割合(質量比)で混合して繊維混合物を得た以外は実施例3と同様にして、プレシートを得た。プレシートを積層する際、薄い方のキャリアシートが向き合うように重ねた以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
6ナイロン繊維の代わりにポリカーボネート繊維(繊度3dtex、繊維長5mm、融点150℃)を使用して繊維混合物を得た点、および第1および第2のキャリアシートにポリカーボネートスパンボンド不織布(坪量30g/m2、通気度295cm3/cm2・s)を使用した点以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
6ナイロン繊維の代わりにポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長5mm、融点168℃)を使用して繊維混合物を得た点、および第1および第2のキャリアシートにポリプロピレンスパンボンド不織布(坪量30g/m2、通気度290cm3/cm2・s)を使用した点以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
6ナイロン繊維の代わりにポリエーテルイミド繊維(繊度2.2dtex、繊維長5mm、融点215℃)を使用して繊維混合物を得た点、および第1および第2のキャリアシートにポリエーテルイミドスパンボンド不織布(坪量30g/m2、通気度290cm3/cm2・s)を使用した点以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
炭素繊維の代わりにガラス繊維(繊度1dtex、繊維長5mm)を使用して繊維混合物を得た以外は実施例5と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
炭素繊維の代わりにガラス繊維(繊度1dtex、繊維長5mm)を使用して繊維混合物を得た以外は実施例7と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
炭素繊維の代わりにアラミド繊維(繊度1.7dtex、繊維長5mm)を使用して繊維混合物を得た以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、アラミド繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
実施例1で作製したプレシートを2枚積層する代わりに、実施例1で作製したプレシートと実施例10で作製したプレシートとを各1枚積層した以外は実施例1と同様にして、強化繊維熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
エアレイドウェブ部分に関する坪量が、750g/m2の代わりに300g/m2になるように繊維混合物の供給量を調整した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。また、得られたプレシートを、2枚の代わりに4枚積層してプレス成形した以外は実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
解繊チョップドファイバー、6ナイロン繊維、および芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PET複合芯鞘繊維)を50/40/10の割合(質量比)で混合する代わりに、解繊チョップドファイバーおよびポリプロピレン繊維(繊度2.2dtex、繊維長5mm、融点168℃)を50/50の割合(質量比)で混合して繊維混合物を得た点、および第1および第2のキャリアシートにポリプロピレンスパンボンド不織布(坪量30g/m2、通気度290cm3/cm2・s)使用した点以外は実施例1と同様にして、積層シートを得た。また、得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、温度170℃で熱風処理した以外は実施例1と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
ガラス繊維(繊度1dtex、繊維長5mm)およびポリカーボネート繊維(繊度3dtex、繊維長5mm、融点150℃)を、ガラス繊維およびポリカーボネート繊維が55.6/44.4の割合(質量比)となるように計量し、水中に投入した。水の量は、上記繊維の合計質量に対し200倍となるようにした。すなわち、得られるスラリー中の繊維の濃度が0.5質量%となるようにした。上記繊維の合計質量(100質量部)に対し、分散剤として商品名「エマノーン(登録商標)3199」(花王株式会社製)を1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させたスラリー(第1スラリー)を作製した。
ガラス繊維の代わりにPAN系炭素繊維(繊維径7μm、繊維長6mm)、ポリカーボネート繊維の代わりに6ナイロン繊維(繊度3.3dtex、繊維長4mm、融点225℃)を使用して繊維混合物を得た以外は実施例14と同様にして、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
解繊チョップドファイバー、6ナイロン繊維、および芯鞘型の熱融着性複合繊維(PET/PET複合芯鞘繊維)を、45/45/10の割合(質量比)で空気流により均一に混合して繊維混合物を得た。エアレイドウェブ部分に関する坪量が750g/m2になるように繊維混合物の供給量を調整し、第1キャリアシートと、繊維混合物堆積物と、第2キャリアシートと、がこの順で積層されたエアレイドウェブ含有積層シートを得た。得られた積層シートを、熱風循環コンベアオーブン方式のボックスタイプドライヤに通し、温度140℃で熱風処理した後、第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートを剥離して、プレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
第1のキャリアシートおよび第2のキャリアシートとして、ポリプロピレンスパンボンド不織布の代わりにポリプロピレンフィルム(坪量30g/m2、通気度0cm3/cm2・s)を使用した以外は実施例6と同様にして、坪量810g/m2のプレシートを得た。得られたプレシートを用い、実施例1と同様にして、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック成形品を作製した。
得られた成形品について、下記の方法により曲げ弾性率および曲げ強度、光沢度を測定し、成形性を評価した。測定および評価結果を表1に示す。
ダイヤモンドカッターを用いて、得られた第1の成形品を幅15mm、長さ100mmに裁断して、試験片を作製した。その試験片の厚みを測定した後、JIS K7074に記載の「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に従い、3点曲げ試験を、速度5mm/分、支点間距離80mmの条件で行って、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。
JIS Z8741に記載の光沢度の測定方法に従い、75°光沢度を測定した。
お椀型の型を用いてプレスした第2の成形品の表面の亀裂の有無を確認した。
評価
○:亀裂などが無く、滑らかな表面
×:亀裂が入り、凹凸のある表面
ウェブ層の表裏面に熱可塑性樹脂からなる不織布が積層された実施例1から15のプレシートから得た成形品は、成形性に優れており、光沢度も高かった。これに対し、熱可塑性樹脂からなる不織布が表裏面に積層されてない、ウェブ層からなる比較例1のプレシートは、光沢度が低かった。また、ウェブ層の表裏面に熱可塑性樹脂からなる通気度0cm3/cm2・sのフィルムが積層された比較例2のプレシートから得た成形品は、成形品の表面に亀裂が入り、成形性が劣っていた。
30 繊維混合物供給手段
41 第1のキャリアシート
51 第2のキャリアシート
A エアレイドウェブ
Claims (5)
- 強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有するウェブ層と、
熱可塑性樹脂からなり通気度が115cm3/cm2・s以上である樹脂層であって、繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの少なくとも1つの表面に位置する樹脂層と、
を含む積層体が加熱処理されて形成されたシートであり、
前記ウェブ層を複数含み、
前記樹脂層がエアレイド法、スパンレース法、またはニードルパンチ法によって形成された不織布であり、
前記シート全体における強化繊維の含有質量と、熱可塑性樹脂の含有質量の比率が10/90〜90/10であることを特徴とする、繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。 - 前記ウェブ層は、熱融着性樹脂をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
- 前記ウェブ層はエアレイド法で形成されたエアレイドウェブであることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
- 前記樹脂層は、前記エアレイド法において前記エアレイドウェブの搬送に用いられたキャリアシートであることを特徴とする請求項3に記載の繊維強化熱可塑性プラスチック作製用プレシート。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の強化熱可塑性プラスチック作製用プレシートの単体または積層体を成形加工して得られた繊維強化熱可塑性プラスチック成形品。
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