JP2014050981A - 繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチック - Google Patents

繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチック Download PDF

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Abstract

【課題】真空吸引を用いた運搬が可能で、取扱い性が良好であり、立体形状への賦型が容易であり、真空成形も行うことができ、かつ、機械的特性に優れた繊維強化プラスチックが得られる繊維強化プラスチック成形用基布を提供する。
【解決手段】強化繊維と熱可塑性繊維とからなり、強化繊維:熱可塑性繊維が重量比で5:95〜70:30であり、通気度が30cc/cm/s未満であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形用基材とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、軽量な繊維強化プラスチックを製造するための本発明は、取り扱い性が良好で、かつ、変形性に優れ立体形状への賦型が容易である基材を提供するものである。
炭素繊維を強化材として使用した複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、線膨張係数が小さいので寸法安定性に優れることおよび、耐熱性、耐薬品性、耐疲労特性、耐摩耗性、電磁波シールド性、X線透過性にも優れることから、炭素繊維を強化材として使用した繊維強化プラスチックは、自動車、スポーツ・レジャー、航空・宇宙、一般産業用途に幅広く適用されている。
炭素繊維強化プラスチックを製造する方法としては、フィラメントワインディング法、プレス成型法、オートクレーブ法、射出成型法など、種々の手段が知られているが、3次元形状等の複雑な形状に適した成形方法として、SMC(シートモールディングコンパウンド)等の不連続な強化繊維からなる基材が挙げられる。SMCとは、熱硬化性樹脂を含浸した25mm程度の長さを持つチョップドストランドという繊維構造体を成形型内にシート状に配置した後、加熱、加圧することによりプラスチックを成形するものであり、比較的流動性が高いため、複雑な立体構造を形成することが可能であるが、一方、シート化工程において、チョップドストランドの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じているため、機械的特性に均一なプラスチックを成形することは難しかった。
一方、リサイクル性を向上させるために熱可塑性樹脂を強化繊維にプルトリュージョン法、樹脂含浸法、フィルム積層法などを用いて賦与する方法も試みられているが、生産性、均一性、プレス時の樹脂の濡れ性などの観点から、機械特性とコストを満足するものは得られていない。
特開平8−118379号公報 特開平6−23856号公報
本発明の目的は、真空吸引を用いた運搬が可能で、取扱い性が良好であり、立体形状への賦型が容易であり、真空成形も行うことができ、かつ、機械的特性に優れた繊維強化プラスチックが得られる繊維強化プラスチック成形用基布を提供することにある。
本発明者は、強化繊維および熱可塑性繊維を混合した基材の形状を検討したところ、真空吸引を用いた運搬方法や、真空成形を採用しようとすると成形が難しいことに着目し、さらに検討を進め、次の基材により、これらの課題を解決し、なおかつ金型への追従性がよく立体成形性にも優れたプラスチック用基材を提供できることを見出した。
かくして本発明によれば、繊維強化プラスチックを成形するための基材であって、該基材が強化繊維と熱可塑繊維からなり、強化繊維の重量:熱可塑性繊維の重量=5:95〜70:30であり、通気度が30cc/cm/s未満であることを特徴とする繊維強化プラスチック用基材が提供される。
本発明の繊維強化プラスチック成形用基材は、高い機械的物性を示すことはもちろん、マトリックスである熱可塑繊維と強化繊維が、交絡した不織布構造を有することにより、均一で取り扱い性、かつ非連続繊維を用いることによる流動性により、立体成形性に優れたプラスチック成形用基材を提供できる。
これらは、プルトリュージョン法などにより製造されたチョップドストランドを金型内にセットする場合、あるいは強化繊維に樹脂を含浸する方法に比べて極めて取り扱いやすく、均一性に優れる。また、強化繊維基材にフィルムを積層しプレスする方法などに比べて、格段に柔軟性に富んだ基材を提供することができる。
また、本発明の基材では、射出成形のように炭素繊維が切断されて短くなるといったことがなく、繊維間の交絡を成形できるため、成形体として十分な強度や弾性率を発揮することができる。また、熱可塑性樹脂が繊維の形状で他の繊維間に存在し、かつ交絡しているため、従来のプルトリュージョン法、樹脂含浸法、フィルム積層法に比べて、シート状物の取り扱い性(持ち運び性など)に優れ、熱プレス等の工程において、これら熱可塑繊維が溶融して十分に強化繊維の隙間に浸透し、かつ流動性に優れることから、複雑な形状を賦形する立体成形性を有しかつ、強度、弾性率、耐衝撃性を優れた繊維強化プラスチックを容易に得ることができる。
さらに、本発明の基材では、一般的な不織布形態では難しい、真空吸引を用いた運搬方法や、成形法の一つである真空成形を採用することか可能となる。しかも、取り扱い性や立体成形性に優れるといった特性も同時に有している。
本発明の繊維強化プラスチック成形用基材(以下、単に基材と称することがある)は、これを加熱処理、または加熱加圧処理することによって、熱可塑性繊維を溶融し、繊維強化プラスチックを成形することができる基材である。
本発明の基材は強化繊維と熱可塑性繊維とからなり、強化繊維:熱可塑性繊維が重量比で5:95〜70:30であり、好ましくは20:80〜60:40である。強化繊維の重量比が5重量%未満では、十分な力学的特性、すなわち曲げ強度や、曲げ弾性率を得ることができず、一方、熱可塑性樹脂の重量比が30重量%未満では、熱可塑性繊維を溶融し十分に強化繊維間に含浸させて繊維強化プラスチックを成形するのが難しくなる。
本発明に用いる強化繊維は、炭素繊維、および/または、融点、軟化点、または熱分解開始温度が250℃以上の耐熱性有機繊維であることが好ましい。特に、炭素繊維のみを用いるか、より耐衝撃性を高めるため、炭素繊維と耐熱性有機繊維とを併用することが望ましい。この際、炭素繊維:耐熱性有機繊維は重量比で、好ましくは100:0〜40:60、より好ましくは90:10〜40:60、さらに好ましくは70:30〜40:60である。炭素繊維の割合が少ないと曲げ強度や曲げ弾性率といった優れた機械的特性が得られ難くなる傾向にある。一方で、耐熱性有機繊維を上記割合で含有させることにより耐衝撃性を向上させる上で有利である。
本発明で用いる炭素繊維としては、引張強度3000MPa以上、弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。前記炭素繊維の原料としては特に限定するものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取扱性能、製造工程通過性能に適したPAN系炭素繊維が特に好ましい。
本発明における炭素繊維の形態は、加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、なかでも高い剛性を保持するために、繊維長は好ましくは10〜150mm、より好ましくは20〜100mmであり、さらに好ましくは20〜80mmである。また、同様の観点から、繊維径は好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは5〜60μmである。
本発明で耐熱有機繊維とは、特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリエーテルアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドなどが好ましく使用できる。なかでも耐衝撃性、生産性、価格などからアラミド繊維が好ましく使用できる。また、炭素繊維と同時に加工する際の加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、なかでも高い耐衝撃性を保持するために、繊維長は好ましくは20〜120mm、より好ましくは35〜80mm、さらに好ましくは35〜60mmである。
本発明におけるアラミド繊維とは、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分、もしくは芳香族アミノカルボン酸成分から構成される芳香族ポリアミド、又はこれらの芳香族共重合ポリアミドからなるポリマーであり、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどが例示できる。特にコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドが、耐衝撃性の点から好ましい。
本発明に用いる熱可塑性繊維は、熱可塑性樹脂を原料とし、一般的な溶融紡糸法により紡糸される繊維状物であって、原料となる熱可塑性樹脂としては、ポリプロプピレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が好ましく使用される。
上記熱可塑性樹脂は、ISO 1133に準拠して300℃、荷重1.2kgにて測定した、メルトボリュームフローレイトが、好ましくは12〜60cm/10分、より好ましくは16〜40cm/10分、さらに好ましくは16〜30cm/10分であることが好ましい。上記の溶融特性を有することにより、熱可塑繊維を溶融してなる樹脂が、強化繊維間に十分に含浸し、さらに得られる繊維強化プラスチックの剛性や、耐衝撃性の向上が容易となる。特に、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合、上記メルトボリュームフローレイトを有する樹脂を用いることで、上記効果がより顕著に表れることがわかった。
本発明における熱可塑性繊維の形態は、また、炭素繊維や耐熱有機繊維と同時に加工する際の加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、繊維長は好ましくは20〜150mm、より好ましくは30〜100mm、さらに好ましくは35〜80mm、よりさらに好ましくは35〜65mmである。また、同様の観点から、繊維径は、好ましくは5〜150μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜60μmである。
一般に、強化繊維は高モジュラスであり、金型に対して追従性のよい基材とするためには、熱可塑性繊維の伸度を高く設計することが望ましい。特に融点や軟化点が高く、溶融粘度が高い熱可塑ポリマーからなる熱可塑性繊維を用いた場合、該繊維の伸度を高くすることにより、基材の柔軟性を高めることができる。例えば、熱可塑性繊維の伸度は、好ましくは30%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは60%以上である。一方、伸度があまり大きすぎても、ニードルパンチ等で繊維が伸び成形性が悪くなるため、好ましくは150%以下、より好ましくは120%以下、さらに好ましくは100%以下とするのが望ましい。特に、熱可塑性繊維としてポリカーボネート繊維を用いる場合は、上記伸度とすることが好ましい。
本発明の基材は、繊維強化プラスチック成形用の基材として用いることのできる、前記の強化繊維と熱可塑性繊維を混合したものである。強化繊維を予めマトリックス樹脂となる熱可塑性繊維と混合することにより、均一な基材を作成可能であり、例えばポリカーボネート樹脂のように溶融時の粘度が高い樹脂であっても、強化繊維近傍にマトリックス樹脂を存在させることが可能となるため、強化繊維とマトリックス樹脂と容易に密着させることができる。
本発明においては、基材の通気度が30cc/cm/s未満、好ましくは10cc/cm/s未満、より好ましくは8cc/cm/s未満、さらに好ましくは6cc/cm/s未満であることが肝要である。基材の通気度が30cc/cm/s以上では、真空吸引を用いた運搬方法が難しくハンドリング性が悪くなる。また、成形法の一つである真空成形を採用することが難しい。
本発明は、基材として不織布形状等を検討したところ、一般的な不織布では、真空吸引を用いた運搬方法や、真空成形を採用しようとすると成形が難しいことに着目し、さらに検討を進め、上記基材により、これらの課題を解決し、なおかつ金型への追従性がよく立体成形性に優れた基材となることを見出したものである。
本発明の基材は、不織布の形態であることが好ましく、乾式不織布、湿式不織布のいずれもが使用可能であるが、剛性、耐衝撃性を特に要求される製品においては、繊維長の長いことが有益であるため、乾式不織布法にて作成することがより好ましい。また、繊維は開繊機、カードなどの工程により一方向に引き揃えられることが剛性、耐衝撃性をより向上させる。
一方、湿式不織布法においては、完成した繊維強化プラスチックの剛性面では劣るものの、黒鉛、セラミックなどに代表されるフィーラーを同時に添加することにより、耐熱性、導電性、蓄熱性、伝熱性、電磁波遮蔽性などの新たな機能を追加した繊維強化プラスチックの作成が可能であり、非常に有用である。
本発明において、強化繊維と熱可塑性繊維とが、少なくとも一部で交絡していることが好ましい。かかる交絡としては、厚さ方向に切断した不織布(基材)の切断面を、走査型電子顕微鏡(倍率:12倍)にて観察し、不織布の厚さの半分以上の長さにわたって、厚さ方向(厚さ方向に対し、±45°以内の方向を含む)に配列している5本以上の短繊維が絡み合って集束した繊維束が、不織布表面を観察し1cm当たり1ケ以上あることが好ましい。かかる交絡の存在により、基材の取扱いが容易になり、かつ、立体成形性においても有利な構造となる。よって、あまり上記交絡が多すぎても、基材が硬くなる傾向にあり、強化繊維と熱可塑性繊維とが両方で5本以上絡み合った繊維束の数(交絡数)は、不織布表面において、好ましくは1〜50ケ/cmであり、より好ましくは1〜20ケ/cmである。なお、この交絡は、ニードルパンチ不織布の場合は針の打ち込み密度により、ウォーターニードルの場合は水柱の密度により、湿式不織布の場合は繊維の水中への分散、撹拌の条件の調整により上記範囲とすることができる。
また、本発明においては、強化繊維同士、強化繊維が炭素繊維と耐熱有機繊維からなる場合、それらが少なくとも一部で交絡していることが好ましい。これによって、熱可塑性樹脂中に強化繊維が交絡せずに含有される繊維強化プラスチックと対比し、高い剛性や耐衝撃性を発揮することができる。かかる観点から、上記交絡の状態としては、強化繊維と熱可塑性繊維、または、強化繊維同士が不織布形状として互いの繊維が交絡していることが好ましい。
基材をニードルパンチ不織布とする場合は、打ち込み密度を、好ましくは200〜800本/cm、好ましくは300〜700本/cmとすることが望ましい。打ち込み密度が200本/cm未満では、十分に繊維同士を交絡させることができず、基材の形態維持性が低下し、繊維強化プラスチックに立体成形する際に目付が変動し易くなる。一方、打ち込み密度が800本/cm超えると、基材が硬くなり易く好ましくない。
また、不織布1枚の目付は、好ましくは50〜500g/cm、より好ましくは70〜400g/cm、さらに好ましくは70〜300g/cmである。目付が50g/cm未満では取扱い性が悪くなる傾向があり、一方、目付が500g/cmを超えると基材が硬くなり立体成形性が低下する傾向にある。
本発明の基材は、上記の不織布等を、1枚または複数枚積層して用いることができる。本発明においては、1枚の不織布の目付を上記範囲とすることにより、積層数を増やしても、基材が複雑な金型にも柔軟に適応して、立体成形を容易に行うことができる。
本発明においては、上記不織布1枚の目付や積層枚数を調整することによって、前記通気度とすることができるが、さらに上記の不織布を1枚または複数枚積層してなる基材層に、少なくとも1枚、好ましくは該基材層の最外層に、フィルム層を設けるか、基材層を構成する熱可塑性繊維の融点または軟化点よりも40℃以上低い融点または軟化点を有する繊維からなる層(熱融着繊維層)を設けることにより、前記の低通気度とするのが容易である。
フィルム層を設ける際のフィルムの添着方法は、特に規定しないが、熱をかけたフィルムを不織布基材と張り合わせるラミネート方式、あるいはポリマーチップを不織布上に散布しこれを溶融させながら基材層とフィルムと貼り合せ成形するロールラミネート方式など広く採用することができる。その際、ラミネートの圧力を上げすぎると、繊維強化プラスチック成形用基材の熱可塑繊維が全て溶融し、基材内の強化繊維を固着するため、基材の伸度が低くなるため、成形性の観点から好ましくない。熱可塑性繊維は繊維形状のまま残すことが好ましい。
フィルムの種類については、特に規定は無いが、基材層を構成する熱可塑性繊維と同じかまたは一成分として含み、熱可塑性繊維と融点が同程度かまたは好ましくは熱可塑性繊維よりも融点が低い熱可塑性ポリマーならなるものが好ましい。具体的には、該ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロプピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましい。
一方、本発明においては、前記のように、最外層に基材層を構成する熱可塑性繊維の融点または軟化点よりも40℃以上低い融点または軟化点を有する繊維からなる層(熱融着繊維層)を設ける方法も採用することができる。また、この際、基材層と熱融着繊維層とを積層した後、熱可塑性繊維の融点または軟化点よりも低く、熱融着繊維の融点または軟化点以上の温度で、加熱処理または加熱加圧処理を行い、両層を接合し基材とすることが好ましい。また、この際、該熱融着繊維層が溶融することにより、基材の通気性を低減することができる。
該繊維(熱融着繊維)を構成するポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができ、ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。このポリマーのうち、特に好ましいのはポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
また共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステルが好ましい。
また、ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
繊維強化プラスチックの成型方法としては、プレス成型、スタンパブル成型などが好適例として示されるが、一般的な熱圧成型法は全て適用可能である。この際、熱可塑性繊維の融点または軟化点以上の温度で加熱または加熱加圧を行うことで、繊維強化プラスチックを成形することができる。また、本発明の基材は、真空成形法にも対応でき、ハンドリング、コストの面から非常に有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(1)繊維長、繊度
JIS L 1015に準拠して測定した。
(2)繊径
キーエンス社製光学顕微鏡DEGITAL MICROSCOPE VHX−1000を用い1000倍で繊維断面の直径を10本測定し、その平均値とした。
(3)繊維の引張強度、伸度、弾性率
ASTM D885に準拠して測定した。
(4)ポリカーボネート樹脂のメルトボリュームフローレイト
ISO 1133に準拠して300℃、荷重1.2kgにて測定した。
(5)各繊維の融点、軟化点、熱分解開始温度
株式会社リガク社製示差熱分析装置TAS200にて窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分にて測定し算出した。
(6)繊維強化プラスチックの曲げ強度、弾性率
JIS K 7171に準拠し、厚さ2mm、長さ100mm、幅10mmの試験片を用いて、支点間距離80mmでの3点曲げにて測定した。
(7)繊維強化プラスチックの衝撃強度
JIS K 7111に準拠し、厚さ2mm、長さ100mm、幅10mmの試験片を用いて測定した。
(8)交絡数
厚さ方向に切断した不織布の切断面を、走査型電子顕微鏡(倍率:12倍)にて観察し、不織布の厚さの半分以上の長さにわたって、厚さ方向(厚さ方向に対し、±45°以内の方向を含む)に配列している5本以上の短繊維が集束した繊維束の本数を数えて、1cmあたりの本数で表わした。
(9)通気度
JIS L 1096に準拠して測定した。
(10)立体成形性
幅10cm、奥行10cm、立ち上がり角度70度、高さ3cmの斜面をもつ金型を用い、基材をプレス加工した際の、立体加工性を目し判定した。この際、プレス加工温度を熱可塑性繊維として、ポリカーボネート繊維を用いた場合は300℃、ポリプロピレン繊維を用いた場合は220℃とした。判定基準は以下の通りとした。なお、下記で樹脂とは、熱可塑性繊維が溶融して樹脂となったものである。
○:繊維が70度斜度面に均一に広がっており、樹脂の含浸ムラが無いもの。
△:繊維が70度斜度面に均一に広がっているが、樹脂の未含浸が見られるもの。
×:繊維が70度斜度面に均一に広がらず、偏りが見られるもの。
[実施例1]
繊維径7μmの炭素繊維(東邦テナックス製、引張強度4200MPa)を35mmにカットした繊維と、ポリカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライトL−1225L メルトボリュームフローレイト 18cm/10分間)を290℃にて溶融押し出しし、直径30μm、伸度57%のフィラメントとし、これを51mmにカットしたものとを重量比で40:60に混合し、開繊機にて混合した後、カード工程を通過させることにより、繊維の引き揃え性を向上させたウェブを作成した。このようにして得られた繊維ウェブをニードルパンチ機により38番針にて針深度10mm、打ち込み密度を500本/cmとして目付200g/mの不織布を得た。さらに、該不織布を12枚積層した不織布基材(基材層)にポリカーボネート製フィルム(帝人化成製 厚み125μm)(最外層がフィルム層)を1枚配した後、カレンダー装置を用いて基材層の繊維形状が残る程度に予備プレスを実施し、繊維強化プラスチック成形用基材を得た。得られた繊維強化プラスチック用基材を予め離型処理を施したステンレス板で挟み、ホットプレス熱盤上にセットした後、同じく予め離型処理を施した鋼製スペーサーを使用して、成型圧力5MPa、成型温度が300℃にて約2mm厚の繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例2]
炭素繊維の代わりに繊維径12μmのアラミド繊維(コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維)(帝人テクノプロダクツ製 テクノーラ(商標)、引張強度3400MPa)を51mmにカットした繊維を用いた以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例3]
炭素繊維の代わりに炭素繊維とアラミド繊維を50:50で予め混綿した繊維を用いた以外は実施例1の場合と同様の処理をして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例4]
炭素繊維と熱可塑性繊維の比率を5:95に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例5]
炭素繊維と熱可塑性繊維の重量比を70:30に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例6]
炭素繊維とアラミド繊維の重量比を90:10に変更した以外は実施例3と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例7]
炭素繊維とアラミド繊維の重量比を70:30に変更した以外は実施例3と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例8]
基材1枚あたりの目付を400g/mに、積層枚数を6枚に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例9]
熱可塑性繊維を直径18μm、伸度55%のポリプロピレン繊維に変更し、プレス成型の温度を220℃とした以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例10]
熱可塑性繊維を直径18μm、伸度55%のポリプロピレン繊維に変更し、プレス成型の温度を220℃とした以外は実施例2と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例11]
熱可塑性繊維を直径18μm、伸度55%のポリプロピレン繊維に変更し、プレス成型の温度を220℃とした以外は実施例3と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[実施例12]
ポリカーボネート製フィルムに代えて目付200g/mのポリプロピレン製不織布(繊維長51mm)(最外層が不織布層)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[比較例1]
最外層にポリカーボネート製フィルムを積層しなかった以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
[比較例2]
実施例2で使用したアラミド繊維を使用し、開繊機にて混合した後、カード工程を通過させることにより、繊維の引き揃え性を向上させたウェブを作成した。このようにして得られた繊維ウェブをニードルパンチ機により38番針にて針深度10mm、500本/cmの密度で打ち込みをして目付80g/mの不織布を得た。上記不織布にポリカーボネート製フィルム(帝人化成製パンライトシート 100μm厚み、比重1.2)を1枚積層させ、240℃×0.1MPaにて20秒間圧着することにより基材間を接着させ、繊維強化プラスチック成形用基材200g/mを作成した。上記の基材を12枚を積層し、予め離型処理を施したステンレス板で挟み、ホットプレス熱盤上にセットした後、同じく予め離型処理を施した鋼製スペーサーを使用して、成型圧力5MPa、成型温度が300℃にて約2mm厚の繊維強化プラスチックを作成した。
[比較例3]
アラミド不織布をアラミド織物(帝人テクノプロダクツ製テクノーラ織物 目付80g/m)に変更した以外は、比較例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材を作成し、さらに繊維強化プラスチックを作成した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2014050981
本発明の繊維強化プラスチック成形用基材は、立体成形性に優れ、該基材からは機械的特性、耐衝撃性に優れた繊維強化プラスチックを製造することができる。また、本発明の基材から得られた繊維強化プラスチックは、補強用、摩擦・摺動用、自動車、船舶などの産業用部品、電気・電子機器、AV機器、OA機器、建築用の部品・部材、建材、建具、パッキン類又はシール類などに好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 強化繊維と熱可塑性繊維とからなり、強化繊維:熱可塑性繊維が重量比で5:95〜70:30であり、通気度が30cc/cm/s未満であることを特徴とする繊維強化プラスチック成形用基材。
  2. 最外層にフィルム層を有する請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  3. 最外層に熱可塑性繊維の融点または軟化点よりも40℃以上低い融点または軟化点を有する繊維からなる層を有する請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  4. 強化繊維と熱可塑性繊維が一部で交絡している請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  5. 強化繊維が、炭素繊維、および/または、融点、軟化点又は熱分解開始温度が250℃以上の耐熱有機繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  6. 耐熱有機繊維がアラミド繊維、ポリオキシベンザゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  7. 熱可塑性繊維が、ポリプロプピレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  8. 強化繊維の繊維直径が5〜100μmである請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  9. 強化繊維の繊維長が20〜150mmである請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  10. 熱可塑性繊維を構成する熱可塑性樹脂のメルトボリュームフローレイトが16〜60cm/10分である請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  11. 炭素繊維と耐熱性有機繊維との両方を含み、該炭素繊維と該耐熱性有機繊維が少なくとも一部で交絡している請求項1〜10のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材を熱可塑性繊維の融点または軟化点以上の温度で加熱処理または加熱加圧処理してなる繊維強化プラスチック。
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