JP4759303B2 - 多軸織物を用いた複合材料 - Google Patents

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本発明は、繊維強化プラスチックに係るもので、多軸織物を用いた複合材料に関する。
近年、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維材料は、各種のマトリックス樹脂と複合化され、得られる強化繊維複合材料は種々の分野・用途に広く利用されるようになってきた。そして、高度の機械的特性や耐熱性等を要求される航空・宇宙分野や、一般産業分野では、従来、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されてきた。しかし、特に航空・宇宙分野では、これらのマトリックス樹脂は、脆く、耐衝撃性に劣るという欠点を有するため、その改善が求められてきた。また、熱硬化性樹脂の場合、これをプリプリグとしたとき、樹脂のライフ等によるプリプレグの保存管理上の問題点、製品形状に対して追従性が乏しい、成形時間が長く生産性が低い等の問題もあった。
これに対して、熱可塑性樹脂プリプレグの場合は、複合材料としたときの耐衝撃性が優れ、プリプレグの保存管理が容易で、かつ成形時間が短く、成形コスト低減の可能性もある。熱可塑性樹脂プリプレグの製造法としては、従来、例えば、フィルム状の樹脂を加熱溶融して基材としての強化繊維材料に含浸させる方法(溶融含浸法、特許文献1参照)、粉末状の樹脂を流動床法や懸濁法によって強化繊維材料に塗布・融着させる方法(パウダー法、特許文献2参照)、樹脂を溶液化し、強化繊維材料に含浸後溶媒を除去する方法(溶液含浸法)が知られている。しかし、これらの材料は、いずれもドレープ性が不十分で取り扱い性が不良であった。
特開2002−19062号公報 特公平4−12894号公報
一方、繊維強化プラスチック成形品の成形法は、従来、繊維強化材料に予め樹脂を含浸したプリプレグを用いたオートクレーブ成形が主流であったが、
近年は、成形品のコスト削減の要望が高く、従来のオートクレーブ成形方法の外に、前記溶融含浸法を用いたレジンフィルムインフュージョン成形法(RFI法)も広く行われるようになった。 そして、オートクレーブ成形やRFI法で使用する繊維強化材料としては、通常、織編物や多軸織物等が用いられている。しかしながら、織物や編物等のクリンプ部を有する布帛を基材とした場合には、基材と熱可塑性樹脂フィルムを用いて積層・加熱・加圧成形する過程で、クリンプ部に樹脂が含浸しにくく、結果的に均一性に劣ったものしか得られないという問題があった。
多軸織物を使用した場合は、表面平滑性や均一性を向上させる方法として、多軸織物のステッチ糸に低融点ポリマーを使用し、繊維強化プラスチック成形品を成形する際、低融点ポリマーの融点以上で加熱成形し、ステッチ糸を溶融する方法も提案されている(特許文献3)。しかしながら、従来の成形法では、成形に際し、多軸織物と熱可塑性樹脂フィルムの積層時に角度ズレが生じ易く、従って、機械的物性の均一性に劣るという問題点は克服されない。
特開2002−227066号公報
本発明の目的は、多軸織物と熱可塑性樹脂フィルムを用いた成形法において、取り扱いが容易な多軸織物を1枚あるいは複数枚積層し加熱・加圧して得られる、機械的物性やその均一性に優れた複合材料を提供することにある。
本発明の目的・課題は、多軸織物基材と熱可塑性樹脂フィルムとが、ステッチ糸により縫合一体化された、熱可塑性樹脂の含有率が30〜90重量%である多軸織物を、1枚あるいは複数枚積層し、金型プレス法で加熱・加圧成形することにより得られる複合材料によって達成される。
本発明で用いる多軸織物は、取り扱いが容易であるために、効率良く複合材料、即ち繊維強化プラスチック成形品を製造するために用いることができる。そして、得られた複合材料は、表面に凹凸が無く、表面平滑な成形面が得られる。また、均一性や機械的特性にも優れるほか、ドレープ性にも優れた複合材料が得られる。
本発明で用いる多軸織物は、多軸織物基材と熱可塑性樹脂フィルムとが、ステッチ糸により縫合一体化されているものであるが、両者は1枚ずつのものでも複数枚からなるものであっても良い。また、多軸織物基材(1枚又は複数枚、以下同じ)の片面又は両面に熱可塑性樹脂フィルム(1枚又は複数枚、以下同じ)が積層されたものでも、多軸織物基材の中に熱可塑性樹脂フィルムがサンドイッチ状に挟み込まれたものでも、それらを組み合わせたものであっても良い。
多軸織物とは、一般に、一方向に引き揃えた繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層したもの(多軸織物基材)を、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等のステッチ糸で、この積層体を厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいう。しかし、本発明においては、繊維強化材の束をシート状にして角度を変えて積層した基材と、熱可塑性樹脂フィルムとを、連結糸(ステッチ糸)により一体的に縫合したものが多軸織物を構成している。
多軸織物基材は、積層して用いる場合、面対称となるように選択する事が好ましい。多軸織物基材の目付は、100〜2000g/mが好ましく、200〜800g/mがより好ましい。多軸織物基材の1層(1枚)当たりの厚みは、0.1〜2mmが好ましい。 好ましい多軸織物基材の例としては、〔45/−45/−45/45〕、〔0/−45/−45/0〕、〔0/+45/−45/−45/+45/0〕、〔0/+45/90/−45/−45/90/+45/0〕等を挙げることができる。
積重して面対称となる多軸織物基材の組合わせとしては、例えば〔45/−45〕及び〔−45/45〕、〔0/+45/−45〕及び〔−45/+45/0〕、〔0/+45/−45/90〕及び〔90/−45/+45/0〕等を挙げることができる。0、±45、90は、多軸織物基材を構成する各層の積層角度を表し、それぞれ一方向に引き揃えた繊維強化材の繊維軸方向が、織物の長さ方向に対して0°、±45°、90°であることを示している。積層角度はこれらの角度に限定されず、任意の角度とすることができる。例えば、±30°あるいは±60°でも良い。
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンなる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂である。また、用途によっては、一部熱硬化性樹脂と混合して用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたポリアミド樹脂やアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が、特に好ましい。これらの熱可塑性樹脂には、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
本発明で用いる多軸織物は、前記熱可塑性樹脂のフィルムと多軸織物基材をステッチ糸で縫合し一体化することによって得られる。ステッチ糸としては、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸、ポリベンゾオキサゾール繊維糸、アラミド繊維糸等があるが、特に、前記特許文献3に開示されているような低融点ポリマーから形成されたステッチ糸や、熱可塑性樹脂のフィルムと同種のステッチ糸が好ましい。多軸織物中の、熱可塑性樹脂の含有率は、通常、10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%である。熱可塑性樹脂フィルムの目付は、5〜50g/m2が好ましい。
本発明で用いる複合シートは、多軸織物基材と熱可塑性樹脂フィルムとをステッチ糸により縫合一体化させて得られる多軸織物を、加熱することによって得られる、熱可塑性樹脂の少なくとも一部が多軸織物基材に含浸せしめられた複合シートである。本発明の多軸織物を、好ましくは、熱可塑性樹脂の軟化点又は融点以上の温度に加熱することによって、軟化あるいは溶融した熱可塑性樹脂が、多軸織物基材に含浸せしめられ、本発明で用いる複合シートとなる。加熱の方法・手段としては、例えば、ヒートローラーや間欠ホットプレスを用いることができる。あるいは、遠赤外線ヒータによって予熱した後、コールドプレスしても良い。
また、前記多軸織物又は複合シートを1枚あるいは複数枚積層し、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法等で成形して複合材料、即ち、繊維強化プラスチック成形品が得られる。この際、成形品中の繊維体積分率(Vf)あるいは樹脂含量を調整するために、必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルムを追加積層することもできる。複合材料中の熱可塑性樹脂の含有率は、通常、10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%が適当である。
本発明における複合材料は、最終的に、種々の用途の繊維強化プラスチック成形品とされる場合に、複合材料の外表面に、意匠性樹脂層が、塗装その他の方法で形成される場合があるが、かかる態様のものも、本発明の複合材料の範囲に含まれるものである。かかる樹脂層を形成するためには、例えば、アクリル系、アクリルウレタン系、フッ素系、シリコーン系、エポキシ系の樹脂を用いることができ、樹脂層には、染料や顔料などの着色剤を添加することもできる。かかる樹脂層は、成形された複合材料に、意匠性樹脂層を塗布する方法、例えば、スプレー、バーコーター、ダイコーター、スピンナー方法によって形成することができる。
以下、図面により、本発明について説明する。図1は、多軸織物基材1とその両面及び内部に積層された熱可塑性樹脂フィルム2が、ステッチ糸3で縫合一体化されている状態、即ち、本発明で用いる多軸織物を示している。かかる多軸織物を、例えば、熱可塑性樹脂フィルム2の融点以上の温度に加熱すると、熱可塑性樹脂フィルム2は溶融し、多軸織物基材1中に含浸し、本発明で用いる複合シートとなる。かかる複合シートを、複数枚積層し、例えば、金型を用いて加熱・加圧成形して複合材料、即ち、繊維強化プラスチック成形品を得ることができる。以下、実施例により、本発明を詳述する。
炭素繊維HTA−12K(東邦テナックス社製)を使用し、長繊維を一方向に配向した目付200g/m2の多軸織物基材([45/45/-45/-45]の角度で4枚積層したもの)の中間に、PA6フィルム(ナイロン6、ユニチカ社製、目付28.75g/m2)を4枚挿入し、ポリエステルのステッチ糸で縫合一体化して、本発明で用いる多軸織物を得た。
上記多軸織物を8枚とその層間にPA6フィルムを、成形板でVf50%になるように積層した。積層構成は擬似等方性として、表層が0°あるいは90°となる[[[0/90]/[45/-45]]2]sである。行った物性試験が曲げ試験であり、最外層の繊維配向で物性値が大きく変わるため各配向の成形板を作製した。
次いで、板状の複合材料へ成形を行った。即ち、上記積層物を金型上に配置し、これを285℃に加熱したプレス盤に設置し、金型温度を280℃に昇温後10分間保温してから、成形面圧10kg/cm2まで加圧した。加圧後、金型温度50℃以下まで冷却後、脱型した。得られた成形板の物性値は表1に示したとおりであった。なお、表1のデータは、3点曲げ試験により得られた曲げ弾性率および曲げ強度で、Vf50%換算値である。
「比較例1」
実施例1で用いた多軸織物の代わりに、炭素繊維HTA−12Kの平織物W3101(目付200g/m2、東邦テナックス社製)を用いる他は、実施例1と同様にして成形板を得た。その物性値は表1に示したとおりであった。
Figure 0004759303
表より、本発明の多軸織物を用いた場合の方が、曲げ弾性率、曲げ強度とも優れていることがわかる。
実施例1で作製した複合材料(成形板)の表面を、#600番のサンドペーパーで研磨し離型剤を除去後、スプレーガンでウレタン塗装(関西ペイント製 レタンPG2Kホワイト)を行い、意匠性樹脂層を形成させた。塗装の厚みは0.1mmであった。得られた複合材料の表面を目視評価したところ、凹凸が無くきれいな表面であった。
実施例1で用いたものと同じ多軸織物基材で、[0/90]及び[45/-45]間にPA6フィルムを有する、炭素繊維目付が200g/m2の多軸織物を用い、その表裏にPA6フィルムを配して、加熱・加圧により多軸織物にPA6を含浸せしめた複合シートを得た。
実施例3で得られた多軸織物にPA6を含浸せしめた複合シートを8層積層し、加熱・加圧によりVfおよそ50%の複合材料を得た。
本発明で用いる多軸織物の一例を示す。
符号の説明
1 多軸織物基材
2 熱可塑性樹脂フィルム
3 ステッチ糸

Claims (5)

  1. 多軸織物基材と熱可塑性樹脂フィルムとをステッチ糸により縫合一体化させて得られた、熱可塑性樹脂の含有率が30〜90重量%である多軸織物を、1枚あるいは複数枚積層し、金型プレス法で加熱・加圧成形することにより得られる複合材料。
  2. 複合材料中の熱可塑性樹脂の含有率が、30〜90重量%である請求項1に記載の複合材料。
  3. 熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンなる群から選ばれた1種若しくは2種以上の樹脂である請求項1または2に記載の複合材料。
  4. ステッチ糸が、熱可塑性樹脂フィルムと同種のステッチ糸である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材料。
  5. 複合材料の外表面に、意匠性樹脂層が形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材料。
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