JP6046425B2 - 繊維強化プラスチック成形用基材および耐衝撃性繊維強化プラスチック - Google Patents

繊維強化プラスチック成形用基材および耐衝撃性繊維強化プラスチック Download PDF

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Description

本発明は、剛性、耐衝撃性に優れた繊維強化プラスチックが得られるプラスチック成形用基材、およびそれから得られる耐衝撃性繊維強化プラスチックに関するものである。
炭素繊維を強化材として使用した複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、線膨張係数が小さいので寸法安定性に優れることおよび、耐熱性、耐薬品性、耐疲労特性、耐摩耗性、電磁波シールド性、X線透過性にも優れることから、炭素繊維を強化材として使用した繊維強化プラスチックは、自動車、スポーツ・レジャー、航空・宇宙、一般産業用途に幅広く適用されている。
しかしながら、かかる繊維強化プラスチックは、剛性に優れるが耐衝撃性に劣る問題があった。耐衝撃性向上のために、繊維強化プラスチックをセラミックスあるいは金属と積層する複合体構造などが提案されているが、一般的にこれらの複合構造体は重量増加を伴うものであった。
また、炭素繊維に耐衝撃性に優れる他の有機繊維を併用することにより、耐衝撃性が向上することも提案されている。他の有機繊維の併用方法としては、炭素繊維フィラメントと他の有機繊維を混編、混織する方法や、炭素繊維および他の繊維をフィラメント状態のまま開繊し、シート状にしたものを積層した後、マトリックス樹脂のシート材とともにプレス等の技術手段により成型する方法、あるいは、炭素繊維および他の繊維を6mm以下の長さにカッティングしたカットファイバーを熱可塑性樹脂にコンパウンドの後、射出成型する方法などが挙げられる(特許文献1及び2等)。
フィラメント繊維による成型方法の場合、強度、剛性の高いハイグレードな繊維強化プラスチックの製造が可能であるものの、成型にかかるコストが非常に高く、一部の用途にのみ展開されているのが実状である。一方、射出成型を用いる方法では、加工特性に優れ、安価な繊維強化プラスチックが製造できるものの、添加する繊維が短くなり、剛性、耐衝撃性の面で十分な性能を得ることが困難であった。
特開昭62−275133号公報 特開平2−64133号公報
本発明の目的は、重量を増加することなく、剛性、耐衝撃性に優れた繊維強化プラスチックが得られる繊維強化プラスチック用基材、およびそれから得られる耐衝撃性繊維強化プラスチックを提供することにある。
本発明者が検討した結果、炭素繊維と、耐熱有機繊維とを特定の形態で、強化繊維としてプラスチック中に配した繊維強化プラスチックは、剛性や耐衝撃性が著しく向上することを見出した。また、炭素繊維、耐熱有機繊維、熱可塑性繊維を巧みに組み合わせた基材とすることで、上記繊維強化プラスチックを容易に成形できることを見出した。すなわち、本発明は、剛性を低下させること無く、耐衝撃性を付与することの可能な繊維強化プラスチックおよびその成形用基材を提案するものである。
かくして本発明によれば、炭素繊維、耐熱有機繊維、および熱可塑性繊維からなり、炭素繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Aと、耐熱性繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Bとをそれぞれ1層以上積層してなり、かつ、以下の(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする繊維強化プラスチック成形用基材が提供される。
(1)炭素繊維の重量:耐熱有機繊維の重量=15:1〜0.5:1
(2)炭素繊維と耐熱有機繊維との総重量:熱可塑性繊維の総重量=5:95〜70:30
また、上記の繊維強化プラスチック成形用基材を、繊維層Aまたは繊維層Bの熱可塑性繊維の融点または軟化点以上の温度で加熱処理または加熱加圧処理してなる繊維強化プラスチックが提供される。
本発明の繊維強化プラスチック成形用基材は、炭素繊維が高い剛性を、耐熱有機繊維が耐衝撃吸収性を示すだけでなく、不織布構造を有することによりこれらのそれぞれ強化繊維がプラスチック中で交絡していることによるクッション的な効果により、衝撃吸収能が格段に向上している。
したがって、上記基材は、プルトリュージョン法などにより製造されたチョップドストランドを金型内にセットする方法や、強化繊維に樹脂を含浸する方法に比べて極めて取り扱いに優れる。また、強化繊維基材にフィルムを積層しプレスする方法などに比べて、格段に柔軟性に富んだ基材を提供することができる。
また、本発明の基材では、射出成形のように炭素繊維が切断されて短くなるといったことがなく、繊維間の交絡を成形できるため、成形体として十分な強度や弾性率を発揮することができる。また、熱可塑性樹脂が繊維の形状で他の繊維間に存在し、かつ交絡しているため、従来のプルトリュージョン法、樹脂含浸法、フィルム積層法に比べて、シート状物の取り扱い性(持ち運び性など)に優れ、熱プレス等の工程において、これら熱可塑繊維が溶融して十分に強化繊維の隙間に浸透し、かつ流動性に優れることから、複雑な形状を賦形する立体成形性を有し、強度、弾性率、特に耐衝撃性を優れた繊維強化プラスチックを容易に得ることができる。
本発明の繊維強化プラスチック成形用基材(以下、単に基材と称することがある)は、これを加熱処理、または加熱加圧処理することによって、後述する繊維層Aおよび/または繊維層Bの熱可塑性繊維を溶融し、繊維強化プラスチックを成形することができる基材である。
本発明の基材は、炭素繊維、耐熱有機繊維、および熱可塑性繊維からなり、炭素繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Aと、耐熱性繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Bとをそれぞれ1層以上積層してなり、かつ、以下の(1)および(2)を同時に満たすことが肝要である。これにより、取扱い性、立体成形性に優れ、剛性を低下させることなく、耐衝撃性が改善された繊維強化プラスチックが得られる基材とすることができる。
(1)炭素繊維の重量:耐熱有機繊維の重量=15:1〜0.5:1
(2)炭素繊維と耐熱有機繊維との総重量:熱可塑性繊維の総重量=5:95〜70:30
本発明においては、炭素繊維の割合が少ないと曲げ強度や曲げ弾性率といった優れた機械的特性が得られ難くなる傾向にある。一方で、耐熱性機繊維を上記割合で含有させることにより耐衝撃性を向上させる上で有利である。よって、上記のように、炭素繊維の重量:耐熱有機繊維の重量は15:1〜0.5:1であり、好ましくは13:1〜0.5:1、より好ましくは10:1〜0.5:1、さらに好ましくは8:1〜0.5:1である。
本発明においては、上記のように、炭素繊維と耐熱有機繊維との総重量:熱可塑性繊維の総重量は5:95〜70:30であり、好ましくは10:90〜60:40、より好ましくは20:80〜50:50である。強化繊維の重量比が5重量%未満では、十分な力学的特性、すなわち曲げ強度や、曲げ弾性率を得ることができず、一方、熱可塑性樹脂の重量比が30重量%未満では、熱可塑性繊維を溶融し十分に繊維間に含浸させて繊維強化プラスチックを成形するのが難しくなる。
本発明で用いる炭素繊維としては、引張強度3000MPa以上、弾性率200GPa以上の炭素繊維が好ましい。前記炭素繊維の原料としては特に限定するものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等が例示できる。これらの炭素繊維のうち、取扱性能、製造工程通過性能に適したPAN系炭素繊維が特に好ましい。
本発明における炭素繊維の形態は、加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、なかでも高い剛性を保持するために、繊維長は好ましくは10〜150mm、より好ましくは20〜100mmであり、さらに好ましくは20〜80mm、さらにより好ましくは20〜60mmである。また、同様の観点から、繊維径は好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは5〜60μmである。
本発明に用いる耐熱有機繊維は、融点、軟化点、または熱分解開始温度が250℃以上の有機繊維であることが好ましく、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリエーテルアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドなどが好ましく使用できる。なかでも耐衝撃性、生産性、価格などからアラミド繊維が好ましく使用できる。また、炭素繊維と同時に加工する際の加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、なかでも高い耐衝撃性を保持するために、繊維長は好ましくは20〜150mm、より好ましくは20〜120mm、さらに好ましくは35〜80mm、よりさらに好ましくは35〜60mmである。
本発明におけるアラミド繊維とは、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分、もしくは芳香族アミノカルボン酸成分から構成される芳香族ポリアミド、又はこれらの芳香族共重合ポリアミドからなるポリマーであり、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどが例示できる。特にコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドが、耐衝撃性の点から好ましい。
本発明に用いる熱可塑性繊維は、熱可塑性樹脂を原料とし、一般的な溶融紡糸法により紡糸される繊維状物であって、原料となる熱可塑性樹脂としては、ポリプロプピレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が好ましく使用される。
上記の熱可塑性樹脂は、ISO 1133に準拠して300℃、荷重1.2kgにて測定した、メルトボリュームフローレイトが、好ましくは12〜60cm/10分、より好ましくは16〜40cm/10分、さらに好ましくは16〜30cm/10分であることが好ましい。上記の溶融特性を有することにより、熱可塑繊維を溶融した際、強化繊維の繊維間に該樹脂が十分に含浸し、さらに得られる繊維強化プラスチックの剛性、耐衝撃性が容易となる。特に、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合、上記メルトボリュームフローレイトを有する樹脂を用いることで、より顕著な効果得られることがわかった。
本発明における熱可塑性繊維の形態は、また、炭素繊維や耐熱有機繊維と同時に加工する際の加工性の観点から、カットファイバー(短繊維)であることが好ましく、繊維長は好ましくは20〜150mm、より好ましくは30〜100mm、さらに好ましくは35〜80mm、よりさらに好ましくは35〜65mmである。また、同様の観点から、繊維径は、好ましくは5〜150μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜60μmである。
本発明の基材は、上記の繊維層A、繊維層Bをそれぞれ1層以上積層したものであり、基材全体として、前記の(1)炭素繊維と耐熱有機繊維との比、(2)炭素繊維と耐熱有機繊維の総重量と熱可塑性繊維の総重量との比を満足させ、かつ最終的に得られる繊維強化プラスチックに要求される機械的特性に応じて、繊維層Aおよび繊維層Bの積層枚数や積層比を適宜設計すればよい。
この際、炭素繊維を含む繊維層Bを、繊維強化プラスチックとした際、圧力または衝撃を受ける面に配置することにより、耐衝撃性が極めて優れた繊維強化プラスチックとすることができる。
繊維層A、Bにおいては、それぞれ炭素繊維、耐熱有機繊維(これらを総じて強化繊維ということがある)と、予めマトリックス樹脂となる熱可塑性繊維と混合することにより、均一な繊維層を作成可能であり、例えばポリカーボネート樹脂のように溶融時の粘度が高い樹脂であっても、強化繊維近傍にマトリックス樹脂を存在させることが可能となるため、炭素繊維または耐熱有機繊維とマトリックス樹脂を容易に密着させることができる。
本発明において繊維層A、Bは、不織布の形態であることが好ましく、乾式不織布、湿式不織布のいずれもが使用可能であるが、剛性、耐衝撃性を特に要求される製品においては、繊維長の長いことが有益であるため、乾式不織布法にて作成することがより好ましい。また、繊維は開繊機、カードなどの工程により繊維を開繊、混合することができるが、この際、一方向に引き揃えられることが剛性、耐衝撃性をより向上させる。
一方、湿式不織布法においては、完成した繊維強化プラスチックの剛性面では劣るものの、黒鉛、セラミックなどに代表されるフィーラーを同時に添加することにより、耐熱性、導電性、蓄熱性、伝熱性、電磁波遮蔽性などの新たな機能を追加した繊維強化プラスチックの作成が可能であり、非常に有用である。
本発明において、繊維層Aおよび繊維層Bとしては、不織布形状である場合、繊維層Aにおいては炭素繊維と熱可塑性繊維とが、繊維層Bにおいては耐熱有機繊維と熱可塑性繊維とが、それぞれ少なくとも一部で交絡していることが好ましい。かかる交絡としては、厚さ方向に切断した不織布の切断面を、走査型電子顕微鏡(倍率:12倍)にて観察し、不織布の厚さの半分以上の長さにわたって、厚さ方向(厚さ方向に対し、±45°以内の方向を含む)に配列している5本以上の短繊維が絡み合って集束した繊維束が、不織布表面を観察し1cm当たり1ケ以上あることが好ましい。かかる交絡の存在により、各繊維層や基材の取扱いが容易になり、かつ、立体成形性においても有利な構造となる。よって、あまり上記交絡が多すぎても、各繊維層しいては基材が硬くなる傾向にあり、炭素繊維あるいは耐熱有機繊維と熱可塑性繊維とが両方で5本以上絡み合った繊維束の数(交絡数)は、各不織布表面において、好ましくは1〜50ケ/cmであり、より好ましくは1〜20ケ/cmである。なお、この交絡は、ニードルパンチ不織布の場合は針の打ち込み密度により、ウォーターニードルの場合は水柱の密度により、湿式不織布の場合は繊維の水中への分散、撹拌の条件の調整により上記範囲とすることができる。
また、本発明においては、繊維層Aにおいて炭素繊維同士、繊維層Bにおいて耐熱有機繊維同士が少なくとも一部で交絡していることが好ましい。これによって、熱可塑性樹脂中にこれらの繊維が交絡せずに含有される繊維強化プラスチックと対比し、高い剛性や耐衝撃性を発揮することができる。
また、繊維層Aおよび繊維層Bをニードルパンチ不織布とする場合は、針の打ち込み密度を、好ましくは200〜800本/cm、好ましくは300〜600本/cmとすることが望ましい。打ち込み密度が200本/cm未満では、十分に繊維同士を交絡させることができず、基材の形態維持性が低下し、繊維強化プラスチックに立体成型する際に目付が変動し易くなる。一方、打ち込み密度が700本/cmを超えると、基材の伸度が低下し易くなり好ましくない。
また、繊維層Aおよび繊維層Bの1層の目付は、好ましくは50〜500g/cm、より好ましくは70〜400g/cm、さらに好ましくは70〜300g/cmである。目付が50g/cm未満では取扱い性が悪くなる傾向があり、一方、目付が500g/cmを超えると基材が硬くなり立体成形性が低下する傾向にある。
前記のように本発明の基材は、上記の繊維層A、繊維層Bをそれぞれ1層以上積層したものであるが、各繊維層1層の目付を上記範囲とすることにより、積層数を増やしても、基材が複雑な金型にも柔軟に適応して、立体成形を容易に行うことができる。
本発明においては、各繊維層を積層し、繊維層Aおよび繊維層Bとが、熱可塑性繊維の一部が溶融することで、層間で接着させることにより、柔軟性を持った状態で基材が一体化し、基材としての取り扱性が向上する。
繊維強化プラスチックの成型方法としては、プレス成型、スタンパブル成型などが好適例として示されるが、一般的な熱圧成型法は全て適用可能である。この際、熱可塑性繊維の融点または軟化点以上の温度で加熱または加熱加圧を行うことで、好ましくは熱可塑性繊維の繊維形状がなくなり樹脂状となるまで溶融し、繊維強化プラスチックを成形することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(1)繊維長、繊度
JIS L 1015に準拠して測定した。
(2)繊径
キーエンス社製光学顕微鏡DEGITAL MICROSCOPE VHX−1000を用い1000倍で繊維断面の直径を10本測定し、その平均値とした。
(3)繊維の引張強度、伸度、弾性率
ASTM D885に準拠して測定した。
(4)ポリカーボネート樹脂のメルトボリュームフローレイト
ISO 1133に準拠して300℃、荷重1.2kgにて測定した。
(5)各繊維の融点、軟化点、熱分解開始温度
株式会社リガク社製示差熱分析装置TAS200にて窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分にて測定し算出した。
(6)交絡数
厚さ方向に切断した基材の切断面を、走査型電子顕微鏡(倍率:12倍)にて観察し、基材の厚さの半分以上の長さにわたって、厚さ方向(厚さ方向に対し、±45°以内の方向を含む)に配列している5本以上の短繊維が集束した繊維束が、基材表面1cmあたり何個あるかを数え、ケ/cmで表わした。なお、実施例で不織布Aと不織布Bの交絡数は同じとした。
(7)繊維強化プラスチックの曲げ強度、弾性率
JIS K 7171に準拠し、厚さ2mm、長さ100mm、幅10mmの試験片を用いて、支点間距離80mmでの3点曲げにて測定した。
(8)繊維強化プラスチックの衝撃強度
JIS K 7111に準拠し、厚さ2mm、長さ100mm、幅10mmの試験片を用いて測定した。
(9)耐衝撃試験(高速衝撃試験)後のサンプル破壊状態(外観)
島津製作所製高速衝撃試験機 EHF−U2H−20L型を用いて、直径1.27cmの先端が球状に加工された金属製の治具を衝撃面にて11m/秒の速度となるよう調整し、衝撃テストを実施した。テスト後のサンプル破壊状態を目視にて判定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:サンプルの最大亀裂長さが1.27mmよりも小さく、繊維強化プラスチックの飛散が認められない。
○:サンプルの最大亀裂長さは1.27mmに達するが、繊維強化プラスチックの飛散は認められない。
△:サンプルの最大亀裂長さが1.27mmに達し、繊維強化プラスチックの一部飛散が認められる。
×:サンプルの衝撃面がほぼ飛散し、1.27mm直径の円形穴が開く。
[実施例1]
繊維径7μmの炭素繊維(東邦テナックス製、引張強度4200MPa)を35mmにカットした繊維と、ポリカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライトL−1225L メルトボリュームフローレイト 18cm/10分間)を290℃にて溶融押し出しし、直径30μmのフィラメントを51mmにカットしたポリカーボネート繊維(PC繊維)を重量比で40:60に混合し、開繊機にて混合した後、カード工程を通過させることにより、繊維の引き揃え性を向上させたウェブを作成した。このようにして得られた繊維ウェブをニードルパンチ機により38番針にて針深度10mm、500本/cmの密度で打ち込みをして目付200g/mの、繊維層Aとなる不織布Aを得た。
また、繊維径12μmのアラミド繊維(コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維)(帝人テクノプロダクツ製 テクノーラ(商標)、引張強度3400MPa)を51mmにカットした繊維と上記のポリカーボネート繊維を重量比で40:60になるように混合した後、上記の不織布Aの場合と同様にして目付200g/mの繊維層Bとなる不織布Bを得た。
上記の炭素繊維とPC繊維からなる不織布Aとアラミド繊維とPC繊維からなる不織布Bとを、不織布A1枚と不織布B11枚をこの順、つまり不織布Aが一方の表面にで出るように、不織布A:不織布Bの積層比(重量比)が11:1になるように積層させ、不織布間接着温度240℃×圧力0.1MPaにて20秒間圧着することにより不織布間を接着させ、繊維強化プラスチック成形用基材を作成した。
次いで、予め離型処理を施したステンレス板で挟み、ホットプレス熱盤上にセットした後、同じく予め離型処理を施した鋼製スペーサーを使用して、プレス成型圧力5MPa、プレス成型温度が300℃にて約2mm厚の繊維強化プラスチックを作成し、不織布A(繊維層A)であった層が加圧・衝撃面(表1には衝撃面と記載)となるようにし、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃試験値を評価した。
[実施例2〜4]
実施例1の不織布Aと不織布Bの積層比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチックを作成し、評価した。
[実施例5〜8]
熱可塑性繊維を直径18μmのポリプロピレン繊維(PP繊維)とし、不織布間接着温度を180℃、プレス成型の温度を220℃とし、不織布Aと不織布Bの積層比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチックを作成し、評価した。
[実施例9、10]
炭素繊維:PC繊維の比率、および、アラミド繊維:PC繊維の比率をそれぞれ表1のように変更した以外は実施例2と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチックを作成し、評価した。
[実施例11、12]
炭素繊維:PP繊維の比率、および、アラミド繊維:PP繊維の比率をそれぞれ表1のように変更した以外は実施例6と同様にして、繊維強化プラスチック成形用基材および繊維強化プラスチックを作成し、評価した。
[比較例1]
実施例1で使用した炭素繊維、アラミド繊維、PC繊維を使用し、炭素繊維:アラミド繊維:PC繊維を重量比20:20:60にて混合し、開繊機にて混合した後、カード工程を通過させることにより、繊維の引き揃え性を向上させたウェブを作成した。このようにして得られた繊維ウェブをニードルパンチ機により38番針にて針深度10mm、500本/cmの密度で打ち込みをして目付200g/mの不織布を得た。上記不織布を12枚積層させ、不織布間接着温度240℃×圧力0.1MPaにて20秒間圧着することにより不織布間を接着させ、繊維強化プラスチック成形用基材を作成した。
次いで、予め離型処理を施したステンレス板で挟み、ホットプレス熱盤上にセットした後、同じく予め離型処理を施した鋼製スペーサーを使用して、成型圧力5MPa、成型温度が300℃にて約2mm厚の繊維強化プラスチックを作成、同様に評価した。
[比較例2]
実施例4で使用した炭素繊維、アラミド繊維、PP繊維を使用し、炭素繊維:アラミド繊維:PP繊維を重量比20:20:60にて混合し、開繊機にて混合した後、カード工程を通過させることにより、繊維の引き揃え性を向上させたウェブを作成した。このようにして得られた繊維ウェブをニードルパンチ機により38番針にて針深度10mm、500本/cmの密度で打ち込みをして目付200g/mの不織布を得た。上記不織布を12枚積層させ、不織布間接着温度180℃×圧力0.1MPaにて20秒間圧着することにより不織布間を接着させ、繊維強化プラスチック成形用基材を作成した。
次いで、予め離型処理を施したステンレス板で挟み、ホットプレス熱盤上にセットした後、同じく予め離型処理を施した鋼製スペーサーを使用して、成型圧力5MPa、成型温度が220℃にて約2mm厚の繊維強化プラスチックを作成、同様に評価した。
[参考例1]
実施例2の不織布B(繊維層B)を衝撃面として使用した以外は実施例2と同様の評価を実施した。
[参考例2]
実施例6の不織布B(繊維層B)を衝撃面として使用した以外は実施例6と同様の評価を実施した。
以上の結果を表1に示す。なお、参考例1、2では、衝撃面に不織布B(繊維層)を用いたが、表1においては、そのまま衝撃面と他の面に配される不織布の組成で表し、積層比もこれに基づき記載した。
Figure 0006046425
本発明は、優れた耐衝撃性を有する軽量な繊維強化プラスチックを提供するものであり、本発明により製造された繊維強化プラスチックは、補強用、摩擦・摺動用、自動車、船舶などの産業用部品、電気・電子機器、AV機器、OA機器、建築用の部品・部材、建材、建具、パッキン類又はシール類などに好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 炭素繊維、耐熱有機繊維、および熱可塑性繊維からなり、炭素繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Aと、耐熱性繊維と熱可塑性繊維とからなる繊維層Bとをそれぞれ1層以上積層してなり、かつ、以下の(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする繊維強化プラスチック成形用基材。
    (1)炭素繊維の重量:耐熱有機繊維の重量=15:1〜0.5:1
    (2)炭素繊維と耐熱有機繊維との総重量:熱可塑性繊維の総重量=5:95〜70:30
  2. 繊維層Aにおいて炭素繊維と熱可塑性繊維とが、繊維層Bにおいて耐熱繊維と熱可塑性繊維とがそれぞれ一部で交絡している請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  3. 耐熱有機繊維が、融点、軟化点又は熱分解開始温度が250℃以上の有機繊維である請求項1または2に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  4. 炭素繊維および耐熱有機繊維の繊維長が20〜150mmである請求項1〜3のいずれかに請求項1または2に記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  5. 耐熱有機繊維がアラミド繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  6. 熱可塑性繊維を構成する熱可塑性樹脂のISO 1133に準拠して300℃、荷重1.2kgにて測定したメルトボリュームフローレイトが16〜60cm/10分である請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  7. 熱可塑性繊維が、ポリプロプピレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  8. 繊維層Aと繊維層Bとが、熱可塑繊維の一部が溶融することによって層間で接着している請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  9. 繊維層Aを、繊維強化プラスチックとした際、圧力または衝撃を受ける面に配してなる請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形用基材を、繊維層Aまたは繊維層Bの熱可塑性繊維の融点または軟化点以上の温度で加熱処理または加熱加圧処理してなる耐衝撃性繊維強化プラスチックの製造方法。
  11. 繊維層Aが加熱処理または加熱加圧処理されてなる樹脂層が、繊維強化プラスチックの衝撃を受ける面に配されてなる請求項10の耐衝撃性繊維強化プラスチックの製造方法。
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