JP3625569B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実用上必要十分な高分子量のポリアリーレンスルフィド(PAS)の効率のよい製造方法に関する。さらに詳しくは電気、電子分野、高剛性材料分野で特に有用な、シート、フィルム、繊維等の成形および射出成形に十分に適応できる、高粘度で成形性に優れた高分子量のポリアリーレンスルフィドを効率よく安価に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS樹脂)は、一部熱硬化性を持つ熱可塑性樹脂であり、広い温度範囲にわたり、耐薬品性、機械的特性、耐熱性等に優れると共に、特に高い剛性を有するエンジニアリング樹脂として知られており、電子・電気機器部品の素材や各種の高剛性材料として有用である。
これらの樹脂の製造には、従来、N−メチル−2−ピロリドン(以下において、NMPと略称することがある。)等の非プロトン性有機溶媒中でp−ジクロロベンゼン等のジハロゲン化芳香族化合物と硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物とを重縮合反応させるという方法が一般に用いられてきた(たとえば、特公昭45−3368号公報等)。
【0003】
しかし、このようにして得られるポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィドは、必ずしも高分子量のものとは限らず、たとえばフィルム、シート、繊維になどに成形するためには、成形性が十分ではなく、熱処理により低分子量のポリアリーレンスルフィドを硬化させる必要がある等、操作が煩雑とならざるを得なかった。
そこで、前記熱処理等の必要のない高分子量のポリアリーレンスルフィドを製造する方法について従来より種々の提案がなされている。
たとえば、特開昭50−84698号公報にはアルカリ金属カルボン酸等の重合助剤を用いて高分子量化ポリアリーレンスルフィドを得る方法が記載されている。
また、特開昭61−7332号公報には二段階重合で二段階目に水を添加することで、特別な重合助剤を必要とせず、高分子量ポリアリーレンスルフィドを得る方法が記載されている。
さらに、特開昭60−104130号公報にはアルカリ金属硫化物等の含水出発物質を、水が反応混合物から蒸留によって除去される速度で導入し、反応させる方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭50−84698号公報に記載された方法では、重合助剤の添加量がアルカリ金属硫化物に対して等モル程度必要とされており、後処理の問題も含め、製造コストが増大し、工業的に不利であった。
また、特開昭61−7332号公報に記載された方法では、水を多量に使用するため反応器の圧力が高圧となり、設備上、不利であった。
さらに、特開昭60−104130号公報に記載された方法は、無水状態の反応混合物を得るため、水分を制御する反応物の導入方法に関するものであり、高分子量を得ることについて何等記載されていない。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、特別な重合助剤、反応器を必要とせず、安価に高分子量のポリアリーレンスルフィドを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、非プロトン性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物とを重合成分として重合するポリアリーレンスルフィドの製造方法において、第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液I)中に、または第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一旦系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液I′)中に、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加して、さらに第二段階の重合をすることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0007】
また、その好ましい態様として、前記第二段階の重合の終了後、第二段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液II)中に、または第二段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一度系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液II′)中に、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第二段階の重合開始時に添加した量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加して、さらに第三段階の重合をすることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0008】
また、その好ましい態様として、前記第三段階の重合の終了後、さらに前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加と重合とを、一回以上、前記と同様に繰り返し、かつ、そのアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加に際し、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を第二段階から直前段階までのそれぞれの重合開始時に添加した総添加量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0009】
さらに、その好ましい態様として、前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加時期が、重合中における前記ポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が80〜99%に達したときであることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明は非プロトン性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物とを重合成分として重合し、第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液I)、または第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一旦系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液I′)中にアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは2〜5モル%となるように添加して、さらに第二段階の重合をすることを特徴とする。
1.重合成分
(1)非プロトン性有機溶媒
本発明に用いられる非プロトン性有機溶媒としては、一般に、非プロトン性の極性有機化合物(たとえば、アミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,環式有機リン化合物等)を、単独溶媒として、または、混合溶媒として、好適に使用することができる。
【0011】
これらの非プロトン性の極性有機化合物のうち、前記アミド化合物としては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチル安息香酸アミドなとを挙げることができる。
【0012】
また、前記ラクタム化合物としては、たとえば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−イソプロピルカプロラクタム、N−イソブチルカプロラクタム、N−ノルマルプロピルカプロラクタム、N−ノルマルブチルカプロラクタム、N−シクロヘキシルカプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−ノルマルプロピル−2−ピロリドン、N−ノルマルブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソプロピル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチル−2−ピペリドンなどを挙げることができる。
【0013】
また、前記尿素化合物としては、たとえば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などを挙げることができる。
【0014】
さらに、前記有機イオウ化合物としては、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホランなどを、また、前記環式有機リン化合物としては、たとえば、1−メチル−1−オキソホスホラン、1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン、1−フェニル−1−オキソホスホランなどを挙げることができる。
【0015】
これら各種の非プロトン性有機化合物は、それぞれ一種単独で、または二種以上を混合して、さらには、本発明の目的に支障のない他の溶媒成分と混合して、前記非プロトン性有機溶媒として使用することができる。
【0016】
前記各種の非プロトン性有機溶媒の中でも、好ましいのはN−アルキルカプロラクタム及びN−アルキルピロリドンであり、特に好ましいのはN−メチル−2−ピロリドンである。
【0017】
(2)アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物
▲1▼本発明に用いられるアルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等を挙げることができる。これらの中で、好ましいのは硫化リチウム、硫化ナトリウムであり、特に好ましいのは硫化リチウムである。
▲2▼本発明に用いられるアルカリ土類金属としては、硫化カルシウム、硫化マグネシウム、硫化ストロンチウム等を挙げることができる。
なお、▲1▼と▲2▼とを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0018】
(3)ポリハロゲン化芳香族化合物
本発明に用いられるジハロゲン化芳香族化合物としては、特に制限はないが、ポリアリーレンスルフィドの製造に用いられる公知の化合物を好適例として挙げることができる。
【0019】
たとえば、m−ジハロゲンベンゼン、p−ジハロゲンベンゼン等のジハロゲンベンゼン類;2,3−ジハロゲントルエン、2,5−ジハロゲントルエン、2,6−ジハロゲントルエン、3,4−ジハロゲントルエン、2,5−ジハロゲンキシレン、1−エチル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ジハロゲンベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジハロゲンベンゼンなどのアルキル置換ジハロゲンベンゼン類またはシクロアルキル置換ジハロゲンベンゼン類;1−フェニル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジハロゲンベンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジハロゲンベンゼン等のアリール置換ジハロゲンベンゼン類;4,4’−ジハロビフェニル等のジハロビフェニル類:1,4−ジハロナフタレン、1,6−ジハロナフタレン、2,6−ジハロナフタレリチウムを除くアルカリ金属の水酸化物とを反応させてN−メチルアミノ酪酸4,ン等のジハロナフタレン類などを挙げることができる。
【0020】
これらのポリハロゲン化芳香族化合物における複数個のハロゲン元素は、それぞれフッ素、塩素,臭素またはヨウ素であり、それらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0021】
これらの中でも、好ましいのはジハロゲンベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロロベンゼンを50モル%以上含むものである。
【0022】
(4)使用割合
前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物との第一段階の重合開始時の配合割合は、モル比で、ポリハロゲン化芳香族化合物/アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属の硫化物=0.90〜1.30とすることが好ましく、0.95〜1.25がさらに好ましく、中でも0.95〜1.20とすることが最も好ましい。モル比を0.90〜1.30とすることにより重合反応が円滑に進む。
【0023】
前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と非プロトン性有機溶媒との配合割合は、モル比で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物/非プロトン性有機溶媒=0.05〜0.30とすることが好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましく、中でも0.10〜0.25とすることが最も好ましい。モル比を0.05〜0.30とすることにより重合反応が円滑に進む。
【0024】
非プロトン性有機溶媒中に含まれる水分量は、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物1モル当り、2.5モル以下とすることが好ましい。2.5モルを超えると、重合が進行せず、高分子量のポリアリーレンスルフィドを得ることができない。
【0025】
追加して添加するアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の量は、第一段階の重合開始時に使用するポリハロゲン化芳香族化合物に対し、1〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは2〜5モル%となるようにする。1モル%未満では所期の効果が得られないし、15モル%を超えると分解反応が生じることがある。
【0026】
本発明においては、必要に応じて、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、1分子中に3個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物、およびハロゲン化芳香族ニトロ化合物などの分岐剤を適当に選択して反応系に添加し、これを使用することもできる。
【0027】
必要に応じて使用される前記分岐剤の使用割合は、前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物1モルに対し、通常、0.0005〜0.05モル、好ましくは0.001〜0.02モルである。
【0028】
2.重合条件
非プロトン性有機溶媒におけるアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物とポリハロゲン化芳香族化合物との重合反応としては、ポリアリーレンスルフィドが生成する条件であれば特に制限はない。具体的には、予備重合後本重合することが、より高分子量のポリアリーレンスルフィドを重合することができ、反応時間も短くすることができるため好ましい。まず予備重合の条件としては、重合温度が、180〜245℃が好ましく、さらに好ましくは200〜245℃である。また、このポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が好ましくは80%以上、さらに好ましくは80〜95%となる条件で予備重合を行なうことが好ましい。重合温度が180℃未満であると予備重合が不十分になり、245℃を超えると重合系において、ポリマー相が攪拌翼に凝集、付着するおそれがある。本重合としては、重合温度が235〜280℃がこのましく、特に好ましくは240〜280℃である。また、このポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が90〜99%となるまで重合させることが好ましい。
【0029】
追加して添加するアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加時期は、ポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が80〜99%となる時に添加するのが好ましく、さらに好ましくは85〜99%が、中でも90〜99%が最も好ましい。
【0030】
アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加前のポリアリーレンスルフィドとしては特に制限がなく、例えばかなり低分子量(ηinh が0.05)のポリアリーレンスルフィドから、かなり高分子量(ηinh が0.35)のポリアリーレンスルフィドのいずれであってもよい。通常はηinh =0.1〜0.35のものを、好ましくは、ηinh =0.15〜0.35のものを使用する。
【0031】
なお、重合助剤は添加しても、しなくてもよい。添加しなくても十分に高分子量のポリアリーレンスルフィドを製造することができる。添加する場合は、たとえば塩化リチウム、フッ化リチウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム等を用いることができる。
これらの中でも、特に好ましいのは塩化リチウムである。
【0032】
本発明においては、第二段階の重合の終了後、第二段階の重合で得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液II)中に、または第二段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一旦系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液II′)中に、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第二段階の重合開始時に添加した量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化合物の1〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは2〜5モル%となるように添加して、さらに第三段階の重合をさせてもよい。この場合の重合条件は前記と同様である。
【0033】
また、第三段階の重合の終了後、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を1回以上、前記と同様に繰り返して添加し、重合させてもよい。このアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加に際し、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を各段階において、それぞれ添加した総添加量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加することが好ましい。すなわち、n段階の重合の場合(nは4以上の自然数)、それ以前(第二段階から第(n−1)段階まで)の総添加量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%、好ましくは、1〜10モル%、さらに好ましくは、2〜5モル%となるように添加する。この場合も、重合条件は、上記の場合と同様である。
【0034】
なお、このようにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加を複数回繰り返し、重合する方法は、連続式重合法、多段重合法、およびそれらを組み合わせた方法等において特に好適に用いることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
<硫化リチウムを主成分とする原料の合成>
アルカリ金属硫化物として水酸化リチウムと硫化水素とから硫化リチウムを主成分とする原料を下記のように合成した。
攪拌翼のついた5リットルセバラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3kg(30.3モル)、無水水酸化リチウムの359.3g(15モル)を入れ、130℃に昇温した。昇温後硫化水素を700ml/min.の供給速度で7時間液中に吹き込んだ。硫化水素を吹き込む間の液温は常に130℃を保つように制御した。その後、硫化水素の供給を停止し、180℃に昇温して所定量の硫化水素と大部分の水とを留去し、さらにトルエンを添加して2時間脱水を続けた。
得られた錯体を分析した結果、錯体1g当たりのS、Li、NMP量はそれぞれ、S:2.21×10−3(モル/グラム)、Li:4.28×10−3(モル/グラム)、NMP0.899(グラム/グラム)であった。
【0036】
[実施例1]
1リットルオートクレーブに前記硫化リチウムを主成分とする原料226.35g(0.50モル)、p−ジクロロベンゼン73.51g(0.50モル)、無水水酸化リチウム1.35g(0.06モル)、NMP19.32g(0.19モル)を入れ、密閉系で240℃、1.5時間予備重合を行なった。予備重合終了後の溶液のガスクロマトグラフ分析の結果、p−ジクロロベンゼンの添加率は93%であった。ここで硫化リチウムを主成分とする原料11.32g(0.025モル)を添加し、さらに260℃で3時間本重合を行なった。重合終了後、冷却し、水、アセトンで洗浄し、乾燥を行ない、ポリマーを得た。得られたポリマーをα−クロロナフタレンに0.4dl/gの濃度になるように溶解し、206℃の温度でウベローデ粘度計で溶液粘度を測定したところ0.348であった。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、追加して添加する硫化リチウムを主成分とする原料を4.53g(0.01モル)としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.340であった。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、追加して添加する硫化リチウムを主成分とする原料を22.64g(0.05モル)としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.239であった。
【0039】
[実施例4]
実施例1において、追加して添加する硫化リチウムを主成分とする原料を33.95g(0.075モル)としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.226であった。
【0040】
[比較例1]
実施例1において、硫化リチウムを主成分とする原料を追加して添加しなかったこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.207であった。高分子量ポリマーを得ることができなかった。
【0041】
[比較例2]
実施例1において、追加して添加する硫化リチウムを主成分とする原料を45.27g(0.10モル)としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、解重合反応が生じ、ポリマーは得られなかった。
【0042】
[実施例5]
実施例1において、240℃、1.5時間予備重合を行ない、さらに260℃で3時間本重合を行なった後、硫化リチウムを主成分とする原料11.32g(0.025モル)を添加し、さらに260℃で1時間重合を行なったこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.385であった。なお、追加添加時のp−ジクロロベンゼンの転化率は97%であった。
【0043】
[実施例6]
実施例1において、予備重合時間を0.5時間としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.255であった。なお、追加添加時のp−ジクロロベンゼンの転化率は86%であった。
【0044】
[比較例3]
実施例1において、予備重合時間を0.3時間としたこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.194で高分子量ポリマーを得ることができなかった。なお、追加添加時のp−ジクロロベンゼンの転化率は74%であった。
【0045】
[比較例4]
実施例1において、初めの硫化リチウムを主成分とする原料の仕込み量を249.00g(0.55モル)とし、追加添加を行なわなかったこと以外は実施例1と同様にした。その結果、生成ポリマーの溶液粘度ηinh は0.168で,高分子量ポリマーを得ることができなかった。
【0046】
[比較例5]
実施例1において、硫化リチウムを主成分とする原料の代わりにp−ジクロロベンゼンを10モル%、その転化率が93%のときに転化したこと以外は実施例1と同様にした。
【0047】
以上の結果を、まとめて表1に示す。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、高粘度で成形性に優れたポリアリーレンスルフィドを特別な重合助剤、反応器を必要とせず、安価に提供することができる。
Claims (4)
- 非プロトン性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物と、ポリハロゲン化芳香族化合物とを重合成分として重合するポリアリーレンスルフィドの製造方法において、
第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液I)中に、または第一段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一旦系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液I′)中に、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加して、さらに第二段階の重合をすることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。 - 前記第二段階の重合の終了後、第二段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドが溶解する重合溶液(溶液II)中に、または第二段階の重合によって得られたポリアリーレンスルフィドを一度系外に取り出し、再度そのポリアリーレンスルフィドを非プロトン性有機溶媒中に溶解させた溶液(溶液II′)中に、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を、第二段階の重合開始時に添加した量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加して、さらに第三段階の重合をすることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記第三段階の重合の終了後、さらに前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加と重合とを、一回以上、前記と同様に繰り返し、かつ、そのアルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加に際し、アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物を第二段階から直前段階までのそれぞれの重合開始時に添加した総添加量との合計量として、第一段階の重合開始時に用いたポリハロゲン化芳香族化合物の1〜15モル%となるように添加することを特徴とする請求項2記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 前記アルカリ金属硫化物及び/又はアルカリ土類金属硫化物の添加時期が、重合中における前記ポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が80〜99%に達したときであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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