JP2012162792A - インジウムターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性が安定なインジウムターゲット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織を有し、柱状晶組織の体積含有率が90〜100%であるインジウムターゲット。
【選択図】図5

Description

本発明はスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、より詳細にはインジウムターゲット及びその製造方法に関する。
インジウムは、Cu−In−Ga−Se系(CIGS系)薄膜太陽電池の光吸収層形成用のスパッタリングターゲットとして使用されている。
従来、インジウムターゲットは、特許文献1に開示されているように、バッキングプレート上にインジウム等を付着させた後、バッキングプレート上に金型を設け、該金型にインジウムを流し込み鋳造することで作製されている。
特公昭63−44820号公報
しかしながら、この様な従来の溶解鋳造法で作製されたインジウムターゲットは、スパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性の安定性について未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、スパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性が安定なインジウムターゲット及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したところ、インジウムターゲットの組織の形状が、スパッタ開始から終了までのスパッタレートや放電電圧等のスパッタ特性の安定性に大きく影響することを見出した。すなわち、ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織が多く形成されているインジウムターゲットは、そのような柱状晶組織が形成されていないインジウムターゲットに比べてスパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性が安定となることを見出した。また、従来の溶解鋳造法は、金型にインジウムを流し込んだ後、放冷して鋳造することでインジウムインゴットを得ているが、金型に流し込んだインジウムを放冷して鋳造すると、成長するインジウムの組織が粒状結晶や柱状結晶の混合組織となり、また粒子サイズが各部位の冷却速度の差により違いが生じてしまうことに着目し、このときの冷却速度を制御することで上述の柱状晶組織を形成することができることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織を有し、柱状晶組織の体積含有率が90〜100%であるインジウムターゲットである。
本発明に係るインジウムターゲットは一実施形態において、柱状晶組織の体積含有率が95〜100%である。
本発明に係るインジウムターゲットは別の一実施形態において、ターゲットの厚さ方向と垂直な方向における断面において、前記柱状晶組織の平均粒径が0.1〜50mmである。
本発明に係るインジウムターゲットは更に別の一実施形態において、Cu、Ni又はFe濃度が1000wtppm以下である。
本発明は別の一側面において、溶融したインジウム原料を鋳型に流し込む工程と、鋳型に流し込んだインジウム原料の少なくとも上面側から表面全体を均一に冷媒を用いて冷却し、溶融状態から固体状態への相変化を15分以内に完了する工程とを含んだインジウムターゲットの製造方法である。凝固の完了は、冷媒が直接または間接的に接している部分から最も離れたインジウム中の点の温度がインジウムの凝固点である156℃を下回った時点とする。例えば、表面側から冷却した場合、バッキングプレートとインジウムとの界面の温度が156℃以下となった時点であり、インジウム中にターゲット作製の妨げにならない領域で熱電対を差し込んで測っても良く、また、利便性のため、ターゲット界面以上の温度であるバッキングプレート裏面の温度を測定しても良い。
本発明は更に別の一側面において、インジウムターゲットを加温し、溶融する直前においてインジウムターゲットを割り、露出させた断面を観察して評価する方法であり、溶融する直前は、インジウムターゲットの露出される断面部位の温度が156℃となるときであるインジウムターゲット断面の評価方法である。
本発明によれば、スパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性が安定なインジウムターゲット及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係るインジウムターゲットの断面写真の例である。 本発明に係る他のインジウムターゲットの断面写真の例である。 鋳造工程において放冷により作製されたインジウムターゲットの断面写真の例である。 図1に対応するインジウムターゲットの断面模式図である。 図2に対応するインジウムターゲットの断面模式図である。 図3に対応するインジウムターゲットの断面模式図である。 実施例及び比較例の成膜レートの評価結果を示すグラフである。 実施例及び比較例の放電電圧の評価結果を示すグラフである。
本発明に係るインジウムターゲットは、5〜20mmの厚さの矩形や円形の板状に形成されている。本発明に係るインジウムターゲットは、図1及び2、図4及び5に示すように、ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織を有している。ここで、図1は、後述するインジウムターゲットの鋳造工程においてターゲットの表面から水を冷媒として、20秒で凝固させることにより作製されたインジウムターゲットの断面写真である。図2は、同様に、インジウムターゲットの鋳造工程においてターゲットの表面から氷を冷媒として、10秒で凝固させることにより作製されたインジウムターゲットの断面写真である。図3は、インジウムターゲットの鋳造工程において冷媒を用いず、放冷により17分かけて凝固させることにより作製されたインジウムターゲットの断面写真である。また、図4〜6は、それぞれ図1〜3に対応するインジウムターゲットの断面模式図である。
このように、鋳造工程において少なくともターゲットの表面方向から表面全体を均一に冷媒を用いて所定の冷却速度により急冷して作製したインジウムターゲットは、ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織が形成されている。そのため、スパッタ開始から終了までスパッタされる面は常に同じ結晶の分布となり、スパッタリングが進行し、エロージョンが深くなった後も、スパッタ初期同様の特性を維持することが可能となる。一方、鋳造工程において放冷により作製したインジウムターゲットは、粒状の組織と柱状の組織とが混在し、且つ、柱状の組織がターゲットの一方の表面から他方の表面にまで到達しておらず、さらに、柱状の組織の体積含有率も小さい。このようなターゲットは、ターゲット内に表面および側面方向から伸びた柱状晶組織が存在し、さらにターゲット中央部には粒状の結晶が存在している。このため、スパッタリングが進行し、エロージョンが深くなるにつれて、スパッタ面の各結晶は、スパッタ初期とは異なる分布を示すようになる。このため、スパッタ開始から終了までで、エロージョンのされ方が不均一となり、スパッタ特性が不安定となる。
本発明に係るインジウムターゲットは、柱状晶組織の体積含有率が90〜100%である。このように、粒状の組織と柱状の組織とが混在しているのではなく、ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけてターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織となっており、且つ、その体積含有率が90〜100%であることにより、ターゲットの厚さ方向には組織の変化がなく、スパッタ開始から終了までスパッタされる面は常に同じ結晶の分布となり、それを用いたスパッタリングのスパッタ開始から終了までの成膜レートや放電電圧等のスパッタ特性が安定となる。柱状晶組織の体積含有率は、好ましくは92〜100%であり、より好ましくは95〜100%である。柱状晶組織の体積含有率が90%を下回ると、スパッタ特性にバラツキが見られ始める。
本発明に係るインジウムターゲットは、ターゲットの厚さ方向と垂直な方向における断面において、柱状晶組織の平均粒径が0.1〜50mmであってもよい。このような形態によれば、スパッタ面内に存在する粒子の総数が増え、スパッタされる結晶面に依存するスパッタ特性のばらつきを相殺でき、スパッタ面全体が均一な特性を示すようになる。柱状晶組織の平均粒径は、好ましくは0.1〜10mmであり、より好ましくは0.1〜5mmである。
本発明に係るインジウムターゲットは、バッキングプレート由来の金属であるCu、Ni又はFeの濃度が1000wtppm以下である。本発明によれば、冷却速度を放冷よりも早めるため、それだけターゲット内への不純物の混入が少なくなり、最終的に作製される太陽電池の変換効率の低下が抑制できる。Cu、Ni又はFeの濃度は、好ましくは500wtppm以下であり、より好ましくは300wtppm以下である。
次に、本発明に係るインジウムターゲットの製造方法の好適な例を順を追って説明する。まず、インジウム原料を溶融し、バッキングプレート上に設けた鋳型に流し込む。使用するインジウム原料は、不純物が含まれていると、その原料によって作製される太陽電池の変換効率が低下してしまうという理由により高い純度を有していることが望ましく、例えば、純度99.99質量%以上のインジウム原料を使用することができる。
次に、鋳型に流し込んだインジウム原料の少なくとも上面側から表面全体を均一に冷媒を用いて冷却し、15分以内に溶融状態から凝固状態への相変化を完了してインジウムターゲットを形成する。このとき使用する冷媒としては、冷気、水、油、アルコール等を挙げることができる。冷気を用いる場合は、インジウム原料を直接又は間接的に冷却する。水、油、アルコール等を用いる場合は、インジウム原料を間接的に冷却する。冷媒による冷却は、鋳型に流し込んだインジウム原料の上面側のみならず、工程の効率化のため、さらに側面側及び/又は底面側から行っても良い。このように鋳型に流し込んだインジウム原料を急冷することで、柱状晶組織が良好に成長する。また、鋳造工程におけるバッキングプレートとの接触時間が短くなり、それだけバッキングプレート由来のCu、Ni又はFe等の不純物の混入が抑制される。上記インジウム原料の相変化にかかる時間は、好ましくは5分以内であり、より好ましくは1分以内である。
続いて、得られたインジウムターゲットを必要であれば所望の厚さ、形状までマシニングセンタやフライス、スクレーパーにより加工し、さらに必要であれば酸洗や脱脂を行う。
このようにして得られたインジウムターゲットは、CIGS系薄膜太陽電池用光吸収層のスパッタリングターゲットとして好適に使用することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1)
直径250mm、厚さ5mmの銅製のバッキングプレート上に内径205mm、高さ15mmの円筒状の鋳型を固定し、その内部に180℃で溶融させたインジウム原料(純度4N)を10mmの深さまで流し込んだ後、上面から氷水を冷媒とし、溶融状態から固体状態への相変化を10秒で完了し、さらに鋳型を取り除いた後旋盤加工し、円盤状のインジウムターゲット(直径204mm×厚み5mm)を形成した。
(実施例2)
冷媒として水を用いて、インジウムの溶融状態から固体状態への相変化を20秒で完了した以外は、実施例1と同様の条件でインジウムターゲットを作製した。
(実施例3)
冷媒として冷風を用いて、インジウムの溶融状態から固体状態への相変化を300秒で完了した以外は、実施例1と同様の条件でインジウムターゲットを作製した。
(実施例4)
冷媒として大気(送風)を用いて、インジウムの溶融状態から固体状態への相変化を500秒で完了した以外は、実施例1と同様の条件でインジウムターゲットを作製した。
(比較例1)
鋳型のインジウム原料を大気放冷により冷却し、インジウムの溶融状態から固体状態への相変化を1000秒で完了した以外は、実施例1と同様の条件でインジウムターゲットを作製した。
(比較例2)
インジウム原料を250℃で溶融させ、鋳型のインジウム原料を大気放冷により冷却し、インジウムの溶融状態から固体状態への相変化を1800秒で完了した以外は、実施例1と同様の条件でインジウムターゲットを作製した。
(評価)
〔柱状晶組織の体積含有率〕
実施例及び比較例で得られたインジウムターゲットを、それぞれインジウムターゲットを加温し、溶融する直前においてインジウムターゲットを割り、露出させた断面を観察して評価する。「溶融する直前」とは、インジウムターゲットの露出される断面部位の温度が156℃となるときである。インジウムターゲットの割り方としては、例えば、溶融する直前でターゲットの観察したい断面部位の両脇を持ち、ターゲットを折る、もしくは曲げてもよい。また、156℃に達したインジウムは粒界に沿って非常に割れやすくなっているため、前述した、折る又は曲げるという力の加え方の他に、叩く、引っ張る、押すといった力の加え方をしてもよい。また、ターゲットは手で持って前述した力を加えてもよいし、ペンチ等の道具によりターゲットを掴んで前述した力を加えてもよい。
この断面の結晶組織をデジタルカメラにより撮影し、柱状晶組織の体積含有率を評価した。
なお、インジウムターゲットの上記断面の結晶組織は、従来の観察方法では正確には観察できないものであった。すなわち、従来の観察方法である切断により断面を露出させる方法では、切断面そのままでは表面がなめてしまっているため、結晶粒界を観察できず、さらにエッチングを行って結晶粒界を露出させることになる。このような方法では、切断した段階で、断面に歪が発生し且つ再結晶化してしまい、本来の結晶粒界を観察することはできない。また、断面の露出には、液体窒素冷却後の破壊による露出もあるが、本発明におけるインジウムターゲットは液体窒素冷却を行っても破壊できないため、このような方法を採用することができない。これに対し、本発明では、インジウムターゲットの断面の結晶組織を上述のような方法で観察するため、本来の結晶粒界を正確に観察することができる。
〔柱状晶組織の平均粒径〕
実施例及び比較例で得られたインジウムターゲットの厚さ方向と垂直な方向における断面の柱状晶組織の平均粒径は以下の手法で評価した。当該断面をデジタルカメラにより撮影し、その画像の断面の任意の領域内(長方形、面積をSmm2とする)に存在する結晶粒の個数(N)を数えた。ただし、領域の境界に跨って存在する結晶粒は0.5個とし、四角に存在する結晶粒は0.25個とした。測定対象領域の面積(S)をNで割ることによって、結晶粒の平均面積(s)を算出した。結晶粒を球と仮定して、平均結晶粒径(A)を以下の式で算出した。
A=2(s/π)1/2
〔不純物濃度〕
実施例及び比較例で得られたインジウムターゲットの不純物濃度(バッキングプレート由来の銅濃度)をICP発光分析法(Seiko Instrument Inc.製、SPS3000 ICP 発光分光分析装置)よって評価した。
〔スパッタ特性〕
実施例及び比較例で得られたインジウムターゲットについて、スパッタ開始からの成膜レートおよび放電電圧の経時変化を観察した。具体的には、下記条件で連続スパッタし、4kWhごとにスパッタリング装置付属の電圧計にて放電電圧を測定し、続いて基板を入れ替え3分間成膜し、膜厚を測定した。なお、膜厚の測定にはアルバック社製Dektak8を使用した。
スパッタリング条件は次の通りである。
・スパッタリング装置: キャノンアネルバ社製、SPF−313H
・ターゲットサイズ: φ8インチ×5mmt
・スパッタガス: Ar
・スパッタガス圧: 0.5Pa
・スパッタガス流量: 50SCCM
・スパッタリング温度: R.T.(無加熱)
・投入スパッタパワー密度: 2.0W/cm2
・基板: コーニング社製イーグル2000、φ4インチ×0.7mmt
各測定結果を表1及び2に示す。また、表2における成膜レート及び放電電圧の評価結果を図7及び8にそれぞれ示す。
実施例1〜4は、いずれも、スパッタ開始から終了までのスパッタレート及び放電電圧の安定性が良好であった。
比較例1及び2は、いずれも、相変化完了時間が15分を超えており、柱状晶組織の体積含有率が90%未満であり、成膜レート及び放電電圧の安定性が不良であった。

Claims (6)

  1. ターゲットの一方の表面から他方の表面にかけて前記ターゲットの厚さ方向に延びる柱状晶組織を有し、前記柱状晶組織の体積含有率が90〜100%であるインジウムターゲット。
  2. 前記柱状晶組織の体積含有率が95〜100%である請求項1に記載のインジウムターゲット。
  3. 前記ターゲットの厚さ方向と垂直な方向における断面において、前記柱状晶組織の平均粒径が0.1〜50mmである請求項1又は2に記載のインジウムターゲット。
  4. Cu、Ni又はFe濃度が1000wtppm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のインジウムターゲット。
  5. 溶融したインジウム原料を鋳型に流し込む工程と、
    前記鋳型に流し込んだインジウム原料の少なくとも上面側から表面全体を均一に冷媒を用いて冷却し、溶融状態から固体状態への相変化を15分以内に完了する工程と、
    を含んだインジウムターゲットの製造方法。
  6. インジウムターゲットを加温し、溶融する直前において前記インジウムターゲットを割り、露出させた断面を観察して評価する方法であり、
    前記溶融する直前は、前記インジウムターゲットの露出される断面部位の温度が156℃となるときであるインジウムターゲット断面の評価方法。
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