JP2011146254A - リン酸鉄リチウムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン酸、カルボン酸およびリチウム源を含む水溶液に、酸素を含有する鉄粒子を添加して酸化雰囲気下で反応させる合成工程と、前記合成工程で得られた反応液を乾燥するリン酸鉄リチウム前駆体生成工程と、前リン酸鉄リチウム前駆体生成工程で得られたリン酸鉄リチウム前駆体を非酸化性雰囲気下で焼成してリン酸リチウムを得る一次焼成工程により、リン酸鉄リチウムを製造する。
【選択図】なし
Description
そのため、大型機器を睨んだリチウムイオン電池の用途展開には、従前のコバルト酸リチウムよりも安価で、しかも熱的、化学的に安定で安全性の高い正極活物質の開発が不可欠である。
かかる問題の解決策としては、リン酸鉄リチウム粒子の表面に導電性物質を被覆し、かつリン酸鉄リチウム粒子を微細化(約100nm以下)して反応表面積を増大させることが有効とされている。また、他元素をドープすることが、電子伝導性の改善や結晶構造の安定化に有効であるという報告もある。
例えば、特許文献1には、まず金属鉄とリン酸イオンを遊離する化合物とを水溶液中で反応させ、その後、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムを加えてリン酸鉄リチウムの前駆体を調製して乾燥し、この乾燥物を300〜450℃の温度範囲で一次焼成、ついで熱分解により導電性炭素を生成する物質を加えて500〜800℃で焼成する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載された上記方法では、有機酸あるいは混合有機酸で鉄を酸化して有効な2価鉄を生成させるとあるものの、2価鉄を安定して存在させることは難しいという問題があった。また、リチウム塩が硝酸リチウムである場合には硝酸イオンが焼成時に酸化剤として作用する。更に、リチウム塩として酢酸リチウムを使用することも可能であるが、酢酸リチウムは高価な原料であるため、低コスト化を図る上では不適当である。また、上記方法では、前駆体溶液に熱分解炭素を生成する有機化合物を混合しているが、この有機化合物は焼成時に単独で炭化するものもあり、リン酸鉄リチウム粒子の表面を熱分解炭素で有効に被覆することができない。
しかしながら、上記方法では鉄粉末がリン酸と反応する際にクエン酸がキレート剤としては有効に作用していないため、前駆体中の鉄が3価まで酸化されて3価の鉄化合物であるリン酸第二鉄が生成している。また、導電性酸化物として酸化バナジウムV2O5を加える例が記載されているが、上記方法では酸化バナジウムをリン酸鉄リチウムの前駆体が生成した後に加えているため、バナジウムはドープされずにリン酸鉄リチウム粒子の周囲に付着する。
しかしながら、特許文献4に記載された方法も、特許文献2の方法と同様、2価鉄を安定して存在させることは難しいという問題を残していた。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、鉄粒子の反応を制御することにより、原子レベルで均一に混合したリン酸鉄リチウムの前駆体を調製し、安価でかつ放電容量の高いリン酸鉄リチウムからなる正極活物質を安定して得ることができるリン酸鉄リチウムの製造方法を提供することを目的とする。
(1)リン酸、カルボン酸およびリチウム源を含む水溶液に、酸素を0.5質量%以上含有する鉄粒子を添加し、酸化雰囲気下で上記水溶液中の成分と上記鉄粒子とを反応させて反応液を作製する合成工程と、
上記合成工程で得られた反応液を乾燥させてリン酸鉄リチウム前駆体を生成する前駆体生成工程と、
上記前駆体生成工程で得られたリン酸鉄リチウム前駆体を非酸化性雰囲気下で焼成してリン酸鉄リチウムを得る一次焼成工程とを有することを特徴とする、リン酸鉄リチウムの製造方法。
本発明によるリン酸鉄リチウムの製造方法は、リン酸と、カルボン酸と、リチウム源とを含む水溶液に、酸素を0.5質量%以上含有する鉄粒子を添加し、酸化雰囲気下で上記水溶液中の成分と上記鉄粒子とを反応させて反応液を作製する合成工程と、
上記合成工程で得られた反応液を乾燥させてリン酸鉄リチウム前駆体を生成する前駆体生成工程と、
上記前駆体生成工程で得られたリン酸鉄リチウム前駆体を非酸化性雰囲気下で焼成してリン酸鉄リチウムを得る一次焼成工程とを有することを特徴とする。
また、水アトマイズ鉄粉を原料とする場合には、溶鋼を高圧水で粉化、冷却後の乾燥工程で積極的に空気と接触させればよい。
鉄粒子の純度を上げる場合、通常、原料鉄粉を水素還元して、酸素含有量が0.4質量%程度以下のものを作る。したがって、本発明に用いる鉄粒子は、この水素還元の程度を調整すればよい。
また、上記残炭率は20質量%以下とすることが好ましく、20質量%を超えると焼成後の残炭量が過剰となる。上記カルボン酸の残炭率は、酒石酸:7質量%、リンゴ酸:12質量%、クエン酸一水和物:7質量%であり、シュウ酸二水和物、酢酸などは1質量%未満である。
なお、本発明において「残炭率」とは、焼成後に残留する炭素をJIS G 1211(1995年)高周波誘導加熱炉燃焼−赤外線吸収法に準拠して定量し、元のカルボン酸量で除した値とした。
そこで、本発明では、上記反応時の雰囲気を酸化雰囲気とすることにより、鉄粒子表面を適度に酸化して酸素を補い、キレート反応を持続させるのである。本発明において酸化雰囲気とは、水溶液中の鉄粒子の表面を適度に酸化させることができる状態であり、例えば水溶液界面を酸素含有ガスと接触させる、或いは、水溶液中に溶存酸素、酸素含有ガスのバブルまたはナノバブルを導入する等による。また、具体的な操作としては、空気雰囲気下での撹拌や、空気のバブリングなどが挙げられる。
また、この反応液を乾燥した乾燥物(リン酸鉄リチウム前駆体)についてX線回折分析を行うと、結晶質の化合物は検出されず、原子レベルで均一に混合したキレート体に起因するアモルファス相が確認される。
蒸留水:2000gに、85質量%のリン酸:10mol、クエン酸一水和物:2molおよび炭酸リチウム:5molを溶解し、この混合溶液に鉄粉(JFEスチール(株)製、酸素含有量:0.68質量%、平均粒径:80μm、見掛け密度:3.18g/cm3):10molを添加して、液温:25〜30℃、空気雰囲気下で撹拌しながら1日間反応させた。この反応液をスプレードライヤ(大川原化工機製FOC16)を用いて入口温度:200℃で乾燥し、平均粒径がSEM観察より約30μmの乾燥粉末を得た。この乾燥粉末に、窒素気流中にて400℃×5hの一次焼成を施し、更に一次焼成物全量に炭素源としてアスコルビン酸:40gを加えてボールミルにて湿式粉砕・混合を行った。得られた混合物を乾燥後、窒素気流中にて700℃×10hの二次焼成を施し、最後に目開き75μmで篩い、リン酸鉄リチウムを調製した。
なお、鉄粉の酸素 含有量は、LECO社製TC436を用いて定量した。
また、鉄粉の見掛け密度は、JIS Z 2504(2000年)に準じて測定した。
実施例1において、クエン酸一水和物に代えてリンゴ酸:2molを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、クエン酸一水和物に代えて酒石酸:2molを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、クエン酸一水和物を2.5molとし、一次焼成物にアスコルビン酸を 加えなかったこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、鉄粉(キシダ化学(株)製、酸素含有量:1.55質量%、平均粒径:70μm、見掛け密度:2.47g/cm3)を使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、リン酸、クエン酸一水和物および炭酸リチウムの混合溶液に、バナジウム源の五酸化バナジウムV2O5を0.05mol(鉄元素の1mol%置換)を加えて溶解させ、この混合溶液に実施例1と同じ鉄粉:9.9molを添加したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、リン酸、クエン酸一水和物および炭酸リチウムの混合溶液に、チタン源の硫酸チタニルを0.15mol(鉄元素の1mol%置換)を加えて溶解させ、この混合溶液に実施例1と同じ鉄粉:9.9molを添加したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、リン酸、クエン酸一水和物および炭酸リチウムの混合溶液に、マグネシウム源の酸化マグネシウムを0.1mol(鉄元素の1mol%置換)を加えて溶解させ、この混合溶液に実施例1と同じ鉄粉:9.9molを添加したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、リン酸、クエン酸一水和物および炭酸リチウムの混合溶液に、マンガン源の酢酸マンガンを0.1mol(鉄元素の1mol%置換)を加えて溶解させ、この混合溶液に実施例1と同じ鉄粉:9.9molを添加したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、鉄粉(JFEスチール(株)製、酸素含有量:0.41質量%、平均粒径:80μm、見掛け密度:2.55g/cm3)を使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、鉄粉を添加した後の撹拌を窒素雰囲気下で行ったこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
実施例1において、クエン酸一水和物に代えてシュウ酸二水和物:2molを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法によりリン酸鉄リチウムを調製した。
Claims (7)
- リン酸、カルボン酸およびリチウム源を含む水溶液に、酸素を0.5質量%以上含有する鉄粒子を添加し、酸化雰囲気下で上記水溶液中の成分と上記鉄粒子とを反応させて反応液を作製する合成工程と、
上記合成工程で得られた反応液を乾燥させてリン酸鉄リチウム前駆体を生成する前駆体生成工程と、
上記前駆体生成工程で得られたリン酸鉄リチウム前駆体を非酸化性雰囲気下で焼成してリン酸鉄リチウムを得る一次焼成工程とを有することを特徴とする、リン酸鉄リチウムの製造方法。 - 前記一次焼成工程で得られたリン酸鉄リチウムと、炭素源を混合し、非酸化性雰囲気下で焼成して、表面が炭素で被覆されたリン酸鉄リチウムを得る二次焼成工程を更に有することを特徴とする、リン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記カルボン酸の含有量が、前記鉄粒子中の鉄1molに対して、0.18〜0.5molであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記カルボン酸の残炭率が3質量%以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れ か1項に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記カルボン酸が、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記のリン酸、カルボン酸およびリチウム源を含む水溶液に、ドープする元素の金属または化合物を予め溶解させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
- 前記リン酸鉄リチウムが、二次電池用正極活物質であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリン酸鉄リチウムの製造方法。
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