JP2019034877A - リン酸バナジウムリチウムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、さらなる代替材料としてLiFePO4が着目され各機関で研究開発が進んでいる。Feは資源的に優れ、これを用いたLiFePO4はエネルギー密度がやや低いものの、高温特性に優れていることから電動車両向けのリチウムイオン電池用正極材料として期待されている。
しかしながら、従来のLi3V2(PO4)3を正極活物質に用いたリチウム二次電池は、放電容量が低く、また、特許文献4のリン酸バナジウムリチウムの製造方法によれば、放電容量が高いものが得られるが、反応性に優れた反応前駆体を得るのに、沈殿生成反応やメディアミルによる粉砕処理を必要とし、製造工程が複雑となり、工業的に有利でない。
また、特許文献5には、何ら具体的な反応条件が示されておらず、また、室温まで冷却後、加熱処理後の液に、単にリチウム源を添加して反応を行い、得られた反応液を噴霧乾燥したものを反応前駆体としても用いても、放電容量が高いものが得られ難い。
五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して酸性の混合スラリーを調製する第1工程、次に該混合スラリーを加温処理して溶液化し、還元反応溶液を得る第2工程、次に該還元反応溶液を35℃以下に保持しながら、該還元反応溶液に水酸化リチウムを含む溶液を添加して原料混合溶液を調製する第3工程、次に該原料混合溶液を噴霧乾燥処理して反応前駆体を得る第4工程、次に該反応前駆体を不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気で500〜1300℃で焼成して、リン酸バナジウムリチウムを得る第5工程を有することを特徴とするリン酸バナジウムリチウムの製造方法を提供するものである。
本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法は、ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウムリチウム(以下、単に「リン酸バナジウムリチウム」と呼ぶ。)の製造方法である。
LixVy(PO4)3 (1)
(式中、xは2.5以上3.5以下、yは1.8以上2.2以下を示す。)
で表わされるリン酸バナジウムリチウム、あるいは、一般式(1)で表わされるリン酸バナジウムリチウムに、必要により、Me元素(Meは、V以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)がドープされて含有されているリン酸バナジウムリチウムである。
また、本発明のリン酸バナジウムリチウムの製造方法を行い得られるリン酸バナジウムリチウムは、固体電解質での用途にも用いられる。
{実施例1}
<第1工程>
5Lビーカーにイオン交換水2Lを入れ、これに85%リン酸605gと五酸化バナジウム320gとスクロース(ショ糖)170gを投入し室温(25℃)で攪拌することにより黄土色の酸性の混合スラリーを得た(pH0.9)。
<第2工程>
得られた混合スラリーを95℃で1時間、攪拌下に加熱し還元反応を行い、濃青色の還元反応溶液を得た(pH1.7)。
<第3工程>
還元反応溶液を室温(25℃)まで2時間で冷却した。次いで水酸化リチウム・1水塩220gをイオン交換水1.5Lに溶解させた水酸化リチウム溶液を調製した。ジャケット付反応容器を冷却機で冷却し、反応溶液を22℃の温度範囲に保持しながら、水酸化リチウム溶液を60分で一定速度で反応溶液に添加し、濃青色の原料混合溶液を得た(pH4.6)。
<第4工程>
次いで、濃青色の原料混合溶液を、出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に供給し、反応前駆体を得た。反応前駆体のSEM観察法により求められる平均二次粒子径は12μmであった。
得られた反応前駆体を、線源としてCuKα線を用いてX線回折測定を行ったところ、該反応前駆体は、非晶質であることが確認できた。また、反応前駆体のX線回折図を図1に示す。また、反応前駆体の電子顕微鏡写真(SEM像)を図2に示す。
<第5工程>
得られた反応前駆体をムライト製匣鉢に入れ、窒素雰囲気下600℃で10時間焼成した。得られたリン酸バナジウムリチウム試料をX線回折分析した結果、単相のリン酸バナジウムリチウムであることを確認した。得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折図を図3に示す。また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料の電子顕微鏡写真(SEM像)を図4に示す。
また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料の残存炭素量を、TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC−5000A)にて測定することによりC原子の含有量として求めた。
第5工程において、焼成温度を700〜900℃とする以外は、実施例1と同様に反応を行ってリン酸バナジウムリチウム試料を得た。
また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析した結果、何れも単相のリン酸バナジウムリチウムであることを確認した。また、実施例1と同様にして残存炭素量を求めた。
2)第3工程の「Li/Pのモル比」は、第1工程で添加したリン酸中のP原子に対する第3工程で添加した水酸化リチウム中のLi原子のモル比を示す。
3)第3工程の「添加後のpH」は、水酸化リチウムを含む溶液を添加した後の反応液のpHを示す。
5Lビーカーにイオン交換水3.5Lを入れ、これに水酸化リチウム・1水塩220gと五酸化バナジウム320gと85%リン酸605gとスクロース170gを加えた後、95℃で1時間、攪拌下に加熱して緑色のスラリーを得た。次いで、出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に、該スラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体をX線回折分析を行ったところ、該反応前駆体は、明確な回折ピークが確認できた。また、反応前駆体のX線回折図を図1に併記した。
得られた反応前駆体をムライト製匣鉢に入れ、窒素雰囲気下600℃で10時間焼成して、リン酸バナジウムリチウム試料を得た。
得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析図を図3に併記した。X線回折分析の結果、リン酸バナジウムリチウム以外の異相の存在が確認できた。また、実施例1と同様にして残存炭素量を求めたところ、残存炭素量は1.9質量%であった。
5Lビーカーにイオン交換水2Lを入れ、これに水酸化リチウム・1水塩252gを加えて溶解した。この溶液に五酸化バナジウム364gを加えて1h攪拌した。この液にグルコース(ブドウ糖)72gと85%リン酸692gを加えて1時間攪拌して原料混合液を得た。次いで、出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に、原料混合液を供給し、反応前駆体を得た。また、反応前駆体のX線回折図を図1に併記した。
得られた反応前駆体をムライト製匣鉢に入れ、窒素雰囲気下900℃で12時間焼成した。焼成物をジェットミルにより解砕してリン酸バナジウムリチウム試料を得た。得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析した結果、単相のリン酸バナジウムリチウムであることを確認した。また、実施例1と同様にして残存炭素量を求めたところ、残存炭素量は0.1質量%であった。
<第1工程>
5Lビーカーにイオン交換水2.5Lを入れ、これに85%リン酸864.7gと五酸化バナジウム457.7gとラクトース・1水和物156.6gを投入し室温(25℃)で攪拌することにより黄土色の酸性の混合スラリーを得た(pH0.9)。
<第2工程>
得られた混合スラリーを95℃で1時間、攪拌下に加熱し還元反応を行い、濃青色の還元反応溶液を得た(pH1.7)。
<第3工程>
還元反応溶液を室温(25℃)まで2時間で冷却した。次いで水酸化リチウム・1水塩314.7gをイオン交換水1.5Lに溶解させた水酸化リチウム溶液を調製した。ジャケット付反応容器を冷却機で冷却し、反応溶液を22℃の温度範囲に保持しながら、水酸化リチウム溶液を一定速度で60分で反応溶液に添加し、濃青色の原料混合溶液を得た(pH4.6)。
<第4工程>
次いで、濃青色の原料混合溶液を、出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体を、線源としてCuKα線を用いてX線回折測定を行ったところ、該反応前駆体は、非晶質であることが確認できた。また、反応前駆体の電子顕微鏡写真(SEM像)を図5に示す。
<第5工程>
得られた反応前駆体をムライト製匣鉢に入れ,窒素雰囲気下800℃で10時間焼成した。得られたリン酸バナジウムリチウム試料をX線回折分析した結果、単相のリン酸バナジウムリチウムであることを確認した。また、リン酸バナジウムリチウム試料のX線回折図を図6に示す。得られたリン酸バナジウムリチウム試料の電子顕微鏡写真(SEM像)を図7に示す。
また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料の残存炭素量を、TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC−5000A)にて測定したところ、1.5質量%であった。また、BET比表面積は9.8m2/gであった。
第2工程終了後、反応溶液を室温(25℃)まで2時間で冷却し、第3工程において、反応容器を冷却機で冷却せずにそのまま水酸化リチウム溶液を一定速度で15分で添加した以外は実施例1と同様に反応を行って、リン酸バナジウムリチウム試料を得た。なお、水酸化リチウム溶液の添加中の反応溶液の温度は25℃から40℃に上昇した。また、第3工程後の原料混合溶液は青色のスラリー(pH4.7)であった。
次いで、第4工程にて青色のスラリーを、出口温度を120℃に設定した噴霧乾燥装置に供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体をX線回折測定を行ったところ、該反応前駆体は、明確な回折ピークが確認できた。また、反応前駆体のX線回折図を図8に示した。
次いで、得られた反応前駆体をムライト製匣鉢に入れ、窒素雰囲気下600℃で10時間焼成して、リン酸バナジウムリチウム試料を得た。
得られたリン酸バナジウムリチウム試料のX線回折分析図を図9に示した。X線回折分析の結果、リン酸バナジウムリチウム以外の異相の存在が確認できた。また、実施例1と同様にして残存炭素量を求めたところ、残存炭素量は1.8質量%であった。
<電池性能試験>
(I)リチウム二次電池の作製;
上記のように製造した、実施例1、実施例4、実施例5、比較例2及び比較例3のリン酸バナジウムリチウムの各試料91質量%、黒鉛粉末6質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%を混合して正極剤とし、これをN−メチル−2−ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。得られた混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。
この正極板を用いて、セパレーター、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してリチウム二次電池を製作した。このうち、負極は金属リチウム箔を用い、電解液にはエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF61モルを溶解したものを使用した。
作製したリチウム二次電池を下記条件で作動させ、電池性能を評価した。
<サイクル特性の評価>
0.5Cで4.2Vまで充電させ、引き続いて4.2Vで保持させる全充電時間5時間の定電流定電圧(CCCV)充電により充電させた後、0.1Cで2.0Vまで放電させる定電流(CC)放電を行い、これらの操作を1サイクルとして1サイクル毎に放電容量を測定した。このサイクルを20サイクル繰り返し、1サイクル目と20サイクル目のそれぞれの放電容量から、下記式により容量維持率を算出した。なお、1サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。
<第6工程>
実施例3で得られたリン酸バナジウムリチウム試料(残存炭素量1.6質量%)を、電気炉で大気雰囲気下(酸素濃度20Vol%)、350℃で15時間加熱処理を行った。
得られたリン酸バナジウムリチウム試料をX線回折分析した結果、単相のリン酸バナジウムリチウムであることを確認した。また、得られたリン酸バナジウムリチウム試料の残存炭素量を、TOC全有機炭素計(島津製作所製TOC−5000A)にて測定したところ、0.1質量%であった。また、BET比表面積は7.1m2/gであった。
Claims (10)
- ナシコン(NASICON)構造を有するリン酸バナジウムリチウムの製造方法であって、
五酸化バナジウム、リン酸及び還元糖を水溶媒中で混合して酸性の混合スラリーを調製する第1工程、次に該混合スラリーを加温処理して溶液化し、還元反応溶液を得る第2工程、次に該還元反応溶液を35℃以下に保持しながら、該還元反応溶液に水酸化リチウムを含む溶液を添加して原料混合溶液を調製する第3工程、次に該原料混合溶液を噴霧乾燥処理して反応前駆体を得る第4工程、次に該反応前駆体を不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気で500〜1300℃で焼成して、リン酸バナジウムリチウムを得る第5工程を有することを特徴とするリン酸バナジウムリチウムの製造方法。 - 第2工程における加温処理の温度が、60〜100℃であることを特徴とする請求項1記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記還元糖が、スクロース及びラクトースから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記水酸化リチウムを含む溶液中の水酸化リチウムの濃度が、5〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記第3工程を行い得られる原料混合溶液が、濃青色の溶液であり、該濃青色の溶液を第4工程で噴霧乾燥処理することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記第3工程において、前記原料混合溶液のpHが3〜7となるように、前記水酸化リチウム含む溶液を添加することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記第1工程において、更に、Me源(MeはV以外の原子番号11以上の金属元素又は遷移金属元素を示す。)を前記酸性の混合スラリーに混合することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 更に、第5工程を行い得られるリン酸バナジウムリチウムを加熱処理する第6工程を設けることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記第6工程において、加熱処理を酸素含有雰囲気中で行うことを特徴とする請求項8記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
- 前記第6工程における加熱処理温度が、250〜450℃であることを特徴とする請求項8又は9いずれか1項記載のリン酸バナジウムリチウムの製造方法。
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