JP2011093834A - 1,2−ジアミノシクロヘキサンの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】1,2−DACH異性体混合物から、光学活性トランスDACHおよびシスDACHの効率的製造法を提供する。
【解決手段】トランスDACHを含む混合物に光学活性酒石酸を分割剤として加え、ジアステレオマー塩として分割した際に得た晶析母液を原料とし、光学活性酒石酸を除去することなしに、母液中に先に使用した光学活性酒石酸の対掌体を加えることにより、光学活性トランスDACHと光学活性酒石酸塩を結晶として分離することを特徴とする光学活性トランスDACH製造法、及び母液に鉱酸を滴下することによりシスDACHを鉱酸塩結晶として分離することを特徴とするシスDACH製造法。
【選択図】 なし

Description

本発明は医薬原料や不斉合成触媒として重要な光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン(以下1,2−ジアミノシクロヘキサンをDACHと略記する)、及びシス−DACHの工業的に有利な製造法に関するものである。
DACHは2個の不斉炭素を持ち、光学活性な(1R,2R)−トランスDACH(以下、R−DACHと略記する)、(1S,2S)−トランスDACH(以下S−DACHと略記する)と、光学不活性な(1R,2S)−シスDACHの3種類が存在する。この3種類の異性体混合物から光学活性酒石酸を分割剤として用いることによりDACHと光学活性酒石酸の塩結晶(以下、ジアステレオマー塩と略記する)として高純度の光学活性トランスDACHを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また光学活性トランスDACHを分割後、母液から対掌体の光学活性トランスDACHを得る方法として、母液中の光学活性酒石酸を除去した後に対掌体の光学活性酒石酸を加えてジアステレオマー塩として得る方法(特許文献2参照)や、貧溶媒下で塩酸塩化することにより得る方法(非特許文献1参照)などが提案されている。
しかしながら、母液内の光学活性トランスDACHを取得するには一旦、母液内の酒石酸を除去するために、濃縮や固液分離の工程が増加するために効率が悪い。また、特許文献4には光学分割したジアステレオマー塩を水酸化ナトリウム水溶液で解塩し、分液してきた上層を分離して酒石酸ジナトリウムの水和物の形で単離する方法が記載されており、この方法を応用すれば濃縮や固液分離等の工程が不要となるが、本発明者らの検討によれば、母液に水酸化ナトリウムを添加しても分液せず、酒石酸を単離することは困難であった。またラセミDACHを原料として光学活性DACHを分離した母液の場合、母液中に塩酸を加えることにより対掌体の光学活性トランスDACHを塩酸塩化することで比較的簡便な方法で回収することができるが、メタノールなどの貧溶媒を大量に加えることから原料費の増加や、1バッチ当たりの収量が低下、環境負荷が増大するといった課題が挙げられ工業的に有利な方法とはいい難い。
一方、シスDACHはトランスDACHのジアステレオマーであり、溶解度等の物理的性質が大きく異なる。
シスDACHの製造方法としては、シスDACHをニッケルとの錯体塩として取得する方法が報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、ニッケルをシスDACHと等モル使用するために重金属を含んだ廃棄物が多量に排出されることが課題である。
特開平7−188121号公報 特表2002−510699号公報 特開昭52−111544号公報 特開平7−188122号公報
テトラヘドロン・アシンメトリー(2003),14(18),2763−2769
上記文献で提案されている光学活性酒石酸を除去した後に対掌体の光学活性酒石酸を加える方法は、最初に加えた酒石酸除去のための濃縮や固液分離といった工程が増加するために効率が悪い。
またラセミのトランスDACHから分離した母液の場合、母液中に塩酸を加えることにより光学活性トランスDACHを塩酸塩化することで比較的簡便な方法で回収することができるが、塩結晶を析出させるためにメタノールなどの貧溶媒を大量に加える必要があり、スケール増大に伴うバッチ当たりの収量低下や原料費の増加といった課題があり工業的な手法としては適さない。またシスDACHの分離方法においても、重金属のニッケルを含む廃液が多量に排出されるため大量生産の方法としては適さない。
したがって、本発明はDACH異性体混合物から、光学活性トランスDACH、シスDACH等の所望の各種DACHを工業的に適した方法で分離することにより、DACHを製造することを提供することを課題とする。
本発明者らは、DACH異性体混合物を原料として光学活性トランスDACHや異性体のシスDACH等の各種DACHを高収率で得る方法を鋭意検討した結果、上記目標を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、水溶媒、酸、DACH異性体混合物の混合液に、光学活性酒石酸を添加することにより析出したジアステレオマー塩結晶を固液分離した母液に、先に添加した光学活性酒石酸の対掌体を添加することにより、もう一方の光学活性トランスDACHをジアステレオマー塩結晶として簡便かつ高収率で分離し得ること、さらに分離後の母液に鉱酸を添加することにより、シスDACHを簡便かつ高収率で分離し得ることを見出し、本発明に到った。
すなわち、本発明は、下記A〜Cから選択される方法により1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物から各種1,2−ジアミノシクロヘキサンを分離することを特徴とする1,2−ジアミノシクロヘキサンの製造法である。
A:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン、(1S,2S)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン、およびシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含む混合物である場合、下記第一工程および第二工程を行う。
B:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサンまたは(1S,2S)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサンのいずれか一方とシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含む混合物である場合、下記第一工程および第三工程を行う。
C:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサンと(1S,2S)−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサンを含み、シス−1,2ジアミノシクロヘキサンを含まない混合物である場合、下記第一工程、第二工程を行う。
第一工程:水溶媒、酸、及び1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物の混合液に、光学活性酒石酸を添加することにより、光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンと光学活性酒石酸からなるジアステレオマー塩を結晶として固液分離する工程。
第二工程:第一工程で得られた母液に、第一工程で添加した光学活性酒石酸の対掌体を添加することにより、先に結晶として取り出した光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの対掌体をジアステレオマー塩の結晶として固液分離する工程。
第三工程:前工程で得られた母液に、鉱酸を添加することによりシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの鉱酸塩を結晶として単離する工程。
本発明によりDACH異性体混合物から光学活性酒石酸を除去せず母液に存在する光学活性酒石酸の対掌体を加えることで簡便に光学純度の高い光学活性トランスDACHを得ることができ、さらに得られた晶析母液からシスDACHを効率良く得ることができる。
本発明の原料であるDACH異性体混合物とは、R−DACH、S−DACHおよびシス−DACHから選択される2種以上の混合物をいう。
具体的には、
(1)DACH異性体混合物がR−トランスDACH、S−トランス−DACH、およびシス−DACHを含む混合物
(2)DACH異性体混合物がR−トランスDACHまたはS−トランスDACHのいずれか一方とシス−DACHを含む混合物
(3)DACH異性体混合物がR−トランスDACHとS−トランスDACHを含み、シス−DACHを含まない混合物。
これら異性体混合物中のトランスDACH、シスDACHの両方を含む場合の含有量は、異性体を2種以上含む限り任意であるが、トランスDACHの割合が少ないと光学活性トランスDACHの生産効率が低くなる傾向にある。そのためシスDACHに対するトランスDACHの割合は0.5/10〜10/6であることが好ましく、0.5/10〜10/8であることがより好ましい。
ここでトランスDACHはR−DACHおよび/またはS−DACHである。両方含む場合は任意の比率のものを用いることができるが、通常はラセミ体として用いる。また、その他のアミン類、例えば1,6−ジアミノヘキサン等が混入していてもDACHと等量以下であれば問題ないが、不純物の存在量が多くなれば生産効率が低下する。
さらに上記(2)の場合において、「R−トランスDACHまたはS−トランスDACHのいずれか一方を含む」とは、R−またはS−のうち片方が厳密に存在しないという必要はなく、分離対象としていずれか一方を含むという意味であり、そもそも分離不要の場合、あるいは生産効率的観点等、工業的観点から分離するに値しないような不純物量程度、例えば30%以下、特に25%以下、さらには1%以下程度は含まれていてもよい。また、上記(3)の場合における「シス−DACHを含まない」についても、シス−DACHが厳密に存在しないという必要はなく、分離するに値しないような不純物量程度、例えば1%以下程度は含まれていてもよい。
本発明の光学活性DACH製造法は下記A〜Cから選択される方法により、所望の各種1,2−ジアミノシクロヘキサンを分離するものである。
A:DACH異性体混合物がR−トランスDACH、S−トランスDACH、およびシス−DACHを含む混合物である場合、下記第一工程および第二工程を行う。
B:DACH異性体混合物がR−トランスDACHまたはS−トランスDACHのいずれか一方とシス−DACHを含む混合物である場合、下記第一工程および第三工程を行う。
C:DACH異性体混合物がR−トランスDACHとS−トランスDACHを含み、シス−DACHを含まない混合物である場合、下記第一工程、第二工程を行う。
第一工程:水溶媒、酸、及びDACH異性体混合物の混合液に、光学活性酒石酸を添加することにより、光学活性トランス−DACHと光学活性酒石酸からなるジアステレオマー塩を結晶として固液分離する工程。
第二工程:第一工程で得られた母液に、第一工程で添加した光学活性酒石酸の対掌体を添加することにより、先に結晶として取り出した光学活性トランス−DACHの対掌体をジアステレオマー塩の結晶として固液分離する工程。
第三工程:前工程で得られた母液に、鉱酸を添加することによりシス−DACHの鉱酸塩を結晶として単離する工程。
第一工程は、水溶媒中、酸共存下、DACH異性体混合物の混合液に、光学活性酒石酸を添加することにより、光学活性トランスDACHと光学活性酒石酸からなるジアステレオマー塩として固液分離する工程である。
第二工程は第一工程で得られた固液分離の母液を、この際、第一工程で添加した光学活性酒石酸を取り除くことなく、第一工程で加えた光学活性酒石酸の対掌体を加えることによりもう一方の光学活性トランスDACHを対掌体の酒石酸とのジアステレオマー塩を結晶として回収する工程である。この際、第一工程で得られた母液を濃縮した後、光学活性酒石酸の対掌体を加えるのが好ましい。
第三工程は前工程で得られた固液分離の母液、すなわち光学活性トランスDACH除去後の母液に鉱酸を添加することにより、シスDACHを鉱酸塩として回収する工程である。
以下各工程についてさらに詳細に説明する。
(第一工程)
上記第一工程で用いる水溶媒としては水を主成分とし、水の組成が90質量%以上のものであることが好ましい。水以外の成分としてアルコール類等の有機溶媒を含んでいてもよい。しかし、有機溶媒が多いと塩の溶解度が低下し、純度の低下につながるため水のみを使用する方が好ましい。
酸としては鉱酸、カルボン酸から選ばれ、少なくとも1種類以上の酸からなるものを使用できる。例えば炭素数1〜5の有機酸が挙げられ、具体的にはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられる。なかでも塩酸、硫酸などの鉱酸を好ましく挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものでない。
また、本発明では分割剤として光学活性酒石酸を使用するが、R−DACHを所望する場合にはL−酒石酸を、またS−DACHを所望する場合にはD−酒石酸を使用する。
第一工程における光学活性酒石酸の使用量はDACH異性体混合物内のDACHと等モル使用してもかまわないが、経済性を考慮すると所望する光学活性トランスDACHに対して0.7〜1.5モル倍が好ましく、より好ましくは0.8〜1.2モル倍である。光学活性酒石酸がこれより少なすぎるとジアステレオマー塩の析出量が減少し、生産効率が低下する。
またこのとき、DACH異性体混合物に含まれるアミノ基等の塩基の量に対する酸の添加量は、光学活性酒石酸を含めた合計の酸(以下「全酸」と称する)の塩基に対する等量比(全酸/塩基当量比)で0.7〜1.5となるように調節することが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2である。全酸/塩基当量比とは酸として働く官能基と塩基として働く官能基の比をいう。
例えば、二価の塩基である目的とする光学活性DACHを0.3モル含むDACH異性体混合物1.0モルに対し、二価の光学活性酒石酸を0.3モルと一価の酢酸を1.4モル加えた場合の全酸/塩基当量比は1.0となる。
本発明を実施する方法として、如何なる順で仕込みを行っても良いが、本発明の効果をより高めるには以下の方法が好ましい。
第一工程はまず、光学活性酒石酸と水を仕込み完全に溶解させる、次いで冷却しながらDACH異性体混合物を滴下添加する。なお、冷却は0〜50℃で行うのが好ましく、特に5〜30℃が好ましい。さらに酸を滴下することにより、光学活性DACHと光学活性酒石酸のジアステレオマー塩が析出し、スラリー溶液となる。この時に、滴下時間が短すぎると不純物を取り込み純度が低下するため、滴下時間は長いほど好ましいが、生産効率を考慮すると0.5〜5時間が好ましく、より好ましくは1〜2時間である。
滴下終了後、温度を90〜95℃に昇温して2時間以上、好ましくは3〜4時間熟成させ、熟成終了後は好ましくは0〜20℃、より好ましくは5〜15℃に冷却し、更に4〜18時間熟成するのが好ましく、生産効率を考慮すると4〜10時間程度がより好ましい。この時熟成温度が高すぎると結晶が溶解するために収量が低下し、低すぎると純度の低下が起こる傾向にある。このスラリー溶液を遠心濾過器により固液分離することにより、光学活性DACHと光学活性酒石酸のジアステレオマー塩が得られる。
必要に応じて、再結晶を行うことにより、さらに高純度の光学活性DACHと光学活性酒石酸のジアステレオマーを得ることができる。
R−DACHまたはS−DACHのいずれか一方とシスを含むDACH異性体混合物を原料とし、光学活性トランスDACHを分離した後、シスDACHを回収したい場合には、第一工程の後、後述する第三工程を行えばよい。また、R−DACH、S−DACHの両方を含むDACH異性体混合物から、R−DACH、S−DACHをそれぞれ分離回収する場合、この固液分離の工程で分離した母液を第二工程に用いる。
(第二工程)
第二工程は、上記の第一工程で分離した母液を仕込むが、好ましくは減圧下で濃縮することにより溶媒の水を留去させる。濃縮終点の母液中水分率は10〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜35質量%である。濃縮母液の水分率が高いとジアステレオマー塩の析出量が減少し、収率が低下する傾向にある。また、水分率が低すぎると粘度が高くなり、操作性が悪くなる傾向にある。
次いで、母液、好ましくは濃縮した母液を80℃以上、好ましくは80〜90℃に保ち、第一工程で加えた光学活性酒石酸の対掌体を加える。
第二工程において添加する上記光学活性酒石酸の使用量は母液内の目的とする光学活性トランスDACHに対して通常、0.7〜1.5モル倍、より好ましくは0.8〜1.2モル倍である。
上記光学活性酒石酸を添加する際、光学活性酒石酸を直接母液内に加えてもよいが、固体の光学活性酒石酸の直接的な添加は、結晶が完全に溶解せず、ジアステレオマー塩中の光学活性トランスDACH純度の低下や生産効率の悪化が懸念されるため水溶媒に溶解して添加する方が好ましい。添加の形態としては滴下が好ましい。
また、水溶媒の使用量は濃縮した母液中の水分率にもよるが、対掌体の酒石酸水溶液添加後の系内の水分率が最終的に20〜50質量%になるように調製することが好ましく、より好ましくは35〜45質量%である。
この時に、滴下時間が短すぎると不純物を取り込み純度が低下しやすくなるため、滴下時間は長いほど好ましいが、生産効率を考慮すると1〜5時間程度が好ましく、2〜4時間程度がより好ましい。
対掌体の酒石酸水溶液を滴下していくと通常、約1/3量を滴下した時点で結晶が析出し始める。反応溶液の濃度や温度によって結晶の析出状況は変化するが、急激な晶析は析出するジアステレオマー塩の純度を低下させる。
ジアステレオマー塩の晶析速度を調節するには対掌体の酒石酸水溶液の滴下速度を調節すればよい。対掌体の酒石酸水溶液の添加速度が大きすぎると急激な晶析が起こり、ジアステレオマー塩の光学純度が低下する。また、滴下速度が小さすぎると無駄に長時間かかり、生産効率が低下するので好ましくない。
対掌体の酒石酸水溶液の添加開始から第一工程で添加した酸と酒石酸の塩交換反応が始まるが、十分に塩交換反応を進めるために添加終了後さらに熟成させるのが通常であるが、その温度として通常70〜100℃、より好ましくは90〜100℃で、時間としては、通常4時間以上、より好ましくは4〜10時間である。
熟成終了後は冷却してさらに熟成させた後、固液分離することによりジアステレオマー塩が取得できる。具体的には、前記熟成終了後の系を0〜30℃、より好ましくは10〜15℃に冷却し、さらに、その温度で4時間以上、好ましくは12〜15時間熟成させた後、固液分離することによりジアステレオマー塩が取得できる。第一工程と同様、必要に応じて再結晶を行うことでさらに純度の高いジアステレオマー塩を取得できる。
かくして得られたジアステレオマー塩から通常の方法で光学活性DACHを単離すればよい。例えば、解塩し、遊離した光学活性トランスDACHを抽出した後、濃縮、蒸留することにより単離することができる。単離方法としては単離が可能であれば特に制限はなく、例えば特開平7−188123号公報に記載の方法により好ましく単離することができる。
R−DACH、S−DACHの両方を含むDACH異性体混合物は、上記の工程を経ることで両光学活性トランスDACHを取得できるが、異性体混合物がシスDACHを含んでいた場合、さらに以下記述の第三工程により第二工程で得られた母液から高純度のシスDACHを回収することができる。
(第三工程)
シスDACHを取得するには、前工程で得られた母液(第一工程のみの場合は、第一工程で得られた母液、第二工程まで行った場合は第二工程で得られた母液)を原料として使用し、好ましくは母液中に存在するトランスDACHを2種類の光学活性酒石酸とのジアステレオマー塩としてさらに除去した後に、シスDACHを鉱酸の塩として回収すればよい。
第三工程で用いる原料である母液中のトランス体とシス体の比率は、トランスDACH分離前の原料であるDACH異性体混合物中のシスDACHの量と分離後に残存するトランスDACHの量に依存するが、シス体の比率が高い方がシス体の回収効率の点から好ましい。
シス体の回収に際しては、予め濃縮することが好ましく、その方法としては、減圧濃縮により溶媒を留去させ、シスDACH濃度が6質量%以上になるように濃縮するのが好ましいが、より好ましくは8質量%以上である。上限としては10質量%以下とすることが操作性の点から好ましい。過度な濃縮は過飽和溶液になるために粘調なスラリー溶液となるため、操作性が悪化する。
濃縮後、母液中に残存するトランスDACHを除去することが好ましい。上記濃縮時の水の除去が十分でないと次工程でのトランスDACHの除去率が低下しやすくなる。
すなわち濃縮後、常温まで冷却した後、濃縮したスラリー溶液を有機溶媒で希釈することにより、トランスDACHは、系内に残存する光学活性酒石酸、すなわち第一工程のみを行った後の晶析母液においては、1種類の光学活性酒石酸、第一及び第二工程の両方を行った後の晶析母液においては2種類の光学活性酒石酸とで形成した塩結晶、すなわちR−DACHとL−酒石酸とのジアステレオマー塩および/またはS−DACHとD−酒石酸とのジアステレオマー塩として析出させることができる。なお、系内に残存する光学活性酒石酸が系内に存在するトランスDACHの量に比較して少ない場合は、残存するトランスDACHの種類にあわせ、対応する光学活性酒石酸を追添してもよい。
ここで希釈に用いる有機溶媒としては、低級アルコール類、好ましくは炭素数1〜5のアルコール類等から選ばれる少なくとも1種類以上を含む溶媒が好ましく用いられる。例えばメタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものでない。濃縮した母液に対して1〜10質量倍の有機溶媒を加えることで結晶が析出するが、操作性、生産効率を考慮すると1〜3質量倍が好ましい。
有機溶媒の添加後はさらに結晶が析出し始めるので、そのまま常温にて4時間以上、より好ましくは10時間以上熟成させる。この結晶は通常R−DACHとL−酒石酸、S−DACHとD−酒石酸とのジアステレオマー塩の混合物である。熟成したスラリー溶液は遠心濾過器を用いて固液分離する。
次いで得られた母液中に鉱酸を滴下する。鉱酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などから選ばれる少なくとも1種類以上を含む酸が挙げられるが、水が含まれていても構わない。また、本発明はこれらに限定されるものではない。酸の添加量は母液中の全DACHに対して通常70〜150モル%であるが、生産性などを考慮すると、90〜120モル%がより好ましい。滴下速度は任意で構わないが、発熱性、生産効率などを考慮すると0.5〜6時間が好ましい、より好ましくは1〜3時間である。
滴下後、スラリー化した溶液を更に常温にて2時間以上、生産効率を考慮すると3〜10時間熟成させるのが好ましい。この時、熟成時間が短すぎると結晶の析出が不十分で収率が低下し、長すぎると生産効率が低下する傾向にある。熟成させたスラリーを遠心濾過器を用いて固液分離を行うことにより、シスDACHの硫酸塩が結晶として得られる。かくして得られた結晶は、更にリスラリー洗浄や再結晶することにより高純度に精製することができる。
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお実施例中の、トランスDACHの化学純度、光学純度は以下に示す方法で測定した。
<化学純度分析方法>
DACHの塩約0.2gを採取し、25%水酸化ナトリウム水溶液0.3mlを加えて解塩する。次いでジクロロメタン1mlを加えて抽出する。抽出した溶液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、面積百分率により純度を出す。
GC分析条件
カラム:WACOTT Fused Silica CP−Sil−5CB,ID 0.32mm,Film 5μm, Length 60m
カラム温度:160℃,DET温度:200℃,INJ温度:200℃
検出器:FID
カラム流量:0.8ml/min,スプリット比:61
保持時間
トランスDACH:21.0分
シスDACH:23.7分。
<光学純度分析方法>
約0.4gのジアステレオマー塩に25%の水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加えて解塩し、ジエチルエーテル20mlを加えて抽出する。エーテル層1mlを別容器に採取し、アセトニトリル10mlを加えて希釈する。調製したDACH溶液0.2mlに1.0%のGITCのアセトニトリル溶液を0.8ml加えて、室温で10分間反応させた後、1.0%のモノエタノールアミンのアセトニトリル溶液を0.2ml添加してさらに3分反応させた後、5%リン酸水溶液を0.1ml添加して試料溶液とする。10μlをHPLCに注入し、面積比で光学純度を測定する(ここでGITCは、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルイソチオシアナートを意味する)。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:Mightysil RP−18 GP 4.6mm×150mm(5μm)
溶離液:0.05%リン酸/アセトニトリル=55/45
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出器:254nm
保持時間:S−DACHのGITC誘導体化物 8.3分
シスDACHのGITC誘導体化物 10.5分
R−DACHのGITC誘導体化物 12.1分。
実施例1
(第一工程)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた2000mlの4つ口フラスコに水438.0gとL−酒石酸150.0g(1.0モル)を完全に溶解し、次いで系を20〜30℃に冷却し、攪拌しながら滴下ロートを用いてシスDACHとトランスDACHの比が1.2:2でトランス体の光学異性体比(R体/S体=1/1)である混合物367.5g(3.2モル)を2時間かけて滴下した。次いで液を60℃に保ちながら1時間熟成した後、酢酸262.4g(4.4モル)を滴下ロートより1.0時間で滴下添加した。滴下終了後さらに90℃に昇温し、その温度で4時間攪拌した後、2時間かけて10℃まで冷却した。
10℃で18時間攪拌することにより熟成させた後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥することにより202.2g(0.74モル)のR−DACHとL−酒石酸のジアステレオマー塩を取得した。仕込んだR−DACHに対して収率は74%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は97.0%e.e.、化学純度98.5%(シス体1.5%)であった。固液分離で得られた晶析母液は1095.2g(リンス水の一部を含む)であり、カールフィッシャー法で測定した母液中の水分率は42%、上記光学純度分析方法により算出したS/R比は3.5であった。
(第二工程)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた500mlの4つ口フラスコに第一工程で得られた晶析母液215.12g(S−DACH含量0.19モル)を仕込んだ。アスピレータで400mmHg(53.3kPa)に減圧し、80℃に昇温し1時間かけて水49.89gを留去させ、母液水分率を24%に濃縮した。
別の200mlのフラスコを用意し、水54.1gとD−酒石酸28.5g(0.19モル)を仕込み、完全に溶解させた後滴下ロートに仕込んだ。濃縮した晶析母液を80℃に保ちながら、1時間かけてD−酒石酸水溶液を滴下した。滴下後の水分率は39%であり、滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌して熟成させた後、2時間かけて10℃まで冷却した。
10℃で12時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥して32.6g(0.12モル)のS−DACHとD−酒石酸のジアステレオマー塩を得た。母液中のS−DACHに対して収率は65%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は97.8%e.e.、化学純度97.8%(シス体2.2%)であった。
再結晶するために、得られた結晶29.6gを水422.2gに仕込み、80℃まで昇温させて結晶を完溶させた。結晶の完溶を確認後、アスピレータで400mmHg(53.3kPa)に減圧し、水357.3gを留去させた。濃縮終了後、1時間かけて10℃まで冷却した。10℃で12時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥して27.7g(0.10モル)のジアステレオマー塩を収率85%で得た。
ジアステレオマー塩を分析したところ化学純度99.9%(シス体0.1%)、光学異性体のR−DACHは検出されなかった。
比較例1
第一工程で得られた晶析母液からDACHと光学活性酒石酸を分離した後、対掌体の酒石酸を加える方法で光学活性DACHの取得を試みた。
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた300mlの4つ口フラスコに実施例1の第一工程で得られた晶析母液80.0g(S−DACH含量0.17モル)を仕込んだ。母液中に含まれるL−酒石酸を除去するために48%水酸化ナトリウム水溶液36.6g(0.44モル)を加えたが、エマルジョンとなり分液しなかった。さらに減圧濃縮で水を33.9g留去させたが、高粘調性の液体になり、分液せずDACHと光学活性酒石酸は分離することができなかった。
実施例2
(第一工程)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた2000mlの4つ口フラスコに水371.6gとL−酒石酸150.1g(1.0モル)を完全に溶解し、次いで系を20〜30℃に冷却し、攪拌しながら滴下ロートを用いてシスDACHとトランスDACHの比が1.2:2で、トランス体の光学異性体比(R体/S体=1/1)である混合物365.0g(3.2モル)を2時間かけて滴下した。次いで液を60℃に保ちながら1時間熟成した後、酢酸266.7g(4.4モル)を滴下ロートより1.0時間で滴下添加した。滴下終了後さらに90℃に昇温し、その温度で4時間攪拌した後、2時間かけて10℃まで冷却した。
10℃で18時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水893.7gでリンス、乾燥して190.4g(0.72モル)のR−DACHとL−酒石酸のジアステレオマー塩を取得した。仕込んだR−DACHに対して収率は72%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は99.6%e.e.、化学純度98.8%(シス体1.2%)であった。固液分離で得られた母液中の水分率は65%、S/R比は3.5であった。
(第二工程)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた3000mlの4つ口フラスコに第一工程で得られた晶析母液1774.9g(リンス水の一部を含む)(S−DACH含量0.96モル)を仕込んだ。
アスピレータで400mmHg(53.3kPa)に減圧し、80℃に昇温し6時間かけて水998.4gを留去させ、水分率34%に濃縮した。
別の500mlのフラスコを用意し、水219.0gとD−酒石酸143.5g(0.96モル)を仕込み、完全に溶解させた後滴下ロートに仕込んだ。濃縮した晶析母液を80℃に保ちながら、4時間かけてD−酒石酸水溶液を滴下した。滴下後の水分率は42%であり、滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌した後、2時間かけて10℃まで冷却した。
10℃で12時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥することにより171.1g(0.65モル)のS−DACHとD−酒石酸のジアステレオマー塩を得た。
母液中のS−DACHに対して収率66%であった。ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は97.3%e.e.、化学純度98.3%(シス体1.7%)であった。
再結晶を行うために得られた結晶167.1gを水2200.0gに仕込み、80℃まで昇温させて結晶を完溶させた。結晶の完溶を確認後、アスピレータで500mmHg(65.8kPa)に減圧し、水1757.4gを留去させた。濃縮終了後、2時間かけて10℃まで冷却した。
10℃で12時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥することにより134.4g(0.51モル)のS−DACHとD−酒石酸のジアステレオマー塩を得た。収率は82%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、R−DACH、及びシスDACHは検出されなかった。化学純度100%、光学純度100%e.e.。
(ジアステレオマー塩の解塩)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた500mlの4つ口フラスコに実施例2第二工程で得られたジアステレオマー塩100.0g(S−DACH含量0.38モル)、水75.7gを仕込んだ。次いで70℃の条件下で48%水酸化ナトリウム水溶液82.1gを1時間かけて滴下した。その後、80℃に昇温して30分熟成させることによりS−DACHを解塩した。その後1時間静置することにより分液し、得られた上層に2−プロパノール130.1gを加えることにより塩を析出させて、固液分離した。塩を除去した溶液を常圧、100℃の条件下で濃縮することにより、2−プロパノール、及び水を留去し、S−DACHの粗体72.0gを得た。
温度80℃、20mmHg(2.6kPa)の条件で蒸留を行い、初留40.7gをカットした後、主留24.7g(0.22モル)のS−DACHを得た。
主留のS−DACHの化学純度は99.9%(シス体0.1%)、光学純度100%e.e.であった。
実施例3
(第一工程)
温度計、攪拌機を備えた1000mlの四つ口フラスコに水230.3gとL−酒石酸78.0g(0.52モル)を完全に溶解し、次いで系を20〜30℃に冷却し、攪拌しながらシスDACHとトランスDACHの比が1.2:2で、トランス体の光学異性体比(R体/S体=1/1)である混合物191.2g(1.67モル)を2時間かけて滴下した。次いで液を60℃に保ちながら1時間熟成した後、酢酸138.5g(2.31モル)を2.0時間で滴下した。滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌した後、10℃/hで10℃に冷却した。
10℃で4時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥することにより111.7g(0.40モル)のR−DACHとL−酒石酸のジアステレオマー塩を取得した。仕込んだR−DACHに対して収率76%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は99.4%e.e.、化学純度98.7%(シス体1.3%)であった。
固液分離で得られた晶析母液は612.0gであり、母液中の水分率は51%、S/R比は4.2であった。
(第二工程)
温度計、攪拌機を備えた2000mlの4つ口フラスコに第一工程で得た晶析母液606.9g(S−DACH含量0.51モル)を仕込んだ。反応器内を400mmHg(53.3kPa)に減圧し、90℃に昇温し1時間かけて水159.4gを留去させ、水分率34%に濃縮した。
別の1000mlのフラスコで、水61.2gとD−酒石酸76.4g(0.51モル)を仕込み、完全に溶解させた。濃縮した晶析母液を80℃に保ちながら、2.5時間かけてD−酒石酸水溶液を滴下した。滴下後の水分率は36%であり、滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌した後、8時間かけて15℃まで冷却した。
10℃で15時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンスして96.8gのS−DACH・D−酒石酸のジアステレオマー塩(wet)を得た。
母液中のS−DACHに対して収率63%であった。またジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は99.7%e.e.、化学純度98.5%(シス体1.5%)であった。
さらに再結晶を行うために得られた結晶全量を水1213.6gに仕込み、80℃まで昇温させて結晶を完溶させた。結晶の完溶を確認後、400mmHg(53.3kPa)に減圧し、水995.5gを留去させた。濃縮終了後、10℃/hで冷却し、さらに10℃で4時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンスし、乾燥することにより79.2g(0.30モル)のS−DACHとD−酒石酸のジアステレオマー塩を得た。再結晶の収率は89%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は99.9%e.e.、化学純度99.9%(シス体0.1%)であった。
(第三工程)
温度計、攪拌機を備えた5000mlの4つ口フラスコに第二工程で得た晶析母液1415.4g(シスDACH含量0.52モル,シス/トランス=66/34)を仕込んだ。反応器内を400mmHg(53.3kPa)に減圧し、90℃に昇温し1時間かけて水736.0gを留去させ、シスDACH濃度を8.7%に濃縮した。濃縮後、常温にて濃縮液内に2000.7gのメタノールを加えると結晶が析出し始めた。さらに常温にて11時間熟成させた後、遠心脱水機で固液分離し、2542gの母液を得た。母液中のシスDACH含量は0.49モル(シス/トランス比=91/9)であった。
次いで、母液に濃硫酸62.3g(1.2モル倍/DACH)を2時間かけて滴下し、さらに常温にて4時間撹拌した後、遠心脱水機で固液分離し、メタノールでリンスすることにより185.8gのシスDACHの硫酸塩結晶を得た。乾燥することによりdryの結晶88.0g(シスDACH含量0.40モル)を得た。
結晶を分析したところ、化学純度96.0%(トランス体4.0%)であった。
得られた結晶をさらに精製するために、1000mlの四つ口フラスコに407.0gの水とシスDACHの硫酸塩結晶を加え、80℃で1時間リスラリー洗浄を行った。リスラリー洗浄後10℃で1時間撹拌し、さらに遠心脱水機で固液分離することにより96.4gのwet結晶を得た。乾燥させてdryの結晶38.5gを得た。
結晶を分析したところ化学純度98.2%(トランス体1.8%)であった。
またこのリスラリー洗浄の固液分離で得られた母液側を濃縮し、再結晶させたところ16.9gのwet結晶を得た。乾燥させることにより13.2gのシスDACHの硫酸塩を得た。この結晶を分析したところ化学純度99.1%(トランス体0.9%)であった。
実施例4
(第一工程)
シスDACHを含まないトランスDACH(ラセミ体)を原料に光学活性酒石酸を加えて分割した事例を以下に示す。
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた300mlの4つ口フラスコに水82.2gとL−酒石酸45.0g(0.3モル)を完全に溶解し、次いで系を20〜40℃に冷却し、ラセミのトランスDACH68.5g(0.6モル)を滴下した。次いで液を60℃に保ちながら1時間熟成した後、酢酸36.0gを滴下添加した。
滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌した後、10℃/hで10℃まで冷却した。10℃で4時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンス、乾燥して66.6g(0.25モル)のR−DACHとL−酒石酸のジアステレオマー塩を取得した。R−DACHに対して収率83%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は99.8%e.e.。固液分離で得られた晶析母液は200.6gであり、母液中のS/R比は5.8であった。
(第二工程)
温度計、滴下ロート、攪拌機を備えた200mlの4つ口フラスコに上記の工程で得た晶析母液200.6g(S−DACH含量0.3モル)を仕込んだ。フラスコ内を400mmHg(53.3kPa)に減圧し、90℃に昇温し1時間かけて水71.4gを留去させた。
別の200mlのフラスコで、水36.5gとD−酒石酸44.6g(0.3モル)を仕込み、完全に溶解させた。濃縮した晶析母液を80℃に保ちながら、D−酒石酸水溶液を1時間かけて滴下した。滴下後の水分率は39%で、滴下終了後さらに90℃で4時間攪拌した後、8時間かけて15℃まで冷却した。
10℃で15時間攪拌した後、遠心脱水機で固液分離し、水でリンスして99.6gのS−DACHとD−酒石酸のジアステレオマー塩(wet)を得た。母液中のS−DACHに対して収率81%であった。
ジアステレオマー塩を分析したところ、光学純度は92.5%e.e.であった。

Claims (6)

  1. 下記A〜Cから選択される方法により1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物から各種1,2−ジアミノシクロヘキサンを分離することを特徴とする1,2−ジアミノシクロヘキサンの製造法。
    A:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、(1S,2S)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、およびシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含む混合物である場合、下記第一工程および第二工程を行う。
    B:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンまたは(1S,2S)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンのいずれか一方とシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含む混合物である場合、下記第一工程および第三工程を行う。
    C:1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物が(1R,2R)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンと(1S,2S)−トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含み、シス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを含まない混合物である場合、下記第一工程、第二工程を行う。
    第一工程:水溶媒、酸、及び1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物の混合液に、光学活性酒石酸を添加することにより、光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンと光学活性酒石酸からなるジアステレオマー塩を結晶として固液分離する工程。
    第二工程:第一工程で得られた母液に、第一工程で添加した光学活性酒石酸の対掌体を添加することにより、先に結晶として取り出した光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの対掌体をジアステレオマー塩の結晶として固液分離する工程。
    第三工程:前工程で得られた母液に、鉱酸を添加することによりシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの鉱酸塩を結晶として単離する工程。
  2. Aの方法において、第二工程の後、さらに第三工程を行ない、光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、及びシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンをそれぞれ回収することを特徴とする請求項1記載の製造法。
  3. 第一工程において、光学活性酒石酸の使用量が目的とする光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンに対してモル比が0.7〜1.5モル倍であり、かつ1,2−ジアミノシクロヘキサン異性体混合物中に存在する塩基の量に対する、酸の使用量が、酸/アミノ基当量比が0.7〜1.5となるように酸を添加することを特徴とする、請求項1または2記載の製造法。
  4. 第二工程において、第一工程で得られた母液を濃縮することにより、系内水分率を20〜50質量%に調製したのち、先に結晶として取り出した光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの対掌体をジアステレオマー塩の結晶として取り出すことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の製造法。
  5. 第二工程において、添加する光学活性酒石酸が均一水溶液であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項記載の製造法。
  6. 第三工程において、前工程で得られた母液に、有機溶媒を添加してトランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを結晶として除去する処理を実施した後、鉱酸を添加することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のシス−1,2−ジアミノシクロヘキサンの製造法。
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