JP2011079587A - 樹脂シートおよび充填豆腐用容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】豆乳と凝固剤とを含む液が充填された後、シート部材が熱融着されて前記液が密封され、該密封された状態で加熱処理される充填豆腐用容器を形成させるための樹脂シートであって、少なくとも前記シート部材の熱融着される表面が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物によって形成されており、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、エチレンと1−ヘキセンとの共重合体でありメタロセン触媒によって重合されたものであることを特徴とする樹脂シートなどを提供する。
【選択図】 図2
Description
例えば、下記特許文献1には、樹脂シートを成形していわゆる充填豆腐用の樹脂製容器を作製することが記載されている。
なお、豆乳と凝固剤とを含む液は、前記充填豆腐用容器の凹部に収容された後に、該凹部の開口を覆うシート部材が前記鍔部に熱融着されることにより密封され、加熱処理が施されて豆腐へと加工される。
したがって、下記特許文献1にも記載されているように、前記シート部材による密封の際には、豆乳や凝固剤がシール面に介在されることから安定したシール強度を確保することが難しく、その対策が従来求められている。
このシート部材としては、前記ヒートシール層がポリエチレン系樹脂を用いて形成されたものや、前記ヒートシール層がポリプロピレン系樹脂によって形成されたものなどが広く用いられている。
しかし、このような異なる材質で表面形成されているシート部材のいずれに対しても安定したシール強度を発揮させうる樹脂シートや充填豆腐用容器はいまだ市場に提供されていない状況である。
図1は、充填豆腐を示す斜視図であり、図2(a)はこの図1におけるA−A’線矢視断面図である。
また、図2(b)は、図2(a)において破線Xにて囲まれた領域を拡大して示すものである。
また、前記樹脂製容器10は、前記周側壁の10wの上端から外側に延びる鍔部10fを有している。
すなわち、前記樹脂製容器10には、収容凹部の略正方形の開口を取り巻くように前記鍔部10fが形成されている。
そして、前記樹脂製容器10は、この樹脂シートのシール面層10L1の側を前記シート部材20に熱融着させるべくこのシール面層10L1の側が内側となるように成形加工されたものである。
例えば、前記ヒートシール層20L1の形成に、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂といったポリオレフィオン系樹脂が用いられ、前記ガスバリア層20L2の形成にポリアミド系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂が用いられたものなどが従来広く用いられている。
なお、本明細書中において、“表面がポリエチレン系樹脂によって構成されている”との表現や“表面がポリプロピレン系樹脂によって構成されている”との表現については、表面がポリエチレン系樹脂のみによって形成されている場合や表面がポリプロピレン系樹脂のみによって形成されている場合のみを意図するものではなく、これらの樹脂が表面を構成する材料の一部として含まれている場合をも含む意図で用いているものである。
本実施形態の充填豆腐1も、前記シート部材20のヒートシール層20L1と、前記鍔部10fを構成している樹脂シートのシール面層10L1とが熱融着されることによって豆腐TFの密封がなされている。
なお、この凝固剤としては、塩化マグネシウムや硫酸カルシウムが一般に用いられており、求める豆腐の硬さや風味によってその使用量が調整されるものである。
また、この液には、豆腐に気泡が形成されることを防止すべく消泡剤なども含有される場合がある。
そして、形成された豆腐TFとシート部材20との間に空気を介在させると、豆腐の風味を長期間維持させることが困難になるおそれがあることから、通常、空気を追い出した状態で前記シート部材20による密封を実施し得るように、前記液が収容凹部から鍔部10fの上にまで溢れる状態でヒートシール層20L1とシール面層10L1との熱融着が実施される。
したがって、シート部材20と鍔部10fとの間には、豆乳成分、凝固剤成分、消泡剤成分などが介在されやすくシート部材20と鍔部10fとの間に安定したシール強度を得難い状況となっている。
なお、本発明者の発見によれば、近年、充填豆腐においてグルコノ−δ−ラクトンを前記凝固剤として採用する事例が増えており、それに伴いシール強度のバラツキが問題視されるようになってきている。
すなわち、特に、グルコノ−δ−ラクトンを前記凝固剤として採用することでシール強度のバラツキが顕著になるものと見られる。
そのため、例えば、ポリエチレン系樹脂によってヒートシール層が形成させているシート部材を豆腐の密封に利用しているメーカーに対して安定したシール強度が発揮され得る樹脂製容器を提供し得たとしても、ポリプロピレン系樹脂によってヒートシール層が形成されているシート部材を利用している別のメーカーに対して安定したシール強度が発揮される樹脂製容器の提供を図ることが従来は難しい状況であった。
そこに、介在物によるバラツキが加えられるため、この充填豆腐の樹脂製容器10とシート部材20との間に安定したシール強度を発揮させることは他の用途に比べて特に困難な状況となっている。
このα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
なかでも、エチレンと1−ヘキセンとがメタロセン触媒によって共重合体された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、この樹脂組成物が用いられるシール面層10L1とヒートシール層20L1との間に特に良好なるシール性を発揮させ得る点においてベース樹脂として採用することが重要である。
さらに、優れたヒートシール性を発揮させ得る点において、結晶化度も所定範囲内であることが好ましく、例えば、JIS K7112に基づいて測定される密度が、0.890g/cm3以上0.910g/cm3以下であることが好ましく、0.900g/cm3以上0.905g/cm3以下であることがより好ましい。
このような割合で前記樹脂組成物に直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含有させる場合においては、単一種の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を用いても良く、複数種の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、その合計量が、上記割合となるように含有させても良い。
このようなことから、前記樹脂組成物には、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂よりも融点が高く、且つ、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との相溶性に優れたポリオレフィン系樹脂をさらに含有させることが好ましい。
この直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とともに前記樹脂組成物を構成させるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、中でも、ポリプロピレンホモポリマー(ホモPP)よりも、エチレン成分を10質量%以下含有するランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン樹脂)が好適である。
さらに、前記LLDPE(C6)と組み合わせて用いるランダムポリプロピレン樹脂としては、JIS K7112に基づいて測定される密度が、0.890g/cm3以上0.920g/cm3以下であることが好ましく、0.905g/cm3以上0.915g/cm3以下であることがより好ましい。
したがって、豆腐TFの取り出し易さを勘案すると、離型剤として有効な成分を前記樹脂組成物に含有させることが好ましい。
この離型剤成分としては、例えば、ステアリン酸モノグリセライドのようなモノグリセリン脂肪酸エステル類を挙げることができる。
このモノグリセリン脂肪酸エステル類は、豆腐の消泡剤などにも利用される成分であることから衛生面を考慮しても前記樹脂組成物に含有させる離型剤成分として特に好ましい物質であるといえる。
なお、このモノグリセリン脂肪酸エステル類をシール面層10L1の形成に用いる樹脂組成物に含有させても、過度に含有させない限りにおいては、ヒートシール層20L1との熱融着を阻害するおそれは低い。
通常、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の融点は、110℃程度であり、この豆乳の凝固のための加熱条件においては、シール面層10L1の内部において直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の分子が互いの分子間力による拘束がある程度解かれた状態となる。
すなわち、豆乳の凝固を行うための加熱が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂中におけるモノグリセリン脂肪酸エステル類の移行を幇助すべく作用することとなり、容器内壁面側におけるモノグリセリン脂肪酸エステル類の濃化を促進させることとなる。
このようなことからモノグリセリン脂肪酸エステル類と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とは、ベースポリマーと離型剤成分との組み合わせとして好適なものであるといえる。
なお、ポリプロピレン系樹脂の内、ホモポリマー(ホモPP)は曲げ弾性が高く樹脂シートに“コシ”を付与するのに有効な樹脂であるが、一方でホモPPは、低温脆化を起こしやすいことから、このコア層10L2を形成する樹脂組成物には、さらに、ランダムPPや低密度ポリエチレン樹脂あるいは高密度ポリエチレン樹脂などを含有させて低温における脆化を抑制させることが好ましい。
また、このコア層10L2を形成する樹脂組成物には、さらに、着色剤などを配合して樹脂製容器の美観の向上を図ることも可能である。
また、シール面層10L1とコア層10L2との間に高い親和性を有していることが好ましいのと同様に、コア層10L2と接するこの裏面層10L3を構成する樹脂組成物が
コア層10L2を構成する樹脂組成物と親和性を有していることが好ましい。
このような観点から、この裏面層10L3を構成する樹脂組成物としては、ポリプロピレン系樹脂をベース樹脂とすることが好ましく、樹脂製容器に優れた表面硬度を付与し得る点においてホモPPをベース樹脂とすることが好ましい。
一方、過度に厚みを厚くしても樹脂シートの厚みが増すばかりでそれ以上にシール強度を向上させることが難しくなる。
このような点において、シール面層10L1は、100μm以下の厚みとされることが好ましい。
また、コア層10L2の厚みは、通常、樹脂シートのコシやシート成形における加工性などの観点から100μm以上1mm以下とされることが好ましい。
さらに、裏面層10L3の厚みは、樹脂シート(樹脂製容器)に対する表面硬度の付与の観点から10μm以上100μm以下とされることが好ましい。
さらには、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物のみからなる単層の樹脂シートであっても、表面がポリエチレン系樹脂によって構成されたシート部材が熱融着される用途と、表面がポリプロピレン系樹脂によって構成されたシート部材が熱融着される用途とに共用される部材の形成に用いられる場合においては、本発明の意図する範囲のものである。
シール強度の評価に用いるべく下記表1に示すシート部材を用意した。
シール強度の評価に用いるべく下記表2に示す原料を樹脂シートの作製に用いた。
なお、「E」と「F」とは、使用材料自体は同一であり、後述するように層の厚みを異ならせているのみである。
N、A〜Fの樹脂シートと、前記シート部材1、2とを、シート部材のポリエチレン樹脂層あるいはポリプロピレン樹脂層と、樹脂シートのシール面層とを面接させてヒートシール装置(テスター産業社製、型名「TP−701A」)によって150℃〜210℃の温度で0.2MPaの圧力を0.7秒間加えてシート部材と樹脂シートとの熱融着を実施した。
なお、この熱融着により形成された幅10mm×長さ50mmのヒートシール部に対して、シート部材と樹脂シートとを180度の方向に引っ張って、その長さ方向に剥離して行く「180度ピール強度」の測定をテスター産業社製の引張り試験機(測定可能範囲:5kgf以下)を用いて実施した。
なお、各測定試料は3個ずつ作製し、引張り速度は300mm/minとした。
各測定結果(n=3の算術平均値)を、下記表5に示す。
一方で、高圧法による低密度ポリエチレン樹脂をベースとした樹脂組成物で表面を形成させた樹脂シートNは、表面がポリエチレン系樹脂によって構成されたシート部材(シート部材1)に対して良好なるシール強度が発揮されたものの表面がポリプロピレン系樹脂によって構成されたシート部材(シート部材2)に対しては低いシール強度しか示されず、シール強度の安定性が得られ難いことがわかる。
シール面層、コア層、及び、裏面層の3層構造を有している樹脂シートを用いて、図1、2に示すような充填豆腐用容器を作製した。
なお、樹脂シートの構成材料は、下記表7の通りである。
このことからも、1−ヘキセンを共重合成分とする直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をシール部材が熱融着される表面の形成に用いた場合には、充填豆腐用容器として好適な、シール強度の安定性に優れたものが形成されることがわかる。
10 樹脂製容器
10L1 シール面層
10L2 コア層
10L3 裏面層
10b 底面部
10f 鍔部
10w 周側壁
20 シート部材
20L1 ヒートシール層
20L2 ガスバリア層
TF 豆腐
Claims (4)
- 豆乳と凝固剤とを含む液が充填された後、シート部材が熱融着されて前記液が密封され、該密封された状態で加熱処理される充填豆腐用容器を形成させるための樹脂シートであって、
少なくとも前記シート部材が熱融着される表面が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物によって形成されており、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、エチレンと1−ヘキセンとの共重合体でありメタロセン触媒によって重合されたものであることを特徴とする樹脂シート。 - 前記凝固剤がグルコノ−δ−ラクトンである請求項1記載の樹脂シート。
- 豆乳と凝固剤とを含む液が充填された後、シート部材が熱融着されて前記液が密封され、該密封された状態で加熱処理される充填豆腐用容器であって、
前記シート部材が熱融着される表面が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物によって形成されており、前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が、エチレンと1−ヘキセンとの共重合体でありメタロセン触媒によって重合されたものであることを特徴とする充填豆腐用容器。 - 前記凝固剤がグルコノ−δ−ラクトンである請求項3記載の充填豆腐用容器。
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