JP2011076792A - 固体電解質層、電極活物質層、全固体リチウム電池、固体電解質層の製造方法、および電極活物質層の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料と、上記硫化物固体電解質材料を結着する疎水性ポリマーと、を含有することを特徴とする固体電解質層を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
まず、本発明の固体電解質層について説明する。本発明の固体電解質層は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料と、上記硫化物固体電解質材料を結着する疎水性ポリマーと、を含有することを特徴とするものである。
以下、本発明の固体電解質層について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における硫化物固体電解質材料について説明する。本発明における硫化物固体電解質材料は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しないものである。ここで、「架橋硫黄」とは、硫化物固体電解質材料の合成時に生じる−S−結合の硫黄元素をいう。「実質的に架橋硫黄を有しない」とは、硫化物固体電解質材料に含まれる架橋硫黄の割合が、疎水性ポリマーとの反応で影響を受けない程度に少ないことをいう。この場合、架橋硫黄の割合は、例えば10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
次に、本発明における疎水性ポリマーについて説明する。本発明における疎水性ポリマーは、上述した硫化物固体電解質材料を結着するものである。疎水性ポリマーは、通常、結着材として機能する。また、本発明における疎水性ポリマーは、親水基を有しないことが好ましい。親水基を有しないことは、例えば、赤外線分光法(IR)で親水基のピークが確認されないことが好ましい。上記親水基としては、例えば、水酸基、ケトン基、カルボニル基等を挙げることができる。
本発明の固体電解質層は、後述する界面活性剤や反応促進材を含有していても良い。また、本発明の固体電解質層は、所望の可撓性を有することが好ましい。加工性および成形性に優れるからである。固体電解質層の形状としては、例えば、シート状およびペレット状等を挙げることができる。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
次に、本発明の電極活物質層について説明する。本発明の電極活物質層は、電極活物質と、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料と、上記電極活物質および上記硫化物固体電解質材料を結着する疎水性ポリマーと、を含有することを特徴とするものである。
次に、本発明の全固体リチウム電池について説明する。本発明の全固体リチウム電池は、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するものである。さらに、本発明の全固体リチウム電池は、2つの実施態様に大別することができる。
本発明の全固体リチウム電池の第一実施態様は、上記固体電解質層が、上記「A.固体電解質層」に記載した固体電解質層である実施態様である。この場合、上述した固体電解質層を用いることにより、電池抵抗の低い全固体リチウム電池とすることができる。特に、固体電解質層は、電極活物質層に比べて、硫化物固体電解質材料の使用量が多いため、本発明の効果を充分に発揮することができる。
本発明の全固体リチウム電池の第二実施態様は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の少なくとも一方が、上記「B.電極活物質層」に記載した電極活物質層である実施態様である。この場合、上述した電極活物質層を用いることにより、電池抵抗の低い全固体リチウム電池とすることができる。特に、電極活物質層は、電極活物質を含有するため、電極活物質と硫化物固体電解質との反応により高抵抗層が生成することを抑制でき、電池抵抗の低い全固体リチウム電池とすることができる。
次に、本発明の固体電解質層の製造方法について説明する。本発明の固体電解質層の製造方法は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料、ならびに、疎水性ポリマーを溶媒中で混合し、固体電解質層形成用スラリーを調製する混合工程と、上記固体電解質層形成用スラリーを基板上に塗工し、固体電解質層形成用塗工膜を形成する塗工工程と、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の固体電解質層の製造方法について、工程ごとに説明する。
本発明における混合工程は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料、ならびに、疎水性ポリマーを溶媒中で混合し、固体電解質層形成用スラリーを調製する工程である。なお、硫化物固体電解質材料および疎水性ポリマーについては、上記「A.固体電解質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本発明における塗工工程は、上記固体電解質層形成用スラリーを基板上に塗工し、固体電解質層形成用塗工膜を形成する工程である。上記基板としては、例えば、フッ素樹脂シート等の剥離可能なもの、および、電極活物質層等を挙げることができる。なお、後述する電極活物質層の製造方法においては、集電体を基板として用いることもできる。また、固体電解質層形成用スラリーを塗工する方法としては、特に限定されるものではないが、
例えば、ドクターブレード法、ダイコート法、グラビアコート法等を挙げることができる。
また、本発明の固体電解質層の製造方法は、上述した工程の他に、圧縮工程を有していても良い。高密度の固体電解質層を得ることができるからである。これにより、Liイオン伝導性の向上および固体電解質膜の薄膜化による容量増加を図ることができる。
次に、本発明の電極活物質層の製造方法について説明する。本発明の電極活物質層の製造方法は、電極活物質、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料、ならびに、疎水性ポリマーを溶媒中で混合し、電極活物質層形成用スラリーを形成する混合工程と、上記電極活物質層形成用スラリーを基板上に塗工し、電極活物質層形成用塗工膜を形成する塗工工程と、を有することを特徴とするものである。
(架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料の合成)
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)と五硫化リン(P2S5)とを用いた。これらの粉末をxLi2S・(100−x)P2S5の組成において、x=75のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、回転数300rpmで20時間メカニカルミリングを行い、硫化物固体電解質材料(硫化物ガラス、75Li2S−25P2S5)を得た。なお、Li2S:P2S5=75:25(モル比)の関係は、上述したオルト組成を得る関係であり、得られた硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を有しないものである。
まず、正極活物質としてLiCoO2(1040mg)、硫化物固体電解質として75Li2S−25P2S5(445mg)、疎水性ポリマーとしてスチレン−ブタジエンゴム(SBR、スチレン比率25%、分子量30,000〜50,000、15mg)を用意し、これらの材料を脱水ヘプタン(660mg)中に分散させ、正極活物質層形成用スラリーを得た。正極活物質層形成用スラリーの固形分組成は、LiCoO2が69.3重量%、75Li2S−25P2S5が29.7重量%、SBRが1重量%であった。次に、このスラリーを、正極集電体であるSUS箔上に、目付量16.1mg/cm2で塗工し、120℃で60分間熱処理を行った。最後に、得られた膜をセルサイズ(1cm2)に切り抜くことで、正極活物質層を得た。
固体電解質層形成用材料として75Li2S−25P2S5(65mg)を用意し、負極活物質層形成用合材として、グラファイト(6.0mg)および75Li2S−25P2S5(6.0mg)の混合物を用意した。その後、固体電解質層形成用材料を1ton/cm2の圧力でプレスし、固体電解質層を形成した。次に、固体電解質層の一方の表面に、上記の正極活物質層を配置し、1ton/cm2の圧力でプレスした。次に、固体電解質層の他方の表面に、負極活物質層形成用合材を添加し、4.3ton/cm2の圧力でプレスした。最後に、発電要素の負極活物質層にSUS箔を配置し、評価用電池を得た。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)と五硫化リン(P2S5)とを用いた。これらの粉末をxLi2S・(100−x)P2S5の組成において、x=70のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、回転数300rpmで20時間メカニカルミリングを行った。その後、得られた粉末を290℃、2時間の条件で熱処理を行い、硫化物固体電解質材料(結晶化硫化物ガラス、Li7P3S11)を得た。なお、Li7P3S11は、架橋硫黄(S3P−S−PS3ユニット)を有するものである。
スチレン−ブタジエンゴムの代わりに、スチレン−エチレン−ブタジエン(SEBR、スチレン比率20%、分子量30,000〜50,000)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層に用いられた75Li2S−25P2S5の代わりに、Li7P3S11を用いたこと以外は、実施例2と同様にして評価用電池を得た。
正極活物質としてLiCoO2(998mg)、硫化物固体電解質として75Li2S−25P2S5(428mg)、ポリマーとして水酸基を有するシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング社製シリコーンゴム、分子量50,000〜80,000、75mg)を用意し、これらの材料を脱水ヘプタン(660mg)中に分散させ、正極活物質層形成用スラリーを得た。正極活物質層形成用スラリーの固形分組成は、LiCoO2が66.5重量%、75Li2S−25P2S5が28.5重量%、シリコーンゴムが5重量%であった。このスラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層に用いられた75Li2S−25P2S5の代わりに、Li7P3S11を用いたこと以外は、比較例3と同様にして評価用電池を得た。
実施例1〜2、比較例1〜4で得られた評価用電池を用いて、電池抵抗の増加率を測定した。まず、評価用電池をSOC0%〜100%でサイクル試験(30サイクル)を行い、次に、SOC80%に充電し交流インピーダンス測定によって抵抗を測定した。この抵抗値を、最初の充電時における抵抗値で除することにより、電池抵抗の増加率を算出した。なお、交流インピーダンス測定の条件は、電圧振幅10mV,測定周波数1MHz〜0.1Hz、25℃とした。
2 … 疎水性ポリマー
3 … 電極活物質
10、13 … 固体電解質層
11 … 電極活物質層
12 … 正極活物質層
14 … 負極活物質層
Claims (16)
- Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料と、
前記硫化物固体電解質材料を結着する疎水性ポリマーと、
を含有することを特徴とする固体電解質層。 - 前記疎水性ポリマーが、炭化水素系ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質層。
- 前記炭化水素系ポリマーが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)またはスチレン−エチレン−ブタジエンゴム(SEBR)であることを特徴とする請求項2に記載の固体電解質層。
- 前記原料組成物におけるLi2SおよびP2S5の割合が、モル換算で、Li2S:P2S5=72〜78:22〜28の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の固体電解質層。
- 前記硫化物固体電解質材料が、硫化物ガラスであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に固体電解質層。
- 前記硫化物固体電解質材料が、結晶化硫化物ガラスであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の固体電解質層。
- 電極活物質と、
Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料と、
前記電極活物質および前記硫化物固体電解質材料を結着する疎水性ポリマーと、
を含有することを特徴とする電極活物質層。 - 前記疎水性ポリマーが、炭化水素系ポリマーであることを特徴とする請求項7に記載の電極活物質層。
- 前記炭化水素系ポリマーが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)またはスチレン−エチレン−ブタジエンゴム(SEBR)であることを特徴とする請求項8に記載の電極活物質層。
- 前記原料組成物におけるLi2SおよびP2S5の割合が、モル換算で、Li2S:P2S5=72〜78:22〜28の範囲内であることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれかの請求項に記載の電極活物質層。
- 前記硫化物固体電解質材料が、硫化物ガラスであることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれかの請求項に電極活物質層。
- 前記硫化物固体電解質材料が、結晶化硫化物ガラスであることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれかの請求項に記載の電極活物質層。
- 正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体リチウム電池であって、
前記固体電解質層が、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に固体電解質層であることを特徴とする全固体リチウム電池。 - 正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体リチウム電池であって、
前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方が、請求項7から請求項12までのいずれかの請求項に記載の電極活物質層であることを特徴とする全固体リチウム電池。 - Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料、ならびに、疎水性ポリマーを溶媒中で混合し、固体電解質層形成用スラリーを調製する混合工程と、
前記固体電解質層形成用スラリーを基板上に塗工し、固体電解質層形成用塗工膜を形成する塗工工程と、
を有することを特徴とする固体電解質層の製造方法。 - 電極活物質、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなり、実質的に架橋硫黄を有しない硫化物固体電解質材料、ならびに、疎水性ポリマーを溶媒中で混合し、電極活物質層形成用スラリーを形成する混合工程と、
前記電極活物質層形成用スラリーを基板上に塗工し、電極活物質層形成用塗工膜を形成する塗工工程と、
を有することを特徴とする電極活物質層の製造方法。
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