JP5522086B2 - イオン伝導体材料、固体電解質層、電極活物質層および全固体電池 - Google Patents

イオン伝導体材料、固体電解質層、電極活物質層および全固体電池 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、全固体電池に用いられるイオン伝導体材料に関し、詳しくは密着性に優れたイオン伝導体材料に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化した全固体リチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体リチウム電池の分野において、硫化物固体電解質材料を固体電解質層や電極活物質層に用いることにより、全固体リチウム電池のLiイオン伝導性を向上させることが知られている。
一方、固体電解質層や電極活物質層に、結着材としてポリマーを添加する試みがある。ポリマーを添加することにより、これらの層に可撓性を付与することができ、加工性や成形性を向上させることができる。例えば、特許文献1においては、ポリブタジエンと極性ゴムとからなる高分子組成物を結着材として用い、硫化物固体電解質材料として0.5LiS−0.5Pを用いた固体電解質層および電極活物質層が開示されている。また、特許文献2においては、水素添加ブロック共重合体を結着材として用い、硫化物固体電解質として0.5LiS−0.5Pを用いた固体電解質層および電極活物質層が開示されている。さらに、非特許文献1においては、結着材として液状シリコーンを用い、硫化物固体電解質材料としてLiPO−LiS−SiSを用いた固体電解質層が開示されている。
特開2000−123874号公報 特許第3655443号
Taro Inada et al., "Silicone as a binder in composite electrolytes", Journal of Power Sources 119-121 (2003) 948-950
従来、固体電解質層や電極活物質層に、結着材としてポリマーを添加しても、他の部材(例えば、集電体、固体電解質層または電極活物質層等)との密着性が低いという問題がある。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、密着性に優れたイオン伝導体材料を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、硫化物固体電解質材料と、アミノ基を有する結着材とを含有することを特徴とするイオン伝導体材料を提供する。
本発明によれば、結着材がアミノ基を有することにより、密着性に優れたイオン伝導体材料とすることができる。
上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、オルト組成を有することが好ましい。アミノ基を有する結着材との反応性が低い硫化物固体電解質材料とすることができ、イオン伝導体材料のイオン伝導性の低下を抑制することができるからである。
上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、Li、PおよびSを含有することが好ましい。Liイオン伝導性が良好な硫化物固体電解質材料とすることができるからである。
上記発明においては、上記硫化物固体電解質材料が、LiSおよびPを含有する原料組成物を用いてなる硫化物ガラスであり、上記原料組成物におけるLiSおよびPの割合が、モル換算で、LiS:P=72〜78:22〜28の範囲内であることが好ましい。従来の硫化物固体電解質材料(例えば、Li11)と比較して反応性が低い硫化物固体電解質材料とすることができ、アミノ基を有する結着材との反応が抑えられ、Liイオン伝導性の低下を抑制したイオン伝導体材料とすることができるからである。
また、本発明においては、上述したイオン伝導体材料を含有することを特徴とする固体電解質層を提供する。
本発明によれば、上述したイオン伝導体材料を用いることにより、電極活物質層との密着性に優れた固体電解質層とすることができる。また、上記イオン伝導体材料がアミノ基を有する結着材を含有するため、可搬性および可撓性に優れた固体電解質層を得ることができる。
また、本発明においては、電極活物質と、上述した硫化物固体電解質材料とを含有することを特徴とする電極活物質層を提供する。
本発明によれば、上述したイオン伝導体材料を用いることにより、集電体や固体電解質層との密着性に優れた電極活物質層とすることができる。また、上記イオン伝導体材料がアミノ基を有する結着材を含有するため、可搬性および可撓性に優れた電極活物質層を得ることができる。
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池であって、上記固体電解質層が、上述した固体電解質層であることを特徴とする全固体電池を提供する。
本発明によれば、上述した固体電解質層を用いることで、固体電解質層と、正極活物質層および負極活物質層との密着性を向上させることができ、耐久性に優れた全固体電池とすることができる。
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池であって、上記正極活物質層および上記負極活物質層の少なくとも一方が、上述した電極活物質層であることを特徴とする全固体電池を提供する。
本発明によれば、上述した電極活物質層を用いることにより、正極活物質層および/または負極活物質層と、集電体および固体電解質層との密着性を向上させることができ、耐久性に優れた全固体電池とすることができる。
本発明においては、密着性に優れたイオン伝導体材料が得られるという効果を奏する。
本発明のイオン伝導体材料の一例を示す概略断面図である。 本発明の固体電解質層の一例を示す概略断面図である。 本発明の電極活物質層の一例を示す概略断面図である。 本発明の全固体電池の一例を示す概略断面図である。 実施例1、2および比較例1、2で得られた固体電解質シートの密着力測定の結果を示すグラフである。 実施例3および比較例3で得られた固体電解質シートの密着力測定の結果を示すグラフである。 実施例1、2および比較例1、2で得られた固体電解質シートのLiイオン伝導度維持率測定の結果を示すグラフである。 実施例3および比較例3で得られた固体電解質シートのLiイオン伝導度維持率測定の結果を示すグラフである。
以下、本発明のイオン伝導体材料、固体電解質層、電極活物質層および全固体電池について、詳細に説明する。
A.イオン伝導体材料
まず、本発明のイオン伝導体材料について説明する。本発明のイオン伝導体材料は、硫化物固体電解質材料と、アミノ基を有する結着材とを含有することを特徴とするものである。
図1は、本発明のイオン伝導体材料の一例を示す概略断面図である。図1におけるイオン伝導体材料1は、硫化物固体電解質材料2と、アミノ基を有する結着材3とを含有するものである。
本発明によれば、結着材がアミノ基を有することにより、密着性に優れたイオン伝導体材料とすることができる。例えば、本発明のイオン伝導体材料が電極活物質層に用いられる場合、電極活物質層と集電体との密着性を向上させることができる。そのメカニズムとしては、アミノ基を構成する窒素原子が非共有電子対を有するため、アミノ基と集電体表面の水酸基等の官能基との間で、静電的相互作用により結合を形成することが推定される。また、上記の場合、電極活物質層と固体電解質層との密着性を向上させることができる。これは、おそらく、固体電解質層表面の官能基ではなく、固体電解質層に含まれる硫化物固体電解質材料の分子中の硫黄が、アミノ基との静電的相互作用により結合を形成することによるものと考えられる。一方、本発明のイオン伝導体材料が固体電解質層に用いられる場合、固体電解質層と電極活物質層との密着性を向上させることができる。これは、上記と同様に、アミノ基と電極活物質層表面の水酸基、炭酸基、炭酸水素基等の官能基との間に結合が形成されることによるものと考えられる。さらに、本発明のイオン伝導体材料は、硫化物固体電解質材料を含有するため、イオン伝導性が高いという利点を有する。
以下、本発明のイオン伝導体材料について、構成ごとに説明する。
1.結着材
まず、本発明における結着材について説明する。本発明における結着材は、アミノ基を有するものであり、後述する硫化物固体電解質材料を結着するものである。また、上記結着材は、例えば、骨格ポリマーとなる、一般的に結着材として用いられるポリマーの分子中に、アミノ基を導入したものである。
本発明における結着材が有するアミノ基としては、所望の密着力を発現可能な結合を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005522086
一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立であり、例えば、水素(H)、炭化水素基、アシル基、チオアシル基、ホスフィニル基のいずれかである。また、一般式(1)において、RおよびRは、同じであっても良く、異なっていても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基;フェニル基、ベンジル基等のアリール基等を挙げることができる。アシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。チオアシル基としては、例えば、チオアセチル基等を挙げることができる。
このようなアミノ基の具体例としては、アミノ基(第1級)、メチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、トリメチルアミノ基、アリルアミノ基等を挙げることができる。また、本発明における結着材が有するアミノ基は、例えば、メタクリルアミド基、アセトアミド基、アクリルアミド基等のアミド基であっても良く、イミド基であっても良い。
また、結着材におけるアミノ基の導入量としては、所望の密着力を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、骨格ポリマーに対して、0.001質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
結着材に用いられる骨格ポリマーとしては、結着性を有し、アミノ基を導入することができるものであれば特に限定されるものではないが、疎水性ポリマーであることが好ましい。使用するポリマーが親水基を有していると、硫化物固体電解質材料の硫黄成分と反応しやすいのに対して、親水基を有しない疎水性ポリマーを用いることで、硫化物固体電解質材料の硫黄成分との反応を抑制することができ、本発明のイオン伝導体材料のイオン伝導性が低下することを抑制することができるからである。
結着材に用いられる疎水性ポリマーは、エラストマーであることが好ましい。結着性に優れているからである。また、上記エラストマーは、熱硬化性エラストマーであっても良く、熱可塑性エラストマーであっても良いが、熱硬化性エラストマーであることが好ましく、ゴムであることがより好ましい。また、ゴムは、加硫されたものであっても良く、加硫されていないものであっても良い。
また、上記疎水性ポリマーは、炭化水素系ポリマーであることが好ましい。疎水性が高いからである。炭化水素系ポリマーは、炭素および水素から構成されるものであっても良く、炭素に結合する水素の一部または全部がフッ素等のハロゲンで置換されているものであっても良い。
このような疎水性ポリマーとしては、例えば、ブチレンゴム(BR)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム(SEBS)、エチレン−プロピレンゴム(EP)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンゴム(SEPS)、水素化イソプレンゴム(HIR)、水素化ブチルゴム(HIIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができ、中でも、BRが好ましい。密着性がより高いイオン伝導体材料とすることができるからである。
本発明における結着材に用いられるポリマーの数平均分子量としては、例えば、1,000〜700,000の範囲内、中でも、10,000〜100,000の範囲内、特に、30,000〜80,000の範囲内であることが好ましい。上記ポリマーの分子量が小さすぎると、所望の可撓性を得ることができない可能性があり、上記ポリマーの分子量が大きすぎると、溶媒に対する溶解性が低くなり、所望の分散状態を得ることができない可能性があるからである。
本発明における結着材としては、例えば、市販の旭化成株式会社製のタフテックMP10等を用いることができる。
本発明のイオン伝導体材料における結着材の含有量は、目的とするイオン伝導体材料に応じて適宜選択されるものであるが、硫化物固体電解質材料100質量部に対して、例えば、0.01質量部〜30質量部の範囲内であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。結着材の含有量が多すぎると、相対的に硫化物固体電解質材料の含有量が少なくなり、イオン伝導性が大きく低下する可能性があるからであり、結着材の含有量が少なすぎると、密着力を向上させることができない可能性があるからである。
2.硫化物固体電解質材料
次に、本発明における硫化物固体電解質材料について説明する。本発明における硫化物固体電解質材料は、硫黄(S)を含有し、かつ、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。本発明のイオン伝導体材料が全固体リチウム電池に用いられる場合、用いられる硫化物固体電解質材料として、例えば、LiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。
上記第13族〜第15族の元素としては、例えば、Al、Si、Ge、P、As、Sb等を挙げることができる。また、第13族〜第15族の元素の硫化物としては、具体的には、Al、SiS、GeS、P、P、As、Sb等を挙げることができる。特に、本発明においては、硫化物固体電解質材料が、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS−GeS材料またはLiS−Al材料であることが好ましく、LiS−P材料であることがより好ましい。Liイオン伝導性が優れているからである。
上記原料組成物に含まれるLiSは、不純物が少ないことが好ましい。副反応を抑制することができるからである。LiSの合成方法としては、例えば、特開平7−330312号公報に記載された方法等を挙げることができる。さらに、LiSは、WO2005/040039に記載された方法等を用いて精製されていることが好ましい。また、上記原料組成物は、LiS、および第13族〜第15族の元素の硫化物の他に、LiPO、LiSiO、LiGeO、LiBOおよびLiAlOからなる群から選択される少なくとも一種のオルトオキソ酸リチウムを含有していても良い。このようなオルトオキソ酸リチウムを加えることで、より安定な硫化物固体電解質材料を得ることができる。
本発明における硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を実質的に含有しないことが好ましい。アミノ基を有する結着材との反応を抑えることができ、イオン伝導性が低下することを抑制することができるからである。架橋硫黄は反応性が高いため、上記結着材と反応することで、硫化物固体電解質材料の劣化の原因となる。ここで、「架橋硫黄」とは、硫化物固体電解質材料の合成時に生じる−S−結合の硫黄元素をいう。「架橋硫黄を実質的に含有しない」とは、硫化物固体電解質材料に含まれる架橋硫黄の割合が、アミノ基を有する結着材との反応で影響を受けない程度に少ないことをいう。この場合、架橋硫黄の割合は、例えば、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
また、「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定により、確認することができる。例えば、硫化物固体電解質材料が、LiS−P材料である場合、架橋硫黄を有するSP−S−PSユニット(Pユニット)のピークは、通常402cm−1に現れる。そのため、本発明においては、このピークが検出されないことが好ましい。また、PS 3−ユニットのピークは、通常417cm−1に現れる。本発明においては、402cm−1における強度I402が、417cm−1における強度I417よりも小さいことが好ましい。より具体的には、強度I417に対して、強度I402は、例えば、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましい。また、LiS−P材料以外の硫化物固体電解質材料についても、架橋硫黄を含有するユニットを特定し、そのユニットのピークを測定することにより、架橋硫黄を実質的に含有していないことを判断することができる。なお、「架橋硫黄を実質的に含有しない」ことは、ラマン分光スペクトルの測定結果以外にも、硫化物固体電解質材料を合成する際の原料組成比、NMRの測定結果を用いても確認することができる。
また、上記硫化物固体電解質材料が、LiSを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、上記硫化物固体電解質材料は、LiSを実質的に含有しないことが好ましい。「LiSを実質的に含有しない」とは、出発原料に由来するLiSを実質的に含有しないことをいう。LiSは、架橋硫黄と同様に反応性が高いため、含まれないことが好ましい。「LiSを実質的に含有しない」ことは、X線回折により確認することができる。具体的には、LiSのピーク(2θ=27.0°、31.2°、44.8°、53.1°)を有しない場合は、LiSを実質的に含有しないと判断することができる。なお、原料組成物におけるLiSの割合が大きすぎると、硫化物固体電解質材料がLiSを含む傾向にあり、逆に、原料組成物におけるLiSの割合が小さすぎると、硫化物固体電解質材料が上述した架橋硫黄を含む傾向にある。
また、上記硫化物固体電解質材料が、架橋硫黄およびLiSを実質的に含有しない場合、通常、上記硫化物固体電解質材料は、オルト組成またはその近傍の組成を有している。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本発明においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。例えば、LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当し、LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当し、LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
また、LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。LiS−Al系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。一方、LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.7:33.3である。LiS−GeS系の硫化物固体電解質材料の場合も同様である。
上記原料組成物が、LiSおよびPを含有する場合、LiSおよびPの割合は、モル換算で、LiS:P=72〜78:22〜28の範囲内であることが好ましく、LiS:P=73〜77:23〜27の範囲内であることがより好ましく、LiS:P=74〜76:24〜26の範囲内であることがさらに好ましい。両者の割合を、オルト組成を得る割合(LiS:P=75:25)およびその近傍を含む範囲とすることで、アミノ基を有する結着材との反応性が低い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。なお、上記原料組成物が、LiSおよびAlを含有する場合も同様である。一方、上記原料組成物が、LiSおよびSiSを含有する場合、LiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=63〜70:30〜37の範囲内であることが好ましく、LiS:SiS=64〜69:31〜36の範囲内であることがより好ましく、LiS:SiS=65〜68:32〜35の範囲内であることがさらに好ましい。両者の割合を、オルト組成を得る割合(LiS:SiS=66.7:33.3)およびその近傍を含む範囲とすることで、アミノ基を有する結着材との反応性が低い硫化物固体電解質材料を得ることができるからである。なお、上記原料組成物が、LiSおよびGeSを含有する場合も同様である。
本発明における硫化物固体電解質材料は、硫化物ガラスであっても良く、その硫化物ガラスを熱処理して得られる結晶化硫化物ガラスであっても良い。硫化物ガラスは、例えば、原料組成物に対して、非晶質化法を行うことで得ることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でも、メカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。メカニカルミリングは、原料組成物を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でも、ボールミルが好ましく、特に、遊星型ボールミルが好ましい。所望の硫化物固体電解質材料を効率良く得ることができるからである。また、メカニカルミリングの条件は、所望の硫化物固体電解質材料を得ることができるように設定することが好ましい。一方、結晶化硫化物ガラスは、例えば、硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理することにより得ることができる。すなわち、原料組成物に対して、非晶質化法を行い、さらに熱処理を行うことにより、結晶化硫化物ガラスを得ることができる。なお、熱処理の条件によっては、架橋硫黄およびLiSが生成する可能性や安定相が生成する可能性があるため、本発明においては、これらが生成しないように、熱処理温度および熱処理時間を調整することが好ましい。
硫化物固体電解質材料の形状としては、例えば、粒子形状を挙げることができ、中でも、真球状または楕円球状であることが好ましい。また、硫化物固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、硫化物固体電解質材料は、Liイオン伝導性が高いことが好ましく、常温におけるLiイオン伝導度は、例えば、1×10−5S/cm以上であることが好ましく、1×10−4S/cm以上であることがより好ましい。
3.イオン伝導体材料
本発明のイオン伝導体材料は、イオン伝導性および密着性を必要とする任意の用途に用いることができる。中でも、上記イオン伝導体材料は、全固体電池に用いられることが好ましい。さらに、上記イオン伝導体材料を全固体電池に用いる場合、正極活物質層(正極体)に用いても良く、負極活物質層(負極体)に用いても良く、固体電解質層に用いても良い。
本発明のイオン伝導体材料の製造方法としては、上記のイオン伝導体材料を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記硫化物固体電解質材料および上記結着材を溶媒中で混合してスラリーを調製し、溶媒を乾燥させる方法等を挙げることができる。上記溶媒としては、硫化物固体電解質材料および結着材を分散させることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、フッ素系溶媒、塩素系溶媒等を挙げることができ、飽和炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、フッ素系溶媒が好ましい。また、上記溶媒は、界面活性剤や反応促進剤を含有していても良い。界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル系界面活性剤およびポリチオール系界面活性剤等を挙げることができる。
B.固体電解質層
次に、本発明の固体電解質層について説明する。本発明の固体電解質層は、上述したイオン伝導体材料を含有することを特徴とするものである。
図2は、本発明の固体電解質層の一例を示す概略断面図である。図2における固体電解質層10は、イオン伝導体材料1を含有するものである。また、イオン伝導体材料1は、硫化物固体電解質材料2と、アミノ基を有する結着材3とを含有する。
本発明によれば、上述したイオン伝導体材料を用いることにより、電極活物質層から剥離しにくい固体電解質層とすることができる。また、密着力が高いため、可搬性および可撓性に優れた固体電解質層を得ることができる。
本発明の固体電解質層は、イオン伝導体材料を少なくとも含有するものである。なお、イオン伝導体材料については、上記「A.イオン伝導体材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
固体電解質層における上記イオン伝導体材料の含有量は、多いことが好ましい。具体的には、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の固体電解質層は、上述した界面活性剤および反応促進剤を含有していても良い。また、本発明の固体電解質層は、所望の可撓性を有することが好ましい。加工性および成形性に優れるからである。固体電解質層の形状としては、例えば、シート状およびペレット状等を挙げることができる。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも、0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の固体電解質層の製造方法としては、上述した固体電解質層を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記イオン伝導体材料の原料である硫化物固体電解質材料およびアミノ基を有する結着材を溶媒中で混合してスラリーを作製し、ドクターブレード等を用いてこのスラリーを基板上に塗工した後、溶媒を乾燥する方法、上記イオン伝導体材料をプレスする方法等を挙げることができる。なお、上記溶媒については、上述したものを用いることができる。また、上記基板としては、例えば、フッ素樹脂シート等の剥離可能なもの、および、電極活物質層等を用いることができる。
C.電極活物質層
次に、本発明の電極活物質層について説明する。本発明の電極活物質層は、電極活物質と、上述したイオン伝導体材料とを含有することを含有することを特徴とするものである。
図3は、本発明の電極活物質層の一例を示す概略断面図である。図3における電極活物質層20は、電極活物質4と、イオン伝導体材料1とを含有するものである。また、イオン伝導体材料1は、硫化物固体電解質材料2と、アミノ基を有する結着材3とを含有する。
本発明によれば、上述したイオン伝導体材料を用いることにより、集電体から剥離しにくい電極活物質層とすることができる。また、密着力が高いため、可搬性および可撓性に優れた電極活物質層を得ることができる。
本発明の電極活物質層は、電極活物質と、イオン伝導体材料とを少なくとも含有するものである。なお、イオン伝導体材料については、上記「A.イオン伝導体材料」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本発明における電極活物質は、正極活物質であっても良く、負極活物質であっても良い。本発明における正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有酸化物を正極活物質として用いても良い。
正極活物質の形状としては、例えば、粒子形状を挙げることができ、中でも、真球状または楕円球状であることが好ましい。また、正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、電極活物質層(正極活物質層)における正極活物質の含有量は、例えば、10質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましく、20質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
一方、本発明における負極活物質としては、例えば、金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。また、電極活物質層(負極活物質層)における負極活物質の含有量は、例えば、10質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましく、20質量%〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明の電極活物質層におけるイオン伝導体材料の含有量としては、例えば、1質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、10質量%〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。イオン伝導体材料の含有量が少なすぎると、所望の密着性が得られない可能性および電極活物質層のイオン伝導性が低くなる可能性があるからであり、イオン伝導体材料の含有量が多すぎると、容量の低下が生じる可能性があるからである。
本発明の電極活物質層は、上述した電極活物質およびイオン伝導体材料を少なくとも含有するものである。さらに、本発明の電極活物質層は、導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、電極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、本発明の電極活物質層は、所望の可撓性を有することが好ましい。加工性および成形性に優れるからである。電極活物質層の形状としては、例えば、シート状およびペレット状等を挙げることができる。電極活物質層の厚さは、例えば、1μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の電極活物質層の製造方法としては、上述した電極活物質層を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、上記電極活物質と、上記イオン伝導体材料の原料である硫化物固体電解質材料およびアミノ基を有する結着材とを溶媒中で混合してスラリーを作製し、ドクターブレード等を用いてこのスラリーを基板上に塗工した後、溶媒を乾燥する方法、上記電極活物質および上記イオン伝導体材料を混合し、プレスする方法等を挙げることができる。なお、上記溶媒については、上述したものを用いることができる。また、上記基板としては、例えば、フッ素樹脂シート等の剥離可能なもの、および、集電体等を用いることができる。
D.全固体電池
次に、本発明の全固体電池について説明する。本発明の全固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有するものである。さらに、本発明の全固体電池は、2つの実施態様に大別することができる。
1.第一実施態様
本発明の全固体電池の第一実施態様は、上記固体電解質層が、上記「B.固体電解質層」に記載した固体電解質層である実施態様である。この場合、上述した固体電解質層を用いることにより、固体電解質層と、正極活物質層および負極活物質層との密着性を向上させることができ、耐久性に優れた全固体電池とすることができる。
図4は、本発明の全固体電池の一例を示す概略断面図である。図4における全固体電池30は、正極活物質を含有する正極活物質層21と、負極活物質を含有する負極活物質層22と、正極活物質層21および負極活物質層22の間に形成された固体電解質層23と、正極活物質層21の集電を行う正極集電体24と、負極活物質層22の集電を行う負極集電体25と、これらの部材を収納する電池ケース26とを有するものである。第一実施態様においては、固体電解質層23が、上述した固体電解質層であることを特徴とする。
第一実施態様の全固体電池は、正極活物質層/固体電解質層/負極活物質層からなる発電要素を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体および負極集電体の材料は、上述した結着材のアミノ基と結合することが可能な水酸基等の官能基を表面に有するものであれば特に限定されるものではない。正極集電体の材料としては、例えば、金属およびカーボン等を挙げることができ、金属としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えば、金属およびカーボン等を挙げることができ、金属としては、例えば、SUS、銅およびニッケル等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、第一実施態様に用いられる電池ケースには、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えば、SUS製電池ケース等を挙げることができる。
第一実施態様の全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも、全固体リチウム電池および全固体ナトリウム電池が好ましく、特に、全固体リチウム電池が好ましい。また、第一実施態様の全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池として有用だからである。第一実施態様の全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。なお、第一実施態様の全固体電池の製造方法は、上述した全固体電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。
2.第二実施態様
本発明の全固体電池の第二実施態様は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の少なくとも一方が、上記「C.電極活物質層」に記載した電極活物質層である実施態様である。この場合、上述した電極活物質層を用いることにより、正極活物質層および/または負極活物質層と、集電体との密着性を向上させることができ、耐久性に優れた全固体電池とすることができる。
第二実施態様においては、図4における正極活物質層21または負極活物質層22の少なくとも一方が、上述した電極活物質層であることを特徴とし、正極活物質層21および負極活物質層22の両方が、上述した電極活物質層であることが好ましい。正極活物質層および負極活物質層と、集電体との密着性をともに向上させることができ、より耐久性に優れた全固体電池とすることができるからである。また、第二実施態様においては、固体電解質層が、上記「B.固体電解質層」に記載した固体電解質層であることが好ましい。固体電解質層と、正極活物質層および負極活物質層との密着性を向上させることができ、より耐久性に優れた全固体電池とすることができるからである。なお、上記発電要素以外の全固体電池の構成については、上述した第一実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、特段の断りがない限り、各作業は、アルゴンガス充填グローブボックス内またはアルゴンガス雰囲気下で実施した。
[実施例1]
(硫化物固体電解質材料の合成)
出発原料として、硫化リチウム(LiS)と五硫化リン(P)とを用いた。これらの粉末をxLiS・(100−x)Pの組成において、x=75のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、回転数300rpmで20時間メカニカルミリングを行い、硫化物固体電解質材料(硫化物ガラス、75LiS・25P)を得た。なお、LiS:P=75:25(モル比)の関係は、上述したオルト組成を得る関係であり、得られた硫化物固体電解質材料は、架橋硫黄を有しないものである。
(固体電解質シートの作製)
まず、硫化物固体電解質材料として75LiS・25P(1040mg)、結着材としてアミノ基を導入したブチレンゴム(アミノ基ありBR、分子量:100,000〜150,000、アミノ基導入量:0.01質量%、10mg)を用意し、これらの材料を脱水ヘプタン(950mg)中に分散させ、固体電解質層形成用スラリーを得た。固体電解質シート形成用スラリーの固形分組成は、75LiS・25Pが99質量%、アミノ基ありBRが1質量%であった。次に、ドクターブレードを用いて、このスラリーを、集電箔であるAl箔上に、目付量60mg/cmで塗工した。さらに、120℃で30分間熱処理を行い、溶媒のヘプタンを乾燥させることで、固体電解質シートを得た。
[比較例1]
アミノ基ありBRの代わりに、未処理のブチレンゴム(アミノ基なしBR、分子量:100,000〜150,000、10mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質シートを得た。
[実施例2]
(硫化物固体電解質材料の合成)
出発原料として、硫化リチウム(LiS)と五硫化リン(P)とを用いた。これらの粉末をxLiS・(100−x)Pの組成において、x=70のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物を得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ10mm、10個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、回転数300rpmで20時間メカニカルミリングを行った。その後、得られた粉末を290℃、2時間の条件で熱処理を行い、硫化物固体電解質材料(結晶化硫化物ガラス、Li11)を得た。なお、Li11は、架橋硫黄(SP−S−PSユニット)を有するものである。
(固体電解質シートの作製)
75LiS・25Pの代わりに、Li11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質シートを得た。
[比較例2]
アミノ基ありBRの代わりに、未処理のブチレンゴム(アミノ基なしBR、分子量:100,000〜150,000、10mg)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、固体電解質シートを得た。
[実施例3]
アミノ基ありBRの代わりに、アミノ基を導入したスチレンーエチレンーブチレンースチレンゴム(アミノ基ありSEBS、分子量:100,000〜150,000、アミノ基導入量:0.01質量%、10mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質シートを得た。
[比較例3]
アミノ基ありBRの代わりに、未処理のスチレンーエチレンーブチレンースチレンゴム(アミノ基なしSEBS、分子量:100,000〜150,000、10mg)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、固体電解質シートを得た。
[評価]
(密着力測定)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた固体電解質シートを用いて、集電箔への密着力を測定した。密着力測定には、プッシュプルゲージを使用した。まず、φ16mmに切り抜いた固体電解質シートを、両面テープでプッシュプルゲージの台に貼り付けた。次に、プッシュプルゲージの端子に両面テープを貼り付け、固体電解質シートに押し付けた後、ゲージを持ち上げる際の引っ張り強度を測定した。その結果を図5および図6に示す。
図5に示されるように、アミノ基なしBRを用いた比較例1、2では、密着力がそれぞれ0.25N、0.22Nであったのに対して、アミノ基ありBRを用いた実施例1、2では、密着力がそれぞれ0.83N、0.96Nに向上しており、アミノ基を有する結着材を用いることで、硫化物固体電解質材料に75LiS・25PおよびLi11のいずれを用いた場合であっても、密着力が向上することが確認された。また、図6に示されるように、アミノ基なしSEBSを用いた比較例3では、密着力が0.11Nであったのに対して、アミノ基ありSEBSを用いた実施例3では、密着力が0.44Mに向上しており、アミノ基を有する結着材による密着力向上の効果は、結着材に用いられるポリマーの構造に関わらず得られることが確認された。これらの結果において、密着力が向上した理由は、結着材のアミノ基と、集電箔表面の水酸基等の官能基との間で、結合が形成されたためであると考えられる。
(Liイオン伝導度維持率測定)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られた固体電解質シートを用いて、Liイオン伝導度維持率を測定した。まず、1cmに切り抜いた固体電解質シートを4.3ton/cmでプレスし、交流インピーダンス測定を行った。測定にはソーラトロン1260を用い、測定条件は、印加電圧5mV、測定周波数域0.01MHz〜1MHz、25℃とした。次に、この測定により得られたLiイオン伝導度を、結着材を添加していない固体電解質シートのLiイオン伝導度で除することにより、Liイオン伝導度維持率を算出した。その結果を図7および図8に示す。
図7に示されるように、アミノ基なしBRを用いた比較例1、2では、Liイオン伝導度維持率がそれぞれ85%、80%であったのに対して、アミノ基ありBRを用いた実施例1、2では、Liイオン伝導度維持率がそれぞれ87%、67%であった。実施例2および比較例2の比較により、架橋硫黄を有するLi11を用いた場合、アミノ基を有する結着材を用いると、Liイオン伝導度維持率は大きく低下することが確認された。一方、実施例1および比較例1の比較により、架橋硫黄を有しない75LiS・25Pを用いた場合、アミノ基を有する結着材を用いても、Liイオン伝導度維持率は低下しないことが確認された。これは、架橋硫黄を有し、反応性が高いLi11においては、結着材のアミノ基との反応によりLiイオン伝導度が低減するが、架橋硫黄を有さず、反応性が低い75LiS・25Pにおいては、結着材のアミノ基との反応が抑制され、Liイオン伝導度が低減しにくいためであると考えられる。また、図8に示されるように、アミノ基なしSEBSを用いた比較例3では、Liイオン伝導度維持率が78%であったのに対して、アミノ基ありSEBSを用いた実施例3では、Liイオン伝導度維持率が77%であり、75LiS・25Pを用いることで、結着材のアミノ基の有無に関わらず、Liイオン伝導度が維持されていることが確認された。
1 … イオン伝導体材料
2 … 硫化物固体電解質材料
3 … 結着材
4 … 電極活物質
10、23 … 固体電解質層
20 … 電極活物質層
21 … 正極活物質層
22 … 負極活物質層
24 … 正極集電体
25 … 負極集電体
26 … 電池ケース
30 … 全固体電池

Claims (5)

  1. 硫化物固体電解質材料と、アミノ基を有する結着材とを含有し、
    前記硫化物固体電解質材料が、Li SおよびP を含有する原料組成物を用いてなる硫化物ガラスであり、前記原料組成物におけるLi SおよびP の割合が、モル換算で、Li S:P =72〜78:22〜28の範囲内であることを特徴とするイオン伝導体材料。
  2. 請求項1に記載のイオン伝導体材料を含有することを特徴とする固体電解質層。
  3. 電極活物質と、請求項1に記載のイオン伝導体材料とを含有することを特徴とする電極活物質層。
  4. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池であって、
    前記固体電解質層が、請求項2に記載の固体電解質層であることを特徴とする全固体電池。
  5. 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池であって、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方が、請求項3に記載の電極活物質層であることを特徴とする全固体電池。
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