JP2011074471A - 曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部AlからなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材。再結晶面積率が65%以上の等軸再結晶粒組織を有し、5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μmを超え、この押出材の厚み方向全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満である。
【選択図】なし
Description
上記組成及び組織形態をとることにより、本発明に係るアルミニウム合金押出材では、前記曲げ圧壊性として、JIS Z2248に規定された押し曲げ法による、板状採取試験片の曲げ線が押出方向となる180°曲げ試験にて、割れが発生しない限界曲げRが3.0mm以下の性能が得られ、前記耐食性として、ISO/DIS11846B法に規定された交互浸漬法による腐食試験にて粒界腐食が発生しない性能が得られる。前記アルミニウム合金押出材は、押出方向と直角方向に荷重を受けて圧壊するエネルギー吸収部材に用いられることが好ましい。
補強材としての曲げ圧壊性に対しては、6000系アルミニウム合金押出材の集合組織について、Goss方位を有する結晶粒の平均面積率が少ないほど向上する。
Goss方位の平均面積率が8%以上では、高強度域において曲げ圧壊性が向上せず、自動車用補強材としての要求特性(仕様)を満足できない。
多結晶体の降伏応力σyは、テイラー(Taylor)因子M、結晶の臨界分解せん断応力τCRSSにより、σy=M・τCRSSと表される。テイラー因子Mは結晶方位に対応した定数で、引張軸が[110]及び[111]と平行である場合に最大値3.674となり、[100]と平行である場合は2.449と、最小値2.300に近い値となる。臨界分解せん断応力τCRSSは一定値をとる。曲げ加工性はこのテイラー因子との相関が指摘されている。
本発明で、押出材の組織を等軸再結晶粒組織とするのは、前記特許文献2〜5のような、結晶粒のアスペクト比が5を超える、押出方向に結晶粒が伸長したような繊維状組織では、高強度でかつ曲げ圧壊性に優れた押出材が得られにくいからである。ここで、本発明で言う等軸再結晶粒組織とは、前提として、結晶粒の平均アスペクト比が、押出方向に伸長したとしても5未満の等軸粒組織である。また、この結晶粒のアスペクト比とは、長軸と短軸との比であり、通常は長軸が結晶粒の押出方向の長さで、短軸が厚さ方向の長さである。
等軸再結晶粒組織は、厚み方向断面における再結晶面積率が65%以上とする。再結晶面積率がこれより低いと曲げ圧壊性が低下する。望ましくは80%以上である。
特許文献1では、等軸粒組織とするために、MgとSiとの含有量が化学量論的に当量であり、繊維状組織を促進するMn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.1%以下と規制し、500℃以上の押出温度で押出して、押出直後に水焼入れ(強制冷却)を行って製造している。これによって、平均結晶粒径が100μm以下で、かつ結晶粒のアスペクト比が2以下である等軸粒組織としている。また、特許文献6では、実施例において、押出材の組成を過剰Si型とし、かつ、選択的ではあるがMn、Cr、Zrなどの遷移元素を合計で0.34%と比較的多量に含む6000系アルミニウム合金組成としている。そして、500℃での押出直後からのオンラインでの水冷などの強制冷却は無く、別途オフラインにて溶体化および焼入れ処理を行っている。
Goss方位(各結晶方位成分)の面積率(存在率)は、押出材の例えばフランジ(前面壁)の前記した断面(厚み方向断面)を、走査型電子顕微鏡SEM( Scanning Electron Microscope )による、後方散乱電子回折像EBSP(Electron BackscatterDiffraction Pattern )を用いた結晶方位解析方法(SEM/EBSP法)により測定する。
なお、押出材のGoss方位を含めた集合組織については、押出材の測定部位を板と見なして、圧延板における集合組織の規定や測定要領に準じる。
本発明では、6000系アルミニウム合金押出材の組織について、上記集合組織とともに、補強材としての曲げ圧壊性や耐食性を向上させるために,5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔を25μm以上に大きくする。この粒界析出物同士の平均間隔は大きい方が好ましい。
粒界析出物同士の平均間隔とサイズの測定は前記した押出材の断面であって、前記集合組織観察とは違い、前記最表面のGG層を除き、押出材の厚み方向内側の、例えば厚み中心部の等軸再結晶粒組織部分を測定対象とする。この等軸再結晶粒組織の試験片をTEM観察用に薄膜加工し、このように得られた試験片について、5000倍のTEMにより組織観察して測定する。
本発明が対象とする6000系アルミニウム合金の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系アルミニウム合金は、前記した自動車車体補強材用の押出材として、優れた曲げ圧壊性や耐食性などの諸特性が要求される。
Mgとの前記量的関係を満足することを前提として、Si含有量は0.30〜0.95%の範囲とする。前記したバランス合金とするための、Siの好ましい含有量範囲は0.40〜0.70%、更に好ましくは0.40〜0.60%である。SiはMgとともに、固溶強化と、低温での人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を結晶粒内に形成して、時効硬化能を発揮し、補強材として必要な280MPa以上の必要強度(耐力)を得るための必須の元素である。Si含有量が少なすぎると、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、前記時効硬化能や必要強度を満たすことができない。一方、Si含有量が多すぎると、前記したバランス合金とすることができず、本発明の集合組織とできない。粒界析出物が増加して曲げ加工性なども低下し、更に、溶接性も阻害される。
Siとの前記量的関係を満足することを前提として、Mg含有量は0.60〜1.20%の範囲とする。前記したバランス合金とするための、Mgの更に好ましい含有量範囲は0.70〜1.1%である。Mgは、固溶強化と、前記人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を結晶粒内に形成して、時効硬化能を発揮し、補強材として必要な280MPa以上の必要強度(耐力)を得るための必須の元素である。Mg含有量が少なすぎると、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、前記時効硬化能や必要強度を満たすことができない。時効硬化能を発揮できない。一方、Mg含有量が多すぎると、前記したバランス合金とすることができない。また、曲げ加工性も低下する。
ここで、6000系アルミニウム合金押出材を、Goss方位が平均面積率で8%未満の等軸再結晶粒組織とし、また、重心直径が1μm以上の粒界析出物同士の平均間隔を25μm以上とするためには、MgとSiとの含有量が、Mg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0の関係を満たすようにする。この関係規定は、本発明合金を、6000系アルミニウム合金の中でも、MgとSiとの含有量が互いに化学量論的に当量であるようなバランス合金、あるいは過剰Si型組成の中でもSiの含有量が比較的少なめの合金とするためのものである。
Feは、Mn、Cr、Zrなどと同じ働きをして、分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。また、Feは溶解原料としてのスクラップなどから一定量(実質量)が必然的に混入しやすい元素である。このため、Feの含有量は0.01〜0.40%の範囲とする。Feの含有量が少な過ぎると、これらの効果が無い。一方、Feの含有量が多過ぎると、Al-Fe-Si晶出物などの粗大な晶出物を生成しやすくなり、これらの晶出物は曲げ圧壊性を劣化させ、破壊靱性および疲労特性などを劣化させる。より望ましい範囲は0.1〜0.3%である。
Mnは、Cr、Zrと同じく遷移元素であり、結晶粒の粗大化を防止するために必要である。これらは、均質化熱処理時およびその後の熱間押出加工時に、他の合金元素と選択的に結合したAl−Mn系などの金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成する。これらの分散粒子は、製造条件にもよるが、微細で高密度、均一に分散して、再結晶後の粒界移動を妨げる効果(ピン止め効果)があるため、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果が高い。Mnの含有量が少なすぎると、粒界のピン止め力が低く、Goss方位の成長も許してしまい、Goss方位の平均面積率が8%以上となって、曲げ加工性を低下させやすい。また、Mnはマトリックスへの固溶による強度の増大も見込める。
Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を著しく促進する効果も有する。したがって、0.001〜0.65%を含有させる。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの効果が無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、押出材組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、耐食性や耐久性を低下させる。したがって、Cuの含有量は前記範囲とする。より望ましい範囲は0.2〜0.5%である。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出材組織を微細な結晶粒とする効果がある。したがって、Tiは0.001〜0.10%の範囲で含有させる。また、Tiを含有させる際に混入しやすいBを含有する場合には、B:1〜300ppmの範囲とする。Tiの含有量が少な過ぎるとこの効果が発揮されない。しかし、Tiの含有量が多過ぎると、粗大な晶析出物を形成し、補強材としての前記曲げ圧壊性や耐食性などの要求特性や、押出材の曲げ加工性などを低下させる原因となる。したがってTiの含有量は前記範囲とする。
Cr、Zrは、Mnと同じく、Al-Cr系、Al-Zr系などの金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成して、結晶粒の粗大化を防止するために有効(ピン止め効果)である。但し、これらの元素を過剰に含有すると、Mnと同じく、押出材の組織が押出方向に伸長した繊維状組織となりやすくなる。したがって、これらの効果が必要な場合には、Mnの一部を、Cr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種で選択的に置き換え、Mn,Cr,Zrの合計で0.30〜0.52%含有させる。Cube方位を優先的に成長させ、相対的にGoss方位の成長を抑制するには、Mnは0.13%以上であることが望ましい。この範囲で、特にZrを0.1〜0.18%含有する場合、本発明の製造方法に従って高温均熱し、ビレット加熱温度を高く、押出速度を大きくし、押出出口温度を高温にすることにより(高温加熱によりAl−Zr系金属間化合物粒子によるピン止め力を少し弱め、成長速度が大きいCube方位を優先的に成長させ、相対的にGoss方位が成長しないようにする)、再結晶率65%以上を得た上で、Goss方位の平均面積率をより少ない5%未満とし、曲げ加工性をより向上(仮に同じ限界曲げRであっても、限界曲げRを超える曲げ加工で割れ(亀裂)が発生したときの亀裂が小さい)させることができる。
Znは、6000系アルミニウム合金に不純物として含有される。0.001%以上で、Cuと同様に、固溶強化による強度の向上、および時効硬化を促進する効果を有する。一方、含有量が多過ぎると、押出材組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、耐食性や耐久性を低下させるので、許容される含有量はJIS規格6061合金と同じく0.25%以下とする。
6000系アルミニウム合金押出材の断面形状は、補強材としての曲げ圧壊性を高めることができる断面形状が、適宜選択される。軽量化と補強材としての曲げ圧壊性とを兼備するためには、断面形状が中空形状であることが好ましい。この中空断面形状の代表的な(基本的な)形状は、断面形状が略口形の矩形中空断面であり、口形を構成する両フランジ(前壁、後壁)と両ウエブ(両フランジをつなぐ上下側壁)とからなる。この口形中空断面の基本形に対して、曲げ圧壊性を高めるに、更に中リブを設けて補強した、断面形状が日形(上下側壁と平行な1本の中リブを断面内の中央部に設ける)、あるいは目形(上下側壁と平行な2本の中リブを断面内に間隔を開けて設ける)、田形(十字の中リブを断面内に設ける)等の矩形中空断面としても良い。
押出材の肉厚は、上記した断面形状との関係で、補強材としての曲げ圧壊性を高めることができる肉厚が適宜選択される。ただ、本発明が対象とするのは、車体の衝突に対するエネルギーを吸収する補強材であり、補強材としての曲げ圧壊性を高めるためにも、前記した圧延薄板からなる車体パネルのように薄くはなく、厚みを厚くする必要がある。曲げ圧壊性を高めるためには、肉厚が厚い方が良いが、あまり厚くしても、重量が増加して、軽量化が図れない。この点、肉厚は2〜7mmの範囲から選択することが好ましい。また、前記した各断面形状において、両フランジ、両ウエブ、中リブなどの肉厚を、全て同じとする必要はなく、フランジなど衝突する(荷重を受ける)側の壁を厚くし、その他を薄くするなどの工夫ができる。
次ぎに、本発明に係る6000系アルミニウム合金押出材の製造方法について以下に説明する。本発明押出材は、熱間押出後に、焼入れ処理、あるいは人工時効硬化処理などの適宜の調質が施された押出材を言い、後述する集合組織の制御条件などを除けば、製造工程自体は常法あるいは公知の方法で行う。
溶解、鋳造工程では、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊(ビレット)に均質化熱処理を施す。均質化熱処理の温度自体は、560℃以上の高温、融点未満での均質化温度範囲、最適には560〜590℃の温度範囲から選択される。この均質化熱処理(均熱処理)は、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくし、合金元素や粗大な化合物を十分に固溶させることを目的とする。この均質化温度が低いと結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用する。また均熱温度が560℃未満であると、等軸再結晶組織が得られないか(特にZrを0.1〜0.18%含むとき)、等軸再結晶組織が得られてもGoss方位の面積率が増加し、曲げ圧壊性が低下する。
次に、押出出口側の押出材温度が575℃以上の溶体化温度域になるように、前記鋳造ビレットを再加熱して熱間押出を行い、この押出出口側の押出材を押出加工直後から室温までを含む190℃以下までを5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却し、T5の調質処理材とするか、あるいは、その後の人工の時効処理と併せてT6(時効)あるいはT7(過時効)の調質処理材とすることが好ましい。この押出直後の冷却は、押出材の温度が190℃以下になるまで強制冷却を行えば、それ以降は、この温度で強制冷却を停止するか、この温度で強制冷却停止後は室温まで放冷するか、室温まで引き続き強制冷却するか、は自由に選択できる。このT5の調質処理においては、押出出口側の押出材の温度を575℃以上の溶体化温度域の温度として、オンライン(押出加工)にて溶体化処理し、引き続き、押出直後から押出材を室温近傍の温度まで、オンライン(押出機出口側)にて強制冷却する焼入れ処理を行う。
なお、押出出口側の押出材の温度は、ダイス出口直後(出口からの距離0mm)における材料表面温度である。ダイス出口直後で測定することが困難な場合、ダイス出口からある距離(押出プレスによって温度測定ができる位置が異なる)において材料表面温度を接触式温度計で測定し、予め測定したおいた押出材の冷却曲線を用い、ダイス出口直後の温度を逆算して求めることができる。
押出材は、所定の長さに切断あるいは矯正処理後に、人工時効硬化処理が施される。この人工時効硬化処理は、好ましくは150〜250℃の温度範囲に必要時間保持する。この保持時間によって、押出材の時効硬化は調節され、強度を最大にするピーク時効とする時間や、これより長時間として耐食性を向上させる過時効とする時間から適宜選択される。
Goss方位の平均面積率:
前記調質処理後15日間の室温放置後の供試材の集合組織を、前記SEM-EBSPを用いて、測定・解析し、供試材の、最表面のグレングロス層を含めた、断面の厚み方向全域に亙るGoss方位の平均面積率(%)を求めた。
前記調質処理後30日間の室温放置後の供試材の特性として、0.2%耐力(As耐力: MPa)、伸び(%)を各々測定した。また、曲げ圧壊性および耐食性を測定、評価した。これらの結果も表5,6に示す。
引張試験は、前記供試材から13号B試験片(幅:12.5mm、評点距離:50mm、厚さ:押出材厚さ)を採取し、室温引張りを行った。このときの試験片の採取、引張方向を押出方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。測定N数は5として、各機械的性質は、これらの平均値とした。
前記供試材(板状試験片)を、JIS Z2248に規定された押し曲げ法により、曲げ線が押出方向となるように(押出方向と直角方向に)180°曲げ試験し、10回試験して10回とも曲げコーナーの外側(引張側部位)に割れによる破断が発生しない限界曲げR(mm)を求めた。この限界曲げRが小さいほど、曲げ圧壊性に優れると評価した。この限界曲げRが3.0mm以下であれば、曲げ圧壊性に優れ、自動車用の補強材として使用可能である。
前記供試材を、ISO/DIS11846B法に規定された浸漬法により腐食試験を行った。試験条件は、押出材を、NaClを30g/lの濃度およびHClを10ml/lの濃度で各々溶解させた水溶液に、室温で24時間浸漬した後の、押出材の断面観察を行って腐食形態を調査し、粒界腐食割れ発生の有無を判定した。そして、粒界腐食割れが発生している場合を×、粒界腐食割れではないが、粒界腐食が発生している場合を△、粒界腐食割れや粒界腐食が発生していない場合(表面的な前面腐食が発生している場合を含む)を○として評価した。
比較例2〜4はMn+Cr+Zrの合計含有量が少ないため、等軸再結晶組織(再結晶面積率65%以上)が得られたが、ピン止め力不足によりGoss方位の成長を許してしまい、いずれも曲げ圧壊性が劣る。
比較例7,8はMn+Cr+Zrの合計含有量が多いため、本発明の方法に従った場合(比較例7)および均熱温度が低い場合(比較例8)のいずれも、繊維状組織(再結晶面積率50%未満)となり、曲げ圧壊性が劣る。
比較例10は過剰Si組成であるため、等軸再結晶組織が得られたが、Goss方位が発達して曲げ圧壊性が劣り、また粗大な粒界析出物が増えて耐食性が低下した。
比較例11は押出直後からの強制冷却の冷却速度が小さく焼き入れ遅れとなり、粗大な粒界析出物が増えて耐食性が低下した。
比較例12〜14はいずれも押出出口側温度が低いため粗大な粒界析出物が増えて、再結晶面積率65%以上の等軸再結晶組織が得られていない比較例12は強度が劣り、繊維状組織の比較例13および等軸再結晶組織(再結晶面積率65%以上)の比較例14は、曲げ圧壊性が劣る。
Claims (5)
- 質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を各々含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材であって、厚み方向断面において再結晶面積率が65%以上の等軸再結晶粒組織を有し、同組織において5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μmを超え、この押出材の厚み方向断面における最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満であることを特徴とする曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
- Mnの一部がCr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種で置き換えられ、Mn,Cr,Zrの合計が0.30〜0.52%である請求項1に記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
- 前記アルミニウム合金押出材の前記曲げ圧壊性が、JISZ2248に規定された押し曲げ法による、板状採取試験片の曲げ線が押出方向となる180°曲げ試験にて、割れが発生しない限界曲げRが3.0mm以下の性能である請求項1または2に記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
- 前記アルミニウム合金押出材が押出方向と直角方向に荷重を受けて圧壊するエネルギー吸収部材に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
- 請求項1又は2に記載された組成を有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金鋳造ビレットを、560℃以上の温度で均質化熱処理後に、100℃/hr以上の平均冷却速度で400℃以下の温度まで強制冷却し、更に、押出出口側の押出材温度が575℃以上の溶体化温度域になるように、前記鋳造ビレットを500℃以上に再加熱して熱間押出を行い、この押出出口側の押出材を押出加工直後から5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却し、その後、押出材を更に時効処理して0.2%耐力を280MPa以上とすることを特徴とする曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法。
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