JP2011074470A - 曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材 - Google Patents

曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材 Download PDF

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Abstract

【課題】自動車の衝突条件が厳しくなっても、自動車車体補強材として要求される、曲げ圧壊性と耐食性との両方に優れた6000系アルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部AlからなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材。再結晶面積率が65%以上の等軸再結晶粒組織を有し、5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μmを超え、この押出材の厚み方向全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満、かつCube方位/Goss方位の面積比が3.0以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、曲げ圧壊性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材およびその製造方法(以下、アルミニウムを単にAlとも言う)に関する。なお、本発明で言うアルミニウム合金押出材とは、熱間押出された押出材のことを言うが、後述する自動車車体補強材(エネルギー吸収部材)として組み付けられた後の部材も含む。以下、Al-Mg-Si系を6000系とも言う。
自動車車体には、周知の通り、多くの車体補強材(エネルギー吸収部材)が設けられている。例えば、自動車車体の車体の前端(フロント)および後端(リア)に取り付けられているバンパの内部には、周知の通り、強度補強材としてのバンパ補強材(バンパリインフォースメント、バンパアマチャアとも言う)が設けられている。このバンパ補強材は断面形状が略矩形であり、周知の通り、バンパと車体との間に、車体に対し略水平方向で車幅方向に対し平行に延在するように配置される。そして、バンパとその後方のステイまたはクラッシュボックスで、車体の衝突に対するエネルギー吸収部材を構成する。
このバンパ補強材の支持構造は、衝突面に対する背面から、断面形状が略矩形の中空構造のバンパステイなどの支持部材を介して、車体長さ方向に延在するフロントサイドメンバやリヤサイドメンバ等の車体フレームに連結、固定される。このような支持構造によって、バンパ補強材は、車体の衝突に対して、横方向に(断面方向、幅方向に)圧壊変形(横圧壊)して衝突エネルギーを吸収し、車体を保護する。即ち、バンパ補強材は、車体衝突時の大荷重付加時に、損壊、飛散などせずに、加わった衝突エネルギーを、自らの長手方向の曲げ変形や、断面のつぶれ変形(横圧壊)により、荷重エネルギーを吸収する性能が求められる。
このような機能や支持構造は、ドアーガードバー(ドアビーム、ドア補強材)など、他の自動車車体補強材でも基本的には同じである。このドアーガードバーは、車体側方から衝突された場合に、ドアの車室内への陥入を防止して乗員を保護するために、ドアの内部に設けられて、車体側方からの衝突に対し、横方向に(幅方向に)断面が圧壊変形(横圧壊)して衝突エネルギーを吸収する。
近年、これら補強材には、軽量化のために、従来使用されていた鋼材に代わって、6000系、7000系等の高強度アルミニウム合金押出材(長手方向に同一断面形状を有する押出形材、以下では押出形材とも言う)が使用されている。アルミニウム合金は、鋼などに比して、同じ補強材重量の場合には、前記したエネルギー吸収性能に優れる。また、長手方向に亙って同一の断面形状を有するアルミニウム合金押出材は、補強材としての強度や剛性に優れた略矩形の中空断面構造を、効率的に、かつ大量に製造することが可能である。このため、アルミニウム合金押出材は、車体用エネルギー吸収部材としての前記補強材に好適である。
ここで、前記した高強度アルミニウム合金の内、6000系アルミニウム合金を前記補強材として用いると、他のアルミニウム合金に比して色々な利点がある。6000系アルミニウム合金は、基本的には、Si、Mgのみを必須として含み、優れた時効硬化能を有している。このため、曲げ加工などの成形時には、低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後の塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性 (ベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性) がある。
また、6000系アルミニウム合金は、Mg、Znなどの合金量が多い7000系アルミニウム合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系アルミニウム合金のスクラップを、アルミニウム合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系アルミニウム合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。更に、フード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車車体パネルには、前記した特性から6000系アルミニウム合金板が使用されることが多い。このため、自動車車体を解体してリサイクルする際には、本発明が対象とする補強材も、これら車体パネルと同種の6000系アルミニウム合金であれば、異種合金が混入するよりも、前記溶解原料として、選別、リサイクルがしやすい。
このような6000系アルミニウム合金押出材を前記補強材として用いるために、従来から、補強材としての横圧壊性の向上や、補強材への曲げ加工性を改善するための、押出材組織に関する提案がなされてきた。
例えば、特許文献1では、6000系アルミニウム合金押出材の組織を等軸粒組織とすることで曲げ加工性を向上させることが提案されている。同特許文献では、等軸粒組織とするために、MgとSiとの含有量が化学量論的に当量であり、繊維状組織を促進するMn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.1%以下と規制し、500℃以上の押出温度で押出して、押出直後に水焼入れ(強制冷却)を行って製造している。これによって、平均結晶粒径が100μm以下で、かつ結晶粒のアスペクト比(結晶粒の押出方向の長さと厚さ方向の長さの比)が2以下である等軸粒組織としている。
一方、特許文献2では、逆に、その組織を上記等軸粒組織ではなく、押出方向に長く伸長した繊維状結晶粒組織(繊維状組織)として、中空押出形材の曲げ加工性を向上させることが提案されている。この特許文献3では、Mn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.45〜0.53%と比較的多量に含ませ、500℃以上の押出温度で押出して、押出直後に水焼入れ槽に浸漬する水焼入れ(強制冷却)を行って製造している。
これに対して、サイドメンバやバンパステイなどの押出材の軸 (長手) 方向の圧壊特性(縦圧壊) が要求されるエネルギ吸収部材として、オイラー座屈(くの字状の折れ曲がり)を防止して、蛇腹状の変形形態として優れたものとするために、その組織を上記繊維状組織とすることも知られている (特許文献3,4参照) 。特許文献3では、化学量論的に平衡なMgとSiとからなる6000系アルミニウム合金押出材の組織を上記繊維状組織としている。MgとSiとが化学量論的に平衡であるために、再結晶組織となりやすい押出材を、同特許文献では、Mn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.5%と比較的多量に含ませ、500℃以上の押出温度で押出して、押出直後に水焼入れを行って繊維状組織として製造している。
特許文献4では、押出材の組成を過剰Si型とし、かつ、Mn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.25〜0.48%と比較的多量に含む6000系アルミニウム合金組成としている。そして、同特許文献では、押出を500℃の押出温度で行い、表面の再結晶層(GG層)の厚みと結晶粒径とを規制した繊維状組織としている。そして、押出材を、縦圧壊だけでなく、横圧壊にも優れたものとしている。
特許文献5では、6000系アルミニウム合金押出材の補強材としての曲げ加工性と耐圧壊割れ性とを兼備するために、繊維状組織であるとともに、更に、伸びの異方性を有する組織とすることが提案されている。同特許文献では、押出材の組成を過剰Si型とし、かつ、Mn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.15〜0.30%と比較的多量に含む6000系アルミニウム合金組成としている。そして、押出も、500℃未満の比較的低温の押出温度で、押出比10以上の高加工率で行い、アスペクト比が5を超える押出方向に伸長した結晶粒からなる繊維状組織としている。そして、押出材を、押出方向に対して45度方向の伸びδ1 が、他の平行方向と直角方向の伸びδ2 、δ3 よりも大きい、伸びの異方性を有する組織としている。
特許文献6では、サイドメンバやバンパ補強材としての、6000系アルミニウム合金押出材の曲げ加工性と衝撃吸収性とを兼備するために、繊維状組織ではなく、結晶粒のアスペクト比(結晶粒の長軸と短軸の比)が3以下である微細な等軸粒組織とすることが提案されている。同特許文献では、このような微細な等軸粒組織とすることで伸びと曲げ曲げ加工性を向上させている。また、粒界析出物の量と大きさとを制御して、衝撃時の粒界析出物を起点とする細かい分断を抑制している。
特開2002-241880号公報 特開平5-171328号公報 特開平9-256096号公報 特開2003-183757号公報 特開2005-105317号公報 特開平6-25783号公報
実際に、6000系アルミニウム合金押出材が、バンパ補強材やドアーガードバーなどの車体補強材として使用された場合には、略水平方向からの衝突荷重が、補強材の衝突部に、より局部的に集中して加わる衝突形態が多い。このような衝突形態では、例え、特許文献2〜5のような繊維状組織および異方性組織であっても、また、特許文献1,6のような等軸粒組織であっても、6000系アルミニウム合金押出材は、横圧壊性向上のために重要な、曲げ圧壊性が不足しやすいという問題が依然ある。
このように自動車の衝突条件が厳しくなった場合に対しては、6000系アルミニウム合金押出材の曲げ圧壊性をより高めることが必要である。しかし、前記した比較的強度が高い繊維状組織であっても、これに対応できる曲げ圧壊性向上には、大きな限界がある。これは、繊維状組織だけではなく、前記特許文献1,6のような等軸粒組織であっても、全く同様である。
一方で、補強材の曲げ圧壊性を高めるには、素材強度だけではなく、押出材(補強材)の断面形状の工夫も有効である。しかし、衝突荷重の大きさによっては、断面形状が口形の矩形中空断面だけではなく、断面形状が日形、あるいは目形、田形等の中リブを設けてより補強したタイプの矩形中空断面からなるバンパ補強材においても、横圧壊性向上に重要な曲げ圧壊性が不足する可能性が大いにある。
このため、実際にも、バンパ補強材やドアーガードバーなどの横圧壊する(横圧壊性が要求される)エネルギー吸収部材としては、6000系アルミニウム合金押出材よりも強度が高い、7000系アルミニウム合金押出材が未だ主流として使用されている。しかし、この7000系アルミニウム合金押出材は、合金成分が多いために、前記したリサイクルがしにくく、製造コストも高い。また6000系アルミニウム合金押出材よりも耐食性が劣る問題もある
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、自動車の衝突条件が厳しくなっても、自動車車体補強材として要求される、曲げ圧壊性と耐食性との両方に優れた6000系アルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材の要旨は、質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を各々含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材であって、厚み方向断面において再結晶面積率が65%以上の等軸再結晶粒組織を有し、同組織において5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μmを超え、この押出材の厚み方向断面における最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満、かつCube方位の平均面積率とGoss方位の平均面積率の比が3.0以上、としたことである。
前記アルミニウム合金押出材は、Mnの一部を置き換える形で、Cr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種を、Mn,Cr,Zrの合計で0.30〜0.52%となる範囲で、選択的に含ませても良い。
上記組成及び組織形態をとることにより、本発明に係るアルミニウム合金押出材では、前記曲げ圧壊性として、JIS Z2248に規定された押し曲げ法による、板状採取試験片の曲げ線が押出方向となる180°曲げ試験にて、割れが発生しない限界曲げRが3.0mm以下の性能が得られ、前記耐食性として、ISO/DIS11846B法に規定された交互浸漬法による腐食試験にて粒界腐食が発生しない性能が得られる。前記アルミニウム合金押出材は、押出方向と直角方向に荷重を受けて圧壊するエネルギー吸収部材に用いられることが好ましい。
上記等軸再結晶組織、粒界析出物分布、及び集合組織を有し、曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材は、上記組成を有するAl-Mg-Si系アルミニウム合金鋳造ビレットを、560℃以上の温度で均質化熱処理後に、100℃/hr以上の平均冷却速度で400℃以下の温度まで強制冷却し、更に、押出出口側の押出材温度が575℃以上の溶体化温度域になるように、前記鋳造ビレットを再加熱して熱間押出を行い、この押出出口側の押出材を押出加工直後から5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却し、その後、押出材を更に時効処理することにより製造することができる。時効処理後の0.2%耐力が280MPa以上となる条件で時効処理することが望ましい。
本発明者等は、これまではあまり注目されていなかった、6000系(Al−Mg−Si系)アルミニウム合金押出材の集合組織に着目し、曲げ圧壊性に与える集合組織の影響につき、改めて調査した。この結果、集合組織の中でも、Goss方位が少なく、かつCube方位の平均面積率とGoss方位の平均面積率の比(以下、Cube方位/Goss方位比と簡略化することがある)が大きい等軸再結晶粒組織が、曲げ圧壊性を向上させる効果が大きいことを知見した。
この6000系アルミニウム合金の集合組織について、圧延板の分野では、自動車パネルへのプレス成形性や曲げ加工性(ヘミング加工性、特にフラットヘム加工性)への影響が、従来から数多く研究されており、非常に多数の特許文献も存在する。これらの中で、例えば、代表的には、6000系アルミニウム合金圧延板の集合組織について、Cube方位を有する結晶粒の割合が多いほど、フラットヘム加工性が改善されることが公知である。Cube方位は、一般的にも知られている様に、6000系アルミニウム合金圧延板における集合組織の主方位である。
しかし、これら6000系アルミニウム合金の圧延板は、押出材(補強材)とは違い、自動車車体パネルとして用いられるために、軽量化のために、1mm以下程度の極く薄い板厚とされた板である。しかも、このような薄板に対して施されるプレス成形や曲げ加工などの加工では、薄板に負荷される曲げ荷重も、前記した押出材(補強材)に負荷される衝突荷重とは違い、金型やポンチにより板の広範な面積に亙ってほぼ均一に負荷される荷重である。更に、これら成形される際の圧延板の強度は、自動車車体パネルへの成形性を考慮して、T4材でも0.2%耐力で150MPa以下の比較的低強度である。
これに対して、本発明が対象とする押出材は、前記1mm以下程度の板よりも肉厚が厚い、矩形中空断面を有する押出材(補強材)である。また、この押出材の強度は0.2%耐力で280MPa以上の高強度である。したがって、前記した圧延板の場合のヘム加工(ヘム加工性)は、本発明が対象とする押出材(補強材)に、局部的に集中して加わる、ポール衝突、オフセット衝突などの車体衝突による曲げ荷重とは、その変形メカニズムや変形形態が基本的に異なる。この結果、6000系アルミニウム合金圧延薄板の集合組織におけるキューブ方位とフラットヘム加工性との関係などから、本発明が対象とする6000系アルミニウム合金押出材の集合組織における、特にGoss方位及びCube方位/Goss方位比と、曲げ圧壊性との関係について予測することは困難である。
しかも、元々、6000系アルミニウム合金押出材の分野では、前記した特許文献2のように、押出中空形材の軸 (長手) 方向の圧壊特性 (縦圧壊) や押出中空形材の断面方向の圧壊特性 (横圧壊) を優れたものとするために、その組織を押出方向に伸長した繊維状組織とすることが主流である。このような繊維状組織では、集合組織としてCube方位(Cube方位を有する結晶粒)が発達せず、Cube方位/Goss方位比が抑制される。したがって、このような6000系アルミニウム合金押出材分野の常識からしても、本発明の6000系アルミニウム合金押出材の集合組織における、特にGoss方位及びCube方位/Goss方位比と曲げ圧壊性との関係について予測することは、同様に困難である。このような点が、前記した通り、6000系アルミニウム合金押出材の組織について、繊維状組織とするか等軸粒組織とするかの文献は存在するものの、押出材の集合組織について、これまであまり注目されていなかった理由でもある。
本発明では、6000系アルミニウム合金押出材の集合組織について、Goss方位(Goss方位を有する結晶粒)の発達を抑制し、Cube方位/Goss方位比を大きくさせた等軸再結晶粒組織として、曲げ圧壊性を向上させる。これによって、6000系アルミニウム合金押出材を、より強度の高い7000系アルミニウム合金押出材と同等に、また耐食性としてはより優れさせて、バンパ補強材やドアーガードバーなどの横方向に荷重を受けて圧壊するエネルギー吸収部材に用いることができる。
以下、本発明に係る6000系アルミニウム合金押出材の実施態様につき具体的に説明する。
(集合組織)
補強材としての曲げ圧壊性に対しては、6000系アルミニウム合金押出材の集合組織について、Goss方位を有する結晶粒の平均面積率が少なく、Cube方位/Goss方位比が大きいほど向上する。
このため、本発明では、補強材としての曲げ圧壊性を向上させるために、この押出材の厚み方向断面における組織を、先ず、前提として等軸再結晶粒組織とし、かつ、特徴的には、この押出材の厚み方向断面における最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域に亙るGoss方位の平均面積率を8%未満とし、かつCube方位/Goss方位比を3.0以上と大きくする。Goss方位の平均面積率は、望ましくは5%未満とする。
Cube方位/Goss方位比が小さすぎると、高強度域において曲げ圧壊性が向上せず、自動車用補強材としての要求特性(仕様)を満足できない。また、Cube方位/Goss方位比が大きくても、Goss方位の面積率も大きい場合には曲げ圧壊性が向上せず、自動車用補強材としての要求特性(仕様)を満足できない。
Goss,Cube方位と曲げ圧壊性の関係は次のように説明できる。
多結晶体の降伏応力σyは、テイラー(Taylor)因子M、結晶の臨界分解せん断応力τCRSSにより、σy=M・τCRSSと表される。テイラー因子Mは結晶方位に対応した定数で、引張軸が[110]及び[111]と平行である場合に最大値3.674となり、[100]と平行である場合は2.449と、最小値2.300に近い値となる。臨界分解せん断応力τCRSSは一定値をとる。曲げ加工性はこのテイラー因子との相関が指摘されている。
Goss方位の場合、M=3.674と最大値となり、変形の際に必要な応力(降伏応力σy)が増加し、これにより横方向曲げ変形の際、せん断帯が形成されやすく、その結果、Goss方位を有する結晶粒が多いと、曲げ圧壊性の悪化につながる。
一方、Cube方位の場合、活動すべり系の数が多く、M=2.449と小さくなり、これにより横方向曲げ変形の際に,せん断帯の形成を回避でき、その結果、Cube方位を有する結晶粒が相対的に多い(Cube方位/Goss方位比が大きい)と曲げ圧壊性の向上につながる。
(押出材断面の厚み方向全域規定の意味)
本発明では、Cube方位とGoss方位の平均面積率を、この押出材の厚み方向断面(押出方向と直角方向の断面、直角断面)における最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域に亙る平均面積率と規定している。押出材の厚み方向断面において、通常、両方の最表面には、これら最表面が押出ダイスと接触することによって、必然的に、数百μmの厚みのグレングロス層(GG層、粗大再結晶粒組織層)が生じている。このような最表面のGG層では、ランダムな方位となりやすく、Cube方位は発達せず、Cube方位を有する結晶粒は殆ど無い。したがって、このような最表面のGG層の厚みが厚いほど、押出材の厚み方向内側の、相対的にCube方位が発達した等軸再結晶粒組織の厚みは薄くなり、曲げ圧壊性向上効果が小さくなる。言い換えると、押出材断面の厚み方向全域に亙るCube方位およびGoss方位の発達度合い、あるいはCube方位およびGoss方位を有する結晶粒の割合が、押出材の補強材としての曲げ圧壊性を決定する。したがって、本発明では、特に、補強材としての曲げ圧壊性を向上させるために、この押出材の厚み方向断面における、最表面のグレングロス層を敢えて含めた、押出材の厚み領域全域に亙る平均面積率で、Goss方位の平均面積率およびCube方位/Goss方位比を規定する。
また、後述する結晶方位解析方法(SEM/EBSP法)によれば、最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域である、例えば、押出材の厚み2mm以上の広い領域に亙って、Goss方位およびCube方位を測定でき、その面積率の平均を求めることができる。これに対して、集合組織の測定のために汎用されるX線回折(X線回折強度など)では、このSEM/EBSPを用いた結晶方位解析方法に比して、結晶粒毎の比較的ミクロな(微小な)領域の組織(集合組織)を測定している。このため、押出材断面の厚み方向全域である上記2mm以上の領域に亙っては、測定数が膨大となるため、実質的には、本発明が規定する押出材の厚み領域全域のGoss方位およびキューブ方位の平均面積率を測定できない。
(等軸再結晶粒組織)
本発明で、押出材の組織を等軸再結晶粒組織とするのは、前記特許文献2〜5のような、結晶粒のアスペクト比が5を超える、押出方向に結晶粒が伸長したような繊維状組織では、Cube方位が発達せず、Cube方位/Goss方位比3.0以上が得られにくいためである。ここで、本発明で言う等軸再結晶粒組織とは、前提として、結晶粒の平均アスペクト比が、押出方向に伸長したとしても5未満の等軸粒組織である。また、この結晶粒のアスペクト比とは、長軸と短軸との比であり、通常は長軸が結晶粒の押出方向の長さで、短軸が厚さ方向の長さである。
等軸再結晶粒組織は、厚み方向断面における再結晶面積率が65%以上とする。再結晶面積率がこれより低いと曲げ圧壊性が低下する。望ましくは80%以上である。
ここで、前記した特許文献1や6では、6000系アルミニウム合金押出材の組織を等軸再結晶粒組織としている。しかし、これら特許文献1や6も、等軸再結晶粒組織ではあるが、キューブ方位が発達せず、Cube方位/Goss方位比を押出材断面の厚み方向全域に亙って3.0以上とはできない。
特許文献1では、等軸粒組織とするために、MgとSiとの含有量が化学量論的に当量であり、繊維状組織を促進するMn、Cr、Zrなどの遷移元素を実施例レベルでは合計量で0.1%以下と規制し、500℃以上の押出温度で押出して、押出直後に水焼入れ(強制冷却)を行って製造している。これによって、平均結晶粒径が100μm以下で、かつ結晶粒のアスペクト比が2以下である等軸粒組織としている。また、特許文献6では、実施例において、押出材の組成を過剰Si型とし、かつ、選択的ではあるがMn、Cr、Zrなどの遷移元素を合計で0.34%と比較的多量に含む6000系アルミニウム合金組成としている。そして、500℃での押出直後からのオンラインでの水冷などの強制冷却は無く、別途オフラインにて溶体化および焼入れ処理を行っている。
これに対して、本発明のように、Cube方位を発達させ、Goss方位の発達を抑えて、Goss方位を押出材断面の厚み方向全域に亙る平均面積率で小さく8%未満とし、かつCube方位/Goss方位比を3.0以上とするためには、後述する通り、特に、均熱処理温度、均熱処理後の強制冷却、および押出し出口温度などの製造条件の制御を行う必要がある。また、特許文献6のように押出材組成を極端な過剰Si型とせず、Mn,Cr,Zrを所定の含有量範囲に規制することは、後述する通り、Goss方位の発達を抑え、Cube方位を発達させるための前提として必要な条件である。したがって、このような積極的な制御を行っておらず、均熱処理などを常法にて製造している特許文献1、6の押出材では、たとえ他の押出条件が同じであってとしても、キューブ方位が発達しない。言い換えると、特許文献1,2の押出材では、各結晶方位がランダムな集合組織となり、必然的に、Goss方位の平均面積率は本発明よりも高く、Cube方位/Goss方位比は低くなりやすい。即ち、通常の押出材の製造方法では、等軸粒組織とはできても、本発明のように、Goss方位の発達が抑えられ、Cube方位/Goss方位比の高い等軸粒組織とはできない。
(Cube方位およびGoss方位の測定)
Cube方位およびGoss方位を含めた、各結晶粒の方位(各結晶方位成分)の面積率(存在率)は、押出材の例えばフランジ(前面壁)の前記した断面(厚み方向断面)を、走査型電子顕微鏡SEM( Scanning Electron Microscope )による、後方散乱電子回折像EBSP(Electron BackscatterDiffraction Pattern )を用いた結晶方位解析方法(SEM/EBSP法)により測定する。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、SEMの鏡筒内にセットした試料表面に電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、結晶粒毎の測定ではなく、指定した試料領域を任意の一定間隔で走査して測定し、かつ、上記プロセスが全測定点に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。このため、観察視野が広く、多数の結晶粒に対する、平均結晶粒径、平均結晶粒径の標準偏差、あるいは方位解析の情報を、数時間以内で得られる利点がある。したがって、本発明のような、前記最表面のGG層を含めた、押出材断面の厚み方向全域である、例えば、形材の厚み2mm以上の広い領域に亙って、集合組織を測定する場合には最適である。
上記EBSPを用いた結晶方位解析方法は、組織観察用の押出材の断面試験片(前記最表面のGG層を含めた、押出材断面の厚み方向全域)の表面を、機械研磨およびバフ研磨を行った後、電解研磨して調整する。このように得られた試験片について、SEM装置として、例えば日本電子社製SEM(JEOLJSM5410)、例えばTSL社製のEBSP測定・解析システム:OIM(Orientation Imaging Macrograph、解析ソフト名「OIMAnalysis」)を用いて、各結晶粒が、対象とする方位(理想方位から15°以内)か否かを判定し、測定視野における方位密度(当該方位の面積率)を求める。測定ステップ間隔は例えば3μm以下とし、押出材の適当断面箇所数か所で測定を行い、平均化する。
この際、測定される材料の測定領域を通常、六角形等の領域に区切り、区切られた各領域について、試料表面に入射させた電子線の反射電子から、菊地パターンを得る。この際、電子線を試料表面に2次元で走査させ、所定ピッチ毎に結晶方位を測定すれば、試料表面の方位分布を測定できる。次に、得られた上記菊池パターンを解析して、電子線入射位置の結晶方位を知る。即ち、得られた菊地パターンを既知の結晶構造のデータと比較して、その測定点での結晶方位を求め、それを元にGoss方位の平均面積率およびCube方位の平均面積率を求める。
(集合組織)
なお、押出材のキューブ方位を含めた集合組織については、押出材の測定部位を板と見なして、圧延板における集合組織の規定や測定要領に準じる。
この点、各方位は下記のように表される。なお、これら各方位の表現については、長島晋一編著「集合組織」(丸善株式会社刊)や軽金属学会「軽金属」解説Vol.43(1993)P.285〜293などに記載されている。キューブ方位(Cube方位):{001}<100>Goss方位:{011}<100>CR方位:{001}<520>RW方位:{001}<110>[Cube方位が(100)面で回転した方位]Brass方位:{011}<211>S方位:{123}<634>Cu方位:{112}<111>(若しくは、D方位:{4411}<11118>)SB方位:{681}<112>。
(粒界析出物)
本発明では、6000系アルミニウム合金押出材の組織について、上記集合組織とともに、補強材としての曲げ圧壊性や耐食性を向上させるために,5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔を25μm以上に大きくする。この粒界析出物同士の平均間隔は大きい方が好ましい。
本発明で言う粒界析出物(粒界に存在する析出物)とは、6000系アルミニウム合金組成からして、主としてMgSiなどの化合物や単体Siである。6000系アルミニウム合金押出材では、MgSiをβ’相などとして結晶粒内に析出させ、補強材としての高強度(高耐力)を付与する。しかし、これらの析出物が粒界に粗大にかつ密に(多く)析出すると、破壊の起点となって,破壊の粒界伝播を助長し、上記集合組織を制御したとしても、自動車用補強材としての曲げ圧壊性や耐食性を低下させる。したがって、本発明における、この粒界析出物の間隔規定は、6000系アルミニウム合金押出材の曲げ圧壊性や耐食性向上効果を発揮させるための前提条件であるとも言える。
5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μm未満では、粒界析出物同士の間隔が小さすぎ、上記析出物が粒界に粗大にかつ密に析出している状態である。したがって、これら粒界析出物が,曲げ荷重が負荷された際の(衝突荷重が負荷された際の)粒界の破壊の起点となって、破壊の粒界伝播を助長する。このため、上記集合組織を制御したとしても、自動車用補強材としての曲げ圧壊性を低下させる。なお、重心直径が1μm未満の小さな粒界析出物は,曲げ圧壊性や耐食性に余り影響せず、これらを合わせて考慮すると、却って本発明の粒界析出物間隔規定と前記特性との関係をあいまいにするため、敢えて規定しない。
(粒界析出物同士の平均間隔とサイズの測定)
粒界析出物同士の平均間隔とサイズの測定は前記した押出材の断面であって、前記集合組織観察とは違い、前記最表面のGG層を除き、押出材の厚み方向内側の、例えば厚み中心部の等軸再結晶粒組織部分を測定対象とする。この等軸再結晶粒組織の試験片をTEM観察用に薄膜加工し、このように得られた試験片について、5000倍のTEMにより組織観察して測定する。
このTEMによる観察は、上記SEM/EBSPと用いた結晶方位解析方法に比して、非常にミクロな(微少な)領域の組織を測定している。このため、押出材断面の厚方向全域の領域に亘っては、測定数が膨大となるため、厚み中心部の1箇所につき、観察視野の合計面積が800μm以上となるように行い、これを押出材の長手方向に適当に距離を置いた10箇所観察した結果を平均化する。ここで、粒界析出物の重心直径は、粒界析出物1個あたりの粒界析出物の等価な円径に換算した場合の大きさ(円径:円相当直径)である。そして、視野内の各粒界析出物について、この円相当直径(重心直径)を測定し、重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物のみを選択して、これら視野内の隣り合う各粒界析出物同士の平均間隔を網羅的に測定して、平均化して求める。
(化学成分組成)
本発明が対象とする6000系アルミニウム合金の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系アルミニウム合金は、前記した自動車車体補強材用の押出材として、優れた曲げ圧壊性や耐食性などの諸特性が要求される。
このような要求を満足するために、本発明が対象とする6000系アルミニウム合金押出材(あるいはその素材である鋳造ビレット)の組成は、質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を各々含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金とする。また、この組成のMnの一部を、Cr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種で置き換え、Mn,Cr,Zrの合計で0.30〜0.52%の範囲で含ませても良い。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
これ以外のその他の元素は、基本的には不純物であり、AA乃至JIS規格などに沿った各不純物レベルの含有量 (許容量) とする。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として多量に使用した場合には、不純物元素が混入される可能性が高い。そして、これら不純物元素を例えば検出限界以下に低減すること自体コストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。したがって、その他の元素は、各々AA乃至JIS規格などに沿った許容量の範囲での含有を許容する。
上記6000系アルミニウム合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:
Mgとの前記量的関係を満足することを前提として、Si含有量は0.30〜0.95%の範囲とする。前記したバランス合金とするための、Siの好ましい含有量範囲は0.40〜0.70%、更に好ましくは0.40〜0.60%である。SiはMgとともに、固溶強化と、低温での人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を結晶粒内に形成して、時効硬化能を発揮し、補強材として必要な280MPa以上の必要強度(耐力)を得るための必須の元素である。Si含有量が少なすぎると、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、前記時効硬化能や必要強度を満たすことができない。一方、Si含有量が多すぎると、前記したバランス合金とすることができず、本発明の集合組織とできない。また、粒界析出物が増加して曲げ加工性なども低下し、更に、溶接性も阻害される。
Mg:
Siとの前記量的関係を満足することを前提として、Mg含有量は0.60〜1.20%の範囲とする。前記したバランス合金とするための、Mgの更に好ましい含有量範囲は0.70〜1.1%である。Mgは、固溶強化と、前記人工時効処理時に、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を結晶粒内に形成して、時効硬化能を発揮し、補強材として必要な280MPa以上の必要強度(耐力)を得るための必須の元素である。Mg含有量が少なすぎると、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、前記時効硬化能や必要強度を満たすことができない。時効硬化能を発揮できない。一方、Mg含有量が多すぎると、前記したバランス合金とすることができない。また、曲げ加工性も低下する。
MgとSiとの含有量:
ここで、6000系アルミニウム合金押出材を、Goss方位が平均面積率で8%未満、Cube方位/Goss方位比が3.0以上の等軸再結晶粒組織とし、また、重心直径が1μm以上の粒界析出物同士の平均間隔を25μm以上とするためには、MgとSiとの含有量が、Mg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0の関係を満たすようにする。この関係規定は、本発明合金を、6000系アルミニウム合金の中でも、MgとSiとの含有量が互いに化学量論的に当量であるようなバランス合金、あるいは過剰Si型組成の中でもSiの含有量が比較的少なめの合金とするためのものである。
Siの含有量がMg≧1.73Siを超えて多くなり、過剰Si型組成の中でも、よりSiの含有量が過剰な6000系アルミニウム合金では、比較的低温の人工時効処理により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる時効硬化能(BH性)が優れる。このため、前記した自動車パネルへプレス成形や曲げ加工され、成形性と成形後の高強度が要求される、6000系アルミニウム合金板の分野で汎用されている。
しかし、本発明の6000系アルミニウム合金押出材を、このような過剰Si型とすると、押出中にSiが溶け残って、種々の結晶方位の核となり、ランダムな方位の集合組織となり、相対的にGoss方位が発達し、かつCube方位/Goss方位比が小さくなる可能性がある。また、その組織も、前記した押出方向に伸長した繊維状組織となりやすくなる。
このため、Siの含有量が多すぎる過剰Si型6000系アルミニウム合金押出材では、勿論、押出条件などの製造方法にもよるが、最表面のグレングロス層を含めた押出材断面の厚み方向全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満、Cube方位/Goss方位比が3.0以上の等軸再結晶粒組織とはできない可能性が生じる。また、Si含有量が多すぎると、Siに起因する粒界析出物が粗大化し、また、その数も増えて、上記集合組織とともに、補強材としての曲げ圧壊性や耐食性を向上させるための、重心直径が1μm以上の粒界析出物同士の平均間隔が25μm以上とすることができなくなる可能性も高くなる。したがって、Siの含有量が、Mg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0の関係を超えて多くなると、押出条件などの製造方法にもよるが、補強材としての押出材の、曲げ圧壊性や耐食性を向上させることができなくなる可能性が生じる。
Fe:
Feは、Mn、Cr、Zrなどと同じ働きをして、分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。また、Feは溶解原料としてのスクラップなどから一定量(実質量)が必然的に混入しやすい元素である。このため、Feの含有量は0.01〜0.40%の範囲とする。Feの含有量が少な過ぎると、これらの効果が無い。一方、Feの含有量が多過ぎると、Al-Fe-Si晶出物などの粗大な晶出物を生成しやすくなり、これらの晶出物は曲げ圧壊性を劣化させ、また破壊靱性および疲労特性などを劣化させる。より望ましい範囲は0.1〜0.3%である。
Mn:
Mnは、Cr、Zrと同じく遷移元素であり、結晶粒の粗大化を防止するために必要である。これらは、均質化熱処理時およびその後の熱間押出加工時に、他の合金元素と選択的に結合したAl−Mn系などの金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成する。これらの分散粒子は、製造条件にもよるが、微細で高密度、均一に分散して、再結晶後の粒界移動を妨げる効果(ピン止め効果)があるため、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果が高い。Mnの含有量が少なすぎると、粒界のピン止め力が低く、Goss方位の成長も許してしまい、Goss方位の平均面積率が8%以上、Cube方位/Goss方位比が3.0未満となって、曲げ加工性を低下させやすい。また、Mnはマトリックスへの固溶による強度の増大も見込める。
一方、Mnを過剰に含有すると、押出材の組織が押出方向に伸長した繊維状組織となりやすくなる。このため、Goss方位の平均面積率が8%未満、Cube方位/Goss方位比が3.0以上の等軸再結晶粒組織が得られなくなる。また、Mnの過剰な含有は、溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成しやすく、破壊の起点となり、補強材としての前記曲げ圧壊性や耐食性などの要求特性や、押出材の曲げ加工性などを却って低下させる原因となる。したがって、Mnの含有量は0.3〜0.52%(Cr、Zrの添加がない場合)の範囲とする。
Cu:
Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化を著しく促進する効果も有する。したがって、0.001〜0.65%を含有させる。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの効果が無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、押出材組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、耐食性や耐久性を低下させる。したがって、Cuの含有量は前記範囲とする。より望ましい範囲は0.2〜0.5%である。
Ti:
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出材組織を微細な結晶粒とする効果がある。したがって、Tiは0.001〜0.10%の範囲で含有させる。また、Tiを含有させる際に混入しやすいBを含有する場合には、B:1〜300ppmの範囲とする。Tiの含有量が少な過ぎるとこの効果が発揮されない。しかし、Tiの含有量が多過ぎると、粗大な晶析出物を形成し、補強材としての前記曲げ圧壊性や耐食性などの要求特性や、押出材の曲げ加工性などを低下させる原因となる。したがってTiの含有量は前記範囲とする。
Cr,Zrの1種または2種:
Cr、Zrは、Mnと同じく、Al-Cr系、Al-Zr系などの金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成して、結晶粒の粗大化を防止するために有効(ピン止め効果)である。但し、これらの元素を過剰に含有すると、Mnと同じく、押出材の組織が押出方向に伸長した繊維状組織となりやすくなる。したがって、これらの効果が必要な場合には、Mnの一部を、Cr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種で選択的に置き換え、Mn,Cr,Zrの合計で0.30〜0.52%含有させる。Cube方位を優先的に成長させ、相対的にGoss方位の成長を抑制するには、Mnは0.13%以上であることが望ましい。また、上記合計範囲で、特にZrを0.1〜0.18%含有する場合、本発明の製造方法に従って高温均熱し、ビレット加熱温度を高く、押出速度を大きくし、押出出口温度を高温にすることにより(高温加熱によりAl−Zr系金属間化合物粒子によるピン止め力を少し弱め、成長速度が大きいCube方位を優先的に成長させ、相対的にGoss方位が成長しないようにする)、再結晶率65%以上を得た上で、Goss方位の平均面積率をより少ない5%未満とし、曲げ加工性をより向上(仮に同じ限界曲げRであっても、限界曲げRを超える曲げ加工で割れ(亀裂)が発生したときの亀裂が小さい)させることができる。
Zn:
Znは、6000系アルミニウム合金に不純物として含有される。0.001%以上で、Cuと同様に、固溶強化による強度の向上、および時効硬化を促進する効果を有する。一方、含有量が多過ぎると、押出材組織の応力腐食割れや粒界腐食の感受性を著しく高め、耐食性や耐久性を低下させるので、許容される含有量はJIS規格6061合金と同じく0.25%以下とする。
(押出材断面形状)
6000系アルミニウム合金押出材の断面形状は、補強材としての曲げ圧壊性を高めることができる断面形状が、適宜選択される。軽量化と補強材としての曲げ圧壊性とを兼備するためには、断面形状が中空形状であることが好ましい。この中空断面形状の代表的な(基本的な)形状は、断面形状が略口形の矩形中空断面であり、口形を構成する両フランジ(前壁、後壁)と両ウエブ(両フランジをつなぐ上下側壁)とからなる。この口形中空断面の基本形に対して、曲げ圧壊性を高めるに、更に中リブを設けて補強した、断面形状が日形(上下側壁と平行な1本の中リブを断面内の中央部に設ける)、あるいは目形(上下側壁と平行な2本の中リブを断面内に間隔を開けて設ける)、田形(十字の中リブを断面内に設ける)等の矩形中空断面としても良い。
また、前記フランジ両端の長さをウエブ間の幅よりも長くして、左右方向(あるいは上下方向)に張り出した形状、あるいは、各々のフランジとウエブを、直線状の他に、外方に膨らむか、内方に凹む円弧状としても良い。また、押出材(補強材)の長手方向に渡る断面形状は、必ずしも同一でなくとも部分的あるいは順次断面形状が変化するような中空形状が、補強材の設計側から自由に選択できる。なお、本発明におけるバンパー補強材の中空断面は、以上説明したような完全な閉断面の中空形状でなくとも、いずれか一部の壁乃至辺が開口した中空状の断面でも可であるが、強度的には上記閉断面中空形状に比して劣るため、軽量化や曲げ圧壊性の点で不利となる。
(押出材の肉厚)
押出材の肉厚は、上記した断面形状との関係で、補強材としての曲げ圧壊性を高めることができる肉厚が適宜選択される。ただ、本発明が対象とするのは、車体の衝突に対するエネルギーを吸収する補強材であり、補強材としての曲げ圧壊性を高めるためにも、前記した圧延薄板からなる車体パネルのように薄くはなく、厚みを厚くする必要がある。曲げ圧壊性を高めるためには、肉厚が厚い方が良いが、あまり厚くしても、重量が増加して、軽量化が図れない。この点、肉厚は2〜7mmの範囲から選択することが好ましい。また、前記した各断面形状において、両フランジ、両ウエブ、中リブなどの肉厚を、全て同じとする必要はなく、フランジなど衝突する(荷重を受ける)側の壁を厚くし、その他を薄くするなどの工夫ができる。
(製造方法)
次ぎに、本発明に係る6000系アルミニウム合金押出材の製造方法について以下に説明する。本発明押出材は、熱間押出後に、焼入れ処理、あるいは人工時効硬化処理などの適宜の調質が施された押出材を言い、後述する集合組織の制御条件などを除けば、製造工程自体は常法あるいは公知の方法で行う。
本発明押出材の製造工程は、先ず、上記6000系成分組成のアルミニウム合金鋳塊をビレットに鋳造する。次いで、ビレットを均質化熱処理後、一旦、室温近傍の温度まで冷却する。そして、溶体化処理温度まで再加熱して熱間押出し、押出直後から室温までを含む190℃以下の温度までオンラインにて強制冷却して、上記した所定の断面形状の押出材とする。この押出材は、これら一連の熱間押出工程によって、溶体化および焼入れ処理も行われたこととなる。その後、切断、矯正処理後に、押出材は、必要により、人工時効硬化処理などの適宜の調質が施される。なお、この人工時効硬化処理は、押出材の段階で予め行わず、自動車の補強材として自動車車体に組み付け後に、自動車車体塗装後の塗料の焼き付け硬化処理によって行っても良い。
溶解、鋳造:
溶解、鋳造工程では、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
均質化熱処理:
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊(ビレット)に均質化熱処理を施す。均質化熱処理の温度自体は、560℃以上の高温、融点未満での均質化温度範囲、最適には560〜590℃の温度範囲から選択される。この均質化熱処理(均熱処理)は、組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくし、合金元素や粗大な化合物を十分に固溶させることを目的とする。この均質化温度が低いと結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用する。また均熱温度が560℃未満であると、等軸再結晶組織が得られないか(特にZrを0.1〜0.18%含むとき)、等軸再結晶組織が得られてもGoss方位の面積率が増加し、曲げ圧壊性が低下する。
この均熱処理後に、鋳造ビレットを、100℃/hr以上の平均冷却速度で、室温までを含む、400℃以下の温度まで、強制冷却する。この強制冷却の冷却速度は大きい(速い)方が好ましく、ファンか水冷かの強制冷却にて行う。均熱処理後の400℃以下の温度までの強制冷却を行えば、それ以降は、この温度で強制冷却を停止するか、この温度で強制冷却停止後は室温まで放冷するか、室温まで引き続き強制冷却するか、は自由に選択できる。
これに対して、例えば、通常の、鋳塊 (ビレット) を均熱炉外で放冷(自然冷却)する場合には、ビレットの大きさにもよるが、通常の大きさでは、均質化熱処理後の冷却速度は速くても40℃/hr程度であり、前記100℃/hr以上には速くならない。このため、高温の均質化熱処理において一旦は固溶するMgSi化合物が、融点が高いゆえに溶け残るFeAl化合物と、この冷却中に合体して、新たな複合化合物(析出物)を形成する。このような複合化合物(析出物)が一旦生成すると、押出工程においても溶け残って、前記した過剰なSiと同様に、種々の結晶方位の核となり、組織をランダムな方位の集合組織とする。このため、Cube方位が発達せずに抑制され、Goss方位の割合が増加し、かつCube方位/Goss方位比が低下し、曲げ圧壊性が劣化する。
熱間押出:
次に、押出出口側の押出材温度が575℃以上の溶体化温度域になるように、前記鋳造ビレットを再加熱して熱間押出を行い、この押出出口側の押出材を押出加工直後から室温までを含む190℃以下までを5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却し、T5の調質処理材とするか、あるいは、その後の人工の時効処理と併せてT6(時効)あるいはT7(過時効)の調質処理材とすることが好ましい。この押出直後の冷却は、押出材温度が190℃以下になるまで強制冷却を行えば、それ以降は、この温度で強制冷却を停止するか、この温度で強制冷却停止後は室温まで放冷するか、室温まで引き続き強制冷却するか、は自由に選択できる。このT5の調質処理においては、押出出口側の押出材の温度を575℃以上の溶体化温度域の温度として、オンライン(押出加工)にて溶体化処理し、引き続き、押出直後から押出材を室温近傍の温度まで、オンライン(押出機出口側)にて強制冷却する焼入れ処理を行う。
熱間押出時の温度は、低温の方がCube方位が集積しやすく、押出材の集合組織について、Cube方位が優勢となり、押出材断面の厚み方向全域に亙る平均面積率でGoss方位の平均面積率が8%未満、かつCube方位の平均面積率とGoss方位の平均面積率の比が3.0以上の等軸再結晶粒組織とできる。しかし、押出出口側の押出材の温度が、溶体化温度域より低い575℃未満となった場合には、再結晶面積率65%以上の等軸再結晶組織が得られず、また粗大な粒界析出物(MgとSiとの化合物(晶析出物)やSi単体)がマトリックス中に溶けずに残留して、破壊の起点となり、曲げ圧壊性や耐食性を低下させる。したがって、これらの兼ね合いから、押出出口側の押出材の温度は575℃以上の溶体化温度域としつつも、この中で、より低い温度を選択することが好ましい。この際、熱間押出時の加工発熱によって、押出出口側の押出材温度を575℃以上の溶体化温度域とすることができれば、鋳造ビレットの再加熱温度を、必ずしも500℃以上として押出加工せずとも良い。押出速度は、低速の場合は、押出材温度を溶体化温度域とすることができない可能性があるが、低速の方がCube方位が集積しやすく、高速ではGoss方位が集積しやすい。このため、Cube方位が少なくならず、Goss方位も増えずに、溶体化温度域まで温度を上げることができるような押出速度を選択することが好ましい。
なお、押出出口側の押出材の温度は、ダイス出口直後(出口からの距離0mm)における材料表面温度である。ダイス出口直後で測定することが困難な場合、ダイス出口からある距離(押出プレスによって温度測定ができる位置が異なる)において材料表面温度を接触式温度計で測定し、予め測定したおいた押出材の冷却曲線を用い、ダイス出口直後の温度を逆算して求めることができる。
また、押出直後から室温までを含む190℃以下までを5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却によって焼入れ処理を行うのは、補強材としての曲げ圧壊性を向上させるために、押出材の集合組織について、Goss方位が8%未満、かつCube方位/Goss方位比が3.5以上の等軸再結晶粒組織とするためである。更に、この集合組織とともに、重心直径が1μm以上の粒界析出物同士の平均間隔を25μm以上と大きくして、曲げ圧壊性および耐食性を向上させるためである。押出直後からの強制冷却は水冷が望ましく、その場合、押出機出口側のラインに、ミスト、水などのスプレイやシャワー、あるいは水槽などの強制冷却手段を設けたり、これらを組み合わせて、オンラインにて行う。設備の仕様にも勿論よるが、水冷による強制冷却手段の場合、冷却速度は10℃/秒以上が普通に得られる。
このT5調質処理によって、押出工程後に、押出材を別途再加熱して溶体化および焼入れ処理を行う工程が省略できる。ただ、諸事情や都合により、このT5調質処理ではなく、熱間押出工程後に、押出材を別途500℃以上の溶体化温度域に再加熱して溶体化処理および焼入れ処理を行い、その後に人工時効処理を行うT6の調質処理材としても良い。
時効処理:
押出材は、所定の長さに切断あるいは矯正処理後に、人工時効硬化処理が施される。この人工時効硬化処理は、好ましくは150〜250℃の温度範囲に必要時間保持する。この保持時間によって、押出材の時効硬化は調節され、強度を最大にするピーク時効とする時間や、これより長時間として耐食性を向上させる過時効とする時間から適宜選択される。
次に、本発明の実施例を説明する。表1,2に示す各成分組成で、断面日型の6000系アルミニウム合金押出材を、表3,4に示す条件で製造し、表5,6に示すように、押出材の組織を調査し、また特性(機械的特性、曲げ圧壊性)を調査した。
Figure 2011074470
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より具体的には、押出材の製造は、表1,2に示す各成分組成の各アルミニウム合金溶湯から、各々ビレットを鋳造した。このビレットを表3,4に示す各温度で均質化熱処理後、ファンによる強制空冷により、表3,4に示す平均冷却速度(℃/hr)で、一旦、室温まで冷却した。この均質化熱処理後のビレットを表3,4に示す温度に再加熱して、直ちに表3,4に示す押出速度(m/分)にて熱間押出した。押出出口温度(ダイス出口到達温度)(℃)を表3,4に示す。そして、押出直後から室温近傍温度まで水スプレイ(比較例11以外)及びファン空冷(比較例11)により強制冷却を行い断面日型の押出材とした。各実施例及び比較例における押出直後から表面温度190℃までの平均冷却速度を表3,4に示す。この押出材に表3,4に示す条件で人工時効硬化処理を施した。
断面日型の押出材の外寸形状は、バンパ補強材用の大きさとし、各例とも共通して、各フランジ(前面壁、後面壁)の各長さ40mm、厚さ2.3mm、各ウエブ(側壁)や中リブの長さ40mm、各厚さ2.0mm、切断後の長さは1300mmとした。
これら人工時効硬化処理後の押出材のウエブ(側壁)部分から供試材(板状試験片)を切り出し、供試材の組織や特性を測定、評価した。これらの結果を表3,4に示す。
(供試材組織)
Goss方位およびCube方位の平均面積率:
前記調質処理後15日間の室温放置後の供試材の集合組織を、前記SEM-EBSPを用いて、測定・解析し、供試材の、最表面のグレングロス層を含めた、断面の厚み方向全域に亙るGoss方位とCube方位の平均面積率(%)、およびCube方位/Goss方位比を求めた。
また、このSEM-EBSPを用いて、各例の再結晶粒組織における結晶粒の平均アスペクト比も同時に測定し、再結晶粒の組織形態を評価、判別した。即ち、結晶粒の平均アスペクト比が5以下を等軸粒組織とし、平均アスペクト比が5を超えるものを繊維状組織とした。なお、表5,6の再結晶状態の欄には、等軸粒組織が50%以上のものを等軸再結晶組織と記載し、等軸粒組織が50%未満のものを繊維状組織と記載した。全ての実施例、比較例において再結晶した部分は全て等軸粒組織からなっていた。
(供試材特性)
前記調質処理後30日間の室温放置後の供試材の特性として、0.2%耐力(As耐力: MPa)、伸び(%)を各々測定した。また、曲げ圧壊性および耐食性を測定、評価した。これらの結果も表5,6に示す。
引張試験:
引張試験は、前記供試材からJISZ2201の13号B試験片(幅:12.5mm、評点距離:50mm、厚さ:押出材厚さ)を採取し、室温引張りを行った。このときの試験片の採取、引張方向を押出方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。測定N数は5として、各機械的性質は、これらの平均値とした。
曲げ圧壊性(曲げ加工性)試験:
前記供試材(板状試験片)を、JIS Z2248に規定された押し曲げ法により、曲げ線が押出方向となるように(押出方向と直角方向に)180°曲げ試験し、10回試験して10回とも曲げコーナーの外側(引張側部位)に割れによる破断が発生しない限界曲げR(mm)を求めた。この限界曲げRが小さいほど、曲げ圧壊性に優れると評価した。この限界曲げRが3.0mm以下であれば、曲げ圧壊性に優れ、自動車用の補強材として使用可能である。
耐食性試験:
前記供試材を、ISO/DIS11846B法に規定された浸漬法により腐食試験を行った。試験条件は、押出材を、NaClを30g/lの濃度およびHClを10ml/lの濃度で各々溶解させた水溶液に、室温で24時間浸漬した後の、押出材の断面観察を行って腐食形態を調査し、粒界腐食割れ発生の有無を判定した。そして、粒界腐食割れが発生している場合を×、粒界腐食割れではないが、粒界腐食が発生している場合を△、粒界腐食割れや粒界腐食が発生していない場合(表面的な前面腐食が発生している場合を含む)を○として評価した。
Figure 2011074470
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表1〜4に示す通り、各発明例1〜10は、前記したMgとSiとの含有量の関係を含めて本発明成分組成範囲内で、かつ、好ましい条件範囲で、均質化熱処理(均熱温度、強制冷却)および熱間押出(ビレット加熱温度、押出出口温度、押出直後からの強制冷却)を行なっている。このため、表5,6に示す通り、本発明で規定するGoss方位面積率およびGoss方位/Cube方位比を有する等軸再結晶粒組織(再結晶面積率65%以上)を有し、かつ本発明で規定する粒界析出物平均間隔を有する。この結果、各発明例は、曲げ圧壊性と耐食性に優れている。また、強度(280MPa以上)、伸びなど機械的特性にも優れている。これらの性能は、押出材が、補強材として、ポール衝突、オフセット衝突などの自動車の衝突条件が厳しくなった場合にでも対応できる、曲げ圧壊性を有していることを示している。
これに対して、比較例1,5,6は均熱温度が低いため、比較例1,5(Zrを所定量含む組成)では等軸再結晶組織(再結晶面積率65%以上)が得られず、比較例6(Zrを含まない組成)ではピン止め力不足によりGoss方位が多く集積し、いずれも曲げ圧壊性が劣る。
比較例2〜4はMn+Cr+Zrの合計含有量が少ないため、等軸再結晶組織(再結晶面積率65%以上)が得られたが、ピン止め力不足によりGoss方位の成長を許してしまい、いずれも曲げ圧壊性が劣る。
比較例7,8はMn+Cr+Zrの合計含有量が多いため、本発明の方法に従った場合(比較例7)および均熱温度が低い場合(比較例8)のいずれも、繊維状組織(再結晶面積率50%未満)となり、曲げ圧壊性が劣る。
比較例9は押出温度が低く、押出速度が低かったため、押出出口側温度が低く、繊維状組織(再結晶面積率65%未満)となり、かつ耐力が低下した。
比較例10は過剰Si組成であるため、等軸再結晶組織が得られたが、Goss方位が発達して曲げ圧壊性が劣り、また粗大な粒界析出物が増えて耐食性が低下した。
比較例11は押出直後からの強制冷却の冷却速度が小さく焼き入れ遅れとなり、粗大な粒界析出物が増えて耐食性が低下した。
比較例12〜14はいずれも押出出口側温度が低いため粗大な粒界析出物が増えて、再結晶面積率65%以上の等軸再結晶組織が得られていない比較例12は強度が劣り、繊維状組織の比較例13および等軸再結晶組織(再結晶面積率65%以上)の比較例14は、曲げ圧壊性が劣る。
比較例15はSi含有量が過剰、比較例16はFe含有量が過剰、比較例18はMn含有量が過剰、比較例19はMg含有量が過剰、比較例20はCr,Zr含有量が過剰、比較例22はTi含有量が過剰で,いずれも曲げ圧壊性が劣る。比較例17はCu含有量が過剰、比較例21はZn含有量が過剰で、いずれも耐食性が劣る。比較例23はSi,Mg含有量が不足し、強度(耐力)が低い。比較例24は均熱処理後の冷却速度が低く、粗大なMgSi化合物が生成するとともに、Cube方位/Goss方位比が低く、曲げ圧壊性が劣る。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明における成分や組織の各要件、あるいは好ましい製造条件の、曲げ圧壊性と機械的性質などを兼備するための臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
本発明によれば、自動車の衝突条件が厳しくなっても、自動車車体補強材として要求される、曲げ圧壊性と耐食性との両方に優れた6000系アルミニウム合金押出材およびその製造方法を提供できる。即ち、優れた横圧壊性が求められるバンパ補強材やドアーガードバーなどの車体補強材として好適である。

Claims (5)

  1. 質量%で、Mg:0.60〜1.20%、Si:0.30〜0.95%、Fe:0.01〜0.40%、Mn:0.30〜0.52%、Cu:0.001〜0.65%、Ti:0.001〜0.10%を各々含み、MgとSiとの含有量がMg(%)−(1.73×Si(%)−0.25)≧0を満たし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材であって、厚み方向断面において再結晶面積率が65%以上の等軸再結晶粒組織を有し、同組織において5000倍のTEMにより観察される重心直径が1μm以上のサイズを有する粒界析出物同士の平均間隔が25μmを超え、この押出材の厚み方向断面における最表面のグレングロス層を含めた厚み領域全域に亙るGoss方位の平均面積率が8%未満、かつCube方位の平均面積率とGoss方位の平均面積率の比が3.0以上であることを特徴とする曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
  2. Mnの一部がCr:0.001〜0.18%、Zr:0.001〜0.18%の1種または2種で置き換えられ、Mn,Cr,Zrの合計が0.30〜0.52%である請求項1に記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
  3. 前記アルミニウム合金押出材の前記曲げ圧壊性が、JISZ2248に規定された押し曲げ法による、板状採取試験片の曲げ線が押出方向となる180°曲げ試験にて、割れが発生しない限界曲げRが3.0mm以下の性能である請求項1または2に記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
  4. 前記アルミニウム合金押出材が押出方向と直角方向に荷重を受けて圧壊するエネルギー吸収部材に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材。
  5. 請求項1又は2に記載された組成を有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金鋳造ビレットを、560℃以上の温度で均質化熱処理後に、100℃/hr以上の平均冷却速度で400℃以下の温度まで強制冷却し、更に、押出出口側の押出材温度が575℃以上の溶体化温度域になるように、前記鋳造ビレットを500℃以上に再加熱して熱間押出を行い、この押出出口側の押出材を押出加工直後から5℃/秒以上の平均冷却速度で強制冷却し、その後、押出材を更に時効処理して0.2%耐力を280MPa以上とすることを特徴とする曲げ圧壊性と耐食性に優れたアルミニウム合金押出材の製造方法。
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