JP2003247040A - フラットヘム加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

フラットヘム加工性に優れたアルミニウム合金板およびその製造方法

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JP2003247040A
JP2003247040A JP2002048065A JP2002048065A JP2003247040A JP 2003247040 A JP2003247040 A JP 2003247040A JP 2002048065 A JP2002048065 A JP 2002048065A JP 2002048065 A JP2002048065 A JP 2002048065A JP 2003247040 A JP2003247040 A JP 2003247040A
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Tetsuya Masuda
哲也 増田
Manabu Nakai
学 中井
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フラットヘム加工に優れるとともに、低温
人工時効硬化処理によっても、AB耐力や耐デント性など
の他の要求特性を兼備したAl-Mg-Si系Al合金板とその製
造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.0
1 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量
比で1 以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金板であっ
て、アルミニウム合金板表面に、スキンパス圧延等によ
り、0.5 〜5%の量の歪みが導入されているとともに、室
温時効後の0.2%耐力を110 〜150MPaの範囲とし、かつ2%
ストレッチ付与後160 ℃×20分の人工時効処理後の0.2%
耐力を160MPa以上とすることである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラットヘム加工
性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金板(以下、アル
ミニウムを単にAlと言う)およびその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、自動車、船舶あるいは車両な
どの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用と
して、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れた
Al-Mg系のAA乃至JIS 規格に規定された (規格を満足す
る)5000 系や、成形性や焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系
のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言
う) のAl合金材(圧延板材、押出形材、鍛造材などの各
アルミニウム合金展伸材を総称する)が使用されてい
る。
【0003】近年、排気ガス等による地球環境問題に対
して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の
向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体
に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、より
軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
【0004】このAl合金材の中でも、自動車のフード、
フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネ
ル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内
板)等のパネルには、薄肉でかつ高強度Al合金板とし
て、過剰Si型の6000系のAl合金板の使用が検討されてい
る。
【0005】この過剰Si型の6000系Al合金は、基本的に
は、Si、Mgを必須として含み、かつSi/Mg が質量比で 1
以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金である。そし
て、この過剰Si型6000系Al合金は優れた時効硬化能を有
しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化に
より成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装
焼付処理などの、比較的低温の人工時効処理時の加熱に
より時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保でき
る時効硬化能がある。
【0006】また、これら過剰Si型6000系Al合金材は、
Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比
して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら60
00系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原
料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得
やすく、リサイクル性にも優れている。
【0007】しかし、これら過剰Si型6000系Al合金材
は、その優れた時効硬化能ゆえに、Al合金材自体の製造
後、前記各用途に使用されるまでの間に、室温 (常温)
時効が生じるという大きな問題がある。この室温時効の
傾向は、本発明が対象とする過剰Si型6000系Al合金材で
特に強い。
【0008】例えば、この室温時効によって、過剰Si型
6000系Al合金材自体の製造後2 週間経過後でも、20% 程
度以上耐力が上昇するとともに、逆に伸びが10% 程度以
上低下するような現象も生じる。
【0009】そして、このような室温時効が生じた場
合、製造直後には、過剰Si型6000系Al合金板が前記各用
途の要求特性を満足したとしても、一定時間の経過後
に、実際の用途に使用される際には、前記要求特性を満
足できない問題を生じる。即ち、前記プレス成形性やヘ
ム加工性を著しく低下させ、また、前記比較的低温での
時効硬化性も低下させ、パネルとしての必要な形状精度
や強度が得られないこととなる。
【0010】過剰Si型を含む6000系Al合金材の、これら
室温時効抑制と低温時効硬化能向上の課題に対しては、
特開平10-219382 号、特開2000-273567 号等の公報など
で、6000系Al合金板材を溶体化および焼入れ処理した後
に、70〜150 ℃の低温で0.5〜50時間程度保持する熱処
理 (時効処理) を施して改善することが開示されてい
る。
【0011】これらの公報では、過剰Si型を含む6000系
Al合金材の低温時効硬化能を阻害している要因は、溶体
化および焼入れ処理後の室温放置中に形成されるMg-Si
クラスターであるとしている。即ち、この形成されたMg
-Si クラスターが、塗装焼き付け時に再固溶するために
熱エネルギーが消費され、強度上昇に寄与するGPゾーン
の側の析出を阻害することであるとしている。
【0012】そして、特開平10-219382 号公報では、低
温時効硬化能を阻害するMg-Si クラスターの生成量を規
制するために、また、特開2000-273567 号公報では、成
形性向上には寄与するMg-Si クラスターを低温時効硬化
能を阻害しない範囲で一定量の存在 (活用) させるため
に、溶体化および室温まで焼入れ処理した後に、前記70
〜150 ℃で0.5 〜50時間程度保持する低温熱処理を施し
ている。そして、特開平10-219382 号公報では、室温時
効抑制効果として、製造後100 日放置した後のAl合金パ
ネル材の伸びが30% 以上、エリクセン値が10mm以上をも
って、成形性が良く、室温時効が抑制されているとして
いる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら特開平
10-219382 号、特開2000-273567 号公報などの実際の低
温時効硬化能は、170 ℃×30分の塗装焼き付け条件で
も、最大でも168MPa程度である。したがって、これら公
報では170 ℃×30分の人工時効処理条件でも、170Pa 以
下の過剰Si型6000系Al合金板しか得られていない。
【0014】これに対し、近年では、前記成形後の自動
車パネルの塗装焼付処理は、170 ℃×20分や160 ℃×20
分などのより低温短時間となっているのが趨勢である。
そして、これら低温短時間の塗装焼付条件 (人工時効処
理条件) であっても、パネルとして、160MPa以上の高強
度であることが求められている。
【0015】また、プレス成形性やフラットヘム加工条
件も、近年益々難しくなる傾向にあり、従来の成形加工
側からの改善や素材板側からの改善では、対応できない
場合が生じる。先ず、張出成形されるアウタパネル形状
は、張出高さや張出面積などが大型化し、しかも形状
が、伸びフランジ変形を伴うような湾曲部位を有するな
ど複雑化する傾向にある。このため、前記従来の成形加
工側や素材板側からの改善でも、割れ、肌荒れなどの成
形不良が生じ易い。
【0016】次に、フラットヘム加工条件も、加工アウ
タパネルの端部形状も、直線的な単純形状ではなく、円
弧形状やあるいは角部を有するような複雑形状化する傾
向にある。また、アウタパネルのフラットヘム部 (縁曲
部) に挿入されるインナパネルも、軽量化のために、1.
0mm 以下の、例えば0.5mm 程度の板厚に益々薄肉化され
傾向にある。これらの条件は全て、フラットヘム加工条
件を厳しくしている。
【0017】このように、過剰Si型6000系Al合金板にお
いて、Al合金板の室温時効抑制と、プレス成形性および
ヘム加工性、更に低温時効硬化能などの向上は、相矛盾
する技術課題であって、両立させることは中々難しい。
例えば、Al合金板の耐力を下げてフラットヘム加工性を
改善した場合、プレス成形性が低下したり、低温での人
工時効硬化処理後の耐力が不足して、耐デント性が不足
するなどの問題を生じる。
【0018】このため、従来から種々提案されている晶
出物や析出物の制御技術や、Cuなどを多量に添加する技
術をもってしても、これらの特性を同時に達成すること
はかなり難しい技術課題となる。
【0019】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、フラットヘム加工に優れる
とともに、低温人工時効硬化処理によっても、人工時効
硬化後の耐力であるAB耐力や、耐デント性などの他の要
求特性を兼備したAl-Mg-Si系Al合金板とその製造方法を
提供しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明アルミニウム合金板の請求項1 の要旨は、S
i:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.
001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量比で1 以上であるA
l-Mg-Si系アルミニウム合金板であって、アルミニウム
合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みが導入されているとと
もに、室温時効後の0.2%耐力が110 〜150MPaの範囲とさ
れており、かつ2%ストレッチ付与後160 ℃×20分の人工
時効処理後の0.2%耐力が160MPa以上であることとする。
【0021】また、同じく、この目的を達成するため
に、本発明アルミニウム合金板の製造方法の請求項7 の
要旨は、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65
% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量比で1 以
上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金板を、500 〜540
℃の温度で溶体化および焼き入れ処理した後、アルミニ
ウム合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みを導入して、室温
時効後の0.2%耐力を110〜150MPaの範囲とし、かつ2%ス
トレッチ付与後160 ℃×20分の人工時効処理後の0.2%耐
力が160MPa以上であるようになしたことである。
【0022】そして、請求項8 に記載の通り、前記歪み
の導入をスキンパス圧延により行うことにより、所定量
の歪みを、均質かつ正確に、また簡便に、Al合金板表面
に導入することができる。
【0023】なお、本発明で言うAl合金板とは、調質処
理 (熱処理) を施した冷間圧延板を言い、上記各要件
も、調質処理後の室温時効したAl合金板の状態であっ
て、プレス成形および/ またはフラットヘム加工される
までの任意の期間におけるAl合金板の状態をさして言
う。また、ここで言う調質処理とは、溶体化および焼き
入れ処理や、その後の後述する予備時効処理や、更に必
要により施す時効処理などの種々の調質処理を示す。
【0024】本発明者らは、耐デント性などに直接寄与
する低温人工時効処理時の時効硬化能を低下させずに、
フラットヘム加工性を改善する方法を改めて検討した。
この結果、比較的低温の溶体化処理および焼き入れ処理
後に、Al合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みを導入して、
0.2%耐力を110 〜150MPaの範囲に制御すれば、低温人工
時効処理時の時効硬化能を低下させずに、前記AB耐力で
160MPa以上を確保でき、しかもフラットヘム加工性を向
上できることを知見した。
【0025】即ち、比較的低温の溶体化処理によって、
焼き入れ処理における粒内の析出物量を比較的少なくす
るとともに、低耐力化させて、フラットヘム加工性を向
上させる。ただ、このままでは、前記低温人工時効処理
時にGPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させるこ
とができず、耐デント性などに直接寄与する時効硬化能
が低下し、前記AB耐力で160MPa以上を確保できなくな
る。
【0026】これに対して、前記比較的低温の溶体化処
理および焼き入れ処理後に、Al合金板表面に0.5 〜5%の
量の歪みを導入して、0.2%耐力を110 〜150MPaの範囲に
制御すれば、前記低温の人工時効処理時であっても、前
記AB耐力で160MPa以上となる時効硬化能を確保でき、し
かもフラットヘム加工性を向上できる。
【0027】なお、Al合金板分野において、スキンパス
等により、Al合金板表面に所定量の歪みを導入すること
自体は公知である。しかし、これらの目的は、あくま
で、Al合金板表面の粗さの制御や、板の平坦度制御など
である。したがって、本発明のように、フラットヘム加
工性を向上させるとともに、耐デント性などの他の要求
特性も兼備させるために、前記溶体化処理と組み合わせ
て、Al合金板表面に所定量の歪みを導入する技術は、こ
れまで本発明者らは知らない。
【0028】本発明では、常法に対し、比較的低温の溶
体化処理および焼き入れ処理後に、Al合金板表面に所定
量の歪みを導入する工程が付加される。しかし、このよ
うな工程の付加によっても、Al合金板の製造が煩雑にな
ったり、製造コストが著しく高くなることはない。した
がって、この点が本発明Al合金板の利点でもある。
【0029】本発明では上記特性を発揮するために、Al
合金板の成分組成を、請求項2 のように、前記請求項1
で規定した各成分以外の残部を、Alおよび不可避的不純
物とより厳密に規定することが好ましい。
【0030】また、プレス成形性などの他の特性を低下
させずに、フラットヘム加工性をより向上させるため
に、請求項3 のように、Al合金板のSi含有量を0.6 〜1.
0%とすることが好ましい。
【0031】耐食性を低下させないためには、請求項4
のように、Al合金板のCu含有量を0.1%以下に規制するこ
とが好ましい。
【0032】本発明では、フラットヘム加工性が優れる
ために、請求項5 のように、Al合金板の板厚が1.0mm 以
下であり、アウタパネルとして、板厚が1.0mm 以下のイ
ンナパネルAl合金板に対しフラットヘム加工されるよう
な厳しい条件の場合に適用されて好ましい。
【0033】本発明は以上のような効果を有するため、
請求項6 に記載のように、フラットヘム加工が汎用され
るとともに、フラットヘム加工性の要求が厳しい、特に
自動車アウタパネルに適用されて好適である。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明Al合金板の要件につき、以
下に説明する。本発明では、比較的低温の溶体化および
焼き入れ処理後に、Al合金板表面に0.5 〜5%の量の歪み
を導入する。但し、歪み導入後のAl合金板の0.2%耐力は
110 〜150MPaの範囲とする。Al合金板表面に導入される
歪み量が0.5%未満では、Al合金板の0.2%耐力を110MPa以
上に制御することができない。この結果、低温人工時効
処理時の時効硬化能が低下して、人工時効処理後の耐力
であるAB耐力で160MPa以上を確保できない。
【0035】一方、Al合金板表面に導入される歪み量が
5%を越えた場合、Al合金板の0.2%耐力を150MPa以下に制
御することができない。この結果、Al合金板の耐力が高
くなりすぎて、フラットヘム加工性を著しく低下させ、
特に前記した厳しい条件でのフラットヘム加工では、フ
ラットヘム部の割れ発生などにより、Al合金板を加工で
きない可能性が高い。
【0036】前記歪みの導入は、ローラーレベラー、ス
トレッチ等でも導入できる。しかし、スキンパス圧延に
より行うのが、所定量の歪みを、均質かつ正確に、また
簡便に、Al合金板表面に導入することができる点で好ま
しい。
【0037】本発明では、また、Al合金板の結晶粒径を
50μm 以下と規定することが好ましい。結晶粒径をこの
範囲に細かく乃至小さくすることによって、フラットヘ
ム加工性やプレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒
径が50μm を越えて粗大化した場合、フラットヘム加工
性やプレス成形性が著しく低下し、ヘム部での割れなど
の不良や、プレス成形時の肌荒れなどの不良が生じ易
い。ここで言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒
の最大径である。この結晶粒径を、Al合金板を0.05〜0.
1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、光学顕
微鏡を用いて観察し、前記L 方向に、ラインインターセ
プト法で測定する。1 測定ライン長さは1mm とし、1 視
野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全
測定ライン長さを1 ×15mmとした。
【0038】次に、本発明Al合金板の化学成分組成の実
施形態につき、以下に説明する。本発明Al合金板の基本
組成は、上記組織の規定や諸特性を確保するために、S
i:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.
001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量比で1 以上としたA
l-Mg-Si系(6000 系)Al 合金とする。そして、上記組織
の規定や諸特性を確保するために、より厳密には、前記
規定各成分以外の残部を、Alおよび不可避的不純物とす
ることが好ましい。なお、本発明での化学成分組成の%
表示は、前記請求項の% 表示も含めて、全て質量% の意
味である。
【0039】なお、上記合金元素以外の、Cr、Zr、Ti、
B 、Fe、Zn、Ni、V など、その他の合金元素は、基本的
には不純物元素である。しかし、リサイクルの観点か
ら、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系
合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金など
を溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製す
る場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれるこ
ととなる。したがって、本発明では、目的とする本発明
効果を阻害しない範囲で、これら他の合金元素が含有さ
れることを許容する。
【0040】各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量
について以下に説明する。 Si:0.4〜1.3%。 Siは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温短
時間での人工時効処理時に、MgとともにGPゾーンなどの
化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとし
て、例えば160MPa以上の必要強度を得るための必須の元
素である。したがって、本発明過剰Si型6000系Al合金板
にあって、プレス成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼
備させるための最重要元素である。
【0041】また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付
け処理後(2% ストレッチ付与後160℃×20分の低温時効
処理時) の耐力を160MPa以上という、優れた低温時効硬
化能を発揮させるためにも、Si/Mg を質量比で1 以上と
し、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合
金組成とする。
【0042】Si量が0.4%未満では、前記時効硬化能、更
には、各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性
などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが1.
3%を越えて含有されると、特にヘム加工性や曲げ加工性
が著しく阻害される。更に、溶接性を著しく阻害する。
したがって、Siは0.4 〜1.3%の範囲とする。なお、アウ
タパネルでは、ヘム加工性が特に重視されるため、プレ
ス成形性などの他の特性を低下させずに、フラットヘム
加工性をより向上させるために、Si含有量を0.6 〜1.2%
の範囲とすることが好ましい。
【0043】Mg:0.4〜1.2%。 Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時
効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成
して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、160MPa以上
の必要強度を得るための必須の元素である。
【0044】Mgの0.4%未満 (質量% 、以下同じ) の含有
では、絶対量が不足するため、前記低温の人工時効処理
時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮でき
ない。このためパネルとして必要な160MPa以上の必要強
度が得られない。
【0045】一方、Mgが1.2%を越えて含有されると、プ
レス成形性や曲げ加工性 (ヘム加工性) 等の成形性が著
しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.4 〜1.
2%の範囲で、かつSi/Mg が質量比で1 以上となるような
量とする。
【0046】Cu:0.001〜1.0% Cuは、本発明の比較的低温短時間の人工時効処理の条件
で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促
進させる効果がある。また、時効処理状態で固溶したCu
は成形性を向上させる効果もある。Cu含有量が0.001%未
満ではこの効果がない。一方、1.0%を越えると、耐応力
腐食割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また
溶接性を著しく劣化させる。このため、耐食性が重視さ
れる構造材用途などの場合には0.8%以下、自動車外板用
などのパネル用途などの場合には、耐糸さび性の発現が
顕著となる0.1%以下の量とすることが好ましい。
【0047】Mn:0.01 〜0.65% Mnには、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成
し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる
効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果
がある。前記した通り、本発明Al合金板のプレス成形性
やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細なほど向上す
る。この点、Mn含有量が0.01% 未満ではこれらの効果が
無い。
【0048】一方、Mn含有量が多くなった場合、溶解、
鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合
物や晶析出物を生成しやすく、破壊の起点となり易いた
め、Al合金板の機械的性質を低下させる原因となる。ま
た、特に、前記複雑形状や薄肉化、あるいはインナパネ
ル端部とアウタパネル縁曲部内面との間の隙間の存在な
どによって、加工条件が厳しくなったフラットヘム加工
では、Mn含有量が0.25% を越えた場合ヘム加工性が低下
する。このため、Mnは0.01〜0.65% の範囲とし、加工条
件が厳しくなったフラットヘム加工では、より好ましく
は0.01〜0.25%の範囲とする。
【0049】Cr 、Zr。 これらCr、Zrの遷移元素には、Mnと同様、均質化熱処理
時に分散粒子 (分散相) を生成し、微細な結晶粒を得る
ことができる効果がある。しかし、Cr、Zrも、0.15% を
越える含有では、前記加工条件が厳しくなったフラット
ヘム加工ではヘム加工性が低下する。したがって、Cr、
Zrの含有量も0.15% 以下に規制することが好ましい。
【0050】Ti 、B 。 Ti、B は、Ti:0.1% 、B:300ppmを各々越えて含有する
と、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但
し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化
し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがっ
て、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容す
る。
【0051】Fe。 溶解原料から混入して、不純物として含まれるFeは、Al
7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を
生成する。再結晶粒の核となり、Feが0.08% 以上含まれ
た場合に、結晶粒の粗大化を阻止して、結晶粒を50μm
以下の微細粒とする役割を果たす。一方、これらの晶出
物は、破壊靱性および疲労特性、更には、前記加工条件
が厳しくなったフラットヘム加工性などの成形性を著し
く劣化させる。特に、Feの含有量が0.50% を越えると顕
著にこれらの特性が劣化するため、好ましくは、Feの含
有量 (許容量) を0.50% 以下の量とし、含有させる場合
のFeの含有量は、0.08〜0.50% とすることが好ましい。
【0052】Zn。 Znは0.1%を越えて含有されると、耐蝕性が顕著に低下す
る。したがって、Znの含有量は好ましくは0.1%以下ので
きるだけ少ない量とすることが好ましい。
【0053】本発明Al合金板が対象とするフラットヘム
加工は、前記した、ダウンフランジ工程、プリヘム工
程、フラットヘム工程により行われるフラットヘム加工
を対象とする。但し、最終的にフラットヘムが形成され
るものであれば、ローラーヘムなど、工程や工程条件が
異なるものもフラットヘム加工として対象とするし、適
用可能である。
【0054】なお、フラットヘム加工が、本発明Al合金
板の4 周囲に対して全て行われるか、選択される辺 (側
縁部) のみに対して行われかは、アウタパネルなどの部
材設計に応じて、適宜選択される。但し、フラットヘム
加工は、前記したより厳しい条件、例えば、加工される
アウタパネルの端部形状が、直線的な単純形状だけでは
なく、円弧形状やあるいは角部を有するような複雑形状
化したものにも適用可能である。
【0055】また、前記アウタパネルの縁曲げ部に挿入
される前記インナパネル端部と前記縁曲げ部の内面との
間に隙間がある状態でフラットヘム加工されるような厳
しい条件にも適用可能である。また、アウタパネルのヘ
ム部 (縁曲部) に挿入されるインナパネルが1.0mm 以下
の、例えば0.5mm 程度の板厚に薄肉化された厳しい条件
のフラットヘム加工にも適用可能である。
【0056】また、フラットヘム加工されるAl合金板の
耐力は110 〜150MPaの範囲とすることが好ましい。耐力
が140MPaを越えた場合、前記厳しいフラットヘム加工条
件では、ヘム加工性が低下する。一方、フラットヘム加
工されるAl合金板の耐力が110 MPa 未満では、前記低温
での時効硬化能が得られず、2%ストレッチ付与後160℃
×20分の低温時効処理時の耐力が160MPa以上とならな
い。この結果、パネルとしての必要強度を満たせない可
能性がある。
【0057】(製造方法)以上の本発明Al合金板の製造方
法について述べる。本発明Al合金板の製造は、溶体化処
理、溶体化および焼き入れ処理後の歪み付与などを除
き、その他の工程条件は常法で可である。ただ、アウタ
パネルなどとしての、フラットヘム加工性や他の特性を
向上させるための好ましい製造条件もあり、以下に説明
する。
【0058】先ず、溶解、鋳造工程では、本発明成分規
格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯を、連続鋳
造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳
造法を適宜選択して鋳造する。
【0059】次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理を
施した後、熱間圧延- 冷間圧延 (必要により、熱延- 冷
延の間、冷延の間にバッチ式あるいは連続式の中間焼鈍
なども施しながら) を行い、コイル状、板状などの板形
状に加工する。
【0060】加工後のAl合金板は、調質処理として、先
ず、必須に溶体化および焼入れ処理(T4 処理) される。
溶体化および焼入れ処理は、後の塗装焼き付け硬化処理
などの人工時効処理により化合物相を十分粒内に析出さ
せるために重要な工程である。本発明では、前記厳しい
フラットヘム加工条件でのフラットヘム加工性を特に重
視するので、前記化合物相を析出させ、前記歪みの付与
の効果と相乗してヘム加工性を向上させるために、溶体
化処理温度は比較的低温の500 〜540 ℃の範囲とする。
【0061】溶体化処理後の焼入れの際、冷却速度は50
℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50
℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くな
り、時効硬化能が不足し、後の塗装焼き付け硬化処理な
どの人工時効処理により、160MPa以上の高耐力を確保で
きない。
【0062】また、粒界上にSi、MgSiなどが析出しやす
くなり、プレス成形やフラットヘム加工時の割れの起点
となり易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を
確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でも
よいが、冷却速度が遅くなる可能性が大きく、ミスト、
スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して行うことが好
ましい。
【0063】溶体化焼入れ処理後、室温時効抑制の原因
となるクラスターの生成を抑制し、GPゾーンの析出を促
進するために、予備時効処理をすることが好ましい。即
ち、50〜100 ℃、好ましくは60〜90℃の温度範囲に、1
〜24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予
備時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが
好ましい。
【0064】この予備時効処理として、溶体化処理後の
焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした後に、直ちに再
加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理
後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに50〜100 ℃に再
加熱して行う。
【0065】また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、
前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのま
まの高温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイ
ルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温して
も良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度
範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
【0066】本発明では、これら溶体化および焼き入れ
処理後、あるいは更に時効処理や回復処理が施された後
に、Al合金板表面に、0.5 〜5%の量の歪みを、前記した
通り導入する。
【0067】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
す、本発明組成範囲および本発明組成範囲から外れた各
成分組成のAl合金板について、溶体化処理温度と、Al合
金板表面への導入歪み量を変えた、厚さ1.0mm のAl合金
薄板を作成した。
【0068】前記溶体化処理温度と板表面への歪み導入
以外の、Al合金板の作製は、ほぼ同じ条件で行った。即
ち、表1 に示す各組成範囲の50mm厚の鋳塊を、DC鋳造法
により溶製後、540 ℃×4 時間の均質化熱処理を施し、
終了温度300 ℃で厚さ3.5 mmt まで熱間圧延した。この
熱間圧延板を、更に厚さ1.0mmtまで冷間圧延した。
【0069】これら冷延板を以下の条件で調質処理し
た。先ず、各試験片サイズに切断後、硝石炉で450 〜53
0 ℃の各温度で45秒間の溶体化処理後、70℃まで水冷す
る (焼入れ停止温度が70℃) 焼入れ処理を行った。前記
焼入れ処理の際の冷却速度は600 ℃/ 分とし、焼入れ終
了温度 (焼入れ温度) は共通して70℃とし、焼入れ後に
この温度で2 時間保持する予備時効処理 (保持後の冷却
速度1 ℃/hr 以下) を行った。
【0070】これらのAl合金板に対し、スキンパス圧延
により、Al合金板表面に所定量の歪みを導入した。これ
らの条件を表2 に示す。なお、比較の為に、歪みを導入
しないAl合金板も準備した (表2 の比較例15) 。
【0071】これらのAl合金板から試験用の幅50mm×長
さ200mm の供試板 (ブランク) を複数枚切り出し、Al合
金板の室温時効を考慮して、前記調質処理後 2カ月間
(60日間) の室温時効後の、各供試板の、引張強さ (σ
B ) 、耐力 (σ0.2)、伸び、結晶粒径を測定した。これ
らの結果を表2 に示す。
【0072】更に、低温時効処理能を調査するため、前
記調質処理後 2カ月間室温時効後の供試板を、2%の歪み
(ストレッチ) を予め与えて160 ℃×20分の低温人工時
効硬化処理し、各供試板の耐力 (σ0.2)を測定した。こ
れらの結果も表2 に示す。
【0073】なお、引張試験はJIS Z 2201にしたがって
行うとともに、試験片形状はJIS 5号試験片で行い、試
験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。ま
た、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するま
で一定の速度で行った。
【0074】また、前記室温時効したAl合金板を自動車
パネルとしてプレス成形やヘム加工されることを模擬し
て、前記室温時効後の供試板を成形試験した。より具体
的には、張出成形試験、張出成形後のフラットヘム加工
試験を行い、成形性を評価した。
【0075】先ず、張出成形試験の条件は、前記室温時
効後のAl合金板から一辺が450mm の正方形の供試板 (ブ
ランク) を複数枚切り出し、これらのブランクを自動車
のアウタパネルに使用することを模擬して、中央部に幅
300mm ×長さ300mm ×高さ20mmの角筒状の張出部と、こ
の張出部の四周囲に平坦なフランジ部を有する幅400mm
×長さ400mm のハット型のパネルに、メカプレスによ
り、ビード付き金型を用いて張出成形した。
【0076】張出成形試験は、しわ押さえ力は49kN、潤
滑油は一般防錆油、成形速度は20mm/ 分の同じ条件で3
回行い、3 回とも成形ハット型パネルの張出部角部など
に割れがなく正常に成形できた例を〇、3 回とも全て割
れが生じて成形できなかったものを×として評価した。
【0077】このハット型のパネルの耐デント性を評価
した。試験方法は、前記パネルの角筒状張出部の中央部
に対し、先端のR が50mmΦの球頭ポンチにて、245Nの荷
重を加えた際の、荷重点の凹み量を測定した。そして、
凹み量が0.2mm 未満のものを〇、0.2 〜0.3mm の範囲の
ものを△、凹み量が0.3mm を越えるものを×として評価
した。これらの結果も表2 に示す。
【0078】次に、フラットヘム加工試験は以下の通り
とした。前記プレス成形されたAl合金パネルを、アウタ
ーパネルとしてヘム加工されることを模擬して、パネル
の前記平坦なフランジ部の内、圧延方向と平行なフラン
ジ部の端部全面 (幅400mm)を以下の条件でフラットヘム
加工した。
【0079】まず、Al合金パネルのフラットヘム加工代
(ヘム加工後のパネルの内側に折り曲げられた端部から
折り曲げ部の端部までの距離) を12mmとして、ダウンフ
ランジ工程を模擬し、Al合金パネルの縁を90度の角度と
なるまで折り曲げた。この際、Al合金パネルの90°曲げ
半径は0.8 とした。次に、プリヘム工程模擬して、Al合
金パネルの縁を更に135 °の角度まで内側に折り曲げ
た。
【0080】その後、厳しいフラットヘム加工条件を模
擬し、敢えてインナパネルを前記Al合金パネルの折り曲
げ部に挿入せず、折り曲げ部を内側に180 度折り曲げ、
パネル面に密着させるフラットヘム加工を行った。な
お、フラットヘム加工方向は、元のAl合金板の圧延方向
と一致するようにした。
【0081】そして、このフラットヘムの縁曲部の、肌
荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を
目視観察した。評価は、1;肌荒れや微小な割れも無く良
好、2;肌荒れが発生しているものの、微小なものを含め
た割れはない、3;微小な割れが発生、4;大きな割れが発
生、5;大きな割れが複数乃至多数発生、の5 段階の評価
をした。この評価として、ヘム加工性が良好 (使用可)
と判断されるのは1 〜2 段階までで、3 段階以上はヘム
加工性が劣る (使用不可) と判断される。これらの結果
を表2 に示す。
【0082】表1 〜2 から明らかな通り、本発明合金組
成範囲内であって、かつ溶体化および焼き入れ処理後
に、Al合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みを導入するとと
もに、室温時効後の0.2%耐力を前記110 〜150MPaの範囲
に制御した発明例1 〜10は、低温人工時効処理時であっ
ても、AB耐力で160MPa以上を確保でき、しかも前記した
厳しい条件でのフラットヘム加工性や耐デント性を向上
させることができる。したがって、特に、アウタパネル
として必要な特性に優れていることが分かる。
【0083】ただ、発明例の中でも、溶体化処理温度が
500 ℃と比較的低い発明例6 は、低温人工時効処理時の
AB耐力や耐デント性が、他の条件が同じである発明例2
に比して劣っている。また、溶体化処理温度が530 ℃と
比較的高い発明例7 は、前記厳しい条件でのフラットヘ
ム加工性が、他の条件が同じである発明例2 に比して劣
っている。
【0084】そして、歪み導入量が比較的低い発明例8
は、低温人工時効処理時のAB耐力や耐デント性が、他の
条件が同じである発明例2 に比して劣る。また、歪み導
入量が比較的高い発明例9 は、前記厳しい条件でのフラ
ットヘム加工性が、他の条件が同じである発明例2 に比
して劣る。
【0085】一方、本発明範囲から外れる表1 の比較例
6 、7 、8 合金を用いた、表2 の比較例10〜12は、溶体
化および焼き入れ処理後に、Al合金板表面に0.5 〜5%の
量の歪みを導入し、室温時効後の0.2%耐力を前記110 〜
150MPaの範囲に制御しているにもかかわらず、低温人工
時効処理時のAB耐力、耐デント性、あるいはフラットヘ
ム加工性などの諸特性のいずれかが、発明例に比して著
しく劣る。
【0086】即ち、Siが高めに本発明範囲から外れる表
1 の比較例6 合金を用いた、比較例10は、前記厳しい条
件でのフラットヘム加工性が、発明例に比して著しく低
い。Siが低めに本発明範囲から外れた表1 の比較例7 合
金を用いた比較例11は、低温人工時効硬化処理で、AB耐
力が160MPa未満であり、耐デント性も低い。Si/Mg が低
めに本発明範囲から外れた表1 の比較例8 合金を用いた
比較例12は、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性
が、発明例に比して著しく低い。
【0087】また、本発明合金組成範囲内であっても、
溶体化処理温度が低過ぎる比較例13は、低温人工時効処
理時のAB耐力や耐デント性が、他の条件が同じである発
明例2 に比して著しく劣る。溶体化処理温度が高過ぎる
比較例14は、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性
が、他の条件が同じである発明例2 に比して著しく劣
る。
【0088】そして、歪みを導入していない (歪み導入
量が0 の) 比較例15は、低温人工時効処理時のAB耐力や
耐デント性が、他の条件が同じである発明例2 に比して
著しく劣る。更に、歪み導入量が上限を越えた比較例16
は、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性が、他の条
件が同じである発明例2 に比して著しく劣る。
【0089】以上の結果から、低温人工時効硬化能や良
好なフラットヘム加工性などの諸特性を兼備するため
の、化学成分組成範囲、Al合金板表面への導入歪み量な
どの、本発明要件の臨界的な意義が分かる。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【発明の効果】本発明によれば、フラットヘム加工に優
れるとともに、低温人工時効硬化処理によっても、AB耐
力や耐デント性などの他の要求特性を兼備したAl-Mg-Si
系Al合金板とその製造方法を提供することができる。し
たがって、Al合金板のパネル用途への拡大を図ることが
できる点で、多大な工業的な価値を有するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 623 C22F 1/00 623 630 630A 630K 631 631Z 683 683 685 685Z 686 686Z

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01
    〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量比
    で1 以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金板であっ
    て、アルミニウム合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みが導
    入されているとともに、室温時効後の0.2%耐力が110 〜
    150MPaの範囲とされており、かつ2%ストレッチ付与後16
    0 ℃×20分の人工時効処理後の0.2%耐力が160MPa以上で
    あることを特徴とするフラットヘム加工性に優れたアル
    ミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金板において、前記
    各成分以外の残部がAlおよび不可避的不純物である請求
    項1に記載のフラットヘム加工性に優れたアルミニウム
    合金板。
  3. 【請求項3】 前記Si含有量を0.6 〜1.2%とした請求項
    1または2に記載のフラットヘム加工性に優れたアルミ
    ニウム合金板。
  4. 【請求項4】 前記Cu含有量を0.1%以下に規制した請求
    項1乃至3のいずれか1項に記載のフラットヘム加工性
    に優れたアルミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金板の板厚が1.0mm
    以下であり、アウタパネルとして、板厚が1.0mm 以下の
    インナパネルアルミニウム合金板に対し、フラットヘム
    加工される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフラ
    ットヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
  6. 【請求項6】 前記アルミニウム合金板が自動車外板用
    である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフラット
    ヘム加工性に優れたアルミニウム合金板。
  7. 【請求項7】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01
    〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が質量比
    で1 以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金板を、500
    〜540 ℃の温度で溶体化および焼き入れ処理した後、ア
    ルミニウム合金板表面に0.5 〜5%の量の歪みを導入し
    て、室温時効後の0.2%耐力を110 〜150MPaの範囲とし、
    かつ2%ストレッチ付与後160 ℃×20分の人工時効処理後
    の0.2%耐力が160MPa以上であるようになしたことを特徴
    とするフラットヘム加工性に優れたアルミニウム合金板
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記歪みの導入をスキンパス圧延により
    行う請求項7に記載のフラットヘム加工性に優れたアル
    ミニウム合金板の製造方法。
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