JP4238019B2 - フラットヘム加工用アルミニウム合金パネル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットヘム加工用アルミニウム合金パネル(以下、アルミニウムを単にAlと言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れたAl-Mg 系のAA乃至JIS 規格に規定された (規格を満足する)5000 系や、成形性や焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言う) のAl合金材(圧延板材、押出形材、鍛造材などの各アルミニウム合金展伸材を総称する)が使用されている。
【0003】
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、より軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
【0004】
このAl合金材の中でも、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、薄肉でかつ高強度Al合金板として、過剰Si型の6000系のAl合金板の使用が検討されている。
【0005】
この過剰Si型の6000系Al合金は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、かつSi/Mg が1 以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金である。そして、この過剰Si型6000系Al合金は優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後の焼付塗装処理などの人工時効処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できる利点がある。
【0006】
また、これら過剰Si型6000系Al合金材は、Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
【0007】
一方、前記自動車などのアウタパネルでは、Al合金板を張出や絞りあるいはトリム等のプレス成形してアウタパネル化した後、アウタパネルの縁を折り曲げて (180 度折り返して) インナパネルの縁との接合を行う、フラットヘミング (フラットヘム) 加工と呼ばれる厳しい曲げ成形が施される。
【0008】
前記アウタパネルのヘム加工は、アウタパネルの縁をポンチなどの工具により90°に近い角度まで折り曲げるダウンフランジ工程、アウタパネルの縁を更に約135 °まで内側に折り曲げるプリヘム工程を経て、フラットヘム工程やロープヘム工程により行われる。
【0009】
このフラットヘム工程では、図1 に示すように、インナパネル2 端部をアウタパネル1 の折り曲げ部A 内に収容 (挿入) し、アウタパネル1 の縁1cを工具により更に180 °の角度まで内側に折り曲げてヘムを形成する。この内、フラットヘムでは、インナパネル2 の縁と、アウタパネル1 のフラットヘム部(180 度折り曲げ部)Aとが接触して、両者が端部同士において接合されるとともに密着され、フラットな曲げ部形状を有する。このように、フラットヘムでは、インナパネルの縁と、アウタパネルのフラットヘム部(180 度折り曲げ部) とが接触して、両者が端部同士において接合されるとともに密着される。
【0010】
ただ、Al合金アウタパネルのフラットヘム加工においては、従来の鋼板パネルのフラットヘム加工に比して、形成されるフラットヘムの縁曲部 (ヘム部、折り曲げ部) A には、図1 に程度順に例示すような、肌荒れX 、微小な割れY 、比較的大きな割れZ 等の不良が生じ易くなる。そして、これらの不良が生じた場合、アウタパネルとしての適用ができなくなる。
【0011】
このようなAl合金アウタパネルのフラットヘム加工に対し、従来から、フラットヘム加工工程側や、Al合金板の素材側で、前記縁曲部の不良発生を防止して、フラットヘム加工性を改善する技術も種々提案されている。
【0012】
フラットヘム加工工程側からは、186MPa程度の高強度なAl合金アウタパネルのフラットヘム加工において、前記図2(a)のダウンフランジ工程において、アウタパネルに形成されるフランジコーナー部の曲げ半径Rd (ダイスの肩半径) を0.8t〜1.8t (但しt はAl合金板の板厚) と大きくして、前記不良の発生を防止することが提案されている(特許文献1参照) 。また、ローラーヘムなどの加工方法自体の改良も提案されている。
【0013】
【特許文献1】
特公昭63-2690 号公報
【0014】
一方、素材側からは、パネル用Al合金板の粒界析出物を規制したり、パネル用Al合金板の耐力自体を下げて、フラットヘム加工性を改善することが行われている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、フラットヘム加工条件は、近年益々難しくなる傾向にある。その理由は、先ず、アウタパネルのフラットヘム加工される部分の形状 (デザイン) の複雑化である。フラットヘム加工されるアウタパネルの端部形状 (縁曲部輪郭形状) が図2 に示すような、直線的な単純形状A ではなく、円弧形状B や、あるいは角部C を有するような、複雑形状となった場合、前記不良がより発生しやすくなる。
【0016】
次に、前記アウタパネルとインナパネル用のAl合金板は、パネルの軽量化のために、1.0mm 以下の板厚に近年益々薄肉化されていることが理由に上げられる。例えば、アウタパネル用のAl合金板は1.0mm 以下の、0.8 〜0.9mm の板厚などが主流である。また、インナパネル用のAl合金板も1.0mm 以下の、0.5 〜0.8mm の板厚などが主流である。これら薄肉化されたAl合金板では、特にアウタパネルの縁曲部に挿入されるインナパネルの板厚が薄くなるほど、曲げ条件としては厳しくなり、フラットヘム加工が難しくなる傾向にある。そして、前記した薄肉化されたAl合金板では、この傾向が顕著となる。
【0017】
このような厳しいフラットヘム加工に対し、前記したフラットヘム加工工程側やパネル用のAl合金板の素材側での従来の改善技術では、必ずしも対応しきれない場合が生じる。例えば、前記Al合金板の耐力自体を下げてフラットヘム加工性を改善した場合、プレス成形性が低下したり、過剰Si型6000系Al合金板であっても、板成形後のパネル塗装焼付工程などを用いた170 ℃×20分での低温短時間の人工時効硬化処理後の耐力が不足して、耐デント性が不足するなどの問題を生じる。
【0018】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、フラットヘム加工性に優れたAl合金パネルを提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明フラットヘム加工用Al合金パネルの要旨は、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金パネルであって、アルミニウム合金パネル表面における{200 }面の積分強度の割合が70% 以上であるとともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 以上であるパネルとする。
【0020】
なお、本発明で言うAl合金パネルとは、成形素材であるAl合金板をプレス成形したパネルであって、フラットヘム加工される前のパネルを言う。
【0021】
本発明者らは、フラットヘム加工性と6000系Al合金パネルの組織との関係について、改めて検討した。この結果、6000系Al合金板の結晶粒のキューブ方位 ({200 }面の積分強度の割合、および{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合) とフラットヘム加工性とが密接に相関することを知見した。即ち、キューブ方位を有する結晶粒の割合が多いほど、フラットヘム加工性が改善される。一方、キューブ方位を有する結晶粒の割合が小さいほど、フラットヘム加工性が低下する。
【0022】
前記Al合金板表面の結晶粒のキューブ方位は、フラットヘム加工前のプレス成形の条件によっては、プレス成形の前後で多少変化する可能性がある。このため本発明では、前記プレス成形条件によらず、フラットヘム加工性を改善するために、前記結晶粒のキューブ方位の特定を、フラットヘム加工される前であって、成形素材Al合金板をプレス成形した後の、Al合金パネルによって特定する。
【0023】
なお、Mg量が多い5000系Al合金板において、プレス成形の際の曲げ加工性を向上させるために、{100 }面と{110 }面との積分強度比を1 以上とする技術が特開平10-8176 号公報などに開示されている。この5000系Al合金板の場合は、本発明とは目的が近似するものの、極限変形能を高めるために、{100 }面と{110 }面との積分強度比を1 以上としている。しかし、本発明が対象とする6000系Al合金板においては、前記{100 }面と{110 }面との積分強度比を1 以上としてもフラットヘム加工性は改善できない。この理由は、6000系Al合金板の方が5000系Al合金板よりもフラットヘム加工性やプレス成形性が劣り、しかも本発明で意図するフラットヘム加工条件は、上記公報で意図するプレス成形の際の曲げ加工などよりも、より厳しい加工条件であるためである。
【0024】
ここにおいて、後述するごとく、常法で得られる通常の6000系Al合金板組織やこの6000系Al合金板がプレス成形されたAl合金パネル組織は、キューブ方位を有する結晶粒の割合が小さい。言い換えると、本発明のような、キューブ方位を有する結晶粒が特定量存在するAl合金パネル組織を得るためには、後に詳述するAl合金板の製造方法のように、特別な工程の付加や工程条件が必要である。
【0025】
本発明では、Al合金パネルのフラットヘム加工性をより確実に向上させるために、上記積分強度による結晶集合組織規定に加えて、キューブ方位の測定精度がより正確な、結晶方位分布関数(ODF、Orienntation Distribution Function) 解析によるキューブ方位分布密度を更に規定し、アルミニウム合金パネルの、表面から板厚の1/4 深さ部分における、ODF 解析によるキューブ方位分布密度を40以上とすることが好ましい。
【0026】
本発明パネルは、フラットヘム加工性が優れるために、Al合金パネルの板厚が0.8mm 以上であり、板厚が1.0mm 以下のAl合金インナパネルに対してフラットヘム加工されるような厳しい条件のアウタパネルに対して適用されるのが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明Al合金パネルの組織の要件につき、以下に説明する。
前記した通り、キューブ方位を有する結晶粒の割合が多いほど、フラットヘム加工性が改善される。このため、本発明では、Al合金パネル結晶粒のキューブ方位につき、Al合金パネル表面における{200 }面のX 線回折による積分強度の割合を70% 以上とするとともに{200 }面と{400 }面とのX 線回折による合計積分強度の割合を80% 以上とする。この積分強度の割合が各々70% と80% 未満では、特に前記した厳しい条件でのフラットヘム加工ではAl合金パネルの加工性が著しく低下する。
【0028】
また、プレス成形性などの他の特性を低下させずに、フラットヘム加工性をより向上させるために、好ましくは、Al合金パネル表面における{200 }面の積分強度の割合を70〜90% の範囲、{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 〜100%の範囲、と特定する。
【0029】
本発明において、Al合金パネルの結晶粒のキューブ方位発達の程度の測定は、例えば、株式会社リガクのX 線回折装置 (型式、リガクRAD-RCなど) を用い、Al合金パネルの表面を前処理無しでそのまま計測する。標準サンプルとしては無配向性のAl試料を用い、この標準サンプルに対する、{111 }面、{200 }面、{220 }面、{311 }面、{222 }面、{400 }面、{331 }面、{420 }面、{422 }面、の各面の積分強度の総和A を求める。そして、このA に対する前記{200 }面の積分強度I1の比率(%) 、{200 }面と{400 }面との合計の積分強度I2の比率(%) 、を各々の積分強度の割合(%) とする。
【0030】
なお、本発明では、Al合金パネルのフラットヘム加工性をより確実に向上させるために、結晶集合組織の測定精度がより正確な、結晶方位分布関数解析( 以下ODF 解析と言う) によるキューブ方位分布密度を更に規定することが好ましい。したがって、本発明では、上記積分強度による結晶集合組織規定に加えて、アルミニウム合金パネルの、表面から板厚の1/4 深さ部分における、ODF 解析によるキューブ方位分布密度を40以上とすることが好ましく、50以上の更に高い値とすることがより好ましい。
【0031】
前記積分強度によるキューブ(Cube)方位の測定では、割合計算のため、例えば80% 以上の高い積分強度割合のところでは、各試料間の差が非常に小さくなる傾向がある。また、面内(100面) の回転方位を分離できないため、純粋なキューブ方位だけを抽出できない傾向もある。これに対し、ODF 解析によるキューブ方位分布密度は、キューブ方位をランダム方位 (標準粉末試料) からの比 (無次元) で表すため、広い範囲を定量的に表現できる。このため、上記積分強度によるキューブ方位測定のような傾向が無く、より正確にキューブ方位分布を測定できる。
【0032】
このAl合金パネル表面から板厚の1/4 深さ部分における、ODF 解析によるキューブ方位分布密度の測定は、例えば、株式会社リガクのX 線回折装置 [型式「リガクRAD-rX 」(Ru-200B) ] を用い、Al合金パネルの表面から板厚の1/4 の深さ部分まで研削して、この部分を計測することで行なう。上記X 線回折装置は不完全極点図によるODF 解析が可能である。即ち、schluzの反射法により、{100 }面、{111 }面の不完全極点図を作成し、Bunge の反復級数展開法(positivity 法) を適用してODF 解析を実施し、キューブ方位分布密度を求めることができる。
【0033】
なお、フラットヘム加工でのパネルの曲げ方向とキューブ方位 (配行方向) との関係について、パネルのキューブ方位がパネルの曲げ方向と平行になるように (パネルの曲げ加工方向を素材板の圧延方向と平行あるいは直角にして) 曲げ加工した場合に、良好なフラットヘム加工性は得られる。パネルのキューブ方位は90度回転しても同一の構造であるため、0 度、90度の区別が無い。このため、パネルの曲げ加工方向を素材板の圧延方向と平行あるいは直角としても、キューブ方位は同じ構造となり、良好なフラットヘム加工性が得られる。ただ、素材板の圧延方向がパネルの曲げ方向と45度の方向になるなど、上記二つの方向以外のパネルの曲げ方向とパネルのキューブ方位 (配行方向) との関係では、フラットヘム加工性が劣る可能性があり、フラットヘム加工におけるパネルの曲げ方向は、上記二つの方向とすることが好ましい。
【0034】
次に、本発明Al合金パネルの化学成分組成の実施形態につき、以下に説明する。本発明Al合金パネルの基本組成は、上記組織の規定やパネルとしての諸特性を確保するために、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金パネルとする。なお、本発明での化学成分組成の% 表示は、前記請求項の% 表示も含めて、全て質量% の意味である。
【0035】
なお、上記合金元素以外の、Cr、Zr、Ti、B 、Fe、Zn、Ni、V など、その他の合金元素は、基本的には不純物元素である。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製する場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする本発明効果を阻害しない範囲で、これら他の合金元素が含有されることを許容する。
【0036】
各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.4〜1.3%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの170 ℃×20分の低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、人工時効硬化能を発揮し、自動車のアウタパネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。このパネルの塗装焼き付け処理後の耐力を170MPa以上にするためにも、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好ましい。
【0037】
Si量が0.4%未満では、前記時効硬化能やプレス成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが1.3%を越えて含有されると、特にヘム加工性が著しく阻害される。更に、溶接性を著しく阻害する。したがって、Siは0.4 〜1.3%の範囲とするのが好ましい。なお、ヘム加工性が特に重視されるアウタパネルでは、フラットヘム加工性をより向上させるために、Si含有量を0.6 〜1.0%と、より低めの範囲とすることが好ましい。
【0038】
Mg:0.2〜1.2%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、前記パネルとしての必要強度を得るための必須の元素である。
【0039】
Mgの0.2%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このため前記パネルとして必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
【0040】
一方、Mgが1.2%を越えて含有されると、プレス成形性やヘム加工性等の成形性が著しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.2 〜1.2%の範囲で、かつSi/Mg が質量比で1.0 以上となるような量とする。
【0041】
Cu:0.1% 以下
Cuは、本発明の比較的低温短時間の人工時効処理の条件で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促進させる効果がある。また、時効処理状態で固溶したCuは成形性を向上させる効果もある。しかし、Cu含有量が0.1%を越えると自動車のアウタパネルの、塗装後の耐蝕性の内の特に耐糸さび性や、また溶接性を著しく劣化させる。このため、Cu含有量は耐糸さび性の発現が顕著となる0.1%以下の量に規制する。
【0042】
Mn:0.01 〜0.65%
Mnには、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。前記した通り、本発明Al合金パネルのプレス成形性やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細なほど向上する。この点、Mn含有量が0.01% 未満ではこれらの効果が無い。
【0043】
一方、Mn含有量が多くなった場合、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金パネルの機械的性質を低下させる原因となる。また、特に、前記複雑形状や薄肉化などによって、加工条件が厳しくなったフラットヘム加工では、Mn含有量が0.15% を越えた場合、ヘム加工性が低下する。このため、Mnは0.01〜0.65% の範囲とし、加工条件が厳しくなったフラットヘム加工では、より好ましくは0.01〜0.15% の範囲とする。
【0044】
Cr 、Zr。
これらCr、Zrの遷移元素には、Mnと同様、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。しかし、Cr、Zrも、各々0.15% を越える含有では、前記加工条件が厳しくなったフラットヘム加工ではヘム加工性が低下する。したがって、Cr、Zrの含有量も各々0.15% 以下に規制することが好ましい。
【0045】
Ti 、B 。
Ti、B は、Ti:0.1% 、B:300ppmを各々越えて含有すると、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがって、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容する。
【0046】
Fe。
溶解原料から混入して、不純物として含まれるFeは、Al7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を生成する。これらの晶出物は、Feが0.10% 以上含まれた場合に、再結晶粒の核となり、結晶粒の粗大化を阻止して、結晶粒を50μm 以下の微細粒とする役割を果たす。しかし、一方で、これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性、更には、前記加工条件が厳しくなったフラットヘム加工性およびプレス成形性を著しく劣化させる。これらの劣化特性は、Feの含有量が0.50% を越えると顕著になるため、Feの含有量 (許容量) は、0.10〜0.50% とすることが好ましい。
【0047】
Zn。
Znは0.5%を越えて含有されると、耐蝕性が顕著に低下する。したがって、Znの含有量は好ましくは0.5%以下のできるだけ少ない量とすることが好ましい。
【0048】
本発明Al合金パネルが対象とするフラットヘム加工は、通常の工程によるフラットヘム加工を対象とする。即ち、前記した、ダウンフランジ工程、プリヘム工程、フラットヘム工程により行われるフラットヘム加工を対象とする。但し、最終的にフラットヘムが形成されるものであれば、ローラーヘムなど、工程や工程条件が異なるものもフラットヘム加工として対象とするし、適用可能である。
【0049】
本発明Al合金パネルは、前記した通り、アウタパネルとして、板厚が0.8mm 以上のものが好ましく、板厚が1.0mm 以下のインナパネルAl合金パネルに対して加工されるようなフラットヘム加工に適用されて好ましい。Al合金パネルのアウタパネルとしての板厚がこれより薄く、Al合金インナパネルの板厚がこれより厚いものでは、フラットヘム加工することは比較的容易となる。
【0050】
なお、フラットヘム加工が、本発明Al合金パネルの4 周囲に対して全て行われるか、選択される辺 (側縁部) のみに対して行われかは、アウタパネルなどの部材設計に応じて、適宜選択される。
【0051】
(製造方法)
以上の本発明Al合金パネルの製造方法について説明する。
前記した通り、キューブ方位を有する結晶粒が多く存在する本発明Al合金パネル組織を得るためには、上記成分組成などの他に、Al合金板の製造において、下記の特別な工程の付加や工程条件が必要である。この点、常法で得られる通常のAl合金板乃至パネルは、キューブ方位を有する結晶粒の割合が小さく、本発明のようなキューブ方位を有する結晶粒が多く存在するAl合金パネル組織は得られない。
【0052】
即ち、キューブ方位を有する結晶粒が著しく多く存在する本発明Al合金パネル組織を得るためには、その前の素材Al合金板の段階でキューブ方位を有する結晶粒が著しく多く存在するAl合金板組織とすることが必須である。即ち、Al合金板自体の製造工程で、前記Al合金板組織とする。具体的には、熱間圧延後のAl合金板を、常法とは異なり、冷間圧延で強圧延して、特定温度で焼鈍した後、更に、冷間圧延で弱圧延して、その後特定温度で焼鈍するなどの特別の工程付加や条件が必要である。
【0053】
先ず、前記冷間圧延での強圧延は、Al合金板の冷間圧延での圧下率を60% 以上と高くすることが必要である。冷間圧延での圧下率をこのように高くすることで冷間圧延板に十分な歪みエネルギーを蓄積できる。この結果、後述する焼鈍でキューブ方位を有する多くの結晶粒を成長させることができる。冷間圧延での圧下率が低いと、後述する焼鈍でキューブ方位を有する結晶粒が成長するに十分な歪みエネルギーが蓄積できなくなる。一方、冷間圧延での圧下率が高くなるほど、耳割れが生じるなど加工自体が困難となるので、圧下率の上限は95% 程度とするのが好ましい。
【0054】
次いで、冷間圧延板は、キューブ方位を有する結晶粒を特定量成長させるために 350 ℃以下、好ましくは200 〜300 ℃の温度で、例えば1 〜50時間焼鈍されることが好ましい。この焼鈍によって、キューブ方位を有する微細な再結晶粒もしくは亜結晶粒が特定量成長し、最終の溶体化処理で、立方体方位が発達し易くなり、プレス成形性とともにヘム加工性が著しく向上する。前記焼鈍温度が200 ℃未満では、この効果がなく、Al合金パネル表面のキューブ方位を有する結晶粒の割合を、Al合金板表面における{200 }面の積分強度の割合を50% 以上とするとともに、{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合を60% 以上とすることができない。この結果、従来のAl合金板結晶粒組織と大差がなくなり、前記厳しい条件での、特にフラットヘムなどのヘム加工性の向上効果がない。
【0055】
一方、焼鈍温度が350 ℃を越えた場合、結晶粒が粗大化しやすく、プレス成形やヘム加工時に肌荒れが生じ易くなり、Al合金板の張出成形や絞り成形などのプレス成形性が著しく低下する。この焼鈍はバッチ炉、連続焼鈍炉を用いて行うことができる。
【0056】
更に、前記焼鈍後の板は冷間圧延で弱圧延される。この時の圧下率は比較的低くすることが必要である。冷間圧延での圧下率をこのように特定することで、キューブ方位を有する結晶粒の回りに十分な歪みエネルギーを蓄積できる。この結果、後述する焼鈍でキューブ方位を有する更に多くの結晶粒を成長させることができる。冷間圧延での圧下率が低いと、後述する焼鈍でキューブ方位を有する結晶粒が成長するに十分な歪みエネルギーが蓄積できなくなる。一方、冷間圧延での圧下率は必要以上に高くする必要がない。必要以上に高くした場合、所望の最終板厚との関係で、熱間圧延や前記強圧延での必要圧下率を高くとれなくなる。
【0057】
弱圧延後の冷間圧延板は、キューブ方位を有する結晶粒を更に多く成長させるために、昇温速度を50℃/hr 以下と遅くした上で、400 〜500 ℃未満の温度で、例えば1 〜30時間焼鈍される。昇温速度が速いと、また、焼鈍温度が400 ℃未満では、歪みエネルギーを回りに蓄積しても、キューブ方位を有する結晶粒が多量に成長できなくなる。この結果、Al合金パネル表面における前記積分強度の割合が規定量に達しない。
【0058】
一方、焼鈍温度が500 ℃以上の場合、キューブ方位を有する結晶粒が再結晶してしまい、結晶方位が成長せず、やはり、前記積分強度の割合が規定量に達しない。
【0059】
その他の工程条件は、基本的には常法で可能であるが、アウタパネルなどとしての他の特性やフラットヘム加工性を向上させるための好ましい条件もあり、以下に説明する。
【0060】
先ず、溶解、鋳造工程では、本発明成分規格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
【0061】
次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理を施した後、熱間圧延し、前記した条件で、冷間圧延や焼鈍などを施し、コイル状、板状などの板形状に加工する。
【0062】
加工後のAl合金板は、調質処理として、先ず、必須に溶体化および焼入れ処理される。溶体化および焼入れ処理は、板成形後のパネルの塗装焼き付け処理などの人工時効処理によりGPゾーンやβ" 相などの化合物相を十分粒内に析出させるために重要な工程である。
【0063】
溶体化処理後の焼入れの際、冷却速度は50℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くなり、時効硬化能が不足し、後のパネルの塗装焼き付け硬化処理などの人工時効処理により、170MPa以上の高耐力を確保できない。また、溶体化後の焼き入れ時に粒界上にSi、MgSiなどが析出しやすくなり、プレス成形やフラットヘム加工時の割れの起点となり易く、これら成形性が低下する。
【0064】
溶体化焼入れ処理後、室温時効抑制の原因となるSi- 空孔、Si/ 空孔クラスター自体の生成を抑制するために、予備時効処理をすることが好ましい。即ち、50〜100 ℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好ましい。また、予備時効処理後の冷却速度は1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
【0065】
更に、室温時効抑制のために、GPIを規制するだけではなく、GPIIを積極的に生成させるために、前記予備時効処理後に、時間的な遅滞無く、80〜120 ℃の比較的低温での亜時効処理を行い、より安定なGPIIとβ" 相 (主としてGPII) を生成させることが好ましい。また、この亜時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。前記時間的な遅滞があった場合、予備時効処理後でも、時間の経過とともに室温時効 (自然時効) が生じ、この室温時効が生じた後では、亜時効処理による効果が発揮しにくくなる。
【0066】
この他、用途や必要特性に応じて、更に高温の時効処理や安定化処理を行い、より高強度化などを図ることなども勿論可能である。
【0067】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示す、本発明組成範囲の発明例1 〜6 および本発明組成範囲から外れた各成分組成の比較例7 〜9 の、各6000系Al合金板について、結晶粒のキューブ方位を制御するため、表2 に示すように、強冷間圧延の圧下率と強冷間圧延後の焼鈍温度 (焼鈍時間は共通して3 時間) 、その後の弱冷間圧延の圧下率と弱冷間圧延後の焼鈍温度 (焼鈍時間は共通して3 時間) を各々変えて、結晶粒のキューブ方位を制御した、厚さ1.0mm のAl合金板を作成した。これらの条件を表2 に示す。
【0068】
前記各冷間圧延条件と冷間圧延後の各焼鈍条件以外のAl合金板の作製は、冷間圧延の圧下率を変化させるための熱間圧延板の板厚を除き、ほぼ同じ条件で行った。即ち、表1 に示す各組成範囲の400mm 厚の鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、540 ℃×4 時間の均質化熱処理を施し、終了温度300 ℃で厚さ2.3 〜8mmtまで板厚を種々変えて熱間圧延した。この熱間圧延板を、更に、厚さ1.0mm まで、上記条件で冷間圧延および焼鈍した。なお、表 2の発明例12のみは熱間圧延後に荒鈍した。
【0069】
これらの冷延板を以下の同じ条件で調質処理した。先ず、各試験片サイズに切断後、570 ℃に保持した空気炉に投入し、各試験片が550 ℃の溶体化処理温度に到達した時点で (保持時間 0秒) 、70℃の温水に焼き入れする処理を行った。前記焼入れ処理の際の冷却速度は200 ℃/ 秒とし、焼入れ終了温度 (焼入れ温度) は共通して70℃とし、焼入れ後にこの温度で2 時間保持する予備時効処理 (保持後は冷却速度0.6 ℃/hr で徐冷) を行った。
【0070】
これらのAl合金板の室温時効を考慮して、前記調質処理後4 カ月間 (120 日間) の室温時効後のAl合金板から一辺が450mm の正方形の供試板 (ブランク) を複数枚切り出し、中央部に一辺が300mm ×高さ20mmの角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフランジ部 (幅130mm)を有するハット型のパネルにプレス成形した。
【0071】
これらプレス成形されたAl合金パネル中央部から試験片を採取し、パネル表面の{200 }面の積分強度の割合と、{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合を前記したX 線回折測定方法により測定した。また、同時に、パネル表面から1/4 板厚の深さ部分のODF 解析によるキューブ方位分布密度を、前記した測定方法により測定した。
【0072】
前記プレス成形されたAl合金パネルを、アウターパネルとしてヘム加工されることを模擬して、パネルの前記平坦なフランジ部の内、素材板の圧延方向と平行なフランジ部の端部全面 (幅130mm)を以下の条件でフラットヘム加工した。
【0073】
まず、Al合金パネルのフラットヘム加工代 (ヘム加工後のパネルの内側に折り曲げられた端部から折り曲げ部の端部までの距離) を12mmとして、ダウンフランジ工程を模擬し、Al合金パネルの縁を90度の角度となるまで折り曲げた。次に、プリヘム工程を模擬して、Al合金パネルの縁を更に135 °の角度まで内側に折り曲げた。
【0074】
その後、厳しいフラットヘム加工条件を模擬して、敢えてインナパネルを前記Al合金パネルの折り曲げ部に挿入せずに、折り曲げ部を内側に180 度折り曲げ、パネル面に密着させるフラットヘム加工を行った。
【0075】
そして、このフラットヘムの縁曲部の、肌荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を目視観察した。評価は、1;肌荒れや微小な割れも無く良好、2;肌荒れが発生しているものの、微小なものを含めた割れはない、3;微小な割れが発生、4;大きな割れが発生、5;大きな割れが複数乃至多数発生、の5 段階の評価をした。この評価として、ヘム加工性が良好 (使用可) と判断されるのは1 〜2 段階までで、3 段階以上はヘム加工性が劣る (使用不可) と判断される。これらの結果を表2 に示す。
【0076】
更に、時効処理能を調査するため、前記プレス成形されたAl合金パネルから供試板を採取して、170 ℃×20分の人工時効硬化処理し、各供試板の元のAl合金板の圧延方向に平行な引張強さ (ABσB ) 、耐力 (ABσ0.2)、を測定した。また、アウタパネルに必要なデント試験も行った。これらの結果も表2 に示す。
【0077】
なお、引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
【0078】
また、デント性の試験方法は、前記ハット型のパネルの角筒状張出部の中央部に対し、先端R が50mmの棒状の重しにて、25kgの荷重を加えた際の、荷重点の凹み量(mm)を測定した。これらの結果も表2 に示す。
【0079】
表1 、2 から明らかな通り、本発明合金組成範囲内であって、かつAl合金パネル表面のパネル表面における{200 }面の積分強度の割合が70% 以上であるとともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 以上であり、更に、Al合金パネルのODF 解析によるキューブ方位分布密度が40以上である発明例1 〜13は、170 ℃×20分の人工時効硬化処理でAB耐力が170MPa以上あり、かつ、前記した厳しい条件であっても、フラットヘム加工性に優れている。また、デント試験での凹み量も比較的少ない。この実施例の結果は、アウタパネルのヘム加工部位形状の複雑化やインナーパネルの薄板化など、前記した厳しい条件でのフラットヘム加工でも、十分加工できることを示している。
【0080】
なお、発明例1 〜13を、パネルの曲げ方向を素材板の圧延方向と直角にして、曲げ加工した場合にも、同様に、良好なフラットヘム加工性が得られた。
【0081】
一方、本発明合金組成範囲内であっても、強冷間圧延の際の圧下率が低すぎる比較例17や、強冷間圧延後の焼鈍温度が高過ぎる比較例18は、前記本発明積分強度の割合やODF 解析によるキューブ方位分布密度を満たさず、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性が、発明例に比して著しく低い。
【0082】
また、発明例の中でも、強冷間圧延の際の圧下率が下限付近である発明例7 、強冷間圧延後の焼鈍温度が下限付近である発明例8 、弱冷間圧延の際の圧下率が下限付近である発明例10、弱冷間圧延後の焼鈍温度が低い発明例11は、Al合金パネル表面の積分強度の割合やODF 解析によるキューブ方位分布密度が、他の発明例1 〜6 に比して低い。
【0083】
そして、強冷間圧延後の焼鈍温度が高い発明例9 と、弱冷間圧延後の焼鈍温度が上限付近である発明例12も、Al合金パネル表面の積分強度の割合やAl合金パネルのODF 解析によるキューブ方位分布密度が、他の発明例1 〜6 に比して比較的低い。したがって、これらの結果から、本発明の所定キューブ方位を得るための、前記した冷間圧延や焼鈍条件などの臨界的な意義が裏付けられる。言い換えると、本発明のような、キューブ方位を有する結晶粒が特定量存在するAl合金板組織を得るためには、常法では不可で、特別な工程の付加乃至工程条件が必要であることが分かる。
【0084】
これに対し、本発明範囲から外れる表1 の比較例7 、8 、9 合金を用いた表2 の比較例14〜16は、各冷間圧延率と各焼鈍温度が本発明範囲内であり、Al合金パネル表面の積分強度の割合が本発明範囲内であるにもかかわらず、フラットヘム加工性かAB耐力、あるいはデント性が発明例に比して著しく劣る。
【0085】
即ち、Siが高めに本発明範囲から外れる表1 の比較例7 合金を用いた、比較例14は、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性が発明例に比して著しく低い。また、Si乃至Mgが低めに本発明範囲から外れる表1 の比較例8 、9 合金を用いた比較例15、16は、170 ℃×20分の低温短時間人工時効硬化処理後のBH耐力が170MPa未満である。
【0086】
以上の結果から、良好なフラットヘム加工性を得るための、Al合金パネル表面の積分強度の規定やODF 解析によるキューブ方位分布密度などの本発明要件の臨界的な意義が分かる。
【0087】
【表1】
Figure 0004238019
【0088】
【表2】
Figure 0004238019
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、フラットヘム加工に優れた6000系Al合金パネルを提供することができる。したがって、6000系Al合金のパネル用途への拡大を図ることができる点で、多大な工業的な価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】フラットヘム加工におけるアウタパネルの縁曲部を示す斜視図である。
【図2】アウタパネルのフラットヘム加工部の形状を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1:アウタパネル、2:インナパネル、A:折り曲げ部

Claims (5)

  1. Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金パネルであって、アルミニウム合金パネル表面における{200 }面の積分強度の割合が70% 以上であるとともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 以上であることを特徴とするフラットヘム加工用アルミニウム合金パネル。
  2. 前記アルミニウム合金パネル表面における{200 }面の積分強度の割合が70〜90% の範囲であるとともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 〜100%の範囲である請求項1に記載のフラットヘム加工用アルミニウム合金パネル。
  3. 前記アルミニウム合金パネルの、表面から板厚の1/4 深さ部分における、結晶方位分布関数解析によるキューブ方位分布密度が40以上である請求項1または2に記載のフラットヘム加工用アルミニウム合金パネル。
  4. 前記SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフラットヘム加工用アルミニウム合金パネル。
  5. 前記アルミニウム合金パネルが板厚が0.8mm 以上のアウタパネルであり、板厚が1.0mm 以下のアルミニウム合金インナパネルに対してフラットヘム加工される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフラットヘム加工用アルミニウム合金パネル。
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