JP2003226927A - フラットヘム加工用アルミニウム合金パネル - Google Patents

フラットヘム加工用アルミニウム合金パネル

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JP2003226927A JP2002345734A JP2002345734A JP2003226927A JP 2003226927 A JP2003226927 A JP 2003226927A JP 2002345734 A JP2002345734 A JP 2002345734A JP 2002345734 A JP2002345734 A JP 2002345734A JP 2003226927 A JP2003226927 A JP 2003226927A
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哲也 増田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フラットヘム加工性に優れたアルミニウム
合金パネルを提供することを目的とする。 【解決手段】 Si:0.4 〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.0
1 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAl
および不可避的不純物であるアルミニウム合金パネルで
あって、フラットヘム加工性を向上させるために、アル
ミニウム合金パネル表面における{200 }面の積分強度
の割合が70% 以上であるとともに、{200}面と{400
}面との合計積分強度の割合が80% 以上であることと
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラットヘム加工
用アルミニウム合金パネル(以下、アルミニウムを単に
Alと言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、自動車、船舶あるいは車両な
どの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用と
して、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れた
Al-Mg系のAA乃至JIS 規格に規定された (規格を満足す
る)5000 系や、成形性や焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系
のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言
う) のAl合金材(圧延板材、押出形材、鍛造材などの各
アルミニウム合金展伸材を総称する)が使用されてい
る。
【0003】近年、排気ガス等による地球環境問題に対
して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の
向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体
に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、より
軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
【0004】このAl合金材の中でも、自動車のフード、
フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネ
ル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内
板)等のパネルには、薄肉でかつ高強度Al合金板とし
て、過剰Si型の6000系のAl合金板の使用が検討されてい
る。
【0005】この過剰Si型の6000系Al合金は、基本的に
は、Si、Mgを必須として含み、かつSi/Mg が1 以上であ
るAl-Mg-Si系アルミニウム合金である。そして、この過
剰Si型6000系Al合金は優れた時効硬化能を有しているた
め、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性
を確保するとともに、成形後の焼付塗装処理などの人工
時効処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必
要な強度を確保できる利点がある。
【0006】また、これら過剰Si型6000系Al合金材は、
Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比
して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら60
00系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原
料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得
やすく、リサイクル性にも優れている。
【0007】一方、前記自動車などのアウタパネルで
は、Al合金板を張出や絞りあるいはトリム等のプレス成
形してアウタパネル化した後、アウタパネルの縁を折り
曲げて(180 度折り返して) インナパネルの縁との接合
を行う、フラットヘミング (フラットヘム) 加工と呼ば
れる厳しい曲げ成形が施される。
【0008】前記アウタパネルのヘム加工は、アウタパ
ネルの縁をポンチなどの工具により90°に近い角度まで
折り曲げるダウンフランジ工程、アウタパネルの縁を更
に約135 °まで内側に折り曲げるプリヘム工程を経て、
フラットヘム工程やロープヘム工程により行われる。
【0009】このフラットヘム工程では、図1 に示すよ
うに、インナパネル2 端部をアウタパネル1 の折り曲げ
部A 内に収容 (挿入) し、アウタパネル1 の縁1cを工具
により更に180 °の角度まで内側に折り曲げてヘムを形
成する。この内、フラットヘムでは、インナパネル2 の
縁と、アウタパネル1 のフラットヘム部(180 度折り曲
げ部)Aとが接触して、両者が端部同士において接合され
るとともに密着され、フラットな曲げ部形状を有する。
このように、フラットヘムでは、インナパネルの縁と、
アウタパネルのフラットヘム部(180 度折り曲げ部) と
が接触して、両者が端部同士において接合されるととも
に密着される。
【0010】ただ、Al合金アウタパネルのフラットヘム
加工においては、従来の鋼板パネルのフラットヘム加工
に比して、形成されるフラットヘムの縁曲部 (ヘム部、
折り曲げ部) A には、図1 に程度順に例示すような、肌
荒れX 、微小な割れY 、比較的大きな割れZ 等の不良が
生じ易くなる。そして、これらの不良が生じた場合、ア
ウタパネルとしての適用ができなくなる。
【0011】このようなAl合金アウタパネルのフラット
ヘム加工に対し、従来から、フラットヘム加工工程側
や、Al合金板の素材側で、前記縁曲部の不良発生を防止
して、フラットヘム加工性を改善する技術も種々提案さ
れている。
【0012】フラットヘム加工工程側からは、186MPa程
度の高強度なAl合金アウタパネルのフラットヘム加工に
おいて、前記図2(a)のダウンフランジ工程において、ア
ウタパネルに形成されるフランジコーナー部の曲げ半径
Rd (ダイスの肩半径) を0.8t〜1.8t (但しt はAl合金板
の板厚) と大きくして、前記不良の発生を防止すること
が提案されている(特許文献1参照) 。また、ローラー
ヘムなどの加工方法自体の改良も提案されている。
【0013】
【特許文献1】特公昭63-2690 号公報
【0014】一方、素材側からは、パネル用Al合金板の
粒界析出物を規制したり、パネル用Al合金板の耐力自体
を下げて、フラットヘム加工性を改善することが行われ
ている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、フラットヘム
加工条件は、近年益々難しくなる傾向にある。その理由
は、先ず、アウタパネルのフラットヘム加工される部分
の形状 (デザイン) の複雑化である。フラットヘム加工
されるアウタパネルの端部形状 (縁曲部輪郭形状) が図
2 に示すような、直線的な単純形状A ではなく、円弧形
状B や、あるいは角部C を有するような、複雑形状とな
った場合、前記不良がより発生しやすくなる。
【0016】次に、前記アウタパネルとインナパネル用
のAl合金板は、パネルの軽量化のために、1.0mm 以下の
板厚に近年益々薄肉化されていることが理由に上げられ
る。例えば、アウタパネル用のAl合金板は1.0mm 以下
の、0.8 〜0.9mm の板厚などが主流である。また、イン
ナパネル用のAl合金板も1.0mm 以下の、0.5 〜0.8mm の
板厚などが主流である。これら薄肉化されたAl合金板で
は、特にアウタパネルの縁曲部に挿入されるインナパネ
ルの板厚が薄くなるほど、曲げ条件としては厳しくな
り、フラットヘム加工が難しくなる傾向にある。そし
て、前記した薄肉化されたAl合金板では、この傾向が顕
著となる。
【0017】このような厳しいフラットヘム加工に対
し、前記したフラットヘム加工工程側やパネル用のAl合
金板の素材側での従来の改善技術では、必ずしも対応し
きれない場合が生じる。例えば、前記Al合金板の耐力自
体を下げてフラットヘム加工性を改善した場合、プレス
成形性が低下したり、過剰Si型6000系Al合金板であって
も、板成形後のパネル塗装焼付工程などを用いた170 ℃
×20分での低温短時間の人工時効硬化処理後の耐力が不
足して、耐デント性が不足するなどの問題を生じる。
【0018】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、フラットヘム加工性に優れ
たAl合金パネルを提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明フラットヘム加工用Al合金パネルの要旨は、
Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:
0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAlおよび不可避的
不純物であるアルミニウム合金パネルであって、アルミ
ニウム合金パネル表面における{200 }面の積分強度の
割合が70% 以上であるとともに{200 }面と{400 }面
との合計積分強度の割合が80% 以上であるパネルとす
る。
【0020】なお、本発明で言うAl合金パネルとは、成
形素材であるAl合金板をプレス成形したパネルであっ
て、フラットヘム加工される前のパネルを言う。
【0021】本発明者らは、フラットヘム加工性と6000
系Al合金パネルの組織との関係について、改めて検討し
た。この結果、6000系Al合金板の結晶粒のキューブ方位
({200 }面の積分強度の割合、および{200 }面と
{400 }面との合計積分強度の割合) とフラットヘム加
工性とが密接に相関することを知見した。即ち、キュー
ブ方位を有する結晶粒の割合が多いほど、フラットヘム
加工性が改善される。一方、キューブ方位を有する結晶
粒の割合が小さいほど、フラットヘム加工性が低下す
る。
【0022】前記Al合金板表面の結晶粒のキューブ方位
は、フラットヘム加工前のプレス成形の条件によって
は、プレス成形の前後で多少変化する可能性がある。こ
のため本発明では、前記プレス成形条件によらず、フラ
ットヘム加工性を改善するために、前記結晶粒のキュー
ブ方位の特定を、フラットヘム加工される前であって、
成形素材Al合金板をプレス成形した後の、Al合金パネル
によって特定する。
【0023】なお、Mg量が多い5000系Al合金板におい
て、プレス成形の際の曲げ加工性を向上させるために、
{100 }面と{110 }面との積分強度比を1 以上とする
技術が特開平10-8176 号公報などに開示されている。こ
の5000系Al合金板の場合は、本発明とは目的が近似する
ものの、極限変形能を高めるために、{100 }面と{11
0 }面との積分強度比を1 以上としている。しかし、本
発明が対象とする6000系Al合金板においては、前記{10
0 }面と{110 }面との積分強度比を1 以上としてもフ
ラットヘム加工性は改善できない。この理由は、6000系
Al合金板の方が5000系Al合金板よりもフラットヘム加工
性やプレス成形性が劣り、しかも本発明で意図するフラ
ットヘム加工条件は、上記公報で意図するプレス成形の
際の曲げ加工などよりも、より厳しい加工条件であるた
めである。
【0024】ここにおいて、後述するごとく、常法で得
られる通常の6000系Al合金板組織やこの6000系Al合金板
がプレス成形されたAl合金パネル組織は、キューブ方位
を有する結晶粒の割合が小さい。言い換えると、本発明
のような、キューブ方位を有する結晶粒が特定量存在す
るAl合金パネル組織を得るためには、後に詳述するAl合
金板の製造方法のように、特別な工程の付加や工程条件
が必要である。
【0025】本発明では、Al合金パネルのフラットヘム
加工性をより確実に向上させるために、上記積分強度に
よる結晶集合組織規定に加えて、キューブ方位の測定精
度がより正確な、結晶方位分布関数(ODF、Orienntation
Distribution Function) 解析によるキューブ方位分布
密度を更に規定し、アルミニウム合金パネルの、表面か
ら板厚の1/4 深さ部分における、ODF 解析によるキュー
ブ方位分布密度を40以上とすることが好ましい。
【0026】本発明パネルは、フラットヘム加工性が優
れるために、Al合金パネルの板厚が0.8mm 以上であり、
板厚が1.0mm 以下のAl合金インナパネルに対してフラッ
トヘム加工されるような厳しい条件のアウタパネルに対
して適用されるのが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】先ず、本発明Al合金パネルの組織
の要件につき、以下に説明する。前記した通り、キュー
ブ方位を有する結晶粒の割合が多いほど、フラットヘム
加工性が改善される。このため、本発明では、Al合金パ
ネル結晶粒のキューブ方位につき、Al合金パネル表面に
おける{200 }面のX 線回折による積分強度の割合を70
% 以上とするとともに{200 }面と{400 }面とのX 線
回折による合計積分強度の割合を80% 以上とする。この
積分強度の割合が各々70% と80% 未満では、特に前記し
た厳しい条件でのフラットヘム加工ではAl合金パネルの
加工性が著しく低下する。
【0028】また、プレス成形性などの他の特性を低下
させずに、フラットヘム加工性をより向上させるため
に、好ましくは、Al合金パネル表面における{200 }面
の積分強度の割合を70〜90% の範囲、{200 }面と{40
0 }面との合計積分強度の割合が80% 〜100%の範囲、と
特定する。
【0029】本発明において、Al合金パネルの結晶粒の
キューブ方位発達の程度の測定は、例えば、株式会社リ
ガクのX 線回折装置 (型式、リガクRAD-RCなど) を用
い、Al合金パネルの表面を前処理無しでそのまま計測す
る。標準サンプルとしては無配向性のAl試料を用い、こ
の標準サンプルに対する、{111 }面、{200 }面、
{220 }面、{311 }面、{222 }面、{400 }面、
{331 }面、{420 }面、{422 }面、の各面の積分強
度の総和A を求める。そして、このA に対する前記{20
0 }面の積分強度I1の比率(%) 、{200 }面と{400 }
面との合計の積分強度I2の比率(%) 、を各々の積分強度
の割合(%) とする。
【0030】なお、本発明では、Al合金パネルのフラッ
トヘム加工性をより確実に向上させるために、結晶集合
組織の測定精度がより正確な、結晶方位分布関数解析(
以下ODF 解析と言う) によるキューブ方位分布密度を更
に規定することが好ましい。したがって、本発明では、
上記積分強度による結晶集合組織規定に加えて、アルミ
ニウム合金パネルの、表面から板厚の1/4 深さ部分にお
ける、ODF 解析によるキューブ方位分布密度を40以上と
することが好ましく、50以上の更に高い値とすることが
より好ましい。
【0031】前記積分強度によるキューブ(Cube)方位の
測定では、割合計算のため、例えば80% 以上の高い積分
強度割合のところでは、各試料間の差が非常に小さくな
る傾向がある。また、面内(100面) の回転方位を分離で
きないため、純粋なキューブ方位だけを抽出できない傾
向もある。これに対し、ODF 解析によるキューブ方位分
布密度は、キューブ方位をランダム方位 (標準粉末試
料) からの比 (無次元)で表すため、広い範囲を定量的
に表現できる。このため、上記積分強度によるキューブ
方位測定のような傾向が無く、より正確にキューブ方位
分布を測定できる。
【0032】このAl合金パネル表面から板厚の1/4 深さ
部分における、ODF 解析によるキューブ方位分布密度の
測定は、例えば、株式会社リガクのX 線回折装置 [型式
「リガクRAD-rX 」(Ru-200B) ] を用い、Al合金パネル
の表面から板厚の1/4 の深さ部分まで研削して、この部
分を計測することで行なう。上記X 線回折装置は不完全
極点図によるODF 解析が可能である。即ち、schluzの反
射法により、{100 }面、{111 }面の不完全極点図を
作成し、Bunge の反復級数展開法(positivity法) を適
用してODF 解析を実施し、キューブ方位分布密度を求め
ることができる。
【0033】なお、フラットヘム加工でのパネルの曲げ
方向とキューブ方位 (配行方向) との関係について、パ
ネルのキューブ方位がパネルの曲げ方向と平行になるよ
うに(パネルの曲げ加工方向を素材板の圧延方向と平行
あるいは直角にして) 曲げ加工した場合に、良好なフラ
ットヘム加工性は得られる。パネルのキューブ方位は90
度回転しても同一の構造であるため、0 度、90度の区別
が無い。このため、パネルの曲げ加工方向を素材板の圧
延方向と平行あるいは直角としても、キューブ方位は同
じ構造となり、良好なフラットヘム加工性が得られる。
ただ、素材板の圧延方向がパネルの曲げ方向と45度の方
向になるなど、上記二つの方向以外のパネルの曲げ方向
とパネルのキューブ方位 (配行方向) との関係では、フ
ラットヘム加工性が劣る可能性があり、フラットヘム加
工におけるパネルの曲げ方向は、上記二つの方向とする
ことが好ましい。
【0034】次に、本発明Al合金パネルの化学成分組成
の実施形態につき、以下に説明する。本発明Al合金パネ
ルの基本組成は、上記組織の規定やパネルとしての諸特
性を確保するために、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、M
n:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残
部がAlおよび不可避的不純物であるアルミニウム合金パ
ネルとする。なお、本発明での化学成分組成の% 表示
は、前記請求項の% 表示も含めて、全て質量% の意味で
ある。
【0035】なお、上記合金元素以外の、Cr、Zr、Ti、
B 、Fe、Zn、Ni、V など、その他の合金元素は、基本的
には不純物元素である。しかし、リサイクルの観点か
ら、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系
合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金など
を溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製す
る場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれるこ
ととなる。したがって、本発明では、目的とする本発明
効果を阻害しない範囲で、これら他の合金元素が含有さ
れることを許容する。
【0036】各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量
について以下に説明する。 Si:0.4〜1.3%。 SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの
170 ℃×20分の低温での人工時効処理時に、GPゾーンな
どの化合物相を形成して、人工時効硬化能を発揮し、自
動車のアウタパネルとして必要な、例えば170MPa以上の
必要強度を得るための必須の元素である。このパネルの
塗装焼き付け処理後の耐力を170MPa以上にするために
も、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰
に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好
ましい。
【0037】Si量が0.4%未満では、前記時効硬化能やプ
レス成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備することが
できない。一方、Siが1.3%を越えて含有されると、特に
ヘム加工性が著しく阻害される。更に、溶接性を著しく
阻害する。したがって、Siは0.4 〜1.3%の範囲とするの
が好ましい。なお、ヘム加工性が特に重視されるアウタ
パネルでは、フラットヘム加工性をより向上させるため
に、Si含有量を0.6 〜1.0%と、より低めの範囲とするこ
とが好ましい。
【0038】Mg:0.2〜1.2%。 Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時
効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成
して、時効硬化能を発揮し、前記パネルとしての必要強
度を得るための必須の元素である。
【0039】Mgの0.2%未満の含有では、絶対量が不足す
るため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、
時効硬化能を発揮できない。このため前記パネルとして
必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
【0040】一方、Mgが1.2%を越えて含有されると、プ
レス成形性やヘム加工性等の成形性が著しく阻害され
る。したがって、Mgの含有量は、0.2 〜1.2%の範囲で、
かつSi/Mg が質量比で1.0 以上となるような量とする。
【0041】Cu:0.1% 以下 Cuは、本発明の比較的低温短時間の人工時効処理の条件
で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促
進させる効果がある。また、時効処理状態で固溶したCu
は成形性を向上させる効果もある。しかし、Cu含有量が
0.1%を越えると自動車のアウタパネルの、塗装後の耐蝕
性の内の特に耐糸さび性や、また溶接性を著しく劣化さ
せる。このため、Cu含有量は耐糸さび性の発現が顕著と
なる0.1%以下の量に規制する。
【0042】Mn:0.01 〜0.65% Mnには、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成
し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる
効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果
がある。前記した通り、本発明Al合金パネルのプレス成
形性やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細なほど向
上する。この点、Mn含有量が0.01% 未満ではこれらの効
果が無い。
【0043】一方、Mn含有量が多くなった場合、溶解、
鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合
物や晶析出物を生成しやすく、Al合金パネルの機械的性
質を低下させる原因となる。また、特に、前記複雑形状
や薄肉化などによって、加工条件が厳しくなったフラッ
トヘム加工では、Mn含有量が0.15% を越えた場合、ヘム
加工性が低下する。このため、Mnは0.01〜0.65% の範囲
とし、加工条件が厳しくなったフラットヘム加工では、
より好ましくは0.01〜0.15% の範囲とする。
【0044】Cr 、Zr。 これらCr、Zrの遷移元素には、Mnと同様、均質化熱処理
時に分散粒子 (分散相) を生成し、微細な結晶粒を得る
ことができる効果がある。しかし、Cr、Zrも、各々0.15
% を越える含有では、前記加工条件が厳しくなったフラ
ットヘム加工ではヘム加工性が低下する。したがって、
Cr、Zrの含有量も各々0.15% 以下に規制することが好ま
しい。
【0045】Ti 、B 。 Ti、B は、Ti:0.1% 、B:300ppmを各々越えて含有する
と、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但
し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化
し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがっ
て、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容す
る。
【0046】Fe。 溶解原料から混入して、不純物として含まれるFeは、Al
7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を
生成する。これらの晶出物は、Feが0.10% 以上含まれた
場合に、再結晶粒の核となり、結晶粒の粗大化を阻止し
て、結晶粒を50μm 以下の微細粒とする役割を果たす。
しかし、一方で、これらの晶出物は、破壊靱性および疲
労特性、更には、前記加工条件が厳しくなったフラット
ヘム加工性およびプレス成形性を著しく劣化させる。こ
れらの劣化特性は、Feの含有量が0.50% を越えると顕著
になるため、Feの含有量 (許容量) は、0.10〜0.50% と
することが好ましい。
【0047】Zn。 Znは0.5%を越えて含有されると、耐蝕性が顕著に低下す
る。したがって、Znの含有量は好ましくは0.5%以下ので
きるだけ少ない量とすることが好ましい。
【0048】本発明Al合金パネルが対象とするフラット
ヘム加工は、通常の工程によるフラットヘム加工を対象
とする。即ち、前記した、ダウンフランジ工程、プリヘ
ム工程、フラットヘム工程により行われるフラットヘム
加工を対象とする。但し、最終的にフラットヘムが形成
されるものであれば、ローラーヘムなど、工程や工程条
件が異なるものもフラットヘム加工として対象とする
し、適用可能である。
【0049】本発明Al合金パネルは、前記した通り、ア
ウタパネルとして、板厚が0.8mm 以上のものが好まし
く、板厚が1.0mm 以下のインナパネルAl合金パネルに対
して加工されるようなフラットヘム加工に適用されて好
ましい。Al合金パネルのアウタパネルとしての板厚がこ
れより薄く、Al合金インナパネルの板厚がこれより厚い
ものでは、フラットヘム加工することは比較的容易とな
る。
【0050】なお、フラットヘム加工が、本発明Al合金
パネルの4 周囲に対して全て行われるか、選択される辺
(側縁部) のみに対して行われかは、アウタパネルなど
の部材設計に応じて、適宜選択される。
【0051】(製造方法)以上の本発明Al合金パネルの製
造方法について説明する。前記した通り、キューブ方位
を有する結晶粒が多く存在する本発明Al合金パネル組織
を得るためには、上記成分組成などの他に、Al合金板の
製造において、下記の特別な工程の付加や工程条件が必
要である。この点、常法で得られる通常のAl合金板乃至
パネルは、キューブ方位を有する結晶粒の割合が小さ
く、本発明のようなキューブ方位を有する結晶粒が多く
存在するAl合金パネル組織は得られない。
【0052】即ち、キューブ方位を有する結晶粒が著し
く多く存在する本発明Al合金パネル組織を得るために
は、その前の素材Al合金板の段階でキューブ方位を有す
る結晶粒が著しく多く存在するAl合金板組織とすること
が必須である。即ち、Al合金板自体の製造工程で、前記
Al合金板組織とする。具体的には、熱間圧延後のAl合金
板を、常法とは異なり、冷間圧延で強圧延して、特定温
度で焼鈍した後、更に、冷間圧延で弱圧延して、その後
特定温度で焼鈍するなどの特別の工程付加や条件が必要
である。
【0053】先ず、前記冷間圧延での強圧延は、Al合金
板の冷間圧延での圧下率を60% 以上と高くすることが必
要である。冷間圧延での圧下率をこのように高くするこ
とで冷間圧延板に十分な歪みエネルギーを蓄積できる。
この結果、後述する焼鈍でキューブ方位を有する多くの
結晶粒を成長させることができる。冷間圧延での圧下率
が低いと、後述する焼鈍でキューブ方位を有する結晶粒
が成長するに十分な歪みエネルギーが蓄積できなくな
る。一方、冷間圧延での圧下率が高くなるほど、耳割れ
が生じるなど加工自体が困難となるので、圧下率の上限
は95% 程度とするのが好ましい。
【0054】次いで、冷間圧延板は、キューブ方位を有
する結晶粒を特定量成長させるために、必要に応じて、
350 ℃以下、好ましくは200 〜300 ℃の温度で、例えば
1 〜50時間焼鈍されることが好ましい。この焼鈍によっ
て、キューブ方位を有する微細な再結晶粒もしくは亜結
晶粒が特定量成長し、最終の溶体化処理で、立方体方位
が発達し易くなり、プレス成形性とともにヘム加工性が
著しく向上する。前記焼鈍温度が200 ℃未満では、この
効果がなく、Al合金パネル表面のキューブ方位を有する
結晶粒の割合を、Al合金板表面における{200 }面の積
分強度の割合を50% 以上とするとともに、{200 }面と
{400 }面との合計積分強度の割合を60% 以上とするこ
とができない。この結果、従来のAl合金板結晶粒組織と
大差がなくなり、前記厳しい条件での、特にフラットヘ
ムなどのヘム加工性の向上効果がない。
【0055】一方、焼鈍温度が350 ℃を越えた場合、結
晶粒が粗大化しやすく、プレス成形やヘム加工時に肌荒
れが生じ易くなり、Al合金板の張出成形や絞り成形など
のプレス成形性が著しく低下する。この焼鈍はバッチ
炉、連続焼鈍炉を用いて行うことができる。
【0056】更に、前記焼鈍後の板は冷間圧延で弱圧延
される。この時の圧下率は10〜25%と比較的低くするこ
とが必要である。冷間圧延での圧下率をこのように特定
することで、キューブ方位を有する結晶粒の回りに十分
な歪みエネルギーを蓄積できる。この結果、後述する焼
鈍でキューブ方位を有する更に多くの結晶粒を成長させ
ることができる。冷間圧延での圧下率が低いと、後述す
る焼鈍でキューブ方位を有する結晶粒が成長するに十分
な歪みエネルギーが蓄積できなくなる。一方、冷間圧延
での圧下率は必要以上に高くする必要がない。必要以上
に高くした場合、所望の最終板厚との関係で、熱間圧延
や前記強圧延での必要圧下率を高くとれなくなる。
【0057】弱圧延後の冷間圧延板は、キューブ方位を
有する結晶粒を更に多く成長させるために、昇温速度を
50℃/hr 以下と遅くした上で、400 〜500 ℃未満の温度
で、例えば1 〜30時間焼鈍されることが好ましい。昇温
速度が速いと、また、焼鈍温度が400 ℃未満では、歪み
エネルギーを回りに蓄積しても、キューブ方位を有する
結晶粒が多量に成長できなくなる。この結果、Al合金パ
ネル表面における前記積分強度の割合が規定量に達しな
い。
【0058】一方、焼鈍温度が500 ℃以上の場合、キュ
ーブ方位を有する結晶粒が再結晶してしまい、結晶方位
が成長せず、やはり、前記積分強度の割合が規定量に達
しない。
【0059】その他の工程条件は、基本的には常法で可
能であるが、アウタパネルなどとしての他の特性やフラ
ットヘム加工性を向上させるための好ましい条件もあ
り、以下に説明する。
【0060】先ず、溶解、鋳造工程では、本発明成分規
格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯を、連続鋳
造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳
造法を適宜選択して鋳造する。
【0061】次いで、このAl合金鋳塊に均質化熱処理を
施した後、熱間圧延し、前記した条件で、冷間圧延や焼
鈍などを施し、コイル状、板状などの板形状に加工す
る。
【0062】加工後のAl合金板は、調質処理として、先
ず、必須に溶体化および焼入れ処理される。溶体化およ
び焼入れ処理は、板成形後のパネルの塗装焼き付け処理
などの人工時効処理によりGPゾーンやβ" 相などの化合
物相を十分粒内に析出させるために重要な工程である。
この効果を出すための溶体化処理条件は、500 〜540℃
の温度範囲で行うのが好ましい。
【0063】溶体化処理後の焼入れの際、冷却速度は50
℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50
℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くな
り、時効硬化能が不足し、後のパネルの塗装焼き付け硬
化処理などの人工時効処理により、170MPa以上の高耐力
を確保できない。また、溶体化後の焼き入れ時に粒界上
にSi、MgSiなどが析出しやすくなり、プレス成形やフラ
ットヘム加工時の割れの起点となり易く、これら成形性
が低下する。
【0064】溶体化焼入れ処理後、室温時効抑制の原因
となるSi- 空孔、Si/ 空孔クラスター自体の生成を抑制
するために、予備時効処理をすることが好ましい。即
ち、50〜100 ℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保
持することが好ましい。また、予備時効処理後の冷却速
度は1 ℃/hr 以下であることが好ましい。
【0065】更に、室温時効抑制のために、GPIを規制
するだけではなく、GPIIを積極的に生成させるために、
前記予備時効処理後に、時間的な遅滞無く、80〜120 ℃
の比較的低温での亜時効処理を行い、より安定なGPIIと
β" 相 (主としてGPII) を生成させることが好ましい。
また、この亜時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下で
あることが好ましい。前記時間的な遅滞があった場合、
予備時効処理後でも、時間の経過とともに室温時効 (自
然時効) が生じ、この室温時効が生じた後では、亜時効
処理による効果が発揮しにくくなる。
【0066】この他、用途や必要特性に応じて、更に高
温の時効処理や安定化処理を行い、より高強度化などを
図ることなども勿論可能である。
【0067】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
す、本発明組成範囲の発明例1 〜6 および本発明組成範
囲から外れた各成分組成の比較例7 〜9 の、各6000系Al
合金板について、結晶粒のキューブ方位を制御するた
め、表2 に示すように、強冷間圧延の圧下率と強冷間圧
延後の焼鈍温度 (焼鈍時間は共通して3 時間) 、その後
の弱冷間圧延の圧下率と弱冷間圧延後の焼鈍温度 (焼鈍
時間は共通して3 時間) を各々変えて、結晶粒のキュー
ブ方位を制御した、厚さ1.0mm のAl合金板を作成した。
これらの条件を表2 に示す。
【0068】前記各冷間圧延条件と冷間圧延後の各焼鈍
条件以外のAl合金板の作製は、冷間圧延の圧下率を変化
させるための熱間圧延板の板厚を除き、ほぼ同じ条件で
行った。即ち、表1 に示す各組成範囲の400mm 厚の鋳塊
を、DC鋳造法により溶製後、540 ℃×4 時間の均質化熱
処理を施し、終了温度300 ℃で厚さ2.3 〜8mmtまで板厚
を種々変えて熱間圧延した。この熱間圧延板を、更に、
厚さ1.0mm まで、上記条件で冷間圧延および焼鈍した。
なお、表 2の発明例12のみは熱間圧延後に荒鈍した。
【0069】これらの冷延板を以下の同じ条件で調質処
理した。先ず、各試験片サイズに切断後、570 ℃に保持
した空気炉に投入し、各試験片が550 ℃の溶体化処理温
度に到達した時点で (保持時間 0秒) 、70℃の温水に焼
き入れする処理を行った。前記焼入れ処理の際の冷却速
度は200 ℃/ 秒とし、焼入れ終了温度 (焼入れ温度)は
共通して70℃とし、焼入れ後にこの温度で2 時間保持す
る予備時効処理 (保持後は冷却速度0.6 ℃/hr で徐冷)
を行った。
【0070】これらのAl合金板の室温時効を考慮して、
前記調質処理後4 カ月間 (120 日間) の室温時効後のAl
合金板から一辺が450mm の正方形の供試板 (ブランク)
を複数枚切り出し、中央部に一辺が300mm ×高さ20mmの
角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフラン
ジ部 (幅130mm)を有するハット型のパネルにプレス成形
した。
【0071】これらプレス成形されたAl合金パネル中央
部から試験片を採取し、パネル表面の{200 }面の積分
強度の割合と、{200 }面と{400 }面との合計積分強
度の割合を前記したX 線回折測定方法により測定した。
また、同時に、パネル表面から1/4 板厚の深さ部分のOD
F 解析によるキューブ方位分布密度を、前記した測定方
法により測定した。
【0072】前記プレス成形されたAl合金パネルを、ア
ウターパネルとしてヘム加工されることを模擬して、パ
ネルの前記平坦なフランジ部の内、素材板の圧延方向と
平行なフランジ部の端部全面 (幅130mm)を以下の条件で
フラットヘム加工した。
【0073】まず、Al合金パネルのフラットヘム加工代
(ヘム加工後のパネルの内側に折り曲げられた端部から
折り曲げ部の端部までの距離) を12mmとして、ダウンフ
ランジ工程を模擬し、Al合金パネルの縁を90度の角度と
なるまで折り曲げた。次に、プリヘム工程を模擬して、
Al合金パネルの縁を更に135 °の角度まで内側に折り曲
げた。
【0074】その後、厳しいフラットヘム加工条件を模
擬して、敢えてインナパネルを前記Al合金パネルの折り
曲げ部に挿入せずに、折り曲げ部を内側に180 度折り曲
げ、パネル面に密着させるフラットヘム加工を行った。
【0075】そして、このフラットヘムの縁曲部の、肌
荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を
目視観察した。評価は、1;肌荒れや微小な割れも無く良
好、2;肌荒れが発生しているものの、微小なものを含め
た割れはない、3;微小な割れが発生、4;大きな割れが発
生、5;大きな割れが複数乃至多数発生、の5 段階の評価
をした。この評価として、ヘム加工性が良好 (使用可)
と判断されるのは1 〜2 段階までで、3 段階以上はヘム
加工性が劣る (使用不可) と判断される。これらの結果
を表2 に示す。
【0076】更に、時効処理能を調査するため、前記プ
レス成形されたAl合金パネルから供試板を採取して、17
0 ℃×20分の人工時効硬化処理し、各供試板の元のAl合
金板の圧延方向に平行な引張強さ (ABσB ) 、耐力 (AB
σ0.2)、を測定した。また、アウタパネルに必要なデン
ト試験も行った。これらの結果も表2 に示す。
【0077】なお、引張試験はJIS Z 2201にしたがって
行うとともに、試験片形状はJIS 5号試験片で行い、試
験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。ま
た、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するま
で一定の速度で行った。
【0078】また、デント性の試験方法は、前記ハット
型のパネルの角筒状張出部の中央部に対し、先端R が50
mmの棒状の重しにて、25kgの荷重を加えた際の、荷重点
の凹み量(mm)を測定した。これらの結果も表2 に示す。
【0079】表1 、2 から明らかな通り、本発明合金組
成範囲内であって、かつAl合金パネル表面のパネル表面
における{200 }面の積分強度の割合が70% 以上である
とともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割
合が80% 以上であり、更に、Al合金パネルのODF 解析に
よるキューブ方位分布密度が40以上である発明例1 〜13
は、170 ℃×20分の人工時効硬化処理でAB耐力が170MPa
以上あり、かつ、前記した厳しい条件であっても、フラ
ットヘム加工性に優れている。また、デント試験での凹
み量も比較的少ない。この実施例の結果は、アウタパネ
ルのヘム加工部位形状の複雑化やインナーパネルの薄板
化など、前記した厳しい条件でのフラットヘム加工で
も、十分加工できることを示している。
【0080】なお、発明例1 〜13を、パネルの曲げ方向
を素材板の圧延方向と直角にして、曲げ加工した場合に
も、同様に、良好なフラットヘム加工性が得られた。
【0081】一方、本発明合金組成範囲内であっても、
強冷間圧延の際の圧下率が低すぎる比較例17や、強冷間
圧延後の焼鈍温度が高過ぎる比較例18は、前記本発明積
分強度の割合やODF 解析によるキューブ方位分布密度を
満たさず、前記厳しい条件でのフラットヘム加工性が、
発明例に比して著しく低い。
【0082】また、発明例の中でも、強冷間圧延の際の
圧下率が下限付近である発明例7 、強冷間圧延後の焼鈍
温度が下限付近である発明例8 、弱冷間圧延の際の圧下
率が下限付近である発明例10、弱冷間圧延後の焼鈍温度
が低い発明例11は、Al合金パネル表面の積分強度の割合
やODF 解析によるキューブ方位分布密度が、他の発明例
1 〜6 に比して低い。
【0083】そして、強冷間圧延後の焼鈍温度が高い発
明例9 と、弱冷間圧延後の焼鈍温度が上限付近である発
明例12も、Al合金パネル表面の積分強度の割合やAl合金
パネルのODF 解析によるキューブ方位分布密度が、他の
発明例1 〜6 に比して比較的低い。したがって、これら
の結果から、本発明の所定キューブ方位を得るための、
前記した冷間圧延や焼鈍条件などの臨界的な意義が裏付
けられる。言い換えると、本発明のような、キューブ方
位を有する結晶粒が特定量存在するAl合金板組織を得る
ためには、常法では不可で、特別な工程の付加乃至工程
条件が必要であることが分かる。
【0084】これに対し、本発明範囲から外れる表1 の
比較例7 、8 、9 合金を用いた表2の比較例14〜16は、
各冷間圧延率と各焼鈍温度が本発明範囲内であり、Al合
金パネル表面の積分強度の割合が本発明範囲内であるに
もかかわらず、フラットヘム加工性かAB耐力、あるいは
デント性が発明例に比して著しく劣る。
【0085】即ち、Siが高めに本発明範囲から外れる表
1 の比較例7 合金を用いた、比較例14は、前記厳しい条
件でのフラットヘム加工性が発明例に比して著しく低
い。また、Si乃至Mgが低めに本発明範囲から外れる表1
の比較例8 、9 合金を用いた比較例15、16は、170 ℃×
20分の低温短時間人工時効硬化処理後のBH耐力が170MPa
未満である。
【0086】以上の結果から、良好なフラットヘム加工
性を得るための、Al合金パネル表面の積分強度の規定や
ODF 解析によるキューブ方位分布密度などの本発明要件
の臨界的な意義が分かる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【発明の効果】本発明によれば、フラットヘム加工に優
れた6000系Al合金パネルを提供することができる。した
がって、6000系Al合金のパネル用途への拡大を図ること
ができる点で、多大な工業的な価値を有するものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】フラットヘム加工におけるアウタパネルの縁曲
部を示す斜視図である。
【図2】アウタパネルのフラットヘム加工部の形状を模
式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1:アウタパネル、2:インナパネル、A:折り曲げ部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 増田 哲也 栃木県真岡市鬼怒ケ丘15番地 株式会社神 戸製鋼所真岡製造所内 (72)発明者 中井 学 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01
    〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含むとともに、残部がAlお
    よび不可避的不純物であるアルミニウム合金パネルであ
    って、アルミニウム合金パネル表面における{200 }面
    の積分強度の割合が70% 以上であるとともに{200 }面
    と{400 }面との合計積分強度の割合が80% 以上である
    ことを特徴とするフラットヘム加工用アルミニウム合金
    パネル。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金パネル表面におけ
    る{200 }面の積分強度の割合が70〜90% の範囲である
    とともに{200 }面と{400 }面との合計積分強度の割
    合が80% 〜100%の範囲である請求項1に記載のフラット
    ヘム加工用アルミニウム合金パネル。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金パネルの、表面か
    ら板厚の1/4 深さ部分における、結晶方位分布関数解析
    によるキューブ方位分布密度が40以上である請求項1ま
    たは2に記載のフラットヘム加工用アルミニウム合金パ
    ネル。
  4. 【請求項4】 前記SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上で
    ある請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフラットヘ
    ム加工用アルミニウム合金パネル。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金パネルが板厚が0.
    8mm 以上のアウタパネルであり、板厚が1.0mm 以下のア
    ルミニウム合金インナパネルに対してフラットヘム加工
    される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフラット
    ヘム加工用アルミニウム合金パネル。
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