JP2006257505A - 伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 冷延ままの板か、この冷延板を焼鈍した板であって、高強度でかつ成形性に優れ、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板を提供することを目的とする。
【解決手段】 質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径が20μm 以下、平均導電率が45〜65%IACS 、ビッカース硬度が40〜65Hvであることとし、伸びフランジ性を向上させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高強度でかつ成形性に優れたAl合金板に関し、卓越した伸びフランジ性を有するAl合金板に関するものである。以下、アルミニウムを単にAlとも言う。なお、本発明で言うAl合金板とは、冷延ままの板か、この冷延板を焼鈍した板を言う。
従来から、自動車、船舶、航空機あるいは車両などの輸送機、機械、電気製品、建築、構造物、光学機器、器物の部材や部品用として、成形性や焼付硬化性に優れたAl合金板が使用されている。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材、あるいは鍛造材など、より軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
この内、特に、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、高強度なAl-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系と言う) のAl合金板の使用が検討されている。
6000系Al合金板は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性 (ベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性) がある。
また、6000系Al合金板は、Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系Al合金板のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
ただし、6000系Al合金板は、5000系Al合金板に比べてプレス成形性が良くないため、改善策としてMgやSi以外の第三、四元素を添加し、或いは合金元素の添加に併せて結晶粒径や晶析出物の分散状態を制御する方法が試みられてきた。
しかしこれらの方法でも、近年ますます厳しさを増している需要者の要望を満たすまでには至っておらず、更なるプレス成形性の向上が求められている。
プレス成形性の向上のために、6000系Al合金板の伸びフランジ性を改善することが従来から提案されている。例えば、穴拡げ率λ60%以上を確保する為に、板の r値の異方性を以下の条件で規定することが提案されている(特許文献1参照)。 r≦-0.722×Δr+0.5739 [ここで、r=1/4 ×(r0+r45+2r90) 、Δr=1/2 ×(r0+r90-2r45) を意味する] 。このような組織を得るために、特許文献1は、熱延後で冷延前に、昇温速度100 ℃/min以上、温度450 ℃以上で焼鈍を行い、この焼鈍後に冷却速度600℃/min以上で冷却している。そして、最終焼鈍前の冷延率を65%以上として冷延している。ただ、この特許文献1によるλは60〜70%程度のレベルである。
また、穴拡げ加工用アルミニウム合金板として、打ち抜き穴内表面より1mmの範囲内での、後述する硬化率を20%以下とすることが提案されている(特許文献2参照)。硬化率(%)=(打ち抜き穴加工部の硬さ-母材部の硬さ)×100/母材の硬さ。このような組織を得るために、特許文献2では、打ち抜き穴部を、加熱炉、誘導加熱、高温体接触及びバーナー加熱などで、200〜600℃×2 時間以下の加熱を行なっている。但し、この方法では、工程の増加によるコストの増大が避けられない。
更に、穴拡げ加工用アルミニウム合金圧延板及びその製造方法として、Mg量5.5〜9.5wt.%、Cu量0.3〜1.5wt.% を各々含有し、圧延方向と平行方向の結晶粒径が100μm以下、圧延方向と平行方向の平均結晶粒径/板圧方向の平均結晶粒径が2以下とすることが提案されている(特許文献3参照)。このような組織を得るために、特許文献3では、以下の式で規定した温度で熱間圧延を行った後、1回または中間焼鈍を挟んだ2回の冷延を施し、さらに最終冷延の冷延率は20%以上としている。熱延温度(℃)=凝固開始温度(℃)-25×Mg量(wt.%)+15×Cu量(wt.%)+10×Zn 量(wt.%)。ただ、この特許文献3によるλの最大値は67%程度である。
特開2003-129156 号公報 (特許請求の範囲) 特開2004-197184号公報( 特許請求の範囲) 特許第3066091号公報 (特許請求の範囲)
前記した伸びフランジ性改善のための一連の従来技術(特許文献1〜3)では、確かに、伸びフランジ性は改善されるものの、穴拡げ率λが70% 以上の高い穴拡げ率には向上されてはいない。また、これらの方法では、穴拡げ率λを70% 以上にし得たとしても、工程の増加によるコストの増大が避けられない。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板を提供しようとするものである。
この目的を達成するための、伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板の要旨は、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径が20μm 以下、平均導電率が45〜65%IACS 、ビッカース平均硬度が40〜65Hvであることとする。
6000系アルミニウム合金板において、伸びフランジ性と板のr値や、伸びフランジ性と板の r値 (ランクフォード値) の異方性とが相関し、板のr値を高めたり、 r値の異方性 (ランクフォード値の異方性) を抑制すれば、バーリング試験によって求められる、穴拡げ率λが高くなることは、前記特許文献1などで公知である。ただ、この特許文献1など、従来の6000系アルミニウム合金板のλは60〜70%程度のレベルであり、λを70%以上にはできていない。
これに対して、本発明では、6000系アルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径を微細化させるとともに、平均導電率とビッカース平均硬度とを一定の範囲とする組み合わせによって、λを70%以上に高くできることを知見した。
先ず、板厚方向の平均結晶粒径を微細化させることで、結晶粒界への応力集中が少なくなり、伸びフランジ加工時の結晶粒界の破壊が生じにくくなる。
次ぎに、平均導電率を上記特定の範囲とすることによって、主要元素を含めた含有各元素の固溶量が、クラスターができにくく、局部延性が向上する量に確保される。更に、析出物の存在状態としても、破壊の起点となる粗大な析出物が生じない状態が確保されている。
そして、ビッカース平均硬度は、直接的に伸びフランジ性に影響する。このため、上記結晶粒界や元素固溶量、更に、析出物の存在状態などを最適化した上で (最適化することを前提に) 、更に、ビッカース平均硬度を上記特定の範囲とすることによって、始めてλを70%以上に向上できる。
以下に、本発明の実施態様につき具体的に説明する。
(化学成分組成)
先ず、本発明が対象とする6000系Al合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系Al合金板は、前記した自動車材などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような要求を満足するために、Al合金板の基本組成は、質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるものとする。
なお、その他の元素は、AA乃至JIS 規格などに沿った各不純物レベルの含有量 (許容量) とする。その他の合金元素とは、具体的には、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.0% 以下、の内の1 種または2 種以上を含んでも良い。
上記合金元素以外のその他の合金元素やガス成分も不純物である。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製する場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする本発明効果を阻害しない範囲で、これら不純物元素が含有されることを許容する。
上記6000系Al合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.1〜2.5%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車パネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。したがって、本発明6000系Al合金板にあって、伸びフランジ性及び曲げ性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付け処理後(2% ストレッチ付与後170 ℃×20分の低温時効処理時) の耐力を高くする、優れた低温時効硬化能を発揮させるためには、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好ましい。
Si量が0.1%未満では、前記時効硬化能、更には、自動車パネル用途などに要求される、伸びフランジ性及び曲げ性、あるいはプレス成形性などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが2.5%を越えて含有されると、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。更に、溶接性をも著しく阻害する。したがって、Siは0.1 〜2.5%の範囲とする。なお、自動車のアウタパネルなどでは、ヘム加工性が特に重視されるため、フラットヘム加工性などの曲げ性をより向上させるためには、Si含有量を0.6 〜2.0%と、より低めの範囲とすることが好ましい。
Mg:0.1〜3.0%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば170MPa以上の必要強度を得、更に、伸びフランジ性を得るための必須の元素である。
Mgの0.1%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネルとして必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
一方、Mgが3.0%を越えて含有されると、却って、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。したがって、Mgの含有量は、0.1 〜3.0%の範囲とする。また、他の曲げ性などの特性を向上させるために、Si含有量を前記0.6 〜2.0%のより低めの範囲とする場合には、これに対応して、Mg含有量も0.4 〜2.5%と低めの範囲とすることが好ましい。
Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下。
これらの元素は、スクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、結晶粒の微細化効果もあり、加工性の向上効果もある。但し、含有量が多すぎると、粗大な化合物を形成し、それが破壊の起点として作用するため、却って加工性が劣化する。したがって、各々、上記上限までの含有は許容する。
Cu:1.0%以下。
Cuもスクラップなど溶解原料などから混入しやすい元素であるが、人工時効処理の条件で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促進させる効果もある。また、時効処理状態で固溶したCuは成形性を向上させる効果もある。一方、1.0%を越えると、粗大な化合物が増加して破壊の起点になり、伸びフランジ性及び曲げ性を低下させる。また、耐応力腐食割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接性を著しく劣化させる。このため、1.0%以下の範囲での含有は許容する。
(組織)
次ぎに、本発明6000系Al合金板の組織について説明する。
(平均結晶粒径)
アルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径は、伸びフランジ性を確保乃至向上するために、20μm 以下、好ましくは18μm 以下に微細化させる。結晶粒径の内でも、特に、板厚方向の平均結晶粒径を選択して、微細化させることで、結晶粒界への応力集中が少なくなり、伸びフランジ加工時の結晶粒界の破壊が生じにくくなる。
特に、この板厚方向の平均結晶粒径が粗大化した場合、結晶粒界への応力集中が大きくなり、伸びフランジ加工時の結晶粒界の破壊が生じやすく、伸びフランジ性が著しく低下する。したがって、板厚方向の平均結晶粒径は、20μm 以下、好ましくは18μm 以下とする。
アルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径は、Al合金板の板厚方向の断面表面を、0.05〜0.1mm 機械研磨および電解エッチングした後、光学顕微鏡を用いて写真撮影し、ラインインターセプト法で測定する。即ち、写真の板厚方向に1 本の線を引き、圧延方向と平行に伸びている粒界との、その線との交点数をカウントし、板厚をカウント数で割った値を板厚方向の平均結晶粒径とした。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各1 本で合計5 視野(5測定部位) を観察する。
(平均導電率)
アルミニウム合金板の平均導電率は、伸びフランジ性を確保乃至向上するために、45〜65%IACS 、好ましくは47〜63%IACS の範囲とする。平均導電率をこの範囲とすることによって、主要元素を含めた含有各元素の固溶量が、クラスターができにくく、局部延性が向上する量に確保される。更に、析出物の存在状態としても、破壊の起点となる粗大な析出物が生じない状態が確保されている。
平均導電率が小さ過ぎると、主要元素を含めた含有各元素の固溶量が多過ぎ、クラスターができやすい状態となり、局部延性が低下し、伸びフランジ性が低下する。このため、平均導電率の下限は45%IACS 、好ましくは47%IACS とする。
一方、平均導電率が大き過ぎると、析出物の量が増加するとともに、析出物が粗大化し、この粗大な析出物が破壊の起点となって、伸びフランジ性が低下する。このため、平均導電率の下限は65%IACS 、好ましくは63%IACS とする。
平均導電率の測定は、市販の渦流平均導電率測定装置 (例えば、英国Hocking 社製、オートシグマ3000) によって、アルミニウム合金板表面の導電率を測定して行なう。アルミニウム合金板表面の任意の箇所、例えば5 箇所に、測定端子を接触させて各導電率を計測して、これを平均化し、平均導電率を求める。
(ビッカース平均硬度)
ビッカース平均硬度は、直接的に伸びフランジ性に影響する。このため、上記平均結晶粒径や平均導電率などを最適化した上で、更に、ビッカース平均硬度を40〜65Hv、好ましくは42〜63Hvの範囲とすることによって、始めてλを70%以上に向上できる。
ビッカース平均硬度が小さ過ぎると、構造材としての強度を満足できない。このため、ビッカース平均硬度の下限は40Hv、好ましくは63Hvとする。一方、ビッカース平均硬度が高くなるほど伸びフランジ性は低下し、ビッカース平均硬度が高過ぎると、λを70%以上にできない。このため、ビッカース平均硬度の上限は65Hv、好ましくは63Hvとする。
ビッカース平均硬度の測定は、マイクロビッカース硬度計 (例えば、株式会社マツザワ製) にて、0.5kg の荷重を加えて、例えば、アルミニウム合金板表面の任意の箇所を例えば3 箇所、計測して、これを平均化し、平均硬度を求める。
(製造方法)
次ぎに、本発明Al合金板の製造条件について以下に説明する。通常のAl合金板は鋳造→均質化熱処理→熱間圧延→中間焼鈍→冷間圧延→最終焼鈍の各工程を経て製造される。しかし、Al合金板の化学組成や各工程の設定条件によって得られる板の、粗大な再結晶粒や粒界における析出相の形成状況が変わり、平均結晶粒径、平均導電率、平均硬度が変化するので、一連の製造工程として総合的に条件を選択して決定すべきである。以下に、本発明で意図する、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板を確実に得るための好ましい条件について説明する。
(溶解、鋳造)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
(均質化熱処理)
このAl合金鋳塊に500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理を施す。この均質化熱処理は組織の均質化、すなわち、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすことを目的とする。熱処理温度が500℃より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、伸びフランジ性が劣化する。また、熱処理時間は、鋳塊の厚みにもよるが、2hr 以上とすることが好ましい。2hr より低いと鋳塊の粒内偏析を十分になくすことができず、これが破壊の起点として作用するため、伸びフランジ性が劣化する可能性がある。
(熱間圧延)
これらの均質化熱処理後に、390 〜480 ℃の温度で熱間圧延を開始する。熱間圧延開始温度が480 ℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、伸びフランジ性が劣化する。また、熱間圧延開始温度が390 ℃未満の場合、熱間圧延自体が困難となる。
更に、熱間圧延の終了温度を170 〜300 ℃として、コイル状、板状などの熱延板を製作する。熱間圧延終了温度が300 ℃を超えた場合、SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板は再結晶しやすく、伸びフランジ性が低下する。熱間圧延の終了温度が170 ℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。
(荒鈍)
この熱延板を、冷間圧延前に、250 〜400 ℃以上の温度で焼鈍 (荒鈍) を施す。この荒鈍温度が250 ℃より低いと、荒鈍無しで冷間圧延するのと同様に、荒鈍後の残存ひずみ量が多くなり、最終板の強度が高くなり過ぎ、伸びフランジ性が低下する。一方、荒鈍温度が400 ℃を超えた場合、粗大な析出物や粒界における析出相の形成が促進され、伸びフランジ性が劣化する。
伸びフランジ性を向上させるためには、この条件下での荒鈍工程が必須であって、従来の伸びフランジ性向上を意図した技術が、伸びフランジ性を70% 以上に高くできないのは、この荒鈍工程を省略して、引き続き冷間圧延を行なっていたせいでもある。
荒鈍時間は、目安として0.5 〜5 時間の範囲から選択することが好ましい。荒鈍時間が短過ぎると、荒鈍無しで冷間圧延するのと同様に、荒鈍後の残存ひずみ量が多くなり、最終板の強度が高くなり過ぎ、伸びフランジ性が低下する。一方、荒鈍時間が長過ぎると、粗大な析出物や粒界における析出相の形成が促進され、伸びフランジ性が劣化する。
(冷延)
この荒鈍後に、引き続き冷間圧延を行なって、所望の板厚の冷延板 (コイルも含む) を製作する。この冷間圧延における圧下率 (冷延率) は40〜90% の範囲にすることが好ましい。圧下率が40% 未満では、板厚方向の平均結晶粒径を20μm 以下、好ましくは18μm 以下とすることが難しくなる。一方、圧下率が90% を超えた場合、残存ひずみ量が多くなり、最終板の強度が高くなり過ぎ、伸びフランジ性が低下する。
最終冷間圧延後のAl合金板は、そのままか、あるいは、200 〜375 ℃、0 〜5 時間程度の回復焼鈍を行い、サブグレインを形成させ、更に結晶粒を微細化しても良い。本発明Al合金板において、冷間圧延後に通常行なわれる溶体化および焼き入れ処理を行なうと、強度が出過ぎて、却ってλが低下する。したがって、溶体化および焼き入れ処理は、本発明Al合金板においては行なわない方が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示す1 〜24の各組成の6000系Al合金をDC鋳造によって鋳造した400mm 厚の鋳塊を、共通して、550 ℃×4 時間均質化熱処理 (均熱とも略記) 後に、熱間圧延した。熱間圧延条件は、共通して、熱延開始温度500 〜550 ℃、熱延終了温度250 〜350 ℃の範囲とした。なお、表1 中の各元素の含有量の表示において、「−」の表示は、検出限界以下であることを示す。
得られた1.5 〜20.0mmt の各熱延板について、表2 に示す種々の条件で、荒鈍を選択的に施した後、冷間圧延を行い、最終焼鈍を選択的に行い、厚さ1mmの最終板を得た。なお、表2 に示す無しの表示は、荒鈍を施さないこと、最終焼鈍を施さないこと (冷延ままであること) を示す。
製造後、3 カ月間 (90日間) の室温時効後のこれら各Al合金板から供試板 (ブランク) を切り出し、板の板厚方向の平均結晶粒径 (μm)、平均導電率(%IACS) 、ビッカース硬度(Hv)、を前記した方法で測定した。また、同じく、圧延方向に対し0 °の方向の0.2%耐力 (MPa)、更に、伸びフランジ性 (λ:%) などを各々測定、評価した。これらの結果を表2 に示す。
0 °方向の0.2%耐力 (MPa)は、圧延方向に対する角度が45°方向を長手方向とするJIS 5 号引張試験片を採取し、JIS Z 2201にしたがって行った。クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。各サンプルについて3回の試験を行い、その平均値を採用した。
伸びフランジ性の評価のための、穴拡げ試験は、先ず、1辺が70mmの正方形の板に直径10mmの穴を打ち抜いた。そして 、直径33mmの60°円錐ポンチを用いて、バリを上面(ダイス面)側として、しわ押さえ力3トン、ポンチ速度10mm/minで穴拡げ試験を行い、前記打ち抜き穴の縁に破断が発生した段階でポンチを止め、破断後の穴内径(d s )と成型試験前の初期穴径(d0)から下記式によって穴拡げ率(λ)を求めた。
λ=(d s -d0)/d0 ×100(%)
破断後の穴内径については、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向でそれぞれ測定し、穴拡げ率を各々求めた後に平均を取って、各サンプルの穴拡げ率とした。さらに、各サンプルについて3回の穴拡げ試験を行い、その平均値を最終的に穴拡げ率(λ:%)とした。
表1 、2 に示す通り、発明例1 〜10は、本発明成分組成範囲内で、かつ、本発明の好まし条件範囲で、荒鈍および冷間圧延している。このため、得られたAl合金板の板厚方向の平均結晶粒径が20μm 以下で、更に、平均導電率が45〜65%IACS 、ビッカース硬度が40〜65Hvである。この結果、発明例1 〜10は、λが70% 以上で、80% を超えるものもあり、伸びフランジ性が優れている。
これに対して、比較例11、12、19〜25は、成分範囲は発明範囲内であるものの、製造条件が好ましい範囲から外れている。このため、λが低く、伸びフランジ性が発明例に比して著しく劣る。
比較例11、19、25は荒鈍温度が高過ぎる。
比較例12は荒鈍を施していない。
比較例20は荒鈍温度が低過ぎ、荒鈍を施していないのと大差ない。
比較例21、24は冷延の圧下率が小さ過ぎる。
比較例22は冷延の圧下率が高過ぎる。
比較例22は荒鈍のの時間が長過ぎる。
また、比較例13〜18は、製造条件は好ましい範囲内であるものの、成分範囲が発明範囲から外れている。このため、λが低く、伸びフランジ性が発明例に比して著しく劣る。
比較例13はMg量が下限を超えて少な過ぎる。
比較例14はMg量が上限を超えて多過ぎる。
比較例15はSi量が下限を超えて少な過ぎる。
比較例16はSi量が上限を超えて多過ぎる。
比較例17はTi量が多過ぎる。
比較例18はCu量が多過ぎる。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明の各要件の持つ臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 2006257505
Figure 2006257505
本発明によれば、優れた伸びフランジ性を有するAl合金板を提供できる。この結果、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、また、特に、自動車などの輸送機の部材に、6000系Al合金材の適用を拡大できる。

Claims (3)

  1. 質量% で、Si:0.1〜2.5%、Mg:0.1〜3.0%を含み、残部がAlおよび不純物からなるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板の板厚方向の平均結晶粒径が20μm 以下、平均導電率が45〜65%IACS 、ビッカース硬度が40〜65Hvであることを特徴とする、伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板。
  2. 前記不純物が、更に、Fe:1.5% 以下、Mn:1.0% 以下、 Cr:0.5%以下、Zr:0.5% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.2% 以下、Zn=1.5% 以下、Cu:1.0% 以下、の内の1 種または2 種以上を含む、請求項1に記載の伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板。
  3. 前記アルミニウム合金板の穴拡げ率λが70% 以上である請求項1または2に記載の伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板。
JP2005077426A 2005-03-17 2005-03-17 伸びフランジ性に優れたアルミニウム合金板 Pending JP2006257505A (ja)

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