JP4939091B2 - 曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法(以下、アルミニウムを単にAlとも言う)に関するものである。
従来から、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れたAl-Mg 系のAA乃至JIS 規格に規定された (規格を満足する)5000 系や、成形性や焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に5000系乃至6000系と言う) のAl合金材(圧延板材、押出形材、鍛造材などの各アルミニウム合金展伸材を総称する)が使用されている。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なAl合金材の適用が増加しつつある。
この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、Al-Mg-Si系のAA乃至JIS 6000系 (以下、単に6000系と言う) のAl合金板の使用が検討されている。
6000系Al合金板は、基本的には、Si、Mgを必須として含み、優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保するとともに、成形後のパネルの塗装焼付処理などの、比較的低温の人工時効( 硬化) 処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるBH性 (ベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性) がある。
また、6000系Al合金板は、Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら6000系Al合金板のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得やすく、リサイクル性にも優れている。
一方、前記自動車などのアウタパネルでは、Al合金板を張出や絞りあるいはトリム等のプレス成形してアウタパネル化した後、アウタパネルの縁を折り曲げて (180 度折り返して) インナパネルの縁との接合を行う、ヘム( ヘミングの別称) 加工と呼ばれる厳しい曲げ加工が複合して施される。また、インナパネルでは深絞り等の厳しいプレス成形が複合して施される。
そして、前記自動車パネルの内、外板 (アウタパネル) では、上記プレス成形の後に、内板 (インナパネル) と接合してパネル構造体とするために、加工条件の厳しいフラットヘム加工と呼ばれる180 °曲げ加工等の厳しい曲げ成形が複合して施される。このフラットヘム加工は、アウタパネルの縁を折り曲げて (180 度折り返して) インナパネルの縁との接合を行うヘム (ヘミングの別称) 加工と呼ばれる厳しい曲げ加工である。
これに対して、6000系Al合金板は、その優れた時効硬化能ゆえに、Al合金板自体の製造後、前記各用途に使用されるまでの間に、室温( 常温) 時効硬化が生じやすく、常温安定性に欠けるという大きな問題があった。このような室温時効が生じた場合、製造直後には、6000系Al合金材が前記各用途の要求特性を満足したとしても、一定時間の経過後に、実際の用途に使用される際に、要求特性を満足せずに、パネル材であれば、前記プレス成形性やヘム加工性を著しく低下させることとなる。
特に、上記Al合金アウタパネルのフラットヘム加工においては、室温時効硬化が生じた場合、形成されるフラットヘムの縁曲部 (ヘム部、折り曲げ部) には、比較的大きな割れ等の不良が生じ易くなる。
これら6000系Al合金板の室温時効抑制の課題に対しては、素材側で、6000系Al合金板の溶体化および焼入れ処理などの調質処理後に形成されるMg-Si クラスターなどのミクロ組織を制御する等の冶金的な改善が行なわれている。しかし、これら冶金的な室温時効抑制は、前記BH性を低下させることにも繋がるため、板の曲げ加工性やヘム加工性向上には限界がある。
これに対して、6000系Al合金板の集合組織に異方性を持たせ、板の曲げ加工性やヘム加工性を改善する方法が種々提案されている。例えば、板の集合組織を結晶粒方位差によって規定することが提案されている (特許文献1、4参照)。また、Cube方位の強度比、密度などや、 r値の異方性で規定することが提案されている (特許文献2、3、5、6、7、8参照)。
そして、6000系Al合金板の集合組織に異方性を持たせるための製造方法も、上記特許文献1、4などでは、Al合金鋳塊を、500 ℃以上融点未満の温度で均質化処理した後、500 ℃以上の温度から350 〜450 ℃の温度範囲まで冷却して熱間圧延を開始する(2段均熱) か、500 ℃以上の温度から一旦室温まで冷却し、350 〜450 ℃の温度範囲まで再加熱して熱間圧延を開始する(2回均熱) 、段階的な均質化処理方法が提案されている。
また、これに対して、熱間圧延されたAl-Mg-Si系Al合金板を、10〜50% の圧下率で冷間圧延後、210 〜440 ℃の温度で中間焼鈍し、更に70% 以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化および焼入れ処理して、Al合金板の集合組織に異方性を持たせることも提案されている (特許文献9参照)。
特開2003-171726 号公報 (請求項) 特開2003-277869 号公報 (請求項) 特開2003-277870 号公報 (請求項) 特開2003-166029 号公報 (請求項) 特開2003-226926 号公報 (請求項) 特開2003-226927 号公報 (請求項) 特開2003-321723 号公報 (請求項) 特開2003-268475 号公報 (請求項) 特開2003-321754 号公報 (請求項)
これら集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板は、板のCube方位を集積させて、大傾角粒界に比して小傾角粒界の割合を増し、粒界段差を少なく、あるいは生じなくする。この結果、曲げの際に、粒界段差が割れの起点とならず、板の曲げ加工性やヘム加工性を改善できる。
しかし、前記特許文献1、4、9などに開示された製造方法を用いて、これら集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板を再現性良く量産することには、まだ課題が残されていた。即ち、これら集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板は、一方で、プレス成形によって、リジングマークと呼ばれる表面不良が生じやすくなるという、新たな問題がある。
このリジングマークは、板の特定方位の結晶粒がスジ状に並んだ場合に、プレス成形などの変形時に、板表面の凹凸となる現象である。このため、アルミニウム合金板の結晶粒が肌荒れを生じない程度に微細であってもプレス成形によって生じる点がやっかいである。このリジングマークは、パネル構造体の大型化や形状の複雑化、あるいは薄肉化などによりプレス成形条件が厳しくなった場合に特に生じ易い。また、プレス成形直後には比較的目立たず、そのままパネル構造体として塗装工程に進んだ後に目立ちやすくなるという問題もある。
このリジングマークが顕著に生じた場合、特に表面が美麗であることが要求されるアウタパネルでは、外観不良となって使用できない問題となる。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板の製造方法において、更に、リジングマーク性に優れた、Al合金板の製造方法を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明の曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法の要旨は、質量% で、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を、500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理した後、300 〜400 ℃の温度範囲まで50℃/hr 以上、100℃/hr以下の冷却速度で冷却して熱間圧延を開始し、この熱間圧延を280 ℃以下の温度範囲で終了し、10〜80% の圧下率で冷間圧延後、160 〜240 ℃の温度で中間焼鈍し、更に15% 以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化および焼入れ処理し、得られたアルミニウム合金板の 0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲である集合組織の異方性を持たせるとともに、平均結晶粒径が50μm 以下であることである。
本発明では、均質化熱処理後の鋳塊を冷却して、より低温で熱間圧延を開始するとともに、再結晶温度以下のより低温で熱間圧延を終了する。このため、熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成するのを抑制できる。この粗大な再結晶粒生成を抑制することによって、リジングマークの原因となる、板の特定方位の結晶粒がスジ状に並ぶことを抑制できる。
SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板は、通常は、再結晶しないような280 ℃程度の低温の熱間圧延終了温度でも再結晶しやすく、リジングマークの原因となる、上記粗大な再結晶粒が生成しやすい。このため、本発明では、上記要旨の通り、均質化熱処理後の鋳塊を冷却して、より低温で熱間圧延を開始するとともに、再結晶温度以下のより低温で熱間圧延を終了する。
しかも、上記低温で熱間圧延を行なっても、続く、中間焼鈍を挟む2 回の冷間圧延によって、集合組織に異方性を持たせ、板のCube方位を集積させて、大傾角粒界に比して小傾角粒界の割合を増し、曲げ加工の際に割れの起点となる、粒界段差を少なく、あるいは生じなくすることができる。このため、前記従来の集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板と同様、板の曲げ加工性やヘム加工性を改善できる。
更に、6000系Al合金板の他の引張強度、耐力などの低下は一切無い。また、BH性を低下させる影響もなく、成形後のパネルや成形部材の、塗装焼き付け処理などの人工時効硬化処理によって、耐デント性など、必要な強度を確保できる。このため、6000系Al合金板としての他の必要特性を犠牲にせずに、板の曲げ加工性やヘム加工性、あるいはリジングマーク性を改善できる。
以下に、本発明Al合金板の製造方法の実施態様につき具体的に説明する。
(Al合金板の耳率)
先ず、Al合金板の 0°−90°方向の耳率は、曲げ加工性やヘム加工性の点から-13%を上限とする。0 °−90°方向の耳率が-13%を超えた場合、Al合金板のCube方位の集積度が弱く、通常のAl合金板と大差なくなり、曲げ加工性(ヘム加工性)が低下する。
一方、Al合金板の 0°−90°方向の耳率は、プレス成形性の点からは、-17%を下限とする。0 °−90°方向の耳率が、-18%、-19%などと、-17%未満の場合、Al合金板のCube方位の集積度が強過ぎ、プレス成形性が低下する。したがって、本発明Al合金板では、0 °−90°方向の耳率を-13 〜-17%の範囲とする。
本発明では、このように、Al合金板の集合組織の異方性、言い換えると、Al合金板のCube方位の集積を、Al合金板の耳率で規定した点が特徴でもある。Al合金板の耳率は、後述する通り、先ず、Al合金板の集合組織の異方性、Cube方位の集積度と良く相関する。
そして、Al合金板の耳率は、後述する通り、Al合金板をカップ状に成形加工することによって、簡便に、かつ迅速に、多数のデータを求めることができる。したがって、本発明のようなAl合金板を量産する際の、ロット毎や製品板やコイルの長さ方向などの品質を保障する手段として優れる。
これに対して、Cube方位の集積を直接測定するための、電子顕微鏡および画像解析装置、あるいはX 線回折装置などでは、高価な分析装置を用い、多くの試料調整処理などを必要とする。このため、研究用には適していても、分析コストや時間が多くかかり、前記したAl合金板を量産する際の品質保障手段としては不向きである。
図1 に、本発明組成範囲の6000系Al合金板の、Cube方位の集積度を示す面積率と耳率(%) との関係を示す。図1 に示すように、Cube方位の集積度 (横軸) と0 °−90°方向の耳率 (縦軸) との関係は、右下がりの直線状に相関している。図1 において、 0°−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲が、大傾角粒界に比して小傾角粒界の割合を増し、曲げ加工の際に割れの起点となる、粒界段差を少なく、あるいは生じなくすることができるCube方位の集積度の範囲である。
耳率(%) とは、図2 に示す通り、Al合金板をカップ状に成形加工した時に発生するカップの耳の高さである。カップの耳は、マイナス耳と称される板の圧延方向に対し0 ゜、90゜、180 ゜、270 ゜方向に発生する耳と、プラス耳と称される板の圧延方向に対し45゜、135 ゜、225 ゜、315 ゜方向に発生する耳に大別される。
そして、耳率(%) は、定量的には、0 °−90°方向(4箇所) と45°方向(4箇所) との合計8 箇所におけるカップ底部からの高さを測定し、カップ底部からの谷部平均高さh v と、カップ底部からの頂部平均高さh t とから、次式で算出される。なお、ここで、便宜的に、0 °−90°方向に頂部が発生する場合は耳率をマイナスとし、45°方向に頂部が発生する場合は耳率をプラスとする (図2 に示すheはh t とh v との差) 。
耳率(%) = ( h t −h v ) ×100 /h v
図3 に、本発明組成範囲の6000系Al合金板の耳率(%) とヘム加工性の評価 (ヘム試験標点) との関係を示す。図3 において、ヘム加工性の評価は数値が少ない上の方へ行くほどヘム加工性が優れている。そして、耳率は、右へ行くほど (マイナスの数値が大きいほど) 小さい。そして、図3 に示すように、45°方向と、0 °、90°方向との差が大きいなど、各耳の生じる方向によって差はあるものの、0 °、90°方向では、共通して、耳率が-13%以下で、ヘム加工性が0 の最高評価となっている。本発明では、この耳の方向による差異を考慮するとともに、後述するC 破断との関係で、耳率を規定する耳の方向を0 °−90°方向とした。
この耳率は、Al合金板のカップ状成形加工条件によっても変動する。したがって、本発明では、直径40mmのポンチ(肩部半径3mm)及び、ポンチとダイスの隙間とAl合金板厚の比が1.3 〜1.4 の範囲のダイスを用い、しわ押え力150 kgf 、成形速度60mm/分、使用潤滑油#700 の条件でカップ状に成形加工したときの 0°−90°方向の耳率の値とする。
一方、 0°−90°方向の耳率が小さ過ぎると、0 °方向のAl合金板の伸び(%) が小さくなり、プレス成形性が低下する。図4 に、本発明組成範囲の6000系Al合金板の伸び(%) と0 °−90°方向の耳率との関係を示す。本発明組成範囲の6000系Al合金板は、伸びが20% 以下で、プレス成形性が低下する。伸びが20% 以上では、引張試験において、引張試験片の平行部で破断する通常のA 破断が生じるものの、伸びが20% 未満では、引張試験片のチャック部で破断するC 破断が生じる。この破断状態の分かれ目であり、伸びが20% 未満に低下するポイントが耳率が-17%である。即ち、0 °−90°方向の耳率が-17%以下では、伸びが20% 未満に低下してC 破断が生じる。したがって、Al合金板のプレス成形性の点からは、0 °−90°方向の耳率は-17%以上とする。
(平均結晶粒径)
このようにして得られたAl合金板の平均結晶粒径は50μm 以下の微細化させる。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、曲げ加工性やプレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が50μm を越えて粗大化した場合、曲げ加工性や張出などのプレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易い。また、リジングマークも生じやすくなる。
なお、ここで言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向に、ラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。
(化学成分組成)
次ぎに、本発明が対象とする6000系Al合金板の化学成分組成について説明する。本発明が対象とする6000系Al合金板は、前記した自動車材などとして、優れた成形性やBH性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような要求を満足するために、Al合金板の基本組成は、質量% で、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。
また、本発明が対象とする6000系Al合金板は、リジングマークが生じやすいSiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板に適用されて好ましい。
なお、その他の元素は、AA乃至JIS 規格などに沿った各不純物レベルの含有量 (許容量) とする。その他の合金元素とは、具体的には、Fe:1.0% 以下、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:%以下、の内の1 種または2 種以上を含んでも良い。また、これらに加えて、あるいは、これらの代わりに、更に、Ag:0.2% 以下、Zn:1.0% 以下、の内の1 種または2 種を含んでも良い。
上記合金元素以外のその他の合金元素やガス成分も不純物である。しかし、リサイクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけではなく、6000系合金やその他のAl合金スクラップ材、低純度Al地金などを溶解原料として使用して、本発明Al合金組成を溶製する場合には、これら他の合金元素は必然的に含まれることとなる。したがって、本発明では、目的とする本発明効果を阻害しない範囲で、これら不純物元素が含有されることを許容する。
上記6000系Al合金における、各元素の好ましい含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.4〜1.3%。
SiはMgとともに、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温での人工時効処理時に、GPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、自動車のアウタパネルとして必要な、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。したがって、本発明過剰Si型6000系Al合金板にあって、プレス成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備させるための最重要元素である。
また、パネルへの成形後の低温塗装焼き付け処理後(2% ストレッチ付与後170 ℃×20分の低温時効処理時) の耐力を170MPa以上という、優れた低温時効硬化能を発揮させるためにも、Si/Mg を質量比で1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有させた過剰Si型6000系Al合金組成とすることが好ましい。
Si量が0.4%未満では、前記時効硬化能、更には、各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備することができない。一方、Siが1.3%を越えて含有されると、特にヘム加工性やプレス成形性が著しく阻害される。更に、溶接性を著しく阻害する。したがって、Siは0.4 〜1.3%の範囲とする。なお、アウタパネルでは、ヘム加工性が特に重視されるため、プレス成形性とともにフラットヘム加工性をより向上させるために、Si含有量を0.6 〜1.2%と、より低めの範囲とすることが好ましい。
Mg:0.2〜1.2%。
Mgは、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記人工時効処理時に、SiとともにGPゾーンなどの化合物相を形成して、時効硬化能を発揮し、パネルとして、例えば170MPa以上の必要強度を得るための必須の元素である。
Mgの0.2%未満の含有では、絶対量が不足するため、人工時効処理時に前記化合物相を形成できず、時効硬化能を発揮できない。このためパネルとして必要な170MPa以上の必要強度が得られない。
一方、Mgが1.2%を越えて含有されると、却って、プレス成形性や曲げ加工性等の成形性が著しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.2 〜1.2%の範囲で、かつSi/Mg が質量比で1.0 以上となるような量とする。また、フラットヘム加工性をより向上させるために、Si含有量を前記0.6 〜1.2%のより低めの範囲とする場合には、これに対応して過剰Si型6000系Al合金組成とするために、Mg含有量も0.2 〜0.7%と低めの範囲とすることが好ましい。
Cu:0.001〜1.0%
Cuは、本発明の比較的低温短時間の人工時効処理の条件で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促進させる効果がある。また、時効処理状態で固溶したCuは成形性を向上させる効果もある。Cu含有量が0.001%未満ではこの効果がない。一方、1.0%を越えると、耐応力腐食割れ性や、塗装後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接性を著しく劣化させる。このため、耐食性が重視される構造材用途などの場合には0.8%以下、自動車外板用などのパネル用途などの場合には、耐糸さび性の発現が顕著となる0.1%以下の量とすることが好ましい。
Mn:0.01 〜0.65%
Mnには、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。前記した通り、本発明Al合金板のプレス成形性やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細なほど向上する。この点、Mn含有量が0.01% 未満ではこれらの効果が無い。
一方、Mn含有量が多くなった場合、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金板の機械的性質を低下させる原因となる。また、特に、前記複雑形状や薄肉化、あるいはインナパネル端部とアウタパネル縁曲部内面との間の隙間の存在などによって、加工条件が厳しくなったフラットヘム加工では、Mn含有量が0.15% を越えた場合、ヘム加工性が低下する。このため、Mnは0.01〜0.65% の範囲とし、特に前記加工条件が厳しくなったフラットヘム加工では、より好ましくは0.01〜0.15% の範囲とする。
(製造方法)
次ぎに、本発明Al合金板の製造条件について以下に説明する。プレス成形後のパネル構造体表面のリジングマークや肌荒れを抑制し、異方性を有する集合組織 (キューブ方位を有する結晶粒が多く存在する組織) とすることは、常法のAl合金板の製造方法ではできない。言い換えると、常法で得られる通常のAl合金板は、キューブ方位を有する結晶粒の割合が小さく、等方性組織であり、本発明のような異方性を有する、あるいは異方性の強い集合組織とはならない。
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分規格範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。このAl合金鋳塊に500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理を施す。
この均質化熱処理後に、300 〜400 ℃の温度範囲まで50℃/hr 以上の冷却速度で冷却して熱間圧延を開始する。300 〜400 ℃の温度範囲までの冷却速度が50℃/hr 未満では、未固溶のMg、Si析出物が増し、強度が低下する。
熱間圧延開始温度が400 ℃を超えた場合、再結晶が生じて熱間圧延時に粗大な再結晶粒が生成し、リジングマークの原因となる、板の特定方位の結晶粒がスジ状に並ぶことが多くなる。また、熱間圧延開始温度が300 ℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。
更に、熱間圧延の終了温度は、280 ℃以下として、コイル状、板状などの板形状に加工する。熱間圧延終了温度が280 ℃を超えた場合、SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上であるような過剰Si型の6000系Al合金板は、通常は、再結晶しないような280 ℃程度の低温の熱間圧延終了温度でも再結晶しやすく、最終溶体化後のキューブ方位が集積しにくく、前記0 °−90°方向の耳率が-13 % 以上となりやすい。
以上のように、本発明では、均質化熱処理後の鋳塊を冷却して、より低温で熱間圧延を開始するとともに、再結晶温度以下のより低温で熱間圧延を終了させ、熱間圧延板を再結晶しない加工組織主体の組織とする。このため、熱間圧延時に、リジングマークの原因となる、粗大な再結晶粒が生成するのを抑制できる。
熱間圧延板は、10〜80% の圧下率で冷間圧延後、160 〜240 ℃の温度で中間焼鈍し、更に、この中間焼鈍後に、40% 以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化および焼入れ処理する。
先ず、前記焼鈍工程前の前半の冷間圧延の圧下率は10〜80% の比較的低い圧下率とする。この圧下率が10% 未満では、続く、中間焼鈍工程後の後半の冷間圧延の圧下率を高くしても、異方性の強い集合組織を得ることが難しい。
一方、この圧下率が80% を越えた場合、異方性の強い集合組織を得るための効果は飽和しており、無駄に冷間圧延の工程が増えることとなり、工業上での生産性が低下してしまう。
次に、中間焼鈍工程後の後半の冷間圧延の圧下率を15% 以上として、異方性を有する集合組織を得る。後半の冷間圧延で、冷間圧延板に十分な歪みエネルギーを蓄積できる。この結果、後の溶体化を含む調質処理で、キューブ方位を有する多くの結晶粒を成長させることができ、異方性の強い集合組織を得ることができる。
この圧下率が15% 未満では、キューブ方位を有する結晶粒が成長するに十分な歪みエネルギーが蓄積できず、異方性を有する集合組織を得ることが難しい。
なお、一方で、冷間圧延での圧下率が高くなるほど、耳割れが生じるなど加工自体が困難となるので、圧下率の上限は95% 程度とするのが好ましい。
冷間圧延途中の中間焼鈍は、キューブ方位を有する微細な再結晶粒もしくは亜結晶粒を特定量成長させ、最終の溶体化処理で、立方体方位が発達し易くし、異方性を有する集合組織を得るために必須の工程である。この効果を生じるために160 〜240 ℃の温度で中間焼鈍焼鈍する必要がある。なお、焼鈍の時間は1 〜50時間とすることが好ましい。
この焼鈍温度が160 ℃未満では、前半の冷間圧延の圧下率との関係で、キューブ方位を有する結晶粒成長の効果がなく、異方性を有する集合組織とすることができない。一方、焼鈍温度が240 ℃を越えた場合、平均結晶粒径が50μm を越えて粗大化しやすく、プレス成形によって、パネル構造体表面にリジングマークや肌荒れが生じ易くなる。なお、この焼鈍は、バッチ炉、連続焼鈍炉などの種々の炉を適宜用いて行うことができる。
冷間圧延後のAl合金板は、調質処理として、必須に溶体化および焼入れ処理される。溶体化および焼入れ処理は、後の塗装焼き付け硬化処理などの人工時効硬化処理によりGPゾーンなどの化合物相を十分粒内に析出させるために重要な工程である。この効果を出すための溶体化処理条件は、500 〜560 ℃の温度範囲で行うのが好ましい。これによって、Al合金板の0.2%耐力を、プレス成形やヘムなどの曲げ加工後の塗装工程などにおける前記低温短時間の人工時効硬化処理でも、170MPaを越えるような高強度のパネルとする。
溶体化処理後の焼入れの際には、冷却速度は50℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却速度が50℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度が低くなり、時効硬化能が不足し、前記低温短時間の低温での人工時効処理により170MPa以上の高耐力を確保できない。
また、粒界上にSi、Mg2Si などが析出しやすくなり、プレス成形やフラットヘム加工時の割れの起点となり易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよいが冷却速度が遅くなる可能性が大きく、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して行うことが好ましい。
本発明では、成形パネルの塗装焼き付け工程などの人工時効硬化処理での時効硬化性を高めるため、溶体化焼入れ処理後のクラスターの生成を抑制し、GPゾーンの析出を促進するために、予備時効処理をしても良い。この予備時効処理は、50〜100 ℃、好ましくは60〜90℃の温度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好ましい。
この予備時効処理として、溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるいは、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに50〜100 ℃に再加熱して行う。
また、連続溶体化焼入れ処理の場合には、前記予備時効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高温でコイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取る前に再加熱しても、巻き取り後に保温しても良い。また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
この他、用途や必要特性に応じて、更に高温の時効処理や安定化処理を行い、より高強度化などを図ることなども勿論可能である。
このような製造条件を適正に選択して得られたAl合金板の0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲である集合組織の異方性を有する。言い換えると、Al合金板の0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲となるように、前記成分組成範囲および製造条件範囲から、最適条件を選択する必要がある。
次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示すA 〜F の組成の6000系Al合金板を、表2 に示す条件で、均質化熱処理 (均熱処理とも略記) および熱間圧延し、更に、集合組織制御のための冷間圧延 (前半) 、中間焼鈍、冷間圧延 (後半) を行い、溶体化および焼入れ処理した。
試験材Al合金板の、より具体的な製造条件は以下の通りである。表1 に示す各組成の400mm 厚の鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、表2 に示す温度で均質化熱処理を施した。均質化熱処理に、表2 に示す条件の冷却速度で熱延開始温度まで冷却し、各終了温度で厚さ5mmtまで熱間圧延した。この熱間圧延板を、表2 に示す冷延率、温度条件で、集合組織制御のための冷間圧延 (前半) 、中間焼鈍( 時間は各例とも共通して4hr)、冷間圧延 (後半) を行い、厚さ1.0mm の冷延板を得た。そして、この冷延板を、連続式の熱処理設備で、各例とも共通して、550 ℃の溶体化処理温度に到達した時点で (保持時間 0秒) 、直ちに室温まで200 ℃/ 秒の急冷にて焼入れ、この焼入れ後直ちに、70℃の温度で1 時間保持する予備時効処理を行った。
これら調質処理後の各Al合金板から試験用の幅500mm ×長さ500mm の供試板 (ブランク) を複数枚切り出し、調質処理後に十分室温時効したAl合金板がプレス成形およびヘム加工されることを想定して、前記調質処理後 3カ月間 (90日間) の室温時効後の、各供試板の0 °−90°方向の耳率(%) 、平均結晶粒径 (μm)、圧延方向に対し0 °の方向の引張強さ (σB : ASσB と記載) 、0.2%耐力 (σ0.2: AS σ0.2 と記載) および伸び(%) などの引張試験特性を各々測定した。また、ヘム加工性、リジングマーク性を含むプレス成形性、ベーク後の0.2%耐力( σ0.2:ABσ0.2 と記載) などのパネル特性も、併せてこの室温時効後の供試板で評価した。これらの結果を表3 に示す。
各供試板の0 °−90°方向の耳率および平均結晶粒径の測定は前記した方法で行なった。
引張試験特性測定のための引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行った。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。なお、ベーク後の0.2%耐力(AB 耐力) は、170 ℃×30分の塗装焼き付け条件に沿って、170 ℃×30分の人工時効硬化処理後の供試板の引張試験により求めた。
プレス成形性評価試験条件は、前記供試板 (ブランク) を、中央部に一辺が300mm で高さが30mmと高い角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフランジ部 (幅30mm) を有するハット型のパネルに、1000トンの大型プレスにより金型を用いて張出成形した。この際、しわ押さえ力は49kN、潤滑油は一般防錆油、成形速度は20mm/ 分とした。
張出成形試験は、同じ条件で5 回行い、5 回とも成形ハット型パネルの張出部角部などに割れがなく正常に成形できた例を〇、5 回のうち少なくとも1 回以上割れが生じたが他は成形できたものを△、5 回とも成形ハット型パネルに割れが生じて成形できなかったものを×として評価した。
成形品のリジングマークなどの表面性状の評価は、上記張出成形試験の成形品を洗浄後、同一条件でリン酸亜鉛処理、塗装および焼き付け処理を行った後の成形品表面の外観を目視観察にてリジングマークの発生状況を評価した。前記5 回(5個) の成形品表面 (成形時割れたものを含む) に、5 個とも全てリジングマークが生じていないものを〇、1 個以上軽度のリジングマークが生じているものを△、1 個以上顕著なリジングマークが生じているものを×と評価した。
この際のリン酸亜鉛処理は、リン酸チタンのコロイド分散液による処理を行い、次いでフッ素を50ppm の低濃度含むリン酸亜鉛浴に浸漬してリン酸亜鉛皮膜を成形材表面に形成した。その後の塗装処理は、カチオン電着塗装を行った後に、170 ℃×30分の焼き付けを行う条件とした。
ヘム加工性は、前記プレス成形後フラットヘム加工されることを模擬して、常温にて、試験材に10% のストレッチを行った後、曲げ試験を行い評価した。試験片条件は、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に、180 度に曲げた。この際、例えば、アウタパネルのヘム加工ではインナパネルが曲げ部内に挟み込まれるが、条件を厳しくするために、このようなAl合金板を挟み込まないで180 度に曲げた。試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、曲げ部表面に割れや肌荒れなどの以上が無いものを○、割れは無いが肌荒れが生じているものを△、割れがあるものを×と評価した。
表1 、2 に示す通り、発明例1 〜9 は、本発明成分組成範囲内で、かつ、本発明条件範囲で、均質化熱処理および熱間圧延し、更に、集合組織制御のための冷間圧延 (前半) 、中間焼鈍、冷間圧延 (後半) を行なっている。この結果、表3 に示す通り、得られたAl合金板の0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲である集合組織の異方性を持つとともに、平均結晶粒径が50μm 以下である。このため、室温時効して成形性が低下していた過剰Si型の組成の6000系Al合金板の例でも、リジングマークを含めたプレス成形性とヘム加工性とに優れている。
なお、発明例の中でも、発明例2 は均質化熱処理後の冷却速度が比較的遅い。発明例3 は冷却速度が比較的速い。発明例4 は均熱温度が比較的低い。発明例5は均熱温度が比較的高い。発明例6は熱延終了温度が比較的高い。
そして、発明例7は冷間圧延率 (前半) が比較的高く、中間焼鈍温度が比較的高く、冷間圧延率 (後半) が比較的低い。このため、発明例7は、同じ合金例A を用い最適条件内で製造した発明例1 に比して、プレス成形性とヘム加工性とが比較的低い。
これに対して、比較例10〜16は、上記発明例1 〜6 と同じ合金例A を用いている。しかし、比較例10は均質化熱処理後の冷却速度が発明範囲を外れて遅い。比較例11は冷却速度は速いものの熱間圧延開始温度が発明範囲を外れて高い。比較例12は熱間圧延終了温度が発明範囲を外れて高い。比較例13は中間焼鈍温度が発明範囲を外れて高く、比較例14は中間焼鈍温度が発明範囲を外れて低い。更に、比較例15は冷間圧延率 (前半) が発明範囲を外れて低い。比較例16は冷間圧延率 (後半) が発明範囲を外れて低い。
この結果、表3 に示す通り、比較例10〜16は、得られたAl合金板の0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲から外れているか、平均結晶粒径が50μm を超えている。このため、リジングマーク抑制、プレス成形性、ヘム加工性のいずれかが発明例に比して著しく劣っており、これら特性を兼備できていない。
Si量が0.4%未満で成分組成が外れる合金E を用いた比較例17は、平均結晶粒径が50μm 以下で、 0°−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲内であるものの、プレス成形性が発明例に比して著しく劣っている。
一方、Si量が1.4%を超えて成分組成が外れる合金F を用いた比較例18は、ヘム加工性が発明例に比して著しく劣っている。
したがって、以上の実施例の結果から、本発明の各要件の持つ臨界的な意義乃至効果が裏付けられる。
Figure 0004939091
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本発明によれば、集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金板の製造方法において、更に、リジングマーク性に優れた、Al合金板の製造方法を提供できる。この結果、自動車、船舶あるいは車両などの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用として、また、特に、自動車などの輸送機の部材に、集合組織に異方性を持たせた6000系Al合金材の適用を拡大できる。
Al合金板のCube方位の集積度を示す面積率と耳率(%) との関係を示す説明図である。 Al合金板の耳率(%) を測定するためのAl合金板をカップ状に成形加工した状態を示す説明図である。 Al合金板の耳率(%) とヘム加工性の評価 (ヘム試験標点) との関係を示す説明図である。 Al合金板の伸び(%) と0 °方向の耳率との関係を示す説明図である。

Claims (4)

  1. 質量% で、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.2〜1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を、500 ℃以上融点未満の温度で均質化熱処理した後、300 〜400 ℃の温度範囲まで50℃/hr 以上、100℃/hr以下の冷却速度で冷却して熱間圧延を開始し、この熱間圧延を280 ℃以下の温度範囲で終了し、10〜80% の圧下率で冷間圧延後、160 〜240 ℃の温度で中間焼鈍し、更に15% 以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化および焼入れ処理し、得られたアルミニウム合金板の0 °−90°方向の耳率が-13 〜-17%の範囲である集合組織の異方性を持たせるとともに、平均結晶粒径が50μm 以下であることを特徴とする曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  2. 前記SiとMgとの質量比Si/Mg が1 以上である請求項1に記載の曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  3. 前記Cu含有量を0.1%以下に規制した請求項1または2に記載の曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  4. 前記アルミニウム合金板が自動車外板用である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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