JP4186240B2 - 成形加工用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋根、インテリア、カーテンウオール等の建材、器物、電気部品、光学機器、自動車、鉄道車両及び航空機等の輸送機器、一般機械部品等の用途に適する、成形加工後の表面外観に優れる成形加工用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板材に関する。
【0002】
【従来の技術】
6000系(Al−Mg−Si系)アルミニウム合金は、耐食性及び常温での成形加工性が比較的優れ、人工時効処理により高強度が得られることから、成形性あるいは軽量化、薄肉化が要求される用途に適している。Al−Mg−Si系合金板材は、通常、均質化処理後、熱間圧延し、続いて中間焼鈍した後、必要に応じて冷間圧延を施して所定厚の板材とし、これに溶体化焼入れを施し、さらにその後必要に応じてスキンパス、冷間圧延、ストレッチ等を施して製造される。
【0003】
ところが、Al−Mg−Si系合金板材に対し成形加工を行ったとき、特開平7−228956号公報又は特開平8−232052号公報に記載されているように、板表面にリジングマークと呼ばれる表面荒れが発生することが問題となっている。リジングマークとは成形加工したとき板表面に新たに生じる圧延方向に対して平行な筋状の凹凸であり、特に圧延方向に対して90゜方向への加工度が大きいとき、例えば引張加工、絞り加工、しごき加工を行った場合、顕著に生じる。このリジングマークが発生すると、表面が極めて美麗であることが要求されるインテリア、カメラケース、自動車用外板パネル等の用途には外観不良として使用できず、また、リジングマークは塗装を行った場合特に目立つようになるため、成形加工後気付かれないまま塗装工程に進み、塗装後に初めて認識されることもある。つまり製品になって初めて現れることがあるという困った特性を持っている。
【0004】
前記特開平7−228956号公報及び特開平8−232052号公報は、Al−Mg−Si系合金板材についてリジングマークの発生を防止する方法に関し、前者が、均質化処理後350〜450℃の温度まで冷却して熱間圧延を開始し、200〜300℃の温度で熱間圧延を終了し、必要に応じて中間焼鈍を行った後、冷間圧延、溶体化焼入れを施すというもの、後者が、均質化処理後450℃以下の温度まで冷却して熱間圧延を開始し、200〜350℃の温度で熱間圧延を終了し、必要に応じて350〜420℃の中間焼鈍を行った後、冷間圧延、溶体化焼入れ、さらに最終加熱処理を施すというものであり、いずれも熱間圧延温度を低めに設定し、同時にその他の各工程の処理条件も厳密に制御し、微細かつ結晶学的方位がランダムな結晶粒を生じさせることにより、リジングマークの発生を防止しようというものである。
【0005】
しかし、特開平7−228956号公報ではリジングマークが発生しなかったとされるプレス加工の変形量の開示がなく、特開平8−232052号公報ではプレス加工のシミュレーションとして高々2%の引張変形が行われたに過ぎない(つまり、高々2%の引張変形に相当する成形加工により発生するリジングマークを防止することが意図されているに過ぎない)。しかも、これらの先行技術はリジングマークが発生しない板材自体の構成を解明したものではないため、当該方法に従って製造した板材が確かにリジングマークが発生しないかどうかは、実際にこの板材をプレス成形するまで(あるいはさらに塗装して製品にするまで)分からないという問題が残っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、Al−Mg−Si系アルミニウム合金の中間焼鈍省略材(熱間圧延後の中間焼鈍を省略して冷間圧延を行ったもの)について、リジングマークの発生を防止する方法を検討する過程で、熱間圧延終了温度を比較的高温度に設定したとき、リジングマークを防止できることを見いだした。さらに、そのようにして製造されたリジングマークが発生しない板材が特定の内部組織状態を示すことを見いだし、また、リジングマーク発生防止につながるこの内部組織状態が、Al−Mg−Si系アルミニウム合金の中間焼鈍省略材だけでなく、中間焼鈍材(熱間圧延後に中間焼鈍を施したもの)、熱間圧延材(熱間圧延まま材)、冷間圧延材(冷間圧延まま材)、焼鈍材(O材)、時効処理材(T5、T6材)、ストレッチ材(溶体化後ストレッチしたもの)等にも等しく適用されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る成形加工用アルミニウム合金板材は、Si:0.2〜1.8%、Mg:0.2〜1.6%を含有し、圧延方向に伸張したマクロ結晶粒を有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材において、圧延直角方向に測定したマクロ結晶粒の粒径が1.5mm以下であることを特徴とする。後述する理由から、このマクロ結晶粒の粒径は、板厚の1/4深さにおいて測定したものとする。
本発明でいうマクロ結晶粒とは、表面を研磨した後、電気化学的あるいは化学的にエッチングすることにより、通常、肉眼又は10倍以下程度の拡大で容易に観察できる結晶粒である。各マクロ結晶粒は互いに方位差が大きいため、表面での光の反射方向が大きく異なり、このように肉眼で容易に観察できる。また、各マクロ結晶粒は多数のミクロ結晶粒から構成され、熱間圧延及び/又は冷間圧延後は圧延方向に伸張している。
【0008】
一方、ミクロ結晶粒は通常いわれている結晶粒のことであり、表面を研磨した後、電気化学的あるいは化学的にエッチングし、光学顕微鏡で数10倍以上に拡大することで観察できる組織である。ただし、一般には各ミクロ結晶粒の方位差は小さいため、各ミクロ結晶粒は容易に区別できない。このため、偏光顕微鏡を用いるか、ミクロ結晶粒の境界を優先的にエッチングして観察する必要がある。マクロ結晶粒は小さいものでも100μm程度はあり、ミクロ結晶粒との大きさの差はけた違いである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板材の中で、中間焼鈍省略材を例にとり、本発明をより詳細に説明する。
Al−Mg−Si系合金の中間焼鈍省略材は、先に述べたように、均質化処理後、熱間圧延し、続いて中間焼鈍を省略して冷間圧延を施し、所定厚の板材とした後、これに溶体化焼入れを施して製造されるが、このとき熱間圧延温度を高めに設定し再結晶させる必要がある。再結晶をしなければ、圧延方向に伸張したマクロ結晶粒は熱間圧延及び冷間圧延を通してその粒径(圧延直角方向)が実質変化せず、粗大なマクロ結晶粒のままである。しかし、再結晶させることでマクロ結晶粒は細粒化し、1.5mm以下というマクロ結晶粒径を得ることが可能となる。再結晶によってもマクロ結晶のこの伸張した形態は保存される。
【0010】
このマクロ結晶粒は、図1に示すように圧延方向に対しほぼ平行に向く筋模様として観察される。なお、図1は、中間焼鈍省略材の表面から板厚の1/4深さ位置における金属組織写真(王水でエッチング)であり、(a)は筋模様が細かく、後述する方法により圧延直角方向に測定した粒径が0.7mmのもの(表1のNo.1)であり、(b)は筋模様が粗く、同じく粒径が1.8mm(表1のNo.8)のものである。このように圧延方向に伸張したマクロ結晶粒を有する板材が、特に圧延直角方向に大きい変形を受けると、各マクロ結晶粒の粒界がすべり変形を起こし、粒界において圧延直角方向に段差ができ、これが大きい場合にリジングマークとして観察されるものと考えられる。従って、圧延直角方向に測定したマクロ結晶粒の粒径が小さければ、リジングマークの発生を防止することができる。具体的には、この粒径が1.5mm以下のとき、リジングマークの発生を防止できる。
マクロ結晶粒の粒径の望ましい範囲は0.25〜0.7mmである。マクロ結晶粒の粒径が0.7mm以下のとき、加工率がより高い場合でもリジングマークが発生せず、かつ表面のうねりも少なく、表面が美麗である。このように一段と小さいマクロ結晶粒径は、熱間圧延工程において加工−再結晶を繰り返し起こすことにより得ることができるが、マクロ結晶粒の粒径を0.25mm未満となるとリジングマーク防止の改善効果が飽和する。
【0011】
なお、熱間圧延の加工率は板材の表面及びその近傍において高く、熱間圧延終了時には板厚内部に比べ再結晶がより進行して等軸状の結晶粒にほとんど又は完全に置き代わっていることもあり、その場合、表面ではマクロ結晶粒を観察することは難しい。また、通常マクロ結晶粒の粒径は表面で小さく中心にいくほど大きくなっていることから、本発明では、板材のマクロ結晶粒径として平均的と思われる板厚の1/4深さでの粒径を指標として選択する。
【0012】
一方、板材が高い温度で熱間圧延を受けることにより再結晶を起こすと、再結晶粒は粗大化する傾向にある。粗大なミクロ結晶粒ができると成形加工により板材表面にオレンジピールが生じやすいため、ミクロ結晶粒の粒径は45μm以下になるようにするのが望ましい。そのためには、例えば冷間圧延の冷延率を高めに設定し、続く溶体化処理で微細な再結晶粒が得られるようにするのがよい。
【0013】
熱間圧延条件の目安として、粗圧延及び仕上げ圧延を通し圧延開始温度が均熱温度以下(例えば540℃以下)、圧延終了温度が350〜450℃となるように高めに設定するのが望ましいが、結果的に熱間圧延後に再結晶により1.5mm以下に細粒化したマクロ結晶粒が得られるのであれば、これと異なる温度条件を採用することもできる。その他の均質化処理、冷間圧延、溶体化焼入れ等の条件については、従来法の中間焼鈍有り材とほぼ同じでよい。
【0014】
以上は、Al−Mg−Si系アルミニウム合金の中間焼鈍省略材を例にとって説明したが、先にも述べたように、本発明は、中間焼鈍材(熱間圧延後に中間焼鈍を施したもの)、熱間圧延材(熱間圧延まま材)、冷間圧延材(冷間圧延まま材)、焼鈍材(O材)、時効処理材(T5、T6材)、溶体化焼入れ材(T4材)、ストレッチ材(溶体化後ストレッチしたもの)等、種々のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材に等しく適用される。いずれにしても、熱間圧延あるいはその後の焼鈍により再結晶を起こし、マクロ結晶粒が1.5mm以下に細粒化されていれば、リジングマークを防止することができる。
【0015】
一方、成分組成の面でいえば、本発明は、Si:0.2〜1.8%、Mg:0.2〜1.6%を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金のほか、必要に応じて、さらに▲1▼Zn:0.005〜1.0%、Cu:0.005〜1.0%、Ti:0.001〜0.1%、▲2▼B:1〜300ppm、Be:0.1〜100ppm、▲3▼Mn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.15%以下、V:0.15%以下のうちから1種又は2種以上を合計で0.01〜1.5%、のいずれか又はこれらを組み合わせて含有するアルミニウム合金など、Si:0.2〜1.8%、Mg:0.2〜1.6%を含有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金全てに適用し得る。Al−Mg−Si系合金の組成を上記のように規定した理由は下記のとおりである。
【0016】
Mg:MgはSiとともに強度を付与する元素であるが、0.2%未満では人工時効で十分な強度が得られず、一方、1.6%を越えると成形性が低下する。従って、Mg含有量は0.2〜1.6%の範囲とする。
Si:SiはMgとともに強度を付与する元素であるが、0.2%未満では人工時効で十分な強度が得られず、一方、1.8%を越えると伸びが低くなり、成形性が低下する。従って、Si含有量は0.2〜1.8%の範囲とする。なお、人工時効で高い強度を得るには、MgとSiとの含有量の割合を、Si/Mg≧0.65とすることが望ましい。
【0017】
Zn:Znは人工時効時においてMgZn2を微細かつ高密度に析出させ高い 強度を実現させる。ただし、0.005%未満では十分な強度が得られず、一方1.0%を越えると耐食性が顕著に低下するため、含有量は0.005〜1.0%の範囲とする。
Cu:Cuは人工時効時にMg2Siを微細にかつ高密度に析出させ、高い強 度を実現させる。ただし、0.005%未満では効果がなく、一方、1.0%を越えると耐食性及び溶接性が顕著に低下するため、含有量は0.005〜1.0%の範囲とする。
Ti:Tiは鋳塊の結晶粒を微細化し、成形性を向上させるために添加する元素であるが、0.001%未満では効果がなく、一方、0.1%を越えて添加されると粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。このため、Ti含有量は0.001〜0.1%の範囲とする。
【0018】
B:BはTiと同様に鋳塊の結晶粒を微細化し、成形性を向上させるために添加する合金であるが、1ppm未満の添加では効果がなく、300ppmを越えて含有されると粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。このため、B含有量は1〜300ppmの範囲とする。
Be:Beは空気中におけるアルミニウム溶湯の再酸化を防止するため、必要があれば0.1ppm以上含有させる。しかし、100ppmを越えると材料硬度が増大し成形性が低下するため、Be含有量は0.1〜100ppmの範囲とする。
【0019】
Mn、Cr、Zr、V:これらの成分は均質化熱処理時及びその後の熱間圧延時にAl20Cu2Mn3、Al12Mg2Cr、Al3Zr、Al2Mg3Zn3等の分 散粒子を生成する。これらの分散粒子は再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる。しかし、過剰な添加は溶解鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、成形加工時の破壊の起点となり、成形性を低下させる原因となる。また、Zrの過剰添加はミクロ組織を針長状にしやすく、特定方向の破壊靱性及び疲労特性さらには成形性を劣化させる。このため、Mn、Cr、Zr、Vそれぞれの添加量は、1.0%、0.30%、0.15%、0.15%以下とする。
【0020】
Fe:不純物として含まれるFeは、Al7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2、(Fe,Mn)Al6等の晶出物を生成する。これらの晶出物は破壊靱 性及び疲労特性に対して有害であり、Fe含有量が0.5%を越えると顕著に破壊靱性、疲労特性及び成形性が低下するため、Fe含有量は0.5%以下とする。なお、晶出物としては、Fe系以外のAl2Cu2Mg、Al2Cu2、Mg2S i等の可溶のものがあり、これらは溶体化処理及び焼入れで十分にAlマトリックス中に再固溶させることが望ましい。
その他の不純物:Niは0.05%以下に制限する。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)Mg0.5%、Si1.3%、Mn0.05%、Fe0.16%、Cr0.25%、Ni0.002%、Zn0.05%、Cu0.1%、Ti0.06%、B:10ppm、Be:30ppmを含み、残部Al及び不純物からなるアルミニウム合金を溶解鋳造し、460mm厚の鋳塊とし、次に540℃×4hrの均熱処理を行った後、表1に示す種々の条件で熱間圧延し、5mm、2.5mm、2mm厚の板とした。続いて、中間焼鈍することなく冷間圧延し、1mm厚の板とした。この板を530℃の溶体化温度に加熱して20秒間保持した後、60℃の温度に冷却速度200℃/秒で焼入れし、そのまま60℃の温度で24時間保持した。その後、室温で3カ月放置した後、板幅の中央部からサンプリングを行い、材料特性を評価し、その結果を表2にあわせて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
なお、表1の各材料特性は次のようにして測定した。
マクロ結晶粒の粒径・・・・板材(70mm×100mm)を80〜90℃の30wt%NaOH水溶液中に約10〜30分間浸漬し、板材両面において表面から板厚1/4ずつ溶解する。さらに#400〜#1000研磨紙を用いて表面を滑らかにし、腐食液(塩酸75,硝酸25,フッ酸5の割合)で化学エッチング(45〜55℃×5分間)した後、圧延方向に対して90゜方向に表面形状測定の接触センサーを走査させ、化学エッチングで生じた表面の凹凸を測定し、チャート紙上に記録した。1箇所当りの走査長は15〜20mm、1サンプル当り測定点は15箇所(総走査長225〜300mm)とした。チャート紙上には化学エッチング後の表面形状を表す短周期と長周期の2種類の波が示され、マクロ結晶粒の粒径は長周期で示される波の波長を用いて規定し、全ての平均値をマクロ結晶粒の粒径とした。なお、表1中のNo.2の波形の一部を図2に、No.5の波形の一部を図3に示す(矢印の幅が長周期の波長)。
【0024】
ミクロ結晶粒の粒径・・・・板表面を約0.05〜0.1mmまで機械研磨した後、電解エッチングし、光学顕微鏡(偏光板使用)を用いて観察した。粒径は圧延方向でラインインターセプト法にてL−L面を測定した。1測定ライン長は500μmであり、1視野当り各5本で計5視野観察した。なお、熱間圧延材(冷間圧延材、ストレッチ材でも同様)では、ミクロ結晶粒を観察面全体に現出させることが難しい。従って、実施例2ではミクロ結晶粒と判別された粒を50個選び、その圧延方向の平均粒径を測定した。
耐力、伸び・・・・JIS−Z2241に準拠し、常温大気中で、JIS5号試験片を用いLT方向(圧延方向に対して90゜方向)に引張速度5mm/分にて引張試験を行って求めた。
【0025】
リジングマークの有無・・・・電解研磨により表面を鏡面(Ra<0.1μm)としたサンプル板材(70mm×150mm)を、プレス加工のシミュレーションとして圧延方向に対して90゜方向に20%の引張変形を行い、表面の凹凸の程度を肉眼で観察し、圧延方向に対して平行な筋模様(筋状の凹凸)が顕著に観察される場合を×、リジングマークと判別できない場合は○と評価した。なお、参考として、表面形状測定器により圧延方向に対して90゜の方向において表面の凹凸を測定した結果を、図4(表1のNo.2に対応)及び図5(表1のNo.8に対応)に示す。
オレンジピールの有無・・・・上記のサンプル板材(20%引っ張り変形後)について、表面に梨地模様が顕著に観察される場合を×、梨地模様が判別困難な場合を○と評価した。
【0026】
表1に示すように、板厚1/4部位におけるマクロ結晶粒径が本発明の規定の範囲内であるNo.1〜No.4、No.9、No.10はリジングマークが発生せず、さらにミクロ結晶粒径が本発明の規定の範囲内であるNo.1〜No.3、No.9、No.10はオレンジピールの発生もなかった。一方、本発明の規定の範囲外であるNo.5〜No.8はリジングマークが発生した。なお、No.1〜No.4、No.9、No.10の板材を熱間圧延終了時に調査したところ、主に等軸状のミクロ結晶粒が観察され、再結晶が起こっていたことが分かった。
【0027】
(実施例2)Mg1.0%、Si0.6%、Zn0.25%、Cu0.2%、Ti0.03%、B5ppm、Be0.5ppmを含み、残部Al及び不純物からなるアルミニウム合金を溶解鋳造し、500mm厚の鋳塊とし、次に510℃×10hrの均熱処理を行った後、表2に示す種々の条件で熱間圧延し、1mm厚の板とした。続いて、昇温速度40℃/hrで410℃に加熱し、2hr保持後、室温まで40℃/hrで冷却し、軟質材とした。その後、室温で3カ月放置した後、材料特性を評価した。その結果を表2にあわせて示す。なお、各測定方法は実施例1に準じた。
【0028】
【表2】
【0029】
表2に示すように、板厚1/4部位におけるマクロ結晶粒径が本発明の規定の範囲内であるNo.11、No.12はリジングマークが発生せず、さらにミクロ結晶粒径が本発明の規定の範囲内であるためオレンジピールの発生もなかった。一方、本発明の規定の範囲外であるNo.13はリジングマークが発生した。なお、No.11〜No.12の板材はほとんどのミクロ結晶粒が等軸状であり、再結晶が起こっていたことが分かった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、リジングマークの発生しないAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材を得ることができ、また、成形前又は塗装前の板材の状態で、その板材にリジングマークが発生するかどうか判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 板材の板厚1/4部位に観察された筋模様を示す金属組織写真である。
【図2】 板材の板厚1/4部位に観察された表面の凹凸を示す図である。
【図3】 別の板材の板厚1/4部位に観察された表面の凹凸を示す図である。
【図4】 リジングマークが発生しなかった板材の表面を表面形状測定器で測定した結果を示す図であり、(a)は俯瞰図、(b)は圧延方向に対して90゜方向((a)のAで示す箇所)の凹凸を示す図である。
【図5】 リジングマークが発生した板材の表面を表面形状測定器で測定した結果を示す図であり、(a)は俯瞰図、(b)は圧延方向に対して90゜方向((a)のAで示す箇所)の凹凸を示す図である。
Claims (2)
- Si:0.2〜1.8%(重量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.6%、Zn:0.005〜1.0%、Cu:0.005〜1.0%、Ti:0.001〜0.1%、B:1〜300ppm、Be:0.1〜100ppmを含有し、さらにMn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.15%以下、V:0.15%以下のうちより1種又は2種以上を合計で0.01〜1.5%以下含有し、残部Al及び不可避不純物からなり、圧延方向に伸張したマクロ結晶粒を有するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材において、圧延直角方向に測定したマクロ結晶粒の粒径が0.2〜1.5mmであり、ミクロ結晶粒の粒径が45μm以下であることを特徴とする成形加工用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板材。
- 熱間圧延後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を受けたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板材であることを特徴とする請求項1に記載された成形加工用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板材。
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