JP5148930B2 - プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法、及びプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板 - Google Patents

プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法、及びプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板 Download PDF

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本発明は、ヘム加工等の曲げ加工性に優れ、特に自動車外板に適したプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法、及びプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板に関する。
近年、排気ガス等による地球温暖化対策として、自動車の燃費向上のために、車体の軽量化が求められている。このため、自動車の車体、特に自動車外板に対して、従来から使用されている鋼板に代わって、アルミニウム合金板の適用が増えている。
自動車のフード、ドア、トランクリッド等では、アウターとインナーをアセンブリする際にヘム加工すなわち曲げ加工が行われる。アルミニウム合金は鋼板と比較して曲げ加工性に劣り、さらに従来のAl−Mg−Si系アルミニウム合金はAl−Mg系アルミニウム合金より曲げ加工性に劣り、プレス成形時の加工度が大きい部位ではヘム加工時に割れが発生し、ヘム加工ができないという課題があった。
これまでに、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の曲げ加工性を向上させるためには集合組織制御が重要であり、Cube方位の方位密度を高くすること(詳細にはCube方位の方位密度が20以上)が必要であることが知られている。
その製造方法としては、鋳塊を450℃以上の温度で均質化処理後、100℃/h以上の冷却速度で、350℃未満の所定温度とし、該所定温度で熱間圧延を行い、さらに冷間圧延、溶体化処理、焼入れを行う方法を提案している(特許文献1)。
また、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板のCube方位の方位密度を高くするために、熱間圧延されたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を10%〜50%の圧下率で冷間圧延後、210℃〜440℃で焼鈍し、さらに70%以上の圧下率で冷間圧延した後、溶体化処理、焼入れを行う製造方法も提案されている(特許文献2)。
しかしながら、これらの従来技術では、未だ十分な対策ができているとは言えない。
特開2003−277870号公報 特開2003−321754号公報
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、優れた曲げ加工性を有するプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法、及びプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
第1の発明は、集合組織のCube方位の方位密度が20以上(ランダム比、以下同じ)であり、かつCR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位及びPP方位の方位密度がすべて10以下であるプレス成形用のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造する方法であって、
少なくともSi:0.5〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.5%を含有し、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊を熱間圧延して圧延板を得る圧延工程と、
得られた圧延板を55〜90%の圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
連続焼鈍炉を用い、1℃/s以上の加熱速度、軟化処理時間5min以内、1℃/s以上の冷却速度及び軟化処理温度200℃〜350℃の範囲の条件により、完全に再結晶させない軟化処理を行う軟化処理工程と、
3%〜30%の圧下率で冷間圧延する第2冷間圧延工程と、
溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
焼入れを行う焼入れ工程とを有することを特徴とするプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法にある(請求項1)。
本発明のプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法は、特定の組成を有する鋳塊を用い、特定条件で製造することにより、集合組織のCube方位の方位密度を向上させ、かつCube方位以外の結晶方位の方位密度を抑制して集合組織を制御する。これにより、優れた曲げ加工性を有するプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造することができる。
また、上記製造方法により得られるプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCube方位以外の各々の方位の方位密度がすべて10以下である。この場合には、上記プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、Cube方位の集積度の高い集合組織となるため、ヘム加工等の曲げ加工性に優れた材料となる。
このように、本発明によれば、優れた曲げ加工性を有し、特に、自動車外板に適したプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造することができる。
第2の発明は、少なくともSi:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜1.5%を含有し、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊を熱間圧延した後、55〜90%の圧下率で冷間圧延し、連続焼鈍炉を用い、1℃/s以上の加熱速度、軟化処理時間5min以内、1℃/s以上の冷却速度及び軟化処理温度200℃〜350℃の範囲の条件により完全に再結晶させない軟化処理を行い、さらに3%〜30%の圧下率で冷間圧延した後、溶体化処理、焼入れを行うことにより製造され、
集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位及びPP方位の方位密度がすべて10以下であることを特徴とするプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板にある(請求項2)。
本発明のプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、特定の組成を有する鋳塊を用い、特定条件で製造されることにより、集合組織のCube方位の方位密度が高く、かつ、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が抑制され、集合組織が制御されている。
このように、本発明によれば、優れた曲げ加工性を有し、特に、自動車外板に適したプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を得ることができる。
第1の発明のプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法において得られるプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板、及び第2の発明のプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCube方位以外の各々の方位の方位密度がすべて10以下である。
ここで、アルミニウム合金の集合組織について説明する。アルミニウム合金等の多結晶材料は、いくつかの特定方位に結晶粒が配向した組織、すなわち集合組織を持つことが多い。上記方位としては、Cube方位、CR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位、PP方位等がある。
また、結晶方位が均一に分散して集積がないとき、集合組織はランダムであるという。
また、集合組織の体積分率が変化すると、塑性異方性が変化することが知られている。
上記集合組織のでき方は同じ結晶系の場合でも加工法によって異なる。圧延による板材の集合組織の場合には、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は面を表すミラー指数(hkl)で表現され、圧延方向は方向を表すミラー指数[uvw]で表現される(h,k,l,u,v,wは整数)。そして、hu+kv+lw=0の条件を満たすように、h,k,l及びu,v,wの順番を入れ替えて得られる24通りの等価な方位群をとりまとめて{h,k,l}<u,v,w>と表し、方位の一般的表示としている。
かかる表現方法に基づいて、上記各方位は以下のように示される。
Cube方位:{001}<100>、
CR方位:{001}<520>、
Goss方位:{011}<100>、
Brass方位:{011}<211>、
S方位:{123}<634>、
Copper方位:{112}<111>、
RW方位:{001}<110>、
PP方位:{011}<122>。
上記集合組織の方位密度とは、ランダムな方位に対する各方位の強度を比率で示したものである。
本発明ではこれらの方位から±10度以内の方位のずれは同一の方位であると定義する。ただし、Copper方位及びS方位に関しては、±9度以内の方位のずれは同一の方位であると定義する。
上記方位密度の分布は、例えば、X線回折法を用いて、結晶粒方位分布関数(ODF)を求めることにより測定することができる。
具体的には、X線回折装置で測定した極点図から、3次元方位解析によりODFを求めることで、各結晶方位の方位密度を求める。ODFはBungeの提唱した級数展開法により偶数項の展開次数を22次、奇数項の展開次数を19次として計算する。なお、方位密度は、特定方位の方位密度とランダム方位を有する試料の方位密度との比で示し、ランダム比と表記する。ランダム強度Irは検体試料強度Icから次式により算出する。
Figure 0005148930
ここで、α、βは測定角度、Δsはステップ角度である。
上記集合組織のCube方位の方位密度が20未満である場合や、上記Cube方位以外の各々の方位の方位密度のうちいずれか一つでも10超えである場合には、曲げ加工性が劣化するおそれがある。
また、第1の発明及び第2の発明について、上記プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法は、特定の組成を有する鋳塊に加工を施す。
上記鋳塊は、Si:0.5〜2.0%を含有する。
Siは、ベークハード性を得るために必要であり、例えばMg2Si等のMg−Si系化合物を形成して強度を高めるよう機能する。
Siの含有量が0.5%未満の場合には、150℃〜200℃の範囲内で10〜60分保持する熱処理で十分なベークハード性を得ることができない。一方、Siの含有量が2.0%を超える場合には、曲げ加工時の耐力が高くなり、曲げ加工性が劣化する。
Siの含有量は、更に好ましくは0.8〜1.2%である。
また、上記鋳塊は、Mg:0.2〜1.5%を含有する。
Mgは、上述のSiと同様にベークハード性を得るために必要であり、例えばMg2Si等のMg−Si系化合物を形成して強度を高めるよう機能する。
Mgの含有量が0.2%未満の場合には、150℃〜200℃の範囲内で10〜60分保持する熱処理で十分なベークハード性を得ることができない。一方、Mgの含有量が1.5%を超える場合には、溶体化処理後もしくは最終熱処理完了後の耐力が高くなり、曲げ加工性が劣化する。
Mgの含有量は、更に好ましくは0.3〜0.7%である。
上記鋳塊は、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有する。
Cuは、強度を高め、成形性を向上させるよう機能する。
Cuの含有量が1.0%を超える場合には、強度が高くなりすぎ、曲げ加工性が劣化する。また、耐食性が劣化する。
Znは、表面処理時のリン酸亜鉛処理性を向上させるよう機能する。
Znの含有量が0.5%を超える場合には、耐食性が劣化する。
Fe、Mn、Cr、V、Zrは、強度を高め、結晶粒を微細化して成形加工時の肌荒れを防止するよう機能する。Fe、Mn、Cr、V、Zrの含有量が上述の範囲を超える場合には、粗大な金属間化合物が生成して曲げ加工性が劣化する。
Ti、Bは、鋳造組織を微細化して成形性を向上させるよう機能する。Ti、Bの含有量が、上述の範囲を超える場合には、粗大な金属間化合物が生成して曲げ加工性が劣化する。
また、上記プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法は、特定条件で行われる。
上記製造方法は、上記鋳塊を熱間圧延して圧延板を得る圧延工程を有する。
上記熱間圧延までの製造条件は特に限定されないが、鋳造方法としてはDC鋳造(direct chill casting、直接冷却鋳造)で行うことが好ましく、均質化処理としては、450℃以上の温度で行うことが好ましく、熱間圧延としては、300〜500℃の温度で開始することが好ましい。
そして、得られたAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を55〜90%の圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程を有する。
軟化処理工程を行う前の冷間圧延は、Cube方位の方位密度を高め、かつCube方位以外の方位の方位密度を抑制するために必要な工程である。
上記圧下率が55%未満、及び90%を越える場合には、適正な集合組織を得ることができず、良好な曲げ加工性を得ることができない。
また、150℃〜350℃の温度で完全に再結晶させない軟化処理を行う軟化処理工程を有する。
軟化処理は、Cube方位の方位密度を高め、かつCube方位以外の各々の方位の方位密度を抑制するために必要な工程である。完全に再結晶される温度で軟化処理を行うと、後工程の溶体化処理時の再結晶で結晶粒が大きくなり、成形加工時に肌荒れが生じ易くなる。未再結晶組織が一部でも残存していれば効果があるため、完全に再結晶させない温度での軟化処理を行う必要がある。
軟化処理温度は150℃〜350℃であり、加熱速度、軟化処理時間、冷却速度は完全に再結晶させない範囲で行えばよく、軟化処理温度により異なる。
1℃/s以上の加熱速度、軟化処理時間5min以内、1℃/s以上の冷却速度(いわゆる連続焼鈍炉での軟化処理)では、軟化処理温度は200℃〜350℃の範囲で行うことが好ましい。
50℃/h以下の加熱速度、軟化処理時間1h以上、50℃/h以下の冷却速度(いわゆるバッチ炉での軟化処理)では、軟化処理温度は150℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。
また、3%〜30%の圧下率で冷間圧延する第2冷間圧延工程を有する。
軟化処理後の冷間圧延は、Cube方位の方位密度を高め、かつCube方位以外の方位の方位密度を抑制するために必要な工程である。圧下率は3〜30%であり、上記圧下率が3%未満、あるいは30%を超える場合には、適正な集合組織が得られない。
また、溶体化処理を行う溶体化処理工程と、焼入れを行う焼入れ工程とを有する。
溶体化処理以降の製造条件についても、特に限定されないが、溶体化処理としては、450℃以上の温度で行うことが好ましく、焼入れとしては、120℃以下まで5℃/s以上の冷却速度で冷却することが好ましく、予備時効としては、焼入れ後60min以内に40℃〜120℃の温度で50h以内の熱処理を行うことが好ましい。
(実施例1)
本例は、本発明にかかる実施例及び比較例として、プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C6)を製造した。
まず、表1に示す組成を有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊(合金A)をDC鋳造により造塊した。得られた鋳塊を550℃で6時間の均質化処理を行った後、室温まで冷却した。
Figure 0005148930
次に、上記鋳塊を用いて、圧延工程と、冷間工程と、軟化処理工程と、第2冷間圧延工程と、溶体化処理工程と、焼入れ工程とを行う。
まず、圧延工程において、上記鋳塊を400℃まで再加熱して熱間圧延を開始し、厚さ2.3mm〜23mmの圧延板を得た。熱間圧延の終了温度は250℃とした。
次に、冷間圧延工程において、得られた圧延板を圧下率を50%〜90%の範囲で調整して冷間圧延を行った。
その後、軟化処理工程において、温度を100℃〜400℃の範囲で調整して軟化処理を行った。
そして、第2冷間圧延工程において、圧下率を1%〜35%の範囲で調整して冷間圧延を行って、1.0mmの板とした。
更に溶体化処理工程において540℃で20秒の溶体化処理を行い、焼入れ工程において、20℃/sの冷却速度で室温まで焼入れした。焼入れ後、3分後に100℃で1時間の熱処理を行った。これにより、プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板(試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C6)を得た。
表2に、上記試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C6について、冷間圧延工程の圧下率、軟化処理工程の処理温度及び処理時間、第2冷間圧延工程の圧下率を示す。
Figure 0005148930
次に、上記試料E1〜試料E6、及び試料C1〜試料C6について、最終熱処理から7日後に以下の方法で結晶方位分布関数(ODF)、引張特性、曲げ加工性を評価した。結果を表2に併せて示す。
<結晶方位分布関数>
結晶方位分布関数(ODF)は、X線回折装置(株式会社リガク製RINT2000)で測定した極点図から、3次元方位解析によりODFを求めることで、各結晶方位の方位密度を求めた。ODFはBungeの提唱した級数展開法により偶数項の展開次数を22次、奇数項の展開次数を19次として計算した。なお、方位密度は、特定方位の方位密度とランダム方位を有する試料の方位密度との比で示し、ランダム比と表記した。ランダム強度Irは検体試料強度Icから次式により算出した。
Figure 0005148930
ここで、α、βは測定角度、Δsはステップ角度である。
表2に、Cube方位の方位密度と、Cube方位以外の各々の方位の中で方位密度が最大値を示す方位とその方位密度(Cube方位以外の方位とその方位密度)を示す。例えば、試料E1において、上記Cube方位及びCube方位以外の各々の方位の方位密度は、それぞれCube方位:32、CR方位:1、Goss方位:4、Brass方位:2、S方位:2、Copper方位:1、RW方位:2、PP方位:3であった。そのため、表2の試料E1のCube方位以外の方位とその方位密度には、Cube方位以外の方位で方位密度が最大値を示したGoss方位と、その方位密度の4を示した。
<引張特性>
圧延方向に対して平行方向にJIS5号引張試験片を採取した後、引張試験を行い、耐力を測定した。
耐力が90MPa以上の場合を合格とし、耐力が90MPa未満の場合を不合格とした。
<曲げ加工性>
10%の引張変形を施した後、内側曲げ半径0mmの180°曲げ試験(密着曲げ試験)を行った。曲げ加工方向は圧延方向に対して平行方向で行った。曲げ加工性の評価は目視による曲げ部の外観観察により行い、割れの発生していないものを合格とした。
表2より知られるごとく、実施例としての試料E1〜試料E6は、集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCube方位以外の各々の方位の方位密度がすべて10以下であった。また、引張特性及び曲げ加工性についても良好な結果を示した。
これより、本発明によれば、優れた曲げ加工性を有するプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を得ることができることがわかる。
また、比較例としての試料C1は、冷間圧延工程における圧下率が本発明の下限を下回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C2は、冷間圧延工程における圧下率が本発明の上限を上回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回り、Cube方位以外の方位の方位密度が本発明の上限を上回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C3は、第2冷間圧延工程における圧下率が本発明の下限を下回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C4は、第2冷間圧延工程における圧下率が本発明の上限を上回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C5は、軟化処理工程における処理温度が本発明の下限を下回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C6は、軟化処理工程における処理温度が本発明の上限を上回るため、Cube方位の方位密度が本発明の下限を下回って適正な集合組織を得ることができず、曲げ加工性が不合格であった。
(実施例2)
本例は、本発明にかかる実施例及び比較例として、プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板(試料E7〜試料E15、及び試料C7〜試料C16)を製造した。
まず、表3に示す組成を有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊(合金B〜合金T)をDC鋳造により造塊した。得られた鋳塊を550℃で6時間均質化処理を行った後、室温まで冷却した。
Figure 0005148930
次に、上記鋳塊(合金B〜合金T)のそれぞれに対して、400℃まで再加熱して圧延を開始し、厚さ4.7mmまで圧延した。熱間圧延の終了温度は250℃とした。
その後、圧下率が75%で冷間圧延を行った後、350℃の温度で5分の軟化処理を行った。その後、圧下率が15%で冷間圧延を行って1.0mmの板とした。さらに、540℃で20秒の溶体化処理を行い、20℃/sの冷却速度で室温まで焼入れした。焼入れ後、3min後に100℃で1時間の熱処理を行い、プレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板(試料E7〜試料E15、及び試料C7〜試料C16)を得た。
表4に、試料E7〜試料E15、及び試料C7〜試料C16について、用いた合金を示す。
また、上述の実施例1と同様の方法で結晶方位分布関数(ODF)、引張特性、曲げ加工性を評価した。結果を表4に併せて示す。
Figure 0005148930
表4より知られるごとく、実施例としての試料E7〜試料E15は、集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCube方位以外の各々の方位の方位密度がすべて10以下であった。また、引張特性及び曲げ加工性についても良好な結果を示した。
これより、本発明によれば、優れた曲げ加工性を有するプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を得ることができることがわかる。
また、比較例としての試料C7は、用いた鋳塊のSiの含有量が本発明の下限を下回るため、耐力が不合格であり、150℃〜200℃の範囲内で10〜60分保持する熱処理で十分なベークハード性が得られなかった。
比較例としての試料C8は、用いた鋳塊のSiの含有量が本発明の上限を上回るため、曲げ加工時の耐力が高くなり、曲げ加工性が劣化し、不合格であった。
比較例としての試料C9は、用いた鋳塊のMgの含有量が本発明の下限を下回るため、耐力が不合格であり、150℃〜200℃の範囲内で10〜60分保持する熱処理で十分なベークハード性が得られなかった。
比較例としての試料C10は、用いた鋳塊のMgの含有量が本発明の上限を上回るため、溶体化処理後もしくは最終熱処理完了後の耐力が高くなり、曲げ加工性が劣化し、不合格であった。
比較例としての試料C11は、用いた鋳塊のCuの含有量が本発明の上限を上回るため、強度が高くなりすぎ、曲げ加工性が劣化し、曲げ加工性が不合格であった。
比較例としての試料C12〜試料C16は、用いた鋳塊のFe、Mn、Cr、V、Zrのいずれかの含有量が本発明の上限を上回るため、粗大な金属間化合物が生成して曲げ加工性が劣化し、不合格であった。

Claims (2)

  1. 集合組織のCube方位の方位密度が20以上(ランダム比、以下同じ)であり、かつCR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位及びPP方位の方位密度がすべて10以下であるプレス成形用のAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を製造する方法であって、
    少なくともSi:0.5〜2.0%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.5%を含有し、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊を熱間圧延して圧延板を得る圧延工程と、
    得られた圧延板を55〜90%の圧下率で冷間圧延する冷間圧延工程と、
    連続焼鈍炉を用い、1℃/s以上の加熱速度、軟化処理時間5min以内、1℃/s以上の冷却速度及び軟化処理温度200℃〜350℃の範囲の条件により、完全に再結晶させない軟化処理を行う軟化処理工程と、
    3%〜30%の圧下率で冷間圧延する第2冷間圧延工程と、
    溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
    焼入れを行う焼入れ工程とを有することを特徴とするプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 少なくともSi:0.5〜2.0%、Mg:0.2〜1.5%を含有し、さらにCu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有し、残部が不可避的不純物とアルミニウムとからなる鋳塊を熱間圧延した後、55〜90%の圧下率で冷間圧延し、連続焼鈍炉を用い、1℃/s以上の加熱速度、軟化処理時間5min以内、1℃/s以上の冷却速度及び軟化処理温度200℃〜350℃の範囲の条件により完全に再結晶させない軟化処理を行い、さらに3%〜30%の圧下率で冷間圧延した後、溶体化処理、焼入れを行うことにより製造され、
    集合組織のCube方位の方位密度が20以上であり、かつCR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位及びPP方位の方位密度がすべて10以下であることを特徴とするプレス成形用Al−Mg−Si系アルミニウム合金板。
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