JP2006257475A - プレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材とその製造方法および該板材から得られる自動車外板 - Google Patents
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Abstract
【目的】形状の複雑なプレス加工にも対応可能なプレス成形性に優れた6000系アルミニウム合金板材を提供する。
【構成】Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.2%を含有し、不純物として含有するFeが1.0%以下であり、残部Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯圧延板材のT4調質材であって、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r0、r90、r45がいずれも0.60以上であり、さらにr値の面内異方性指数Δr(Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.20以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【構成】Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.2%を含有し、不純物として含有するFeが1.0%以下であり、残部Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯圧延板材のT4調質材であって、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r0、r90、r45がいずれも0.60以上であり、さらにr値の面内異方性指数Δr(Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.20以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、溶湯圧延法(連続鋳造圧延法ともいう)により作製したアルミニウム合金板材のT4調質材であり、特にプレス加工性に優れたAl−Mg−Si系合金板材とその製造方法および該板材より得られる自動車外板に関する。
従来、自動車車体用アルミニウム合金板材として、5000系合金(Al−Mg系合金)が使用されてきた。5000系合金は強度および延性に優れ、良好な成形性を示すが、Mg添加量が多くなると熱間加工性が劣化するとともに、成形時にS−Sマーク(ストレッチャ・ストレインマーク)が発生しやすくなり、外観不良となることがあるため、近年では6000系合金(Al−Mg−Si系合金)の使用が拡大している。
6000系合金は成形性に優れ、塗装焼付け処理を行うことにより強度が上昇し、耐デント性に優れているが、冷延鋼板に比べてコスト高となるという問題があり、使用される範囲が制限されている。このため、6000系合金においては、製造コストの低減が課題となっており、従来のDC鋳造/熱間圧延法に代わる低コストの製造工程の検討が行われてきた。
従来のDC鋳造/熱間圧延法に代わる工程として、双ロール溶湯圧延法による板材の製造が提案されており、例えば、特に表層部の金属組織における連続した晶出物の最大長さを50μm以下にすることで、成形性と表面性状に優れた6000系板材を得る手法(特許文献1参照)や、Mg,Si,Mnなどの含有量が規定されるAl−Mg−Si合金溶湯を、150℃/sec以上の凝固速度で連続鋳造し、冷間圧延により所定の板厚とした後、520〜560℃で溶体化処理を行い、30秒以内に急冷することで強度、成形性等に優れたAl−Mg−Si系合金板を得る方法(特許文献2参照)が提案されている。また、特定量のMg,Si,Feなどを含有するAl−Mg−Si合金を連続鋳造し、熱間圧延後に冷間圧延を行って、不溶性化合物の最大長さを2μm以下、かつその体積分率を2.0%以下に制御することにより、プレス成形性における割れ限界が高く、かつ焼付塗装硬化性にも優れ、さらに連鋳・直送圧延法に適用することのできる自動車パネル用Al−Mg−Si系合金板を得る技術手法も提案されている(特許文献3参照)。
特開平10−130766号公報
特開平10−259464号公報
特開平07−252570号公報
しかしながら、本発明者等が、上記提案の技術手法に従って、6000系アルミニウム合金板材を作製し、その特性について検討を行ったところ、一般的には従来材に比べて成形性に優れたアルミニウム合金板材が得られるものの、自動車車体用として供するために、形状の複雑なプレス加工を行うにはなお成形性が十分でない場合が少なくなく、さらに成形性改善の必要性が認められた。
発明者等は、プレス成形性の改善を目的として、6000系アルミニウム合金の溶湯圧延材のプレス成形特性について検討を重ねた結果、プレス成形性の向上にはr値(ランクフォード値)の制御が重要であり、さらに、適正な集合組織の制御、結晶粒径の制御もプレス成形性の向上に効果的であることを見出した。
本発明は、上記の知見に基いてさらに試験、検討を加えた結果としてなされたものであり、その目的は、形状の複雑なプレス加工にも対応可能なプレス成形性に優れた6000系アルミニウム合金板材とその製造方法および自動車外板を提供することにある。
上記の目的を達成するための請求項1によるプレス加工性に優れたAl-Mg-Si系合金板材(以下、単にアルミニウム合金板材)は、Si:0.4〜1.5%、Mg:0.2〜1.2%を含有し、不純物として含有するFeが1.0%以下であり、残部Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯圧延板材のT4調質材であって、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r0、r90、r45がいずれも0.60以上であり、さらにr値の面内異方性指数Δr(Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.20以下であることを特徴とする。
請求項2によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、前記請求項1において、R1が20以下、R2が5以下、R3が0.33〜3.0であることを特徴とする。
請求項3によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、請求項1または2において、アルミニウム合金溶湯圧延板材の平均結晶粒径が、50μm以下であることを特徴とする。
請求項4によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、前記請求項1〜3のいずれかにおいて、アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにMn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.15%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする。
請求項5によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、請求項1〜4のいずれかにおいて、アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにZn:0.5%以下を含有することを特徴とする。
請求項6によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、請求項1〜5のいずれかにおいて、アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにCu:1.0%以下を含有することを特徴とする。
請求項7によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材は、請求項1〜6のいずれかにおいて、アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにTi:0.1%以下、B:50ppm以下のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする。
請求項8によるプレス加工性に優れたアルミニウム合金板材の製造方法は、請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金を溶湯圧延する工程、冷間圧延する工程、5℃/s以上の昇温速度で500〜580℃の温度に加熱、保持して溶体化処理する工程、5℃/s以上の冷却速度で焼入れする工程を包含することを特徴とする。
また、請求項9による自動車外板は、請求項1〜7のいずれかに記載のプレス成形性に優れたアルミニウム合金板材を成形加工することにより得られることを特徴とする。
本発明によれば、形状の複雑なプレス加工にも対応可能なプレス成形性に優れた6000系アルミニウム合金板材とその製造方法および自動車外板が提供される。
本発明は、溶湯圧延法(連続鋳造圧延法ともいう)により作製したT4調質(溶体化処理、焼入れ、常温時効)で使用する自動車車体外板用6000系アルミニウム合金板材に係るものであり、その化学成分は自動車車体外板用として好適に使用することが可能なものである。
まず、本発明における含有成分の意義および限定理由について説明すると、Siは、Mgと共存してMg―Si系(Mg2Si)化合物を形成して強度を向上させるとともに、プレス成形性を向上させるよう機能する。Siの好ましい含有範囲は0.4〜1.5%であり、0.4%未満では強度が低くなるとともに、十分なプレス成形性が得られず、1.5%を超えて含有すると、曲げ加工性の低下を招き、実用上問題になることがある。Siのさらに好ましい含有範囲は0.6〜1.3%であり、最も好ましい含有範囲は0.8〜1.2%である。
Mgは、Siと共存してMg2Si化合物を形成して強度を向上させる。Mgの好ましい含有量は0.2〜1.2%の範囲であり、0.2%未満では強度が低くなるとともに、十分なプレス成形性が得られず、1.2%を超えて含有すると、曲げ加工性の低下を招き、実用上問題になることがある。Mgのさらに好ましい範囲は0.3〜0.8%、最も好ましい範囲は0.4〜0.7%である。
Feは基本的には不純物として含有され、鋳造時にAl−Fe−Si系の晶出物を形成する。Al−Fe−Si系化合物が過剰に形成されると、成形性が低下することから、その含有量は1.0%以下であることが好ましい。さらに好ましいFeの含有量は0.5%以下の範囲である。
Mn、Cr、Zrはいずれも選択的に含有される元素であり、結晶粒微細化による成形加工時の肌荒れを防止するよう機能する。好ましい含有範囲は、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.15%以下の範囲であり、それぞれ上記の範囲を超えると、粗大な金属間化合物が生成するため、r0、r45、r90のいずれかが下限未満になるとともに、Δrの絶対値が上限を超える場合がある。
さらに、R1あるいはR2の値が上限を超え、またはR3の値が前記特定範囲を外れ、成形性の低下を招く場合がある。また、粗大な金属間化合物が曲げ加工時の割れの伝播経路になりやすいことから、曲げ加工性の低下を招き易い。Mn、Cr、Zrのさらに好ましい含有範囲は、Mn:0.05〜0.15%、Cr:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.12%である。
Znは選択的に含有される元素であるが、0.5%以下の範囲で含有されると、表面処理性を改善するよう機能する。含有量が0.5%を超えると、塗装後の耐食性の低下を招く。Znのさらに好ましい含有範囲は0.3%以下である。
Cuは選択的に含有される元素であるが、1.0%以下の範囲で含有されると成形性を改善するよう機能する。含有量が1.0%を超えると塗装後の耐食性の低下を招く。成形性の観点からは0.3〜0.8%、耐食性が重視される場合には0.1%以下の範囲がさらに好ましい。
TiおよびBは、鋳造組織を微細化して、成形性を向上させるよう機能する。Ti、Bの好ましい含有量は、Ti:0.1%以下、B:50ppm以下の範囲であり、それぞれ上記の範囲を超えて含有されると、粗大な金属間化合物が生成するため、r0、r45、r90のいずれかが下限未満になるとともに、Δrの絶対値が上限を超える場合がある。
さらに、R1あるいはR2の値が上限を超え、またはR3の値が前記特定範囲を外れ、成形性の低下を招く場合がある。また、粗大な金属間化合物が曲げ加工時の割れの伝播経路になりやすいことから、曲げ加工性の低下を招き易い。
本発明においては、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r0、r90、r45をいずれも0.60以上とすることが望ましい。r値はプレス成形における材料の変形挙動を示すパラメータであり、r値が大きいほどプレス成形時の板厚減少が小さくなり、破断が生じにくくなるため、プレス成形性が向上する。r0、r90、r45のいずれかが下限未満の場合、十分なプレス成形性が得難い。
また、r値の面内異方性指数Δrの絶対値を0.20以下とするのが好ましい。ここで、Δr=(r0+r90−r45×2)/2で計算される。Δrが上限を超えると、プレス加工時に特定方向への材料流入が大きくなり、流入の小さい方向で破断が生じやすくなるため、十分なプレス成形性が得難くなる。
本発明においては、さらに、R1(({100}<001>方位(Cube方位)を有する結晶粒の方位密度)/(ランダム方位))を20以下、R2(({100}<001>方位(Cube方位)を有する結晶粒の方位密度)/({100}<011>方位を有する結晶粒の方位密度))を5以下に制御するのが好ましい。
{100}<001>方位を有する結晶粒のr45(圧延方向に対して45°方向のr値)は、理論上0であるため、{100}<001>方位を有する結晶粒が多く存在すると、r45が下限未満になり、プレス成形性が低下する。そのため、{100}<001>方位を有する結晶粒の方位密度は、ランダム方位に対して20倍以下とする。また、{100}<001>方位を有する結晶粒の方位密度が{100}<011>方位を有する結晶粒の方位密度に対して5倍を超えると、r45が下限未満になりやすく、プレス成形性の低下を招く。そのため、{100}<001>方位を有する結晶粒の方位密度を{100}<011>方位を有する結晶粒の方位密度に対して5倍以下とする。
さらに、{110}<112>方位(Brass方位)と、{112}<111>方位(Copper方位)と、{123}<634>方位(S方位)方位はいずれも、r45を高める方位成分であることから、これらの方位密度の和が、{100}<001>方位を有する結晶粒の方位密度に対して、0.33倍以上、3.0倍以下(すなわち、R3:0.33〜3.0)の範囲に制御することが望ましい。0.33倍未満、あるいは3.0倍を超えた場合には、Δrの絶対値が上限を超えてしまい、十分なプレス成形性が得られなくなる。さらに好ましい範囲は、0.5倍以上、2.0倍以下である。
本発明においては該アルミニウム合金板材の平均結晶粒径を50μm以下に制御するのが好ましい。平均結晶粒径が上限を超えると、プレス成形時に肌荒れを生じやすくなり、十分なプレス成形性が得られなくなる。
次に、製造工程について説明すると、まず、所定の化学成分を有するアルミニウム合金を溶解し、板連続鋳造を行う。板連続鋳造法として、双ロール法(TRC法)と双ベルト法(TBC法)があるが、どちらのプロセスを用いてもよい。
板連続鋳造の条件を適正に選択することによって、Al−Fe−Si系化合物を例えば20μm以下の粒径に微細に晶出させることができ、目的とする集合組織を得ることができ、r値の制御が適正に行われる。板連続鋳造の最適な条件は設備に依存するため一概に定義はできないが、例えば双ロール法で、直径485mmのロールを用いた場合、鋳造板厚を6mm以下、かつ鋳造速度を0.5m/分以上にすることが望ましく、この条件により本発明の請求範囲を満たす板材の作製が可能となる。
溶湯圧延により作製された板材は、冷間圧延、溶体化処理、焼入れの各工程を経ることにより、所定の板厚のT4調質材とされる。冷間圧延前に均質化処理や熱間圧延を行ってもよく、さらに冷間圧延の前、あるいは冷間圧延の途中で必要に応じて中間焼鈍を行ってもよい。いずれの場合でも、適正な条件を選択することで、本発明の請求範囲を満たす板材の作製が可能である。冷間圧延の加工度は特に規定しないが、加工度が大きいほど最終板材の結晶粒径が小さくなり、成形時の肌荒れが発生しにくくなるから、一般的には、冷間圧延の加工度は50%以上が好ましい。
溶体化処理は、材料が溶解しない範囲でなるべく高温で行うのがよく、500℃以上、580℃以下の温度域で行うことが好ましい。溶体化処理の保持時間は、溶湯圧延材の場合には比較的短時間で十分な固溶量が得られることから、300秒以下で十分である。溶体化処理温度への昇温速度は5℃/s以上とするのが好ましい。溶体化処理後の焼入れ処理における冷却速度は5℃/s以上とするのが好ましい。
なお、焼入れ後にベークハード性の付与を目的として、予備時効処理を行ってもよい。予備時効処理条件としては焼入れ後60分以内に、40℃〜120℃の温度で50時間以内の処理を行うことが好ましい。さらに、予備時効処理を行った後、3日以内に170℃〜230℃の温度で60秒以内の復元処理を行うことができ、この復元処理によって塗装焼付け硬化性をさらに向上させることができる。
上記の工程により得られた本発明によるAl−Mg−Si系合金板材は、優れたプレス加工性を有し、自動車車体の外板用として好適に使用できる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明するとともに、それに基づいてその効果を実証する。なお、これらの実施例は、本発明の好ましい一実施形態を説明するためのものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
表1に示す化学成分を有するアルミニウム合金を溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、鋳造速度を1m/minとして、溶湯圧延を行った。このとき、溶湯圧延の上がり板厚を5.0mmとした。
表1に示す化学成分を有するアルミニウム合金を溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、鋳造速度を1m/minとして、溶湯圧延を行った。このとき、溶湯圧延の上がり板厚を5.0mmとした。
得られた溶湯圧延板材について、板厚1.0mmまで冷間圧延を行った後、25℃/sの昇温速度で550℃まで加熱し、550℃の温度に30秒間保持する溶体化処理を行い、常温の水道水で水焼入れを行って、T4調質材とした。
得られたT4調質材を試験材として、以下の方法によって、焼入れから7日後の引張性質、r値、結晶方位密度(集合組織)、平均結晶粒径、プレス成形性、曲げ加工性および耐食性を評価した。結果を表2〜3に示す。
引張性質の評価:引張試験方向が圧延方向に対して0°、45°、90°の方向になるよう、JIS 5号試験片をそれぞれ成形し、JIS Z 2241に従って、引張強さ(σB)、耐力(σ0.2)、伸び(δ)、r値を測定する。引張強さ、耐力、伸びについては、3方向平均値((0°+45°×2+90°)/4)を計算して評価する。
結晶方位密度:20mm×20mmの試験片を切り出し、板面をペーパー研磨することにより板厚中心面を露出させ、マクロエッチングを行った後、X線反射法により結晶方位密度関数(ODF)を測定した。このとき、結晶方位密度関数の計算は、(100)、(110)、(111)極点図を用いて、球面調和関数による級数展開法を用いて行った。級数展開次数は22次とした。
平均結晶粒径の測定:幅10mm、長さ25mmのミクロ組織観察用試験片を採取し、板面をペーパー研磨後、電解研磨を行い、偏光顕微鏡で倍率100倍のミクロ組織写真を撮影し、写真からASTM E91比較法により、平均結晶粒径を測定した。
プレス成形性の評価:幅500mm、長さ700mmのプレス評価用試験片を作製し、幅250mm、長さ450mm、r=20mmのパンチを用い、しわ押さえを30kNとし、パンチストロークを変化させることで、割れの発生しない限界成形高さを測定し、成形高さ70mm以上を合格とした。なお、試験材には低粘度潤滑材を塗布した。
曲げ加工性の評価:圧延方向に25mm、板幅方向に200mmの大きさの試験片を切り出し、JIS H 7701に従って、板幅方向に引張予ひずみを8%導入後、試験片を50mm長さに切断し、180°の密着曲げ(インナー材の挟み込み無し)を行った。曲げ試験後、試験片湾曲部の外側の割れの発生有無を肉眼で観察し、割れが生じないのもを合格とする。
耐食性の評価:試験材について、市販の化成処理液でリン酸亜鉛処理および電着塗装を行い、アルミニウムの素地まで達するクロスカットを施して、JIS Z 2371に従って塩水噴霧試験を24時間行い、その後50℃−95%の湿潤雰囲気に1ヶ月放置した後、クロスカット部から発生する最大糸錆長さを測定し、最大糸錆長さ4mm以下のものを合格とする。
表2〜3にみられるように、本発明に従う試験材1〜9はいずれもランクフォード値r0、r90、r45がいずれも0.60以上、Δrの絶対値が0.20以下であり、さらに、R1が20以下、R2が5以下で、R3が規定の範囲内にあり、平均結晶粒径も50μm以下であることから、引張性質に優れ、曲げ加工で割れが発生せず、さらに耐食性を評価において最大糸錆長さが4mm以下の優れた結果が得られた。
比較例1
表4に示す化学成分を有するアルミニウム合金を溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、鋳造速度を1m/minとして、溶湯圧延を行った。このとき、溶湯圧延の上がり板厚を5.0mmとした。
表4に示す化学成分を有するアルミニウム合金を溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、鋳造速度を1m/minとして、溶湯圧延を行った。このとき、溶湯圧延の上がり板厚を5.0mmとした。
得られた溶湯圧延板材について、板厚1.0mmまで冷間圧延を行った後、25℃/sの昇温速度で550℃まで加熱を行い、550℃の温度に30秒間保持する溶体化処理を行い、常温の水道水で水焼入れして、T4調質材とした。
得られたT4調質材を試験材として、実施例1と同一の方法によって、焼入れから7日後の引張性質、r値、結晶方位密度(集合組織)、平均結晶粒径、プレス成形性、曲げ加工性および耐食性を評価した。結果を表5〜6に示す。
表5〜6に示すように、試験材10はSi量が上限を超えたため、曲げ性評価で割れが発生した。試験材11はSi量が下限未満のため、引張強さおよび耐力が低く、成形性が低下した。試験材12はMg量が上限を超えたため、曲げ加工性評価で割れが発生した。試験材13はMg量が下限未満のため、引張強さおよび耐力が低く、成形性が低下した。試験材14はFe量が上限を超えたため、曲げ加工性評価で割れが発生するとともに、耐食性評価で最大糸錆長さが4mmを超えた。
試験材15、16、17はそれぞれ、Mn、Cr、Zr量が上限を超えたため、0°、45°、90°方向のランクフォード値r0、r45、r90が0.60を下回り、R3が3.0を超えてしまい、成形性が低下するとともに、曲げ加工性評価で割れが発生した。試験材18はZn量が上限を超えたため、耐食性評価で最大糸錆長さが4mmを超えた。試験材19はCu量が上限を超えたため、曲げ加工性評価で割れが発生するとともに、耐食性評価で最大糸錆長さが4mmを超えた。
試験材20はTiおよびB量が上限を超えたため、r45が下限を下回るとともに、Δrが上限を超え、R3が3.0を超えてしまい、成形性が低下するとともに、曲げ加工性評価で割れが発生した。
比較例2
表1に示す合金Aを溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、表7に示す条件で溶湯圧延を行った。得られた溶湯圧延板材について、板厚1.0mmまで冷間圧延を行った後、表7に示す条件で溶体化処理および焼入れを行い、T4調質材とした。
表1に示す合金Aを溶解し、直径485mmのロールを用いた双ロール式溶湯圧延法により、表7に示す条件で溶湯圧延を行った。得られた溶湯圧延板材について、板厚1.0mmまで冷間圧延を行った後、表7に示す条件で溶体化処理および焼入れを行い、T4調質材とした。
得られたT4調質材を試験材として、実施例1と同一の方法によって、焼入れから7日後の引張性質、r値、結晶方位密度(集合組織)、平均結晶粒径、プレス成形性、曲げ加工性および耐食性を評価した。結果を表8〜9に示す。
表8〜9に示すように、試験材21、22はいずれも溶湯圧延条件が不適切であったため、45°方向のランクフォード値がr45が0.60を下回り、Δrが上限を超え、またR1、R2およびR3の値が上限を超え、成形性が低下した。
試験材23は溶体化処理の昇温速度が遅いため、45°方向のランクフォード値r45が0.60を下回り、Δrが上限を超え、またR1、R2およびR3の値が上限を超え、さらに結晶粒径も50μmを超えてしまい、成形性が低下した。試験材24は溶体化処理温度が低いため、R3の値が上限を超え、成形性の低下がみられるとともに、強度、伸びが低く、さらに曲げ性評価で割れが発生した。試験材25は焼入れ速度が遅いため、強度、伸びが低くなり、成形性が低下した。
Claims (9)
- Si:0.4〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.2〜1.2%を含有し、不純物として含有するFeが1.0%以下であり、残部Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金溶湯圧延板材のT4調質材であって、圧延方向のr値(ランクフォード値)をr0、板幅方向のr値をr90、圧延方向に対して45°方向のr値をr45としたとき、r0、r90、r45がいずれも0.60以上であり、r値の面内異方性指数Δr(但し、Δr=(r0+r90−r45×2)/2)の絶対値が0.20以下であることを特徴とするプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金溶湯圧延板材において、ランダム方位に対する{100}<001>方位(Cube方位)を有する結晶粒の方位密度の比(R1、以下同じ)が20以下、{100}<011>方位を有する結晶粒の方位密度に対する{100}<001>方位(Cube方位)を有する結晶粒の方位密度の比(R2、以下同じ)が5以下であり、且つ、{100}<001>方位を有する結晶粒の方位密度に対する{110}<112>方位(Brass方位)を有する結晶粒の方位密度と{112}<111>方位(Copper方位)を有する結晶粒の方位密度と{123}<634>方位(S方位)を有する結晶粒の方位密度との和の比(R3、以下同じ)が0.33〜3.0であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金溶湯圧延板材の平均結晶粒径が50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金板溶湯圧延板材が、さらにMn:0.3%以下(0%を含まず、以下同じ)、Cr:0.3%以下、Zr:0.15%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにZn:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにCu:1.0%以下を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 前記アルミニウム合金溶湯圧延板材が、さらにTi:0.1%以下、B:50ppm以下のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のアルミニウム合金を溶湯圧延する工程、冷間圧延する工程、5℃/s以上の昇温速度で500〜580℃の温度に加熱、保持して溶体化処理する工程、5℃/s以上の冷却速度で焼入れする工程を包含することを特徴とするプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のプレス成形性に優れたAl−Mg−Si系合金板材を成形加工することにより得られる自動車外板。
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