JP2009024188A - 塑性加工部材の製造方法 - Google Patents

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貴広 木村
Nobuyuki Oda
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Abstract

【課題】連続鋳造圧延法で製造したアルミニウム合金材にプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施したときの表面の割れや皺の発生を抑制する。
【解決手段】アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材10を製造する方法は、アルミニウム合金材を連続鋳造圧延する連続鋳造圧延工程と、この連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に連続鋳造圧延工程で加えられた加工歪を低減する加熱処理を施す加熱処理工程と、この加熱処理工程を経たアルミニウム合金材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、この溶体化処理工程を経たアルミニウム合金材に塑性加工を施す塑性加工工程と、この塑性加工工程を経たアルミニウム合金材に時効処理を施す時効処理工程とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、塑性加工部材の製造方法、特に、アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造する方法に関する。
従来、アルミニウムの板材の製造方法として、DC(Direct Chill)法がよく知られている。これは、図15に示すように、アルミニウムの原料を溶解することから始まり、スラブ鋳造、均質化処理、面削、加熱、熱間圧延、冷間圧延の各工程を経て、アルミニウムの板材を得るものである。一方、アルミニウムの原料を溶解した溶湯から直接アルミニウムの板材を製造する連続鋳造圧延法(CC法:Continuous Casting 法)も周知である。
CC法の代表的なものの1つに、双ロール水平式連続鋳造圧延法がある。これは、図16に示すように、アルミニウムの溶湯をセラミックス製ノズルで上下一対のローラ間に注湯し、アルミニウムの板材を圧延方向に押し出すもので、比較的薄い板材を製造できるという特徴がある。CC法には、他にも、板材を連続鋳造圧延するベルト式や連結ブロック式、あるいは棒状のビレットを連続鋳造圧延する輪・ベルト式等があり、これらのCC法は、一般に、DC法と比較すると、工程が少なく、コストの低減、投入エネルギの削減、急冷凝固による材料特性の向上といった種々の利点を有している。ただし、CC法では、方式や製造品の形状を問わず、得られた製造品は圧下荷重を受けながら鋳造されているので、その表面には加工歪が加わっている。
なお、特許文献1には、連続鋳造圧延法により製造したアルミニウム合金を冷間圧延し、この冷間圧延の途中で熱処理して再結晶させることにより、規定範囲内の寸法及び形状を有する結晶粒の印刷版用アルミニウム合金素板を得る技術が開示されている。
特開平7−224339号公報(段落0022〜段落0024)
ところで、DC法においては、例えばJIS6061規格のアルミニウム合金が広く用いられている。この規格のアルミニウム合金は、Alの他に、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Tiを含んでいるものである。そこで、CC法においても、類似の組成のアルミニウム合金を用いて板材やビレットを製造することが多く行われている。ところが、得られたアルミニウム板材あるいはアルミニウムビレットを面削せずに製造されたままの状態でプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施すと、曲げ部や角部に著しい割れや皺が発生することが見出された。そして、この原因の1つとして、前記規格のアルミニウム合金を原料としてCC法で板材やビレットを製造すると、その最表面の再結晶粒が著しく粗大化していることが判った。
一般に、アルミニウム合金にクロム(Cr)が含まれていると、クロムの化合物が形成され、ピンニングにより再結晶粒の粗大化が防止されること、つまりアルミニウム合金中のクロムには結晶粒を微細化する機能があることが知られている。ところが、JIS6061規格のようにクロムを含有するアルミニウム合金を原料としているのに、CC法で板材やビレットを製造すると、逆に、表面結晶粒の粗大化が起こっているのである。このことから、前記不具合は、CC法を用いてアルミニウム合金材を製造する場合に特有の問題であると考えられる。
本発明者等は、連続鋳造圧延法で製造したアルミニウム合金材にプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施したときの表面の割れや皺の発生を抑制することを課題として鋭意研究検討を重ねたところ、CC法では、得られたアルミニウム合金材が圧下荷重を受けながら鋳造されている点に着目し、得られた塑性加工部材の表面の加工度合いが中心部の加工度合いに比べて高いことを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
前記課題を解決するため、本発明では、次のような手段を用いる。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造する方法であって、アルミニウム合金材を連続鋳造圧延する連続鋳造圧延工程と、この連続鋳造圧延工程を経た前記アルミニウム合金材に前記連続鋳造圧延工程で加えられた加工歪を低減する加熱処理を施す加熱処理工程と、この加熱処理工程を経た前記アルミニウム合金材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、この溶体化処理工程を経た前記アルミニウム合金材に塑性加工を施す塑性加工工程と、この塑性加工工程を経た前記アルミニウム合金材に時効処理を施す時効処理工程とを備えていることを特徴とする。
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の塑性加工部材の製造方法であって、前記加熱処理工程における処理温度は445℃〜460℃、処理時間は1時間〜2時間であることを特徴とする。
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の塑性加工部材の製造方法であって、前記連続鋳造圧延工程では、前記アルミニウム合金材を板状に連続鋳造圧延し、前記塑性加工工程では、前記アルミニウム合金材にプレス加工を施すことを特徴とする。
次に、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の塑性加工部材の製造方法であって、前記塑性加工工程では、折曲ラインが前記連続鋳造圧延時のアルミニウム合金材の圧延方向にほぼ沿った方向となるように、前記アルミニウム合金材にプレス加工を施すことを特徴とする。
次に、本願の請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれかに記載の塑性加工部材の製造方法であって、前記加熱処理工程と前記溶体化処理工程とを加熱温度を低下させずに連続して行うことを特徴とする。
次に、本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5のいずれかに記載の塑性加工部材の製造方法であって、クロムを含有するアルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造することを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造する方法において、塑性加工を施す前に、連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に、該連続鋳造圧延工程で加えられた加工歪を低減する加熱処理を施すから、CC法での鋳造中に受けた表面加工歪がアルミニウム合金材から除去されることとなる。これにより、たとえCC法で圧下荷重を受けながらアルミニウム合金材を鋳造しても、この加熱処理後においては、表面加工歪が除去され、該アルミニウム合金材の最表面における溶体化処理後の再結晶粒径が小さくなって粗大化が抑制され、その後の工程でプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施しても、曲げ部や角部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
そして、この加熱処理を経たアルミニウム合金材に塑性加工を施す前に、さらに溶体化処理を行うから、換言すれば、溶体化処理を行った後に、塑性加工を施すから、一般に、溶体化処理時に冷却速度の不均一に起因して発生する熱処理変形の問題がその後の塑性加工によって低減されることとなる。
一方、連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に塑性加工を施した後に、時効処理を行うから、塑性加工前に行った溶体化処理によって強制的に合金材中に溶け込まされて過飽和な状態となっている合金元素が本来の安定な状態に戻ることとなる。この結果、合金元素は所々において析出し、この析出により転位が滑りを起こし難くなって、塑性加工された製品である塑性加工部材の物性、特に硬度が向上することとなる。
次に、請求項2に記載の発明によれば、前記加熱処理工程では、加工歪を低減するための処理条件が、445℃〜460℃の処理温度、1時間〜2時間の処理時間とされているから、この加熱処理後におけるアルミニウム合金材の最表面の再結晶粒径の粗大化が良好に抑制される。
ここで、処理温度が445℃未満であったり、処理時間が1時間未満であると、連続鋳造圧延中に受けた加工歪を低減する効果が不足気味となり、アルミニウム合金材の表面の結晶粒粗大化抑制効果が減少傾向となる。一方、処理温度が460℃を超えると、却って結晶粒の粗大化が見受けられる。また、処理時間が2時間を超えても、アルミニウム合金材の表面の結晶粒粗大化抑制効果が顕著には改善しない。
次に、請求項3に記載の発明によれば、連続鋳造圧延工程では、アルミニウム合金材を板状に連続鋳造圧延し、塑性加工工程では、アルミニウム合金材にプレス加工を施すから、塑性加工が板金プレス加工である場合において、曲げ部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
次に、請求項4に記載の発明によれば、塑性加工工程では、折曲ラインが連続鋳造圧延時のアルミニウム合金材の圧延方向にほぼ沿った方向となるようにアルミニウム合金材にプレス加工を施すから、板金プレス加工において割れや皺が発生し難い状況下で、より一層確実に曲げ部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
次に、請求項5に記載の発明によれば、前記加熱処理工程と前記溶体化処理工程とを加熱温度を低下させずに連続して行うから、2種類の異なる熱処理を時間的にもコスト的にも効率よく実行することができる。なお、ここで、加熱処理工程における処理温度よりも、溶体化処理工程における処理温度のほうが高く設定される。
次に、請求項6に記載の発明によれば、クロムを含有するアルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造するから、CC法で板材やビレットを製造したときに表面結晶粒の粗大化が起こり易い種類のアルミニウム合金材を用いながら、その表面における再結晶粒の粗大化を抑制できるようになる。以下、発明の最良の実施形態及び実施例を通して、本発明をさらに詳しく説明する。
図1(a)は、本実施形態に係る塑性加工部材10である車体部品の側面図、図1(b)は、背面図である。この車体部品10は、自動車の車体下部の剛性を高めるため、フロア下に車体前後方向に延びて取り付けられるものである。車体部品10の上下の縁部は、互いに反対向きに水平方向に略直角に折り曲げられている。
この車体部品10は、図2に示す各工程を経て製造される。まず、アルミニウムの板材を連続鋳造圧延する。この連続鋳造圧延工程では、例えば、双ロール水平式連続鋳造圧延法により、20tのアルミニウム合金を溶解して、7mmの板厚のアルミニウム板材を製造する。
本実施形態で用いるアルミ合金は、図3に示すように、クロムを含有するものである。図例は、JIS6061規格品であって、その組成は、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn、Tiを合金元素とし、基本元素のアルミニウムに対して図示した量が含有されている。
次いで、この連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に対して加熱処理を行う。この加熱処理は、前記連続鋳造圧延工程中にアルミニウム合金材に加えられた加工歪を低減するため、再結晶温度以上に加熱処理するものである。加熱処理条件は、図4に示すように、445℃〜460℃で1時間以上であるが、好ましくは445℃で1時間である。
次いで、この加熱処理工程を経たアルミニウム合金材に対して溶体化処理を行う。溶体化処理条件は、図4に示すように、515℃〜550℃で1時間以上であるが、好ましくは530℃で2時間である。その後、80℃の温水に焼入れする。ここで、図4に示したように、前記加熱処理工程と、前記溶体化処理工程とは、加熱温度を低下させずに連続して行うことができる。
次いで、この加熱処理工程を経たアルミニウム合金材に対して、塑性加工として、プレス成形を施す。まず、図5に示すように、アルミニウム合金材であるアルミニウム板材から車体部品10のブランクを打ち抜く。詳しくは、車体部品10の長手方向がアルミニウム板材の圧延方向に沿うようにブランキングする。ここで、車体部品10の上下縁部の折曲ラインが板材の圧延方向にほぼ沿うように延びることとなる。一般に、ブランクを板材の圧延方向に沿う方向に折り曲げると、その曲げ部には割れや皺が発生し難くなる。そして、このように得られたブランクをプレス機にかけて、プレス加工を3工程行い、ピアス加工をする。
次いで、この塑性加工工程を経たアルミニウム合金材に対して人工時効処理を施す。処理条件は、図6に示すように、155℃〜180℃で8時間〜18時間程度であるが、好ましくは165℃で18時間程度である。
図2に示した各条件で、連続鋳造圧延工程、圧延中にアルミニウム合金材に加えられた加工歪を低減するための加熱処理工程、溶体化処理工程、プレス成形(塑性加工)工程、及び時効処理工程を経て製造したアルミニウム合金製の塑性加工部材(車体部品)10の表面状態を観察すると、曲げ部において割れや皺の少ない良好な状態であった。一方、図2に示した各条件から、圧延中にアルミニウム合金材に加えられた加工歪を低減するための加熱処理工程を行わないで製造した同原料で同仕様の塑性加工部材(車体部品)の表面状態を観察すると、曲げ部において割れや皺の著しく多い不良な状態であった。
連続鋳造圧延したアルミニウム合金材を塑性加工する前に、圧延中の加工歪を低減するための加熱処理をする場合としない場合とで、このような差が生じるのは、およそ次のような理由によるものと考えられる。すなわち、一般に、ある焼きなまし温度で、アルミニウムの圧延による加工度と溶体化処理後の再結晶粒径との関係は、図7に示すように、ある加工度において再結晶粒径が最大ピーク(粗大化)を示すようになる(例えば「アルミニウム材料の基礎と工業技術」135ページ参照)。そして、連続鋳造圧延工程中の圧下荷重によりアルミニウム板材の表面が受けた加工度の範囲が、この最大ピークの周辺範囲に該当する加工度に入り、その結果、アルミニウム合金材表面の再結晶粒が粗大化し、塑性加工性が低下したものと考察される。したがって、この連続鋳造圧延後のアルミニウム合金材に対して、該連続鋳造圧延工程中にアルミニウム合金材に加えられた加工歪を低減するための加熱処理を施すことにより、アルミニウム合金材の表面の加工度が低減し、前記最大ピークの周辺範囲に該当する加工度からずれて、アルミニウム合金材表面の再結晶粒が微細化し、割れや皺の少ない良好な塑性加工性が得られたものである。
なお、以上は、アルミニウム合金材が板材で、塑性加工がプレス成形の場合であったが、本発明は、アルミニウム合金材が棒状のビレットで、塑性加工が鍛造成形(完成品は例えばボルト等)の場合にも好ましく適用可能である。その場合は、双ロール式やベルト式あるいは連結ブロック式ではなく、溝付鋳造輪とベルトとの組合せでなるモールドを用いる輪・ベルト式の連続鋳造圧延法でアルミニウムのビレットを製造する。
このように、本実施形態では、アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材10を製造する方法において、塑性加工を施す前に、連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に、該連続鋳造圧延工程で加えられた加工歪を低減する加熱処理を施すから(図2参照)、CC法での鋳造中に受けた表面加工歪がアルミニウム合金材から除去されることとなる。これにより、たとえCC法で圧下荷重を受けながらアルミニウム合金材を鋳造しても、この加熱処理後においては、表面加工歪が除去され、該アルミニウム合金材の最表面における溶体化処理後の再結晶粒径が小さくなって粗大化が抑制され、その後の工程でプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施しても(図2参照)、曲げ部や角部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
そして、この加熱処理を経たアルミニウム合金材に塑性加工を施す前に、さらに溶体化処理を行うから、換言すれば、溶体化処理を行った後に、塑性加工を施すから(図2参照)、一般に、溶体化処理時に冷却速度の不均一に起因して発生する熱処理変形の問題がその後の塑性加工によって低減されることとなる。
一方、連続鋳造圧延工程を経たアルミニウム合金材に塑性加工を施した後に、時効処理を行うから(図2参照)、塑性加工前に行った溶体化処理によって強制的に合金材中に溶け込まされて過飽和な状態となっている合金元素が本来の安定な状態に戻ることとなる。この結果、合金元素は所々において析出し、この析出により転位が滑りを起こし難くなって、塑性加工された製品である塑性加工部材の物性、特に硬度が向上することとなる。
また、前記加熱処理工程では、加工歪を低減するための処理条件が、445℃〜460℃の処理温度、1時間〜2時間の処理時間とされているから(図4参照)、この加熱処理後におけるアルミニウム合金材の最表面の再結晶粒径の粗大化が良好に抑制される。
後述する実施例で明らかになるが、前記加熱処理工程で、処理温度が445℃未満であったり(実施例1〜4:図8〜図11参照)、処理時間が1時間未満であると、連続鋳造圧延中に受けた加工歪を低減する効果が不足気味となり、アルミニウム合金材の表面の結晶粒粗大化抑制効果が減少傾向となる。一方、処理温度が460℃を超えると、却って結晶粒の粗大化が見受けられる。また、処理時間が2時間を超えても、アルミニウム合金材の表面の結晶粒粗大化抑制効果が顕著には改善しない。
また、連続鋳造圧延工程では、アルミニウム合金材を板状に連続鋳造圧延し、塑性加工工程では、アルミニウム合金材にプレス加工を施すから(図2参照)、塑性加工が板金プレス加工である場合において、曲げ部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
また、塑性加工工程では、折曲ラインが連続鋳造圧延時のアルミニウム合金材の圧延方向にほぼ沿った方向となるようにアルミニウム合金材にプレス加工を施すから(図5参照)、板金プレス加工において割れや皺が発生し難い状況下で、より一層確実に曲げ部に割れや皺が発生するのを抑制できるようになる。
また、加熱処理工程と溶体化処理工程とを加熱温度を低下させずに連続して行うから(図4参照)、2種類の異なる熱処理を時間的にもコスト的にも効率よく実行することができる。
そして、クロムを含有するアルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造するから(図3参照)、CC法で板材やビレットを製造したときに表面結晶粒の粗大化が起こり易い種類のアルミニウム合金材を用いながら、その表面における再結晶粒の粗大化を抑制できるようになる。
なお、その他にも、得られたアルミニウム合金材を面削せずに製造されたままの状態でプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施すことができるから、製造コスト削減及び製造エネルギーの低減に寄与する、という利点もある。
図3に示したアルミニウム合金を用いて、双ロール水平式連続鋳造圧延法で、板厚が7mmのアルミニウム板材を製造し、このアルミニウム板材に対して、歪低減のための加熱処理及び溶体化処理を連続して行った。得られたアルミニウム板材の中心部及び表面の結晶構造を顕微鏡で観察した。結果を、図8(実施例1)、図9(実施例2)、図10(実施例3)、図11(実施例4)、図12(実施例5)、及び図13(実施例6)に示す。なお、実施例1は、歪低減のための加熱処理温度が345℃のもの、実施例2は、380℃のもの、実施例3は、415℃のもの、実施例4は、430℃のもの、実施例5は、445℃のもの、及び実施例6は、460℃のものである。加熱処理時間はすべて1時間で同じ、溶体化処理温度はすべて530℃で同じ、溶体化処理時間はすべて2時間で同じとした。
比較のため、実施例6に対して、歪低減のための加熱処理を行わないで得られたアルミニウム板材の中心部及び表面の結晶構造を顕微鏡で観察した。結果を、図14(比較例1)に示す。
実施例6に比べて、比較例1では、特に表面の結晶粒が著しく粗大化していることが判る(比較例1の表面の結晶構造を示す図面代用写真は上下が逆になっている)。また、実施例5(歪低減のための加熱処理温度が445℃)及び実施例6(歪低減のための加熱処理温度が460℃)は、実施例1〜4(歪低減のための加熱処理温度が445℃未満)に比べて、表面の結晶粒が、より一層、良好、均一に、微細化していることが判る。
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、連続鋳造圧延法で製造したアルミニウム合金材にプレス加工や鍛造加工等の塑性加工を施したときの表面の割れや皺の発生を抑制することが可能な技術であるから、塑性加工部材の製造、特に、アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造する技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
本発明の最良の実施形態における塑性加工部材を示す、(a)側面図、(b)背面図である。 前記塑性加工部材の製造方法を示す工程図である。 前記実施形態におけるアルミニウム合金の組成を示す表である。 前記実施形態における歪低減のための加熱処理条件及び溶体化処理条件を示すタイムチャートである。 前記実施形態におけるプレス成形の説明図である。 前記実施形態における時効処理条件を示すタイムチャートである。 本発明の原理を説明するための加工度と再結晶粒径との相関図である。 実施例1の結晶構造を示す図面代用写真である。 実施例2の結晶構造を示す図面代用写真である。 実施例3の結晶構造を示す図面代用写真である。 実施例4の結晶構造を示す図面代用写真である。 実施例5の結晶構造を示す図面代用写真である。 実施例6の結晶構造を示す図面代用写真である。 比較例1の結晶構造を示す図面代用写真である。 DC法とCC法との違いを説明する概略工程図である。 双ロール水平式連続鋳造圧延法の説明図である。
符号の説明
10 塑性加工部材(車体部品)

Claims (6)

  1. アルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造する方法であって、
    アルミニウム合金材を連続鋳造圧延する連続鋳造圧延工程と、
    この連続鋳造圧延工程を経た前記アルミニウム合金材に前記連続鋳造圧延工程で加えられた加工歪を低減する加熱処理を施す加熱処理工程と、
    この加熱処理工程を経た前記アルミニウム合金材に溶体化処理を施す溶体化処理工程と、
    この溶体化処理工程を経た前記アルミニウム合金材に塑性加工を施す塑性加工工程と、
    この塑性加工工程を経た前記アルミニウム合金材に時効処理を施す時効処理工程とを備えていることを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
  2. 前記請求項1に記載の塑性加工部材の製造方法であって、
    前記加熱処理工程における処理温度は445℃〜460℃、処理時間は1時間〜2時間であることを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
  3. 前記請求項1又は2に記載の塑性加工部材の製造方法であって、
    前記連続鋳造圧延工程では、前記アルミニウム合金材を板状に連続鋳造圧延し、
    前記塑性加工工程では、前記アルミニウム合金材にプレス加工を施すことを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
  4. 前記請求項3に記載の塑性加工部材の製造方法であって、
    前記塑性加工工程では、折曲ラインが前記連続鋳造圧延時のアルミニウム合金材の圧延方向にほぼ沿った方向となるように、前記アルミニウム合金材にプレス加工を施すことを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
  5. 前記請求項1から4のいずれかに記載の塑性加工部材の製造方法であって、
    前記加熱処理工程と前記溶体化処理工程とを加熱温度を低下させずに連続して行うことを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
  6. 前記請求項1から5のいずれかに記載の塑性加工部材の製造方法であって、
    クロムを含有するアルミニウム合金材を用いて塑性加工部材を製造することを特徴とする塑性加工部材の製造方法。
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