JP2009221567A - 陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度異方性をできるだけ減らし、缶蓋の耐圧強度を低下させないようにするとともに、缶蓋形状の円周方向不均一程度をできるだけ抑えた陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板とその製造方法を提供する。
【解決手段】Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320MPa以上で、且つ圧延方向に対して0°、45°、90°方向の3つの耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下になり、絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下とする。製法は、DC鋳造の冷却速度、面削量、均質化処理条件、熱間仕上圧延機の総圧下率・圧延速度、熱間仕上圧延後の材料温度、冷間圧延率を規制するが、最終板厚まで焼鈍処理を一切施さない。
【選択図】なし
【解決手段】Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320MPa以上で、且つ圧延方向に対して0°、45°、90°方向の3つの耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下になり、絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下とする。製法は、DC鋳造の冷却速度、面削量、均質化処理条件、熱間仕上圧延機の総圧下率・圧延速度、熱間仕上圧延後の材料温度、冷間圧延率を規制するが、最終板厚まで焼鈍処理を一切施さない。
【選択図】なし
Description
本発明は、飲料用缶の缶蓋のうち、特に耐圧型蓋用のアルミニウム合金焼付塗装板とその製造方法に関するものであり、蓋性能を満足するような強度を有し、且つ強度異方性及び耳率が小さいことを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板とその製造方法に関するものである。
従来より缶蓋用材料には強度、耐食性、成形性の観点からJIS−5082(Al−4.5wt%Mg合金)、5182(Al−4.5wt%Mg−0.35wt%Mn合金)、5052(Al−2.5wt%Mg−0.25wt%Cr合金)等のAl−Mg系合金が用いられており,特にビールや炭酸飲料のような内圧のかかるものに対しては、耐圧強度の観点から高強度の5182材が多用されている。
缶蓋用材料は、冷間加工による加工硬化の程度を比較的大きく設定するため、圧延に平行な方向の強度は高くなるが、圧延方向に対してやや傾いた方向の強度はあまり高くならず、強度の異方性が生じる。缶蓋のように円形状の製品の場合、材料の強度異方性が生じると、強度の弱い方向から変形し、蓋のバックリングに到る。これを避けるために、材料の強度を全体的に挙げてしまうと、缶蓋成形時の成形性を阻害してしまう。よって、材料の強度異方性を少なくすることが望まれている。
この改善策として、特許文献1にて金属間化合物の最大長さの総和、結晶粒径を規定し、強度異方性を25MPa以下にする方法が提案されている。金属間化合物、結晶粒径を制御することは強度異方性の抑制に有効であるが、対象となる製品は熱間圧延後もしくは冷間圧延後に焼鈍を付与する工程となるため、本対象となる熱間圧延後に焼鈍を付与させない工程とは材料の状態が異なる。特に途中工程で焼鈍を付与させないため、圧延により材料中に導入される歪量が多くなる。金属間化合物の周囲は歪が蓄積しやすいため、途中工程で焼鈍を付与させない材料は金属間化合物の制御がより必要となる。その方法として、鋳造方法や面削方法等の製造条件を細かく規定する必要がある。特許文献2もCu系析出物やMg2Si等の化合物の分布を規定し、強度異方性の低減を実現しているが、焼鈍付与工程であるため上記理由と同様であるのと、対象となる製品の耐力が270〜330MPaと本対象よりも低強度となる点で異なっている。
特開2001−164347号公報
特開平9−256097号公報
本発明の課題は、アルミニウム合金圧延板であるが故に不可避となる強度異方性に対し、できるだけその差を減らし、缶蓋の耐圧強度を低下させないようにするとともに、缶蓋形状の円周方向不均一程度をできるだけ抑えることである。
本願発明では、板の合金組成及び製造条件により、晶出物の粗大化を防ぎ、熱間仕上げ圧延後に材料の再結晶化を十分に行い、結晶微細化させることにより,従来に比べ強度,成形性、耳率といった缶蓋として必須の性能に優れ、かつ強度異方性の少ない缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を提供するものである。
すなわち、請求項1記載の、Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板で、圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320MPa以上で、且つ圧延方向に対して0°、45°、90°方向に引張応力を加えた際の3つの耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下になり、絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下となることを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板である。
すなわち、請求項1記載の、Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板で、圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320MPa以上で、且つ圧延方向に対して0°、45°、90°方向に引張応力を加えた際の3つの耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下になり、絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下となることを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板である。
また、請求項2では請求項1において、さらに、特に板の圧延方向と板厚方向より形成される断面より観察される金属間化合物の円相当径2μm以上となる金属間化合物が個数密度1500ヶ/mm2未満で且つ面積率0.8%未満となること規定している。
さらに請求項3では、Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯を冷却速度10〜50℃/秒の範囲でDC鋳造し、その鋳塊上下両面を各々面削量10〜50mmで面削した後、鋳塊を設定温度460〜530℃、保持0.5〜15時間である均質化処理を施し、リバース式熱間粗圧延機を用いて複数回の熱間粗圧延を施した直後に、タンデム式の熱間仕上圧延機にて総圧下率87〜93%、圧延速度320〜400mpm、熱間仕上圧延後の材料温度を310〜350℃となるように熱間仕上圧延を施し、その後、製品となる最終板厚までは焼鈍処理を一切施さず、80〜93%の圧延率で冷間圧延を行うことを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を規定する。
上記のアルミニウム合金板とその製法を規定することにより、不可避となる強度異方性に対し、できるだけその差を減らし、缶蓋の耐圧強度を低下させないようにするとともに、缶蓋形状の円周方向不均一程度をできるだけ抑えることができる。
以下、本発明の各要素の限定理由について説明する。
先ず、この発明における合金成分の限定理由について説明する。
Mg:Mg添加量は3.5〜5.0%とする。Mg添加はMgそれ自体の固溶による強度向上があり、また冷間圧延時に導入される転位との交互作用から加工硬化の向上が期待でき、内圧のかかるアルミニウム合金缶蓋材に対して必要な強度を得るためには不可欠な元素である。
Mg量が3.5%未満では十分な強度を得ることができない。一方、5.0%を超えると冷間圧延によって導入される転位密度が過剰になり、成形性を低下させてしまう。
Mg:Mg添加量は3.5〜5.0%とする。Mg添加はMgそれ自体の固溶による強度向上があり、また冷間圧延時に導入される転位との交互作用から加工硬化の向上が期待でき、内圧のかかるアルミニウム合金缶蓋材に対して必要な強度を得るためには不可欠な元素である。
Mg量が3.5%未満では十分な強度を得ることができない。一方、5.0%を超えると冷間圧延によって導入される転位密度が過剰になり、成形性を低下させてしまう。
Mn:Mn添加量は0.1〜0.5%とする。Mn添加は強度向上と熱処理時の材料軟化を抑制する効果がある。Mn量が0.1%未満では十分な強度付与、軟化抑制効果を得ることができない。しかし、0.5%を超えると、Al−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物が高密度に生成されたり、粗大に成長してしまう。Al−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物は周囲のアルミ素地に比べて硬く延性に乏しいため、このような金属間化合物が高密度あるいは、大きな金属間化合物が存在すると、応力集中による材料の破断が顕著となる。また、その他元素の存在量にもよるが、過剰なMn量の添加は、熱間仕上圧延後の材料の再結晶化を阻害させてしまう。
Si:Si添加量は0.01〜0.2%とする。Siは精錬前のアルミ中に存在する主な不純物成分であるが、0.2%を超えるとAl−Fe−Mn−SiさらにはMg2 Si金属間化合物の生成と粗大化を引き起こし、材料破断の問題が生じてしまう。0.01%未満であれば、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまう。
Cu:Cu添加量は0.01〜0.2%とする。Cuの添加は強度向上と熱処理時の材料軟化を抑制する効果がある。しかし、0.2%を超えてしまうと、Al−Cu−Mg系の金属間化合物の析出が過多となり、冷間圧延によって導入される転位密度が高くなり、過剰な高強度化やリベット成形性の低下を伴う。0.01%未満であると、塗装焼付熱処理による材料の軟化が大きくなるため、必要強度が得られない。
Cr:Cr添加量は0.01%〜0.2%以下とする。Crの添加は強度向上と塗装焼付け時の軟化抑制に効果がある。しかし、0.2%を超えてしまうと、Al−Cr系の金属間化合物の生成と粗大化を伴い、リベット成形性が低下してしまう。0.01%未満であると、塗装焼付熱処理による材料の軟化が大きくなるため、必要強度が得られない。
Fe:Fe添加量は0.01〜0.3%以下とする。FeはSiと同様に精錬前のアルミ中に存在する主な不純物成分であるが、0.3%を超えるとAl−Fe−Mn(−Si)系の金属間化合物の生成と粗大化を引き起こし、材料破断の問題が生じてしまう。
本発明のように、熱間圧延後に中間焼鈍を一切施さずに冷間圧延を施すような製法で作成したアルミニウム合金板では、上記の材料破断を防止するためにFe添加をできるだけ低くすべきであるが、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまうので、0.01〜0.3%にすると好ましい。0.01%未満であれば、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまう。
本発明のように、熱間圧延後に中間焼鈍を一切施さずに冷間圧延を施すような製法で作成したアルミニウム合金板では、上記の材料破断を防止するためにFe添加をできるだけ低くすべきであるが、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまうので、0.01〜0.3%にすると好ましい。0.01%未満であれば、高純度のアルミ精錬には製造コストが過大となってしまう。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
特に、Ti及びBは鋳塊の結晶粒を均一微細化させる元素でこの目的のために添加されることが多いが、過度な添加はリベット成形性を低下させやすくなる。
特に、Ti及びBは鋳塊の結晶粒を均一微細化させる元素でこの目的のために添加されることが多いが、過度な添加はリベット成形性を低下させやすくなる。
圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320〜350MPaとする。320MPa未満であると必要な缶蓋耐圧強度が得られない。350MPaを超えると、蓋のリベット成形時に割れが発生しやすくなる。
圧延方向に対して0°、45°、90°方向に引張応力を加えた際の3方向の耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下とする。圧延された材料は、0°または90°方向の耐力が大きく、45°方向の耐力が小さくなる。3方向の耐力の(最大値―最小値)が15MPaを超えると、45°方向を起点としたバックリングの多発により、蓋の耐圧強度が低下してしまう。0°方向の強度を高くしたとしても、耐圧強度を補うことが難しい。
絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下とする。耳率が5%を超えると、缶蓋のカール長さが円周方向で長くなったり、短くなったりしてしまうため、缶胴と巻き締めた際に、肉余りや肉不足となり、巻締不良になってしまう。
板断面より観察される金属間化合物の円相当径2μm以上となる金属間化合物が個数密度1500ヶ/mm2未満で且つ面積率0.8%未満とする。比較的大きな金属間化合物が存在すると、化合物とマトリックスとの界面に歪が集中し、熱間圧延途中もしくは終了時の材料の再結晶化時に再結晶の核となりやすい。過剰な化合物の存在は、大きな再結晶粒と小さな再結晶粒が混在した状態を作りやすく、続く冷間圧延にて強度異方性を大きくしてしまう原因となり得る。また、冷間圧延時にも同様の理由から、界面に転位が集中し、転位セルが形成されやすくなる。冷間圧延率が高くなると、圧延方向に延伸された転位セルの密度が高くなると、強度異方性が大きくなりやすくなる。以上の理由から、2μm以上となる金属間化合物が個数密度1500ヶ/mm2を超える、もしくはその面積率が0.5%を超えると、強度異方性の過剰を招いてしまう。
次に本発明の製造方法について説明する。
鋳造はDC鋳造法で行い、冷却速度は10〜50℃/秒とする。冷却速度が小さすぎると、凝固組織が大きくなりすぎるため、最終凝固する金属間化合物の大きさが大きくなる。冷却速度が大きいほうが好ましいが、一般的なDC鋳造法では冷却能に限界がある。
鋳塊上下両面を面削するが、面削量は一面あたり10〜50mmとする。DC鋳造法で作成された鋳塊は、金型と接触する面で冷却され、熱収縮して金型から一旦離れる。その後冷却水との接触により2次冷却されるが、収縮後から2次冷却までは部分的に冷却速度が小さくなる箇所が存在する。その冷却速度が部分的に遅い箇所で凝固した部分は、材料の表層に相当し、金属間化合物が大きくなる。この金属間化合物が大きくなる箇所を面削にて取り除く必要がある。また、鋳塊は長手方向及び幅方向で反りがあるのと、断面形状が長方矩形とはならない場合がある。そのため、面削の基準点は鋳塊の最薄部とする必要がある。面削量が10mmでは、上記の金属間化合物が大きくなる箇所が完全に取り除くことができないため、以降で圧延された材料に粗大な金属間化合物が残存する恐れがある。面削量を50mm以上にすると、粗大な金属間化合物が残存する可能性は無くなるが、除去量が多くなりすぎるため、工業的に好ましくない。
均質化処理は、設定温度460〜530℃、保持0.5〜15時間とする。設定温度が460℃未満であると、熱間圧延時の加工性を阻害するとともに熱間仕上圧延後の材料の再結晶化に必要な温度の確保が困難となる。530℃を超える温度域では、Mgの酸化により材料表面が黒く変色してしまう。保持時間を0.5時間未満にすると、材料組織の均質化や不安定相の安定相への変態化としての効果が不十分であり、鋳造時に生成された偏析や不安定相が残存してしまう。また15時間を超えても、上記効果が飽和してしまい、工業的な製法として好ましくない。
引き続き、リバース式熱間粗圧延機を用いて複数回の熱間粗圧延を行い、タンデム式の熱間仕上圧延を行う。熱間仕上圧延は、総圧下率87〜93%、圧延速度320〜400mpm、熱間仕上圧延後の材料温度を310〜350℃となるように実施する。総圧下率が87%未満であると、タンデム式熱間仕上圧延機を用いての製造としては、総圧延量が少なすぎるため、非効率となる。また圧下量の不足による材料への歪み導入量の過少、加工熱の不足により、材料の再結晶化を阻害し、結晶の異常成長を伴う。粗大な結晶が存在すると、以後の冷間圧延や蓋成形時に材料中にせん断帯が発生し、強度異方性の原因となり得る。93%を超えるような場合は、ロールと材料間にて凝着し、表面が劣化する。酷い場合は材料破断を生じてしまう恐れがある。圧延速度は、280〜350mpmとする。280mpm未満であると材料に付与する加工熱が得られなくなるし、圧延に要する時間が大きくなるため、圧延開始時と圧延終了時との材料温度差が大きくなりすぎてしまい、両者の材料組織(再結晶度合い、集合組織)形成に違いが生じてしまう。前述の条件を全て揃え、熱間仕上圧延後の材料温度を310〜340℃とする。310℃未満であると材料全体にて再結晶化が十分なされない。また340℃を超えるような圧延では、前述のような表面不良を生じてしまう。
製品となる最終板厚まで冷間圧延を施すが、その間は焼鈍処理を一切施さない。一般的に焼鈍処理の付与は、冷間圧延された材料の回復や再結晶化により圧延加工性の向上、製品の成形性を確保する狙いがあるが、本特許のように成分や製造方法を規定することにより、熱間圧延から冷間圧延までの間の焼鈍工程を省略することが可能となる。焼鈍工程を追加すると、材料の集合組織が変化してしまうため、強度異方性が大きくなる。
冷間圧延は80〜93%の圧延率とする。80%未満であると内圧のかかるアルミニウム合金缶蓋材に対して必要な強度を得ることができない。また93%を超えてしまうと、材料に導入される転位密度が過剰になり、缶蓋のリベット成形性を低下させてしまうし、強度異方性が大きくなる。
表1に示す種々の化学成分のアルミニウム合金鋳塊を、均質化処理490℃×1時間、熱間仕上圧延直前の温度480℃(±5℃)で、総圧下率92%、平均圧延速度285mpmで圧延し、材料の出側コイル温度が323℃(±5℃)とした。その後、圧延率90%にて冷間圧延し、エポキシ系の塗料で塗装し、260℃×20sで焼き付け処理した。なお表1のNo.1〜5までが本発明の条件を満たす成分組成であり、No.6〜12は合金の成分組成が外れている比較例である。
冷間圧延後の材料を光学顕微鏡にて金属間化合物の分布状態を観察した。観察視野を1mm2とし、金属間化合物の分布を2値化による画像解析処理を施した。円相当径が2μm以上の金属間化合物を対象とし、個数密度及び面積率を導出した。
得られた塗装板に対して、圧延方向に対して0°、45°、90°に平行となるようにJIS5号の引張試験片を作成し、引張圧縮試験機にて0.2%歪み相当耐力を測定し、3方向の耐力のうち、最大値―最小値を導出した。
発明例1〜5は内圧のかかる缶蓋に必要な耐力を有し、且つ強度異方性及び耳率が小さく優れた特性を有している。
しかし、比較例8、10、11、12はそれぞれMn、Si、Cr、Feの添加量が多すぎるために円相当径2μm以上の金属間化合物の個数密度または面積率が大きくなり、強度異方性、耳率が悪くなっている。比較例6はMg添加量が多すぎるため、強度異方性、耳率が悪化しており、比較例7、9はそれぞれMg、Mnの添加量が低すぎるために、必要な材料強度(耐力)が得られていない。
表1の発明例1に相当する化学成分のアルミニウム合金鋳塊を平均冷却速度15mm/秒で作成し、表2に示す各条件の製造方法にて、面削・均質化処理・熱間圧延・冷間圧延を施し、その後エポキシ系の塗料で塗装し、260℃×20sで焼き付け処理した。なお表2の、No.A〜Dまでが本発明の条件を満たす製造方法であり、No.E〜Iは一部の条件が外れている比較例である。
材料の各種試験は、実施例1と同様な方法にて実施した。
比較例Eは面削量が過少のため、2μm以上の金属間化合物が多数存在し、塗装板の強度異方性が悪くなっている。、比較例Fは熱間仕上圧延における平均圧延速度が本発明の規定範囲外となるため、結果的に出側のコイル温度が十分高くならなかったため、缶蓋性能が劣っていた。比較例Gは冷間圧延率が低いため、必要材料強度が得られておらず、比較例Hは逆に高すぎるため、強度異方性及び耳率が悪くなった。比較例Iは熱間圧延後に冷間圧延を施し、その後中間焼鈍を加え、更に冷間圧延を施したものであるが、強度異方性が悪いことが確認されている。
Claims (3)
- Mg3.5〜5.0%(質量%、以下同様)、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板で、圧延方向に平行に引張応力を加えたときの耐力が320MPa以上で、且つ圧延方向に対して0°、45°、90°方向に引張応力を加えた際の3つの耐力の(最大値―最小値)が15MPa以下になり、絞り比2.5で円筒容器に成形した際の円筒容器の耳率が5%以下となることを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板。
- 特に板の圧延方向と板厚方向より形成される断面より観察される金属間化合物の円相当径2μm以上となる金属間化合物が個数密度1500ヶ/mm2未満で且つ面積率0.8%未満となることを特徴とする請求項1に記載の陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板。
- Mg3.5〜5.0%、Mn0.1〜0.5%、Si0.01〜0.2%、Cu0.01〜0.2%、Cr0.01〜0.2%、Fe0.01〜0.3%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯を冷却速度10〜50℃/秒の範囲でDC鋳造し、その鋳塊の上下両面を各々面削量10〜50mmで面削した後、鋳塊を設定温度460〜530℃、保持0.5〜15時間である均質化処理を施し、リバース式熱間粗圧延機を用いて複数回の熱間粗圧延を施した直後に、タンデム式の熱間仕上圧延機にて総圧下率87〜93%、圧延速度320〜400mpm、熱間仕上圧延後の材料温度を310〜350℃となるように熱間仕上圧延を施し、その後、製品となる最終板厚までは焼鈍処理を一切施さず、80〜93%の圧延率で冷間圧延を行うことを特徴とする陽圧塗装缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
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