JP6684568B2 - 異方性とネック成形性に優れた飲料缶ボディ用または飲料ボトル缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
前記合金硬質板は、一般的なアルミニウム合金板と同様に、溶解・鋳造・均質化・熱間圧延・冷間圧延等の工程を経て製造される。そして通常、缶ボディ各部の強度や成形性のバランスが最適な3/4硬質〜特硬質に調質されている。即ち、アルミニウム合金板を圧延途中に一旦再結晶させ、軟質状態とした後、圧下率50〜90%程度の冷間圧延を行い、主として加工硬化により適度な強度としている。
しかし、アルミニウム合金の圧延板の機械的性質に異方性があると、缶ボディを成形する際の成形性を阻害したり、成形後の缶ボディの対称性が低下したり、材料の使用歩留まりが低下するなどの問題がある。圧延板の異方性は、結晶粒の方位分布(集合組織)に依存する。そこで、冷間圧延による集合組織の変化を考慮し、冷間圧延前の再結晶で生じる集合組織を制御することにより、アルミニウム合金圧延板の異方性を低減することが可能になると考えられる。
(1)熱間圧延→再結晶→最終冷延
第1の方法は、熱間圧延で比較的薄肉の例えば3mm以下のアルミニウム合金板材に圧延し、熱間圧延後、コイルに巻取った状態でそのまま再結晶させ、あるいは、人工的に焼鈍を施して再結晶させた後、冷間圧延を行う方法である。
(2)熱間圧延→低圧下冷延→再結晶→最終冷延
第2の方法は、熱間圧延で比較的薄肉の例えば3mm以下のアルミニウム合金板材に圧延し、その後比較的低圧下の、例えば以下の特許文献1に記載のように、アルミニウム合金板材に6〜15%の冷間圧延を行った後、焼鈍を施し、最後に圧下率90%程度の最終冷間圧延を実施する方法である。
(3)熱間圧延→冷間圧延→連続焼鈍炉を用いた再結晶→比較的低圧下の最終冷延
第3の方法は、アルミニウム合金板材の熱間圧延後、第一冷間圧延を行い、その後、連続焼鈍炉を用いて、比較的高温に急速加熱し、その後急速冷却する焼鈍を行い、最後に比較的低圧下率の例えば60%程度の冷間圧延を行う方法である。
また、アルミニウム合金鋳塊に対し熱間圧延後に80%以上の圧延率で冷間圧延し、冷間圧延後の出側温度が140〜150℃の場合に110℃まで5℃/時間以下の冷却速度を選択し、出側温度が150〜180℃の場合に110℃まで30℃/時間以下の冷却速度で冷却する容器用アルミニウム合金板の製造方法が知られている(特許文献3参照)。
例えば、アルミニウム合金板の異方性を制御するには、タンデム式の熱間仕上げ圧延機を用いることが有効であり、シングルミルリバース式の熱間仕上げ圧延機では十分な立方晶方位を得ることが容易ではなく、異方性の制御が難しいという問題がある。
本発明者らは、シングルミルリバース式の熱間仕上げ圧延機を用いて飲料用のアルミニウム缶を製造する条件について種々研究を重ねた結果、冷間圧延前に十分な立方体方位を形成することができ、飲料缶用アルミニウム合金板の異方性の制御を実現できる製造方法を見出し、本願発明に到達した。
また、最終冷間圧延後に保持温度、保持時間を制御した安定化焼鈍を行うことにより、異方性とネック成形性または異方性とボトルネック性に更に優れた飲料缶ボディ用アルミニウム合金板を提供できる。
初めに、本実施形態で用いる缶ボディ用アルミニウム合金板の組成について説明する。
本実施形態の缶ボディ用アルミニウム合金板は、質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.35〜0.55%、Cu:0.15〜0.48%、Mn:0.80〜1.15%、Mg:0.60〜1.60%以下を含有し、残部が不可避的不純物を含むAlからなる組成のアルミニウム合金からなる。また、前記組成比のアルミニウム合金に、更に、Cr:0.05%以下、Zn:0.25%、Ti:0.10%以下のうち、1種または2種以上を含有するアルミニウム合金を用いても良い。
以下、本実施形態で使用するアルミニウム合金の組成限定理由について説明する。
なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に限定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。例えば0.35〜0.55%とする表記は0.35%以上0.55%以下を意味する。
Siは、同時に含有するMgと化合物を形成し易く、固溶硬化作用、分散硬化作用および析出硬化作用を有する他、Al、Mn、Feなどと化合物を形成し、成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Siの含有量は、0.35質量%を越えると加工性が劣化して不都合である。
「Fe:0.35〜0.55%」
Feは、結晶の微細化および成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Feの含有量は、0.35質量%未満では所望の効果が得られず、0.55質量%を越えると加工性を劣化させる。
Cuは、Mgと化合物を形成し易く、固溶硬化、分散硬化および析出硬化に寄与する。
Cuの含有量は、0.15質量%未満では所望の効果が得られず、0.48質量%を越えると加工性を劣化させる。
「Mn:0.8〜1.15%」
Mnは、Fe、Si、Alなどと化合物を形成し易く、晶出相および分散相となって分散硬化作用を現すと共に成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Mnの含有量は、0.8質量%未満では所望の硬化特性が得られず、1.15質量%を越えると加工性が劣化する。
「Mg:0.6〜1.60%」
Mgは、固溶体強化作用を有し、圧延による加工硬化性を高めるとともに、前記Siや前記Cuと共存することによって分散硬化と析出硬化作用を現す。Mgの含有量は、0.6質量%未満では所望の効果が得られず、1.60質量%を越えると加工性を劣化させるようになる。
「Cr:0.05%以下」
Crは結晶の微細化と成形加工時にダイスに対する焼き付きを防止する効果を発揮する。Crの含有量は、0.05質量%を越えると脆くなり加工性が劣化する。
ZnはMg、Si、Cuの析出物を微細化する作用を有する。Znの含有量は、0.25質量%を越えると加工性と耐食性を劣化させる。
「Ti:0.10%以下」
Tiは、結晶粒を微細化して加工性を改善する効果がある。ただし、Tiの含有量は0.10質量%を越えると粗大な化合物を生成し、逆に加工性を劣化させる。
次に、本実施形態に係る異方性とネック成形性に優れた飲料缶ボディ用または異方性とボトルネック性に優れた飲料ボトル缶ボディ用のアルミニウム合金板の製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法においては、前記組成のアルミニウム合金を溶製し、鋳造して得た鋳塊に対して均質化処理、均熱処理を施した後、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延による熱間圧延を行い、バッチ焼鈍を施し、さらに圧下率80〜95%の冷間圧延を行うことにより所望の板厚の缶ボディ用アルミニウム合金板を得る。
更に、前記の工程に加え、保持温度120〜140℃、保持時間2〜4時間の条件で安定化焼鈍を行うこともできる。
以下、本実施形態の異方性とネック成形性に優れた飲料缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法について工程順に説明する。
前記組成のアルミニウム合金を溶解後、常法に従ってアルミニウム合金溶湯から鋳塊を鋳造するが、鋳造に先立ち、アルミニウム合金を溶製した際に、水素ガスや酸化物などの介在物を除去し、半連続鋳造法により鋳塊を得る。
このときの凝固速度は通常、5〜20℃/秒とされる。鋳造された鋳塊の厚さは、例えば500〜600mm程度とすることができる。
次に、面削を行い、鋳塊の表面を1〜25mm程度切削し、面削体を作製する。なお面削は後述する均質化処理の後に行っても良い。
次に、作製した面削体に均質化処理を施す。均質化処理は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
均質化処理においては、均質化温度を555〜605℃の範囲内とすることが重要である。均質化温度が555℃未満では後述の連続焼鈍の効果が得られず、後述の熱間圧延工程や第1冷間圧延工程においてクラックが発生し易く、最終板材の耳率が高くなる。また、均質化温度が605℃を超えると、鋳塊が溶融するおそれがある。
また、均質化処理において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は4時間以上10時間以下とすることが好ましい。均質化時間が4時間未満では、均質化が充分に進行しない場合がある。しかし、均質化時間が長すぎても効果はなく生産効率が低下する。以上の観点から、好ましい均質化時間は4〜10時間の範囲内である。この均質化処理は、均質化時間が比較的長いので、通常、バッチ方式の炉中に置くことで行われる。
本実施形態において、均質化処理の後さらに面削体を500〜555℃まで冷却し、所定時間保持する均熱処理後、熱間圧延を開始する。500〜555℃の温度範囲での保持時間(均熱時間)は、1時間以上、例えば1〜10時間程度行うことができる。
熱間圧延は、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延からなり、本実施形態においては、シングルミルのリバース式熱間仕上圧延機を使用して熱間仕上げ圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延工程においては、図1に示すように、熱間粗圧延機20を用いて板厚20〜16mm程度まで熱間粗圧延した後、熱間仕上圧延機30を用いて板厚2〜7mmまで熱間圧延する。
図1において、ワークロール21、22の左右両側の搬送路4、6から繰り返しアルミニウム合金の板材5をワークロール21、22に供給して順次粗圧延することにより、熱間粗圧延機20は板材5を必要な厚さまで圧延して板材7とすることができる。
熱間粗圧延は、圧延材が厚い間は、通常圧延機の前後に搬送テーブルが設置された1スタンド式粗圧延機(図1に示す熱間粗圧延機20)を用いて圧延する。しかし、板が薄くなると、必要な搬送テーブル長が長くなり、板の自重によるたるみも大きくなり、板の冷却も生じ易くなる。
圧延機の両側に巻取装置があるシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(図1に示す熱間仕上圧延機30)を使用することにより、熱間仕上板厚を小さくすることができる。
従って、以降の冷間圧延の圧下率を小さくできるので、冷間圧延のパス回数を削減でき、生産性を向上させることができる。これに対し、例えば、巻取装置が片方にだけ設置された熱間仕上圧延機を用いた場合、搬送テーブル上で保持できる板厚に最小値が存在するために、熱間圧延で圧延可能な最小板厚が増加することになる。このため、熱間圧延後の冷間圧下率が増加する。
熱間仕上げ圧延時の条件として、1パス目の出側温度を380℃以下に設定し、2パス目の出側温度を340℃以下に設定し、3パス目の出側温度(仕上げ温度)を240〜300℃の範囲とすることが好ましい。
2パス目の出側温度について340℃を超える温度に設定すると、前記1パス目と同様の現象により同様の問題が生じる。
3パス目の出側温度について、300℃を超える温度では前記1パス目と同様の現象により同様の問題が生じ、240℃未満の温度では立方体方位の再結晶粒の核が生じにくく、続くバッチ焼鈍を行っても十分な立方体方位が成長せず、異方性が悪化する。
バッチ焼鈍工程は、前記熱間仕上げ圧延後の板材に対し、焼鈍炉を用いて保持温度330〜360℃の範囲(330℃以上、360℃以下の範囲)に2〜5時間保持した後、冷却することで行う。
バッチ焼鈍工程において、加熱速度20〜150℃/時間の範囲(20℃/時間以上、150℃/時間以下の範囲)で加熱することが好ましく、冷却速度50〜200℃/時間の範囲(50℃/時間以上、200℃/時間以下の範囲)で冷却を行うことが好ましい。
このバッチ焼鈍工程は、アルミニウム合金板材を半軟化状態にもたらすものであって、焼鈍後の耐力;YS(Yield Strength)を好適な範囲とすることが好ましい。
バッチ焼鈍の温度が330℃未満であるかバッチ焼鈍の保持時間が2時間未満では十分な再結晶組織が得られず立方体方位の成長が不十分となり異方性が悪化する。バッチ焼鈍温度が360℃を越えるか、または、保持時間が5時間を越えると再結晶粒が粗大化して最終冷間圧延した板をカップ、DI成形した際に肌荒れが生じ、またそれにともなうシワの発生によりネック成形時に割れを生じる問題がある。
次に、バッチ焼鈍後の板材に対し、圧下率80〜95%の範囲内となるように冷間圧延を施す。冷間圧延の圧下率を80〜95%の範囲内とすることにより、必要な機械的性質、特に塗装焼付け処理後の耐力が好適な範囲となるとともに、缶成形において異方性、ネック成形性がバランスよく得られるという効果がある。
冷間圧延の圧下率を80%未満にすると、加工率が不足となり、必要な強度が得られず、前述のバッチ焼鈍により得られる立方体方位に比べて圧延集合組織の発達が小さくなり異方性のバランスが悪化する。
冷間圧延の圧下率について95%を超えると、加工率が過剰となって板材の強度が高くなり過ぎてDI成形性が損なわれ、また前述のバッチ焼鈍により得られる立方体方位に比べて圧延集合組織の発達が大きくなり過ぎて異方性のバランスも悪化する。
冷間圧延により、板厚0.210〜0.47mmの飲料缶ボディ用または飲料ボトル缶ボディ用のアルミニウム合金板を得る。また、このアルミニウム合金板は、塗装焼付け後の耐力が230〜320N/mm2の範囲であることが好ましい。
以上の製造方法によれば、異方性とネック成形性に優れた缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができるが、当該合金板のDI成形において、缶底部の形状および成形条件によっては、底部抜けなどの成形不良やボトムしわなどの問題を生じる場合がある。
このため、当該合金板に対し、保持温度120〜140℃、保持時間2時間〜4時間の条件で安定化焼鈍を行うことによって缶底部などの局部成形性を改善することができ、成形不良および異常を有効に抑制することが可能である。
保持時間を2時間未満にすると、上記の改善効果が不足するため好ましくなく、4時間を超える保持時間とすると、生産性が低下するという問題がある。
安定化焼鈍処理を上述の条件で施すことにより、缶成形における異常や生産性低下の問題を生じることなくDI成形できる特徴がある。
図2は、DI缶の製造方法の工程図を、図3はDI缶を示す部分断面図であり、これらの図において符号10は、DI缶を示している。
DI缶10は、アルミニウム合金製の有底筒状のDI缶であって、板厚が0.240mm以上0.270mm以下とされるアルミニウム合金の板材に、しごき率が54.2%以上64.8%以下とされる絞りしごき加工を施して成形されており、例えば、缶軸方向の大きさ、すなわち高さが約122.5mm、外径が65mm以上67mm以下とされている。胴部は、肉厚が0.095mm以上0.110mm以下とされるとともに引張り強さが、340MPa以上410MPa以下とされ、かつこの場合の缶体重量が11.6g以下とされる。
また、DI缶10は、ポリエステル系塗料を使用して、文字情報等の印刷部分も含め、胴部11の外面を印刷、塗装し、この外面印刷及び外面塗装がされたDI缶10を180℃×30秒間加熱することにより50mg/dm2の塗膜を形成させた後に、DI缶10の内面にエポキシ系塗料を使用して内面塗装し、200℃×60秒間加熱することにより40mg/dm2の塗膜を形成させた外面印刷、外面塗装及び内面塗装がなされている。
前述の工程で得られたアルミニウム合金板を打ち抜いて直径が約150mmとされた図2に示す円板状の板材(ブランク)Wを成形する。
次に、この板材Wをカッピングプレスによって絞り加工することによりカップ状体W1に成形する。
次いで、DI加工装置によって、カップ状体W1に再絞りしごき加工を施して有底筒状体W2を形成する。この際の、しごき率は、例えば、60.4%で胴部11の最薄部における肉厚が0.100mmになるまで絞りしごき加工が施される。
この有底筒状体W2は、側壁がしごかれることで冷間加工硬化されて強度が高くなる。
DI加工装置によって形成された有底筒状体W2の開口端部W2aは、その缶軸方向に波打つような凹凸形状とされ不均一であるため、有底筒状体W2の開口端部W2aを切断してトリミングすることにより缶軸方向における側壁の高さを全周に亙って均一にする。
このようにして、図2に示すように胴部11と底部12とを有する横断面円形のDI缶10を形成することができる。
また、前述の製造方法により得られたアルミニウム合金板であるならば、飲料ボトル缶ボディ用のアルミニウム合金板として異方性とボトルネック成形性に優れさせることができ、傷や成形不良などの問題を生じないアルミニウム合金製ボトル缶を得ることができる。
表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。なお、Cr、Zn、Tiについて各0.01と表記した試料はいずれもCr、Zn、Tiをそれぞれ0.01質量%含む試料である。
続いて、図1に示す構成の熱間粗圧延機20を使用して板厚20mmまで熱間粗圧延した後、図1に示すシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機30を使用して、熱間仕上げ圧延により種々の仕上板厚の板材を得た。
熱間粗圧延の出側温度は、表1に示すように430℃とした。
熱間仕上げ圧延の1パス目の出側温度は、表2に示すように375〜385℃に調節し、2パス目の出側温度は、330〜345℃に調節し、3パス目の出側温度は、225〜305℃に調節した。
次いで、バッチ焼鈍後の板材に表2に示す圧下率で冷間圧延を施し、表2に示す板厚(0.205〜0.48mm)の缶ボディ用アルミニウム合金板を得た。
また、得られた缶ボディ用アルミニウム合金板の一部について、更に、バッチ式焼鈍炉を用いて、表2記載の保持温度で、保持した時間、3時間の条件で安定化焼鈍を行った。
なお、上記物性値(ASTS)は、コイルの幅方向及び長手方向各3点以上の位置から採取したサンプルについて計測した。
得られた缶ボディ用アルミニウム合金板のブランク材を用いて、容量350ccの飲料缶に加工した。
得られた缶ボディ用アルミニウム合金板の異方性評価として、カップ成形における耳率を測定した。
耳率は、素材をエリクセン試験機で深絞り加工したカップの側壁高さから計算した。加工条件はポンチ径;33mm(平頭ポンチ)、絞り比;1.75、しわ押さえ力;3kNとした。このカップの側壁高さをデジタルマイクロメーターで測定し、次式により耳率を算出した。
(山平均高さ−谷平均高さ)÷谷平均高さ×100=耳率(%)
なお、0°および180°の山の平均高さと45°、135°、225°、315°の山の平均高さをそれぞれ求め、いずれか高い方の山を上式の山平均高さとした。また、90°および270°の谷平均高さを求め、上式の谷平均高さとした。
「異方性の評価」
耳率による異方性の評価としてはn=3の平均値で、1.5%未満を「◎」、1.5%以上2.5%未満を「○」、2.5%以上3.5%未満を「△」、3.5%以上を「×」とした。「◎」および「○」を合格レベルと判断した。
各試料におけるベーキング後の耐力、異方性の評価、ネック成形性の評価について以下の表2にまとめて示す。
No.23の試料はバッチ焼鈍の温度を低くしすぎた試料、No.24の試料はバッチ焼鈍の温度を高くしすぎた試料、No.25の試料はバッチ焼鈍の時間を短くしすぎた試料、No.26の試料はバッチ焼鈍の時間を長くしすぎた試料であるが、異方性とネック成形性のどちらかに問題を生じるか両方に問題を生じた。
No.27の試料は冷間加工率を低くし過ぎた試料、No.28の試料は冷間加工率を高くし過ぎた試料であるが、目的の板厚に圧延することができず、異方性とネック成形性の一方あるいは両方に問題を生じた。
No.32の試料はCu含有量が少なすぎる試料であるがBS耐力が低下し、No.33の試料はCu含有量が多すぎる試料であるがネック成形性に劣り、No.34の試料はMn含有量が少なすぎる試料であるがBS耐力が低下し異方性とネック成形性ともに低下した試料、No.35の試料はMn含有量が多すぎる試料であるがネック成形性に問題を生じた。また、No.34の試料はネック成形時にダイスに対し一部焼き付きを生じた。
No.36の試料はMg含有量が少なすぎる試料でありBS耐力が低下し、No.37の試料はMg含有量が多すぎる試料でありネック成形性に問題を生じた。
表1に示すNo.38の試料は安定化焼鈍の温度を高くし過ぎた試料であるがBS耐力が低下した。
Claims (2)
- 質量%で、Si:0.35%以下、Fe:0.35〜0.55%、Cu:0.15〜0.48%、Mn:0.8〜1.15%、Mg:0.60〜1.60%を含有し、更に、Cr:0.05%以下、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下のうち、少なくとも1種または2種以上を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊を均質化処理および均熱処理を経て熱間粗圧延により20〜16mmの熱間粗圧延板とした後、続いて1パス目出側温度を380℃以下、2パス目出側温度を340℃以下、3パス目出側仕上げ温度を240〜300℃とする、熱間仕上げ圧延を行った後、保持温度330〜360℃で保持時間2〜5時間のバッチ焼鈍を行い、次いで圧下率を80〜95%とする冷間圧延を行い、板厚0.210〜0.47mm、焼付け後の耐力230〜320N/mm2のアルミニウム合金板を得ることを特徴とする異方性とネック成形性に優れた缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
- 冷間圧延後、保持温度120〜140℃、保持時間2〜4時間の条件で最終安定化焼鈍を行うことを特徴とする請求項1に記載の異方性とネック成形性に優れた缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
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