JP2016020531A - Di成形性、ネック成形性、および耳率に優れる缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、Si、Fe、Cu、Mn、Mgを規定量含有し、残部がAl及び不可避不純物のアルミニウム合金の鋳塊を均質化処理の後、熱間圧延および熱間仕上圧延し、続いて圧下率を20%以上65%以下とする第1冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒、保持温度330〜380℃、保持時間1〜30秒、冷却速度10〜200℃/秒なる条件で第1中間焼鈍を行い、圧下率10〜25%で第2冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒、保持温度420〜600℃、保持時間1〜30秒、冷却速度10〜200℃/秒なる条件で第2中間焼鈍を行い、続いて圧下率68%以上85%以下の条件で最終板厚まで最終冷間圧延を行うことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
図3に示すようなボトル型飲料缶10の製造方法の概要を示せば図4の通りとなる。すなわち、例えばJIS3004合金のようなAl−Mn−Mg系合金のブランク材1に深絞り加工を施し、カップ2を形成する。
次いでカップ2に再絞り加工を施し、その後通常3回のしごき加工を順次施して缶体3を形成する。深絞り、しごき成形した時には板材の圧延方向に応じて、成形した缶体の上縁の高さが山谷状に変化する現象が起こる。この山谷状に変化した部分3Aは通常「耳」と呼ばれている。
耳を除去した缶体3は、縮径加工を施して肩部12と頸部13を形成し、その先端部を形成しようとするネジの谷径と同程度の径の円筒状に絞り成形し、さらに残った部位をロールフォーミングなどによって凹凸変形させてネジ部14を形成し、最後に先端部をロールで丸くカール加工してボトル型飲料缶10とする。
このようにボトル型飲料缶10においては、従来のアルミニウム缶の主流であったDI缶(Deep drawing & Ironing 缶)に比較して頸部13に一段と厳しい塑性加工を施すため、素材にも一段と高い特性が要求される。
そして、この組成のアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊を560〜610℃で均質化処理し、その後熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延による熱間圧延を行なう。続いて圧下率を20〜75%とする第1冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒、保持温度330〜400℃、保持時間0〜30秒、冷却速度10〜200℃/sなる条件で第1中間焼鈍を行い、続いて圧下率10〜25%で第2冷間圧延を行う。続いて、加熱速度10〜200℃/秒、保持温度500〜600℃、保持時間0〜30秒、冷却速度10〜200℃/秒なる条件で第2中間焼鈍を行ない、さらに圧下率60〜75%の条件で最終板厚まで最終冷間圧延を行う製造方法が知られている(特許文献1参照)。
前記製造方法において、熱間仕上げ圧延の最終パスを歪速度が10〜150/秒の条件下で仕上り温度y(℃)と仕上り板厚x(mm)の関係が240≦y≦20x+240(但し、2.0≦x≦5.0)を満たすように制御することが有利であると特許文献1に記載されている。
しかし、特許文献1に記載の製造方法で得られる飲料缶用のアルミニウム合金板を用いてボトル飲料缶を製造する場合、ネック成形において、極めて低い頻度ではあるものの、ねじ部からカール部の範囲で割れ不良が生じ、生産性を低下させる場合があった。
ネック成形性を改善するために、最終冷間圧延率を高くすることが考えられる。最終冷間圧延率を調整する技術として、アルミニウム合金を均質化処理した後、熱間圧延を最終板厚の2倍以上の厚さに、300℃以上の温度で終了するように行い、引き続き、280℃までの温度域を2時間以上で冷却し、焼鈍することなく最終板厚まで冷間圧延する技術が知られている(特許文献2)。
しかし、特許文献2に記載されている技術を採用すると、DI成形時の強度が高くなりすぎるため、DI成形性に劣るという問題があった。
本発明の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法において、さらに、保持温度120〜160℃、保持時間300秒〜6時間の条件で最終焼鈍を行うことが好ましい。
また、最終冷間圧延後に保持温度、保持時間を制御した最終焼鈍を行うことにより、DI成形時のボトム成形性により優れるとともに、ネック成形性に優れ、耳率にも優れる缶ボディ用アルミニウム合金板を製造できる効果を奏する。
初めに、本実施形態で用いる缶ボディ用アルミニウム合金板の組成について説明する。
本実施形態の缶ボディ用アルミニウム合金板は、質量%で、Si:0.2〜0.45%、Fe:0.3〜0.55%、Cu:0.15〜0.5%、Mn:0.8〜1.2%、Mg:0.5〜1.7%を含有し、残部が不可避的不純物を含むAlからなる組成のアルミニウム合金からなる。また、このアルミニウム合金に、更に、Cr:0.001〜0.05%、Zn:0.05〜0.5%、Ti:0.001〜0.05%のうち、1種または2種以上を含有するアルミニウム合金を用いても良い。
以下、本実施形態で使用するアルミニウム合金の組成限定理由について説明する。
なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に限定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。例えば0.1〜0.5%との表記は0.1%以上0.5%以下を意味する。
Siは、同時に含有するMgと化合物を形成し易く、固溶硬化作用、分散硬化作用および析出硬化作用を有する他、Al、Mn、Feなどと化合物を形成し、しごき成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Siの含有量は、0.2質量%未満では所望の潤滑特性を確保することができず、また0.45質量%を越えると加工性が劣化して不都合である。
「Fe:0.3〜0.55%」
Feは、結晶の微細化およびしごき成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Feの含有量は、0.3質量%未満では所望の効果が得られず、0.55質量%を越えると加工性を劣化させる。
Cuは、Mgと化合物を形成し易く、固溶硬化、分散硬化および析出硬化に寄与する。
Cuの含有量は、0.15質量%未満では所望の効果が得られず、0.5質量%を越えると加工性を劣化させる。
「Mn:0.8〜1.2%」
Mnは、Fe、Si、Alなどと化合物を形成し易く、晶出相および分散相となって分散硬化作用を現すと共にしごき成形時のダイスに対する焼付きを防止する効果がある。Mnの含有量は、0.8質量%未満では所望の硬化特性が得られず、1.2質量%を越えると加工性が劣化する。
「Mg:0.5〜1.7%」
Mgは、固溶体強化作用を有し、圧延による加工硬化性を高めるとともに、前記Siや前記Cuと共存することによって分散硬化と析出硬化作用を現す。Mgの含有量は、0.5質量%未満では所望の効果が得られず、1.7質量%を越えると加工性を劣化させるようになる。
「Cr:0.001〜0.05%」
Crは結晶の微細化としごき成形加工時にダイスに対する焼き付きを防止する効果を発揮する。Crの含有量は、0.001質量%未満では所望の効果が得られず、0.05質量%を越えると脆くなり加工性が劣化する。
ZnはMg、Si、Cuの析出物を微細化する作用を有する。Znの含有量は、0.05質量%未満では所望の効果が得られず、0.4質量%を越えると加工性と耐食性を劣化させる。
「Ti:0.001〜0.1%」
Tiは、結晶粒を微細化して加工性を改善する効果がある。ただし、Tiの含有量は0.1質量%を越えると粗大な化合物を生成し、逆に加工性を劣化させ、0.001質量%未満では効果がほとんど得られない。
次に、本実施形態に係るDI成形性、ネック成形性、および耳率に優れる缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法の実施の形態について説明する。
本実施形態の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法においては、前記組成のアルミニウム合金を溶製し、鋳造して得た鋳塊に対して均質化処理した後、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延による熱間圧延を行い、続いて第1冷間圧延、第1中間焼鈍、第2冷間圧延、第2中間焼鈍を順次施して、さらに最終冷間圧延を行うことにより所望の板厚の缶ボディ用アルミニウム合金板を得る。更に、前記の工程に加え、保持温度120〜160℃、保持時間300秒〜6時間の条件で最終焼鈍を行うことができる。
以下、本実施形態のDI成形性、ネック成形性、および耳率に優れる缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法について順を追って説明する。
前記組成のアルミニウム合金を溶解後、常法に従ってアルミニウム合金溶湯から鋳塊を鋳造するが、鋳造に先立ち、アルミニウム合金を溶製した際に、水素ガスや酸化物などの介在物を除去し、半連続鋳造法により鋳塊を得る。
このときの凝固速度は通常、5〜20℃/秒とされる。鋳造された鋳塊の厚さは、例えば500〜600mm程度とすることができる。
次に、面削を行い、鋳塊の表面を1〜25mm程度切削し、面削体を作製する。
次に、作製した面削体に均質化処理を施す。均質化処理は一般に、溶湯の凝固によって生じたミクロ偏析の均質化、過飽和固溶元素の析出、凝固によって形成された準安定相の平衡相への転移などのために行われる。
均質化処理においては、均質化温度を560〜610℃の範囲内とすることが重要である。均質化温度が560℃未満では後述の第2中間焼鈍の効果が得られず、後述の熱間圧延工程や第1冷間圧延工程においてクラックが発生し易く、最終板材の耳率が高くなる。また、均質化温度が610℃を超えると、鋳塊が溶融するおそれがある。
また、均質化処理において、均質化温度に保持する時間(均質化時間)は5時間以上とすることが好ましい。均質化時間が5時間未満では、均質化が充分に進行しない場合がある。しかし、均質化時間が長すぎても効果はなく生産効率が低下する。以上の観点から、好ましい均質化時間は5〜24時間の範囲内である。この均質化処理は、均質化時間が比較的長いので、通常、バッチ方式の炉中に置くことで行われる。
本実施形態おいて、均質化処理の後さらに面削体を480〜560℃まで冷却し、熱間圧延を開始する。480〜560℃の温度範囲での保持時間(均熱時間)は、1〜12時間の範囲内で行うことができる。
熱間圧延は、熱間粗圧延およびそれに続く熱間仕上げ圧延よりなり、本実施形態においては、シングルミルのリバース式熱間仕上圧延機を使用して熱間仕上げ圧延を行うことが好ましい。
熱間圧延工程においては、図1に示すように、熱間粗圧延機20を用いて板厚20mm程度まで熱間粗圧延した後、熱間仕上圧延機30を用いて板厚2〜7mmまで熱間圧延する。
熱間粗圧延は、圧延材が厚い間は、通常圧延機の前後に搬送テーブルが設置された1スタンド式粗圧延機(図1に示す熱間粗圧延機20)を用いて圧延する。しかし、板が薄くなると、必要な搬送テーブル長が長くなり、板の自重によるたるみも大きくなり、板の冷却も生じ易くなる。そのため、搬送テーブルで保持するには、板厚が十数mm以上必要である。したがって、粗圧延機から仕上圧延機に板を送る際の最低板厚は、コイル重量や板幅に依存するが、工業的に用いられている重量・幅の場合、16mm程度以上であることが好ましい。また、粗圧延機から仕上げ圧延機に送る際の板厚が厚すぎる場合には、仕上圧延機での圧延パス回数の増加を招き、生産性を低下させる。したがって、仕上げ圧延機に送る際の板厚の上限は40mm以下であることが好ましい。上述の厚さ上限から下限の範囲内までアルミニウム合金の板材が薄くなった場合に、図1に示す構成のシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機で熱間仕上げ圧延を行う。
圧延機の両側に巻取装置があるシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機(図1に示す熱間仕上圧延機30)を使用することにより、熱間仕上板厚を小さくすることができる。
従って、以降の冷間圧延の圧下率を小さくできるので、冷間圧延のパス回数を削減でき、生産性を向上させることができる。これに対し、例えば、巻取装置が片方にだけ設置された熱間仕上圧延機を用いた場合、搬送テーブル上で保持できる板厚に最小値が存在するために、熱間圧延で圧延可能な最小板厚が増加することになる。このため、熱間圧延後の冷間圧下率が増加する。
第1冷間圧延工程においては、前記の熱間圧延を施した後に冷却した板材を、圧下率20〜75%の範囲となるように冷間圧延する。第1冷間圧延の圧下率が75%を超えると、冷間圧延のパス回数が増加して生産性が低下する。一方、第1冷間圧延の圧下率が20%未満では、第1中間焼鈍時の歪導入量が不足するため、第2中間焼鈍後に0−90°耳が発達しにくくなり、得られたアルミニウム板材を加工した際に低い耳率が得られない。
第1冷間圧延の圧下率を20〜75%の範囲内とすることにより、加工にあたって耳率を低く抑えることができるアルミニウム合金板を、良好な生産性で製造できる。
第1中間焼鈍工程は、前記第1冷間圧延後の板材に対し、図2に基本構成を示す連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で加熱し、保持温度330〜380℃の範囲(330℃以上、380℃以下の範囲)に1〜30秒(1秒以上、30秒以下)保持し、冷却速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で冷却を行う。
この焼鈍工程は、アルミニウム合金板材を半軟化状態にもたらすものであって、焼鈍後の耐力;YS(Yield Strength)を好適な範囲とすることが好ましい。
焼鈍温度が330℃未満では十分な軟化が得られず結果的に耳率が高くなる。焼鈍温度が380℃を越えまたは保持時間が30秒を越えると軟化が過剰となって耳率が高くなる。
そして、連続焼鈍装置40ならば、アルミニウム合金の板材42を供給ロール41に巻き付けた状態のコイルの幅や径が異なっても、換言するとアルミニウム合金の板材42の幅や厚さ、処理するべき長さが異なっていても、製造したい順番に焼鈍処理できるために、同一の大きさのコイルのみを焼鈍炉に搬入して焼鈍していたバッチ式の焼鈍炉の場合に比べて中間在庫の増加を抑えることができる。
次に、第1中間焼鈍後の板材に対し、圧下率10〜25%の範囲内となるように冷間圧延を施す。第2冷間圧延の圧下率を10〜25%の範囲内とすることにより、後述する第2中間焼鈍後に0−90°耳を発達させることができるので、結果的に、後述する最終冷延工程において、最終冷延率が68%以上の条件でも低耳率の板材を得ることができる。
第2冷間圧延の圧下率が10%未満では工程全体として圧延パス数が増大して生産効率が低下する可能性があり好ましくない。第2冷間圧延の圧下率が25%を越えると、耳率が高くなる。
第2中間焼鈍工程は、前記第2冷間圧延後の板材に対し、図2に基本構成を示す連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で加熱し、保持温度420〜600℃の範囲(420℃以上、600℃以下の範囲)に1〜30秒(1秒以上、30秒以下)保持し、冷却速度10〜200℃/秒の範囲(10℃/秒以上、200℃/秒以下の範囲)で冷却を行う。
焼鈍温度が420℃未満および保持時間1秒未満では局部的に再結晶が不完全な部位を生じ、強度および耳率が不安定となるため好ましくない。焼鈍温度が600℃を越えると板が炉本体内部で破断する可能性が高くなるため好ましくない。保持時間が30秒を越えると生産性が低下するため好ましくない。冷却速度が遅すぎても、生産性が低下するため、下限を10℃/秒とした。また、加熱/冷却速度が200℃/秒を超えると、板材に歪が発生し易くなる。
第2中間焼鈍を施した後、圧下率68〜85%の条件で最終板厚まで冷間圧延を施す。
最終冷間圧延における圧下率が68%未満では、ネック成形時に割れやしわ等のネック成形不良が生じ易くなる。また圧下率が85%を超えると、耳率が高くなり、耐胴切れ性が劣化する。
以上のような各条件下でアルミニウム合金の鋳塊に圧延加工を施してアルミニウム合金板材を製造することにより、アルミニウム缶の製造において、DI成形性、ネック成形性、および耳率のバランスに優れるものを得ることができる。
以上の製造方法によれば、DI成形性、ネック成形性、および耳率をバランスよく満足する缶ボディ用アルミニウム合金板を得ることができるが、当該合金板のDI成形において、缶底部の成形条件によっては、ボトムしわと呼ばれる缶底チャイム部のしわが認められる場合がある。当該合金板に対して、保持温度120〜160℃、保持時間300秒〜6時間の条件で最終焼鈍を行うことによってボトム成形性が改善され、前記ボトムしわの発生を有効に抑制することが可能である。
保持温度を120℃未満にすると、ボトムしわの抑制効果がほぼ認められなくなるという面で問題があり、160℃を超える保持温度とすると、DI成形における胴切れ性の低下が認められる問題が生じる。
保持時間300秒未満にすると、製品コイル内での熱処理温度の不均一が生じやすくなるため好ましくなく、6時間を超える保持時間とすると、生産性が低下するという問題がある。
最終焼鈍処理を上述の条件で施すことにより、DI成形した場合に缶ボトム部にしわを生じることなく成形できる特徴がある。
表1に示す組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。なお本実施例各スラブにおけるCr、Zn、Tiの含有量はほぼ同等で、それぞれCr=0.02〜0.03%、Zn=0.15〜0.17%、Ti=0.02〜0.03%であった。次に、前記スラブを面削後、均質化・均熱兼用炉を用いて、保持温度565℃かつ保持時間7時間の均質化処理を施した後、保持温度545℃まで炉中で冷却し、当該保持温度にて保持時間2時間の均熱処理を施した。続いて、図1に示す構成の熱間粗圧延機20を使用して板厚20mmまで熱間粗圧延した後、図1に示すシングルミルのリバース式熱間仕上圧延機30を使用して、熱間仕上げ圧延により種々の仕上板厚の板材を得た。
次いで、第1中間焼鈍後の板材に表1に示す圧下率(第2冷延率)で第2冷間圧延を施した後、連続焼鈍装置を用いて、表1記載の保持温度で、常温から保持温度までの平均加熱速度20℃/秒、保持した時間20秒、最高到達温度から70℃までの平均冷却速度50℃/秒の条件で第2中間焼鈍を行った。
前記アルミニウム合金板の一部試料に対し、表1に示す保持温度(℃)×保持時間(時間)の条件で最終焼鈍を施し、缶ボディ用アルミニウム合金板を得た。
得られた缶ボディ用アルミニウム合金板のブランク材のうち、試料No.1〜20については、図4の工程図に従ってボトル型飲料缶に加工した。また、試料No.21〜29については、通常の350cc飲料缶に加工した。
(山平均高さ−谷平均高さ)÷谷平均高さ×100=耳率(%)
なお、0°および180°の山の平均高さと45°、135°、225°、315°の山の平均高さをそれぞれ求め、いずれか高い方の山を上式の山平均高さとした。また、90°および270°の谷平均高さを求め、上式の谷平均高さとした。
ボトム成形性の評価には、前述の胴切れ試験で製缶した試作缶のうち無作為に抽出した24缶を用いた。缶底チャイム部のしわを観察し、しわの発生が全く認められない場合を◎、極軽微なしわが見られる場合を○、しわが明瞭に見られる場合を×とした。
試料No.21〜29については、350cc飲料缶に成形してネック成形性の評価を実施した。DI成形後の缶の口端部をトリムにより除去し、洗浄乾燥後、缶内外面に塗装印刷を施し、ダイネック成形およびスピンフロー成形を行い、内径およそ55mmの350cc飲料缶のネック形状とした。なお、DI成形の際に、ネック成形加工を受ける部位の肉厚を薄くすることにより、ネック成形加工におけるフランジ先端のしわ発生を促進評価した。24缶の製缶を行い、フランジ先端のしわの程度を目視評価し、しわが認められないものを◎、極軽微なしわが認められるものを○、しわが明瞭に認められるものを×とした。
これらの試料に対し、試料No.7、8、10〜15、21〜23、28、29が比較例に相当する。
No.7の試料は第1焼鈍保持温度を400℃とした試料であるが、第1焼鈍保持温度が高過ぎた結果、耳率が高くなった。No.8の試料は第1焼鈍保持温度を300℃とした試料であるが、第1焼鈍保持温度が低くなり過ぎた結果、耳率が高くなった。
No.10の試料は第1冷延率を77%とした試料であるが、第1冷延率を高くし過ぎると、第1冷延率の増加による耳率改善の効果は飽和し、熱間仕上圧延の仕上げ板厚が厚くなる(8mm)ため、生産性が低下する。
No.11〜13の試料は最終冷延率が62%であり、最終冷延率が低すぎる試料であるが、ネック成形性に問題を生じた。No.14の試料は中間焼鈍を施さない試料であるが、DI成形性、ボトム成形性に問題を生じた。
No.15の試料は第2焼鈍保持温度が400℃であり、第2焼鈍保持温度が低すぎた試料であるが、コイルの幅方向中央部と端部でASTSを測定した値の最大差が8MPa以上となり、コイル内で強度のばらつきが発生した。
No.21〜22の試料は最終冷延率が63%であり、最終冷延率が低すぎる試料であるが、ネック成形性に問題を生じた。
No.13、23、28の試料は焼鈍を1回のみ施した試料であるが耳率が高く、ネック成形性にも問題を生じた。
No.29の試料は中間焼鈍を施さない試料であるが、DI成形性、ボトム成形性に問題を生じた。
これらの対比から、試料No.1〜6、9、16〜20、24〜27の実施例が示すように、表1に示す組成のアルミニウム合金の鋳塊を均質化処理、熱間圧延および熱間仕上圧延し、続いて圧下率を20%以上75%以下とする第1冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて保持温度330〜380℃なる条件で第1中間焼鈍を行い、続いて圧下率10〜25%で第2冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて保持温度420〜600℃なる条件で第2中間焼鈍を行い、続いて圧下率68%以上85%以下の条件で最終板厚まで最終冷間圧延を行うことにより、耳率が低く、DI成形性、ボトム成形性、ネック成形性ともに優れたアルミニウム合金板を提供できることがわかる。
Claims (2)
- 質量%で、Si:0.2〜0.45%、Fe:0.3〜0.55%、Cu:0.15〜0.5%、Mn:0.8〜1.2%、Mg:0.5〜1.7%、を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金を溶製し、半連続鋳造して得た鋳塊を均質化処理の後、熱間圧延および熱間仕上圧延し、続いて圧下率を20%以上75%以下とする第1冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒、保持温度330〜380℃、保持時間1〜30秒、冷却速度10〜200℃/秒なる条件で第1中間焼鈍を行い、続いて圧下率10〜25%で第2冷間圧延を行った後、連続焼鈍装置を用いて加熱速度10〜200℃/秒、保持温度420〜600℃、保持時間1〜30秒、冷却速度10〜200℃/秒なる条件で第2中間焼鈍を行い、続いて圧下率68%以上85%以下の条件で最終板厚まで最終冷間圧延を行うことを特徴とするDI成形性、ネック成形性、および耳率に優れる缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
- 更に保持温度120〜160℃、保持時間300秒〜6時間の条件で最終焼鈍を行うことを特徴とする請求項1に記載のDI成形性、ネック成形性、および耳率に優れる缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
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