JP5882034B2 - キャップ用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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一般にボトル缶の材料として用いられるのは、JIS3004(AA3004)または、JIS3104(AA3014)等、Al−Mn系のAl合金(3000系)が用いられており、キャップの材料として用いられるのは、AA5151のようなAl−Mg系のAl合金(5000系)が用いられている。
また、高強度キャップ用アルミニウム合金板として、Mg:0.8%〜2.0%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが170〜214MPa、伸びが5%以上、耳率が3%以下、限界絞り比が1.9以上であることを特徴とする高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法であって、スラブに熱間圧延、冷間圧延を行い、最終冷間圧延率を50超〜80%とし、最終冷延後に190℃〜260℃の最終調質焼鈍を行うことを特徴とする高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法が提供されている(特許文献2参照)。
さらに、キャップ用アルミニウム合金板として、Mg:1.6〜2.1%、Fe:0.05〜0.35%、Cu:0.03%以下、Mn:0.01〜0.10%、Cr:0.06%以下、Si:0.2%以下、Zn:0.15%以下、Ti:0.10%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが215〜270MPa、伸びが6.1%以上、耳率が3.5%以下であることを特徴とするボトル缶スクリューキャップ用アルミニウム合金板が提供されている。(特許文献3参照)
この飛び出しを押さえるために、ボトル缶のねじ部とキャップのねじ部の螺合による嵌合維持力を強化するため、先の特許文献1に記載の技術はMg、Cu、Mn、Cr、Zn、Si、Feなどの成分元素を適正範囲で含有し、元板の機械的性質とベーキング後の機械的特性を適正化することにより、耐熱性、高温強度に優れたキャップ用アルミニウム合金板を提供することができた。
なお、本願明細書中の製造ロット間とは、1度に処理した最終調質焼鈍炉内のロット(コイル)をロット間としている。ロットの数量は炉の大きさ(種類)によって異なるが2〜10ロットの範囲である。またロット内とは、ロット(コイル)の前端と後端及び板幅方向での板端部と中央部のバラツキを示す。通常、量産時の素材製品(アルミニウム板)の強度(引張強さ)は、ロット内のバラツキは小さいが、スラブ間の合金成分のバラツキや製造時のバラツキ影響等により、ロット間のバラツキが大きくなりやすい傾向が認められる。
本実施形態のキャップ用アルミニウム合金板は目標とする板厚が0.20mm以上0.26mm以下であり、質量%で、Mg:1.5〜1.8%、Mn:0.20%以下、Si:0.20%以下、Fe:0.30%以下、Cu:0.02%以下、Zn:0.02%以下、Cr:0.02%以下、Ti:0.02%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなる。
以下、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において限定する成分組成について説明する。なお、本明細書において記載する各元素の含有量は、特に規定しない限り質量%であり、また、特に規定しない限り上限と下限を含むものとする。従って、例えば1.5〜1.8%との表記は1.5%以上1.8%以下を意味する。
「Mg」1.5〜1.8%
Mgは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、析出硬化作用を有し、圧延加工時に加工硬化性を高めるとともに、SiやCuと共存することで分散硬化と析出硬化作用を発揮し、強度を向上させる。
Mgの含有量が1.5%未満であると、十分な強度が得られない。Mgの含有量が1.8%を超えると、強度が高すぎて加工性が低下し、また、ボトル缶のキャップとした場合に開栓が困難となる。従って、Mgの含有量は、1.5〜1.8%の範囲内とする必要がある。
Mnは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、Al−Mn−Fe系金属間化合物を形成し、晶出相及び分散相となって分散硬化作用を発揮する。Mnの含有量が0.2%を超えると、靭性低下によって加工性が劣化する。Mnの含有量は、0.2%以下とする必要がある。
「Si」0.2%以下
Siは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、同時に含有されるMg等とともに化合物を形成し、析出硬化及び分散硬化作用で強度を向上させる。
Siの含有量が0.2%を超えると強度が高くなり過ぎて、ボトル缶のキャップとした場合に開栓が困難となるおそれがある。従って、Siの含有量は、0.2%以下とする必要がある。
「Fe」0.3%以下
Feは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、Al−Mn−Fe系金属間化合物の量を増加させ、結晶の微細化と靭性向上効果に寄与する。
Feの含有量が0.3%を超えると、Al−Mn−Fe系金属間化合物の量が多くなりすぎ、靭性低下によって加工性が低下する。従って、Feの含有量は、0.3%以下とする必要がある。
Cuは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、主に固溶硬化、析出硬化及び分散硬化作用により強度を高める効果を有する。
Cuの含有量が0.02%を超えると、製造ロット間のバラツキを生じ易くなる。従って、Cuの含有量は、0.02%以下とする必要がある。
本発明のキャップ用アルミニウム合金板は、Zn:0.02%以下、Cr:0.02%以下、Ti:0.02%以下を含有する成分組成とすることができる。
Znは、加工性と耐食性に影響があり、0.02%を超える場合に加工性と耐食性が劣化する傾向がある。従って、Znの含有量は、0.02%以下とする必要がある。
Crは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、強度向上に寄与するが、0.02%を超える場合は強度が高くなり過ぎ、ボトル缶のキャップとした場合に開栓が困難となる。従って、Crの含有量は、0.02%以下とする必要がある。
Tiは、本発明のキャップ用アルミニウム合金板において、強度向上に寄与するが、0.02%を超える場合は強度が高くなり過ぎ、ボトル缶のキャップとした場合に開栓が困難となる。従って、Tiの含有量は、0.02%以下とする必要がある。
熱間粗圧延機は、例えば上下のワークロールおよびバックアップロールと、複数の搬送ローラが配列された搬送路を備え、搬送されてきたアルミニウム合金の板材をワークロール間を通過させて目的の厚さに圧延する装置である。
以上説明の各装置を主体として用い、以下に詳述する工程を順次実施することにより、目的のキャップ用アルミニウム合金板を製造することができる。
熱間圧延では、圧延材が厚い間は、通常圧延機の前後に搬送テーブルが設置された1スタンドの可逆式圧延機を用いて圧延できる。しかし、板が薄くなると、必要な搬送テーブル長が長くなり、板の自重によるたるみも大きくなり、板の冷却も生じやすくなる。
このため、アルミニウム合金の板材がある程度薄くなるまで、例えば10mm以上30mm以下となるまで熱間粗圧延機で熱間粗圧延を行い、その後、熱間圧延機にて熱間圧延を行ない、板厚2.0〜4.0mm程度で熱間仕上圧延を行なうことが好ましい。
熱間粗圧延仕上板厚が10mm未満では粗圧延の生産性が劣り、30mmを超えるとその後の仕上圧延の生産性が低下する。
熱間仕上圧延速度は100〜500(m/分)であることが望ましく、100(m/分)未満では生産性が悪く、500(m/分)超えでは形状不良や表面性状が悪化する。
熱間仕上圧延仕上温度は、310℃〜360℃の範囲であることが好ましい。熱間仕上圧延仕上温度が310℃未満では、45゜耳が発達し過ぎて耳率が悪化し、360℃超えでは0−180゜耳が発達し、耳率が悪化する。
上述のように熱間圧延を粗圧延と仕上圧延の2工程とすることにより、後述する最終調質焼鈍における低温焼鈍を可能として、その結果、機械的性質の安定性を高め、製造ロット間やロット内のバラツキを抑制し、機械的性質の引張強さと耐力の差を小さくでき、剛性の高いキャップ材を得ることができる。
中間焼鈍の一例として、連続焼鈍を行うことができ、平均加熱速度10〜50℃/sで400℃以上600℃以下の所定温度まで加熱し、その後、平均冷却速度30〜150℃/sで常温から100℃以下の所定の温度まで冷却する。例えば、連続焼鈍で実体温度420℃相当の熱処理を施し、板厚を0.7mm以下とすることによって、最終冷間圧延率を下げ、絞り比1.97における素材製品の耳率を1.5%以下とすることができる。この場合、理想の耳形態と称される0−45−90゜の八方耳を得ることができる。
中間焼鈍を行う場合の板厚は0.7mm以下であることが好ましい。中間焼鈍時の板厚が0.7mmを超える場合は、最終冷間圧延率が高くなり、耳率が悪化する。
中間焼鈍処理の後、最終冷間圧延することにより目的の板厚、例えば、0.200〜0.260mmの範囲、一例として0.23mmとする。
以上の工程に従って製造されたキャップ用アルミニウム合金板は、耳率において1.5%以下であることが望ましい。耳率が1.5%を超えるようであると、材料としての異方性の影響が大きくなり、ボトル缶用のキャップを構成した場合に塗装・印刷時の文字が歪を生じてしまう問題がある。また、上述の各工程を実施することによって得られたアルミニウム合金板の板厚中央部の結晶粒径を50μm以下と微細化することができる。
以上説明の製造方法によれば、製造ロット間のバラツキ、製造ロット内の強度のバラツキのいずれにおいても標準偏差が3MPa以下とバラツキを小さくすることができる。
以下に、本発明に係るキャップ用アルミニウム合金板で規定する各種機械特性について説明する。
本発明に係るキャップ用アルミニウム合金板では、機械的性質の引張強さ(TS)が205MPa以上、225MPa以下であることが望ましく、引張強さと耐力(YS)の比が0.8(耐力YS/引張強さTS)以上であることが好ましい。
引張強さが205MPa未満では、目的のキャップ性能が得られず、引張強さが225MPaを超えると開栓困難となるおそれがある。
引張強さと耐力の比(YS/TS)を0.8以上とすることで、その強度に応じた高い剛性を得ることができ、耐圧性能等のキャップ性能が向上する。
伸び(EL)が6%未満ではキャップにする際の成形が困難となり、伸びが12%を超えると所定の強度が得られなくなり、キャップとしての性能が劣るようになる。
表1に示す種々組成のアルミニウム合金を溶解し、脱ガスおよび溶湯ろ過後、半連続鋳造により厚さ600mm、幅1100mm、長さ4.5mのスラブに鋳造した。
前記スラブを面削後、熱間粗圧延、熱間仕上圧延した後、圧延材を巻き取ったコイルを冷間圧延し、表2の条件で中間焼鈍し、目的の板厚まで冷間圧延した後、最終調質焼鈍を表2の条件にて行ない、キャップ用アルミニウム合金板を得た。
表1に示す実施例1〜14及び比較例1〜6について、各10ロット(コイル)製作し、1コイル内で前端と後端及び板幅方向での両板端部と中央部の合計6箇所、全体のサンプル数n=60としてロット間およびロット内の引張強さ(TS)のバラツキを算出した。その結果を表2に示す。
なお、表1に記載されているキャップ性能(機械的性質)の値はn=60の平均値となる。規格外の場合は、最も外れたn=1のデータの値を記載しています。例えば、TSの規格215±10MPaに対し、規格外の比較例1〜5は平均値でなく、規格外が発生した最も外れた値(215から最も離れたデータ)を記載している。
最終調質焼鈍温度が低すぎる比較例3の試料はTSのバラツキが大きく、最終調質焼鈍温度が高過ぎた比較例4の試料はTSのバラツキが大きくなった。また、Cuの含有量が0.03%であり、Cuを0.02%より多く含有させた比較例6の試料について、ロット内、ロット間のTSのバラツキが大きくなった。
また、本発明に係るキャップ用アルミニウム合金板として、板厚が0.200〜0.260mmで、機械的性質の引張強さが205〜225MPa、耐力が170〜200MPa、伸びが6〜12%であって、ロット間およびロット内の引張強さの標準偏差σが3MPa以内とバラツキが小さい合金板を製造できることがわかった。
また、このようなキャップ用アルミニウム合金板を製造するためには、熱間粗圧延仕上板厚を10〜30mmの範囲とし、熱間仕上圧延を行なった際の仕上板厚を2.0〜4.0mmの範囲とし、熱間仕上圧延速度を100〜500m/分の範囲とし、熱間仕上圧延仕上温度を310〜360℃の範囲とすることが重要であることがわかった。
Claims (2)
- 質量%で、Mg:1.5〜1.8%、Mn:0.20%以下、Si:0.20%以下、Fe:0.30%以下、Cu:0.02%以下、Zn:0.02%以下、Cr:0.02%以下、Ti:0.02%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、
機械的性質の引張強さが205〜225MPa、耐力が170〜200MPa、伸びが6〜12%であって、ロット間およびロット内の引張強さの標準偏差σが3MPa以内とバラツキが小さく、機械的性質の引張強さと耐力の比(耐力(YS)/引張強さ(TS))が0.8以上であることを特徴とするキャップ用アルミニウム合金板。 - 請求項1に記載のキャップ用アルミニウム合金板を製造する方法であって、熱間粗圧延の仕上り板厚が10〜30mmで、その後、熱間仕上げ圧延を行なった際の仕上り板厚が2.0〜4.0mmであり、圧延速度が100〜500m/分で、仕上り温度が310〜360℃であることを特徴とするキャップ用アルミニウム合金板の製造方法。
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