JP4294448B2 - 高強度キャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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また、近年、胴体部と口部とスクリューキャップを備えてなるボトル形状のアルミニウム缶が開発されてきている。それに伴い、キャップ材もボトル缶用に適したものが望まれている。すなわち、開栓後、飲料を残して再栓した場合の、だ液などからの微生物による発酵で缶内圧が上り、再開封時にキャップが飛ぶことを防ぐ防爆型のキャップも開発されてきている。(例えば、特許文献2参照。)
また、前述の防爆型とするためには、キャップのネジ部がボトル缶内圧の上昇に耐えて嵌合状態が外れないように必要な強度を有することが重要であり、通常ボトル缶に用いられる炭酸飲料等から受ける内圧は0.2MPa程度であるが、使用環境や温度条件によってはそれ以上の高圧が発生するとの知見もある。
このため、このような高圧が発生するおそれを有するボトル缶用のキャップにあっては、特に高い強度を有する合金でキャップを製造する必要を生じる。
勿論、このキャップ材は高内圧のガス抜きを、キャップとボトル口部の構造で行う防爆対応性のキャップ材としても勿論用いることができる。更には、先の防爆型ほど耐圧性能を必要としないキャップ材にも使用でき、キャップ材としての使用範囲は非常に広いものである。
また、防爆対応性として、瓶またはボトルの内圧が上昇した時、キャップボトル口部との構造によってガス抜きをするタイプのキャップ材として適度な変形性能を有するキャップを得ることができる。
また、ベーキング前後の引張強さの変化が10MPa以下、耳率3%以下であることで、本発明に係る合金板を用いてキャップを構成し、キャップの天面となる部分に印刷のためキャップ用塗料を焼付塗装した場合、焼付前後の引張強さの変化を小さくできるので、キャップ成形後に引張強さのバラツキの小さいキャップを得ることができる。よって、本発明に係る合金板からなるキャップであるならば、シーリング性、防爆対応性などの性能にバラツキの少ないキャップを得ることができる。
Mg:0.8〜2.0%
Mgは強度を向上させる。Mgが0.8%未満では上記効果が不十分で、2.0%を超えると強度が高くなりすぎる。よってMgの含有量は0.8〜2.0%とする。この範囲の中でもMg含有量の好ましい範囲は1.3〜1.7%である。
Si:0.2%以下
Siは深絞り性を向上させるが、0.2%を超えると逆に深絞り性が劣化し、ベーキング後の引張強さが10MPaを超えて高くなるおそれがある。よってSiの含有量は0.2%以下とする。
Fe:0.35%以下
Feは強度を向上させるが、0.35%を超えると深絞り性、耐食性が劣化する。よってFeの含有量は0.35%以下とする。
Cuは強度を向上させるが、0.02%を超えると強度が高くなりすぎる。よってCuの含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
Mn:0.05%以下
Mnは強度を向上させるが、0.05%を超えると強度が高くなりすぎる。よってMnの含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下である。
これら元素の中でもCr含有量について、2%以下の低耳率を確実に達成するためには0.003〜0.053%の範囲とすることが望ましい。
引張強さが170MPa未満では、耐圧性、シーリング性が不足し、214MPaを超えると本発明対象のキャップ材としては強度が高くなりすぎる。よって引張強さは170〜214MPaとする。好ましくは190〜205MPaである。
伸びが5%未満ではシーリング性、防爆対応性が劣化する。よって、伸びは5%以上とする。好ましくは6%以上である。
本発明は耳率を3%以下に低く抑えながら上記引張強さにできる。耳率が3%を超えると材料ロスが多くなる。よって耳率は3%以下とする。
本発明は限界絞り比が高いので、絞り比の大きいキャップにも使用できる。1.9未満では絞り比の大きいキャップに使用できない。よって限界絞り比は1.9以上とする。
多くの場合、アルミニウム板で主にキャップの天面となる部分に印刷のためキャップ用塗料を焼付塗装するが、本発明は焼付前後の引張強さの変化が小さいので、キャップ成形後に引張強さのバラツキの小さいキャップを得ることができる。よって、シーリング性、防爆対応性などの性能にバラツキの少ないキャップを得ることができる。従って、ベーキング前後の引張強さの変化を10MPa以下とする。
本発明は低い耳率を維持しながら引張強度を適度な値とすることができる。50%以下では強度が不十分となり、80%を超えると耳率が高くなる。例えば、板厚0.6mmから0.25mmにした場合の最終冷間圧延率は58%、0.8mmから0.25mmにした場合の最終冷間圧延率は69%であるが、どちらの場合においても耳率が低く、冷間圧延率が高い方が引張強さが向上する。よって最終冷間圧延率は50超〜80%とする。好ましくは50超〜65%である。
最終的には最終冷間圧延で目的の引張強さを得るが、最終冷間圧延後に、最終調質焼鈍(安定化焼鈍)を行う。190℃未満では、伸びが不足し、260℃を超えると素材強度が低下する。よって最終調質焼鈍は190〜260℃とする。好ましくは210〜260℃である。加熱方法はバッチ式でも急速加熱方式でもよい。加熱時間はバッチ式では1〜10時間程度、急速加熱方式では1〜60秒程度である。
熱間圧延前に均質化処理は行わなくてもよいが、行った方が好ましく、行う場合は450〜590℃の範囲が好ましい。均質化処理を行うことで耳率が安定化する。均質化処理温度が450℃未満では効果が小さく、590℃を超えると、材料の溶融の危険がある。
さらに下地処理として必要に応じてリン酸クロメート処理、ジルコニウム処理等を行ってよい。
本発明のキャップ材は製造方法が限定されるものではない。上記により得られたキャップ材は、絞り加工等により、キャップに成形される。
耐圧性は引張強さ、低耳は耳率、シーリング性、防爆対応性は引張強さ、伸び、深絞り性は限界絞り比で評価した。耳率は直径62mmのブランクを33.8mmのポンチで絞って形成した絞りカップの高さから算出した。ベーキング後の引張強さは190℃×4hr加熱後の値である。
表2の比較例2はMg含有量を0.6%と少なくした例であるが、表4に示すように引張強さが157MPaになり著しく低下した。
表2に示す組成の比較例3は表4に示すように最終冷間圧延率を85%と高くしすぎた例であるが、引張強さが225MPaに上昇した。このように引張強さが強くなりすぎると、本発明対象のキャップ材としては強度が高くなり過ぎるという問題を有する。
表2に示す組成の比較例5は表4に示す如く最終調質焼鈍温度を270℃と高くした例であるが、引張強さが159MPaに低下した。
表2に示す組成の比較例6、7、8は表4に示す如く最終調質焼鈍を行っていない例であるが、いずれの試料も強度が230〜248MPaの範囲となり高くなるとともに、いずれの試料でもベーキング後の引張強さの低下が大きく、変化量として−17〜−20MPaの範囲になった。このようにベーキング前後で引張強さに大きな差異を有すると、シーリング性、防爆対応性などの性能においてバラツキの大きいキャップとなる問題を有する。
この例の合金においてCr以外の合金組成は表1の実施例7〜12と同じようにSi:0.1%、Fe:0.2%、Cu:0.01%、Mn:0.02%、Mg:1.6%、Zn:0.01%、Ti:0.01%、残部Alとし、Cr含有量のみを0.003〜0.063%の範囲で調整している。
図1に示す結果から、Cr含有量については0.063%の試料、0.059%の試料、0.054%の試料、0.045%の試料、0.020%の試料、0.003%の試料についてそれぞれ複数試料の耳率を測定した。
図1に示す結果から、2%以下の低耳率とするためには、Cr含有量を0.003〜0.053%の範囲とすることが望ましく、0.003〜0.045%の範囲とすることで耳率2%未満を確実に達成できることが判明した。
Claims (3)
- 重量%でMg:0.8〜2.0%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが170〜214MPa、伸びが5%以上、耳率が3%以下、限界絞り比が1.9以上であることを特徴とする高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法であって、スラブに熱間圧延、冷間圧延を行い、最終冷間圧延率を50超〜80%とし、最終冷延後に190〜260℃の最終調質焼鈍を行うことを特徴とする高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記組成比に加え、更に、重量%でSi:0.2%以下、Fe:0.35%以下、Cu:0.02%以下、Mn:0.05%以下を含有する高強度キャップ用アルミニウム合金板を得ることを特徴とする請求項1に記載の高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法。
- ベーキング前後の引張強さの変化が10MPa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の高強度キャップ用アルミニウム合金板の製造方法。
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