JP2004353080A - キャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

キャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 キャップ自体の浮き上がり、変形を防止しながら、ネジ部の嵌合強度も向上でき、加工性にも優れるキャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法を得る。
【解決手段】 本発明は、重量%でSi:0.01〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Cu:0.01〜0.2%、Mn:0.3〜1.3%、Mg:0.3〜1.4%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが215〜265MPa、伸びが3.0%以上、耳率が3.5%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ボトル缶のキャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
近年、胴体部と口部とスクリューキャップを備えてなるボトル形状のアルミニウム缶が開発されてきている。それに伴い、キャップ材もボトル缶用に適したものが望まれている。また、ボトル缶のキャップではないが、PPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
一方、ボトル缶の場合、中身を全部飲まずに、再びキャップをしめて保管しておく場合がある。はじめに飲んだ時に、だ液などから微生物が混入し、飲み残した飲料が栄養源となって、ボトル缶内で菌の増殖が起き、ガス発生をもたらして内圧が向上し、場合によってはキャップが飛び出す現象が生じることがある。この対策として、ボトルのネジ部とキャップのネジ部の嵌合をより強固にすることが必要であり、このためにキャップの強度を高くすることが求められている。加えて、キャップのナ−ル部にスリットを形成し、このスリットからガスを放出させる構成のキャップが知られている。(例えば、特許文献2参照。)
特開平9−25546号公報 特開2003−155052号公報(段落0009、第2図、第7図参照)
前記特許文献2に記載された構造のキャップにおいては、キャップが内圧によって飛び上がる前に、キャップが変形し、前記スリットからガスが放出されるような構成、あるいは、それに必要なキャップ材強度としなければならない。
そのためには、キャップのネジ部がボトル缶内圧の上昇に耐えて嵌合状態が外れないように必要な強度を有すると同時に、キャップの天面が適度に変形し、キャップの天面が持ち上がるように膨出変形することでキャップのパッキンとボトルのカール部が離れ、キャップの天面近くの側面部に形成されたガス抜き用のスリットから効率よくガス抜きできるような強度のキャップを製造しなくてはならない。なお、通常ボトル缶に用いられる炭酸飲料等から受ける内圧は0.2MPa程度であるが、先の如く菌の繁殖によりガス発生を起こした場合、場合によっては0.8〜1.0MPa程度もの高圧が発生するとの知見もある。このため、このような高圧が発生するおそれを有するボトル缶用のキャップにあっては、特に高い強度を有する合金でキャップを製造する必要を生じる。
また、この種のキャップは大量生産されるので、製造の際に材料の無駄が出ないようにすることが望ましく、板材から圧延した際に材料の無駄を生じる原因となる耳がどの程度発生するのか、また、如何に低耳率のまま良好な加工性と高い引張強さの確保ができるのかという重要な課題がある。
更に、アルミニウム合金の場合に一般に強度を高めるためには、Mgを1.5%程度添加した5000系の合金を用いるが、5000系のアルミニウム合金ではMgを多量に含むためにリサイクル性に問題を有する傾向にあった。即ち、アルミニウム合金のリサイクルの場合、アルミ缶用の合金とするためには、加工性に優れることが要求されることから、Mgの含有量を半分程度に低くする必要を生じ、そのためにはリサイクルの際にMg含有量の低い高価なアルミ地金を別途溶湯に投入してMg濃度を低くする作業が必要となり、操業コストの面で問題を生じるおそれがある。このため、Mg含有量を低くした組成系のままで前述のガス発生に起因する問題を解消できるボトル缶用のキャップ材を提供する必要があった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、耳率が低いままで、引張強さを向上させて、しかも適当な伸びを確保して、これによってキャップ自体の浮き上がり、変形を防止しながら、ネジ部の嵌合強度も向上でき、加工性とリサイクル性にも優れるキャップを得られるキャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するための本発明のキャップ用アルミニウム合金板の請求項1記載の発明は、重量%でSi:0.01〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Cu:0.01〜0.2%、Mn:0.3〜1.3%、Mg:0.3〜1.4%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが215〜265MPa、伸びが3.0%以上、耳率が3.5%以下であることを特徴とする。
請求項2記載のキャップ用アルミニウム合金板の製造方法の発明は、請求項1記載のキャップ用アルミニウム合金板の製造方法において、スラブに熱間圧延、冷間圧延を必要回数行って最終板厚のキャップ用アルミ合金板とするとともに、最終冷間圧延を圧下率40〜80%で行い、該最終冷間圧延後に150〜220℃の最終調質焼鈍を行うことを特徴とする。
本発明のキャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法によれば、重量%でSi:0.01〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Cu:0.01〜0.2%、Mn:0.3〜1.3%、Mg:0.3〜1.4%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが215〜265MPa、伸びが3.0%以上、耳率が3.5%以下であるので、キャップ自体の浮き上がり、変形を防止しながら、ネジ部の嵌合強度も向上でき、加工性にも優れるキャップを得ることができる。また、これらの要求を満たした上で耳率を低くできるので、製造する際の材料の無駄が少なくなり、大量生産した場合にキャップを低コスト化できる効果がある。
また、本発明はMg含有量を0.3〜1.4%の範囲として5000系アルミニウム合金と比較して少なくし、3000系アルミニウム合金と同じレベルにしているので、上述の優れた効果を奏した上でリサイクル性に優れる効果がある。
以下に、本発明で限定する事項について説明する。
Si:0.01〜0.6%
Siは加工性を向上させる。0.01%未満の含有量では加工性向上効果が小さく、0.6%を超えると逆に加工性が劣化する。よってSiの含有量は0.01〜0.6%とする。より好ましくは0.1〜0.5%である。
Fe:0.1〜0.7%
Feはアルミニウム合金の強度を向上させる。Fe含有量が0.1%未満では強度向上効果が小さく、0.7%を超えると加工性が劣化する。よってFeの含有量は0.1〜0.7%とする。材料強度のばらつきを抑えるために好ましいFe含有量は0.3〜0.7%である。
Mn:0.3〜1.3%
Mnは強度を向上させる。Mn含有量が0.3%未満では強度向上効果が小さく、1.3%を超えると加工性が劣化する。よってMnの含有量は0.3〜1.3%とする。更に材料強度のばらつきを少なくするための好ましいMn含有量は0.5〜1.0%である。
Mg:0.3〜1.4%
Mgはアルミニウム合金の強度を向上させる。Mg含有量が0.3%未満では上記効果が不十分で、1.4%を超えると加工性が劣化する。また、より好ましくは0.5〜1.0%の範囲である。
Cu:0.01〜0.2%
Cuはアルミニウム合金の強度を向上させる。Cu含有量が0.01%未満ではその効果が小さく、0.2%を越える含有量であると、耐食性が低下する。よってCuの含有量は0.01〜0.2%とする。中でもCuの含有量として好ましくは0.05〜0.2%の範囲である。
その他、不純物として、Zn:0.4%以下、Cr:0.2%以下、Ti:0.1%以下は許容される。
引張強さ:215〜265MPa
引張強さが215MPa未満では、ボトル缶用のキャップとしての強度が不足し、265MPaを超えるとキャップに形成するネジの成形が困難となる。よって引張強さは215〜265MPaとする。この範囲内でも好ましくは引張強さ220〜250MPaである。
即ち、ボトル缶で高圧ガスが発生してもネジ部が緩まない状態で強固にネジ嵌合してネジ部が外れない、キャップの浮き上がりを防止するために必要な強度を有すると同時に、キャップの天面が変形して変形した天面がキャップ周壁を引張り、キャップ周壁のスリットを押し広げてガス抜きをスムーズに行うために必要な強度を意味する。ここでキャップの材料強度が不足すると、キャップ周壁のスリットが開くことなくキャップの天面のみが変形してしまい、キャップ周壁のスリットからのガス抜きが満足になされなくなるので好ましくない。
伸び:3.0%以上
材料としての伸びが3.0%未満ではキャップ形成時の成形性が劣化する。よって、伸びは3.0%以上とすることが好ましい。
耳率:3.5%以下
本発明では耳率を3.5%以下に低く抑えながら上記引張強さにすることができる。耳率が3.5%を超えると材料ロスが多くなる。よって耳率は3.5%以下とすることが好ましい。
最終調質焼鈍:150〜220℃
最終的には最終冷間圧延で目的の引張強さを得るが、最終冷間圧延後に、最終調質焼鈍(安定化焼鈍)を行う。150℃未満では、強度が安定化せず、また、塗装焼き付け(200℃程度)を施した時にアルミニウム板が軟化し、220℃を超えると素材強度が低下する。よって最終調質焼鈍は150〜220℃の範囲とする。この範囲内でも好ましくは150〜200℃である。加熱方法はバッチ式でも急速加熱方式でもよい。加熱時間はバッチ式では1〜10時間程度、急速加熱方式では1〜60秒程度である。
中間焼鈍
その後の冷間圧延を容易にするために行う。通常、バッチ式の焼鈍であれば、300〜450℃で1〜10時間程度、急速加熱方式であれば400〜590℃で1〜60秒程度であればよい。
均質化処理:450〜590℃
均質化処理は行わなくてもよいが、行った方が好ましく、均質化処理を行うことで加工時の耳率が安定化する。450℃未満ではその効果が小さく、590℃を超えると、材料の溶融の危険がある。よって均質化温度は、450〜590℃の範囲とする。また、均質化処理を行った方が大量製造した場合にロット間での耳率の安定化を図ることができる。
最終冷間圧延率:40〜80%
本発明では低い耳率を維持しながら引張強度を向上させることができる。40%未満では強度が不十分となり、80%を超えると耳率が高くなる。例えば、板厚0.45mmから0.25mmにした場合の最終冷間圧延率は44%、0.8mmから0.25mmにした場合の最終冷間圧延率は69%であるが、どちらの場合においても耳率が低く、冷間圧延率が高い方が引張強さが向上する。よって最終冷間圧延率は40〜80%とする。中でも最終冷間圧延率として50〜80%の範囲が好ましい。
本発明のキャップ用アルミニウム合金板は、上記組成の合金を用い、この種のアルミニウム合金を製造する場合に適用する常法を組み合わせ、更に特別な条件で処理することにより製造することができる。即ち、溶湯からスラブを得、このスラブに熱間圧延加工と冷間圧延加工を複数回施し、これら圧延の前後に必要に応じて中間焼鈍を行い、最終圧延は冷間圧延するものとし、その際の圧延率を先に説明した範囲とすることが好ましい。
本発明のキャップ材は製造方法が限定されるものではない。上記により得られたキャップ材は、必要に応じてリン酸クロメート処理、ジルコニウム処理などの表面処理を施した後、絞り加工等により、キャップに成形される。
以上説明した如く本発明のアルミニウム合金板は、Mg含有量を0.3〜1.4%の範囲として5000系アルミニウム合金と比較して少なくし、3000系アルミニウム合金と同じレベルにしているので、リサイクルの場合に溶湯に特別に他のアルミニウム地金等の材料を投入することなく再利用することができる。従って上述の優れた効果を奏した上で、即ち、3000系に近い組成でありながら5000系のアルミニウム合金に並ぶ優れた引張強さ等の優れた機械特性を維持した上でリサイクル性に優れる効果がある。
表1と表2に示す組成のアルミニウム合金を溶製し、スラブに鋳造した。560℃×4時間の均質化処理を行い、熱間圧延で板厚6mmとした。ついで冷間圧延、連続焼鈍炉(460℃)で中間焼鈍を行い、表3と表4に示す最終冷間圧延率で最終板厚0.25mmまで冷間圧延を行った。そして表3と表4に示す条件で最終調質焼鈍を行った。
また、得られた各試料の引張強さと伸びと耳率を測定した結果を表3と表4に示す。また、最終調質焼鈍の時間は4時間とし、耳率は直径62mmのブランクを33.8mmポンチで絞って形成した絞りカップの耳高さから算出した。
Figure 2004353080
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Figure 2004353080
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表1と表3に示すように、本発明に係る実施例の試料はいずれも215〜260MPaの範囲の引張強さを示し、伸びが5.3〜8.5%の範囲であり、耳率が0.4〜3.0%の範囲となり優れた値を示した。
これらに対して表2の比較例1は、Mn含有量を1.5%と多くした例であるが、表4に示すように引張り強さが270MPaと異常に上昇した。このように引張強さが強くなりすぎると、キャップとしてネジ部分の形成が困難になる問題を有する。
表2の比較例2はMn含有量を0.1%と少なくした例であるが、表4に示すように引張強さが低下した。表1の比較例3はMg含有量を1.5%と多くした例であるが、表4に示すように引張強さが270MPaと異常に上昇した。このように引張強さが強くなりすぎると、キャップとしてネジ部分の形成が困難になる問題を有する。
表2の比較例4はMg含有量を0.04%と低くした例であるが、引張強さが199MPaとなり不足した。
表2の比較例5は表4に示す如く最終冷間圧延率を85%と高くした例であるが、耳率が悪化した。表2の比較例6は表4に示す如く最終冷間圧延率を25%と低くした例であるが、引張強さが204MPaとなり不足した。
表2の比較例7は表4に示す如く最終調質焼鈍を260℃の高い温度で行った例であるが、引張強さが低下した。表2の比較例8は表4に示す如く最終調質焼鈍を行わなかった例であるが、伸びが低くなった。
表2の比較例9,10は最終調質焼鈍温度をいずれも240℃と高くしすぎた例であるが、引張強さが低下した。

Claims (2)

  1. 重量%でSi:0.01〜0.6%、Fe:0.1〜0.7%、Cu:0.01〜0.2%、Mn:0.3〜1.3%、Mg:0.3〜1.4%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、引張強さが215〜265MPa、伸びが3.0%以上、耳率が3.5%以下であることを特徴とするキャップ用アルミニウム合金板。
  2. 請求項1記載のキャップ用アルミニウム合金板の製造方法であって、スラブに熱間圧延、冷間圧延を必要回数行って最終板厚のキャップ用アルミ合金板とするとともに、最終冷間圧延を圧下率40〜80%で行い、該最終冷間圧延後に150〜220℃の最終調質焼鈍を行うことを特徴とするキャップ用アルミニウム合金板の製造方法。


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