JP5758070B2 - 瓶キャップ用アルミニウム合金板 - Google Patents

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本発明は、ガラス瓶のキャップ用アルミニウム合金板に関する。
口部にねじ部を有する飲料用容器には、アルミニウム合金製のキャップが封止される。このキャップは、アルミニウム合金板に塗装、印刷を施した後、カップ状にプレス成形され、そのカップの開口端部をトリミングした後、胴部にミシン目等を加工して、内面にシール材を固着又は嵌め込むことにより、製造される。そして、飲料を充填した容器の口部に被せた後、容器の口部のねじ部に合わせてねじ加工されながらシールされる。その容器としては、ガラス製の瓶が適用される。
このキャップの材料に要求される品質特性としては、落下強度や耐圧性とともに、ミシン目を切りながらねじを緩めるときの開栓性も重要である。また、製造時には、深絞り性、低耳率などの特性が安定していることが重要である。
そのキャップの材料として、容器がガラス製の瓶の場合、例えばJIS3105等のAl−Mn系のアルミニウム合金などが使用されている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。
特開2005−2465号公報 特開2000−282195号公報 特開2005−344161号公報
ところで、この種の容器において、誤操作によりキャップを開栓方向とは逆方向に回してしまうと、空回りすることによりねじ山が崩れて開栓できなくなる不具合が生じる。このため、逆転トルク(キャップを逆回転して空回りし始める最大トルク)を大きくして、誤操作の防止を図ることが求められている。この場合、容器が金属製のボトル缶の場合は、ボトル缶とキャップとの摩擦が比較的大きいために、逆転トルクは大きいが、容器がガラス瓶の場合は、キャップとの摩擦が小さいため、逆転トルクが小さく、逆回転し易い傾向にある。
この逆転トルクを大きくするには、特許文献2にも記載されるように、キャップの素材強度を大きくすることが有効であるが、素材強度が大きくなり過ぎると開栓トルクも大きくなって開け難くなる。また、素材強度が高いと、キャップの絞り加工や、容器の口部に被せた後のねじ部の成形も困難になるという問題がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、開栓性、成形性を損なわずに、逆転トルクを大きくすることができる瓶キャップ用アルミニウム合金板の提供を目的とする。
本発明の瓶キャップ用アルミニウム合金板は、質量%で、Mn:0.3〜0.6%、Mg:0.2〜0.5%、Si:0.01〜0.6%、Fe:0.01〜0.7%、Cu:0.01〜0.3%、Zn:0.05〜0.2%、Ti:0.02〜0.04%、Cr:0.01〜0.03%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.15〜0.20mmであり、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが160〜190MPa、耐力が135〜165MPa、引張強さと耐力との差が5〜25MPaであり、伸びが6〜10%であるとよいが、その中でも、本発明は、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが168〜176MPa、耐力が160〜165MPa、引張強さから耐力を引いた値が5〜15MPaであることを特徴とする。
この瓶キャップ用アルミニウム合金板は、Mnを主成分とするAl−Mn系合金である。また、200℃で10分間熱処理した後の機械的特性は、通常、印刷工程において190℃で5〜10分間の熱処理が施されることから、この印刷工程を経てキャップ製品としたときの機械的特性を空焼きによって判定しようとするものである。その引張強さを160〜190MPaとしたのは、160MPa未満では、耐圧強度等のキャップとして必要な機械的性質が得られず、190MPaを超えると、ねじ部の成形が困難になるからである。また、耐力が135〜165MPaとしたのは、135MPa未満ではキャップ成形時にしわが発生し易く、165MPaを超えるとキャップ成形時に割れが発生し易くなるからである。そして、開栓性を損なわずに逆転トルクを増大させるためには、耐力を引張強さに近づけて、塑性変形領域を小さくすることが有効であり、これら引張強さと耐力との差が5〜25MPaの範囲とするのがよい。また、伸びが6〜10%としたのは、キャップ成形性を良好にするためである。そして、その中でも、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが168〜176MPa、耐力が160〜165MPa、引張強さから耐力を引いた値が5〜15MPaであるのがよい。
Al−Mn系合金において、まず、Mnを0.3〜0.6%、Mgを0.2〜0.5%とした。Mnが0.3%未満、Mgが0.2%未満では強度不足であり、Mnが0.6%、Mgが0.5%を超えると、強度が大きくなり過ぎて開栓性を損なう。そして、このAl−Mn系合金の中で、特にZn、Ti、Crの含有率をそれぞれ0.2%以下、0.04%以下、0.03%以下に低減したことにより、引張強さと耐力との差を小さくして、逆転トルクを安定させることができる。Si、Fe、Cuの添加は成形性と強度とをバランス良く調整するためである。
また、このようにZn、Ti、Crの含有率を小さくしたことにより、Al−Mn系合金としてのリサイクル性も向上させることができる。
また、その瓶キャップ用アルミニウム合金板を製造する方法としては、スラブに熱間圧延、複数回の冷間圧延を行った後に調質焼鈍処理を行うとともに、最終冷間圧延の前に、400〜480℃の温度で中間焼鈍を行うことを特徴とする。
中間焼鈍、最終冷間圧延、調質焼鈍の順で処理して成形性を良くしており、その際の中間焼鈍温度を400〜480℃の温度範囲としたのは、TiやCrの含有率を小さくしたこととの関係で結晶粒の微細化効果があまり得られないことから、結晶粒の粗大化を防止するため比較的低温の温度範囲としている。
本発明によれば、Al−Mn系合金において、キャップとして要求される機械的性質、成形性、開栓性を良好にバランスさせて、瓶用のキャップとして用いた場合に、開栓性を損なわずに逆転トルクを高めることができ、誤操作による開栓不良の発生を防止することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
まず、瓶キャップ用アルミニウム合金の実施形態について説明する。このアルミニウム合金は、質量%で、Mn:0.3〜0.6%、Mg:0.2〜0.5%、Si:0.01〜0.6%、Fe:0.01〜0.7%、Cu:0.01〜0.3%、Zn:0.2%以下、Ti:0.04%以下、Cr:0.03%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.15〜0.20mmであり、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが160〜190MPa、耐力が135〜165MPa、引張強さと耐力との差が5〜25MPaであり、伸びが6〜10%とされる。
このうち、各金属元素の添加理由は以下の通りである。
(Mn:0.3〜0.6%)
Mnは、アルミニウム合金の強度を向上させる元素である。このMnの添加量が0.3%未満であると、強度向上効果はあまり期待できず、0.6%を超えると、強度が大きくなり過ぎて成形性、開栓性を損なう原因となる。このため、Mnは、0.3〜0.6%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.4〜0.5%の範囲である。
(Mg:0.2〜0.5%)
Mgは、アルミニウム合金の強度を向上させるのに必要な元素である。しかしながら、Mgが0.2%未満であると、薄肉化されたアルミニウム合金の強度を向上させる効果が不十分となり、Mgが0.5%を超えると、強度が高くなりすぎて加工性が悪くなる。したがって、Mgは、0.2〜0.5%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.3〜0.4%の範囲である。
(Si:0.01〜0.6%)
Siは、MnやFeと化合物を形成して晶出物を形成するために、深絞り性を向上させる元素である。しかしながら、Siが0.01%未満であると、その効果に乏しく、0.6%を超えると晶出物が多くなって逆に深絞り性が悪くなる。したがって、Siは、0.01〜0.6%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3%の範囲である。
(Fe:0.01〜0.7%)
Feは、アルミニウム合金の強度を向上させる元素である。しかしながら、Feが0.01%未満であると、深絞り性や耐食性が低下する傾向にあり、0.7%を超えると強度が高くなり過ぎる。このため、Feは、0.01〜0.7%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3%の範囲である。
(Cu:0.01〜0.3%)
Cuは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果があるが、その含有量が0.01%未満であると、強度向上の効果に乏しく、0.3%を超えると強度が高くなりすぎたり、耐食性が低下する。
(Zn:0.2%以下)
Znは結晶粒を微細化して成形性を向上させる効果があるが、その含有量が多過ぎると、アルミニウム合金の強度が高くなり過ぎてしまい、かえって成形性が悪くなるので、0.2%以下とすることにより、キャップ材としての機械的性質を維持しつつそのばらつきを抑制することができる。また、このZnを0.2%以下とすることにより、後述する引張強さと耐力との差が小さくなる。
(Ti:0.04%以下)
Tiも、Znと同様に、結晶粒を微細化して成形性を向上させる効果があるが、その含有量が多過ぎると、アルミニウム合金の強度が高くなり過ぎてしまい、かえって成形性が悪くなるので、0.04%以下とする。また、このTiを0.04%以下とすることにより、引張強さと耐力との差が小さくなる。
(Cr:0.03%以下)
Crは、耳率の低減に効果があるが、その含有量が多過ぎると、アルミニウム合金の強度が高くなり過ぎてしまい、かえって成形性が悪くなるので、0.03%以下とする。また、このCrを0.03%以下とすることにより、引張強さと耐力との差が小さくなる。
また、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが160〜190MPaとしたのは、160MPa未満になると、耐圧性やシール性が不足してしまい、190MPaを超えると、強度が高くなり過ぎ、成形性が悪くなるとともに、開栓困難になり、割れが発生し易い。したがって、引張強さは、160〜190MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは、170〜180MPaの範囲である。
また、耐力を135〜165MPaとしたのは、135MPa未満ではキャップ成形時にしわが発生し易く、165MPaを超えるとキャップ成形時に割れが発生し易くなるからである。
そして、開栓性を損なわずに逆転トルクを増大させるためには、耐力を引張強さに近づけることが有効である。つまり、引張強さは引張力によって材料が破断するときの応力であり、耐力は一定の塑性ひずみ(0.2%)を生じる応力であるから、これらが近いということは、材料の塑性変形領域が小さいことを意味する。また、耐力を高くすることによって、引張強さが高くなりすぎて開栓性を損なうことなく、誤って逆回転した際のネジ山の損壊を防止できる。つまり耐力を引張強さに近づけることによって、逆転トルクを増大させて、逆方向への回転を抑止することが可能である。これら引張強さと耐力との差は5〜25MPaの範囲とするのがよく、より好ましくは5〜15MPaの範囲である。
また、伸びが6〜10%としたのは、キャップ成形性を良好にするためである。
なお、この機械的特性に関して、200℃で10分間の熱処理を条件としたのは、印刷工程における焼き付け条件(一般的には190℃で5〜10分間)より若干高い温度で熱処理することで、印刷後の機械的特性を安定させるためである。
次に、このキャップ用アルミニウム合金の製造方法について説明する。
溶湯からスラブを得た後、このスラブに熱間圧延加工、冷間圧延加工を複数回施し、これら圧延の前後に必要に応じて均質化処理と中間焼鈍を行い、中間焼鈍後に更に最終冷間圧延加工を施し、最終調質焼鈍を行う。
この一連の工程の中で、中間焼鈍は連続焼鈍炉で行い、実体温度を400〜480℃とする。前述したようにTiやCrは結晶粒を微細化して成形性を向上させる効果があるが、その含有率を小さくしたことによる影響で結晶粒の微細化効果があまり得られないことから、結晶粒の粗大化を防止するため、400〜480℃の比較的低温の温度範囲とするものである。
また、最終冷延率、及びこの最終冷間圧延後の最終調質焼鈍条件は、特に限定されるものではないが、最終冷延率を30〜70%、最終調質焼鈍温度を210〜270℃とすると、強度、成形性、開栓性のばらつきを抑えて、これらを適切に調整することができる。
なお、以上説明したアルミニウム合金は、前述したように瓶用のキャップ材として有効であり、比較的小さい口径、例えば公称外径が33mm以下の瓶に好適である。
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
先ず、表1に示す各組成成分を有するアルミニウム合金を溶製し、スラブに鋳造した。次に、560℃×4時間の均質化処理を行い、熱間圧延で板厚6mmとした。次に、冷間圧延、連続焼鈍炉での中間焼鈍を行いつつ、板厚が0.15〜0.2mmの範囲内となるまで圧延した。最後に210〜270℃の温度範囲内で適宜の温度を設定して保持時間が4時間の調質焼鈍を行った。このようにして、実施例及び参考例として、成分組成、中間焼鈍温度の異なる試料1〜8のアルミニウム合金板を得た。また、比較例として、本発明の範囲から外れる成分組成、中間焼鈍温度のものについても作製し、試料9〜12とした。
Figure 0005758070
そして、これら試料1〜8の実施例及び参考例、試料9〜12の比較例の各アルミニウム合金板について、200℃で10分間熱処理した後に、引張強さ、耐力、伸びを測定し、また、キャップに成形して逆転トルクの測定を行った。
開栓トルク及び逆転トルクは、各アルミニウム合金板を口径が33mmのガラス瓶用のキャップに成形し、瓶の口部に巻き締めた後に測定した。開栓トルクは、キャップを正回転(反時計回り)して、1本目のブリッジが切れる際のトルク(2ndトルク)であり、逆転トルクは、キャップを逆回転(時計回り)して、キャップが空回りするまでの最大トルクである。その開栓トルク(2ndトルク)は、90Ncm未満を◎、90Ncm以上100Ncm未満を○、100Ncm以上110Ncm未満を△、110Ncm以上を×とした。一方、逆転トルクは195Ncm以上を◎、175Ncm以上195Ncm未満を○、165Ncm以上175Ncm未満を△、165Ncm未満を×とした。
これらの測定結果を表2に示す。
Figure 0005758070
この表2に示されるように、本実施例及び参考例(試料1〜8)のアルミニウム合金板は、いずれも、引張強さと耐力との差が小さく、開栓トルクはキャップを開栓するのに適切な値とされ、逆転トルクも大きく、逆回転し難いキャップとなっている。
これに対して、比較例(試料9〜12)は、引張強さと耐力との差が大きく、開栓トルクが大きいものや、逆転トルクが小さいものとなっている。
以上の試験結果から明らかなように、本発明のアルミニウム合金板は、開栓性を阻害することなく、逆転トルクを大きくすることができ、誤操作による逆回転現象を確実に防止することができることがわかる。

Claims (1)

  1. 質量%で、Mn:0.3〜0.6%、Mg:0.2〜0.5%、Si:0.01〜0.6%、Fe:0.01〜0.7%、Cu:0.01〜0.3%、Zn:0.05〜0.2%、Ti:0.02〜0.04%、Cr:0.01〜0.03%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、
    板厚が0.15〜0.20mmであり、200℃で10分間熱処理した後の引張強さが168〜176MPa、耐力が160〜165MPa、引張強さから耐力を引いた値が5〜15MPaであり、伸びが6〜10%であることを特徴とする瓶キャップ用アルミニウム合金板。
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