JP7235634B2 - 缶胴用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
Si含有量が0.1質量%未満では、原料として新地金を使用する比率が高くなり、コストアップとなる場合がある。また、DI成形時において0-180°耳が高くなり、しごき加工時に耳切れ及びこれに起因するティアオフが生じやすい。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、ホットコイルでの未再結晶残存で成形性が低下する。Si含有量は、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.25質量%以上であってよい。また、Si含有量は、好ましくは0.45質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であってよい。更に、Si含有量は、0.25質量%未満であってもよい。
Fe含有量が0.3質量%未満では、ホットコイルに未再結晶が残存するため、DI成形時において45°耳が高くなり、しごき加工時に耳切れ及びこれに起因するティアオフが生じやすい。一方、Fe含有量が0.6質量%を超えると、Al-Fe-Mn系金属間化合物が多くなり、缶の側壁にピンホール(穴あき)が生じやすくなる。また、しごき加工時にティアオフが生じやすい。Fe含有量は、好ましくは0.35質量%以上であり、より好ましくは0.40質量%以上であってよい。また、Fe含有量は、好ましくは0.55質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であってよい。
Cu含有量が0.1質量%未満では強度(例えば、ベーキング後強度)が不足し、缶の耐圧強度が不足する。一方、Cu含有量が0.35質量%を超えると強度が過大となり、しごき加工時にティアオフが生じやすい。Cu含有量は、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.18質量%以上であってよい。また、Cu含有量は、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であってよい。
Mn含有量が0.5質量%未満では強度(例えば、ベーキング後強度)が不足し、缶の耐圧強度が不足する。一方、Mn含有量が1.2質量%を超えると、Al-Fe-Mn系金属間化合物が多くなり、缶の側壁にピンホール(穴あき)が生じやすくなる。また、しごき加工時にティアオフが生じやすい。Mn含有量は、好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上であってよい。また、Mn含有量は、好ましくは1.15質量%以下であり、より好ましくは1.1質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であってよい。
Mg含有量が0.7質量%未満では強度(例えば、ベーキング後強度)が不足し、缶の耐圧強度が不足する。一方、Mg含有量が2.5質量%を超えると強度が過大となり、成形性が低下し、しごき加工時にティアオフが生じやすい。Mg含有量は、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは0.9質量%以上であり、さらに好ましくは1.1質量%以上であってよい。また、Mg含有量は、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1.6質量%以下であってよい。
一般に知られているように、アルミニウム合金板はZnを含んでいてよい。Znは0.4質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性、DI成形後の缶特性に大きな影響を及ぼさない。Znは不可避不純物であるが、コストダウンを図るため、例えば原料中へのスクラップ(熱交換器用クラッド材のスクラップ等)配合率を高くするなど、上記範囲内でZnを積極添加することもできる。Zn含有量は、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.27質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であってよい。また、Zn含有量の下限は、例えば、0.1質量%以上であってよい。
一般に知られているように、アルミニウム合金板はTiを含んでいてよい。Tiは鋳塊結晶粒の微細化を目的に、必要に応じて添加される。鋳造時に鋳塊組織を微細化すると、鋳造性が向上して高速鋳造が可能となる。その効果は0.01質量%以上の添加により得られる。一方、Ti含有量が0.1質量%以下であると、フィルターの目詰まりを抑制でき、鋳造中に次第に溶湯がフィルターを通過しにくくなることが抑制され、フィルターの目詰まりに起因する鋳造の中止が回避できる。従って、アルミニウム合金中のTi含有量は上記範囲内に制限されてよい。なお、Tiを添加する場合には、TiとBの質量比を5:1とした鋳塊微細化剤(Al-Ti-B)を、ワッフルあるいはロッドの形態で鋳造前の溶湯に添加するため、含有割合に応じたBも必然的に添加される。Ti含有量は、好ましくは0.08質量%以下であり、より好ましくは0.06質量%以下であってよい。
一般に知られているように、アルミニウム合金板はCrを含んでいてよい。Crは0.1質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性、DI成形後の缶特性に影響を及ぼさない。Crは不可避不純物であるが、コストダウンを図るため、例えば原料中へのスクラップ(Crを多く含有するスクラップ等)配合率を高くするなど、上記範囲内でCrを積極添加することもできる。Cr含有量が0.1質量%以下であると、ホットコイルに未再結晶が残存することが抑制され、しごき加工時にティアオフが生じることが抑制される。Cr含有量は、好ましくは0.05質量%以下であってよい。
一般に知られているように、アルミニウム合金板はZrを含んでいてよい。Zrは0.3質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性、DI成形後の缶特性に影響を及ぼさない。Zr含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であってよい。
一般に知られているように、アルミニウム合金板はVを含んでいてよい。Vは0.05質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性、DI成形後の缶特性に影響を及ぼさない。
缶胴用アルミニウム合金板は、Al及び上記合金成分の他に、不可避不純物を含有していてよい。不可避不純物としては、例えば、Cr、B、Na、Ca、Ni、In、Sn、Gaなどが挙げられる。不可避不純物について許容される含有量はその他の元素については、例えば、各0.05質量%以下かつ合計0.15質量%以下であってよい。前記範囲内であれば、本発明の効果を妨げない。
缶胴用アルミニウム合金板におけるn値の異方性は、例えば以下のようにして評価することができる。冷間圧延後の缶胴用アルミニウム合金板について、圧延方向に対して0°、22.5°、45°、67.5°及び90°方向のそれぞれの方向から引張試験片を採取する。採取した引張試験片に対して引張試験を実施して、それぞれの引張試験片のn値を測定する。得られた5つのn値から最大値と最小値を選択し、最大値から最小値を引いた値をn値の異方性とする。n値の異方性は、例えば0.027以下であり、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下、さらに好ましくは0.008以下であり、特に好ましくは0.007以下であってよい。n値の異方性を所定値以下に制御することにより、缶壁強度の異方性が小さくなり、しごき加工時におけるティアオフの発生を抑制することができる。
缶胴用アルミニウム合金板における缶壁強度の異方性は、例えば以下のようにして評価することができる。DI成形後の缶胴から圧延方向に対して0°、22.5°、45°、67.5°及び90°方向のそれぞれの方向の缶壁から試験片を採取する。採取した試験片に対して引張試験を実施して、0.2%耐力を求める。得られた5つの0.2%耐力から最大値と最小値を選択し、最大値から最小値を引いた値を整数値として缶壁強度の異方性とする。缶壁強度の異方性は、例えば13MPa以下であり、好ましくは12MPa以下、より好ましくは10MPa以下であってよい。
缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の一例について説明する。缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、第1工程である鋳造工程と、第2工程である均質化熱処理工程と、第3工程である熱間圧延工程と、第4工程である冷間圧延工程と、を含み、これらの工程をこの順に行うものである。
第1工程は、目的の組成を有する鋳塊を半連続鋳造法にて作製する工程である。第2工程は、第1工程で作製されたアルミニウム合金の鋳塊に均質化熱処理を施す工程である。
表1に示す組成からなるアルミニウム合金(No.1からNo.6)を半連続鋳造法にて鋳造し、第1工程及び第2工程として示した方法で面削、均質化熱処理を行い、冷却すること無く、熱間粗圧延及び熱間仕上げ圧延を行った。熱間圧延の終了温度の実績は340℃以上360℃以下の範囲であった。そして、得られた熱間圧延板を、中間焼鈍を施すこと無く、表1に示す条件で冷間圧延を複数パスで行い、板厚0.27mm以上0.30mm以下のアルミニウム合金板(コイル)として巻き取った。ここで、冷間圧延率の実績は86%以上87%以下の範囲であった。いずれの材料も、冷間圧延後の仕上げ焼鈍は行わなかった。なお、表1に示す組成の残部はAlと不可避不純物である。また、No.1からNo.5は実施例に相当し、No.6は比較例に相当する。
JISZ2241(2011)の規定に準拠し、供試材(冷間圧延後のアルミニウム合金板)から圧延方向に対し0°、22.5°、45°、67.5°及び90°の合計5方向のJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行った。続いて、JISZ2253の規定に準拠し、各試験片について真応力と真ひずみの関係をグラフ化し、公称ひずみ1%から引張強さ直前のひずみまでの範囲で直線回帰したときの傾き(n値)を求め、さらに5方向のn値のうち最大値と最小値の差(n値異方性)を求めた。n値の最大値と最小値の差が0.027以下のものを合格とした。
供試材に対し200℃×20分のベーキングを実施した後、圧延方向にJIS5号試験片を採取して、JISZ2241(2011)の規定に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を測定した。この0.2%耐力が150MPa以上300MPa以下の範囲内のとき、合格と評価した。
アルミニウム合金板から直径140mmのブランクを打ち抜き、このブランクを絞り成形して直径90mmのカップを作製した。得られたカップに対し、汎用のアルミニウム缶胴成形機にてDI成形(再絞り+しごき加工)を行い、DI缶を作製した。作製したDI缶は、外径が66.3mm、缶壁の最薄肉部(缶底から60mmの高さ)の肉厚が105μm以上110μm以下、同部の加工率(素材からの板厚減少率)が58.5%以上65.0%以下であった。
作製したDI缶に200℃×20分のベーキングを施した後、圧延方向に対し0°、22.5°、45°、67.5°及び90°の方向の缶壁から、缶軸方向にJISZ2241(2011)に規定されたJIS13号B試験片の形状をベースに、標点距離を25mmに短くした試験片を採取した。この試験片を用いて引張試験を行って各方向の0.2%耐力を求め、そのうちの最大値と最小値の差(缶壁強度の異方性)を、小数点1桁目を四捨五入して整数にした値として求めた。缶壁強度の異方性が大きくなると、しごき加工時に強度の低い(破断限界の低い)部分でティアオフが生じやすくなる。
評価基準
A:缶壁強度の異方性の値が11MPa未満であり、しごき加工性に優れていた。
B:缶壁強度の異方性の値が11MPa以上13MPa未満であり、実用上問題のないレベルのしごき加工性を有していた。
C:缶壁強度の異方性の値が13MPa以上であり、実用上問題があった。
Claims (2)
- Si:0.1質量%以上0.5質量%以下、Fe:0.3質量%以上0.6質量%以下、Cu:0.1質量%以上0.35質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.2質量%以下、Mg:0.7質量%以上2.5質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、圧延方向に対し0°、22.5°、45°、67.5°及び90°方向のそれぞれの方向について引張試験により求められる5方向のn値のうちの最大値から最小値を引いた値が0.008以下であり、200℃で20分のベーキング後の0.2%耐力が251MPa以上である缶胴用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、
Zn:0.4質量%以下、
Ti:0.1質量%以下、
Cr:0.1質量%以下、
Zr:0.3質量%以下、及び
V:0.05質量%以下
からなる群から選択される1種又は2種以上を更に含有する請求項1に記載の缶胴用アルミニウム合金板。
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