JP2018003074A - アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製缶性に優れかつ缶体強度にも優れるアルミニウム合金板及びその製造方法を提供すること。【解決手段】 アルミニウム合金板は、Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなる。示差走査熱量測定において180〜240℃の温度域に現れる吸熱ピークの熱量は0.005〜0.270J/g、熱処理前の吸熱量と205℃-10minの熱処理後の吸熱量との差は-0.200〜0.190J/g、引張強さは270〜340MPa、引張強さと205℃-10minの熱処理後の耐力との差は30〜60MPaである。【選択図】なし
Description
本開示は、アルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
アルミニウム製の飲料缶の胴体部(以下、缶ボディとも称する。)は、アルミニウム合金板に対して絞り加工とDI加工(すなわち、再絞り及びしごき加工。)を施した後に、缶開口部をトリミング加工し、洗浄、乾燥、塗装焼付処理を施し、更にネック加工とフランジ加工を経て製缶される。このような缶ボディ用のアルミニウム合金板としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたアルミニウム合金板が提案されている。
(例えば、特許文献1参照。)。
(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、材料の使用量低減や、輸送コストの低減、あるいはアルミニウム缶以外の飲料容器に対するコスト競争力向上を図る観点から、缶ボディ用アルミニウム合金板の薄肉化が求められている。
しかしながら、缶ボディ用アルミニウム合金板の薄肉化が進むと、製缶不具合が起こりやすくなる。具体例を挙げれば、DI成形の際には缶胴部の破断(以下、破胴とも称する。)が発生することがある。また、再絞り工程では、缶底テーパー部に発生した座屈しわがドーム成形で潰された後も模様として残るチャイムしわが発生することがある。また、ネック成形やフランジ成形の際には、缶の座屈が発生することがある。さらに、気温上昇に伴う内容物からのガス発生で内圧が上昇した際には、缶底が反転しやすくなる。
以上のような事情から、製缶性に優れかつ缶体強度にも優れるアルミニウム合金板及びその製造方法を提供することが望ましい。
以下に説明するアルミニウム合金板は、Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなり、示差走査熱量測定において180〜240℃の温度域に現れる吸熱ピークの熱量が、0.005〜0.270J/gであり、熱処理前の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の吸熱量との差が、−0.200〜0.190J/gであり、引張強さが、270〜340MPaであり、前記引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が、30〜60MPaである。
このように構成されたアルミニウム合金板によれば、製缶性に優れかつ缶体強度にも優れるアルミニウム合金板となる。
また、以下に説明するアルミニウム合金板の製造方法は、Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造によって作製する工程と、前記鋳塊を面削後、均質化熱処理を施す工程と、前記均質化熱処理後に、熱間圧延を施す工程と、前記熱間圧延後に、複数パスの冷間圧延を施す工程とを有し、前記冷間圧延を施す工程では、最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)が70℃以上、かつ次のパスまでの時間t(h)が0<t≦8760とされ、しかも、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)及び前記次のパスまでの時間t(h)がT+(50/7)t≦180とされるか、もしくは、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)がT≦130とされ、さらに、最終パスのコイル巻取後端面温度が130〜170℃とされている。
また、以下に説明するアルミニウム合金板の製造方法は、Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造によって作製する工程と、前記鋳塊を面削後、均質化熱処理を施す工程と、前記均質化熱処理後に、熱間圧延を施す工程と、前記熱間圧延後に、複数パスの冷間圧延を施す工程とを有し、前記冷間圧延を施す工程では、最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)が70℃以上、かつ次のパスまでの時間t(h)が0<t≦8760とされ、しかも、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)及び前記次のパスまでの時間t(h)がT+(50/7)t≦180とされるか、もしくは、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)がT≦130とされ、さらに、最終パスのコイル巻取後端面温度が130〜170℃とされている。
このように構成されたアルミニウム合金板の製造方法によれば、製缶性に優れかつ缶体強度にも優れるアルミニウム合金板を製造することができる。
上述のアルミニウム合金板及びその製造方法について、更に詳細に説明する。
(1)構成の詳細
(1−A)Mg
Mgは、固溶強化に寄与する。また、CuやSiとともに冷間圧延中の70〜200℃の温度域でMg−Si系化合物、Al−Mg−Cu系化合物、Al−Mg−Cu−Si系化合物、及びその前駆相として微細に析出し強度上昇に寄与する(以下、これらMg−Si系化合物、Al−Mg−Cu系化合物、Al−Mg−Cu−Si系化合物、及びその前駆相を総称して析出物群とも称する。)。さらに、その後の冷間加工による加工硬化性も増大させる。また、上記析出物群は、塗装焼付処理を模擬した205℃−10minの熱処理中に再固溶し、強度が低下する。
(1)構成の詳細
(1−A)Mg
Mgは、固溶強化に寄与する。また、CuやSiとともに冷間圧延中の70〜200℃の温度域でMg−Si系化合物、Al−Mg−Cu系化合物、Al−Mg−Cu−Si系化合物、及びその前駆相として微細に析出し強度上昇に寄与する(以下、これらMg−Si系化合物、Al−Mg−Cu系化合物、Al−Mg−Cu−Si系化合物、及びその前駆相を総称して析出物群とも称する。)。さらに、その後の冷間加工による加工硬化性も増大させる。また、上記析出物群は、塗装焼付処理を模擬した205℃−10minの熱処理中に再固溶し、強度が低下する。
Mgは、0.75〜1.40質量%の範囲内にされていると好適である。Mgを0.75質量%以上にすると、Mgが0.75質量%未満の場合に比べ、固溶強化量及び析出強化量が増大し、十分な缶体強度を得ることができる。一方、Mgを1.4質量%以下にすると、Mgが1.4質量%超過の場合に比べ、合金板の強度が低くなり、DI成形中の加工硬化も小さくなる。そのため、Mgが1.4質量%超過の場合に比べ、DI成形時の缶壁部に働く引張力は低くなり、破胴リスクが低くなる。また、Mgを1.4質量%以下にすると、Mgが1.4質量%超過の場合に比べ、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さくなる。加えて、Mgを1.4質量%以下にすると、Mgが1.4質量%超過の場合に比べ、均質化処理時にスラブ表面へ拡散するMg量が減少する。そのため、Mg酸化被膜が厚くなるのを抑制でき、板面品質を良好にすることができる。
(1−B)Cu
Cuは、固溶強化に寄与する。また、MgやSiとともに冷間圧延中に微細に析出し、強度上昇に寄与する。さらに、その後の冷間加工による加工硬化性も増大させる。Cuは、0.05〜0.25質量%の範囲内にされていると好適である。Cuを0.05質量%以上にすると、Cuが0.05質量%未満の場合に比べ、固溶強化量及び析出強化量が増大し、十分な缶体強度が得られる。一方、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、合金板の強度が低くなり、DI成形中の加工硬化が小さくなる。そのため、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、DI成形時の缶壁部に働く引張力が低くなり、破胴リスクが低くなる。また、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さくなる。さらに、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、耐食性が高くなるという利点もある。
Cuは、固溶強化に寄与する。また、MgやSiとともに冷間圧延中に微細に析出し、強度上昇に寄与する。さらに、その後の冷間加工による加工硬化性も増大させる。Cuは、0.05〜0.25質量%の範囲内にされていると好適である。Cuを0.05質量%以上にすると、Cuが0.05質量%未満の場合に比べ、固溶強化量及び析出強化量が増大し、十分な缶体強度が得られる。一方、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、合金板の強度が低くなり、DI成形中の加工硬化が小さくなる。そのため、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、DI成形時の缶壁部に働く引張力が低くなり、破胴リスクが低くなる。また、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さくなる。さらに、Cuを0.25質量%以下にすると、Cuが0.25質量%超過の場合に比べ、耐食性が高くなるという利点もある。
(1−C)Si
Siは、MgやCuとともに冷間圧延中に微細に析出し、強度上昇に寄与する。また、MnとFeとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。Siは、0.10〜0.60質量%の範囲内にされていると好適である。Siを0.10質量%以上にすると、Siが0.10質量%未満の場合に比べ、冷間圧延中のAl、Mg、Si、Cu化合物による析出強化が得られ、十分な缶体強度が得られる。また、Siを0.10質量%以上にすると、Siが0.10質量%未満の場合に比べ、α相が十分に形成されるため、しごきダイスと金型間の焼き付きによる缶体表面のくもりや、金型にビルドアップしたアルミによる筋などが発生しにくくなり、外観品質の向上を図ることができる。一方、Siを0.60質量%以下にすると、Siが0.60質量%超過の場合に比べ、Mg2Si晶出物が減少し、固溶Mg量が増大する。そのため、固溶Mgによる固溶強化量が増大する他、冷間圧延中の上記析出物群の析出が増大し、十分な強度を得ることができる。
Siは、MgやCuとともに冷間圧延中に微細に析出し、強度上昇に寄与する。また、MnとFeとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。Siは、0.10〜0.60質量%の範囲内にされていると好適である。Siを0.10質量%以上にすると、Siが0.10質量%未満の場合に比べ、冷間圧延中のAl、Mg、Si、Cu化合物による析出強化が得られ、十分な缶体強度が得られる。また、Siを0.10質量%以上にすると、Siが0.10質量%未満の場合に比べ、α相が十分に形成されるため、しごきダイスと金型間の焼き付きによる缶体表面のくもりや、金型にビルドアップしたアルミによる筋などが発生しにくくなり、外観品質の向上を図ることができる。一方、Siを0.60質量%以下にすると、Siが0.60質量%超過の場合に比べ、Mg2Si晶出物が減少し、固溶Mg量が増大する。そのため、固溶Mgによる固溶強化量が増大する他、冷間圧延中の上記析出物群の析出が増大し、十分な強度を得ることができる。
(1−D)Mn
Mnは、固溶強化により材料の強度を高める作用を有する。また、固溶Mnは、205℃熱処理中の転位の回復を遅延させ、強度低下を抑制させる効果がある。更に、MnとFeとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。加えて、数百nm〜十数μmのα−Al(Mn、Fe)Si化合物やAl6(Mn、Fe)化合物は、円筒絞り成形したときの圧延方向のカップ高さ(以下、耳高さとも称する。)を小さくする作用を有する。これにより、カップ成形及びDI成形後の成形品を搬送するときのトラブルを低減できる。
Mnは、固溶強化により材料の強度を高める作用を有する。また、固溶Mnは、205℃熱処理中の転位の回復を遅延させ、強度低下を抑制させる効果がある。更に、MnとFeとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。加えて、数百nm〜十数μmのα−Al(Mn、Fe)Si化合物やAl6(Mn、Fe)化合物は、円筒絞り成形したときの圧延方向のカップ高さ(以下、耳高さとも称する。)を小さくする作用を有する。これにより、カップ成形及びDI成形後の成形品を搬送するときのトラブルを低減できる。
Mnは、0.75〜1.30質量%の範囲内にされていると好適である。Mnを0.75質量%以上にすると、Mnが0.75質量%未満の場合に比べ、十分な強度が得られ、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さくなる。また、Mnを0.75質量%以上にすると、Mnが0.75質量%未満の場合に比べ、α相が十分に形成されるため、しごきダイスと金型間の焼き付きによる缶体表面のくもりや、金型にビルドアップしたアルミによる筋などが発生しにくくなり、外観品質の向上を図ることができる。加えて、Mnを0.75質量%以上にすると、Mnが0.75質量%未満の場合に比べ、円筒絞り成形時の圧延方向耳高さが低くなる。一方、Mnを1.30質量%以下にすると、Mnが1.30質量%超過の場合に比べ、鋳造時に粗大なAl6(Mn、Fe)化合物が形成されるのを抑制でき、そのような粗大な化合物が起点となってDI成形時やフランジ成形時に割れが発生するのを抑制することができる。
(1−E)Fe
Feは、MnとSiとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。加えて、数百nm〜十数μmのα−Al(Mn、Fe)Si化合物やAl6(Mn、Fe)化合物は、円筒絞り成形したときの圧延方向のカップ高さ(耳高さ)を小さくする。Feは、0.15〜0.70質量%の範囲内にされていると好適である。Feを0.15質量%以上にすると、Feが0.15質量%未満の場合に比べ、α相が十分に形成されるため、しごきダイスと金型間の焼き付きによる缶体表面のくもりや、金型にビルドアップしたアルミによる筋などが発生しにくくなり、外観品質の向上を図ることができる。加えて、Feを0.15質量%以上にすると、Feが0.15質量%未満の場合に比べ、円筒絞り成形時の圧延方向耳高さが低くなる。一方、Feを0.70質量%以下にすると、Feが0.70質量%超過の場合に比べ、鋳造時に粗大なAl6(Mn、Fe)化合物が形成されるのを抑制でき、そのような粗大な化合物が起点となってDI成形時やフランジ成形時に割れが発生するのを抑制することができる。
Feは、MnとSiとともにα−Al(Mn、Fe)Si化合物を形成し、しごき加工時(DI成形時)の焼き付きを防止する作用を有する。加えて、数百nm〜十数μmのα−Al(Mn、Fe)Si化合物やAl6(Mn、Fe)化合物は、円筒絞り成形したときの圧延方向のカップ高さ(耳高さ)を小さくする。Feは、0.15〜0.70質量%の範囲内にされていると好適である。Feを0.15質量%以上にすると、Feが0.15質量%未満の場合に比べ、α相が十分に形成されるため、しごきダイスと金型間の焼き付きによる缶体表面のくもりや、金型にビルドアップしたアルミによる筋などが発生しにくくなり、外観品質の向上を図ることができる。加えて、Feを0.15質量%以上にすると、Feが0.15質量%未満の場合に比べ、円筒絞り成形時の圧延方向耳高さが低くなる。一方、Feを0.70質量%以下にすると、Feが0.70質量%超過の場合に比べ、鋳造時に粗大なAl6(Mn、Fe)化合物が形成されるのを抑制でき、そのような粗大な化合物が起点となってDI成形時やフランジ成形時に割れが発生するのを抑制することができる。
(1−F)合金板の吸熱量
示差走査熱量測定において、昇温速度20℃/minで測定した際、180〜240℃の温度域に現れる吸熱反応は、合金板に微細に析出しているMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Mg−Cu−Si系化合物の再固溶によるものである。したがって、吸熱ピークの熱量は上記析出物群の析出量と対応する。合金板の吸熱量は、0.005〜0.270J/gの範囲内にされていると好適である。合金板の吸熱量を0.005J/g以上にすると、吸熱量が0.005J/g未満の場合に比べ、上記析出物群による析出強化が過小にならず、十分な缶体強度が得られる。一方、合金板の吸熱量を0.270J/g以下にすると、吸熱量が0.270J/g超過の場合に比べ、上記析出物群による析出強化が過大にならず、合金板の引張強さが過度に高くなるのを抑制できる。
示差走査熱量測定において、昇温速度20℃/minで測定した際、180〜240℃の温度域に現れる吸熱反応は、合金板に微細に析出しているMg−Si系、Al−Mg−Cu系、Al−Mg−Cu−Si系化合物の再固溶によるものである。したがって、吸熱ピークの熱量は上記析出物群の析出量と対応する。合金板の吸熱量は、0.005〜0.270J/gの範囲内にされていると好適である。合金板の吸熱量を0.005J/g以上にすると、吸熱量が0.005J/g未満の場合に比べ、上記析出物群による析出強化が過小にならず、十分な缶体強度が得られる。一方、合金板の吸熱量を0.270J/g以下にすると、吸熱量が0.270J/g超過の場合に比べ、上記析出物群による析出強化が過大にならず、合金板の引張強さが過度に高くなるのを抑制できる。
(1−G)熱処理前の合金板の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の合金板の吸熱量との差
熱処理前の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の吸熱量との差が大きいことは、205℃−10minの熱処理中に再固溶した上記析出物群の量が多いことを示す。したがって、205℃−10minの熱処理による強度低下量が大きいことを意味する。一方、吸熱量の差が負の値であることは、205℃−10min熱処理によって新たにAl、Mn、Cu、Si化合物が析出していることを示す。したがって、205℃−10minの熱処理により強度が上昇していることを意味する。
熱処理前の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の吸熱量との差が大きいことは、205℃−10minの熱処理中に再固溶した上記析出物群の量が多いことを示す。したがって、205℃−10minの熱処理による強度低下量が大きいことを意味する。一方、吸熱量の差が負の値であることは、205℃−10min熱処理によって新たにAl、Mn、Cu、Si化合物が析出していることを示す。したがって、205℃−10minの熱処理により強度が上昇していることを意味する。
吸熱量の差の範囲は、−0.200〜0.190J/gの範囲内にされていると好適である。吸熱量の差を−0.200J/g以上にすると、吸熱量の差が−0.200J/g未満の場合に比べ、DI成形後の塗装焼付工程で上記析出物群が析出しにくく、強度が上昇(ベイクハード)しにくくなる。そのため、その後のネック成形やフランジ成形時の変形抵抗が低くなり、ネックや缶胴で座屈が発生するのを抑制できる。一方、吸熱量の差を0.1900J/g以下にすると、吸熱量の差が0.1900J/g超過の場合に比べ、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が過大になるのを抑制できる。
(1−H)合金板の引張強さ
合金板の引張強さは、DI成形性に影響する。合金板の引張強さは、270〜340MPaの範囲内にされていると好適である。合金板の引張強さを270MPa以上にすると、合金板の引張強さが270MPa未満の場合に比べ、塗装焼付工程の熱処理で強度が上昇(ベイクハード)しなくても、塗装焼付工程後の強度が高くなり、十分な缶体強度が得られる。一方、合金板の引張強さを340MPa以下にすると、合金板の引張強さが340MPa超過の場合に比べ、DI成形中の変形抵抗が低くなるため、DI成形時の缶壁部に働く引張力が低くなり、破胴リスクが低くなる。
合金板の引張強さは、DI成形性に影響する。合金板の引張強さは、270〜340MPaの範囲内にされていると好適である。合金板の引張強さを270MPa以上にすると、合金板の引張強さが270MPa未満の場合に比べ、塗装焼付工程の熱処理で強度が上昇(ベイクハード)しなくても、塗装焼付工程後の強度が高くなり、十分な缶体強度が得られる。一方、合金板の引張強さを340MPa以下にすると、合金板の引張強さが340MPa超過の場合に比べ、DI成形中の変形抵抗が低くなるため、DI成形時の缶壁部に働く引張力が低くなり、破胴リスクが低くなる。
(1−I)熱処理前の合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差
DI成形性は、合金板の引張強さが低い方が良好である。一方で、缶底耐圧は、205℃−10minの熱処理後の耐力が高いと上昇する。したがって、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さい程、DI成形性に優れ、十分な缶底耐圧を得られると考えられる。
DI成形性は、合金板の引張強さが低い方が良好である。一方で、缶底耐圧は、205℃−10minの熱処理後の耐力が高いと上昇する。したがって、合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が小さい程、DI成形性に優れ、十分な缶底耐圧を得られると考えられる。
熱処理前の合金板の引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差は30〜60MPaの範囲内にされていると好適である。上記差を30MPa以上にすると、上記差が30MPa未満の場合に比べ、DI成形後の塗装焼付工程で上記析出物群が析出しにくく、強度が上昇(ベイクハード)しにくくなる。そのため、その後のネック成形やフランジ成形時の変形抵抗が低くなり、ネックや缶胴で座屈が発生するのを抑制できる。一方、上記差を60MPa以下にすると、上記差が60MPa超過の場合に比べ、DI成形性と缶底耐圧を両立させることが容易になる。
(1−J)冷間圧延における最終パス以外の温度Tと次のパスまでの時間t
析出強化に寄与する微細な上記析出物群の析出状態は、冷間圧延における先のパスから次のパスまでに保持される温度と時間によって敏感に変化する。150℃付近を境に、低温域では、析出までに長い時間を要し、高温域では、ピーク時効までの時間は短いが、化合物の数密度が減少するためピーク強度は低くなる。
析出強化に寄与する微細な上記析出物群の析出状態は、冷間圧延における先のパスから次のパスまでに保持される温度と時間によって敏感に変化する。150℃付近を境に、低温域では、析出までに長い時間を要し、高温域では、ピーク時効までの時間は短いが、化合物の数密度が減少するためピーク強度は低くなる。
冷間圧延における最終パス以外の温度Tと次のパスまでの時間tは、70(℃)≦Tかつ0<t≦8760(h)であることを満たし、更にT+(50/7)t≦180であるか、もしくはT≦130であると好適である。Tを70℃以上にすると、Tが70℃未満の場合に比べ、冷間圧延における次のパスまでに析出する上記析出物群の量が多いため、合金板の吸熱量が大きく、十分な強度が得られる。また、合金板中に固溶しているMgやCu、Si量が少ないため、205℃−10min熱処理中に析出が進みにくく、合金板の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の吸熱量との差が−0.200J/g以上となる。
ちなみに、tが0(h)とは、熱延後1パスで最終板厚まで冷延するということであり、大型設備が必要となるため、製造コストが高くなってしまう。また、熱延板厚を薄くする必要があり、冷延での加工硬化量が減少し、強度低下につながる。tが8760(h)を超えると、コイル端部からの酸素の供給により、板面に付着した冷延油又はアルミ表面が酸化し、反応生成物により板面に模様が残り、外観品質が劣る恐れがある。T+(50/7)t>180かつT>130では、冷間圧延における次のパスまでに上記析出物群の析出が進み、析出強化とその後の冷間加工での加工硬化が増大し、合金板強度の上昇につながる。
(1−K)冷間圧延における最終パスのコイル巻取後端面温度
最終パスのコイル巻取後から室温まで冷却される過程では、冷間加工によって形成された加工組織を回復させておく必要がある。ここでの回復が不十分であると、冷間加工をした際の均一変形能が小さく、絞り成形や再絞り成形における圧縮変形によって座屈が起こりやすい。また、回復が不十分で合金板の強度が高いと、DI成形中の変形抵抗が高くなるため、DI成形時の缶壁部に働く引張力が高くなり、破胴リスクが高くなる。このような観点から、最終パスのコイル巻取後端面温度については、130〜170℃にすると好適である。上記温度を130℃以上にすると、上記温度が130℃未満の場合に比べ、回復が十分になり、DI成形中の再絞り工程において、缶底テーパー部で半径方向に沿った座屈が発生するのを抑制できる。一方、上記温度を170度以下にすると、上記温度が170℃超過の場合に比べ、回復が急速に進むのを抑制でき、十分な強度が得られる。
最終パスのコイル巻取後から室温まで冷却される過程では、冷間加工によって形成された加工組織を回復させておく必要がある。ここでの回復が不十分であると、冷間加工をした際の均一変形能が小さく、絞り成形や再絞り成形における圧縮変形によって座屈が起こりやすい。また、回復が不十分で合金板の強度が高いと、DI成形中の変形抵抗が高くなるため、DI成形時の缶壁部に働く引張力が高くなり、破胴リスクが高くなる。このような観点から、最終パスのコイル巻取後端面温度については、130〜170℃にすると好適である。上記温度を130℃以上にすると、上記温度が130℃未満の場合に比べ、回復が十分になり、DI成形中の再絞り工程において、缶底テーパー部で半径方向に沿った座屈が発生するのを抑制できる。一方、上記温度を170度以下にすると、上記温度が170℃超過の場合に比べ、回復が急速に進むのを抑制でき、十分な強度が得られる。
(2)実施形態
(2−A)第一実施形態
下記表1に示す組成のアルミニウム合金を、半連続鋳造により造塊し、面削後に均質化熱処理と熱間圧延を続けて行った。その後、シングル圧延機を用いて板厚0.28mmまで3パスの冷間圧延を行った。1パス終了時のコイル端面温度は108℃であった。1パス終了から2パス開始までの時間は0.8hである。2パス終了時のコイル端面温度は150℃であった。2パス終了から3パス開始までの時間は1.2hである。3パス終了時のコイル端面温度は155℃であった。
(2−A)第一実施形態
下記表1に示す組成のアルミニウム合金を、半連続鋳造により造塊し、面削後に均質化熱処理と熱間圧延を続けて行った。その後、シングル圧延機を用いて板厚0.28mmまで3パスの冷間圧延を行った。1パス終了時のコイル端面温度は108℃であった。1パス終了から2パス開始までの時間は0.8hである。2パス終了時のコイル端面温度は150℃であった。2パス終了から3パス開始までの時間は1.2hである。3パス終了時のコイル端面温度は155℃であった。
上述のようにして得られた各試験材について、以下に説明する方法で、引張特性、耳率、及び吸熱量を評価した。また、各試作材を製缶して、以下に説明する方法で、DI成形性、ネック成形性、フランジ成形性、缶底耐圧、及び再絞りカップ缶底テーパー部最大しわ高さを評価した。
《引張試験》
試作材から、圧延方向に対して0°の角度をなす方向に伸びるJIS−Z−2201の5号試験片を、切り出し加工して、それら試験片について、JIS−Z−2241に準拠して引張試験を行い、引張強さ及び0.2%耐力、破断伸びを測定した。また、205℃に均熱保持したオイルバスに10min浸漬した後、10min空冷した試作材についても、同様に測定した。
試作材から、圧延方向に対して0°の角度をなす方向に伸びるJIS−Z−2201の5号試験片を、切り出し加工して、それら試験片について、JIS−Z−2241に準拠して引張試験を行い、引張強さ及び0.2%耐力、破断伸びを測定した。また、205℃に均熱保持したオイルバスに10min浸漬した後、10min空冷した試作材についても、同様に測定した。
《耳率の測定》
試作材から直径が55mmの円板を切り出し、かつ絞り比が1.67という条件で絞り成形したカップの高さから、以下の[数式1]によって耳率を計算した。
試作材から直径が55mmの円板を切り出し、かつ絞り比が1.67という条件で絞り成形したカップの高さから、以下の[数式1]によって耳率を計算した。
[数式1]
耳率(%)=[{(0°及び180°での山高さの平均)−(全体の高さ平均)}/(全体の高さ平均)]×100
ここで0°及び180°とは、前述の円板の中心を通る圧延方向に平行な直線が、円板の周縁と交わる位置を表している。耳率は、4%以下であることが好ましい。
耳率(%)=[{(0°及び180°での山高さの平均)−(全体の高さ平均)}/(全体の高さ平均)]×100
ここで0°及び180°とは、前述の円板の中心を通る圧延方向に平行な直線が、円板の周縁と交わる位置を表している。耳率は、4%以下であることが好ましい。
《吸熱量の測定》
試作材から打ち抜いた直径5mmの円板を3枚重ね、Perkinelmer製入力保証型示差走査熱量測定装置DSC8500もしくはPyris 1 DSCを用いて、純度99.999%のアルミニウムを基準物質とし、20℃/minの速度で昇温した時の熱量の変化を測定し、180℃から240℃に現れる吸熱ピークの熱量を算出した。
試作材から打ち抜いた直径5mmの円板を3枚重ね、Perkinelmer製入力保証型示差走査熱量測定装置DSC8500もしくはPyris 1 DSCを用いて、純度99.999%のアルミニウムを基準物質とし、20℃/minの速度で昇温した時の熱量の変化を測定し、180℃から240℃に現れる吸熱ピークの熱量を算出した。
《製缶条件》
上記試作材を、カップ成形した後、缶内径が66mm、缶壁の最も薄い部分の板厚が0.105mm、缶底接地径が48mm、ドーム深さが9.8mmとなるようにDI成形した(DI缶)。その後、DI缶の上端部をトリミングし、大気炉で塗装焼付処理相当の205℃−10min熱処理を行った(熱処理後缶)。熱処理後缶を、204径((2+4/16)インチ)までスムースダイネック成形を行い(ネック成形缶)、その後、開口部端にフランジ厚が157μm、フランジ幅が2.4mmとなるフランジを成形した。
上記試作材を、カップ成形した後、缶内径が66mm、缶壁の最も薄い部分の板厚が0.105mm、缶底接地径が48mm、ドーム深さが9.8mmとなるようにDI成形した(DI缶)。その後、DI缶の上端部をトリミングし、大気炉で塗装焼付処理相当の205℃−10min熱処理を行った(熱処理後缶)。熱処理後缶を、204径((2+4/16)インチ)までスムースダイネック成形を行い(ネック成形缶)、その後、開口部端にフランジ厚が157μm、フランジ幅が2.4mmとなるフランジを成形した。
《DI成形性の評価》
各試作材を上記DI条件で100缶ずつ成形し、その時の破胴数と外観の目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(100缶)成形が成功して外観不良の無いことを示す記号であり、「△」は全缶(100缶)成形は成功したが外観不良が生じたことを示す記号であり、「×」は破胴が認められたことを示す記号である。DI成形性は、全缶成形が成功して外観不良の無いこと(「○」にて表示。)が好ましい。
各試作材を上記DI条件で100缶ずつ成形し、その時の破胴数と外観の目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(100缶)成形が成功して外観不良の無いことを示す記号であり、「△」は全缶(100缶)成形は成功したが外観不良が生じたことを示す記号であり、「×」は破胴が認められたことを示す記号である。DI成形性は、全缶成形が成功して外観不良の無いこと(「○」にて表示。)が好ましい。
《ネック成形性の評価》
上記ネック成形条件で、熱処理後缶を50缶ずつネック成形し、その時のネックや缶胴の座屈の有無を目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(50缶)成形が成功したことを示す記号であり、「×」はネックや缶胴での座屈が認められたことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。ネック成形性は、全缶成形が成功すること(「○」にて表示。)が好ましい。
上記ネック成形条件で、熱処理後缶を50缶ずつネック成形し、その時のネックや缶胴の座屈の有無を目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(50缶)成形が成功したことを示す記号であり、「×」はネックや缶胴での座屈が認められたことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。ネック成形性は、全缶成形が成功すること(「○」にて表示。)が好ましい。
《フランジ成形性の評価》
上記フランジ成形条件で、ネック成形缶を50缶ずつフランジ成形し、その時のフランジ端部の割れの有無を目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(50缶)成形が成功したことを示す記号であり、「×」はフランジ端部に割れが認められたことを示す記号であり、−はネック成形でネックや缶胴に座屈が発生し、フランジ成形を行えなかったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。フランジ成形性は、全缶成形が成功すること(「○」にて表示。)が好ましい。
上記フランジ成形条件で、ネック成形缶を50缶ずつフランジ成形し、その時のフランジ端部の割れの有無を目視観察により評価した。なお、表2中、「○」は全缶(50缶)成形が成功したことを示す記号であり、「×」はフランジ端部に割れが認められたことを示す記号であり、−はネック成形でネックや缶胴に座屈が発生し、フランジ成形を行えなかったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。フランジ成形性は、全缶成形が成功すること(「○」にて表示。)が好ましい。
《缶底耐圧の測定》
熱処理後缶の缶底耐圧を、10缶ずつ測定した。20kPa/sの昇圧速度で水圧を付与し、缶底が反転したときの水圧を缶底耐圧とした。缶底耐圧は、600kPa以上であることが好ましい。なお、表2中、「○」は缶底耐圧の平均値が600kPa以上であったことを示す記号であり、「×」は缶底耐圧の平均値が600kPa未満であったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。
熱処理後缶の缶底耐圧を、10缶ずつ測定した。20kPa/sの昇圧速度で水圧を付与し、缶底が反転したときの水圧を缶底耐圧とした。缶底耐圧は、600kPa以上であることが好ましい。なお、表2中、「○」は缶底耐圧の平均値が600kPa以上であったことを示す記号であり、「×」は缶底耐圧の平均値が600kPa未満であったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。
《再絞りカップ缶底テーパー部最大しわ高さの測定》
DI成形途中の再絞りカップ(ドーム成形無し)を、各試験材7缶ずつ作製し、缶底テーパー部に発生した座屈しわの凹凸を形状測定器で測定し、隣り合う最大の山谷差を、最大しわ高さとした。なお、表2中、「○」は最大しわ高さの平均値が300μm未満であったことを示す記号であり、「×」は最大しわ高さの平均値が300μm以上であったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。最大しわ高さは、300μm未満であること(「○」にて表示。)が望ましい。
DI成形途中の再絞りカップ(ドーム成形無し)を、各試験材7缶ずつ作製し、缶底テーパー部に発生した座屈しわの凹凸を形状測定器で測定し、隣り合う最大の山谷差を、最大しわ高さとした。なお、表2中、「○」は最大しわ高さの平均値が300μm未満であったことを示す記号であり、「×」は最大しわ高さの平均値が300μm以上であったことを示す記号である(「−」は評価対象外。)。最大しわ高さは、300μm未満であること(「○」にて表示。)が望ましい。
以上の評価結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、本開示の実施例に相当する試料No.1〜4については、合金板の引張強さ、205℃−10min熱処理後耐力との差、合金板吸熱量、合金板吸熱量と205℃−10min熱処理後吸熱量との差は、本開示で規定する数値範囲内となった。また、試料No.1〜4については、耳率、DI成形性、ネック成形性、フランジ成形性、缶底耐圧、及び再絞りカップ缶底テーパー部の最大しわ高さに関し、優れていることが認められた。
これに対し、比較例となる試料No.5については、Mg含有量が1.4質量%を超えているため、合金板の強度が高く、DI成形時の加工硬化が大きくなり過ぎ、破胴した。また、試料No.6については、逆にMg含有量が0.75質量%未満となり、固溶強化量が減少し、合金板の強度が低下したため、缶底耐圧が低下した。試料No.7については、Cu含有量が0.25質量%を超えているため、合金板の強度が高く、DI成形時の加工硬化が大きくなり過ぎ、破胴した。
試料No.8については、Cu含有量が0.25質量%未満となり、固溶強化量および冷延中の析出強化量(上記析出物群)が減少し、合金板の強度が低下したため、缶底耐圧が低下した。試料No.9については、Si含有量が0.60質量%を超えているため、Mg2Si晶出物が増加し、固溶Mg量が減少するため、固溶Mgによる固溶強化量が低減する他、冷間圧延中の上記析出物群の析出が減少し、合金板の強度が低下したため、缶底耐圧が低下した。
試料No.10については、Si含有量が0.10質量%未満であるため、α相が十分に形成せず、しごき成形時に外観不良が発生した。試料No.11については、Mn含有量が1.30質量%を超えているため、鋳造時に粗大なAl6(Mn、Fe)化合物が形成し、破胴した。試料No.12については、Mn含有量が0.75質量%未満であるため、固溶強化量が減少し、合金板の強度が低下したため、缶底耐圧が低下した。さらに晶出物が少ないため、耳率が高くなった。加えて、α相も十分に形成しないため、しごき成形時に外観不良が発生した。
試料No.13については、Fe含有量が0.70質量%を超えているため、鋳造時に粗大なAl6(Mn、Fe)化合物が形成し、破胴した。試料No.14については、Fe含有量が0.15質量%未満であるため、晶出物が少ないため、耳率が高くなった。加えて、α相も十分に形成しないため、しごき成形時に外観不良が発生した。試料No.15については、MgとCu、Si、Mn、Feの含有量が、本発明で規定した範囲よりも少ないため、耳率やDI成形性、缶底耐圧などが劣った。
(2−B)第二実施形態
第二実施形態では、第一実施形態における合金記号Aを半連続鋳造により造塊し、面削後に均質化熱処理と熱間圧延を続けて行った。その後、シングル圧延機を用いて板厚0.28mmまで、3パスの冷間圧延を行った。この冷間圧延工程では、最終パス以外の温度、次のパスまでの時間、及び最終パスのコイル巻取後端面温度などの諸条件を、表3に示す条件となるように設定した。
第二実施形態では、第一実施形態における合金記号Aを半連続鋳造により造塊し、面削後に均質化熱処理と熱間圧延を続けて行った。その後、シングル圧延機を用いて板厚0.28mmまで、3パスの冷間圧延を行った。この冷間圧延工程では、最終パス以外の温度、次のパスまでの時間、及び最終パスのコイル巻取後端面温度などの諸条件を、表3に示す条件となるように設定した。
第一実施形態と同様の方法により、各試作材の材料特性と製缶性、缶体強度を評価した。その評価結果を表4に示す。
本開示の実施例に相当する試料No.1と試料No.16〜20において採用した冷間圧延条件は、本開示で規定する数値範囲内に含まれている。そのため、引張強さや吸熱量などの材料特性は、本開示で規定する数値範囲内となる値を示し、かつ、優れた製缶性と缶体強度を有していた。
これに対し、比較例となる試料No.21,22,25については、2パス後コイル端面温度T2が130℃を超えており、加えてT2と2パス終了後から次パス開始までの時間t2から決まるT2+(50/70)t2が180を超えているため、次の冷間圧延パスまでに上記析出物群の析出が進み、析出強化とその後の冷間加工での加工硬化が増大し、合金板の強度が上昇したため、破胴した。
試料No.23については、最終パス後コイル端面温度が170℃を超えているため、回復が急速に進み、合金板の強度が低下したため、缶底耐圧が低下した。試料No.24については、最終パス後のコイル端面温度が130℃未満であるため、回復が不十分となり、合金板の強度が高くなり、破胴した。
試料No.26については、1パス後コイル端面温度と2パス後コイル端面温度が70℃未満であるため、析出強化量(上記析出物群)が少なく、合金板の吸熱量が小さくなり、DI成形後の塗装焼付相当の熱処理で上記析出物群が析出し強度が上昇(ベイクハード)したため、ネック成形で座屈が認められた。加えて最終パス後コイル端面温度が130℃未満であるため、回復が不十分となり、再絞りカップ缶底テーパー部に大きなしわが認められた。
(2−C)効果
以上説明した第一実施形態及び第二実施形態から明らかなように、本開示のアルミニウム合金板は、優れた製缶性と缶体性能を有する。本開示のアルミニウム合金板の製造方法によれば、冷間圧延条件により上記析出物群の析出状態を最適に制御することができ、これにより、優れた製缶性と缶体性能を有するアルミニウム合金板を製造することができる。
以上説明した第一実施形態及び第二実施形態から明らかなように、本開示のアルミニウム合金板は、優れた製缶性と缶体性能を有する。本開示のアルミニウム合金板の製造方法によれば、冷間圧延条件により上記析出物群の析出状態を最適に制御することができ、これにより、優れた製缶性と缶体性能を有するアルミニウム合金板を製造することができる。
(2−D)他の実施形態
以上、アルミニウム合金板及びその製造方法について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
以上、アルミニウム合金板及びその製造方法について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、本開示で規定する条件に関し、特定の数値を設定した例を示したが、それらの数値は本開示で規定する数値範囲内において適宜変更することが可能である。
また、上述したアルミニウム合金板及びその製造方法の他、上述したアルミニウム合金板を用いた製缶方法、上述したアルミニウム合金板によって製造された缶ボディなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
Claims (2)
- Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなり、
示差走査熱量測定において180〜240℃の温度域に現れる吸熱ピークの熱量が、0.005〜0.270J/gであり、
熱処理前の吸熱量と205℃−10minの熱処理後の吸熱量との差が、−0.200〜0.190J/gであり、
引張強さが、270〜340MPaであり、
前記引張強さと205℃−10minの熱処理後の耐力との差が、30〜60MPaである
アルミニウム合金板。 - Mg:0.75〜1.40質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Si:0.10〜0.60質量%、Mn:0.75〜1.30質量%、及びFe:0.15〜0.70質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるアルミニウム合金の鋳塊を半連続鋳造によって作製する工程と、
前記鋳塊を面削後、均質化熱処理を施す工程と、
前記均質化熱処理後に、熱間圧延を施す工程と、
前記熱間圧延後に、複数パスの冷間圧延を施す工程と
を有し、
前記冷間圧延を施す工程では、
最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)が70℃以上、かつ次のパスまでの時間t(h)が0<t≦8760とされ、
しかも、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)及び前記次のパスまでの時間t(h)がT+(50/7)t≦180とされるか、もしくは、前記最終パス以外のコイル巻取後端面温度T(℃)がT≦130とされ、
さらに、最終パスのコイル巻取後端面温度が130〜170℃とされている
アルミニウム合金板の製造方法。
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