JP3748438B2 - 包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DI缶又はボトル缶等を製造する際に用いられる包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の飲料缶等の包装容器の素材として、成形性、耐食性および強度等の面から、アルミニウム合金板が幅広く適用されている。そして、前記アルミニウム合金板に絞り加工やしごき加工(以下、「DI(Drawing and Ironing)成形」という)等を施して形成された包装容器用アルミニウム缶(以下「DI缶」という)のニーズが増大し、種々の形状を有するDI缶の開発が活発となっている。図1は、前記DI缶の底の形状を模式的に示す断面図である。
【0003】
前記DI缶に使用されるアルミニウム合金板としては、所望の特性が得られるように成分調整が行われたJIS H 4000で規定されるAl―Mn系の3004合金が多く用いられ、鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理、焼鈍処理および最終冷間圧延処理等の各工程を経て所定の板厚を有するアルミニウム合金板に形成される。そして、このように形成されたアルミニウム合金板に対して、カッピング加工やDI成形等の缶体成形が施されて胴体部が形成され、続いてこの胴体部にネッキング加工が施されることで前記胴体部の径に比べてエンド部の開口部の口径が小さくなるように加工されて(以下「縮径する」という)、図1に示すような底側の形状を備える前記DI缶が作製される。
【0004】
近年では、前記DI缶の上部に多段階でネッキング加工が施されて、エンド部の開口部の口径がより小さく形成されたものが主流となってきており、これに伴って前記DI成形の加工度も次第に厳しいものとなってきた。また、前記DI缶の縮径に伴い、缶同士を高さ方向で重なり易くするため、缶底接地径の小径化も要求されている。
【0005】
このため、缶底接地径の小径化に対応しうる缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法が提案されており、前記アルミニウム合金板の必須含有元素として、Mg、Mn、Fe、Si、CuおよびTiの含有量を規制するとともに、引張強度と伸び率とを規制し、さらに均質化熱処理、熱間圧延、次いで出側温度を制御した3パスからなる冷間圧延を行うことが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−262261号公報(第2−7頁、第2図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、缶底接地径を小径化すると、絞り加工の際に、図1に示す缶底の接地部1から缶側壁2にかけてシワ(以下、缶底シワ)が発生するという問題を生じる。このような缶低シワは、例えば、アルミニウム合金板に最終焼鈍を施し、伸びを回復することにより改善されるが、焼鈍の工程はコストがかかるものであり、また、しごき加工性が低下するという製造上の問題もあった。
【0008】
このため、前記したように、特許文献1では、均質化熱処理および熱間圧延をこの順に行い、次いで出側温度を制御した3パスからなる冷間圧延を行うことが提案されていた。しかし、この場合にも、冷間圧延を多段階で実施するため、製造コストを低減することが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、所定の缶底形状にするために厳しい加工を施しても、缶底シワが発生しない包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法を、加工性を損なうことなく低コストで提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために、缶底シワの低減について鋭意研究を進めた結果、アルミニウム合金中に含有される元素の最適化およびアルミニウム合金鋳塊を均質化する熱処理及び熱間圧延の後に行われる冷間圧延のプロセスパラメータをコントロールすることにより、前記目的を達成することが可能なことを見い出し、本発明を創作するに至った。
【0011】
(1)すなわち、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板は、必須含有元素として、Cuを0.15〜0.35質量%、Mgを0.8〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.25〜0.50質量%、Siを0.1〜0.5質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる包装容器用アルミニウム合金板であって、伸び率が6.2%以上、加工硬化指数が0.06以上、かつ、耐力が259〜281N/mm 2 となるように構成される。
【0012】
このように構成すれば、Cu、Mg、Mn、FeおよびSiの含有量を規制し、さらに伸び率、加工硬化指数および耐力といった缶底形成に影響する機械的性質を規制したので、所望とする缶底成形性に優れた包装容器用アルミニウム合金板が具現される。
【0013】
(2)また、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板の製造方法は、必須含有元素として、Cuを0.15〜0.35質量%、Mgを0.8〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.25〜0.50質量%、Siを0.1〜0.5質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理および熱間圧延を順次に施し、次いで冷間圧延を80%以上の圧延率で施し、前記冷間圧延後の出側温度が140℃以上150℃未満の場合には、前記冷間圧延後の終了後110℃まで5℃/時間以下の冷却速度で冷却し、また、前記冷間圧延後の出側温度が150℃以上180℃以下の場合には、前記冷間圧延終了後110℃まで、30℃/時間以下の冷却速度で冷却することにより構成される。
【0014】
このように構成すれば、アルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理及び熱間圧延をした後に、冷間圧延を施すだけで、所望とする缶底成形性に優れた包装容器用アルミニウム合金板が具現される。なお、前記製造条件でアルミニウム合金板を製造すれば、伸び率が6.2%以上、加工硬化指数が0.06以上、かつ、耐力が259〜281N/mm 2 の範囲になるような包装容器用アルミニウム合金板を提供しやすくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板には、主に、JIS H 4000で規定されるAl―Mn系の3004系合金が用いられる。そして、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板は、このような3004系合金を用いて所定の製造方法にて製造される。
【0017】
まず、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板で、必須含有元素であるCu、Mg、Mn、FeおよびSiの含有量を数値限定した理由、並びに、伸び率、加工硬化指数および耐力の数値限定をした理由について説明する。
【0018】
(Cuの含有量:0.15〜0.35質量%)
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に含まれるCuは、材料強度に寄与する元素である。また、熱間圧延後に焼鈍処理が施される場合には、Cuはアルミニウム合金中に固溶した状態となる。このため、DI缶又はボトル缶を成形した後の塗装焼付工程で析出硬化性が付与される。この場合、Cuは、0.15質量%より少ないと充分な材料強度が得られず、また、0.35質量%を超えると強度が高くなりすぎ、成形性が低下する。従って、本発明では、Cuの含有量を0.15〜0.35質量%とする。
【0019】
(Mgの含有量:0.8〜1.5質量%)
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に含まれるMgは、前記のCuと同じく材料強度に寄与する元素である。0.8質量%未満では必要とする強度が得られ難く、また、1.5質量%を越えると加工硬化が大きくなり、成形性が低下する。従って、本発明では、Mgの含有量を0.8乃至1.5質量%とする。なお、Mgが多くなると冷間圧延時に導入される加工歪が増加し、出側温度を高める作用があり、Mgは1.0質量%以上が望ましい。
【0020】
(Mnの含有量:0.5〜1.5質量%)
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に含まれるMnは、材料強度に寄与すると共に、Al−Mn−Fe―Si系金属間化合物を形成し、しごき加工において、アルミニウム合金板がダイスへ凝着するのを防止する。Mnは、0.5質量%より少ないと金属間化合物の形成が充分ではなく、強度も不足する。また、1.5質量%を超えると強度が高まり、更に、金属間化合物が粗大になるため、しごき加工時に缶の内表面に深いスジ状の欠陥を生じさせる。このため、本発明では、Mnの含有量を0.5〜1.5質量%とする。
【0021】
(Feの含有量:0.25〜0.50質量%)
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に含まれるFeは、Mnと同じくAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成する。0.25質量%未満では、ダイスへの凝着を防止するのに必要な、最大長が2μm以上の金属間化合物が形成されず、また、0.50質量%を越えると、最大長が20μmを越えるような巨大な金属間化合物が生成し、胴切れ(しごき加工時の破断)に繋がる。更に、金属間化合物が粗大になるため、しごき加工時に缶の内表面に深いスジ状の欠陥を生じさせる。このため、本発明では、Feの含有量を0.25〜0.50質量%とする。
【0022】
(Siの含有量:0.1〜0.5質量%)
本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に含まれるSiは、均質化熱処理において、Al−Mn−Fe系の金属間化合物と結び付き、高硬度なAl―Mn―Fe―Si系金属間化合物を形成する。0.1質量%未満では金属間化合物の形成が充分ではなく、0.5質量%を越えると、材料強度或いは再結晶挙動に悪い影響を及ぼす。このため、本発明では、0.1〜0.5質量%の範囲とする。
【0023】
(不可避的不純物)
本発明においては、不可避的不純物として、Cr:0.1質量%以下、Zn:0.5質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.1質量%以下、B:0.1質量%以下の含有は本発明の効果を妨げるものではなく、このような不可避的不純物の含有は許容される。
【0024】
(伸び率:6.2%以上)
包装容器用アルミニウム合金板は、伸び率が高いほど缶底成形性は良く、6.2%以上で缶底シワの発生は抑制され、6.2%未満では缶底シワの発生を抑制できなくなる。このため、本発明では、伸び率は、6.2%以上とする。
【0025】
(加工硬化指数:0.06以上)
包装容器用アルミニウム合金板から加工されるときの座屈現象であるシワに対して、缶底成形時に加工硬化が起きるとシワが抑制されるため、加工硬化指数(n値)が高いほど缶底成形性は良好となる。この場合、加工硬化指数が0.06未満では、缶底シワは抑制されない。従って、本発明では、加工硬化指数は、0.06以上とする。
【0026】
(耐力:259〜281N/mm2)
包装容器用アルミニウム合金板の耐力が281N/mm2を超えると、缶底成形時に高い加工力が必要になるため、シワ押さえ力の効果が減少する。また、缶底成形後の弾性回復量が大きくなるため、シワが残り易くなる。また、耐力が259N/mm 2 未満であると、缶底強度が低下する。このため、本発明では、耐力は259〜281N/mm 2 とする。なお、好ましくは259〜275N/mm 2 である。
【0027】
次に、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板の製造方法で、アルミニウム合金鋳塊を均質化する熱処理および熱間圧延する処理を順次に施した後に行われる冷間圧延のプロセスパラメータを数値限定した理由について説明する。
【0028】
すなわち、まず、本発明で規制する合金成分を有するアルミニウム合金を溶解した後、所定の冷却速度で冷却することによりアルミニウム合金鋳塊を製造する。次に、このアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理および熱間圧延を順次に施した後に、所定の冷間圧延を施すことにより、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板が得られる。また、ここで、熱間圧延および冷間圧延の設備の熱的条件によっては、前記冷間圧延の前に、適宜、焼鈍処理を施すことも可能である。
【0029】
本発明は、前記均質化熱処理の工程における温度および時間等の処理条件について特に限定するものではないが、前記したアルミニウム合金の鍛造素材を製造する際に生じ易いアルミニウム合金成分の偏析を抑えて均質化するとともに、続いて行われる熱間圧延の効率性を確保する観点から、この工程温度を通常の条件範囲である温度480℃〜610℃で4〜8時間保持し、均質化熱処理を施す。
【0030】
(冷間圧延の条件)
冷間圧延率は、アルミニウム合金素材の強度、耳率に影響するばかりでなく、冷間圧延の出側温度にも影響する。このため必要とされる出側温度を確保する意味合いから、圧延率は80%以上とする。そして、出側温度が140℃未満では、アルミニウム合金素材の回復に必要な温度が不足し、伸び6.2%以上を確保できない。また、出側温度が140℃以上150℃未満の場合、冷却速度が5℃/時間を超えると素材の回復が十分進行せず、伸び6.2%以上を確保できなくなる。
【0031】
さらに、出側温度が150℃以上180℃以下の場合、冷却速度が30℃/時間を超えるとやはり伸び6.2%以上を確保できなくなる。このため、本発明では、前記冷間圧延後の出側温度が140℃以上150℃未満の場合には、前記冷間圧延後の終了後110℃まで5℃/時間以下の冷却速度で冷却する。また、出側温度が150℃以上180℃以下の場合には、冷間圧延終了後110℃まで、30℃/時間以下の冷却速度で冷却する。なお、出側温度が180℃を超えると、素材回復量が大きくなり、しごき加工時の加工硬化が大きくなるため、成形性が低下する。
【0032】
そして、所定の含有量の元素Cu、Mg、Mn、FeおよびSiを添加したアルミニウム合金鋳塊を用いて、均質化熱処理及び熱間圧延をした後で、前記冷間圧延の条件でアルミニウム合金板を製造すると、所望とする包装容器用アルミニウム合金板に要求される伸び率、加工硬化指数および耐力を確保しやすくなり、前記包装容器用アルミニウム合金板を提供しやすくなる。
【0033】
以下、本発明の必要条件を満たす実施例を、本発明の必要条件を満たさない比較例と対比させてながら具体的に説明する。
【0034】
【実施例1】
先ず、本発明で規定した化学組成を有するアルミニウム合金鋳塊に、通常の均質化熱処理を行い、熱間圧延を、圧延開始温度500℃、圧延終了温度320℃で実施した。続いて、冷間圧延を表1に示す条件で施し、厚さ0.28mmの包装容器用アルミニウム合金板を作製した。すなわち、表1に示すように、本発明に係る実施の態様の包装容器用アルミニウム合金板の供試材による実施例(No.1〜5)、および本発明の要件を満たさない包装容器用アルミニウム合金板の供試材による比較例(No.6〜20)を作製した。
【0035】
【表1】
【0036】
その後、前記供試材の各々について、種々の評価試験を行った結果を表2に示すが、表2の各番号の供試材は、表1の各番号の供試材と対応している。
【0037】
【表2】
【0038】
(伸びおよび耐力の評価)
表1に示す条件で冷間圧延を施した供試材を、JIS Z 2241に準じて引張試験を行い、引張強さを測定して、破断時の伸びを求め、さらに0.2%耐力を測定した。
【0039】
(加工硬化指数の評価)
表1に示す条件で冷間圧延を施した供試材を、前記引張試験にてσ−ε曲線(応力−歪曲線)を測定し、εが1〜3%の範囲で近似曲線としてσ∝εn曲線を求め、JIS Z 2253に基づき、nの値を求めた。
【0040】
(45°耳の耳率の評価)
表1に示す各供試材を用いて、φ66.7mmのブランクを作製し、φ40mmのポンチで絞ってカップを作製した。その後、得られたカップの耳の高さから45°耳の耳率を求めた。ここで、前記供試材の45°耳の耳率が、−3〜3%以内であるときを「○(合格)」とし、それ以外のときを「×(不合格)」とした。
【0041】
(しごき成形性の評価)
しごき成形性は、表1に示す各供試材を用いて、φ66.7mmのブランクを作製し、φ40mmのポンチで絞り成形を施した。前記しごき成形で10000缶を成形したときに、破断が発生した缶が、1缶以下であったものを「○(良好)」とし、2缶以上であったものを「×(不良)」とした。
【0042】
(缶底成形性の評価)
缶底成形性は、φ140mmのブランクからカップ径φ90mmのカップを絞り、その後φ66mmまで再絞りを施したものについて、缶底テーパー部のシワを3次元測定機で全周の形状測定を行い、最大ピーク値を用いた評価、およびドーム成形後の「缶底シワ」を目視により評価した。なお、使用した缶底形状は、缶底接地径がφ48mm、シワ押さえ圧は50psi、また再絞りダイスRは1.5mmとした。
【0043】
(最大ピーク値)
そして、缶底成形性の1つの評価である前記最大ピーク値を評価し、この値が、0.35mm未満であるときを合格とし、それ以外のときを不合格とした。なお、最大ピーク値が、0.35mm以上になると、ドーム成形後に缶底シワが消えずに残存することで外観不良が生ずる。
【0044】
(缶底シワ)
また、缶底成形性の他の評価としての目視による缶底シワの評価については、目視で缶底シワが観察されなかったものを「○(良好)」とし、缶底シワが観察されたものを「×(不良)」とした。
【0045】
(缶底強度の評価)
ドーム成形された最終製品のアルミDI缶の缶底耐圧強度を測定し、618kPa以上のものを「○(合格)」とし、それを下回ったものを「×(不合格)」とした。
【0046】
表1の比較例No.6〜No.15は、化学成分組成の必須含有元素Cu、Mg、Mn、FeおよびSiのうちいずれか1つの含有量が本発明で規制する範囲から外れているものである。一方、比較例No.16〜No.21は、化学成分組成は本発明の許容範囲内であるが、冷間圧延における圧延率、出側温度および冷却温度のうち少なくとも1つのパラメータが本発明で規制する範囲から外れているものである。そして、比較例No.16〜No.21は、本発明に係る包装容器用アルミニウム合金板に必要な特性を充分に満たさないという結果が得られた。
【0047】
すなわち、まず、表1の比較例No.6およびNo.7は、化学成分組成のうちSiの含有量が本発明で規制する範囲から外れている。その結果、表2に示すように、比較例No.6は、しごき成形性に劣ることがわかる。また、比較例No.7は、45°耳の耳率が不合格となっており、ボトル缶を製造する場合、ネック加工の成形工程で問題を生ずる可能性が考えられる。
【0048】
比較例No.8およびNo.9はは、化学成分組成のうちFeの含有量が本発明で規制する範囲から外れている。その結果、両者はともにしごき成形性に劣ることが分かる。
【0049】
比較例No.10およびNo.11は、化学成分組成のうちMnの含有量が本発明で規制する範囲から外れている。その結果、両者はともに、しごき成形性に劣ることが分かる。比較例No.10は、Mnの含有量が本発明で規制する範囲の下限未満なので、缶底強度も劣っている。
【0050】
比較例No.12およびNo.13は、化学成分組成のうちMgの含有量が本発明で規制する範囲から外れている。その結果、比較例No.12は、Mgの含有量が本発明で規制する範囲の下限未満なので、缶底強度が劣っている。また、比較例No.13は、缶底シワが発生し、しごき成形性に乏しく、最大ピーク値が不合格である。
【0051】
比較例No.14およびNo.15は、化学成分組成のうちCuの含有量が本発明で規制する範囲から外れている。その結果、比較例No.14は、Cuの含有量が本発明で規制する範囲の下限未満なので、缶底強度が劣っている。また、比較例No.15は、耐力が本発明で規制する範囲の上限を超えており、缶底シワが発生し、しごき成形性に乏しく、最大ピーク値が不合格である。
【0052】
比較例No.16は、前記冷間圧延の出側温度および圧延率が、本発明で規制する範囲の下限未満であり、伸びおよび加工硬化指数が本発明で規制する範囲の下限未満であるため、缶底シワが発生し、最大ピーク値および缶底強度も不合格である。
【0053】
比較例No.17およびNo.18は、前記冷間圧延の出側温度が本発明で規制する範囲の下限未満であり、伸びが低く、缶底シワが発生し、最大ピーク値も不合格である。一方、比較例No.17およびNo.18は、前記冷間圧延の冷却温度が本発明で規制する範囲の上限を超えており、伸びが低く、缶底シワが発生し、最大ピーク値も不合格である。
【0054】
比較例No.19およびNo.20は、前記冷間圧延の冷却速度が本発明で規制する範囲から外れている。すなわち、比較例No.19は、出側温度は140℃以上150℃未満の範囲内であるが、冷却速度が5℃/時間を超えている。一方、比較例No.20は、出側温度は150℃以上180℃以下の範囲内であるが、冷却速度が30℃/時間を超えている。このため、両者はともに、伸びが低く、缶底シワが発生し、最大ピーク値も不合格である。
【0056】
【発明の効果】
以上説明した通りに構成される本発明によれば、以下の効果が具現される。すなわち、本発明に係る請求項1のよれば、必須含有元素Cu、Mg、Mn、FeおよびSiの含有量を規制し、さらに缶底形成加工に影響を与える伸び率、加工硬化指数および耐力を規制したので、所望とする包装容器用アルミニウム合金板を提供することができる。
【0057】
また、請求項2の発明によれば、アルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理した後に、冷間圧延を施すだけで、所望とする缶底成形性に優れた包装容器用アルミニウム合金板を提供することができる。従来、DI缶又はボトル缶等を製造する際には、前記冷間圧延を複数回施して所望の缶形状のものを得ていたが、本発明によれば、前記冷間圧延を1回施すだけで済むため、製造コストの低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DI缶の缶底の形状を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 缶底の接地部
2 缶側壁
Claims (2)
- 必須含有元素として、Cuを0.15〜0.35質量%、Mgを0.8〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.25〜0.50質量%、Siを0.1〜0.5質量%含有し、
残部がAlおよび不可避的不純物からなる包装容器用アルミニウム合金板であって、
伸び率が6.2%以上、加工硬化指数が0.06以上、かつ、耐力が259〜281N/mm 2 であることを特徴とする包装容器用アルミニウム合金板。 - 必須含有元素として、Cuを0.15〜0.35質量%、Mgを0.8〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.25〜0.50質量%、Siを0.1〜0.5質量%含有し、
残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理および熱間圧延を順次に施し、次いで冷間圧延を80%以上の圧延率で施し、
前記冷間圧延後の出側温度が140℃以上150℃未満の場合には、前記冷間圧延後の終了後110℃まで5℃/時間以下の冷却速度で冷却し、また、
前記冷間圧延後の出側温度が150℃以上180℃以下の場合には、前記冷間圧延終了後110℃まで、30℃/時間以下の冷却速度で冷却することを特徴とする包装容器用アルミニウム合金板の製造方法。
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