JP5480647B2 - 包装容器蓋用アルミニウム合金複合板およびその製造方法 - Google Patents

包装容器蓋用アルミニウム合金複合板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クラッドされたアルミニウム合金複合板に関し、特に、包装容器蓋用として用いるアルミニウム合金複合板およびその製造方法に関する。
金属製の包装容器、例えば食缶は、ボディ(缶胴)とエンド(缶蓋)とから構成される。缶胴については、通常鋼板が使用されているが、缶蓋については、タブを取付けたときの開缶性および安全性の観点からアルミニウム合金板が使用されている。また、このような食缶には、スープ或は魚肉等が充填されることがあるが、これらの充填物には塩分(Clイオン)が比較的多く含まれている。このため、缶胴の鋼板との接触腐食による缶蓋の孔食を防止するために、例えば、特許文献1、2には、アルミニウム合金からなる芯材に、孔食電位が芯材に比べて卑であるアルミニウム合金からなる皮材を圧延によりクラッドしたアルミニウム合金複合板を缶蓋に使用することが記載されている。
また、食缶製造の際には、アルミニウム合金複合板を缶蓋に成形する前に、アルミニウム合金複合板表面に塗装および焼付けが行われる。アルミニウム合金複合板は、この焼付けによりトータルで200℃×20分間程度の熱を受ける。そして、食缶としての信頼性を確保する、例えば、食缶の変形、破壊、内容物の漏洩などを防止するとの観点から、この焼付けによってアルミニウム合金複合板の強度が過剰に低下しないようにする必要がある。
さらに、食缶製造の最終段階では、120℃×30分間程度の殺菌が実施される。この際、缶内部の圧力が上昇し、缶蓋および缶胴の底部が変形し易くなる。内圧が上昇し蓋が膨出した際の変形量をバルジ変形量というが、このバルジ変形量が大き過ぎると、反転搬送中に蓋がコンベアに引っ掛かり、生産ラインが停滞する等の問題が発生する場合がある。このため、缶蓋には変形に耐えうる程度の剛性が必要となる。
近年、このような食缶に関しては低コスト化の要求が強く、缶蓋についても薄肉化が志向されている。薄肉化するためには、缶蓋としての必要な剛性を保つために、アルミニウム合金複合板の塗装焼付け後の強度を高める必要がある。しかしながら、アルミニウム合金複合板の高強度化は、蓋への成形性を損なう場合が多く、強度と成形性を両立させたアルミニウム合金複合板が要望されている。例えば、特許文献3には、Fe、Cu、Mnを所定量含有したアルミニウム合金芯材に、Alが99.5質量%以上のアルミニウム合金皮材をクラッドしたアルミニウム合金複合板が記載され、そのアルミニウム合金複合板のクラッド率、芯材の平均再結晶粒幅、耳率を所定範囲とすることで、薄肉化されたアルミニウム合金複合板であっても、リベット割れ等の成形異常を発生させることなく、塗装焼付け後の強度を向上させる技術が記載されている。
特開昭63−227738号公報(2頁右上欄17行目〜左下欄10行目、3頁右上欄4行目〜19行目) 特開昭63−297535号公報(2頁左下欄9行目〜右下欄8行目、3頁左下欄6行目〜右下欄6行目) 特許第3719678号公報(段落0016〜0024)
一方、缶蓋形状は、アルミニウム合金複合板の材料よりも缶蓋の剛性に対して大きな影響を与えるため、缶蓋の剛性を高めるための形状変更が検討されている。このような形状変更には、缶蓋の各曲面部の小径化を伴うことが多く、アルミニウム合金複合板はさらに厳しい曲げ加工を受けることとなる。また、缶蓋の開封後のスコア破断部は、鋭利なエッジとなっており、指等を切傷する懸念があることから、スコア加工部近傍に切傷防止のための加工を施した、セーフティーエンドと呼ばれる缶蓋が流通している。この切傷防止のための加工も厳しい曲げ加工を伴うものである。したがって、これらの高剛性形状蓋やセーフティーエンドへの成形を可能とするため、缶蓋に用いられるアルミニウム合金複合板の曲げ加工性のより一層の向上が要求されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載されたアルミニウム合金複合板では、その製造の際、焼鈍工程における加熱速度が制御されていないため、アルミニウム合金複合板の再結晶粒幅が大きくなり、曲げ加工性が低下するという問題がある。そして、曲げ加工性が悪化すると、曲げの外側表面にクラックや肌荒れが生じ、塗装や化成処理層、皮材に欠陥が生じて耐食性が低下するという問題が生じる。ゆえに、材料を高強度化した場合、缶蓋への加工が難しくなり、高剛性形状蓋やセーフティーエンドへ成形したときの良品率が低下してしまう。
また、特許文献3に記載されたアルミニウム合金複合板では、その製造の際、芯材と皮材をクラッドする熱間圧延の後に所定の焼鈍を施し、所定の圧延率で冷間圧延している。したがって、焼鈍を熱間圧延後に行うため、焼鈍条件を調整して、アルミニウム合金複合板の再結晶粒幅を小さく、具体的には50μm以下、かつ、強度を所定範囲、具体的には0.2%耐力を200〜290MPaに制御することができない。その結果、アルミニウム合金複合板に強度不足が生じたり、缶蓋への曲げ加工性が低下するという問題がある。また、特許文献3では、冷間圧延工程にて所定の冷間圧延および焼鈍を繰返し行ってもよいとの記載があるが、焼鈍工程の回数増は製造コストを大幅に増大させるため、現実的ではない。
本発明は、前記問題点を鑑みてなされたものであり、薄肉化および高強度化されたアルミニウム合金複合板であっても、優れた曲げ加工性および耐食性を備え、高剛性形状蓋やセーフティーエンドに成形されても欠陥を生じない包装容器蓋用アルミニウム合金複合板およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、高強度アルミニウム合金複合板を曲げ加工した際の欠陥が発生する挙動の調査、およびその原因となる材料要因の調査を行った結果、以下の知見を得た。すなわち、アルミニウム合金複合板は、圧延方向と平行方向に曲げ加工した場合に曲げ部外側表面のクラックが発生し易く、このクラック発生には、アルミニウム合金複合板を圧延方向で引張試験したときの0.2%耐力と伸びが影響すること、また、アルミニウム合金複合板は、圧延方向と直角方向に曲げ加工した場合、曲げ部外側表面に肌荒れが発生し易く、この肌荒れ発生にはアルミニウム合金芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が影響すること、である。
そこで本発明者らは、前記の知見を元に、アルミニウム合金複合板に含まれる成分組成を適正な範囲とすると共に、このアルミニウム合金複合板の0.2%耐力および伸びと、アルミニウム合金芯材の平均再結晶粒幅を最適な条件範囲に制御することによって、前記課題を解決することが可能であることを見出した。
すなわち、本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板は、Fe:0.1〜0.4質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Mn:0.5〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる第1組成を有する芯材と、前記芯材に被覆されたAlが99.5質量%以上で、残部が不可避的不純物からなる第2組成を有する皮材とを備えるアルミニウム合金複合板であって、前記アルミニウム合金複合板のクラッド率が5〜20%、前記アルミニウム合金複合板を200℃×20分間の熱処理後圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力が200〜290MPa、伸びが5%以上、前記アルミニウム合金複合板における芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μm以下であることを特徴とする。
このように、芯材のFe含有量を0.1〜0.4質量%とすることにより、アルミニウム合金複合板の耐食性を悪化させることなく、また曲げ加工性を悪化させる巨大な金属間化合物が生じることなく適度な分布状態の金属間化合物が得られ、芯材が微細な再結晶粒組織となり、曲げ加工性(成形性)を向上させることができる。
芯材のCu含有量を0.2〜1.0質量%とすることにより、アルミニウム合金複合板の耐食性を悪化させることなく、成形前にCuが芯材中に析出して、アルミニウム合金複合板の材料強度を高めることができ、また成形性が悪化するほど過度に高強度とならない。
芯材のMn含有量を0.5〜1.5質量%とすることにより、アルミニウム合金複合板の曲げ加工性を悪化させる巨大な金属間化合物が生じることなく適度な分布状態の金属間化合物が得られ、芯材が微細な再結晶粒組織となってアルミニウム合金複合板の曲げ加工性を向上させることができると共に、アルミニウム合金複合板の耐食性、材料強度を高めることができる。
また、アルミニウム合金複合板のクラッド率を5〜20%とすることにより、皮材が消耗しにくく、また十分な強度を有するアルミニウム合金複合板とすることができる。
アルミニウム合金複合板を200℃×20分間の熱処理後、圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力を200〜290MPa、伸びを5%以上とすることで、薄肉化した缶蓋に成形しても十分な剛性を得ることができ、さらに成形中の曲げ加工性を低下させることがない。
アルミニウム合金複合板における芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅を50μm以下とすることにより、アルミニウム合金複合板の曲げ加工性を向上させることができると共に、曲げ加工したときの曲げ部外側表面の肌荒れを抑制することができる。
また、本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板は、前記芯材の第1組成が、さらにMg:1.5質量%以下およびCr:0.4質量%以下の少なくとも一方を含有することを特徴とする。
このように、芯材のMg含有量を1.5質量%以下とすることにより、成形性が悪化するほど過度に高強度とならない。芯材のCr含有量を0.4質量%以下とすることにより、成形性が悪化するほどの巨大な金属間化合物が生じない。
本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法は、前記第1組成のアルミニウム合金からなる芯材と、前記第2組成のアルミニウム合金からなる皮材とを作製する第1工程と、前記第1工程で作製された芯材に皮材を積層し、熱間圧延により、前記芯材に前記皮材がクラッドされたアルミニウム合金圧延板を作製する第2工程と、前記第2工程で作製されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第3工程と、前記第3工程で冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板を焼鈍する第4工程と、前記第4工程で焼鈍されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第5工程とを含み、前記第3工程における冷間圧延の圧延率が30〜65%であって、前記第4工程における焼鈍が、100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程と、引続き100℃/min以上で冷却する工程とを行い、前記第5工程における冷間圧延が、3回以内の圧延工程を行い、総圧延率が65〜90%であって、少なくとも1回の圧延工程の圧延率が65%以上であると共に、その圧延工程における圧延終了後の巻取温度が110〜150℃であることを特徴とする。
前記手順によれば、焼鈍工程前に圧延率30〜65%の冷間圧延工程を行うことでアルミニウム合金複合板(特に芯材)の焼鈍後の再結晶粒サイズを小さく制御でき、成形後の耳率を適正な範囲とすることができる。さらに、冷間圧延工程の後に加熱速度が100℃/min以上である焼鈍工程を行うことでアルミニウム合金複合板(特に芯材)の再結晶粒サイズを小さく制御でき、焼鈍時の冷却速度が100℃/min以上であるため固溶成分の固溶状態を保つことが可能となる。
また、加熱到達温度(保持温度)を400〜600℃とすることでアルミニウム合金複合板の結晶粒を十分な再結晶粒組織とすることができ、アルミニウム合金複合板表面のバーニングおよびふくれは生じない。
また、焼鈍工程後の冷間圧延が、3回以内の圧延工程を行い、総圧延率が65〜90%であって、少なくとも1回の圧延工程の圧延率が65%以上であると共に、その圧延工程における圧延終了後の巻取温度が110〜150℃であることで、適切な加工硬化によって十分なアルミニウム合金複合板の強度を得ることができ、また加工組織の過度な緻密化が抑制され、十分なアルミニウム合金複合板の伸びを得ることができる。
また、本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法は、前記第4工程における焼鈍が、100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程の後に、400〜600℃で10分間以内保持する工程を行い、その後100℃/min以上で冷却する工程を行うことを特徴とする。
前記手順によれば、前記第4工程が、保持温度で10分間以内保持する工程を行うことで、焼鈍工程における生産性が損なわれず、アルミニウム合金複合板表面のバーニングおよびふくれ等の品質異常も発生しない。
本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板によれば、薄肉化および高強度化したアルミニウム合金複合板であっても、曲げ加工時の欠陥発生を抑制し、耐食性の低下を生じることなく、高剛性な缶蓋とすることができる。
本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法によれば、優れた強度、曲げ加工性および耐食性を有する包装容器蓋用アルミニウム合金複合板を製造できる。
(a)本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の構成を示す断面図、(b)はアルミニウム合金複合板を包装容器蓋に成形する工程を示す図面である。 本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法を示す工程図である。 アルミニウム合金複合板の曲げ加工性の試験方法を示す図面である。
以下、本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板を実現するための形態について説明する。
図1(a)に示すように、包装容器蓋用アルミニウム合金複合板(以下、単にアルミニウム合金複合板と称する場合がある。)1は、アルミニウム合金中に含まれる組成成分を適正条件に制御したアルミニウム合金の芯材1aと、芯材1aに被覆された所定の純度を有するアルミニウム合金の皮材1bとを備え、クラッド率、0.2%耐力、伸びおよび平均再結晶粒幅が適性条件範囲になるように制御されたものである。なお、アルミニウム合金複合板1は、図1(a)では、芯材1aの片側に皮材1bを被覆した構成を示したが、芯材1aの両側に皮材1bを被覆した構成であってもよい。
〔合金成分について〕
芯材は、Feを0.1〜0.4質量%、Cuを0.2〜1.0質量%、Mnを0.5〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる第1組成を有する。また、皮材は、Alが99.5質量%以上で、残部が不可避的不純物からなる第2組成を有する。
以下、アルミニウム合金複合板に含まれる合金成分の前記範囲での限定理由について説明する。
<芯材>
(Fe:0.1〜0.4質量%)
Feは、芯材中で金属間化合物を形成する元素であり、金属間化合物が適度に分散することにより、再結晶粒サイズを小さく制御することができる。Feの含有量が0.1質量%未満の場合、芯材中に形成される金属間化合物が少なくなり、圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μmを超えてしまい、アルミニウム合金複合板の缶蓋成形時の曲げ加工性が低下する。その結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。また、0°耳が高くなり、巻締め寸法が安定しない。Feの含有量が0.4質量%を超える場合、芯材中に最大長20μmを超える巨大な金属間化合物が生じてしまい、成形性(曲げ加工性を含む)が低下し、またアルミニウム合金複合板の耐食性が低下する。また、45°耳が高くなり、巻締め寸法が安定しない。したがって、Feの含有量は0.1〜0.4質量%とする。
(Cu:0.2〜1.0質量%)
Cuは、芯材を電気化学的に貴とし、アルミニウム合金複合板の耐食性を向上させ、また材料強度を高める効果がある。さらに、Cuは、焼鈍工程(前記第4工程)において芯材中に固溶した状態となり、缶蓋へ成形する前の塗装焼付け工程において芯材中に析出し、析出強化に寄与する。Cuの含有量が0.2質量%未満の場合、前記析出強化が不十分で材料強度が不足し、またCuの含有量が1.0質量%を超える場合、材料強度が高くなり過ぎ成形性が低下する。その結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。したがって、Cuの含有量は0.2〜1.0質量%とする。
(Mn:0.5〜1.5質量%)
Mnは、芯材を電気化学的に貴とし、アルミニウム合金複合板の耐食性を向上させ、また材料強度を高める効果がある。さらに、Mnは芯材中で金属間化合物を形成する元素であり、金属間化合物が適度に分散することにより、再結晶粒サイズを小さく制御することができる。Mnの含有量が0.5質量%未満の場合、前記効果が得られず、1.5質量%を超える場合、最大長20μmを超える巨大な金属間化合物を形成し、成形性が低下する。その結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。また、45°耳が高くなり、巻締め寸法が安定しない。したがって、Mnの含有量は0.5〜1.5質量%とする。
(不可避的不純物)
前記以外に、芯材に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物として、例えば、Siを0.2質量%以下、Znを0.2質量%以下、Zrを0.1質量%以下の含有であれば、本発明に係るアルミニウム合金複合板の特性に影響しない。
また、芯材の第1組成は、前記成分にMgおよびCrの少なくとも一方をさらに含有したものであってもよい。
(Mg:1.5質量%以下)
Mgは、芯材の材料強度を高める効果がある。Mgの含有量が1.5質量%を超える場合、材料強度が高くなりすぎ、加工硬化が大きく、成形性が低下する。その結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。また、45°耳が高くなり、巻締め寸法が安定しない。したがって、Mgの含有量は1.5質量%以下とする。
(Cr:0.4質量%以下)
Crは、芯材を電気化学的に貴とし、アルミニウム合金複合板の耐食性を向上させると共に、材料強度を高める効果がある。Crの含有量が0.4質量%を超える場合、前記効果が飽和し無駄となる。さらに、Crを多量に含有すると芯材中に巨大な金属間化合物が形成され、伸びが低下し、成形性において好ましくない。その結果、耐食性にも悪影響を及ぼす。また、45°耳が高くなり、巻締め寸法が安定しない。したがって、Crの含有量は0.4質量%以下とする。
さらに、芯材の第1組成は、前記成分にTiおよびBをさらに含有したものであってもよい。通常、TiおよびBを添加する場合には、Ti:B=5:1あるいは5:0.2の割合とした鋳塊組織微細化材を、ワッフルあるいはロッドの形態で溶湯に添加する。鋳塊のサイズ、形状によっては鋳造が難しく、鋳塊割れ発生の懸念がある場合、それを回避するためにこの鋳塊組織微細化材を添加することは可能であり、鋳塊中に最終的にTiが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下の範囲となるよう鋳塊組織微細化材を添加することは、本発明に係るアルミニウム合金複合板の特性に影響せず、許容される。
<皮材>
(Alが99.5質量%以上で、残部が不可避的不純物)
皮材は、芯材に対して電気化学的に卑となり、犠牲陽極効果を発揮する。Alが99.5質量%未満では、クラッドされたアルミニウム合金複合板としての耐食性が低下する。したがって、Alを99.5質量%以上とする。また、不可避的不純物としては、前記芯材と同様であるが、不可避的不純物の合計含有量を0.50質量%未満としなければならない。
〔クラッド率、0.2%耐力、伸び、平均再結晶粒幅について〕
アルミニウム合金複合板は、クラッド率が5〜20%であって、前記アルミニウム合金複合板を200℃×20分間の熱処理後圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力が200〜290MPa、伸びが5%以上であって、前記アルミニウム合金複合板における芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μm以下である。
以下、アルミニウム合金複合板のクラッド率、0.2%耐力、伸び、平均再結晶粒幅の前記範囲での限定理由について説明する。
(クラッド率:5〜20%)
クラッド率は、(皮材の厚さ)/(皮材の厚さ+芯材の厚さ)×100%で表される。クラッド率が5%未満の場合、皮材の消耗が速くなり犠牲陽極効果が不十分となる。また、クラッド率が20%を超える場合、アルミニウム合金複合板としての強度が不足する。したがって、クラッド率は5〜20%とする。なお、前記範囲のクラッド率は、後記する製造方法における第2工程のクラッド率および第3および第5工程の圧延率を制御することによって達成される。
(200℃×20分間の熱処理後圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力が200〜290MPa、伸びが5%以上)
缶蓋の薄肉軽量化のために、材料を高強度化し、且つ高剛性形状やセーフティーエンド形状に成形する際、従来以上の材料強度を備えると同時に従来以上の伸びが必要となる。
アルミニウム合金複合板に、塗装焼付け工程を想定した200℃×20分間の熱処理を施した後、圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力が200MPa未満の場合、薄肉化に対応するためには強度が不足し、290MPaを超える場合は、高剛性形状やセーフティーエンド形状に成形すると曲げ部にクラック等の成形異常が発生する。
また、アルミニウム合金複合板に、塗装焼付け工程を想定した200℃×20分間の熱処理を施した後、圧延方向に引張試験したときの伸びが5%未満の場合、高剛性形状やセーフティーエンド形状に成形すると曲げ部にクラック等の成形異常が発生する。
したがって、200℃×20分間の熱処理後圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力を200〜290MPa、伸びを5%以上とする。なお、前記範囲の0.2%耐力および伸びは、後記する製造方法における芯材の化学成分、焼鈍条件(第4工程)および圧延条件(第5工程)を制御することによって達成される。
(芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μm以下)
アルミニウム合金複合板としての成形性は、殆ど芯材により決定される。芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μmを超える場合、高剛性形状やセーフティーエンド形状等の厳しい曲げ加工を含む形状に成形すると、曲げ部外側方面にクラックや肌荒れが発生する。したがって、芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅を50μm以下とする。なお、前記範囲の平均再結晶粒幅は、後記する製造方法における芯材の化学成分、圧延条件(第3工程)および焼鈍条件(第4工程)を制御することによって達成される。
次に、本発明に係る包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法について説明する。
図2に示すように、アルミニウム合金複合板の製造方法は、芯材と皮材とを作製する第1工程S1と、クラッドされたアルミニウム合金圧延板を作製する第2工程S2と、アルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第3工程S3と、冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板を焼鈍する第4工程S4と、焼鈍されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第5工程S5とを含む。
以下、本発明に係るアルミニウム合金複合板の製造方法について、各工程、および製造条件範囲の限定理由を説明する。
(第1工程:S1)
第1工程S1において、芯材は、常法により前記第1組成のアルミニウム合金を溶解・鋳造後、510〜610℃×1時間以上、好ましくは590℃前後の温度で4時間以上の均質化熱処理を施し、面削を行うことで、所定厚(例えば、380〜580mm)を有する鋳塊として作製する。また、第1工程S1において、皮材は、常法により第2組成のアルミニウム合金を溶解・鋳造後、510〜610℃×1時間以上、好ましくは540℃前後の温度で4時間以上の均質化熱処理を施し、熱間圧延にて所定のクラッド率となるように厚みを調整した圧延板として作製する。また、芯材と皮材の作製方法は、後記第2工程で所定のクラッドが得られれば、前記方法に限定されない。
(第2工程:S2)
第2工程S2では、前記芯材に前記皮材を積層し、これらを例えば鉄バンドで締結した後、熱間圧延開始温度(例えば、450〜550℃)へ昇温し、同温度にて所定のクラッド率となるように熱間圧延を行うことにより、前記芯材に前記皮材がクラッドされたアルミニウム合金圧延板を作製する。また、熱間圧延前に510〜610℃×1時間以上で均質化熱処理を施してもよい。
(第3工程:S3)
第3工程S3では、前記アルミニウム合金圧延板を圧延率30〜65%の範囲で冷間圧延する。圧延率が30%未満の場合、後記第4工程S4の焼鈍で微細な再結晶組織が得られず平均再結晶粒幅が大きくなり、後記第5工程S5終了後のアルミニウム合金複合板を缶蓋へ成形する際の曲げ加工性が低下する。その結果、耐食性も低下する。圧延率が65%を超える場合、アルミニウム合金複合板の耳率の絶対値が高くなり過ぎ、缶蓋成形後、缶胴と巻締めた際に巻締め寸法が安定しない。したがって、第3工程の冷間圧延は圧延率30〜65%とする。
(第4工程:S4)
第4工程S4は、前記第3工程S3で冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板を焼鈍する工程で、加熱速度:100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程と、引続き、冷却速度:100℃/min以上で冷却する工程とを行う。
加熱速度が100℃/min未満では、平均再結晶粒幅が大きくなり、アルミニウム合金複合板の曲げ加工性が低下する。その結果、耐食性も低下する。さらに、冷却速度が100℃/min未満では、固溶成分の固溶状態を保つことができず、アルミニウム合金複合板の強度が低下し、缶蓋の剛性が低下する。その結果、耐食性も低下する。また、到達温度が400℃未満では、十分な再結晶組織を得られず、アルミニウム合金複合板の曲げ加工性およびその他の成形性が低下する。その結果、耐食性も低下する。到達温度が600℃を超えるとアルミニウム合金複合板表面のバーニング、ふくれの発生等、品質異常を引き起こす。
(第5工程:S5)
第5工程S5は、前記第4工程S4で焼鈍されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する工程であり、3回以内の圧延工程を行い、総圧延率が65〜90%であって、少なくとも1回の圧延工程の圧延率が65%以上であると共に、その圧延工程における圧延終了後の巻取温度が110〜150℃である。
総圧延率が65%未満の場合、アルミニウム合金複合板の強度が低下し、缶蓋の剛性が低下する。総圧延率が90%を超える場合、アルミニウム合金複合板としての強度が高くなり過ぎ、アルミニウム合金複合板の曲げ加工性およびその他の成形性が低下する。その結果、耐食性も低下する。
第5工程S5中の全ての冷間圧延工程が圧延率65%未満の場合、薄肉化されたアルミニウム合金複合板を得るための冷間圧延回数が3回を超え、アルミニウム合金複合板が過剰に加工硬化して強度が高くなり過ぎ、伸びが低下し、曲げ加工性およびその他成形性が低下する。その結果、耐食性も低下する。なお、アルミニウム合金複合板の強度と伸びのバランスを考慮すると、第5工程の冷間圧延回数は2回以内とすることが好ましい。
第5工程S5中の少なくとも1回の冷間圧延が圧延率65%以上で行われた場合においても、圧延終了後の巻取温度が110℃未満になると、アルミニウム合金圧延板の回復量が少な過ぎて、次の冷間圧延時または缶蓋成形時の必要荷重が増大し、曲げ加工性が低下する。その結果、耐食性も低下する。また、最終冷間圧延パスにおいて、圧延終了後の巻取温度が150℃を超えると、アルミニウム合金複合板の強度が低下し、缶蓋の剛性が低下する。また、最終冷間圧延パスでなく、それより前の冷間圧延パスにおいて、圧延終了後の巻取温度が150℃を超えると、次の冷間圧延時に過剰な加工硬化が起こり、強度が高くなり過ぎると共に伸びが低下し、曲げ加工性およびその他成形性が低下する。
また、本発明に係るアルミニウム合金複合板の製造方法は、前記第4工程S4における焼鈍が、加熱速度:100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程の後に、保持温度:400〜600℃で10分間以内保持する工程を行い、その後、冷却速度:100℃/min以上で冷却する工程を行ってもよい。
ここで、加熱速度、保持温度(到達温度)および冷却速度については、前記したとおりである。保持温度での保持時間が10分間を超えると、曲げ加工性および耐食性が低下する。また、連続焼鈍ラインで生産する場合に焼鈍炉内におけるライン速度を遅くする必要があり、連続焼鈍ラインの通板速度が低く、生産性が劣る。同時に、アルミニウム合金複合板表面のバーニング、ふくれの発生等、品質異常をも引き起こす。また、前記保持温度が本発明の上限値(600℃)を超える保持温度で保持時間も長くなると、芯材が溶けてしまうので、連続焼鈍ラインにおいては、正常な板を巻き取ることもできなくなる。
次に、本発明に係るアルミニウム合金複合板を包装容器蓋(缶蓋)に成形する工程を、図1(b)を用いて説明する。
〔缶蓋の製造〕
先ず、前処理として、前記製造方法で作製されたアルミニウム合金複合板に、耐食性を確保するためのクロメート処理等の化成処理を施した後、前記化成処理を施したアルミニウム合金複合板表面に、数回の塗装および焼付けを行う。次に、塗装、焼付けされたアルミニウム合金複合板を、ブランキング工程により、所定の形状に切断したアルミニウム合金複合板を得る。次に、前記ブランキング工程で得られた所定形状のアルミニウム合金複合板1に、シェル成形工程でのフォーム工程、及びリフォーム工程により、絞り加工を施し包装容器蓋の形状に成形する。次に、前記シェル成形工程で絞り加工を施したアルミニウム合金複合板1に、カーリング成形工程により、缶胴と巻締めするための巻締め部2(カール部)を成形し、缶蓋4を得る。なお、リフォーム工程の際、例えば、カウンターシンク部3に成形される部分については、高剛性形状蓋とする場合、曲げ半径を小さく成形することが多く、厳しい曲げ加工を受ける。
そして、作製された缶蓋4には、巻締め部2にラバーを注入するコンパウンドライニングが施される。その後、缶蓋4には、バブル成形およびボタン成形を施すリベット成形工程、開口部の溝およびスコア加工を施すスコア成形加工、凹凸および文字等の加工を施すビード・エンボス成形工程、およびタブ付けを施すステイク成形工程を含めたコンバージョン成形が施される。また、図示しないが、最終段階の包装容器(食缶)の製造の際には、内容物を充填した缶胴に前記成形加工が施された缶蓋が巻締められ、その後、洗浄および殺菌される。
次に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例:No.1〜11)
表1に示す化学成分を有するアルミニウム合金を溶解・鋳造し、590℃×4時間均質化熱処理後、面削し、鋳塊を作製し、芯材とした。また、表1に示すAl純度のアルミニウム合金を溶解・鋳造し、540℃×4時間均質化熱処理後、熱間粗圧延して、圧延板を作製し、皮材とした。前記芯材と前記皮材を鉄バンドで締結して、積層し、510℃×1時間以上で均質化熱処理し、同温度にて熱間圧延(クラッド)を施してアルミニウム合金圧延板とした。このアルミニウム合金圧延板に、表1に示す圧延率で一次冷間圧延を施した後に、表1に示す焼鈍条件で中間焼鈍を施し、表1に示す圧延条件(圧延率、圧延終了後の巻取温度)で最終冷間圧延を施し、クラッド率10%、板厚0.25mmのアルミニウム合金複合板(No.1〜11)を作製した。
(比較例:No.12〜19)
これに対し、表2に示すように化学成分のいずれか1つが本発明の請求範囲外であるアルミニウム合金で芯材を作製し、その他は全て前記実施例(No.1〜11)と同一条件でアルミニウム合金複合板(No.12〜19)を作製した。
(比較例:No.20〜36)
また、表3に示すように製造条件もしくは皮材のAl純度を本発明の請求範囲外で作製し、その他は全て前記実施例(No.1〜11)と同一条件でアルミニウム合金複合板(No.20〜36)を作製した。
なお、芯材へのTi添加は、Ti:B=5:1の鋳塊組織微細化材を溶湯に添加することにより行った。したがって、Tiを含有する芯材は、必然的にBを含有することになる。
作製されたアルミニウム合金複合板No.1〜36について、それぞれ以下に示す項目の測定、評価を行った。その結果を表4、5に示す。
(0.2%耐力、伸び)
アルミニウム合金複合板について、塗装・焼付け工程を模擬した200℃×20分の熱処理を施した後、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号による引張試験片を作製した。その後、JIS−4000に準じて引張試験を行い、0.2%耐力と伸びを測定した。0.2%耐力の適性範囲は200〜290MPa、伸びの適正範囲は5%以上とする。
(平均再結晶粒幅)
アルミニウム合金複合板の皮材を研磨にて除去し、芯材表面を鏡面とした後、表面をエッチングし、倍率が100倍の光学顕微鏡により再結晶粒組織を観察、写真撮影した。この際、圧延方向に直角な方向に既知の長さの線分(例えば1mm)を引き、線分の長さを、線分により切断された再結晶粒の数で除することにより、再結晶粒1個当たりの再結晶粒幅を求めた。場所を変えて同様の測定を繰返し行い(5箇所)、その平均値を平均再結晶粒幅とした。平均再結晶粒幅の適性範囲は50μm以下とする。
(曲げ加工性)
アルミニウム合金複合板に塗装・焼付け工程を模擬した200℃×20分の熱処理を施した後、幅30mm×長さ200mmの曲げ試験片を、作製した。なお、圧延方向と平行方向の曲げ加工性(平行曲げ)用には圧延方向と試験片長手方向が平行となるように、また圧延方向と直角方向の曲げ加工性(直角曲げ)用には圧延方向と試験片長手方向が直角となるようにそれぞれ試験片を作製した。
図3に示すように、曲げ試験片1を載置したロール11、11の間に、厚さ0.25mm(先端半径が0.125mm)の曲げ治具10を挿入することによって、曲げ試験片1に、皮材が曲げ外側となるような180°曲げ加工を施した。そして、曲げ試験片1の曲げ部先端に割れやクラックが生じた場合は曲げ加工性が劣るとして「×:不合格」、肌荒れが生じた場合も曲げ加工性が劣るとして「△:不合格」、割れ、クラック、肌荒れのいずれも生じなかった場合は曲げ加工性が優れるとして「○:合格」と評価した。
(巻締め寸法の安定性)
アルミニウム合金複合板に塗装・焼付け工程を模擬した200℃×20分の熱処理を施した後、図1(b)に示すように、アルミニウム合金複合板1を、巻締め後の缶蓋4の最頂部間の外径Dが(2+6/16)インチ(約60.3mm、呼称「206径」)となるようにシェル成形した後、カーリング成形を行った。得られた缶蓋4について、カールハイトHを缶蓋4の全周にわたり測定し、最も高い部分と低い部分の寸法差を測定し、0.2mm以下の場合は巻締め寸法の安定性が高いとして「○:合格」、0.2mmを超える場合は巻締め寸法の安定性が低いとして「×:不合格」と評価した。
(耐食性)
アルミニウム合金複合板に塗装・焼付け工程を模擬した200℃×20分の熱処理を施した後、図1(b)に示すように、アルミニウム合金複合板1を、巻締め後の缶蓋4の最頂部間の外径Dが(2+6/16)インチ(約60.3mm、呼称「206径」)となるようにシェル成形した後、カーリング成形を行った。得られた缶蓋4を、図示しない4000ppmの食塩水を充填したスチール製の缶胴に巻締め、前記缶蓋4を下向きとして60℃で1ヶ月間保持した後の穴あき発生率を調査し(サンプル数n=10)、穴あき発生率が10%以下の場合は耐食性に優れるとして「○:合格」、10%を超えた場合は耐食性に劣るとして「×:不合格」と評価した。
なお、表2、3、5において、請求範囲を外れる数値等については下線を付した。
Figure 0005480647
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表1〜5の結果から、実施例(No.1〜11)は、本発明の要件を満たすため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても合格であった。
比較例(No.12)は、Feが下限値未満で金属間化合物が過少となり、平均再結晶粒幅が上限値を超えるため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.13)は、Feが上限値を超え金属間化合物が過多となるため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.14)は、Cuが下限値未満で焼付け時の析出強化不足となり、0.2%耐力が下限値未満の低強度アルミニウム合金複合板であった。比較例(No.15)は、Cuが上限値を超え焼付け時の析出強化過多となり、0.2%耐力が上限値を超え、伸びが下限値未満であるため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。
比較例(No.16)は、Mnが下限値未満で金属間化合物が過少となり、0.2%耐力が下限値未満、平均再結晶粒幅が上限値を超えるため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.17)は、Mnが上限値を超え金属間化合物が過多となり、伸びが下限値未満であるため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.18)は、Mgが上限値を超え強度、加工硬化が過大となり、0.2%耐力が上限値を超えるため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.19)は、Crが上限値を超え巨大な金属間化合物が発生し、伸びが下限値未満であるため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。
比較例(No.20)は、第4工程(中間焼鈍)における加熱速度が下限値未満で、再結晶速度が低く、平均再結晶粒幅が上限値を超える。また、中間焼鈍における冷却速度が下限値未満で、Cuの固溶が保てずに不適切に析出してしまい、0.2%耐力が下限値未満となる。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.21)は、中間焼鈍における到達温度が下限値未満で、再結晶および溶体化が不十分で加工組織が残存した状態となり、平均再結晶粒幅が測定できず、0.2%耐力および伸びも下限値未満となる。そのため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。
比較例(No.22、23)は、第3工程(一次冷間圧延)の前に焼鈍(粗鈍)を行う特許文献3に記載されたアルミニウム合金複合板であって、再結晶前の蓄積歪みが少なく、再結晶速度が低く、平均再結晶粒幅または0.2%耐力が上限値を超える。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。
比較例(No.24)は、第5工程(最終冷間圧延)における1パス目の圧延率および巻取温度が下限値未満で後パスの圧延率が大きくなり、加工硬化過大により0.2%耐力が上限値を超え、伸びも下限値未満となる。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.25)は、最終冷間圧延における巻取温度が下限値未満で回復不足で伸びが下限値未満となる。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.26)は、最終冷間圧延における圧延回数が上限値を超える4パスで、繰り返し加工で加工硬化過大となり、0.2%耐力が上限値を超え、伸びも下限値未満となる。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.27)は、最終冷間圧延における総圧延率が下限値未満で加工硬化不足となり、0.2%耐力が下限値未満の低強度アルミニウム合金複合板であり、一次冷間圧延の圧延率が上限値を超えるため、缶蓋成形の際のカールハイトの差が大きくなり、巻締め寸法の安定性が不合格であった。
比較例(No.28)は、皮材のAl純度が下限値未満であるため、耐食性が不合格であった。比較例(No.29、30)は、中間焼鈍における到達温度が下限未満、保持時間も上限値を超える長時間、最終冷間圧延における総圧延率も下限値未満で、再結晶速度が遅く巨大な再結晶粒が散在し平均再結晶粒幅が上限値を超える。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.31)は、一次冷間圧延の圧延率が上限値を超え、最終冷間圧延の巻取温度が下限値未満、総圧延率が下限値未満、伸びが下限値未満となる。そのため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.32)は、一次冷間圧延および最終冷間圧延における圧延率の設計では、第2工程(熱間圧延によるクラッド)での負荷が過大となり製造できなかった。また、比較例(No.29〜32)は、特許文献1に記載されたアルミニウム合金複合板である。
比較例(No.33)は、一次冷間圧延の圧延率が下限値未満で平均再結晶粒幅が上限値を超える。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.34)は、最終冷間圧延の巻取温度が上限値を超えるため、0.2%耐力が下限値未満の低強度アルミニウム合金複合板であった。比較例(No.35)は、最終冷間圧延の総圧延率が上限値を超え、0.2%耐力が上限値を超える。そのため、曲げ加工性、巻締め寸法の安定性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。比較例(No.36)は、中間焼鈍における焼鈍時間が長いため、巨大な再結晶粒が散在し平均再結晶粒幅が上限値を超える。そのため、曲げ加工性および耐食性のいずれにおいても不合格であった。
1 アルミニウム合金複合板(曲げ試験片)
1a 芯材
1b 皮材
2 巻締め部
3 カウンターシンク部
4 缶蓋
10 曲げ治具
11 ロール
D 外径
H カールハイト

Claims (4)

  1. Fe:0.1〜0.4質量%、Cu:0.2〜1.0質量%、Mn:0.5〜1.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる第1組成を有する芯材と、前記芯材に被覆されたAlが99.5質量%以上で、残部が不可避的不純物からなる第2組成を有する皮材とを備えるアルミニウム合金複合板であって、
    前記アルミニウム合金複合板のクラッド率が5〜20%、
    前記アルミニウム合金複合板を200℃×20分間の熱処理後圧延方向に引張試験したときの0.2%耐力が200〜290MPa、伸びが5%以上、
    前記アルミニウム合金複合板における芯材の圧延方向に直角方向の平均再結晶粒幅が50μm以下であることを特徴とする包装容器蓋用アルミニウム合金複合板。
  2. 前記芯材の第1組成が、さらにMg:1.5質量%以下およびCr:0.4質量%以下の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1に記載の包装容器蓋用アルミニウム合金複合板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法であって、
    前記第1組成のアルミニウム合金からなる芯材と、前記第2組成のアルミニウム合金からなる皮材とを作製する第1工程と、
    前記第1工程で作製された芯材に皮材を積層し、熱間圧延により、前記芯材に前記皮材がクラッドされたアルミニウム合金圧延板を作製する第2工程と、
    前記第2工程で作製されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第3工程と、
    前記第3工程で冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板を焼鈍する第4工程と、
    前記第4工程で焼鈍されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延する第5工程とを含み、
    前記第3工程における冷間圧延の圧延率が30〜65%であって、
    前記第4工程における焼鈍が、100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程と、引続き100℃/min以上で冷却する工程とを行い、
    前記第5工程における冷間圧延が、3回以内の圧延工程を行い、総圧延率が65〜90%であって、少なくとも1回の圧延工程の圧延率が65%以上であると共に、その圧延工程における圧延終了後の巻取温度が110〜150℃であることを特徴とする包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法。
  4. 前記第4工程における焼鈍が、100℃/min以上で400〜600℃まで加熱する工程の後に、400〜600℃で10分間以内保持する工程を行い、その後100℃/min以上で冷却する工程を行うことを特徴とする請求項3に記載の包装容器蓋用アルミニウム合金複合板の製造方法。
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