JP7138396B2 - 缶胴体用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本開示の一局面は、フランジ長さのバラツキを低減できるアルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本開示の別の態様は、0.05~0.60質量%のSiと、0.05~0.80質量%のFeと、0.05~0.25質量%のCuと、0.80~1.50質量%のMnと、0.80~1.50質量%のMgと、Alと、不可避的不純物と、を含有するアルミニウム合金の鋳塊を均質化処理し、リバーシングミルを用いた熱間粗圧延を、終了温度が400~500℃であり、ラストパス圧下率が5~40%であり、ラストパスのひずみ速度が5~30s-1である条件で行い、タンデム式熱間圧延機を用いた熱間仕上げ圧延を行い、圧下率が80~90%の条件で冷間圧延を行うアルミニウム合金板の製造方法である。
1.アルミニウム合金板
(1)アルミニウム合金板の合金成分
アルミニウム合金板は、0.05~0.60質量%のSiと、0.05~0.80質量%のFeと、0.05~0.25質量%のCuと、0.80~1.50質量%のMnと、0.80~1.50質量%のMgと、Alと、不可避的不純物と、を含有する。
Siの含有量が0.05質量%以上である場合、上記のビルドアップを抑制する効果が一層高い。また、Siの含有量が0.05質量%以上であることにより、アルミニウム地金の純度を過度に高める必要がなく、コストダウンを実現できる。
Alはアルミニウム合金板の主成分である。Alは、例えば、アルミニウム合金板において、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、及び不可避的不純物以外の残部である。
耳率として、一次絞りカップの45°耳率と、一次絞りカップの0-180°耳率とがある。これらの耳率は、アルミニウム合金板をDI成形及びネック成形して成る缶胴におけるフランジ幅のバラツキ(以下では単にフランジ幅のバラツキということもある)に影響する。
(1)製造方法の概略
本開示のアルミニウム合金板の製造方法では、アルミニウム合金の鋳塊を均質化処理し、リバーシングミルを用いた熱間粗圧延を行い、タンデム式熱間圧延機を用いた熱間仕上げ圧延を行い、冷間圧延を行う。
アルミニウム合金の鋳塊は、例えば、DC鋳造法(半連続鋳造法)により製造できる。アルミニウム合金の鋳塊は、0.05~0.60質量%のSiと、0.05~0.80質量%のFeと、0.05~0.25質量%のCuと、0.80~1.50質量%のMnと、0.80~1.50質量%のMgと、Alと、不可避的不純物と、を含有する。この鋳塊の組成は、例えば、上述したアルミニウム合金板の組成と同様である。
均質化処理は、例えば、580~610℃の温度で2~48時間行うことが好ましい。温度が580℃以上であり、時間が2時間以上である場合、均質化を十分行うことができる。その結果、熱間圧延終了後における再結晶の進行が阻害されにくく、冷延板の45°耳が高くなり過ぎることを抑制できる。
熱間粗圧延の終了温度は、例えば、400~550℃であることが好ましい。400℃以上である場合、熱間仕上げ圧延に持ち込まれる圧延集合組織の量が抑制され、熱間圧延板の0-90°耳が抑制される。550℃以下である場合、熱間圧延板の表面が酸化して表面品質が劣化してしまうことを抑制できる。その結果、缶側壁にフローマークが生じることを抑制できる。また、550℃以下である場合、熱間仕上げ圧延に持ち込まれる圧延集合組織が多くなる。
熱間粗圧延におけるラストパスのひずみ速度は、5.0~30s-1であることが好ましい。5.0s-1以上である場合、圧延終了時の再結晶が適度に制御され、望ましい圧延集合組織が熱間仕上げ圧延に持ち込まれ、熱間圧延板の0-90°耳が過度に高くなることが抑制される。また、5.0s-1以上である場合、圧延時間を抑制することができ、アルミニウム合金板の生産性が向上する。
熱間仕上げ圧延は、アルミニウム合金板を所定寸法に仕上げる。熱間仕上げ圧延終了後の組織は、その自己焼鈍により再結晶組織となる。
冷間圧延は、缶胴体として必要な強度を付与する。冷間圧延における圧下率は、80~90%であることが好ましい。80%以上である場合、アルミニウム合金板の強度が一層向上する。アルミニウム合金板の強度が一層向上すれば、DI成形において十分な耐圧強度を得ることができる。
本開示のアルミニウム合金板の製造方法により製造したアルミニウム合金板は、例えば、以下の特性を有する。
(b)アルミニウム合金板における一次絞りカップの0-180°耳率から前記45°耳率を差し引いた値が、-1.0%以上、2.0%以下である。
本開示のアルミニウム合金板は、例えば、DI成形缶胴体用アルミニウム合金板とすることができる。また、本開示のアルミニウム合金板は、他の用途に用いてもよい。
以下に本開示を実施例により詳細に説明する。なお、本開示は、この実施例に限定されるものではない。
表1に示す合金成分を常法により溶解鋳造して厚さ500mmの合金(板状鋳塊)A~Dを得た。次に、この合金A~Dを470mmの厚さに面削した。
均質化処理、熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延、及び冷間圧延の条件(以下では製造条件とする)を表2に示す。製造条件として、a~jがある。いずれの製造条件でも、以下の事項は共通である。熱間粗圧延は、ワークロール直径930mmのシングルリバースミルを用いて行った。熱間仕上げ圧延は、4スタンドのタンデム圧延機を用いて行った。冷間圧延は、常法により行った。
合金の種類と、製造条件との組み合わせを表3に示す。合金の種類と、製造条件との組み合わせを、以下では製造方法とする。製造方法には、No.1~24がある。
(2)アルミ合金板の評価
製造された冷間圧延板について、耳率、ネック高さバラツキ、しごき成形性、耐圧強度、及び表面性状を評価した。評価方法と評価基準は以下のとおりである。
ブランク径57mmの試料をエリクセン試験機で深絞り加工した。ポンチの直径は33mmであり、ポンチの肩のRは2.5mmである。しわ押さえ力は300kgfとした。圧延方向に対し22.5°おきにカップの高さを測定した。
45°耳率(%)=(45°位置高さ平均―平均高さ)/平均高さ×100
0-180°耳率(%)=(0°位置・180°位置高さ平均―平均高さ)/平均高さ×100
なお、「45°位置高さ」は、エリクセンカップ耳のうち、圧延方向から45°の角度をなす位置に現れるカップ耳高さを意味する。「45°位置高さ平均」は、1つのカップに4つ現れる「45°位置高さ」の平均値を意味する。「平均高さ」は、エリクセンカップの高さを、圧延方向から22.5°刻みで測定することで得られる16点のカップ高さの平均値を意味する。「0°位置・180°位置高さ平均」は、圧延方向から0°及び180°の角度をなす位置に現れる2つのカップ耳高さの平均値を意味する。
ブランク径140mmの円板を、缶胴内径66mmとなるようにDI成形した。次に、開口部の耳をトリミングした。次に、ネック内径が57mmとなるネック成形を行った。ネック成形後の缶高さを22.5°おきに測定した。なお、上記のブランク径、缶胴内径、及びネック内径は、日本国内で汎用的に用いられている缶胴の形状に基づいて決定した。0°、22.5°、45°、67.5°、90°位置高さの平均のうち、最大値と最小値の差をネック高さバラツキとした。ネック高さバラツキは、フランジ幅バラツキの指標である。ネック高さバラツキは、0.080mm以下であることが好ましい。
ブランク径140mmの円板を、内径66mmとなるようにDI成形した。このとき、缶底から缶開口部に近づくにつれて外径が太くなるようなパンチを使用し、強制的に缶切れを起こさせる過酷しごき成形試験を行った。10缶の試験での缶切れ時の缶側壁板厚の平均値から、次式に基づき限界しごき率を計算した。限界しごき率は、しごき成形性の指標である。
限界しごき率が46%以上のものを○とした。また、限界しごき率が46%未満、または、DI成形時にカッピング割れや缶底割れが発生して缶成形ができなかったものを×とした。
DI成形した缶に、200℃×20minのベークを施した。次に、エアー式の耐圧試験機にてドーム成形した缶材のボトムがバックリングする圧力を測定した。圧力が6.0kgf/cm2以上のものを○とし、6.0kgf/cm2未満のものを×とした。
目視にてフローマークの強さを判定し、欠陥が視認されないものを○とし、欠陥が容易に視認されるものを×と評価した。
No. 1~10では、耳率、ネック高さバラツキ、しごき成形性、耐圧強度、及び表面性状の全てが良好であった。No. 1~10で製造したアルミニウム合金板は、適切な集合組織を有していた。
No. 13では、Cu量が過少のため、強度が低く、耐圧強度が悪化した。
No. 15では、Mn量が過小のため、強度が不足し、耐圧強度が悪化した。
No. 17では、Mg量が過小のため、強度が不足し、耐圧強度が悪化した。
No. 19では、熱間粗圧延の終了温度が低くなりすぎ、多量の圧延集合組織が残存したまま仕上げ圧延が行なわれた結果、Cube方位密度が非常に高くなり、最終板の0-180°耳が高すぎて、しごき加工時のティアオフが多発した。
No. 24では、冷間圧延における総圧下率が高すぎて強度が高く、しごき成形性が悪化した。また、最終板の45°耳率が高くネック高さバラツキが大きかった。
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
Claims (4)
- 0.05~0.60質量%のSiと、0.05~0.80質量%のFeと、0.05~0.25質量%のCuと、0.80~1.50質量%のMnと、0.80~1.50質量%のMgと、Alと、不可避的不純物と、から成る缶胴体用アルミニウム合金板であって、
前記缶胴体用アルミニウム合金板における一次絞りカップの45°耳率が2.0%以下であり、
前記缶胴体用アルミニウム合金板における一次絞りカップの0-180°耳率から前記45°耳率を差し引いた値が、-1.0%以上0.3%以下、又は、0.7%以上2.0%以下である缶胴体用アルミニウム合金板。 - 0.05~0.60質量%のSiと、0.05~0.80質量%のFeと、0.05~0.25質量%のCuと、0.80~1.50質量%のMnと、0.80~1.50質量%のMgと、Alと、不可避的不純物と、から成るアルミニウム合金の鋳塊を均質化処理し、
リバーシングミルを用いた熱間粗圧延を、終了温度が400~550℃であり、ラストパス圧下率が5.0~40%であり、ラストパスのひずみ速度が5.0~30s-1である条件で行い、
タンデム式熱間圧延機を用いた熱間仕上げ圧延を行い、
圧下率が80~90%の条件で冷間圧延を行い、
製造した缶胴体用アルミニウム合金板における一次絞りカップの45°耳率が2.0%以下であり、
前記製造した缶胴体用アルミニウム合金板における一次絞りカップの0-180°耳率から前記45°耳率を差し引いた値が、-1.0%以上、2.0%以下である、
缶胴体用 アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項2に記載の缶胴体用アルミニウム合金板の製造方法であって、
前記均質化処理を、580~610℃の温度で2~48時間行う缶胴体用アルミニウム合金板の製造方法。 - 請求項2又は3に記載の缶胴体用アルミニウム合金板の製造方法であって、
前記熱間仕上げ圧延における終了温度が300~400℃であり、
前記熱間仕上げ圧延における総圧下率が80~95%である缶胴体用アルミニウム合金板の製造方法。
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