JP5491937B2 - 缶胴用Al合金板およびその製造方法 - Google Patents
缶胴用Al合金板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5491937B2 JP5491937B2 JP2010084666A JP2010084666A JP5491937B2 JP 5491937 B2 JP5491937 B2 JP 5491937B2 JP 2010084666 A JP2010084666 A JP 2010084666A JP 2010084666 A JP2010084666 A JP 2010084666A JP 5491937 B2 JP5491937 B2 JP 5491937B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- rolling
- mass
- alloy plate
- cup
- cold
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Metal Rolling (AREA)
Description
例えば、特許文献1には、金属板をポンチとダイスとの間でカップに絞り成形する際に、カップの底部と側壁部との接続部を、その垂直方向断面において、金属板の圧延方向に直角な部分の少なくとも一部が金属板の圧延方向に位置する部分に比して径方向内側に位置するように絞り成形する方法が記載されている。かかる技術によれば、金属板の物性の異方性により生じる偏平化変形を防止して、ポンチおよびダイスの形状にほぼ正確に対応する形状のカップを製造することができると記載されている。
例えば、特許文献2には、加工用アルミニウム圧延板および加工用アルミニウム合金圧延板の表面に均一な凹部を有するようにする旨が記載されている。なお、当該凹部について具体的には、平面視で○形状(丸形状)、□形状(四角形状)、△形状(三角形状)あるいは多角形とし、凹部の径が20〜600μm、凹部ピッチ10〜1000μm、凹部深さが1〜20μmとする旨が記載されている。かかる技術によれば、従来プレス加工性の劣っていた加工用アルミニウム圧延板および加工用アルミニウム合金圧延板などに良好なプレス加工性を有するようにすることができると記載されている。
なお、当該特定方向とは鋼板材料の特性(r値、El値など)の大きいあるいは小さい方向をさらにプレス成形する形状と、プレス成形に用いるブランキング形状(ブランクの形状)との関係から、そのフランジ長さが大きい方向を意味する旨が記載されており、また、特定方向は鋼板製造時に形成される内的特性に由来するものであり、例えば鋼板の圧延方向L、これに直角をなすC方向、LおよびCに45°をなすD方向のいずれかの方向から選択することもできる旨が記載されている。
さらに、この特許文献3には、凹部の最近接間隔方向をこの特定方向に一致させることによって、金型と鋼板間の摺動抵抗が小さくなる(すなわち、摩擦係数が小さくなる)ため、成形加工時に材料が流れ込み易くなると記載されており、また、成形加工時に材料が流れ込み易くなるため成形範囲の拡大を図ることができると記載されている。
例えば、特許文献4には、必須元素として、Mn:1.0〜1.7%、Mg:0.8〜1.2%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Si:0.1〜0.3%を含有し、残部Al及び不純物よりなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、600〜620℃で4〜48時間の均質化処理後、500〜550℃まで炉冷した後、直ちに熱間粗圧延を施し、出側温度450〜500℃となる熱間粗圧延アルミニウム合金板とし、熱間粗圧延開始から熱間仕上圧延開始までの時間が300〜1200秒となるように熱間仕上圧延を施し、コイル状に巻き取った後のコイル温度が310〜340℃とし、その後中間熱処理をすることなく圧延率85%以下の冷間圧延を施す缶胴用アルミニウム合金板の製造方法が記載されている。そして、この特許文献4には、このようにして製造された缶胴用アルミニウム合金板は、そのアルミニウム合金板中に固溶するMn量が0.15〜0.25%であり、且つそのアルミニウム合金板を総絞り率40〜60%にて円筒状深絞り容器にし、引き続き、容器の側壁部を総しごき率66%にて塑性変形した円筒状缶容器を、雰囲気温度200℃の大気炉中に20分曝した際に、その缶容器の側壁部強度の軟化量が40〜60MPaとなるためDI成形後の缶真円度に優れている旨が記載されている。
特許文献1に記載の技術は、圧延方向と圧延直角方向で、カップのコーナRの大きさが異なり、コーナ部分のメタル量が周方向で不均一となる。したがって、缶底の脚部(チャイム部とも言う)を成形する際にシワが発生し易くなるという問題や、DI成形後の耳の高さがばらつき、歩留まりが低下するという問題がある。
そのため、特許文献3に記載の技術はカップ成形における楕円化の抑制効果を確実に得ることが期待できないという問題がある。
耳率(%)=[{(h45+h135+h225+h315)−(h0+h90+h180+h270)}/{1/2(h45+h135+h225+h315+h0+h90+h180+h270)}]×100・・・(式1)
(ただし、前記(式1)中、hは、絞りカップの高さを表し、hの0〜315の添数字はAl合金板の圧延方向に対する角度(°)を示す。)
このような化学組成とすれば、成分および含有量が適切であるので、DI成形時における耳の発生を抑制することができ、また、しごき加工性および缶強度が良好となるので、缶胴用のAl合金板として好適に使用することができる。
また、冷間圧延工程のトータル冷間圧延率を特定の範囲とすることでAl合金板の強度を十分に高めることができ、缶胴を製造したときに缶胴として必要とされる缶強度を維持することが可能となるとともに、DI成形時における耳の発生を抑制することが可能となる。そのため、所定の缶寸法を得易くなり、優れた加工性を得ることができる。
冷間圧延工程における最終パスの冷間圧延率をこのような特定の圧延率で行うことで冷間圧延板へのロール表面の転写再現性をよくすることができる。
まず、図1を参照して本発明に係る缶胴用Al合金板について説明する。
本発明に係る缶胴用Al合金板1は、放電ダル加工されたワークロールを用いて圧延された圧延板であり、図1に示すように、アルミニウム飲料缶の缶胴4を製造するために用いられる缶胴用Al合金板である。
この缶胴用Al合金板1は、圧延方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm0とし、圧延直角方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm90としたときに、RSm0/RSm90が3.6以下であり、かつ、圧延方向における算術平均粗さRa0および圧延直角方向における算術平均粗さRa90がともに0.15〜0.65μmとなっている。
圧延方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm0とし、圧延直角方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm90としたときのRSm0とRSm90の比(RSm0/RSm90)が大きくなり過ぎた場合、圧延方向において成形時に潤滑剤が保持される窪みの間隔が大きくなり、油膜切れが発生し易くなる。
油膜切れが発生するとその方向における摩擦が大きくなるため、楕円化を抑制することができず、楕円量が大きくなってしまう。つまり、圧延方向および圧延直角方向における油膜切れのし易さの低減(すなわち、摩擦の異方性の低減)が重要である。
したがって、RSm0とRSm90はその差が小さいほど好ましく、RSm0/RSm90を3.6以下、好ましくは2.5以下1.15以上とする。
RSm0/RSm90は、後記するように冷間圧延工程S4における最終パスで用いるワークロールの表面が転写されることで形成されるため、当該ワークロールの表面形態および圧延率を特定の形態とすることにより制御することができる。
前記したように、油膜切れにより摩擦が大きくなり、楕円化に繋がるため、圧延方向および圧延直角方向における油膜切れのし易さの低減を図ることは重要である。そのため、油膜切れがおこり難い窪みを形成するのが好ましく、これを実効あるものとするため、圧延方向における算術平均粗さRa0および圧延直角方向における算術平均粗さRa90がともに0.15μm以上とする必要がある。圧延方向における算術平均粗さRa0および圧延直角方向における算術平均粗さRa90がともに0.15μm未満であると、窪みが小さ過ぎるため油膜切れがおこり易くなる。
よって、圧延方向における算術平均粗さRa0および圧延直角方向における算術平均粗さRa90はともに0.65μm以下とする。
本発明に係る缶胴用Al合金板1のAl合金としては、前記したようにJISH4000に規定する3000系Al合金、具体的には、3104合金または3004合金とするのが好ましい。
より具体的には、Al合金の化学組成は、Mn:0.5〜1.5質量%、Mg:0.5〜2.5質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Cu:0.1〜0.6質量%であり、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるのが好ましい。
以下、Al合金の化学組成について説明する。
Mnは強度の向上に寄与し、さらには成形性(しごき加工性)の向上にも寄与する有効な元素である。特に、本発明のようなツーピースボトル缶用素材(冷間圧延板)では、前記したDI成形時のしごき加工や、ネック加工、ネジ切り加工などが行われるため、Mnは極めて重要となる。
より詳細には、MnはAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)などの種々のMn系金属間化合物を形成する。そして前記α相が適正に分布しているほど、前記各加工時の成形性や加工性を向上することができる。また、Al合金板のしごき加工においては、通常エマルジョンタイプの潤滑剤が用いられているが、前記α相の量が少ないと、エマルジョンタイプの潤滑剤を使用しても潤滑性が不足し、ゴーリングと称される擦り疵や焼付きなどの外観不良が発生する虞がある。従ってα相を生成し、しごき加工時の表面疵を防止するためにも、Mnは不可欠な元素である。
一方、Mnの含有量が多過ぎると、熱間圧延終了後の再結晶が不十分となる。そのため、アルミニウム飲料缶のカップ成形時にカップ3の圧延方向の耳が高くなり過ぎてしまい、続くDI成形でピンホールが発生する原因となるため、カップ3の楕円化を抑制することは意味を成さない。それゆえ、Mnの含有量は1.5質量%以下とする。
Mgは強度を向上できる点で有効である。Mgの含有量が少な過ぎると熱間圧延終了後の再結晶が不十分となる。そのため、アルミニウム飲料缶のカップ成形時にカップ3の圧延方向の耳が高くなり過ぎてしまい、続くDI成形でピンホールが発生する原因となる。また、DI成形後の缶強度も低くなるため、カップ3の楕円化を抑制する意味を成さない。このため、Mgの含有量は0.5質量%以上、好ましくは0.8質量%以上とする。
一方、Mgが多過ぎると焼付きが発生し易くなる。そのため、Mgの含有量は2.5質量%以下、好ましくは1.6質量%以下、さらに好ましくは1.35質量%以下とする。
Feは結晶粒を微細化させる作用があり、さらには前述のAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)を生成するため、DI成形におけるしごき加工性の向上に寄与する。またFeは、Mnの晶出や析出を促進し、アルミニウム母材中のMn固溶量やMn系金属間化合物の分散状態を制御し、再結晶を促進させる。このため、Feの含有量は、0.1質量%以上とする。
一方、Feの含有量が0.7質量%を超えると巨大な初晶金属間化合物が発生し易くなり、DI成形におけるしごき加工性を損なう。このため、Feの含有量は、0.7質量%以下とする。
Siは、Mg2Si系金属間化合物やAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)などの分散粒子を生成させるために有用な元素である。これら分散粒子が適度に分布しているほどDI成形におけるしごき加工性を向上することができる。このため、Siの含有量は0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上とする。
一方、Siの含有量が0.5質量%を超えると、熱間仕上圧延時の再結晶が阻害され、45°耳が増大し、しごき加工性が低下する。このため、Siの含有量は0.5質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下とする。
Cuは、冷間圧延板の製缶時におけるベーキング(焼付印刷)によりAl−Cu−Mg系金属間化合物として析出するとともに、Mgとともに含有させることによって、軟化を抑制することができる。このため、Cuの含有量は0.1質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上とする。
一方、Cuの含有量が多過ぎると、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなり過ぎるために、DI成形におけるしごき加工性が低下し、さらには耐食性も劣化する。このため、Cuの含有量は0.6質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.35質量%以下とする。
残部は、アルミニウムと不可避的不純物からなる。不可避的不純物は基本的に少ない方が好ましいが、JISH4000に規定される3000系Al合金に含有されるその他の元素の上限値程度までであれば、本発明の効果を阻害しないのでこれを含有することは許容される。不可避的不純物としては、例えば、Gaを0.05質量%以下、Vを0.05質量%以下含有することを許容することができる。
Crは強度向上効果を発揮する。しかしながら、Crの含有量が多過ぎると巨大晶出物が生成するため成形性が低下する。このため、Crの含有量は0.3質量%以下、好ましくは0.25質量%以下とする。なお、前記した強度向上効果を有効に発揮させるためには、Crの含有量を0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上とするのが好ましい。
TiおよびBは、鋳塊組織を微細化する作用を有する。通常、Tiを添加する場合には、Ti:B=5:1の割合とした鋳塊微細化剤(TiB)を、ワッフル状あるいはロッド状の形態で溶湯(溶解炉、介在物フィルター、脱ガス装置、溶湯流量制御装置のいずれかに投入された、スラブ凝固前の溶湯)に添加するため、含有割合に応じたBも必然的に添加されることとなる。Tiの添加量で0.005質量%以上の添加により、鋳塊の結晶粒が微細化され、アルミニウム合金板の成形性(しごき加工性)が向上する。一方、Tiの含有量で0.3質量%を超えた含有量となると、粗大な晶出物が形成され、DI加工時に亀裂が発生するので、アルミニウム合金板の成形性(しごき加工性)が低下する。このため、Tiの含有量は0.3質量%以下、好ましくは0.2質量以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下とする。なお、前記した結晶粒微細化の効果を有効に発揮させるためには、Tiの含有量を0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.015質量%以上とするのが好ましい。
また、本発明に係る缶胴用Al合金板1によれば、缶胴4の素材が変更されたような場合であっても、そのような設計変更がなされる度に新たに金型の設計、検討、導入を行う必要がなく、初期投資コストを抑制することができる。
さらに、本発明に係る缶胴用Al合金板1の有する表面形態は大きな凹部を形成させるものではないので潤滑油の保持量が多くならない。そのため、潤滑油の使用量および洗浄剤の使用量を抑制することができるのでこれらのコストが低減できるだけでなく、成形後の洗浄作業も容易になる。
図2に示すように、本発明に係る缶胴用Al合金板製造方法は、鋳造工程S1、均質化熱処理工程S2、熱間圧延工程S3、および冷間圧延工程S4を含んでおり、これらの工程をこの順に行うものである。
以下、各工程の内容について説明する。
鋳造工程S1は、前記した化学組成を有するAl合金を溶解して鋳塊を鋳造する工程である。
鋳塊の鋳造は、通常行われる条件で行うことができ、例えば、アルミニウム圧延工場で通常行われているDC鋳造(Direct−chill Casting)で行うことができる。
なお、Al合金の好適な化学組成については既に詳述しているので説明を省略する。
均質化熱処理工程S2は、鋳造工程S1で鋳造した鋳塊を均質化熱処理する工程である。
均質化熱処理(均熱)温度は、例えば480℃以上とし、好ましくは620℃以下とする。均熱温度が低過ぎると均質化に時間がかかり過ぎて生産性が低下し、均熱温度が高過ぎると鋳塊表面に膨れが生じるおそれがある。そのため、前記範囲に均熱温度を設定するのが好ましい。
熱間圧延工程S3は、均質化熱処理工程S2で均質化熱処理した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板を製造する工程である。
熱間圧延は、熱間圧延開始温度(つまり、熱間粗圧延の開始温度)、熱間圧延終了時の熱間圧延板の板厚、および熱間圧延終了温度(つまり、熱間仕上圧延の終了温度)をそれぞれ以下のように制御するのが好ましい。
冷間圧延工程S4は、熱間圧延工程S3で製造した熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板、すなわち缶胴用Al合金板1を製造する工程である。
この冷間圧延工程S4は、トータル冷間圧延率を75〜90%とする必要がある。ここで、トータル冷間圧延率とは、熱間圧延工程S3で製造した熱間圧延板を巻き取って再結晶させた状態の板厚、または製造した熱間圧延板を荒鈍した状態の板厚から、板製品である缶胴用Al合金板1の板厚とするまでの圧延率をいう。
冷間圧延時のトータル冷間圧延率が75%未満であるとAl合金板の強度不足により缶強度が不足する。また、マイナス耳(−耳)が高くなって耳割れが生じる結果しごき加工性が劣る。一方、冷間圧延時のトータル冷間圧延率が90%を超えると成形時に45°耳(プラス耳(+耳))が高くなる。したがって、フランジ部の寸法不良等を招き易くなるため所定の缶寸法が得難くなり、しごき加工性に劣る。また、前記したようにプラス耳が高くなるためトータル冷間圧延率が75%未満の場合と同様、耳割れが生じることから、結果的にしごき加工性が劣化する。
放電ダル加工の条件としては、例えば、任意の加工液を使用し、加工電流:3〜24A(アンペア)、加工電圧:100〜230V(ボルト)、放電時間:0.5〜3000μs(秒)の範囲内とすればよく、任意の加工液としては、鉱物油系加工油、灯油系加工油、合成炭化水素などを挙げることができる。
まず、下記表1のA1〜NのうちのA1に示す化学組成を有するAl合金を溶解してそれぞれの鋳塊を鋳造した。次いで、各鋳塊を610℃の温度で1時間以上の均質化熱処理を施した後、510℃まで冷却し、引き続いて熱間圧延を行った。熱間圧延は、熱間圧延開始温度(熱間粗圧延の開始温度)を480℃とし、熱間圧延終了時の熱間圧延板の板厚を2.2mmとし、熱間圧延終了温度(つまり、熱間仕上圧延の終了温度)を330℃とした。その後、熱間圧延板を冷間圧延し、板厚が0.28mmである試験板No.1〜8に係る冷間圧延板を製造した(表3参照)。なお、冷間圧延における最終パスは、下記表2に示す冷延条件No.1〜11のうち、冷延条件No.1〜6、10、11に示す条件で行った。なお、表1および表2における下線部は本発明の要件を満たさないことを示す。
表2に、冷間圧延の最終パスに用いたワークロールの加工方法と、ワークロールの表面の算術平均粗さRa90(μm)と、最終冷間圧延率と、トータル冷間圧延率とを示す。また、表2には、冷間圧延の最終パスに用いたワークロールの表面の算術平均粗さとともに、当該ワークロールの表面のピークカウント(PPI)を併記した。
ここで、ピークカウント(PPI)は、表面粗度パラメーターの単位長さ当たりのピーク数を表すものである。この場合の単位長さは1インチであり、山又は谷をピークとして判断する基準値を0.5μmとした。また、粗さ曲線のカットオフ値(λc)を0.8mmとした。
圧延方向における粗さ曲線要素の平均長さRSm0、圧延直角方向における粗さ曲線要素の平均長さRSm90、圧延方向における算術平均粗さRa0、および圧延直角方向における算術平均粗さRa90などの表面粗さは、試験板No.1〜8に対して、表面粗さ測定機(小坂研究所製サーフコーダSE−30D)を用いて、圧延方向および圧延方向に直角な方向(圧延直角方向)に走査することで測定した。なお、これらの表面粗さ(RaおよびRSm)の測定は、触針径=2μm、規準長さ=8.00mm、走査速度=0.5mm/秒、カットオフ値λc=0.8mmの条件で測定した。
カップ成形およびこれによって得られたカップの楕円量の評価は下記のようにして行った。
試験板No.1〜8からブランク径140mmのブランクを作製し、このブランクを用いて、パンチ径90mm、パンチのコーナRが3.2mmR、ダイス径90.665mmφ、ダイスの肩Rが3.2mmRの金型を用い、150トンクランクプレスにより直径90mmφのカップを成形した。カップ成形時には、広くカップ成形で使用されているカップルブ(クエーカーケミカル社製クエークロール705R)をユニロールタイプのカップルブコータにて両面塗布した。
試験板No.7および試験板No.8は、従来から使われているワークロールにより製造した板であり、いずれも、RSm0/RSm90が大きくなり、楕円量が大きくなったため、良好でない評価となった。
表1のA1〜Nに示す化学組成を有するAl合金を溶解してそれぞれの鋳塊を鋳造した。次いで、各鋳塊を610℃の温度で1時間以上の均質化熱処理を施した後、510℃まで冷却し、引き続いて熱間圧延を行った。熱間圧延は、熱間圧延開始温度(熱間粗圧延の開始温度)を480℃とし、熱間圧延終了時の熱間圧延板の板厚を2.2mmとし、熱間圧延終了温度(つまり、熱間仕上圧延の終了温度)を330℃とした。放冷後、熱間圧延板を冷間圧延し、板厚が0.28mmである試験板No.9〜36を製造した。なお、冷間圧延は、表4およびこれに引用される表2に示す冷延条件No.にて行った。
なお、(2)の評価においては、カップ成形によって成形されたカップの耳率と、当該カップをDI成形して得られたツーピースボトル缶(缶胴)についてのしごき加工性および缶強度とを評価した。これらの評価は以下のようにして行った。なお、試験板No.1についても同様にカップの耳率と、当該カップをDI成形して得られたツーピースボトル缶(缶胴)についてのしごき加工性および缶強度とを評価した。
カップの耳率の評価は、以下の方法によりカップを成形し、成形したカップについて以下のようにして耳率を測定することにより行った。
試験板No.1、9〜36からブランク径140mmのブランクを作製し、このブランクを用いて、パンチ径90mm、パンチのコーナRが3.2mm、ダイス径90.665mmφ、ダイスの肩Rが3.2mmRの金型を用い、150トンクランクプレスにより直径90mmφのカップを成形した。カップ成形時には、広くカップ成形で使用されているカップルブ(クエーカーケミカル社製クエークロール705R)をユニロールタイプのカップルブコータにて両面に塗布した。
カップの耳率は、アルミニウム飲料缶成形加工時の成形不良に影響し、耳率が高い場合、耳切れによるピンホール等の不良缶が発生し易く、楕円化を抑制する意味を成さない。耳率は0〜2%以内であることが求められているので、耳率が0〜2%以内であるものを耳率が良好である(○)と評価し、耳率が2%を超えるものを耳率が良好でない(×)と評価した。
耳率(%)=[{(h45+h135+h225+h315)−(h0+h90+h180+h270)}/{1/2(h45+h135+h225+h315+h0+h90+h180+h270)}]×100・・・(式1)
しごき加工性の評価は、試験板No.1、9〜36を用いて成形したカップを用いて3伸目のしごき率を40%としてDI成形機にてDI成形を行い、10000缶製缶したときに破断が発生した個数により評価を行った。破断した個数が0〜3個であるものを良好(○)と評価し、4個以上発生したものを良好でない(×)と評価した。
缶強度は、缶底の耐圧強度により評価した。缶底成形をしたDI缶を200℃、20分の印刷焼付け相当の熱処理を施した後、水圧式の耐圧試験機(バックリングテスター)にて缶底の耐圧強度を測定した。耐圧強度が617.4kPa(6.3kgf/cm2)以上を合格(○)とし、それ未満を不合格(×)とした。
試験板No.22は、Siの含有量が多いため、熱間圧延での再結晶が十分ではなかった。そのため、耳率が高く耳率が2%以上となった。また、強度も高くなりしごき加工性も劣っていた。
試験板No.24は、Feの含有量が多いため、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)が粗大化した。そのため、しごき加工時の割れ起点となり、しごき加工性が劣っていた。
試験板No.26は、Cuの含有量が多いため、試験板の強度が高くなり、しごき加工性が劣っていた。
試験板No.28は、Mnの含有量が多いため、熱間圧延での再結晶が十分ではなかった。そのため、耳率が2%以上となった。また、強度も高くなり、しごき加工性も劣っていた。
試験板No.30は、Mgの含有量が多いため、しごき加工時に焼付きが発生し、しごき加工性が劣っていた。
試験板No.32は、Znの含有量が多いため、しごき加工性(成形性)が劣っていた。
試験板No.33は、Tiの含有量が多いため、粗大な晶出物が形成され、しごき加工時に亀裂が発生した。そのため、しごき加工性が劣っていた。
試験板No.36は、トータル冷間圧延率が高いため、成形時に45°耳が高くなり、耳率が2%以上となった。また、そのため、フランジ部の寸法不良が発生し、しごき加工性が劣ることになった。これに加え、しごき加工時に耳割れが生じたため、しごき加工性が劣る結果となった。
2 ブランク
3 カップ
4 缶胴
S1 鋳造工程
S2 均質化熱処理工程
S3 熱間圧延工程
S4 冷間圧延工程
Claims (7)
- 放電ダル加工されたワークロールを用いて圧延された圧延板であり、アルミニウム飲料缶の缶胴を製造するために用いられる缶胴用Al合金板であって、
化学組成が、Mn:0.5〜1.5質量%、Mg:0.5〜2.5質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Cu:0.1〜0.6質量%であり、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなり、
圧延方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm0とし、圧延直角方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm90としたときに、RSm0/RSm90が3.6以下であり、かつ、
圧延方向における算術平均粗さRa0および圧延直角方向における算術平均粗さRa90がともに0.15〜0.65μmであり、
カップ成形後、下記(式1)で算出される耳率が0〜2%である
ことを特徴とする缶胴用Al合金板。
耳率(%)=[{(h45+h135+h225+h315)−(h0+h90+h180+h270)}/{1/2(h45+h135+h225+h315+h0+h90+h180+h270)}]×100・・・(式1)
(ただし、前記(式1)中、hは、カップの高さを表し、hの0〜315の添数字は、Al合金板の圧延方向に対する角度(°)を示す。) - 前記化学組成がさらにCr、Znのうちの少なくとも1種を0.3質量%以下で含有していることを特徴とする請求項1に記載の缶胴用Al合金板。
- 前記化学組成がさらにTi:0.005〜0.3質量%含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の缶胴用Al合金板。
- 缶胴用Al合金板を製造する缶胴用Al合金板製造方法であって、
化学組成が、Mn:0.5〜1.5質量%、Mg:0.5〜2.5質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Cu:0.1〜0.6質量%であり、残部がアルミニウムと不可避的不純物からなるAl合金を溶解して鋳塊を鋳造する鋳造工程、前記鋳塊を均質化熱処理する均質化熱処理工程、前記均質化熱処理した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板を製造する熱間圧延工程、および前記熱間圧延板を冷間圧延して冷間圧延板を製造する冷間圧延工程を含み、
前記冷間圧延工程は、
トータル冷間圧延率が75〜90%であり、かつ、
当該冷間圧延工程における最終パスを、冷間圧延される冷間圧延板に対して、圧延方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm0とし、圧延直角方向における粗さ曲線要素の平均長さをRSm90としたときに、RSm0/RSm90が3.6以下であり、かつ、圧延方向および圧延直角方向における算術平均粗さRaがともに0.15〜0.65μmとなる表面形態を付与することのできる、表面が放電ダル加工されたワークロールを用いて行う
ことを特徴とする缶胴用Al合金板製造方法。 - 前記化学組成がさらにCr、Znのうちの少なくとも1種を0.3質量%以下で含有していることを特徴とする請求項4に記載の缶胴用Al合金板製造方法。
- 前記化学組成がさらにTi:0.005〜0.3質量%含有していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の缶胴用Al合金板製造方法。
- 前記冷間圧延工程における最終パス冷間圧延率が2〜60%であることを特徴とする請求項4から請求項6のうちのいずれか1項に記載の缶胴用Al合金板製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010084666A JP5491937B2 (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 缶胴用Al合金板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010084666A JP5491937B2 (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 缶胴用Al合金板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011214107A JP2011214107A (ja) | 2011-10-27 |
JP5491937B2 true JP5491937B2 (ja) | 2014-05-14 |
Family
ID=44944148
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010084666A Expired - Fee Related JP5491937B2 (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 缶胴用Al合金板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5491937B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5971851B2 (ja) * | 2012-09-19 | 2016-08-17 | 三菱アルミニウム株式会社 | エアゾール缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP5848694B2 (ja) * | 2012-12-27 | 2016-01-27 | 株式会社神戸製鋼所 | Di缶胴用アルミニウム合金板 |
JP6266905B2 (ja) * | 2013-06-20 | 2018-01-24 | 株式会社Uacj | 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法 |
JP2015045076A (ja) * | 2013-08-29 | 2015-03-12 | 三菱アルミニウム株式会社 | 表面特性に優れる飲料缶ボディ用アルミニウム合金板 |
KR101988146B1 (ko) * | 2014-12-19 | 2019-06-11 | 노벨리스 인크. | 알루미늄 병의 고속 제조에 적합한 알루미늄 합금 및 이의 제조 방법 |
JP6311206B2 (ja) * | 2017-04-21 | 2018-04-18 | 三菱アルミニウム株式会社 | 表面特性に優れる飲料缶ボディ用アルミニウム合金板の検査方法 |
Family Cites Families (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61170548A (ja) * | 1985-01-24 | 1986-08-01 | Furukawa Alum Co Ltd | 高力アルミニウム合金板の製造法 |
JPH08311591A (ja) * | 1995-05-16 | 1996-11-26 | Furukawa Electric Co Ltd:The | オフセット印刷版支持体用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP3438993B2 (ja) * | 1995-05-16 | 2003-08-18 | 古河電気工業株式会社 | 曲げ加工性に優れたAl−Mg系合金板とその製造方法 |
JP3287764B2 (ja) * | 1996-04-18 | 2002-06-04 | 東洋鋼鈑株式会社 | 絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板 |
JP2003201534A (ja) * | 2002-01-11 | 2003-07-18 | Sky Alum Co Ltd | アルミニウム合金缶蓋用圧延板および缶蓋加工用非円形ブランク |
JP2005163175A (ja) * | 2003-11-13 | 2005-06-23 | Furukawa Sky Kk | 塗装用アルミニウム合金圧延材およびその製造方法 |
JP2006097076A (ja) * | 2004-09-29 | 2006-04-13 | Kobe Steel Ltd | ボトル缶用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP2009235475A (ja) * | 2008-03-27 | 2009-10-15 | Furukawa-Sky Aluminum Corp | 絞りカップの真円度が良好なキャンボディ用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
JP2011051101A (ja) * | 2009-08-31 | 2011-03-17 | Fujifilm Corp | 平版印刷版用アルミニウム合金板およびその製造方法 |
-
2010
- 2010-03-31 JP JP2010084666A patent/JP5491937B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2011214107A (ja) | 2011-10-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5453884B2 (ja) | 高強度容器用鋼板およびその製造方法 | |
JP5491937B2 (ja) | 缶胴用Al合金板およびその製造方法 | |
US9574258B2 (en) | Aluminum-alloy sheet and method for producing the same | |
JP5434212B2 (ja) | 高強度容器用鋼板およびその製造方法 | |
JP6336434B2 (ja) | 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JP2012092431A (ja) | ボトル缶用アルミニウム合金冷延板 | |
JP2012188704A (ja) | 樹脂被覆缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP5568031B2 (ja) | ボトル缶用アルミニウム合金冷延板 | |
JP4791072B2 (ja) | 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP3657738B2 (ja) | 耳率の低いキャンボディ用アルミニウム合金板の製造方法 | |
CN111108223B (zh) | 瓶罐体用铝合金板及其制造方法 | |
JP2004244701A (ja) | 缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として用いられるアルミニウム合金熱間圧延板 | |
JP6912886B2 (ja) | 飲料缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JP2006283113A (ja) | 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP7138396B2 (ja) | 缶胴体用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JPH11140576A (ja) | フランジ長さのばらつきの小さい缶胴体用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP2009235475A (ja) | 絞りカップの真円度が良好なキャンボディ用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP4771726B2 (ja) | 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP2016180175A (ja) | 製缶後の光沢性に優れた樹脂被覆絞りしごき缶用アルミニウム合金板および絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板 | |
JP2007169744A (ja) | 缶真円度の優れたアルミボトル缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP6266905B2 (ja) | 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法 | |
JP2006265702A (ja) | 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板 | |
JP4250030B2 (ja) | 光輝性ホイールリム用アルミニウム合金板およびその製造方法 | |
JP7426243B2 (ja) | ボトル缶胴用アルミニウム合金板 | |
WO2016152790A1 (ja) | 製缶後の光沢性に優れた樹脂被覆絞りしごき缶用アルミニウム合金板および絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120828 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20131119 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20140120 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20140218 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20140228 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5491937 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |