JP2006265702A - 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Mn:0.7〜1.5%、Mg:0.8〜1.7%、Fe:0.1〜0.7%、Si:0.05〜0.5%、Cu:0.1〜0.6%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、かつ、結晶粒組織を、板厚方向中央部の上面観察による結晶粒の平均アスペクト比が3以上の圧延方向に伸長させた組織とし、この組織の0.5μm以上の分散粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズが5μm以下であり、更に、アルミニウムの液相と固相の固液共存温度範囲を示すΔTが40℃以下であることとし、成形性を阻害せずに、高温特性を向上させる。
【選択図】 無し
Description
先ず、本発明のAl合金冷延板の好ましい化学成分組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。
Mnは強度の向上に寄与し、さらには成形性の向上にも寄与する有効な元素である。特に本発明の缶胴材(冷間圧延板)では、DI成形時にしごき加工が行われるため、Mnは極めて重要となる。
Mgは強度を向上できる点で有効である。さらには後述するCuと共に含有させることによって、本発明の缶胴材(冷間圧延板)を最終焼鈍(仕上焼鈍ともいう。例えば、温度:100〜150℃程度、時間:1〜2時間程度の焼鈍)し、その後に製缶してからベーキング(焼付印刷)する際に、軟化を抑制できる。即ち、Mg及びCuを両者含有すると、ベーキング(焼付印刷)を行う際にAl−Cu−Mgが析出するため、ベーキング時の軟化を抑制できる。
Feは結晶粒を微細化させる作用があり、さらには上述のAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)を生成するため、成形性の向上に寄与する。またFeは、Mnの晶出や析出を促進し、アルミニウム基地中のMn固溶量やMn系金属間化合物(前記α相など)の分散状態を制御する点でも有用である。一方、Mnの存在下でFeが過剰になると、巨大な初晶金属間化合物が発生しやすくなり、成形性を損なう虞がある。
Siは、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)を生成し、Mn系金属間化合物の分散状態を制御するために有用な元素である。α相が適正に分布している程、成形性を向上できる。
Cuは、冷間圧延板の製缶時にベーキング(焼付印刷)を行うときに、Al−Cu−Mgが析出するとともに、Mgと共に含有させることによって、軟化を抑制できる。このため、Cu含有の下限量は0.1%以上、好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上とする。一方、Cuが過剰になると、時効硬化は容易に得られるものの、硬くなりすぎるために、成形性が低下し、さらには耐食性も劣化する。このため、Cu含有の上限量は0.6%、好ましくは0.5%、さらに好ましくは0.35%とする。
この際、Crの含有量は、強度向上効果の発揮のためには、0.001%以上、好ましくは0.002%以上とする。一方、Crが過剰になると、巨大晶出物が生成して成形性が低下する。このため、Cr含有量の上限は0.3%、好ましくは0.25%とする。
また、Znを含有させると、Al−Mg−Zn系粒子が時効析出することによって強度を向上できる。この効果を発揮させるためには、Zn含有量は0.05%以上、好ましくは0.06%以上とする。一方、Znが過剰になると耐食性が低下する。このため、Zn含有量の上限は0.5%、好ましくは0.45%とする。
Tiは結晶粒微細化元素である。この効果を発揮させたい時には選択的に含有させる。その際のTiの含有量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.015%以上とする。なお、Tiが過剰になると、巨大なAl−Ti系金属間化合物が晶出して成形性を阻害する。したがって、Ti含有量の上限は0.2%、好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.05%とする。
次ぎに、本発明Al合金冷延板組織について、以下に説明する。
前記した通り、アルミニウム合金冷延板の結晶粒を、通常の等軸粒ではなく、平均アスペクト比が3以上の、圧延方向に伸長させたものにすることによって、より高温化短時間化された高速化熱処理に対しての、塗装熱処理時の熱変形が抑制され、熱処理後の缶強度も確保できる。
結晶粒の平均アスペクト比は、板厚方向中央部の上面観察(偏光観察)によって測定される。調質処理後(ボトル缶成形前)の板の板厚方向中央部、圧延面上面を、機械研磨、電解研磨、およびバーカー液による陽極酸化処理後、偏光観察によって行う。
アルミニウム合金冷延板組織における分散粒子は、上記Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)などの種々の金属間化合物であるが、この分散粒子の平均粒子サイズは細かいほど好ましい。
0.5μm以上の粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズは、板組織の走査型電子顕微鏡(SEM)にて行なう。より具体的には、板厚中央部、圧延面上面の試験材を鏡面研磨し、研磨面の組織を、500倍または1000倍のSEM(例えば日立製作所製:S4500型電界放出型走査電子顕微鏡FE−SEM:Field Emissionn Scanninng Electron Microscoppy)により、約200μm×約150μm程度の大きさの各10視野の組織を観察する。
図1に、Al−Mg−Mn系合金の状態図を模式的に示し、アルミニウムの液相線、固相線、そして主たる晶出物であるAlMn系、Al(Fe、Mn)系化合物の晶出温度の関係を模式的に示す。図1において、Alの液相線と固相線との間の温度範囲(温度差)が、本発明で言う固液共存温度範囲△Tである。
△Tの算出は、示差熱分析により、対象となるアルミニウム合金冷延板(試験片)の融点と固相温度とを測定することにより、アルミニウムの液相が共存している温度範囲△Tを算出する。本発明アルミニウム合金系の範囲であれば、およそ645℃〜660℃あたりが融点であり、およそ600℃〜630℃付近で検出される変化が固相温度である。
ヒートパターン:RT〜700℃ 〜RT:10℃/分
雰囲気:Ar(100ml/分)
試料重量:約500mg
リファレンス:アルミナ粉末
試料容器:アルミナ(マクロ型 8×10mm)
このΔTの制御は、後述する製造条件にもよるが、アルミニウムの固液共存温度範囲△Tが40℃以下になるように基本的には、本発明における主要構成元素(Mn、Mg、Fe、Cu、Si)の各成分バランスの設計によって行なう。
なお、各合金元素(成分)の一般的な傾向としては、Mn、Feなどは、含有量の規定範囲の中央値から、含有量が増加する、あるいは含有量が減少するとともに、△Tが大きくなる。また、Mg、Cu、Siなどは含有量の増加により△Tが大きくなる傾向があり、本発明の含有量規定内では、全般に、これら合金元素が少ない方がΔTが小さくなる。
本発明Al合金冷延板は、従来の均熱、熱延、冷延の製造工程を大きく変えることなく製造が可能である。但し、本発明規定の組織とし、かつ、ボトル缶成形のための基本的な材料特性(耳率、強度)や成形性、しごき加工性を阻害せずに確保するためには、上記個々の工程を最適条件範囲に限定するとともに、これらの工程を組み合わせる必要がある。
均熱温度は550〜650℃とする。均熱温度が低すぎると、均質化に時間がかかり過ぎて生産性が低下し、均熱温度が高すぎると、鋳塊表面に膨れが生じるため、前記範囲に均熱温度を設定する。好ましい均熱温度は、580℃以上(特に590℃以上)、615℃以下(特に610℃以下)である。
均熱処理終了後の鋳塊の取り扱いは、一旦冷却し、再加熱してから熱間粗圧延してもよく、あるいは過度に冷却することなく、そのまま熱間粗圧延してもよい。過度に冷却することなく、そのまま熱間粗圧延する場合、最終板組織の0.5μm以上の分散粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズが5μm以下とし、更に、組織中における分散粒子固相とアルミニウムの液相との固液共存温度範囲を示すΔTを40℃以下としやすい。また、均熱処理後の鋳塊の自己発熱を利用することができ、生産時間や熱エネルギーを節約できるだけでなく、合金元素の析出物の数密度を小さくでき、耳率を低減できる。
熱延を、粗圧延と仕上げ圧延とに分けて、かつ連続して実施するに際し、熱間粗圧延の終了温度が低くなり過ぎると、次工程の熱間仕上圧延で圧延温度が低くなってエッジ割れが生じやすくなる。また、熱間粗圧延の終了温度が低くなり過ぎると、仕上圧延後に再結晶するために必要となる自己熱が不足しやすくなるため、結晶粒径が小さくなり過ぎる。このため、熱間粗圧延の終了温度は420℃以上とすることが好ましい。更に好ましい終了温度は430℃以上(特に440℃以上)、470℃以下(特に460℃以下)である。
熱間仕上圧延の終了温度は310〜350℃とすることが好ましい。熱間仕上圧延工程は、板を所定の寸法に仕上げる工程であり、圧延終了後の組織は自己発熱によって再結晶組織になるため、その終了温度は再結晶組織に影響を与える。熱間仕上圧延の終了温度を310℃以上とすることで、続く冷間圧延条件と併せて、最終板組織を、平均アスペクト比が3以上の延方向に伸長させた組織としやすい。熱間仕上圧延の終了温度が310℃未満では、続く冷間圧延の冷延率を大きくしても、上記本発明組織になりにくい。
熱間仕上圧延機としては、スタンド数が3以上のタンデム式熱間圧延機を使用する。スタンド数を3以上とすることによって、1スタンドあたりの圧延率を小さくでき、熱延板の表面性状を保ちつつ歪みを蓄積することができるため、冷間圧延板及びそのDI成形体の強度をさらに高めることができる。
熱間仕上圧延の総圧延率は80%以上にするのが望ましい。総圧延率は80%以上とすることで、後述する冷間圧延と組み合わせて、最終板組織を、平均アスペクト比が3以上の圧延方向に伸長させた組織とし、かつ、0.5μm以上の分散粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズが5μm以下としやすい。また、冷間圧延板及びそのDI成形体の強度を高めることができる。
熱間 (仕上げ) 圧延終了後の合金板の板厚は、1.8〜3mm程度とするのが望ましい。板厚を1.8mm以上とすることによって、熱間圧延板の表面性状(焼付き、肌荒れなど)や板厚プロフィールの悪化を防止できる。一方、板厚が3mm以下とすることによって、冷間圧延板(通常、板厚:0.28〜0.35mm程度)を製造する際の圧延率が高くなりすぎるのを防止でき、DI成形後の耳率を抑制できる。
冷間圧延工程では、中間焼鈍することなく、複数のパス数による謂わば直通で圧延し、合計の圧延率を77〜90%にするのが望ましい。中間焼鈍することなく、合計の圧延率を77%以上とすることによって、最終板組織を、結晶粒の平均アスペクト比が3以上の圧延方向に伸長させた組織とし、かつ、0.5μm以上の分散粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズが5μm以下とすることができる。また、缶の耐圧強度をより高めることができる。中間焼鈍を入れた場合、あるいは、合計の圧延率が低い場合、等軸粒になりやすく、伸長粒になりにくい。
この均熱処理後に、熱間粗圧延として、スタンド数が1個のリバース熱間粗圧延機、熱間仕上圧延機として、スタンド数が4個のタンデム式熱間圧延機を使用して、熱間圧延を行なった。その際、熱間粗圧延終了後に熱間仕上圧延を開始する時間は3分以内とした。そして、共通して熱間仕上圧延後の板厚を2.5mmとしたアルミニウム合金熱間圧延板を製造した。
0.2%耐力測定の引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
冷延板試料の硬さ測定は、マイクロビッカース硬度計にて、100gの荷重を加えて4箇所行い、硬さはそれらの平均値とした。
楕円変形の評価は、後述するように、上記ボトル缶胴用板材をDI成形したボトル缶胴を、洗浄後、缶の実体温度が300℃に、30秒で達する条件でベーキングした上で、楕円変形度を調査した。楕円変形度調査は、ボトル缶胴の口部の径を順に円周方向に調査し、その中での最大径から最小径を減算した量を楕円変形量(mm)として求め、これをN=10缶の平均値として評価した。なお、この楕円変形量は4mm以下を楕円変形性が合格と評価した。この楕円変形量が4mmを超えると、缶製造工程における、後工程の搬送工程及びネッキング工程で、転倒及びジャムなどの不良が発生し、缶の連続的で効率的な製造を困難にする。
耳率は、このボトル缶胴用板材からブランクを採取し、潤滑油[D.A.Stuart社製、ナルコ147]を塗布した上で、エリクセン試験機によって、40%深絞り試験、カップ状に成形して調査した。試験条件は、ブランクの直径=66.7mm、ポンチの直径=40mm、ダイス側肩部のRを2.0mm、ポンチの肩R=3.0mm、しわ押さえ圧=400kgfで行なった。
平均耳率(%)=[{(Y1+Y2+Y3+Y4)−(T1+T2+T3+T4)}/{1/2×(Y1+Y2+Y3+Y4+T1+T2+T3+T4)}]×100
前記ボトル缶胴用板材(板厚が0.3mm)から、直径156mmのブランクを打ち抜き、カップ径92mmのカップを成形し、再絞り加工、しごき加工、及びトリミングにより、製缶速度300缶/分の速さで、ボトル缶用DI缶胴(内径66mmφ、高さが170mm、側壁板厚103μm、側壁先端部板厚165μm、最終第3しごき率40%)を製造した。成形缶5万缶あたりの胴割れの発生個数を求め、DI成形性を評価した。全く存在しなかったものを◎(極めて良好)、1缶以下であったものを○(良好)、2乃至4缶であったものを△(概ね良好)、5缶を超えたものを×(不良)として評価した。
比較例8は熱間仕上げ圧延終了温度が低過ぎる。
比較例9は熱間仕上げ圧延終了温度が低過ぎる。
比較例10は冷間圧延途中で中間焼鈍を施した。
Claims (5)
- Mn:0.7〜1.5%(質量%、以下同じ)、Mg:0.8〜1.7%、Fe:0.1〜0.7%、Si:0.05〜0.5%、Cu:0.1〜0.6%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、かつ、結晶粒組織を、板厚方向中央部の上面観察による結晶粒の平均アスペクト比が3以上の圧延方向に伸長させた組織とし、この組織の0.5μm以上の分散粒子観察における分散粒子の平均粒子サイズが5μm以下であり、更に、アルミニウムの液相と固相の固液共存温度範囲を示すΔTが40℃以下であることを特徴とする、高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
- 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、Cr:0.001〜0.3%、Zn:0.05〜1.0%から選択された一種または二種を含有する請求項1に記載の高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
- 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、0.005〜0.2%のTiを単独で、又は0.0001〜0.05%のBと併せて含有する請求項1または2に記載の高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
- 前記アルミニウム合金冷延板を290℃×20秒熱処理した時の、この熱処理前後でのアルミニウム合金冷延板の硬さ変化ΔHvが30Hv以下であり、この熱処理後のアルミニウム合金冷延板の0.2%耐力が215MPa以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
- 前記アルミニウム合金冷延板が、熱間圧延板を、途中で焼鈍することなく、最終の板厚まで冷間圧延されたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
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