JP3708616B2 - 成形性に優れたDI缶胴用Ai合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,DI成形で耳率が低く成形性に優れ,薄肉化された2ピースアルミニウムDI缶胴として好適なDI缶胴用Al合金板の製造方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
Al合金板に深絞り成形としごき成形を順次施して缶胴とする2ピースアルミニウムDI(Drawing And Ironing)缶胴はビールや炭酸飲料などの容器として従来から広く用いられている。このような用途の缶胴材としては、JIS−3004Al合金硬質板が良好な成形性と強度を有するためもっぱら使用されている。アルミニウムDI缶胴の成形工程は、まず0.28〜0.37mm程度の厚さの前記JIS−3004Al合金硬質板をDI成形(カッピング成形→リドロー成形→3段連続のしごき成形)してストレート缶を得る(このストレート缶の側壁部の厚さは約100〜110μm、後にネッキング及びフランジ成形を受ける側壁先端部分の板厚は約150〜180μmとやや厚く設定されている)。
その後、トリミング(縁切り)、脱脂洗浄、化成処理、内外面塗装・焼き付け加熱を順次施した後、ネッキング成形して開口部の径を縮小し、最後に缶蓋を巻き締めやすくするためのフランジ成形(口拡げ成形)を行う。
【0003】
このJIS−3004Al合金板は、鋳造、面削、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延という一連の工程で製造される。さらに必要に応じ、冷間圧延の後で仕上げ焼鈍し、その後脱脂洗浄、カッピング用潤滑油塗布が施される。また強度調整のため、冷間圧延に先立ちまたは冷間圧延の途中に、中間焼鈍が施されるのが通例である。
【0004】
しかるに近年、コスト低減を目的として缶の薄肉・軽量化が進み、DI成形を行った後の缶胴の側壁が薄肉化される傾向にある。特に、缶蓋を巻き締めるためにフランジ成形が施される缶胴側壁先端部分の厚さは、従来180μm程度であったものが、現在150〜170μm程度にまで薄くなっており、今後さらに薄くされる傾向がある。また缶底部も従来厚さが0.36mm程度であったものが、0.32mm程度に薄くなってきており、これも今後さらに薄くされる傾向にある。
【0005】
しかしながら、缶胴側壁先端部分の板厚が160μm 程度以下まで薄くなると、DI加工後に缶をパンチから取り外す工程(ストリッピング工程)において缶側壁先端部分の山が潰れてパンチに引っ掛かり、缶を取り外すことが出来なくなるという問題がある。特に従来材のごとく耳率の高い材料(耳率2.5%以上)ではこのフランジ部分の山の高さが高く、したがってストリッピング時の山の潰れの程度が甚だしく、上記の問題が多発することが判明した。上記の問題の発生を防止するには耳率を2.5%以下、望ましくは2.0%以下とすることが必要である。
【0006】
また上記のように缶側壁先端部分の板厚が薄くなると、ネッキング、フランジ成形後に、蓋を巻き締め加工をした時にフランジ加工部に割れが発生しやすく、内容物の密封性に問題があることも判明した。これは缶側壁先端部分が薄肉化されたために加工限界が低下し、巻き締め時にフランジ加工部が割れやすくなったためである。
さらに缶底部の板厚も薄肉化されることにともなって、缶底部をドーム型の形状に成形した時に、缶底部にしわが発生しやすくなり、美観を損ねるという問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、DI成形時の耳率を従来以上に低くして、前記ストリッピング工程での引っ掛かりが発生せず、巻き締め加工をした時にフランジ加工部の割れが発生せず、かつ缶底部のしわの発生しない、薄肉化が容易なDI缶胴用Al合金板の製造方法を見出すことである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、熱間圧延条件および冷間圧延条件さらに仕上げ焼鈍条件を特定し、かつ板の耐力強度を特定範囲に規制し、更に板の圧延集合組織の結晶状態を特定の範囲に
規定することにより、X線回折測定で、(200)面の回折線強度の半値巾を特定範囲に規制されたAl合金板が得られ、前記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
請求項1の発明に係る製造方法は、前記課題を解決するため、Mg0.9〜1.3wt%、Cu0.1〜0.2wt%、Mn0.9〜1.2wt%、Fe0.3〜0.5wt%、Si0.1〜0.2wt%、さらにTi0.005〜0.05wt%若しくはTi0.005〜0.05wt%及びB0.0001〜0.01wt%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金鋳塊に560〜620℃で1〜10時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延するが、その熱間圧延の最終パスにおいて、圧延速度を300〜400メートル/分、減面率を40〜60%の範囲とし、かつ熱間圧延の終了温度を290〜330℃の範囲として熱延板を製造し、続いてこれに300〜400℃で1〜10時間の焼鈍を施し、次いで減面率75〜90%の冷間圧延を施し、さらに140〜170℃で1〜10時間の仕上げ焼鈍を施すことにより、当該Al合金板の耐力が250〜290MPa,耐圧強度が700KPa以上であって、その金属組織のX線回折測定において下記の測定条件で得られた(200)面の回折線強度の半値巾(β1/2 )が0.15〜0.25度となるような結晶状態を有し、表面性状が良好な成形性に優れたAl合金板を製造することを特徴としている。
光学系の測定条件:X線源はCu
発散スリットは1°
受光スリットは0.15mm
散乱スリットは1°
【0010】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を更に詳細に説明する。
まず、請求項1に記載の製造方法のうち、DI缶胴用Al合金板の合金組成について説明する。
Mgは、缶胴材としての耐圧強度を確保するために添加する。しかし、添加量が0.9wt%未満では強度が不十分で缶とした場合の耐圧強度が不足する。また添加量が1.3wt%を越えるとDI成形時に加工硬化しやすくなり、しごき割れの発生頻度が増加する。従って、Mgの添加量は、他元素の添加量や製造条件によりやや変化するが、強度としごき加工性のバランスから、0.9〜1.3wt%であり、さらに望ましくは1.1〜1.2wt%の範囲である。
【0011】
Cuは、Mgと同様、缶胴材としての耐圧強度を確保するために添加する。しかし、添加量が0.1wt%未満では強度が不十分で缶とした場合の耐圧強度が不足する。また添加量が0.2w%を越えるとDI成形時に加工硬化しやすくなり、しごき割れの発生頻度が増加する。従って、Cuの添加量は、0.1〜0.2wt%であり、さらに望ましくは0.13〜0.18wt%の範囲である。
【0012】
Mnは、缶体としての耐圧強度を向上させるとともに、DI成形性を向上させるために添加する。DI成形においてはエマルジョン型またはソルブル型の潤滑剤が通常使用されるが、Mn添加量が少ない場合はこれだけでは潤滑性が不十分であり、アルミニウム合金板と金型との凝着によるビルトアップが発生してゴーリングまたはスコアリングと呼ばれる擦り傷や焼き付きが発生する。MnはAl−Mn、Al−Mn−Fe、Al−Mn−Fe−Si系の晶出化合物を形成し、この晶出化合物が固体潤滑作用を有しビルトアップの発生を抑制するため、上記のゴーリング等の発生を防ぐ効果がある。しかし、Mn添加量が0.9wt%未満では前記のDI成形性の改善効果が不十分であるとともに耐圧強度も不足する。またMn添加量が1.2wt%を越えるとDI成形性および強度向上効果が飽和する上、後述のFeと結合してAl−Mn−Fe系の巨大な初晶化合物が溶解鋳造時に発生しやすくなり、これが圧延後も残存するため成形時に割れやピンホールが発生する危険が増大する。従って、Mnの添加量は、0.9〜1.2wt%であり、より望ましくは0.9〜1.1wt%の範囲である。
【0013】
Feは、前記Mnの晶出化合物の生成を促進するとともにその分布状態を均一化し、DI成形中のゴーリング等の発生を防止するために添加する。Fe添加量が0.3wt%未満では効果が不十分であり、0.5wt%を越えると前記Al−Mn−Fe系の巨大初晶化合物が発生しやすくなりピンホール等の原因となるとともに耳率が増加する。従って、Feの添加量は、0.3〜0.5wt%であり、より望ましくは0.35〜0.45wt%の範囲である。
【0014】
Siは、Mnと結合し固体潤滑作用を有するAl−Mn−Fe−Si系晶出化合物を形成し、DI成形時のビルトアップの発生を抑制し、ゴーリング等の発生を防ぐ効果がある。Si添加量が0.1wt%未満ではゴーリング防止効果が不足し、0.2wt%を越えると晶出化合物の量が多くなりすぎ巻き締め時のフランジ加工部の割れが発生しやすくなる。従って、Siの添加量は、0.1〜0.2wt%であり、より望ましくは0.14〜0.18wt%の範囲である。
【0015】
上記成分の他に、Ti、またはTi及びBは、鋳塊組織の均一微細化のために添加する。Tiが0.005wt%未満では鋳塊組織の均一微細化効果が得られず、また0.05wt%を越えるとAl−Ti系の巨大初晶化合物が溶解鋳造時に発生しやすくなり、これが圧延後も残存するため成形時に割れやピンホールが発生する危険性が増大する。従ってTiは0.005〜0.05wt%の範囲で、単独若しくはBとともに添加する。BはTiと共存させるとTiの鋳塊結晶粒の均一微細化効果を促進する効果がある。Bが0.0001wt%未満ではその効果が無く、0.01wt%を越えるとTi−B系の巨大初晶化合物が溶解鋳造時に発生しやすくなり、これが圧延後も残存するため成形時に割れやピンホールが発生する危険が増大する。従ってBは0.0001〜0.01wt%の範囲でTiとともに添加する。
なお、Ti、Bは、Ti0.01〜0.03wt%、B0.0002〜0.001wt%の範囲で同時に添加するのが望ましい。
【0016】
その他、アルミニウム地金中に不可避的に含まれている不純物(Cr、Znなど)は、JISの3004合金規定範囲内であれば特に問題は無い。
【0017】
次に、請求項1に記載の製造方法のうち、Al合金板の合金組成以外の事項について説明する。
まず、前記合金組成を有するAl合金鋳塊を常法のDC鋳造法(半連続鋳造法)により鋳造して圧延用鋳塊とし、これを面削する。
【0018】
次いで前記鋳塊に対し、ミクロ的偏析を拡散・消滅させ溶質原子の分布を均一化するために均質化熱処理を施す。均質化熱処理温度が560℃未満または保持時間が1時間未満では均質化が不十分であり成形性や強度のばらつきが大きく、また冷間圧延板の耳率が大きくなる傾向がある。一方、均質化熱処理温度が620℃を越えると、鋳塊表面に膨れが発生したり鋳塊が溶融するなどの問題が生じる。また、均質化熱処理の保持時間が10時間を越えると効果が飽和する上、不経済である。従って均質化熱処理条件は、560〜620℃の温度で1〜10時間の保持をするが、580〜615℃の温度で3〜8時間が生産性と効果を比較した上で最も望ましい。
【0019】
次いで均質化熱処理の終了した鋳塊に対し、熱間圧延をおこなう。耳率を低減するためには、熱間圧延およびその後の焼鈍において多量の立方体方位結晶粒を形成させることが肝要である。立方体方位結晶粒は続く冷間圧延において板面法線方向の回りに方位回転をおこし、いわゆる回転立方体方位結晶粒になるが、この回転立方体方位結晶粒は耳率低減成分であるため耳率が低い冷間圧延板が得られる。
【0020】
熱間圧延は、常法によりリバース式の熱間粗圧延機、続いてタンデム式の熱間仕上げ圧延機により実施するか、あるいは粗圧延・仕上げ圧延兼用機により実施してもよい。ただし、冷間圧延板の耳率を低く押さえるためには、熱間圧延の最終パスの条件が極めて重要であり、最終パスでの圧延速度が300〜400メートル/分、最終パスでの減面率を40〜60%、最終パス圧延後の熱間圧延終了温度が290〜330℃である必要がある。最終パスでの圧延速度が300メートル/分未満あるいは減面率が40%未満であるか、あるいは熱間圧延終了温度が290℃未満であると、耳率低減成分である立方体方位の結晶粒の形成が不十分であるため冷間圧延板の耳率が増加し、また圧延速度が400メートル/分あるいは減面率が60%あるいは熱間圧延終了温度が330℃を越えると、板表面に剥がれ、むしれなどが発生して板の表面性状が悪化する。
従って、熱間圧延における最終パス及び圧延終了温度の条件は、前記の範囲で行う。
なお熱間圧延の終了板厚は、後述の冷間圧延での減面率が75〜90%となるように設定する。
【0021】
次いで熱間圧延の終了した熱間圧延板(コイル)に対し、焼鈍を施す。この焼鈍は、熱間圧延板の組織を完全に再結晶組織とすることにより最終冷間圧延板の耳率をさらに低減するためにおこなう。焼鈍温度が300℃未満あるいは保持時間が1時間未満であると再結晶の形成が不充分であり耳率が増加する。焼鈍温度が400℃を越えるかあるいは保持時間が10時間を越えると、酸化が著しくなり板の表面性状が悪化する。従って焼鈍は、300〜400℃で1〜10時間行う。
【0022】
次いで、この板に冷間圧延を施し最終の板厚である0.28〜0.36mm程度の板厚とする。冷間圧延は缶体として必要な耐圧強度を確保するためにおこなうが、本発明においてはさらに製缶後、巻き締め加工をした時にフランジ加工部に割れが発生しないようにするため、その減面率の下限を規定する。すなわち冷間圧延の減面率が75%未満であるとネッキングおよびフランジ加工した後の転位組織の回復の程度が不十分であり延性が不足するために、巻き締め加工をした時にフランジ加工部に割れが発生しやすく薄肉化ができない。また冷間圧延の減面率が90%を越えると強度が上がり過ぎるためしごき加工工程での缶胴体の割れが発生しやすくなるとともに、耳率が増加する。従って冷間圧延の減面率は、75〜90%の範囲で行う。
【0023】
次いで冷間圧延板(コイル)に対し、仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍は、冷間圧延板に適度な延性を付与してカップ成形工程でのカップの割れを防止し、また缶底部のしわ発生を防止するために施す。仕上げ焼鈍温度が140℃未満または保持時間が1時間未満では、効果が不十分であり、また仕上げ焼鈍温度が170℃を越えるかまたは保持時間が10時間を越えると、冷間圧延板が軟化しすぎてしまい、缶の耐圧強度が低下する。従って仕上げ焼鈍は、140〜170℃で1〜10時間の範囲で行う。
【0024】
前記本発明に係る製造方法によれば、以下のような特性を有するDI缶胴用Al合金板が製造される。
当該Al合金板は、耐力が250〜290MPaであって耐圧強度が700KPa以上である。耐力が前記上限を越えるとDI成形が困難になる。
【0025】
また、Al合金板は、その圧延集合組織の結晶状態が特定の範囲内になる。即ち、その金属組織のX線回折測定において、下記の測定条件で得られた(200)面の回折線強度の半値巾(β1/2 )が0.15〜0.25度となるような結晶状態になる。
光学系の測定条件:X線源はCu
発散スリットは1°
受光スリットは0.15mm
散乱スリットは1°
【0026】
図1は、Al合金圧延板のX線回折試験において、回折角2θでの(200)面における回折線の半値巾(β1/2 )を示す説明図である。
図において、IP は最高回折線強度であり、IP /2は最高回折線強度の半分に相当し、β1/2 はIP /2における半値巾(度)である。
本発明方法により製造されたAL合金板においては、この半値巾(β1/2 )が0.15〜0.25度となるような結晶状態になる。
なお、この半値巾は、材料の結晶状態と光学系の測定条件によっても変わるため、光学系の測定条件は前記のごとく一定にするのが好ましい。
【0027】
材料の結晶状態においては、この(200)面の回折線強度の半値巾(β1/2)は、冷間圧延板中の立方体方位結晶粒と立方体方位結晶粒が板面法線方向の回りに回転した方位の結晶粒の存在比率および転位密度を表す指標であり、立方体方位(およびその回転方位)結晶粒の存在比率が高いほど、また転位密度(格子欠陥)が高いほど半値巾は大きくなるという関係がある。
半値巾が、0.15度未満では立方体方位(およびその回転方位)結晶粒の存在比率が低く従って耳率が大きく、逆に0.25度を越えると転位密度が高いため成形性が劣り、特にカップ成形工程でのカップの割れと缶底部のしわが発生しやすくなり、薄肉化した缶胴を得ることが困難となる。
従って、本発明方法により、(200)面の回折線強度の半値巾が0.15〜0.25度となるような結晶状態とすることができる。
半値巾は前記の範囲、即ち立方体方位(およびその回転方位)結晶粒の存在比率と転位密度が適度になることによって、本発明の目的とするDI成形時に耳率が低く、巻締加工時にフランジ加工部に割れがなく、缶底部にしわのない成形性の優れたAl合金板が得られる。
例えば、前記他の要件を満足していたとしても、半値巾が0.12度と低い場合は、DI成形性は良好であるが、耳率が高く(3.5%)、巻き締め成形で割れが発生する。また半値巾が0.28度と高い場合は、巻き締め成形は良好であるが、DI成形で缶底にしわが発生する(耳率は、2.5%でやや良好である)。
【0028】
以上のように、本発明方法により製造されたAl合金板は、後に記す実施例からでも明らかなごとく、DI成形時の耳率を従来以上に低くして、ストリッピング工程での引っ掛かりが発生せず、また巻き締め加工をした時にフランジ加工部の割れも発生しなく、かつ缶底部にしわが発生しない。従って薄肉化・軽量化が容易となることが期待できる。
【0029】
また、本発明の製造方法で得られたAl合金板は、耳率が低く成形性が優れるため、特に薄肉化・軽量化をはかったDI缶胴用材料として好適である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳細に、本発明を説明する。
〔実施例1〕
表1に示す各種組成のAl合金を,常法により溶解鋳造し,面削後、610℃で6時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延開始温度450℃で、厚さ490mmの鋳塊から厚さ2.2mmまで熱間圧延した。熱間圧延の最終パスにおける圧延速度は320メートル/分、減面率は45%とし、熱間圧延終了温度は300〜315℃の範囲とした。続いて360℃×2時間の焼鈍を施し完全に再結晶させたのち、厚さ0.32mmまで冷間圧延をおこなった。冷間圧延の減面率は85.5%であった。続いてこれに150℃×4時間の焼鈍を施し、DI缶胴用Al合金板を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
このようにして得たAl合金板について、(200)X線回折測定における(200)面〔回折角2θ〕の回折線強度の半値巾(度)を求めた。なお、光学系の測定条件は以下のごとくした。
光学系の測定条件:X線源はCuをターゲットとし、波長1.5405Å
発散スリットは1°
受光スリットは0.15mm
散乱スリットは1°
また引張試験により塗装焼き付け(200℃×20分)前後の素板の耐力強度を測定した。
【0033】
さらに深絞り試験機により33mmφ(ブランク径57mmφ)の小径カップを絞り、その耳率を測定した。
また、実機の製缶ラインにて350ml容量の飲料用のDI缶胴(側壁板厚105μm、側壁先端部板厚165μm)に加工し、脱脂、塗装、焼き付け、ネッキング(4段)、フランジ加工、内容物充填を順次施し、最後に蓋と巻き締め加工をおこない、耐圧強度と巻締部での割れの発生率を測定した。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2から明らかなように、本発明組成であるA〜Fは耳率が2.5%以下と低く、耐圧強度、巻き締め成形性とも良好である。
これに対し、MgまたはCu量の少ないG、Hは缶胴体の耐圧強度が低く、MnまたはSi量の少ないI、JはDI加工で缶胴体の表面にゴーリングが発生した。またMg量の多いKはDI加工で缶胴体にしごき割れが発生し、巻締部に割れも発生した。またFe量の多いLはDI加工で缶胴体にピンホールが発生したうえ耳率も大きく、巻締部に割れも発生した。SiとCu量の多いMはDI加工で缶胴体にしごき割れが発生し、巻締部に割れも発生した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1のAのAl合金を、常法により溶解鋳造し、面削後、均質化熱処理を施し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、仕上げ焼鈍を施した。その詳細な条件を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
このようにして得たAl合金板について、実施例1と同様にX線回折測定を行い、(200)面〔回折角2θ〕の回折線強度の半値巾(度)を求めた。
さらに実施例1と同様にして引張試験による耐力強度測定、耳率測定、製缶試験を実施した。その結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4から明らかなように、本発明工程によるNo.1〜6は、いずれも(200)面のX線回折線の強度の半値巾が0.15〜0.25度の範囲内にあって、耳率が2.5%以下と低く、耐圧強度、成形性ともに良好である。
【0041】
これに対し、本発明の範囲外の比較例は、いずれかの特性の点で劣った。即ち均質化処理温度の低いNo.7、熱延最終パスの速度が遅いNo.9、熱延最終パスの減面率が低いNo.11、熱延終了温度の低いNo.13、焼鈍がないかまたは温度の低いNo.15、16は回転立方体方位の存在比率が低く、(200)面のX線回折線の強度の半値巾が0.15度未満であって耳率が高い。
また、均質化処理温度の高過ぎるNo.8、熱延最終パスの速度が速すぎるNo.10、熱延最終パスの減面率が高すぎるNo.12、熱延終了温度の高すぎるNo.14、焼鈍温度の高過ぎるNo.17は、板の表面性状が不良であった。
【0042】
また、減面率の高すぎるNo.18は耳率が大きく缶底部にしわも発生した。
また、仕上げ焼鈍がないかまたは温度が低く時間の短いNo.19、20は(200)面のX線回折線の強度の半値巾が0.25度を越えて転位密度が高いため、缶底部にしわが発生した。また、仕上げ焼鈍温度が高すぎるNo.21は耐圧強度が不足した。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係わるDI缶胴用Al合金板の製造方法は、Al合金板のDI成形において、耳率が従来以上に低いためストリッピング工程で引っ掛かりが発生せず、また巻締加工をした時にフランジ加工部に割れが発生せず、かつ缶底部にもしわの発生がなく、従って薄肉化が容易である等工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (200)面〔回折角2θ〕におけるX線回折線の強度の半値巾を示す説明図である。
【符号の説明】
Ip (200)面〔回折角2θ〕における回折線の強度
β1/2 回折線の強度の半値巾(度)
Claims (1)
- Mg0.9〜1.3wt%、Cu0.1〜0.2wt%、Mn0.9〜1.2wt%、Fe0.3〜0.5wt%、Si0.1〜0.2wt%、さらにTi0.005〜0.05wt%若しくはTi0.005〜0.05wt%及びB0.0001〜0.01wt%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金鋳塊に560〜620℃で1〜10時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延するが、その熱間圧延の最終パスにおいて、圧延速度を300〜400メートル/分、減面率を40〜60%の範囲とし、かつ熱間圧延の終了温度を290〜330℃の範囲として熱延板を製造し、続いてこれに300〜400℃で1〜10時間の焼鈍を施し、次いで減面率75〜90%の冷間圧延を施し、さらに140〜170℃で1〜10時間の仕上げ焼鈍を施すことにより、当該Al合金板の耐力が250〜290MPa,耐圧強度が700KPa以上であって、その金属組織のX線回折測定において下記の測定条件で得られた(200)面の回折線強度の半値巾(β1/2 )が0.15〜0.25度となるような結晶状態を有し、表面性状が良好な成形性に優れたDI缶胴用Al合金板の製造方法。
光学系の測定条件:X線源はCu
発散スリットは1°
受光スリットは0.15mm
散乱スリットは1°
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