JP3850542B2 - カーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビール及び炭酸飲料等の缶に使用されるキャンエンドに好適なカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法に関し、特に、カーリング工程におけるカール先端部のシワ及び内容物充填時の巻き締め部のシワの発生の抑制を図ったカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、ビール及び炭酸飲料等の缶に使用されるキャンエンドには軽量化によるコストダウンを主目的とした小径化及び材料板の薄肉化が急速に進められている。そこで、材料板の薄肉化に関して、耐圧強度を保持するため、高い材料強度を有すると共に、耐圧強度が高いキャンエンドの形状及びその加工方法が検討されている。この耐圧強度が高いキャンエンドの形状はフルフォームエンドと呼ばれ普及しつつあるものの、ベーシックエンドの加工時の絞り比が増加するため、カール先端部にシワが生じることがある。また、キャンボディとの巻き締め部の形状を大幅に変更するためには、大きな設備投資が必要となるため、材料板を薄肉化しても従来の形状で巻き締めを行っているので、巻き締め時にもシワが発生することがある。
【0003】
このようなシワが存在すると、充填後の缶内圧が高い炭酸飲料等の内容物において、高温保管時の内圧の増加により、飲み口部付近で角出し現象といわれるキャンエンドの変形が発生する。これにより、飲み口部が破裂し、内容物が飛散したり漏れることがある。
【0004】
この破裂を防止するため、製缶メーカでは、パネル部と呼ばれる中央部分よりもカウンタシンクと呼ばれる円周状に設けられた溝近傍部に優先的に変形を生じさせるためビードを設けている。しかし、このようなキャンエンドは、比較的内圧が低いビール及び窒素ガスを充填する非炭酸飲料用のキャンエンドには適しておらず、低内圧用キャンエンドにはビードを設けずに、高内圧用と低内圧用とを使い分けている。従来、どちらにも好適な材料は得られていない。
【0005】
従来、キャンエンド用材料としてJIS5182等のアルミニウム合金鋳塊に対して、USP3,502,448号又は特公平3−38331号公報に開示された方法によりアルミニウム合金板が製造されている。USP3,502,448号に記載されたアルミニウム合金板の製造方法においては、85%以上の加工率で冷間圧延が行われた後に、焼鈍が施されている。この従来の製造方法によれば、製品板での加工硬化が小さいため、ビードに優先的に角出し変形を生じさせて高い強度を得ることができる。しかし、この従来技術においては、カール先端部及び巻き締め部のシワが発生しやすい。これは、一般的にシワの発生を抑制には耳率の低下及び強度異方性の低下が有効であるとされているが、この従来技術では、耳率及び強度異方性が高いためである。
【0006】
一方、特公平3−38331号公報に記載されたアルミニウム合金板の製造方法においては、アルミニウム合金板に順に熱間圧延、第1冷間圧延、中間焼鈍及び第2冷間圧延が施されている。この製造方法によれば、強度異方性を低下することができると共に、耳率を低下することもできる。これにより、シワ等の不具合の発生が低減されている。しかし、この従来技術をビードが設けられたフルフォームエンドに適用しようとすると、製品板での加工硬化が大きいため、キャンエンドが加工された後の角出し部位であるカウンタシンクの剛性が高く、ビードでの優先的な変形が低下し、ビード以外で角出し現象が生じて飲み口が破裂する可能性がある。また、強度異方性及び耳率はUSP3,502,448号によるアルミニウム合金板よりも良好であるものの、薄肉化しようとする場合、カーリング時及び巻き締め時の均一変形の行いやすさは十分なものではなく、十分にシワの発生を抑制することはできない。更に、加工硬化が大きいため、開缶性向上のために開口部に切れ目を形成するスコア加工の加工率の上昇及びその残部の薄肉化に伴ってスコア底部に微小割れが生じやすくなる。
【0007】
また、容器に成形加工された際に容器の端部の強度が側壁の強度よりも高くなるアルミニウム合金板の製造方法が提案されている(特開平6−101005号公報)。この公報に記載された製造方法では、最終冷間圧延の前に材料板に溶体化処理及び急冷が施されている。この方法によれば、容器に成形加工されたときに容器の端部の強度を高くすることはできるが、シワの発生を抑制することはできない。
【0008】
耳率の低下及び強度異方性の低下のみでは十分にシワの発生を抑制することができないので、近時、材料板を均一に変形することが課題となってきている。この均一変形には材料板の十分な回復が必要であり、特にサブグレインの生成が効果を示すことが公知である。
【0009】
熱間圧延と再結晶との関係に着目してシワの発生を抑制するアルミニウム合金板の製造方法が提案されている(特開平4−228551号公報、特開平6−108211号公報)。これらの公報に記載された従来の製造方法では、熱間圧延における圧下率を制御してアルミニウム合金板内の再結晶粒の割合を制御し、これにより耳率の低下を図っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術ではサブグレインの生成を制御しキャンエンドに必要とされる特性を有するアルミニウム合金板は得られていない。USP3,502,448号に記載された製造方法では仕上げ焼鈍が施されているものの、サブグレインが十分には生成していない。また、シワ及びスコア加工時の微小割れを防止するために、特公平3−38331号公報に記載された製造方法の後に比較的高温下での仕上げ焼鈍を施す場合には、必要強度の保持及び強度の制御が困難であると共に、工程の増加に伴いコストが上昇し、制作日数が増加するという問題点がある。
【0011】
更に、現在のキャンエンドの多くには、プルタブがキャンエンドから離れないステイオンタブ(SOT)方式が採用されている。しかし、このSOT方式のキャンエンドは、それまで主流であったプルタブがキャンエンドから離れるリングプル(RP)方式と比して、開缶に強い力が必要であり、開缶性の向上が必要とされている。開缶性の向上には前述のようにスコア残部の薄肉化が一般的に行われているが、スコア残部を薄肉化しようとすると、スコア加工時にスコア底部に微小な割れが生じる場合がある。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、キャンエンドに必要とされる強度を有し低コストでカーリング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制されて各種のキャンエンドに適用することができ、好ましくはスコア加工性が良好なカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板は、フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、内部組織におけるサブグレインの面積占有率が3乃至30%であり、耐力が290(N/mm 2 )以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、アルミニウム合金板の組成及び内部組織におけるサブグレインの面積占有率を適切なものに規定しているので、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生を防止することができる。これにより、ビードの有無に関わらず、種々のキャンエンドに適用することができる。
【0015】
本発明に係るカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法は、フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板の製造方法において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳塊を圧延率を90%以上、圧延終了温度を310乃至370℃として熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延後の圧延板を圧延率が75乃至95%のタンデム圧延機による冷間圧延により製品板厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%とする冷間圧延工程とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る他のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法は、フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板の製造方法において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳塊を熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程後の圧延板を冷間圧延する第1冷間圧延工程と、前記第1冷間圧延工程後の圧延板を中間焼鈍する中間焼鈍工程と、前記中間焼鈍後の圧延板を圧延率が50乃至80%のタンデム圧延機による冷間圧延により製品板厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%とする第2冷間圧延工程とを有することを特徴とする。
【0017】
なお、前記冷間圧延工程又は前記第2冷間圧延工程にタンデム圧延機が使用されることが望ましい。
【0018】
本発明においては、熱間圧延後に適切な圧延率で冷間圧延し、冷間圧延中の発熱により動的な回復を進行させ、これにより、内部組織における面積占有率が3乃至30%のサブグレインを生成させているので、キャンエンドに必要とされる強度を保持したままカーリング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制されたアルミニウム合金板を製造することができる。更に、冷間圧延後に仕上げの焼鈍を施す必要がないので、低コストでアルミニウム合金板を製造することができる。
【0019】
なお、前記アルミニウム合金板はSi:0.05乃至0.30重量%を含有することが望ましい。更に、Cr:0.03乃至0.30重量%及びCu:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することが望ましい。また、Ti:0.01乃至0.10重量%を含有してもよい。
【0020】
これらの元素を含有することにより、耐圧強度及びスコア加工性が更に一層向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本願発明者等が前記課題を解決するため、冷間圧延後の熱処理による回復時に形成された回復組織によりシワの発生状況が変化することに着目し、現有材料を使用してアルミニウム合金板のカーリング性及び成形性について鋭意実験研究を重ねた。この結果、回復組織中のサブグレインの面積占有率が高いほど、カーリング性及び成形性が向上し、更にスコア加工性も向上することを見い出した。しかし、従来の製造方法で実施されている冷間圧延にはシングルの圧延機が使用されているため、サブグレインを生成させるにはこの冷間圧延後に比較的高温で仕上げ焼鈍を行う必要がある。冷間圧延の圧延率が高い材料板は高温での強度低下が著しいため、シングル圧延機を使用してキャンエンドに必要とされる強度を保持したままシワを制御することは困難である。本願発明者等が更に研究を重ねた結果、タンデム圧延機を使用して冷間圧延を行うことにより、圧延中の発熱により圧延中に動的な回復が進行し、冷間圧延後にサブグレインが生成していることに想到した。この場合には、従来の仕上げ焼鈍による静的な回復でサブグレインを生成させる場合と比して、低い温度で同程度のサブグレインを生成させることができる。従来の仕上げ焼鈍の温度を調節してサブグレインを生成させる場合には、前述のように、材料強度が著しく低下してキャンエンドに必要とされる耐圧強度が低下していた。この耐圧強度は角出し変形を生じさせる内部圧力に対する強度である。
【0022】
更に、原料の組成とサブグレインの生成との関係について、Fe及びMnの添加によるAl−Fe系又はAl−Fe−Mn系の晶出物の数が多いほど、またその大きさが大きいほど、サブグレインの生成速度が速く、また比較的低温でもサブグレインを生成させることができることが判明した。また、Mgの添加により圧延前の素材の強度を高くするほど、同一圧延率において発熱温度が高くなることが判明した。
【0023】
以下、本発明に係るカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板に含有される化学成分及びその組成限定理由について説明する。
【0024】
Mg:3.00乃至5.50重量%
Mgはアルミニウム合金板の強度を向上させるために重要な元素である。Mg含有量が3.00重量%未満であると、ビール及び炭酸飲料等に使用されるキャンエンド用のアルミニウム合金板として十分な強度が得られない。一方、Mg含有量が5.50重量%を超えると、強度が高すぎ成形性が低下する。従って、Mg含有量は3.00乃至5.50重量%とする。
【0025】
Mn:0.20乃至0.60重量%
Mnはサブグレインの核となる微細晶出物の生成を促進しアルミニウム合金板の強度を向上させるために重要な元素である。また、薄肉化及び小径化により開缶性が低下することに対して、Mnは開缶性を向上させる。Mn含有量が0.20重量%未満であると、十分な強度及び開缶性を得ることができない。一方、Mn含有量が0.60重量%を超えると、微細晶出物が過剰に生成してリベット張り出し性及びスコア加工性等の成形性が著しく低下する。従って、Mnの含有量は0.20乃至0.60重量%とする。なお、リベット張り出し性とは、蓋部のタブとの結合部位の事前加工であるリベット加工の際の張り出し限界の程度をいう。
【0026】
Fe:0.10乃至0.60重量%
Feはサブグレインの核となる微細晶出物の生成を促進しキャンエンドとして重要な特性である成形性を向上させる結晶粒微細化に大きな効果を示す元素である。また、開缶性を向上させるAl−Fe−Mn系晶出物の生成にも効果を有する。Fe含有量が0.10重量%未満であると、結晶粒微細化及び開缶性の向上などの効果が不足する。一方、Fe含有量が0.60重量%を超えると、巨大晶出物が生成されると共に、晶出物の生成数が多くなり過ぎてリベット張り出し性及びスコア加工性等の成形性が著しく低下する。従って、Feの含有量は0.10乃至0.60重量%とする。
【0027】
Si:0.05乃至0.30重量%
Siはキャンエンドとして重要な特性である開缶性を向上させるMg−Si系晶出物を生成し組織の安定化に効果を示す元素である。Si含有量が0.05重量%未満であると、開缶性向上等の効果が低い。一方、Si含有量が0.30重量%を超えると、晶出物が過剰に生成して成形性が低下しやすい。従って、Siの含有量は0.05乃至0.30重量%であることが望ましい。
【0028】
Cr:0.03乃至0.30重量%
Crはアルミニウム合金板の強度を向上させる元素である。Cr含有量が0.03重量%未満であると、強度向上の効果が低い。一方、Cr含有量が0.30重量%を超えると、巨大晶出物が生成されると共に、晶出物の生成数が多くなって成形性が低下しやすい。従って、Crの含有量は0.03乃至0.30重量%であることが望ましい。
【0029】
Cu:0.03乃至0.20重量%
Cuはアルミニウム合金板の強度を向上させる元素である。Cu含有量が0.03重量%未満であると、強度向上の効果が低い。一方、Cu含有量が0.20重量%を超えると、キャンエンドとして重要な特性である耐食性が低下しやすいと共に、加工硬化が大きくなるため強度が高くなり過ぎて成形性が低下することがある。従って、Cuの含有量は0.03乃至0.20重量%であることが望ましい。
【0030】
Ti:0.01乃至0.10重量%
Tiは鋳造組織の微細化及び組織の安定化に効果を有する元素である。Ti含有量が0.01重量%未満であると、鋳造組織の微細化及び組織の安定化の効果が低く、成形性が低下しやすい。一方、Ti含有量が0.10重量%を超えると、巨大晶出物が生成されて成形性が低下しやすい。従って、Tiの含有量は0.01乃至0.10重量%であることが望ましい。
【0031】
次に、上記組成のアルミニウム合金板の製造方法について説明する。本願第1発明においては、上述の組成を有するアルミニウム合金鋳塊に均質化処理を行い、更に熱間圧延及び冷間圧延を施して最終製品であるアルミニウム合金板を得る。以下に、各熱処理及び圧延における数値限定理由について説明する。
【0032】
熱間圧延の圧延率:90%以上
熱間圧延の圧延率が90%未満であると、製品板において耳形状の安定化及び結晶粒微細化の効果が得られない。従って、熱間圧延の圧延率は90%以上とする。
【0033】
熱間圧延の終了温度:310乃至370℃
熱間圧延の終了温度が310℃未満であると、十分な再結晶粒が得られないため、耳率が高くなって安定して巻き締めを行うことができなくなると共に、強度が高くなり過ぎ、成形性が著しく低下して成形後の寸法不良が生じやすくなる。一方、熱間圧延の終了温度が370℃を越えると、再結晶粒が大きくなり過ぎるため、その後の冷間圧延後にサブグレインが生成しにくくなり、成形性が低下する。従って、熱間圧延の終了温度は310乃至370℃とする。
【0034】
冷間圧延の圧延率:75乃至95%
中間焼鈍を施さない場合に、冷間圧延の圧延率が75%未満であると、圧延中に動的な回復が生じにくいため、内部組織において適切なサブグレインの占有面積率を得られないと共に、キャンエンドに必要とされる強度を得ることができない。一方、冷間圧延の圧延率が95%を超えると、耳率が著しく上昇し巻き締め時の安定性が低下すると共に、アルミニウム合金板の強度が高くなり過ぎて成形性が低下する。従って、冷間圧延の圧延率は75乃至95%とする。
【0035】
なお、冷間圧延にはタンデム圧延機を使用することが望ましい。タンデム圧延機を使用することにより、シングルの圧延機と比して、1回の通板における圧延率を高くすることができる。これにより、1回の通板における発熱量が高くなるので、従来のように冷間圧延後に仕上げ焼鈍を施す場合と比して低温で、かつ連続的に回復を生じさせ、サブグレインを生成することができる。このように、冷間圧延により回復を生じさせて十分にサブグレインを生成することができるものであれば、圧延機はタンデム圧延機に限定されるものではない。
【0036】
内部組織におけるサブグレインの面積占有率:3乃至30%
内部組織におけるサブグレインの面積占有率が3%未満であると、均一変形によるカーリング時及び巻き締め時のシワの発生を抑制することができない。一方、サブグレインの面積占有率は高いほどシワの改善に効果を示す。しかし、現在の圧延技術でサブグレインの面積占有率が30%を超えるようにするためには、冷間圧延時の発熱温度を高くする必要がある。このため、アルミニウム合金板の強度が著しく低下してしまい、サブグレインと強度とを制御することは困難である。従って、内部組織におけるサブグレインの面積占有率は3乃至30%とする。
【0037】
また、本願第2発明においては、上述の組成を有するアルミニウム合金鋳塊に均質化処理を行い、更に熱間圧延及び冷間圧延を施す。その後、中間焼鈍を行った後、仕上げの冷間圧延を施して最終製品であるアルミニウム合金板を得る。この場合、中間焼鈍後には完全な再結晶粒が形成されているものとする。また、中間焼鈍時の加熱冷却速度が速いほど微細な内部組織が得られ、成形性が向上する。従って、中間焼鈍として、バッチ式焼鈍よりも連続式焼鈍(CAL)を行うことが望ましい。更に、中間焼鈍前の冷間圧延にはシングル又はタンデム等の圧延機を使用してもよいが、中間焼鈍後の仕上げの冷間圧延にはタンデム圧延機を使用することが望ましい。これは、前述のように、タンデム圧延機による冷間圧延により回復を生じさせてサブグレインを生成することができるからである。
【0038】
次に、中間焼鈍後の冷間圧延率の数値限定理由について説明する。
【0039】
冷間圧延の圧延率:50乃至80%
本願第2発明においては、中間焼鈍を行うことにより再結晶粒を微細にしているので、本願第1発明と比して、低い圧延率の冷間圧延で所望のサブグレインを得ることができる。しかし、中間焼鈍後の冷間圧延の圧延率が50%未満であると、圧延時の発熱温度が低く回復が十分に起こらず、サブグレインが生成しにくい。また、キャンエンドに必要な強度が得られない。一方、圧延率が80%を超えると、強度が高くなり過ぎて成形性が低下する。また、耳率及び強度異方性が不良となりカーリング時又は巻き締め時にシワが発生する。従って、中間焼鈍後の冷間圧延の圧延率は50乃至80%とする。
【0040】
なお、本願第1発明と同様の理由から、内部組織におけるサブグレインの面積占有率は3乃至30%とする。
【0041】
本願第1及び第2発明において、仕上げの冷間圧延後にアルミニウム合金板に強度調整範囲の仕上げ焼鈍等の熱処理を施してもよい。このような熱処理によって特性が低下することはないためである。
【0042】
また、前述の方法により製造されたアルミニウム合金板は内容物、形状及び蓋の種類に関わらず、キャンエンドとして使用可能であるが、本願第1発明により製造されたアルミニウム合金板は、特に炭酸飲料等用のビードが設けられるフルフォームエンドに好適であり、本願第2発明により製造されたアルミニウム合金板は、特にビール又は非炭酸飲料等用のビードが設けられないフルフォームエンドに好適である。
【0043】
なお、アルミニウム合金板の耐力が290(N/mm2)未満であると、強度が低いために蓋材としての使用が困難となることがある。一方、強度が高くなるほど耐圧強度に関しては有利となるが、成形性が低下しやすくなると共に、カーリングシワが発生しやすくなる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。
【0045】
第1実施例
先ず、下記表1に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理として510℃に4時間保持した。次に、このアルミニウム合金鋳塊に圧延率が99%、終了温度が330℃の熱間圧延を施し、板厚を2.0mmとした。次いで、この圧延板にタンデム圧延機により圧延率が87%の冷間圧延を施し、板厚を0.26mmとした。
【0046】
【表1】
【0047】
冷間圧延によりアルミニウム合金板を作製した後、各実施例及び比較例について、内部組織におけるサブグレインの面積占有率を測定した。その後、270℃で20秒間の焼付塗装相当の熱処理を施した。これは、実際のキャンエンド用アルミニウム合金板は焼付塗装後に成形加工されるので、これと同じ条件とするために行ったものである。そして、各実施例及び比較例について機械的性質を測定した。これらの結果を下記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
次に、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。
【0050】
カーリング時及び巻き締め時のシワの発生の評価について説明する。図1(a)乃至(c)はキャンエンド製造のためのプレス加工を示す模式図である。先ず、図1(a)に示すように、熱処理後のアルミニウム合金板1から円板2aを打抜く。次いで、図1(b)及び(c)に示すように、円板2aの端部をプレス加工により湾曲させベーシックエンド2bを作製した。図2はカーリングを示す模式的断面図である。次いで、ベーシックエンド2bの先端部にカーラ3によりカーリングを施した。図3はカーリングによるシワを示す模式的底面図である。カーリング性が不良である場合には、図3に示すように、シワ10aが発生する。このシワ10aの有無を確認した。シワが全く発生しなかったものを◎、ややシワが生じたが良好であったものを○、シワが生じやや不良であったものを△、シワが発生し不良であったものを×として評価した。
【0051】
図4(a)乃至(c)は巻き締めを示す模式的断面図である。巻き締めにおいては、先ず、図4(a)に示すように、カーリングを施されたベーシックエンド2bの先端部を、ネック板厚及びフランジ形状が一定のアルミニウム製キャンボディ4の先端部に引っかけた。次いで、図4(b)及び(c)に示すように、この先端部に巻き締め機5により巻き締めを施した。図5は巻き締めによるシワを示す模式的底面図である。巻き締め性が不良である場合には、図5に示すように、シワ10bが発生する。このシワ10bについてカーリング時に発生したシワと同様にして評価した。
【0052】
また、スコア加工性については、加工率が70%のスコア加工による微小割れの発生により評価した。全く微小割れが発生したものを◎、微小割れが発生しても良好であったものを○、微小割れが発生しやや不良であったものを△、微小割れが発生し不良であったものを×とした。
【0053】
耐圧強度については、各アルミニウム合金板を蓋形状に成形した後、缶に取付けられたときに内側となる面に水圧を印加し、アルミニウム合金板が塑性変形するときの圧力を測定した。
【0054】
また、ビード角出し率は、耐圧強度の測定時にビード部から優先的に塑性変形する割合である。
【0055】
そして、リベット張り出し限界は、タブを取付けるためのリベットを加工する際に割れが発生しない限界の高さである。このリベット加工においては、3段階の張り出しを行った。これらの結果を下記表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
上記表3に示すように、実施例1及び2においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0058】
一方、比較例3においては、Mg含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例4においては、Mg含有量が本発明範囲の上限を超えているので、巻締め時にシワが発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0059】
比較例5においては、Mn含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低かった。比較例6においては、Mn含有量が本発明範囲の上限を超えているので、晶出物が過剰に生成してリベット張り出し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0060】
比較例7においては、Fe含有量が本発明範囲の下限未満であるので、結晶粒が大きくスコア加工性が劣っていた。比較例8においては、Fe含有量が本発明範囲の上限を超えているので、リベット張り出し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0061】
比較例9においては、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満であるので、カーリング時及び巻締め時にシワが発生し、角出し率が低かった。比較例10においては、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の上限を超えているので、シワ及び成形性は良好であったが、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。
【0062】
第2実施例
下記表4に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使用して、第1実施例と同様にして、アルミニウム合金板を作製した。
【0063】
【表4】
【0064】
そして、第1実施例と同様にして、内部組織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測定した。これらの結果を下記表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。これらの結果を下記表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
上記表6に示すように、実施例11及び12においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0069】
一方、比較例13においては、Si含有量が本発明範囲の下限未満であるので、開缶性の低下が予想され、高純地金が必要となり大幅なコストアップにつながる。比較例14においては、Si含有量が本発明範囲の上限を超えているので、カーリング時及び巻締め時にシワが発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0070】
第3実施例
下記表7及び8に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使用して、第1実施例と同様にして、アルミニウム合金板を作製した。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
そして、第1実施例と同様にして、内部組織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測定した。これらの結果を下記表9及び10に示す。
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。これらの結果を下記表11及び12に示す。
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】
上記表11及び12に示すように、実施例15及び34においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0080】
一方、比較例35においては、Cr含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例36においては、Cr含有量が本発明範囲の上限を超えているので、金属間化合物の増加により成形性が低下した。
【0081】
比較例37においては、Cu含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例38においては、Cu含有量が本発明範囲の上限を超えているので、強度が高すぎて成形性が低かった。
【0082】
比較例39においては、Ti含有量が本発明範囲の下限未満であるので、粗大結晶粒が生成し、成形性が低下した。比較例40においては、Ti含有量が本発明範囲の上限を超えているので、大きな金属間化合物が多数生成し、成形性が低下した。
【0083】
第4実施例
先ず、上記表1に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理として510℃に4時間保持した。次に、このアルミニウム合金鋳塊に圧延率が99%、終了温度が330℃の熱間圧延を施し、板厚を3.0mmとした。次いで、この圧延板にタンデム圧延機により冷間圧延を施し、板厚を1.0mmとした。その後、中間焼鈍としてCALにより熱処理を施した。そして、熱処理後の圧延板をタンデム圧延機により冷間圧延して、製品板厚0.26mmとした。なお、実施例41及び42並びに比較例43乃至50の組成は、順に実施例1及び2並びに比較例3乃至10の組成と同様のものである。
【0084】
次に、第1実施例と同様にして、内部組織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測定した。これらの結果を下記表13に示す。
【0085】
【表13】
【0086】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。これらの結果を下記表14に示す。
【0087】
【表14】
【0088】
上記表14に示すように、実施例41及び42においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0089】
一方、比較例43においては、Mg含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例44においては、Mg含有量が本発明範囲の上限を超えているので、巻締め時にシワが発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0090】
比較例45においては、Mn含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低かった。比較例46においては、Mn含有量が本発明範囲の上限を超えているので、晶出物が過剰に生成し、リベット張り出し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0091】
比較例47においては、Fe含有量が本発明範囲の下限未満であるので、結晶粒が大きくスコア加工性が劣っていた。比較例48においては、Fe含有量が本発明範囲の上限を超えているので、リベット張り出し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0092】
比較例49においては、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満であるので、カーリング時及び巻締め時にシワが発生し、角出し率が低かった。比較例50においては、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の上限を超えているので、シワ及び成形性は良好であるが、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。
【0093】
第5実施例
上記表4に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使用して、第4実施例と同様にして、アルミニウム合金板を作製した。なお、実施例51及び52並びに比較例53及び54の組成は、順に実施例11及び12並びに比較例13及び14の組成と同様のものである。
【0094】
そして、第1実施例と同様にして、内部組織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測定した。これらの結果を下記表15に示す。
【0095】
【表15】
【0096】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。これらの結果を下記表16に示す。
【0097】
【表16】
【0098】
上記表16に示すように、実施例51及び52においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0099】
一方、比較例53においては、Si含有量が本発明範囲の下限未満であるので、スコア加工性が劣っていた。また、高純地金が必要となり大幅なコストアップにつながる。比較例54においては、Si含有量が本発明範囲の上限を超えているので、巻締め時にシワが発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0100】
第6実施例
上記表7及び8に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使用して、第4実施例と同様にして、アルミニウム合金板を作製した。なお、実施例55乃至74及び比較例75乃至80の組成は、順に実施例15乃至34及び比較例35乃至40の組成と同様のものである。
【0101】
そして、第1実施例と同様にして、内部組織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測定した。これらの結果を下記表17及び18に示す。
【0102】
【表17】
【0103】
【表18】
【0104】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。これらの結果を下記表19及び20に示す。
【0105】
【表19】
【0106】
【表20】
【0107】
上記表19及び20に示すように、実施例55乃至74においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0108】
一方、比較例75においては、Cr含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例76においては、Cr含有量が本発明範囲の上限を超えているので、金属間化合物の増加により、強度が高くなりすぎて成形性が低下した。
【0109】
比較例77においては、Cu含有量が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド材として十分な強度を得ることができなかった。比較例78においては、Cu含有量が本発明範囲の上限を超えているので、強度が高すぎて成形性が低下した。
【0110】
比較例79においては、Ti含有量が本発明範囲の下限未満であるので、粗大結晶粒が生成し、成形性が低下した。比較例80においては、Ti含有量が本発明範囲の上限を超えているので、大きな金属間化合物が多数生成し、成形性が低下した。
【0111】
第7実施例
上記表7中の実施例22と同様の組成を有するアルミニウム合金鋳塊を第1実施例と同様に均質化処理した。次に、このアルミニウム合金鋳塊に下記表21に示す製造条件で熱間圧延及び冷間圧延を施すことによりアルミニウム合金板を製造した。なお、実施例86及び比較例93においては、冷間圧延後に210℃で2時間保持の仕上げ焼鈍を施した。また、比較例94においては、熱間圧延により板厚を3.5mmとし、圧延率が50%の冷間圧延、中間焼鈍及び圧延率が66%の冷間圧延を順次施した。
【0112】
【表21】
【0113】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、耐力、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。更に、耳率を測定した。これらの結果を下記表22及び23に示す。
【0114】
【表22】
【0115】
【表23】
【0116】
上記表22及び23に示すように、実施例81乃至86においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、耳率が低く、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。仕上げ焼鈍を施した実施例86においても良好な結果を得ることができた。
【0117】
一方、比較例87においては、冷間圧延にシングル圧延機を使用したので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0118】
比較例88においては、熱間圧延率が本発明範囲の下限未満であるので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、耳率が高くなって巻き締め時にシワが発生した。
【0119】
比較例89においては、熱間圧延終了温度が本発明範囲の上限を超えているので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0120】
比較例90においては、熱間圧延終了温度が本発明範囲の下限未満であるので、耳率が高くなり、巻き締め時にシワが発生した。
【0121】
比較例91においては、冷間圧延率が本発明範囲の下限未満であるので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0122】
比較例92においては、冷間圧延率が本発明範囲の上限を超えているので、耳率が極めて高くリベット張り出し限界が小さいため、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0123】
比較例93においては、仕上げ焼鈍を施したが、冷間圧延にシングル圧延機を使用したので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、巻き締め時にシワが発生した。
【0124】
比較例94においては、冷間圧延工程中に中間焼鈍を施したが、冷間圧延にシングル圧延機を使用したので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、ビードの角出し率が低く、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0125】
第8実施例
上記表7中の実施例22と同様の組成を有するアルミニウム合金鋳塊を第4実施例と同様に均質化処理した後、熱間圧延した。次に、このアルミニウム合金鋳塊に下記表24に示す製造条件で第1冷間圧延、中間焼鈍及び第2冷間圧延を施すことによりアルミニウム合金板を製造した。なお、実施例100においては、冷間圧延後に210℃で2時間保持の仕上げ焼鈍を施した。
【0126】
【表24】
【0127】
次いで、第1実施例と同様にして、各実施例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板について、耐力、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。更に、耳率を測定した。これらの結果を下記表25及び26に示す。
【0128】
【表25】
【0129】
【表26】
【0130】
上記表25及び26に示すように、実施例95乃至100においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウム合金板を製造したので、耳率が低く、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0131】
一方、比較例101及び102においては、中間焼鈍後の冷間圧延にシングル圧延機を使用しているので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び巻き締め時にシワが発生した。特に、比較例102においては、スコア加工性が不良であった。
【0132】
比較例103においては、中間焼鈍後の冷間圧延率が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低いと共に、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、巻き締め時にシワが発生した。
【0133】
比較例104においては、中間焼鈍後の冷間圧延率が本発明範囲の上限を超えているので、耐圧強度が過剰に高くなったため耳率が高くなり、寸法規格から外れた。
【0134】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、アルミニウム合金板の組成及び内部組織におけるサブグレインの面積占有率が適切なものに規定されているので、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生を防止することができる。従って、内容物に関わらず、種々のキャンエンドに適用することができる。また、本発明方法によれば、冷間圧延中の発熱により動的な回復を進行して内部組織における面積占有率が3乃至30%のサブグレインが生成するので、強度を低下させることなくカーリング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制されたアルミニウム合金板を製造することができる。また、仕上げ焼鈍を施す必要がないのでコストが低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(c)はキャンエンド製造のためのプレス加工を示す模式図である。
【図2】カーリングを示す模式的断面図である。
【図3】カーリングによるシワを示す模式的底面図である。
【図4】(a)乃至(c)は巻き締めを示す模式的断面図である。
【図5】巻き締めによるシワを示す模式的底面図である。
【符号の説明】
1;アルミニウム合金板
2a;円板
2b;ベーシックエンド
3;カーラ
4;キャンボディ
5;巻き締め機
10a、10b;シワ
Claims (9)
- フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、内部組織におけるサブグレインの面積占有率が3乃至30%であり、耐力が290(N/mm 2 )以上であることを特徴とするカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
- Si:0.05乃至0.30重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
- Cr:0.03乃至0.30重量%及びCu:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項2に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
- Ti:0.01乃至0.10重量%を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
- フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板の製造方法において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳塊を圧延率を90%以上、圧延終了温度を310乃至370℃として熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延後の圧延板を圧延率が75乃至95%のタンデム圧延機による冷間圧延により製品板厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%とする冷間圧延工程とを有することを特徴とするカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
- フルフォームタイプのキャンエンドに使用されるアルミニウム合金板の製造方法において、Mg:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳塊を熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程後の圧延板を冷間圧延する第1冷間圧延工程と、前記第1冷間圧延工程後の圧延板を中間焼鈍する中間焼鈍工程と、前記中間焼鈍後の圧延板を圧延率が50乃至80%のタンデム圧延機による冷間圧延により製品板厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%とする第2冷間圧延工程とを有することを特徴とするカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
- Si:0.05乃至0.30重量%を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
- Cr:0.03乃至0.30重量%及びCu:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項7に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
- Ti:0.01乃至0.10重量%を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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