JPH11229066A - カーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

カーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法

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JPH11229066A
JPH11229066A JP3783398A JP3783398A JPH11229066A JP H11229066 A JPH11229066 A JP H11229066A JP 3783398 A JP3783398 A JP 3783398A JP 3783398 A JP3783398 A JP 3783398A JP H11229066 A JPH11229066 A JP H11229066A
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隆 稲葉
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 キャンエンドに必要とされる強度を有し低コ
ストでカーリング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制
されて各種のキャンエンドに適用することができ、好ま
しくはスコア加工性が良好なカーリング性及び巻き締め
性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法を提供
する。 【解決手段】 Mg:3.00乃至5.50重量%、M
n:0.20乃至0.60重量%、Fe:0.10乃至
0.60重量%、Si:0.05乃至0.30重量%、
Cr:0.03乃至0.30重量%、Cu:0.03乃
至0.20重量%及びTi:0.01乃至0.10重量
%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組
成を有するアルミニウム合金鋳塊を、圧延率を90%以
上、圧延終了温度を310乃至370℃として熱間圧延
し、熱間圧延後の圧延板を圧延率が75乃至95%の冷
間圧延により製品板厚とし、内部組織におけるサブグレ
インの面積占有率を3乃至30%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はビール及び炭酸飲料
等の缶に使用されるキャンエンドに好適なカーリング性
及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製
造方法に関し、特に、カーリング工程におけるカール先
端部のシワ及び内容物充填時の巻き締め部のシワの発生
の抑制を図ったカーリング性及び巻き締め性が優れたア
ルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、ビール及び炭酸飲料等の缶に使用
されるキャンエンドには軽量化によるコストダウンを主
目的とした小径化及び材料板の薄肉化が急速に進められ
ている。そこで、材料板の薄肉化に関して、耐圧強度を
保持するため、高い材料強度を有すると共に、耐圧強度
が高いキャンエンドの形状及びその加工方法が検討され
ている。この耐圧強度が高いキャンエンドの形状はフル
フォームエンドと呼ばれ普及しつつあるものの、ベーシ
ックエンドの加工時の絞り比が増加するため、カール先
端部にシワが生じることがある。また、キャンボディと
の巻き締め部の形状を大幅に変更するためには、大きな
設備投資が必要となるため、材料板を薄肉化しても従来
の形状で巻き締めを行っているので、巻き締め時にもシ
ワが発生することがある。
【0003】このようなシワが存在すると、充填後の缶
内圧が高い炭酸飲料等の内容物において、高温保管時の
内圧の増加により、飲み口部付近で角出し現象といわれ
るキャンエンドの変形が発生する。これにより、飲み口
部が破裂し、内容物が飛散したり漏れることがある。
【0004】この破裂を防止するため、製缶メーカで
は、パネル部と呼ばれる中央部分よりもカウンタシンク
と呼ばれる円周状に設けられた溝近傍部に優先的に変形
を生じさせるためビードを設けている。しかし、このよ
うなキャンエンドは、比較的内圧が低いビール及び窒素
ガスを充填する非炭酸飲料用のキャンエンドには適して
おらず、低内圧用キャンエンドにはビードを設けずに、
高内圧用と低内圧用とを使い分けている。従来、どちら
にも好適な材料は得られていない。
【0005】従来、キャンエンド用材料としてJIS5
182等のアルミニウム合金鋳塊に対して、USP3,
502,448号又は特公平3−38331号公報に開
示された方法によりアルミニウム合金板が製造されてい
る。USP3,502,448号に記載されたアルミニ
ウム合金板の製造方法においては、85%以上の加工率
で冷間圧延が行われた後に、焼鈍が施されている。この
従来の製造方法によれば、製品板での加工硬化が小さい
ため、ビードに優先的に角出し変形を生じさせて高い強
度を得ることができる。しかし、この従来技術において
は、カール先端部及び巻き締め部のシワが発生しやす
い。これは、一般的にシワの発生を抑制には耳率の低下
及び強度異方性の低下が有効であるとされているが、こ
の従来技術では、耳率及び強度異方性が高いためであ
る。
【0006】一方、特公平3−38331号公報に記載
されたアルミニウム合金板の製造方法においては、アル
ミニウム合金板に順に熱間圧延、第1冷間圧延、中間焼
鈍及び第2冷間圧延が施されている。この製造方法によ
れば、強度異方性を低下することができると共に、耳率
を低下することもできる。これにより、シワ等の不具合
の発生が低減されている。しかし、この従来技術をビー
ドが設けられたフルフォームエンドに適用しようとする
と、製品板での加工硬化が大きいため、キャンエンドが
加工された後の角出し部位であるカウンタシンクの剛性
が高く、ビードでの優先的な変形が低下し、ビード以外
で角出し現象が生じて飲み口が破裂する可能性がある。
また、強度異方性及び耳率はUSP3,502,448
号によるアルミニウム合金板よりも良好であるものの、
薄肉化しようとする場合、カーリング時及び巻き締め時
の均一変形の行いやすさは十分なものではなく、十分に
シワの発生を抑制することはできない。更に、加工硬化
が大きいため、開缶性向上のために開口部に切れ目を形
成するスコア加工の加工率の上昇及びその残部の薄肉化
に伴ってスコア底部に微小割れが生じやすくなる。
【0007】また、容器に成形加工された際に容器の端
部の強度が側壁の強度よりも高くなるアルミニウム合金
板の製造方法が提案されている(特開平6−10100
5号公報)。この公報に記載された製造方法では、最終
冷間圧延の前に材料板に溶体化処理及び急冷が施されて
いる。この方法によれば、容器に成形加工されたときに
容器の端部の強度を高くすることはできるが、シワの発
生を抑制することはできない。
【0008】耳率の低下及び強度異方性の低下のみでは
十分にシワの発生を抑制することができないので、近
時、材料板を均一に変形することが課題となってきてい
る。この均一変形には材料板の十分な回復が必要であ
り、特にサブグレインの生成が効果を示すことが公知で
ある。
【0009】熱間圧延と再結晶との関係に着目してシワ
の発生を抑制するアルミニウム合金板の製造方法が提案
されている(特開平4−228551号公報、特開平6
−108211号公報)。これらの公報に記載された従
来の製造方法では、熱間圧延における圧下率を制御して
アルミニウム合金板内の再結晶粒の割合を制御し、これ
により耳率の低下を図っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
技術ではサブグレインの生成を制御しキャンエンドに必
要とされる特性を有するアルミニウム合金板は得られて
いない。USP3,502,448号に記載された製造
方法では仕上げ焼鈍が施されているものの、サブグレイ
ンが十分には生成していない。また、シワ及びスコア加
工時の微小割れを防止するために、特公平3−3833
1号公報に記載された製造方法の後に比較的高温下での
仕上げ焼鈍を施す場合には、必要強度の保持及び強度の
制御が困難であると共に、工程の増加に伴いコストが上
昇し、制作日数が増加するという問題点がある。
【0011】更に、現在のキャンエンドの多くには、プ
ルタブがキャンエンドから離れないステイオンタブ(S
OT)方式が採用されている。しかし、このSOT方式
のキャンエンドは、それまで主流であったプルタブがキ
ャンエンドから離れるリングプル(RP)方式と比し
て、開缶に強い力が必要であり、開缶性の向上が必要と
されている。開缶性の向上には前述のようにスコア残部
の薄肉化が一般的に行われているが、スコア残部を薄肉
化しようとすると、スコア加工時にスコア底部に微小な
割れが生じる場合がある。
【0012】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、キャンエンドに必要とされる強度を有し低
コストでカーリング時及び巻き締め時のシワの発生が抑
制されて各種のキャンエンドに適用することができ、好
ましくはスコア加工性が良好なカーリング性及び巻き締
め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法を提
供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係るカーリング
性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板は、M
g:3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至
0.60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%
を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成
を有し、内部組織におけるサブグレインの面積占有率が
3乃至30%であることを特徴とする。
【0014】本発明においては、アルミニウム合金板の
組成及び内部組織におけるサブグレインの面積占有率を
適切なものに規定しているので、カーリング時及び巻き
締め時のシワの発生を防止することができる。これによ
り、ビードの有無に関わらず、種々のキャンエンドに適
用することができる。
【0015】本発明に係るカーリング性及び巻き締め性
が優れたアルミニウム合金板の製造方法は、Mg:3.
00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.60
重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含有
し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有す
るアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理工
程と、前記アルミニウム合金鋳塊を圧延率を90%以
上、圧延終了温度を310乃至370℃として熱間圧延
する熱間圧延工程と、前記熱間圧延後の圧延板を圧延率
が75乃至95%の冷間圧延により製品板厚とし内部組
織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%と
する冷間圧延工程とを有することを特徴とする。
【0016】本発明に係る他のカーリング性及び巻き締
め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法は、Mg:
3.00乃至5.50重量%、Mn:0.20乃至0.
60重量%及びFe:0.10乃至0.60重量%を含
有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有
するアルミニウム合金鋳塊を均質化処理する均質化処理
工程と、前記アルミニウム合金鋳塊を熱間圧延する熱間
圧延工程と、前記熱間圧延工程後の圧延板を冷間圧延す
る第1冷間圧延工程と、前記第1冷間圧延工程後の圧延
板を中間焼鈍する中間焼鈍工程と、前記中間焼鈍後の圧
延板を圧延率が50乃至80%の冷間圧延により製品板
厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3
乃至30%とする第2冷間圧延工程とを有することを特
徴とする。
【0017】なお、前記冷間圧延工程又は前記第2冷間
圧延工程にタンデム圧延機が使用されることが望まし
い。
【0018】本発明においては、熱間圧延後に適切な圧
延率で冷間圧延し、冷間圧延中の発熱により動的な回復
を進行させ、これにより、内部組織における面積占有率
が3乃至30%のサブグレインを生成させているので、
キャンエンドに必要とされる強度を保持したままカーリ
ング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制されたアルミ
ニウム合金板を製造することができる。更に、冷間圧延
後に仕上げの焼鈍を施す必要がないので、低コストでア
ルミニウム合金板を製造することができる。
【0019】なお、前記アルミニウム合金板はSi:
0.05乃至0.30重量%を含有することが望まし
い。更に、Cr:0.03乃至0.30重量%及びC
u:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択さ
れた少なくとも1種の元素を含有することが望ましい。
また、Ti:0.01乃至0.10重量%を含有しても
よい。
【0020】これらの元素を含有することにより、耐圧
強度及びスコア加工性が更に一層向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】本願発明者等が前記課題を解決す
るため、冷間圧延後の熱処理による回復時に形成された
回復組織によりシワの発生状況が変化することに着目
し、現有材料を使用してアルミニウム合金板のカーリン
グ性及び成形性について鋭意実験研究を重ねた。この結
果、回復組織中のサブグレインの面積占有率が高いほ
ど、カーリング性及び成形性が向上し、更にスコア加工
性も向上することを見い出した。しかし、従来の製造方
法で実施されている冷間圧延にはシングルの圧延機が使
用されているため、サブグレインを生成させるにはこの
冷間圧延後に比較的高温で仕上げ焼鈍を行う必要があ
る。冷間圧延の圧延率が高い材料板は高温での強度低下
が著しいため、シングル圧延機を使用してキャンエンド
に必要とされる強度を保持したままシワを制御すること
は困難である。本願発明者等が更に研究を重ねた結果、
タンデム圧延機を使用して冷間圧延を行うことにより、
圧延中の発熱により圧延中に動的な回復が進行し、冷間
圧延後にサブグレインが生成していることに想到した。
この場合には、従来の仕上げ焼鈍による静的な回復でサ
ブグレインを生成させる場合と比して、低い温度で同程
度のサブグレインを生成させることができる。従来の仕
上げ焼鈍の温度を調節してサブグレインを生成させる場
合には、前述のように、材料強度が著しく低下してキャ
ンエンドに必要とされる耐圧強度が低下していた。この
耐圧強度は角出し変形を生じさせる内部圧力に対する強
度である。
【0022】更に、原料の組成とサブグレインの生成と
の関係について、Fe及びMnの添加によるAl−Fe
系又はAl−Fe−Mn系の晶出物の数が多いほど、ま
たその大きさが大きいほど、サブグレインの生成速度が
速く、また比較的低温でもサブグレインを生成させるこ
とができることが判明した。また、Mgの添加により圧
延前の素材の強度を高くするほど、同一圧延率において
発熱温度が高くなることが判明した。
【0023】以下、本発明に係るカーリング性及び巻き
締め性が優れたアルミニウム合金板に含有される化学成
分及びその組成限定理由について説明する。
【0024】Mg:3.00乃至5.50重量% Mgはアルミニウム合金板の強度を向上させるために重
要な元素である。Mg含有量が3.00重量%未満であ
ると、ビール及び炭酸飲料等に使用されるキャンエンド
用のアルミニウム合金板として十分な強度が得られな
い。一方、Mg含有量が5.50重量%を超えると、強
度が高すぎ成形性が低下する。従って、Mg含有量は
3.00乃至5.50重量%とする。
【0025】Mn:0.20乃至0.60重量% Mnはサブグレインの核となる微細晶出物の生成を促進
しアルミニウム合金板の強度を向上させるために重要な
元素である。また、薄肉化及び小径化により開缶性が低
下することに対して、Mnは開缶性を向上させる。Mn
含有量が0.20重量%未満であると、十分な強度及び
開缶性を得ることができない。一方、Mn含有量が0.
60重量%を超えると、微細晶出物が過剰に生成してリ
ベット張り出し性及びスコア加工性等の成形性が著しく
低下する。従って、Mnの含有量は0.20乃至0.6
0重量%とする。なお、リベット張り出し性とは、蓋部
のタブとの結合部位の事前加工であるリベット加工の際
の張り出し限界の程度をいう。
【0026】Fe:0.10乃至0.60重量% Feはサブグレインの核となる微細晶出物の生成を促進
しキャンエンドとして重要な特性である成形性を向上さ
せる結晶粒微細化に大きな効果を示す元素である。ま
た、開缶性を向上させるAl−Fe−Mn系晶出物の生
成にも効果を有する。Fe含有量が0.10重量%未満
であると、結晶粒微細化及び開缶性の向上などの効果が
不足する。一方、Fe含有量が0.60重量%を超える
と、巨大晶出物が生成されると共に、晶出物の生成数が
多くなり過ぎてリベット張り出し性及びスコア加工性等
の成形性が著しく低下する。従って、Feの含有量は
0.10乃至0.60重量%とする。
【0027】Si:0.05乃至0.30重量% Siはキャンエンドとして重要な特性である開缶性を向
上させるMg−Si系晶出物を生成し組織の安定化に効
果を示す元素である。Si含有量が0.05重量%未満
であると、開缶性向上等の効果が低い。一方、Si含有
量が0.30重量%を超えると、晶出物が過剰に生成し
て成形性が低下しやすい。従って、Siの含有量は0.
05乃至0.30重量%であることが望ましい。
【0028】Cr:0.03乃至0.30重量% Crはアルミニウム合金板の強度を向上させる元素であ
る。Cr含有量が0.03重量%未満であると、強度向
上の効果が低い。一方、Cr含有量が0.30重量%を
超えると、巨大晶出物が生成されると共に、晶出物の生
成数が多くなって成形性が低下しやすい。従って、Cr
の含有量は0.03乃至0.30重量%であることが望
ましい。
【0029】Cu:0.03乃至0.20重量% Cuはアルミニウム合金板の強度を向上させる元素であ
る。Cu含有量が0.03重量%未満であると、強度向
上の効果が低い。一方、Cu含有量が0.20重量%を
超えると、キャンエンドとして重要な特性である耐食性
が低下しやすいと共に、加工硬化が大きくなるため強度
が高くなり過ぎて成形性が低下することがある。従っ
て、Cuの含有量は0.03乃至0.20重量%である
ことが望ましい。
【0030】Ti:0.01乃至0.10重量% Tiは鋳造組織の微細化及び組織の安定化に効果を有す
る元素である。Ti含有量が0.01重量%未満である
と、鋳造組織の微細化及び組織の安定化の効果が低く、
成形性が低下しやすい。一方、Ti含有量が0.10重
量%を超えると、巨大晶出物が生成されて成形性が低下
しやすい。従って、Tiの含有量は0.01乃至0.1
0重量%であることが望ましい。
【0031】次に、上記組成のアルミニウム合金板の製
造方法について説明する。本願第1発明においては、上
述の組成を有するアルミニウム合金鋳塊に均質化処理を
行い、更に熱間圧延及び冷間圧延を施して最終製品であ
るアルミニウム合金板を得る。以下に、各熱処理及び圧
延における数値限定理由について説明する。
【0032】熱間圧延の圧延率:90%以上 熱間圧延の圧延率が90%未満であると、製品板におい
て耳形状の安定化及び結晶粒微細化の効果が得られな
い。従って、熱間圧延の圧延率は90%以上とする。
【0033】熱間圧延の終了温度:310乃至370℃ 熱間圧延の終了温度が310℃未満であると、十分な再
結晶粒が得られないため、耳率が高くなって安定して巻
き締めを行うことができなくなると共に、強度が高くな
り過ぎ、成形性が著しく低下して成形後の寸法不良が生
じやすくなる。一方、熱間圧延の終了温度が370℃を
越えると、再結晶粒が大きくなり過ぎるため、その後の
冷間圧延後にサブグレインが生成しにくくなり、成形性
が低下する。従って、熱間圧延の終了温度は310乃至
370℃とする。
【0034】冷間圧延の圧延率:75乃至95% 中間焼鈍を施さない場合に、冷間圧延の圧延率が75%
未満であると、圧延中に動的な回復が生じにくいため、
内部組織において適切なサブグレインの占有面積率を得
られないと共に、キャンエンドに必要とされる強度を得
ることができない。一方、冷間圧延の圧延率が95%を
超えると、耳率が著しく上昇し巻き締め時の安定性が低
下すると共に、アルミニウム合金板の強度が高くなり過
ぎて成形性が低下する。従って、冷間圧延の圧延率は7
5乃至95%とする。
【0035】なお、冷間圧延にはタンデム圧延機を使用
することが望ましい。タンデム圧延機を使用することに
より、シングルの圧延機と比して、1回の通板における
圧延率を高くすることができる。これにより、1回の通
板における発熱量が高くなるので、従来のように冷間圧
延後に仕上げ焼鈍を施す場合と比して低温で、かつ連続
的に回復を生じさせ、サブグレインを生成することがで
きる。このように、冷間圧延により回復を生じさせて十
分にサブグレインを生成することができるものであれ
ば、圧延機はタンデム圧延機に限定されるものではな
い。
【0036】内部組織におけるサブグレインの面積占有
率:3乃至30% 内部組織におけるサブグレインの面積占有率が3%未満
であると、均一変形によるカーリング時及び巻き締め時
のシワの発生を抑制することができない。一方、サブグ
レインの面積占有率は高いほどシワの改善に効果を示
す。しかし、現在の圧延技術でサブグレインの面積占有
率が30%を超えるようにするためには、冷間圧延時の
発熱温度を高くする必要がある。このため、アルミニウ
ム合金板の強度が著しく低下してしまい、サブグレイン
と強度とを制御することは困難である。従って、内部組
織におけるサブグレインの面積占有率は3乃至30%と
する。
【0037】また、本願第2発明においては、上述の組
成を有するアルミニウム合金鋳塊に均質化処理を行い、
更に熱間圧延及び冷間圧延を施す。その後、中間焼鈍を
行った後、仕上げの冷間圧延を施して最終製品であるア
ルミニウム合金板を得る。この場合、中間焼鈍後には完
全な再結晶粒が形成されているものとする。また、中間
焼鈍時の加熱冷却速度が速いほど微細な内部組織が得ら
れ、成形性が向上する。従って、中間焼鈍として、バッ
チ式焼鈍よりも連続式焼鈍(CAL)を行うことが望ま
しい。更に、中間焼鈍前の冷間圧延にはシングル又はタ
ンデム等の圧延機を使用してもよいが、中間焼鈍後の仕
上げの冷間圧延にはタンデム圧延機を使用することが望
ましい。これは、前述のように、タンデム圧延機による
冷間圧延により回復を生じさせてサブグレインを生成す
ることができるからである。
【0038】次に、中間焼鈍後の冷間圧延率の数値限定
理由について説明する。
【0039】冷間圧延の圧延率:50乃至80% 本願第2発明においては、中間焼鈍を行うことにより再
結晶粒を微細にしているので、本願第1発明と比して、
低い圧延率の冷間圧延で所望のサブグレインを得ること
ができる。しかし、中間焼鈍後の冷間圧延の圧延率が5
0%未満であると、圧延時の発熱温度が低く回復が十分
に起こらず、サブグレインが生成しにくい。また、キャ
ンエンドに必要な強度が得られない。一方、圧延率が8
0%を超えると、強度が高くなり過ぎて成形性が低下す
る。また、耳率及び強度異方性が不良となりカーリング
時又は巻き締め時にシワが発生する。従って、中間焼鈍
後の冷間圧延の圧延率は50乃至80%とする。
【0040】なお、本願第1発明と同様の理由から、内
部組織におけるサブグレインの面積占有率は3乃至30
%とする。
【0041】本願第1及び第2発明において、仕上げの
冷間圧延後にアルミニウム合金板に強度調整範囲の仕上
げ焼鈍等の熱処理を施してもよい。このような熱処理に
よって特性が低下することはないためである。
【0042】また、前述の方法により製造されたアルミ
ニウム合金板は内容物、形状及び蓋の種類に関わらず、
キャンエンドとして使用可能であるが、本願第1発明に
より製造されたアルミニウム合金板は、特に炭酸飲料等
用のビードが設けられるフルフォームエンドに好適であ
り、本願第2発明により製造されたアルミニウム合金板
は、特にビール又は非炭酸飲料等用のビードが設けられ
ないフルフォームエンドに好適である。
【0043】なお、アルミニウム合金板の耐力が290
(N/mm2)未満であると、強度が低いために蓋材と
しての使用が困難となることがある。一方、強度が高く
なるほど耐圧強度に関しては有利となるが、成形性が低
下しやすくなると共に、カーリングシワが発生しやすく
なる。
【0044】
【実施例】以下、本発明の実施例について、その特許請
求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明す
る。
【0045】第1実施例 先ず、下記表1に示す組成を有するアルミニウム合金鋳
塊を均質化処理として510℃に4時間保持した。次
に、このアルミニウム合金鋳塊に圧延率が99%、終了
温度が330℃の熱間圧延を施し、板厚を2.0mmと
した。次いで、この圧延板にタンデム圧延機により圧延
率が87%の冷間圧延を施し、板厚を0.26mmとし
た。
【0046】
【表1】
【0047】冷間圧延によりアルミニウム合金板を作製
した後、各実施例及び比較例について、内部組織におけ
るサブグレインの面積占有率を測定した。その後、27
0℃で20秒間の焼付塗装相当の熱処理を施した。これ
は、実際のキャンエンド用アルミニウム合金板は焼付塗
装後に成形加工されるので、これと同じ条件とするため
に行ったものである。そして、各実施例及び比較例につ
いて機械的性質を測定した。これらの結果を下記表2に
示す。
【0048】
【表2】
【0049】次に、各実施例及び比較例の熱処理後のア
ルミニウム合金板について、カーリング時及び巻き締め
時のシワの発生、耐圧強度、ビード角出し率、リベット
張り出し限界並びにスコア加工性について評価した。
【0050】カーリング時及び巻き締め時のシワの発生
の評価について説明する。図1(a)乃至(c)はキャ
ンエンド製造のためのプレス加工を示す模式図である。
先ず、図1(a)に示すように、熱処理後のアルミニウ
ム合金板1から円板2aを打抜く。次いで、図1(b)
及び(c)に示すように、円板2aの端部をプレス加工
により湾曲させベーシックエンド2bを作製した。図2
はカーリングを示す模式的断面図である。次いで、ベー
シックエンド2bの先端部にカーラ3によりカーリング
を施した。図3はカーリングによるシワを示す模式的底
面図である。カーリング性が不良である場合には、図3
に示すように、シワ10aが発生する。このシワ10a
の有無を確認した。シワが全く発生しなかったものを
◎、ややシワが生じたが良好であったものを○、シワが
生じやや不良であったものを△、シワが発生し不良であ
ったものを×として評価した。
【0051】図4(a)乃至(c)は巻き締めを示す模
式的断面図である。巻き締めにおいては、先ず、図4
(a)に示すように、カーリングを施されたベーシック
エンド2bの先端部を、ネック板厚及びフランジ形状が
一定のアルミニウム製キャンボディ4の先端部に引っか
けた。次いで、図4(b)及び(c)に示すように、こ
の先端部に巻き締め機5により巻き締めを施した。図5
は巻き締めによるシワを示す模式的底面図である。巻き
締め性が不良である場合には、図5に示すように、シワ
10bが発生する。このシワ10bについてカーリング
時に発生したシワと同様にして評価した。
【0052】また、スコア加工性については、加工率が
70%のスコア加工による微小割れの発生により評価し
た。全く微小割れが発生したものを◎、微小割れが発生
しても良好であったものを○、微小割れが発生しやや不
良であったものを△、微小割れが発生し不良であったも
のを×とした。
【0053】耐圧強度については、各アルミニウム合金
板を蓋形状に成形した後、缶に取付けられたときに内側
となる面に水圧を印加し、アルミニウム合金板が塑性変
形するときの圧力を測定した。
【0054】また、ビード角出し率は、耐圧強度の測定
時にビード部から優先的に塑性変形する割合である。
【0055】そして、リベット張り出し限界は、タブを
取付けるためのリベットを加工する際に割れが発生しな
い限界の高さである。このリベット加工においては、3
段階の張り出しを行った。これらの結果を下記表3に示
す。
【0056】
【表3】
【0057】上記表3に示すように、実施例1及び2に
おいては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳塊か
ら適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミニウ
ム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とされる
高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベット
張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができた。
【0058】一方、比較例3においては、Mg含有量が
本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エ
ンド材として十分な強度を得ることができなかった。比
較例4においては、Mg含有量が本発明範囲の上限を超
えているので、巻締め時にシワが発生し、リベット張り
出し限界が低かった。
【0059】比較例5においては、Mn含有量が本発明
範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低かった。比較
例6においては、Mn含有量が本発明範囲の上限を超え
ているので、晶出物が過剰に生成してリベット張り出し
限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0060】比較例7においては、Fe含有量が本発明
範囲の下限未満であるので、結晶粒が大きくスコア加工
性が劣っていた。比較例8においては、Fe含有量が本
発明範囲の上限を超えているので、リベット張り出し限
界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0061】比較例9においては、サブグレインの面積
占有率が本発明範囲の下限未満であるので、カーリング
時及び巻締め時にシワが発生し、角出し率が低かった。
比較例10においては、サブグレインの面積占有率が本
発明範囲の上限を超えているので、シワ及び成形性は良
好であったが、耐圧強度が低く、エンド材として十分な
強度を得ることができなかった。
【0062】第2実施例 下記表4に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使
用して、第1実施例と同様にして、アルミニウム合金板
を作製した。
【0063】
【表4】
【0064】そして、第1実施例と同様にして、内部組
織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を
測定した。これらの結果を下記表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強
度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコ
ア加工性について評価した。これらの結果を下記表6に
示す。
【0067】
【表6】
【0068】上記表6に示すように、実施例11及び1
2においては、適切な組成を有するアルミニウム合金鋳
塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアルミ
ニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要とさ
れる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出し性、リベ
ット張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができ
た。
【0069】一方、比較例13においては、Si含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、開缶性の低下が予
想され、高純地金が必要となり大幅なコストアップにつ
ながる。比較例14においては、Si含有量が本発明範
囲の上限を超えているので、カーリング時及び巻締め時
にシワが発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0070】第3実施例 下記表7及び8に示す組成を有するアルミニウム合金鋳
塊を使用して、第1実施例と同様にして、アルミニウム
合金板を作製した。
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】そして、第1実施例と同様にして、内部組
織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を
測定した。これらの結果を下記表9及び10に示す。
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強
度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並びにスコ
ア加工性について評価した。これらの結果を下記表11
及び12に示す。
【0077】
【表11】
【0078】
【表12】
【0079】上記表11及び12に示すように、実施例
15及び34においては、適切な組成を有するアルミニ
ウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有
するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンド
に必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出
し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得る
ことができた。
【0080】一方、比較例35においては、Cr含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、
エンド材として十分な強度を得ることができなかった。
比較例36においては、Cr含有量が本発明範囲の上限
を超えているので、金属間化合物の増加により成形性が
低下した。
【0081】比較例37においては、Cu含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド
材として十分な強度を得ることができなかった。比較例
38においては、Cu含有量が本発明範囲の上限を超え
ているので、強度が高すぎて成形性が低かった。
【0082】比較例39においては、Ti含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、粗大結晶粒が生成し、成
形性が低下した。比較例40においては、Ti含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、大きな金属間化合
物が多数生成し、成形性が低下した。
【0083】第4実施例 先ず、上記表1に示す組成を有するアルミニウム合金鋳
塊を均質化処理として510℃に4時間保持した。次
に、このアルミニウム合金鋳塊に圧延率が99%、終了
温度が330℃の熱間圧延を施し、板厚を3.0mmと
した。次いで、この圧延板にタンデム圧延機により冷間
圧延を施し、板厚を1.0mmとした。その後、中間焼
鈍としてCALにより熱処理を施した。そして、熱処理
後の圧延板をタンデム圧延機により冷間圧延して、製品
板厚0.26mmとした。なお、実施例41及び42並
びに比較例43乃至50の組成は、順に実施例1及び2
並びに比較例3乃至10の組成と同様のものである。
【0084】次に、第1実施例と同様にして、内部組織
におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を測
定した。これらの結果を下記表13に示す。
【0085】
【表13】
【0086】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強
度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について
評価した。これらの結果を下記表14に示す。
【0087】
【表14】
【0088】上記表14に示すように、実施例41及び
42においては、適切な組成を有するアルミニウム合金
鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアル
ミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要と
される高い耐圧強度、リベット張り出し成形性及びスコ
ア加工性を得ることができた。
【0089】一方、比較例43においては、Mg含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、
エンド材として十分な強度を得ることができなかった。
比較例44においては、Mg含有量が本発明範囲の上限
を超えているので、巻締め時にシワが発生し、リベット
張り出し限界が低かった。
【0090】比較例45においては、Mn含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低かった。比
較例46においては、Mn含有量が本発明範囲の上限を
超えているので、晶出物が過剰に生成し、リベット張り
出し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0091】比較例47においては、Fe含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、結晶粒が大きくスコア加
工性が劣っていた。比較例48においては、Fe含有量
が本発明範囲の上限を超えているので、リベット張り出
し限界が低く、スコア加工性が劣っていた。
【0092】比較例49においては、サブグレインの面
積占有率が本発明範囲の下限未満であるので、カーリン
グ時及び巻締め時にシワが発生し、角出し率が低かっ
た。比較例50においては、サブグレインの面積占有率
が本発明範囲の上限を超えているので、シワ及び成形性
は良好であるが、耐圧強度が低く、エンド材として十分
な強度を得ることができなかった。
【0093】第5実施例 上記表4に示す組成を有するアルミニウム合金鋳塊を使
用して、第4実施例と同様にして、アルミニウム合金板
を作製した。なお、実施例51及び52並びに比較例5
3及び54の組成は、順に実施例11及び12並びに比
較例13及び14の組成と同様のものである。
【0094】そして、第1実施例と同様にして、内部組
織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を
測定した。これらの結果を下記表15に示す。
【0095】
【表15】
【0096】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強
度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について
評価した。これらの結果を下記表16に示す。
【0097】
【表16】
【0098】上記表16に示すように、実施例51及び
52においては、適切な組成を有するアルミニウム合金
鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有するアル
ミニウム合金板を製造したので、キャンエンドに必要と
される高い耐圧強度、リベット張り出し成形性及びスコ
ア加工性を得ることができた。
【0099】一方、比較例53においては、Si含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、スコア加工性が劣
っていた。また、高純地金が必要となり大幅なコストア
ップにつながる。比較例54においては、Si含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、巻締め時にシワが
発生し、リベット張り出し限界が低かった。
【0100】第6実施例 上記表7及び8に示す組成を有するアルミニウム合金鋳
塊を使用して、第4実施例と同様にして、アルミニウム
合金板を作製した。なお、実施例55乃至74及び比較
例75乃至80の組成は、順に実施例15乃至34及び
比較例35乃至40の組成と同様のものである。
【0101】そして、第1実施例と同様にして、内部組
織におけるサブグレインの面積占有率及び機械的性質を
測定した。これらの結果を下記表17及び18に示す。
【0102】
【表17】
【0103】
【表18】
【0104】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、耐圧強
度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性について
評価した。これらの結果を下記表19及び20に示す。
【0105】
【表19】
【0106】
【表20】
【0107】上記表19及び20に示すように、実施例
55乃至74においては、適切な組成を有するアルミニ
ウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有
するアルミニウム合金板を製造したので、キャンエンド
に必要とされる高い耐圧強度、ビードでの優先的な角出
し性、リベット張り出し成形性及びスコア加工性を得る
ことができた。
【0108】一方、比較例75においては、Cr含有量
が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、
エンド材として十分な強度を得ることができなかった。
比較例76においては、Cr含有量が本発明範囲の上限
を超えているので、金属間化合物の増加により、強度が
高くなりすぎて成形性が低下した。
【0109】比較例77においては、Cu含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、耐圧強度が低く、エンド
材として十分な強度を得ることができなかった。比較例
78においては、Cu含有量が本発明範囲の上限を超え
ているので、強度が高すぎて成形性が低下した。
【0110】比較例79においては、Ti含有量が本発
明範囲の下限未満であるので、粗大結晶粒が生成し、成
形性が低下した。比較例80においては、Ti含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、大きな金属間化合
物が多数生成し、成形性が低下した。
【0111】第7実施例 上記表7中の実施例22と同様の組成を有するアルミニ
ウム合金鋳塊を第1実施例と同様に均質化処理した。次
に、このアルミニウム合金鋳塊に下記表21に示す製造
条件で熱間圧延及び冷間圧延を施すことによりアルミニ
ウム合金板を製造した。なお、実施例86及び比較例9
3においては、冷間圧延後に210℃で2時間保持の仕
上げ焼鈍を施した。また、比較例94においては、熱間
圧延により板厚を3.5mmとし、圧延率が50%の冷
間圧延、中間焼鈍及び圧延率が66%の冷間圧延を順次
施した。
【0112】
【表21】
【0113】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、耐力、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、
耐圧強度、ビード角出し率、リベット張り出し限界並び
にスコア加工性について評価した。更に、耳率を測定し
た。これらの結果を下記表22及び23に示す。
【0114】
【表22】
【0115】
【表23】
【0116】上記表22及び23に示すように、実施例
81乃至86においては、適切な組成を有するアルミニ
ウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を有
するアルミニウム合金板を製造したので、耳率が低く、
キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、ビードでの
優先的な角出し性、リベット張り出し成形性及びスコア
加工性を得ることができた。仕上げ焼鈍を施した実施例
86においても良好な結果を得ることができた。
【0117】一方、比較例87においては、冷間圧延に
シングル圧延機を使用したので、サブグレインの面積占
有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び
巻き締め時にシワが発生した。
【0118】比較例88においては、熱間圧延率が本発
明範囲の下限未満であるので、サブグレインの面積占有
率が本発明範囲の下限未満となり、耳率が高くなって巻
き締め時にシワが発生した。
【0119】比較例89においては、熱間圧延終了温度
が本発明範囲の上限を超えているので、サブグレインの
面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング
時及び巻き締め時にシワが発生した。
【0120】比較例90においては、熱間圧延終了温度
が本発明範囲の下限未満であるので、耳率が高くなり、
巻き締め時にシワが発生した。
【0121】比較例91においては、冷間圧延率が本発
明範囲の下限未満であるので、サブグレインの面積占有
率が本発明範囲の下限未満となり、カーリング時及び巻
き締め時にシワが発生した。
【0122】比較例92においては、冷間圧延率が本発
明範囲の上限を超えているので、耳率が極めて高くリベ
ット張り出し限界が小さいため、カーリング時及び巻き
締め時にシワが発生した。
【0123】比較例93においては、仕上げ焼鈍を施し
たが、冷間圧延にシングル圧延機を使用したので、サブ
グレインの面積占有率が本発明範囲の下限未満となり、
巻き締め時にシワが発生した。
【0124】比較例94においては、冷間圧延工程中に
中間焼鈍を施したが、冷間圧延にシングル圧延機を使用
したので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下
限未満となり、ビードの角出し率が低く、カーリング時
及び巻き締め時にシワが発生した。
【0125】第8実施例 上記表7中の実施例22と同様の組成を有するアルミニ
ウム合金鋳塊を第4実施例と同様に均質化処理した後、
熱間圧延した。次に、このアルミニウム合金鋳塊に下記
表24に示す製造条件で第1冷間圧延、中間焼鈍及び第
2冷間圧延を施すことによりアルミニウム合金板を製造
した。なお、実施例100においては、冷間圧延後に2
10℃で2時間保持の仕上げ焼鈍を施した。
【0126】
【表24】
【0127】次いで、第1実施例と同様にして、各実施
例及び比較例の熱処理後のアルミニウム合金板につい
て、耐力、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生、
耐圧強度、リベット張り出し限界並びにスコア加工性に
ついて評価した。更に、耳率を測定した。これらの結果
を下記表25及び26に示す。
【0128】
【表25】
【0129】
【表26】
【0130】上記表25及び26に示すように、実施例
95乃至100においては、適切な組成を有するアルミ
ニウム合金鋳塊から適切なサブグレインの面積占有率を
有するアルミニウム合金板を製造したので、耳率が低
く、キャンエンドに必要とされる高い耐圧強度、リベッ
ト張り出し成形性及びスコア加工性を得ることができ
た。
【0131】一方、比較例101及び102において
は、中間焼鈍後の冷間圧延にシングル圧延機を使用して
いるので、サブグレインの面積占有率が本発明範囲の下
限未満となり、カーリング時及び巻き締め時にシワが発
生した。特に、比較例102においては、スコア加工性
が不良であった。
【0132】比較例103においては、中間焼鈍後の冷
間圧延率が本発明範囲の下限未満であるので、耐圧強度
が低いと共に、サブグレインの面積占有率が本発明範囲
の下限未満となり、巻き締め時にシワが発生した。
【0133】比較例104においては、中間焼鈍後の冷
間圧延率が本発明範囲の上限を超えているので、耐圧強
度が過剰に高くなったため耳率が高くなり、寸法規格か
ら外れた。
【0134】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
アルミニウム合金板の組成及び内部組織におけるサブグ
レインの面積占有率が適切なものに規定されているの
で、カーリング時及び巻き締め時のシワの発生を防止す
ることができる。従って、内容物に関わらず、種々のキ
ャンエンドに適用することができる。また、本発明方法
によれば、冷間圧延中の発熱により動的な回復を進行し
て内部組織における面積占有率が3乃至30%のサブグ
レインが生成するので、強度を低下させることなくカー
リング時及び巻き締め時のシワの発生が抑制されたアル
ミニウム合金板を製造することができる。また、仕上げ
焼鈍を施す必要がないのでコストが低い。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)乃至(c)はキャンエンド製造のための
プレス加工を示す模式図である。
【図2】カーリングを示す模式的断面図である。
【図3】カーリングによるシワを示す模式的底面図であ
る。
【図4】(a)乃至(c)は巻き締めを示す模式的断面
図である。
【図5】巻き締めによるシワを示す模式的底面図であ
る。
【符号の説明】
1;アルミニウム合金板 2a;円板 2b;ベーシックエンド 3;カーラ 4;キャンボディ 5;巻き締め機 10a、10b;シワ
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 630 C22F 1/00 630K 673 673 683 683 685 685Z 686 686A 694 694A 694B

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:3.00乃至5.50重量%、M
    n:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃
    至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不
    純物からなる組成を有し、内部組織におけるサブグレイ
    ンの面積占有率が3乃至30%であることを特徴とする
    カーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金
    板。
  2. 【請求項2】 Si:0.05乃至0.30重量%を含
    有することを特徴とする請求項1に記載のカーリング性
    及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
  3. 【請求項3】 Cr:0.03乃至0.30重量%及び
    Cu:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択
    された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とす
    る請求項2に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れ
    たアルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 Ti:0.01乃至0.10重量%を含
    有することを特徴とする請求項2又は3に記載のカーリ
    ング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 Mg:3.00乃至5.50重量%、M
    n:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃
    至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不
    純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質
    化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳
    塊を圧延率を90%以上、圧延終了温度を310乃至3
    70℃として熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧
    延後の圧延板を圧延率が75乃至95%の冷間圧延によ
    り製品板厚とし内部組織におけるサブグレインの面積占
    有率を3乃至30%とする冷間圧延工程とを有すること
    を特徴とするカーリング性及び巻き締め性が優れたアル
    ミニウム合金板の製造方法。
  6. 【請求項6】 Mg:3.00乃至5.50重量%、M
    n:0.20乃至0.60重量%及びFe:0.10乃
    至0.60重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不
    純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を均質
    化処理する均質化処理工程と、前記アルミニウム合金鋳
    塊を熱間圧延する熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程後
    の圧延板を冷間圧延する第1冷間圧延工程と、前記第1
    冷間圧延工程後の圧延板を中間焼鈍する中間焼鈍工程
    と、前記中間焼鈍後の圧延板を圧延率が50乃至80%
    の冷間圧延により製品板厚とし内部組織におけるサブグ
    レインの面積占有率を3乃至30%とする第2冷間圧延
    工程とを有することを特徴とするカーリング性及び巻き
    締め性が優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  7. 【請求項7】 Si:0.05乃至0.30重量%を含
    有することを特徴とする請求項5又は6に記載のカーリ
    ング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 Cr:0.03乃至0.30重量%及び
    Cu:0.03乃至0.20重量%からなる群から選択
    された少なくとも1種の元素を含有することを特徴とす
    る請求項7に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れ
    たアルミニウム合金板の製造方法。
  9. 【請求項9】 Ti:0.01乃至0.10重量%を含
    有することを特徴とする請求項7又は8に記載のカーリ
    ング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 前記冷間圧延工程にタンデム圧延機が
    使用されることを特徴とする請求項5及び7乃至9のい
    ずれか1項に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れ
    たアルミニウム合金板の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記第2冷間圧延工程にタンデム圧延
    機が使用されることを特徴とする請求項6乃至9のいず
    れか1項に記載のカーリング性及び巻き締め性が優れた
    アルミニウム合金板の製造方法。
JP03783398A 1998-02-19 1998-02-19 カーリング性及び巻き締め性が優れたアルミニウム合金板及びその製造方法 Expired - Lifetime JP3850542B2 (ja)

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JP2001303164A (ja) * 2000-04-24 2001-10-31 Sky Alum Co Ltd 缶蓋用アルミニウム硬質板とその製造方法
EP1443123A1 (de) * 2003-01-28 2004-08-04 Hydro Aluminium Deutschland GmbH Aluminiumlegierung zur Herstellung von Deckelband für Dosen
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