JP2016141886A - 缶蓋用アルミニウム合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、低い耳率で飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
【解決手段】特定組成の5000系アルミニウム合金板の、板厚表面の集合組織における、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和と、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和とを各々特定の範囲に制御し、更に、これらの方位密度の総和同士の比も特定の範囲に制御することによって、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、図1の缶蓋成形時の耳率やリベット成形性及び缶蓋の開缶性にも優れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板に関し、適正な耳率を有し、高強度と優れた成形性、及び優れた開缶性を兼備したイージーオープン缶蓋用アルミニウム合金板に関する。
現在、飲料、食品用途に汎用される包装容器の1つとして、底と側壁が一体構造の有底円筒状の胴部(缶胴、キャンボディ)と、この胴部の開口部に封止されて上面となる円板状の蓋部(缶蓋、キャンエンド)とからなる2ピースのオールアルミ缶が周知である。
このようなアルミ缶の材料として、各々に要求される強度、成形性などの違いから、缶胴にはAA乃至JIS3000系(Al−Mn系)のアルミニウム合金板、缶蓋にはAA乃至JIS5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金板などが使い分けられて、汎用されている。
このうち、缶蓋用5000系アルミニウム合金板に求められる重要な特性として、適正な耳率と、蓋加工に耐える成形性と、飲料充填後の缶の内圧に耐える耐圧強度、装着したタブによって正常かつ簡単に蓋が開けられるための開缶性などがあげられる。
近年、缶の低コスト化の観点から、これら缶蓋、すなわち缶蓋用5000系アルミニウム合金板も、板厚を0.2mm程度に薄肉化することが求められている。このような薄肉化に対する課題としては、耐圧強度の低下、成形性の低下などが挙げられる。このうち、耐圧強度の低下は、アルミニウム合金板の材料強度を高くすることで補うことができるが、このような高強度化に伴って、成形性が低下するという問題が生じる。また、高強度化のために、耳率が高くなり、成形後の寸法に影響を与えるという問題も生じる。このため、缶蓋用アルミニウム合金板を薄肉化するには、適正な耳率を維持したまま、強度と成形性とを共に向上させることが必要である。
ここで、耳率とは、缶蓋用5000系アルミニウム合金板の円形ブランクを、円筒容器に成形する際に、成形された容器の縁に生じる、図4に示すような高さの不揃いの程度である。容器の縁の局部的に高い箇所を耳(earing)といい(日本金属学会『金属加工』丸善p.202より引用)、耳率(%)は、次式で計算される。
耳率 =(H45−H0−90)/((H45+H0−90)/2)×100(%)
上記式において、H0−90は圧延方向および幅方向の4方向の平均耳高さ、H45は圧延方向に対して45°傾いた4方向での平均耳高さである。
缶蓋用5000系アルミニウム合金板は圧延集合組織が発達しているので、図4の成形後の円筒容器のように、上向きの矢印で示す圧延方向に対して、45°方向の4個の耳を発生する。
耳率が変化すると、図5に示すようなシェル成型後の容器の外縁部の高さ(リップハイト)が周方向に不揃いとなり、巻き締め時に不良が生じる。通常は、素材である缶蓋用5000系アルミニウム合金板の耳率に合わせて、ブランクを非円形にしており、この素材の耳率が変化すると、ブランクの形状自体を変えなければならず、高価な金型や成形条件あるいは工程を変更する必要も生じるなど、多大な手間や労力、そしてコストを要することとなる。
この耳率を制御するために、素材板の集合組織を制御する技術が、従来から種々提案されている。
例えば、特許文献1には、耳率を下げるために、缶蓋用5000系アルミニウム合金板の圧延方向と平行な板断面において、最大長さ1μm以上の金属間化合物数を規定するとともに、板厚方向1/4の部分における集合組織として、圧延集合組織成分のβファイバーに属するCu方位、S方位およびBrass方位の各方位密度の総和がランダム方位の50倍以下とすることが提案されている。
特開2002−105574号公報
ただ、前記従来の集合組織制御では、耳率を下げた缶蓋用5000系アルミニウム合金板の強度は、その実施例などをみる限り、0.2%耐力が340MPa未満の低い強度にしかならない。これは、耳率と強度とが二律背反の関係にあることによる。
缶蓋用5000系アルミニウム合金板の強度を高くするためには、Mg量の増加など、合金組成による方法があるが、製造が困難になったり、コストが高くなったりするため、一定の制約がある。このため、一般的には、一定の合金組成範囲とした上で、素材板製造時の冷延率を増加させる。しかし、冷延率を増加させると、圧延集合組織が発達するため、この圧延集合組織に依存する耳率は高くなってしまう。
したがって、缶蓋用5000系アルミニウム合金板の強度を、0.2%耐力で340MPa以上に高めた従来例もあるにはあるが、総じて耳率が高くなっている。したがって、従来の集合組織制御では、低耳率化と高強度化とを両立させるには限界があった。
このような課題に対して、本発明は、蓋特性として重要なリベット成形性や開缶性を満足させた上で、低耳率化と高強度化とを両立させることができ、薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がない、缶蓋用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための、本発明缶蓋用アルミニウム合金板の要旨は、Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.1〜0.5質量%、Si:0.05〜0.3質量%、Mn:0.2〜0.6質量%、Cu:0.01〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、冷間圧延後に焼付塗装処理されたアルミニウム合金板であって、X線回折により測定された前記板表面の集合組織において、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和が20以上、50以下であり、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和が4以上、10以下であり、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和の、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和に対する比が2以上、8以下であり、0.2%耐力が340MPa以上であるとともに、前記板を絞り比1.65にて円筒容器に絞り加工したときの耳率が3.0%以上、6.0%以下であることとする。
上記のように本発明で規定する板の組織と特性は、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷延板に塗装および塗装焼付け処理を施した後のアルミニウム合金板、あるいは、この板を成形した缶蓋の組織と特性として規定している。また、前記冷延板に、塗装焼付け処理を模擬した、後述する特定条件での熱処理を施した後の板の組織と特性であっても良い。
本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板の、X線回折により測定された板表面の集合組織を制御する。本発明で、板の表面の集合組織を制御する理由は、耳率の測定時や、前記シェル成形時の絞り成形時には、容器の内側となる板表面が最も変形を受けるので、この板の表面側の集合組織が耳率に大きく影響すると考えられるからである。板厚が薄くなるほど、板の内部(1/2や1/4の板厚部)の集合組織よりも、逆に、板表面の集合組織の方が、耳率に対する影響が強くなると考えられる。
本発明では、熱延後、1次冷延、中間焼鈍、2次冷延、塗装を行うが、1次冷延率を高めて、中間焼鈍後のCube方位、Goss方位の方位密度(面積率)を増加させ、2次冷延後に、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を抑制し、低耳率化を図る。その一方で、2次冷延率を高めて、加工硬化量(転位密度)を増加させて、強度を増加させる。これによって、従来は兼備させることが困難であった、低耳率化と高強度化とを両立させることができる。
したがって、本発明は、従来のように低耳率化のために材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、適正な耳率、リベット成形性、開缶性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、適正な耳率を有し、リベット成形性、開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
アルミニウム合金板を成形してなる缶蓋の平面図である。 開缶性の評価時に使用する缶蓋のスコアの断面図である。 開缶性の評価時に使用する開缶荷重測定機の概要図である。図3(a)は開缶荷重測定機の斜視図である。図3(b)は開缶荷重測定機の測定時の缶蓋付近の断面複式図である。図3(c)は開缶荷重測定機に缶蓋を設置するときの缶蓋の向きを示す正面模式図である。 円筒容器の耳を示す斜視図である。 シェル成形された蓋の外縁部(リップハイト)を示す断面図である。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板を実施するための形態について、以下に説明する。
(アルミニウム合金組成)
缶蓋用アルミニウム合金板は、前記した通り、缶蓋に求められる特性として、蓋加工に耐える成形性、飲料充填後の内圧に耐える耐圧強度、正常かつ簡単に開けられるための開缶性を満たす必要がある。
したがって、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板の合金組成も、この要求特性を合金組成面から満たすために、Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.1〜0.5質量%、Si:0.05〜0.3質量%、Mn:0.2〜0.6質量%、Cu:0.01〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものとする。以下に、含有する各元素の意義につき、順に説明する。
Mg:3.8〜5.5質量%
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が3.8質量%未満の場合、固溶Mg量が減って、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形したときの耐圧強度が不足する。一方、Mgの含有量が5.5質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となって、成形性、特にリベット成形性が低下する。従って、Mgの含有量は3.8〜5.5質量%とする。
Fe:0.1〜0.5質量%
Feは、アルミニウム合金板中にAl−Fe(−Mn)系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属聞化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Feの含有量が0.1質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が向上せず、開缶特にスコア脱線(開缶時にスコア部以外に亀裂が伝播すること)や開缶力の増大によるタブ折れといった開缶不良が生じ易くなる。一方、Feの含有量が0.5質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物の面積率が所定の範囲よりも大きくなり、リベット成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.1〜0.5質量%とする。
Si:0.05〜0.3質量%
Siは、アルミニウム合金板中にMg−Si系、Al−Fe(−Mn)系、Al−Fe (−Mn)−Si系金属聞化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、Feと同様に開缶性が向上しない。また、アルミニウム合金板の原材料に使用できるスクラップ量が減少し、またアルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.3質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Siの含有量は0.05〜0.3質量%とする。
Mn:0.2〜0.6質量%
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にA−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.2質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度向上効果や缶蓋に成形したときの開缶性向上効果が得られない。一方、Mnの含有量が0.6質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Mnの含有量は0.2〜0.6質量%とする。
Cu:0.01〜0.3質量%
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。また、固溶させることにより、成形性も向上する。Cuの含有量が0.01質量%末満の場合、母相への固溶量が少なく、強度と成形性のバランスが低下し、リベット成形性が向上しない。一方、Cuの含有量が0.3質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、リベット成形性が低下する。また、開缶荷重も大きくなる。従って、Cuの含有量は0.01〜0.3質量%とする。
不可避不純物
本発明に係るアルミニウム合金は、前記必須成分以外に、残部Alと不可避不純物とからなる。不可避不純物は、Crが0.3質量%以下、Znが0.3質量%以下、Tiが0.1質量%以下、Zrが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下、その他の元素が各々0.05質量%以下の範囲内で許容される。不可避不純物の含有量がこの範囲内であれば、本発明に係るアルミニウム合金板の特性に影響しない。
(アルミニウム合金板の集合組織)
本発明では、前記した合金組成とした上で、この缶蓋用アルミニウム合金板表面の集合組織を制御して、耳率と成形性を保ったまま高強度化する。一般にアルミニウム合金における集合組織は、主としてCube方位、Goss方位、Brass方位、S方位、およびCu方位から構成されるが、このような圧延後の集合組織は、耳の発生に大きな影響を及ぼす。
このために、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の表面の組織として、X線回折により測定された集合組織において、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和が20以上、50以下であり、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和が4以上、10以下であり、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和の、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和に対する比が2以上、8以下であることとする。
以下の説明では、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和を(Cube+Goss)、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を(Brass+S+Copper)、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和の、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和に対する比=(Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和)/(Cube方位、Goss方位の方位密度の総和)を、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)と、各々略記する。
板表面の集合組織:
本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板の、X線回折により測定された板の表面の集合組織を制御する。ここで、板の表面とは、酸化皮膜を除去した、板のアルミニウムマトリックスの最表面を言う。
本発明で、このような板の表面の集合組織を制御する理由は、耳率の測定時や、前記シェル成形の際の絞り成形時には、容器の内側となる板の表面が最も変形を受けるので、この板の表面側の集合組織が、耳率に大きく影響すると考えられるからである。
これに対して、前記特許文献1などは、結晶方位の集積度の板厚方向の分布は、板厚方向の位置によってかなり異なるが、製品板における板厚方向1/4の部分で測定した、板の内部の集合組織が耳率に大きく影響を及ぼしているとしている。
しかし、前記した通り、本発明者らの認識によれば、耳率の測定時や前記シェル成形の際の絞り成形時には、この板の表面側の集合組織が、耳率により大きく影響する。しかも、この影響は、板厚が薄くなるほど、板の内部(1/2や1/4の板厚部)の集合組織よりも、板表面の集合組織の方が大きい。言い換えると、板厚が薄くなるほど、板の内部(1/2や1/4の板厚部)の集合組織は、板表面の集合組織よりも影響しにくくなる。
Cube方位、Goss方位の方位密度の総和規定の意義:
絞り加工による容器の成形時の耳率を適正範囲に制御するためには、素材板の成形による変形中に、周方向に均一変形することが望ましい。この点、Cube方位、Goss方位自体は、均一変形はしないが、耳率のバランスをとり、耳率が高くなるのを抑制することができるので、そのために増加させる。
また、本発明では、転位密度を高めて強度を維持するために、好ましい製造方法として、後述する通り、2次冷延の総圧延率を80%以上と高くしている。この2次冷延の総圧延率が低すぎると、転位密度が減少して強度が低下する。ただ、この2次冷延率を増加すると、Brass方位、S方位、Copper方位が増えて、45°耳が高くなってしまう。
本発明で、Cube方位、Goss方位の方位密度を増加させるのは、前記した好ましい製法によって、Brass方位、S方位、Copper方位が増えたとしても、あるいは強度維持のために実質量存在したとしても、耳率が高くなるのを抑制するためでもある。
Cube方位、Goss方位が増加すると、絞り加工による成形時に圧延方向に対して0°と90°との方向の耳が高くなる。そして、このように、0°と90°の耳が高くなると、Brass方位、S方位、Copper方位が増えて45°耳が高くなったとしても、前記した耳率(%)の計算式「(H45−H0−90)/((H45+H0−90)/2)×100(%)」から分る通り、耳率は低くなり、耳率を適正範囲とすることができる。
したがって、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の表面の、X線回折により測定された集合組織において、Cube方位、Goss方位の方位密度(面積率)を増加させ、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和を4以上、10以下とする。
Cube方位、Goss方位の方位密度の総和が4未満では、Cube方位、Goss方位の方位密度が不足して、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を抑制しても、前記耳率の計算式の通り、耳率が高くなる。
一方、1次冷延率を高める限界から、強度を340MPa以上にしつつCube方位、Goss方位の方位密度の総和を10を超える値にすることは、板の製造上困難である。
Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和規定の意義:
絞り加工による容器の成形時には、前記した通り、素材板の成形による変形中に、周方向に均一変形することが望ましい。しかし、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度が強く発達し過ぎると、板面内の塑性異方性が強くなる。このため、部分的に変形し易い個所と、変形し難い個所とが発生し、成形された容器の縁に、前記図4で示したような高さの不揃い=耳を生じやすくなる。
すなわち、Brass方位、S方位、Copper方位が増加すると、絞り加工による成形時に圧延方向に対して45°方向に耳を生じやすく、45°耳が高くなる。このため、前記した耳率(%)の計算式「(H45−H0−90)/((H45+H0−90)/2)×100(%)」から分るように、耳率自体が高くなる。
また、本発明では、前記した通り、強度維持のために2次冷延の総圧延率を高くしている。2次冷延の総圧延率が高いほど、Brass方位、S方位、Copper方位が増えて、45°耳が高くなる傾向にある。
したがって、缶蓋用アルミニウム合金板の表面の、X線回折により測定された集合組織において、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を抑制することが重要となる。
このため、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の表面の、X線回折により測定された集合組織において、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を20以上、50以下とする。
Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和が50を超えた場合、成形時に圧延方向に対して45°方向に耳を生じやすいBrass方位、S方位、Copper方位の方位密度が多すぎて、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和を適正範囲にしても、耳率が高くなる。
一方で、強度維持のために必要な1次冷延率や2次冷延率から、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を20未満の値にすることは、困難である。
(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)規定の意義:
更に、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和の、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和に対する比=(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)の範囲も重要である。
(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)を2以上、8以下とすることで、絞り加工による容器成形時に、素材板を周方向で均一変形させることができる。
この(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)が8よりも高くなると、板面内の塑性異方性が強くなる。このため、前記した通り、図4で示した耳を生じやすくなる。
一方、1次冷延率や2次冷延率などの板製造の限界から、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)を、2未満の低い値とすることは、板の製造上困難である。
耳率の適正範囲:
ここで、耳率の適正範囲は3.0%以上、6.0%以下、好ましくは3.5%以上、5.5%以下である。このような耳率の範囲を超えると、現行での非円形ブランクでは、図5に示す、シェル成形後の容器の外縁部の高さ(リップハイト)が、周方向に不揃いとなり、缶蓋の巻き締め時に不良が生じやすくなる。このため、非円形ブランクの形状を変更する必要があり、金型や成形条件あるいは工程を変更する必要が生じ、多大な手間や労力、そしてコストを要することとなる。
集合組織の制御方法:
以上の規定する集合組織とするために、本発明では、後述する通り、1次冷間圧延の後、中間焼鈍を行い、その後、2次冷間圧延を行う。そして、先ず、1次冷延率を高めて、中間焼鈍した後のCube方位、Goss方位の方位密度を増加させるとともに、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を抑制する。これによって、前記板の集合組織を、各々前記規定する範囲内に制御して、耳率を適正範囲に制御する。
Cube方位、Goss方位は、中間焼鈍後の2次冷延による圧延加工を加えても、その方向を維持しやすく、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位も発達しにくい。
本発明では、その一方で、前記中間焼鈍後の2次冷延率を高めて、加工硬化量(転位密度)を増加させて、強度を増加させる。これらの工程によって、従来は兼備させることが困難であった、低耳率化と高強度化とを両立させることができる。
したがって、本発明は、従来のように、低耳率化やリベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、適正な耳率、リベット成形性、開缶性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、適正な耳率を有し、リベット成形性、開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
X線回折法による集合組織の測定:
これらの集合組織の方位分布密度(Orientation Density)の測定と算定は、供試材表面(供試材の、酸化皮膜を除去した、アルミニウムマトリックスの最表面)に対して、以下に説明する、通常のX線回折法と通常の解析方法で行うことができる。
前記した通り、一般に、アルミニウム合金の圧延板における集合組織は、主としてCube方位、Goss方位、Brass方位、S方位、およびCopper方位から構成される。これらの集合組織のでき方は、同じ結晶系の場合でも加工、熱処理方法によって異なり、圧延による板材の集合組織の場合は、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は{hkl}で表現され、圧延方向は<uvw>で表現される。かかる表現に基づき、各方位は下記の如く表現される。
Cube方位 {001} <100>
Goss方位 {011} <100>
Brass方位(B方位) {011} <211>
Copper方位(Cu方位) {112} <111>
S方位 {123} <634>
ここで、5000系アルミニウム合金において、圧延後の板は、一般的に、B方位〜Cu方位〜S方位は各方位間で連続的に変化するファイバー集合組織(β-fiber)で存在している。
本発明において規定する前記各方位の方位密度は、X線回折法により、(100)、(110)、(111)の完全極点図又は不完全極点図(Pole Figure)を測定し、それから、結晶方位分布関数(Orientation Distribution Function : ODF)を用いて求められる。これにより得られた各方位の方位密度は、アルミニウム粉末を焼結した方位の配向がないランダムな集合組織を有する標準試料の方位密度に対する比として算出している。
なお、これらの方位分布は板厚方向に変化しているため、前記した通り、本発明では、最も耳率に影響すると考えられる板の表面の方位分布を規定している。
これらの具体的な測定方法は公知であり、例えば、長島晋一編著「集合組織」, 丸善株式会社刊, 1984, P8-44 や、金属学会セミナー「集合組織」, 日本金属学会編, 1981, P3-7等)に記載されている。
(製造方法)
次に、本発明における缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を説明する。
本発明のアルミニウム合金板の製造工程自体は、常法のように、前記組成のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、鋳塊を熱処理により均質化する均熱処理工程と、均質化した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、熱間圧延板を1次冷間圧延する1次冷間圧延工程と、1次冷間圧延板を中間焼鈍する中間焼鈍工程と、中間焼鈍した板を2次冷間圧延する2次冷間圧延工程によって製造される。ただ、集合組織制御のために、本発明では、この公知の工程の中でも、後述する通り、冷延条件などを特に制御する。
まず、アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法により、前記組成のアルミニウム合金を鋳造する。
次に、鋳塊表層の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均質化熱処理を施す。これによって、内部応力を除去し、鋳造時に偏析した溶質元素を均質化し、鋳造時に晶出した金属間化合物を固溶させて、組織が均質化される。このために、均質化熱処理は、400℃以上、550℃以下の温度で1時間以上保持することが好ましい。
均質化熱処理温度が400℃未満か保持時間が1時間未満の場合、前記均質化効果が低下して、機械的な特性や開缶性が低下する。均質化熱処理温度が550℃を超える場合、熱間圧延時にバーニングが生じる。また、保持時間の上限は20時間であり、これを超えると、生産性が低下する。
熱間圧延:
この均質化熱処理後、鋳塊を冷却することなく続けて、あるいは所定の開始温度まで冷却して、まず熱間粗圧延し、さらに熱間仕上圧延により、所定の板厚のアルミニウム合金熱間圧延板とする。このとき、好ましくは300℃以上で仕上げ熱間圧延を終了する。
冷間圧延:
次いで、この熱間圧延板を、1次冷間圧延(1次冷延)、中間焼鈍、2次冷間圧延(2次冷延)して、所定の板厚の冷間圧延板(冷延板)とする。
この1次と2次の冷延は、圧延スタンドが2スタンド直列に配置されたタンデム圧延機で行うが、圧延スタンドがシングル(1スタンド)であるシングル圧延機とタンデム圧延機を組み合わせて行っても良い。
1次冷延:
前記1次冷延の総圧延率は70%以上とし、好ましくは80%以上とする。また、タンデム圧延機を用い、1スタンド目と2スタンド目の圧延の合計の圧延率が70%以上、好ましくは80%以上とする。このように1次冷延の総圧延率を増加し、タンデム圧延機による圧延率を高くすると、中間焼鈍後のCube方位、Goss方位の方位密度が増加する。一旦生成したCube方位、Goss方位は、中間焼鈍後の2次冷延による圧延加工を加えても、その方向を維持しやすく、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位も発達しにくい。
1次冷延の総圧延率が70%未満の場合、また、タンデム圧延機による圧延率が70%未満の場合、圧延による蓄積歪みが不足し、中間焼鈍後のCube方位、Goss方位の方位密度を増加させることができず、圧延集合組織であるBrass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和を抑制できなくなる。このため、前記板の集合組織を、各々前記規定する範囲内に制御できず、耳率を適正な範囲に制御できない。
中間焼鈍:
この1次冷延された冷間圧延板を、中間焼鈍して、再結晶させるとともに、合金元素の固溶量を増加させる。この中間焼鈍は連続焼鈍工程で行い、材料保持温度400℃〜550℃の範囲、保持時間が10分以内の条件で行うことが好ましく、保持温度までの加熱速度及び前記保持温度からの冷却速度を、いずれも100℃/min以上とすることが好ましい。加熱速度が100℃/min未満の場合、保持温度が550℃を超える場合、保持時間が10分間を超える場合、そして冷却速度が100℃/min未満の場合、それぞれ焼鈍工程終了後の再結晶粒が大きくなる。このため、リベット成形性が低下する。
また、この中間焼鈍を省略した場合や、この中間焼鈍の保持温度が400℃未満の場合、規定する集合組織とできない。また、合金元素の固溶量も減り、強度やリベット成形性が低下する。
2次冷延:
続いて、前記中間焼鈍した冷延板を、再度冷延(2次冷延)する。この2次冷延の総圧延率は、転位密度を高めるために、80%以上と高くする。この2次冷延の総圧延率が低すぎると、転位密度が減少して強度が低下する。
ただ、この2次冷延率を増加すると、Brass方位、S方位、Copper方位が増えて、45°耳が高くなる。このため、本発明では、1次冷延率を高くすることでCube方位、Goss方位の方位密度を増加させ、耳率が高くなるのを抑制している。
また、仕上げ圧延(最終の圧延)は、タンデム圧延機を用い、1スタンド目と2スタンド目の圧延の合計圧延率は80%以上とする。このように、タンデム圧延機を用いることで、成形性を保ったまま高強度化することができる。
塗装焼付け処理:
以上の工程で製造した缶蓋用アルミニウム合金板は、クロメート系やジルコン系などの表面処理を施し、エポキシ系樹脂や塩ビゾル系、ポリエステル系などの有機塗料を塗布し、PMT(Peak Metal Temperature:メタル到達温度)が230〜280℃×10〜30秒程度で、塗装焼付け処理して、プレコート板とされた後、缶蓋へと成形される。本発明で、強度とリベット成形性の評価のための、塗装焼付け処理を模擬した、前記熱処理は、この塗装焼付け処理条件範囲より、再現性を持たせるために255℃×20秒のワンポイントとして選択している。
(缶蓋の作製方法)
素材アルミニウム合金板(冷延板)から缶蓋を作製する公知の方法の一例を以下に説明する。
前記したように、予め塗装および焼付塗装処理された素材アルミニウム合金板(プレコート板)を円板形状に打ち抜いた(ブランキング加工)ブランク材を、プレス機でシェル成型と外周部のカール加工を施す。さらにプレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
この後、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて飲み口部の溝を成形し、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字を成形し、別途タブ用のアルミ板を連続成形してタブの形状に加工し、シェルの中央に加工した凸部にタブをかしめて一体化する。この一体化した缶蓋の平面図を図2に示す。そして、別途DI成形され、開口部から内容物(飲料、食品)が充填されたアルミニウム合金製の缶銅の開口部に、この缶蓋を巻き締めて封止される。
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材アルミニウム合金板)
表1、2に示す、No.1〜29の組成の各アルミニウム合金を半連続鋳造法(DC)にて鋳造し、各例とも共通して、鋳塊表層を面削してスラブを作製した。このスラブに、各例とも共通して、500℃×4時間の均質化熱処理を施した後、この500℃の温度で熱間粗圧延を開始し、続く熱間仕上げ圧延の終了温度を330℃として、板厚1.3〜5.1mmの熱間圧延板とした。
この熱間圧延板に対し、各例とも、1次冷延を行い、その後、各例とも共通して、最高材料到達温度500℃で、500℃に到達後、ただちに冷却する条件で、連続焼鈍設備にて中間焼鈍を行った。
前記中間焼鈍の際の前記保持温度までの加熱速度、及び前記保持温度からの冷却速度は、いずれも共通して、100℃/min以上とした。
また、前記1次冷延は、表2の比較例No.26、29を除き、圧延スタンドを2列配置したタンデム圧延機のみで冷延するか、シングルスタンドの冷間圧延機での冷延後に前記タンデム圧延機を用いて冷延した。
表1、2に、各例の1次冷延の総圧延率と、タンデム圧延機での圧延率を示す。
表1、2において、1次冷延の総圧延率とタンデム圧延機による圧延率とが同じ例は、タンデム圧延機のみに1回通板して、合計2回冷延した場合である。また、1次冷延の総圧延率がタンデム圧延機による圧延率よりも大きい例は、これら圧延率の差の分だけ、シングルスタンドの冷間圧延機で1回冷延した後に、前記タンデム圧延機に1回通板して2回圧延し、合計3回冷延した場合である。
表2の比較例No.26、29は、1次冷延を、シングルスタンドの圧延機のみで圧延し、タンデム圧延機を用いなかった。
前記中間焼鈍後に、2次冷延を、各例とも、表1、2に示す、各々の総圧延率と仕上げ(最終の)圧延率にて行って、各例とも共通して、板厚0.215mmの缶蓋用アルミニウム合金板を作製した。
この際、実施例と比較例は、表1の実施例13を除き、2次冷延前半は、シングルスタンドの圧延機にて1回圧延後に、仕上げ圧延として、圧延スタンドを2列配置したタンデム圧延機を1回通板して2回圧延し、合計3回圧延した。表1、2の総圧延率はこれらの合計の圧延率を示し、仕上げ圧延率はタンデム圧延における合計の圧延率を示している。
実施例13は、2次冷延前半のシングル圧延機による圧延が無く、圧延スタンドを2列配置したタンデム圧延機に1回通板するのみの2回圧延にて、2次冷延した。
このように製造した、表1、2のNo.1〜29のアルミニウム合金板を、塗装焼付け処理を模擬し、共通して、オイルバスによる255℃×20秒の熱処理を施したものを、以下の組織や特性の測定、評価のための供試材とした。以下の組織や特性の測定、評価の結果を、各々表1、2に示す。
(X線回折による集合組織の測定)
前記供試材表面として、表面の酸化皮膜を研磨により除去した、前記供試材のアルミニウムマトリックスの最表面の集合組織をX線回折により測定し、前記した(Brass+S+Copper)、(Cube+Goss)、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)を各々求めた。
測定は、Rigaku製RAD−rXを用い、Cuターゲットを使用し、ターゲット出力(管電圧−管電流)は40kV−50mAの条件で行った。
(0.2%耐力)
前記供試材を、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号引張試験片を作製した。この試験片を用い、JIS−Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適正範囲は340MPa以上であり、この範囲であれば、薄肉化された缶蓋であっても耐圧強度を満足する。
(リベット成形性)
リベット成形性は、前記供試材を、204径フルフオーム・エンド金型にてシェル成形、コンバージョン成形を行い、缶蓋を作製した。缶蓋は、各例のそれぞれについて300個作製し、リべット部の割れの有無を目視で確認した。そして、300個中に1個でも割れがある場合には不合格(×)と評価し、全て割れなく成形できた場合を合格(〇)と評価した。
(開缶荷重)
前記供試材を、204径フルフォーム・エンド金型にてシェル成型、コンバージョン成形、タブのステイクを行った後に、開缶試験を行った。
図1は、開缶試験に用いた缶蓋の平面図である。
図2は、開缶試験に用いた缶蓋のスコア3の断面図である。
図3は、開缶時の荷重を測定する開缶荷重測定機の概要図である。
図3(a)は開缶荷重測定機5の斜視図である。
図3(b)は開缶荷重測定機5の測定時の缶蓋1付近の断面模式図である。
図3(c)は開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置するときの缶蓋1の向きを示す正面模式図である。
缶蓋1をスコア3に対してタブ4が上方となるように、開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置する(図3(c))。缶蓋1のタブ4に掛止具6を引っ掛けて、掛止部7とする(図3(b))。掛止具6を水平方向へ引っ張って3Nの引張荷重を負荷し、その状態で掛止具6を静止させた後、缶蓋1をX方向に回転させた。ロードセルにて荷重を測定し、最も高い荷重を開缶荷重とした。開缶荷重の適正範囲は20N以下とした。
表1に示すように、本発明の規定範囲内のNo.1〜13の実施例は、成分組成が発明範囲内であり、全て好ましい製造条件で製造されている。
このため、X線回折により測定された板表面の集合組織が、(Brass+S+Copper)が20以上、50以下、(Cube+Goss)が4以上、10以下、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)が2以上、8以下であり、本発明で規定する範囲を満たしている。
この結果、No.1〜13の実施例は、表1に示すように、0.2%耐力が340MPa以上であるとともに、絞り比1.65にて円筒容器に絞り加工したときの耳率が3.0%以上、6.0%以下であり、開缶荷重やリベット成形性も適正である。すなわち、耳率や開缶荷重、リベット成形性を保ったまま高強度化できている。したがって、実施例のアルミニウム合金板は、肉厚が0.215mmと薄いが、イージーオープン缶蓋用として好適に使用し得る。
一方、表2のNo.14〜29の比較例は、成分組成、集合組織のいずれかが本発明の規定範囲内でなく、特に、耳率と強度を満たさないか、これを満たしていても、開缶荷重及びリベット成形性のいずれかが劣っており、これら特性を兼備できていない。
No.14は、Mg含有量が下限未満で不足しており、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎる。
No.15は、Mg含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、リベット成形性が劣る。
No.16は、Fe含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、開缶荷重が大きい。
No.17は、Fe含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、リベット成形性が劣る。
No.18は、Si含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、開缶荷重が大きい。
No.19は、Si含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、リベット成形性が劣る。また、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎる。
No.20は、Mn含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎる。
No.21は、Mn含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、リベット成形性が劣る。
No.22は、Cuを含有しておらず、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎる。
No.23は、Cu含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、集合組織の規定を満たしているものの、リベット成形性が劣る。また、開缶荷重も大きい。
No.24は、合金組成は本発明範囲内であるものの、1次冷延のタンデム圧延の圧延率や総圧延率が低すぎる。このため、(Brass+S+Copper)が50を超えて多すぎ、(Cube+Goss)が4未満で少なすぎ、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)も8を超えて多すぎて、集合組織の規定を満たさず、耳率が高い。
No.25は、合金組成は本発明範囲内であり、1次冷延の総圧延率は70%以上であるものの、タンデム圧延の圧延率が70%未満で低すぎる。このため、(Cube+Goss)が4未満で少なすぎ、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)も8を超えて多すぎて、集合組織の規定を満たさず、耳率が高い。
No.26は、合金組成は本発明範囲内であるものの、1次冷延が、シングルスタンドの圧延機のみで圧延しており、総圧延率は70%以上であるものの、タンデム圧延機を使っていない。このため、(Cube+Goss)が4未満で少なすぎ、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)も8を超えて多すぎ、集合組織の規定を満たさず、耳率が高い。
No.27は、合金組成は本発明範囲内であるものの、2次冷延におけるタンデム圧延の圧延率や総圧延率が80%未満と低すぎる。このため、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和が10を超えており、強度が340MPa未満で低すぎる。
No.28は、合金組成は本発明範囲内であるものの、2次冷延における仕上げ圧延にタンデム圧延機を使わず、シングルスタンドの圧延機のみを使っており、2次冷延における総圧延率は満たしているものの、仕上げ圧延率が80%未満である。このため、集合組織の規定を満たしているものの、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎる。また、リベット成形性も劣る。
No.29は、合金組成は本発明範囲内であるものの、2次冷延における仕上げ圧延にタンデム圧延機を使わず、シングルスタンドの圧延機のみを使っており、2次冷延における総圧延率は満たしているものの、仕上げ圧延率が80%未満である。また、1次冷延も、シングルスタンドの圧延機のみで圧延しており、総圧延率は70%以上であるものの、タンデム圧延機を使っていない。
このため、(Cube+Goss)が4未満で少なすぎ、(Brass+S+Copper)/(Cube+Goss)も8を超えて多すぎ、集合組織の規定を満たさず、耳率が高い。また、0.2%耐力が340MPa未満で低すぎ、更にリベット成形性も劣る。
以上の結果から、耳率や開缶荷重、リベット成形性を保ったまま高強度化するための、本発明の各要件や好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
Figure 2016141886
Figure 2016141886
以上、本発明は、従来のように、リベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、耳率や開缶荷重、リベット成形性を保ったまま高強度化できる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、低い耳率で飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
このため、缶蓋厚さが薄肉化、高強度化され、より厳しい使用条件での高いリベット成形性と高強度とが要求される缶蓋に用いられるアルミニウム合金板に最適である。
1 缶蓋
2 リベット部
3 スコア
4 タブ
5 開缶荷重測定機
6 掛止具
7 掛止部

Claims (1)

  1. Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.1〜0.5質量%、Si:0.05〜0.3質量%、Mn:0.2〜0.6質量%、Cu:0.01〜0.3質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、冷間圧延後に焼付塗装処理されたアルミニウム合金板であって、X線回折により測定された前記板表面の集合組織において、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和が20以上、50以下であり、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和が4以上、10以下であり、Brass方位、S方位、Copper方位の方位密度の総和の、Cube方位、Goss方位の方位密度の総和に対する比が2以上、8以下であり、0.2%体力が340MPa以上であるとともに、前記板を絞り比1.65にて円筒容器に絞り加工したときの耳率が3.0%以上、6.0%以下であることを特徴とする缶蓋用アルミニウム合金板。



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