JP2016079501A - 缶蓋用アルミニウム合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板の提供。【解決手段】Mg:4.0〜6.0質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.40質量%、Mn:0.01〜0.50質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、中間焼鈍を行わない冷間圧延後に焼付塗装処理されたアルミニウム合金板であって、熱フェノールによる残渣抽出法で測定されたMgの固溶量をMg含有量の80%以上とし、かつサブグレイン面積率を10〜90%の範囲とすることにより、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れさせ、板厚を0.2mm程度に薄肉化した5000系アルミニウム合金板を、中間焼鈍しない冷延にて製造する缶蓋用アルミニウム合金板。【選択図】図1

Description

本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板に関し、高強度と優れた成形性、及び優れた開缶性を兼備したイージーオープン缶蓋用アルミニウム合金板に関する。
現在、飲料、食品用途に汎用される包装容器の1つとして、底と側壁が一体構造の有底円筒状の胴部(缶胴、キャンボディ)と、この胴部の開口部に封止されて上面となる円板状の蓋部(缶蓋、キャンエンド)とからなる2ピースのオールアルミ缶が周知である。
このようなアルミ缶の材料として、各々に要求される強度、成形性などの違いから、缶胴にはAA乃至JIS3000系(Al−Mn系)のアルミニウム合金板、缶蓋にはAA乃至JIS5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金板などが使い分けられて、汎用されている。
このうち、缶蓋用5000系アルミニウム合金板に求められる重要な特性として、蓋加工に耐える成形性と、飲料充填後の缶の内圧に耐える耐圧強度、装着したタブによって正常かつ簡単に蓋が開けられるための開缶性などがあげられる。
近年、缶の低コスト化の観点から、これら缶蓋、すなわち缶蓋用5000系アルミニウム合金板も、板厚を0.2mm程度に薄肉化することが求められている。このような薄肉化に対する課題としては、耐圧強度の低下、成形性の低下などが挙げられる。このうち、耐圧強度の低下は、アルミニウム合金板の材料強度を高くすることで補うことができるが、このような高強度化に伴って、成形性が低下するという問題が生じる。このため、缶蓋用アルミニウム合金板を薄肉化するには、強度と成形性とを共に向上させることが必要である。
缶蓋用5000系アルミニウム合金板を薄肉化しても、材料強度を保ったまま成形性を向上させる技術として、従来から、金属間化合物(開缶性、成形性)、結晶粒径(成形性)、サブグレインあるいは集合組織などの組織制御などが種々行われてきた。
例えば、特許文献1には、缶蓋用5000系アルミニウム合金板の前記組織制御のうち、板の内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%に制御して、缶蓋を缶胴に巻き締める際の、カーリング性及び巻き締め性を向上させることが提案されている。
また、通常は、組織制御や特性向上のために、熱延後あるいは冷間圧延の途中で、中間焼鈍を行うが、大量に生産される薄板では、製造コストに対する中間焼鈍の占める割合も大きい。このため、この中間焼鈍を行わずに冷間圧延し、低コストで缶蓋用5000系アルミニウム合金板を、組織制御して製造することも、例えば、特許文献2など、数多く提案されている。
特開平11−229066号公報 特開2003−105475号公報
ただ、従来の缶蓋用5000系アルミニウム合金板には、缶蓋に成形する際のリベット成形性の向上には未だ課題があり、薄肉化した場合に高強度化すると、リベット成形性が低下し、優れたリベット成形性を得るには材料強度を低下させる必要がある、という課題があった。
ここで、缶蓋成形工程について説明する。まず、素材を円板形状に打ち抜いた後に、絞り加工でシェルを成形し、次にコンバージョン成形にて、プレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。
このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
このリベット成形後に、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて、飲み口部の溝である、図2、3のスコア3の成形や、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字の成形を行う。その後、ステイク工程として、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する。
この際、タブを正常に固定するためには、ステイク後のリベット径の大きさを確保する必要があり、そのため、ボタン成形工程終了後の突起(ボタン)高さを十分に高く成形できるリベット成形性が素材に求められる。
これに対して、前記特許文献1のようにサブグレインの面積占有率を3乃至30%に制御した素材板であっても、高強度化すると、前記リベット成形性が低下し、優れたリベット成形性を得るには、材料強度を低下させる必要があった。すなわち、優れたリベット成形性と高強度とを両立させることには未だ限界があった。
しかも、このリベット成形性と高強度化との両立を、前記特許文献2などの中間焼鈍を行わない冷間圧延により、低コストの製造方法で実現することも、未だ課題として残されていた。
このような課題に対して、本発明は、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができ、薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れ、中間焼鈍を行わない冷間圧延によっても缶蓋用アルミニウム合金板を製造できる技術を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明缶蓋用アルミニウム合金板の要旨は、Mg:4.0〜6.0質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.40質量%、Mn:0.01〜0.50質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、中間焼鈍を行わない冷間圧延後に焼付塗装処理されたアルミニウム合金板であって、熱フェノールによる残渣抽出法で測定されたMgの固溶量が、前記Mg含有量の80%以上であり、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域の組織として、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることである。
上記要旨において、前記缶蓋用アルミニウム合金板が、鋳塊の均熱処理によってのみMgを固溶させたものであることが好ましい。
すなわち、より具体的な前記した本発明の缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法としては、Mg:4.0〜6.0質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.40質量%、Mn:0.01〜0.50質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊のMgを均熱処理によってのみ固溶させるとともに、この固溶させたMgの析出を抑制しつつ熱間圧延を行って熱延板とし、この熱延板を中間焼鈍を行わずに冷間圧延して冷延板とし、この冷延板を焼付塗装処理した状態にて、熱フェノールによる残渣抽出法で測定されたMgの固溶量を前記Mg含有量の80%以上とし、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域の組織として、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下とすることが好ましい。
上記のように本発明で規定する板の組織と特性は、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷延板に塗装および塗装焼付け処理を施した後のプレコートアルミニウム合金板として、あるいは、この板を成形した缶蓋の組織と特性として規定している。また、前記冷延板に、塗装焼付け処理を模擬した、後述する特定条件での熱処理を施した後の板の組織と特性であっても良い。
本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷間圧延後に焼付塗装処理された状態にて、サブグレイン面積率を増加させるとともに、Mgの固溶量を増加させた組織として、成形性を保ったまま高強度化する。これによって、本発明は、従来は兼備させることが困難であった、リベット成形性と高強度化とを両立させることができる。
したがって、本発明は、従来のように、リベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
しかも、Mgの固溶量は、後述する条件の均熱処理によって確保(制御)できる。すなわち、板の製造工程の上流側である均熱処理によってのみMgを固溶させて、鋳塊のMg固溶量を一旦確保すれば、続く熱延や冷延などの下流側で、この確保したMg固溶量を析出によって減らさないようにしてやることによって、最終の冷延板のMgの固溶量を所望の値(レベル)に確保できる。言い換えると、均熱処理によってのみMgを固溶させれば、冷延途中の中間焼鈍などでMgを固溶させずとも、最終の冷延板のMgの固溶量を所望の値(レベル)に確保でき、中間焼鈍を省略することが可能となる。
そして、この中間焼鈍を行わない冷間圧延でも、中間焼鈍を行う冷間圧延と同様に、冷延板のサブグレイン面積率を制御することができる。したがって、本発明では、サブグレイン面積率とMgの固溶量という冶金的な手段を選択することによって、均熱処理によってのみMgを固溶させ、中間焼鈍を行わない冷間圧延であっても、高い材料強度と十分なリベット成形性とを兼備する缶蓋用アルミニウム合金板を製造することができる。
本発明アルミニウム合金板の組織を示す、図面代用写真である。 アルミニウム合金板を成形してなる缶蓋の平面図である。 開缶性の評価時に使用する缶蓋のスコアの断面図である。 開缶性の評価時に使用する開缶荷重測定機の概要図である。図4(a)は開缶荷重測定機の斜視図である。図4(b)は開缶荷重測定機の測定時の缶蓋付近の断面模式図である。図4(c)は開缶荷重測定機に缶蓋を設置するときの缶蓋の向きを示す正面模式図である。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板を実施するための形態について、以下に説明する。
(アルミニウム合金組成)
缶蓋用アルミニウム合金板は、前記した通り、焼付塗装処理した状態にて、缶蓋に求められる特性として、蓋加工に耐える成形性、飲料充填後の内圧に耐える耐圧強度、正常かつ簡単に開けられるための開缶性を満たす必要がある。
したがって、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板の合金組成も、この要求特性を合金組成面から満たすために、Mg:4.0〜6.0質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.40質量%、Mn:0.01〜0.50質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。以下に、含有する各元素の意義につき、順に説明する。
Mg:4.0〜6.0質量%
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が4.0質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形したときの耐圧強度が不足する。一方、Mgの含有量が6.0質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となって、成形性、特にリベット成形性が低下する。従って、Mgの含有量はMg:4.0〜6.0質量%とする。
Mgの固溶量(固溶濃度)
更に、Mgは、母相に固溶すると、大きな格子ひずみを生じるため、加工硬化特性が向上する。一方、Mgの固溶量が減ると、固溶していないMgは、MgSiもしくはMgAlの化合物として存在し、この化合物は、リベット成形時の割れやくびれの原因となって、リベット成形性を低下させる。
したがって、本発明では、前記範囲で含有するMgについて、その固溶量を、固溶割合を基準(指標)として、高めて、リベット成形性を保ったまま、高強度化する。Mgの固溶量(Mgの固溶割合)が、前記板のMg含有量の80%未満であると、Mgの化合物(Mgの析出物)が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Mgの固溶量(固溶割合)は、前記Mg含有量の80%以上とする。なお、このMgの固溶量(固溶割合)は高いほど良く、その上限は特に定めないが、中間焼鈍を行わない工程では、Mg含有量の88%以上に高く制御することは製法上極めて困難である。したがって、製造限界からすると、Mgの固溶量(固溶割合)の上限は、好ましくはMg含有量の88%未満である。
Fe:0.10〜0.50質量%
Feは、アルミニウム合金板中にAl−Fe(−Mn)系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Feの含有量が0.1質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が向上せず、開缶時にスコア脱線(開缶時にスコア部以外に亀裂が伝播すること)や開缶力の増大によるタブ折れといった開缶不良が生じ易くなる。一方、Feの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物の数密度や体積率が大きくなり、リベット成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.10〜0.50質量%とする。
Si:0.05〜0.40質量%
Siは、アルミニウム合金板中にMg−Si系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、Feと同様に開缶性が向上しない。また、アルミニウム合金板の原材料に使用するアルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.40質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Siの含有量は0.05〜0.40質量%とする。
Mn:0.01〜0.50質量%
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.01質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度向上効果や缶蓋に成形したときの開缶性向上効果が得られない。一方、Mnの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Mnの含有量は0.01〜0.50質量%とする。
Cu:0.01〜0.30質量%
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。また、固溶させることにより、加工硬化特性が向上する。Cuの含有量が0.01質量%末満の場合、母相への固溶量が少なく、強度と成形性のバランスが低下し、リベット成形性が向上しない。一方、Cuの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、リベット成形性が低下する。従って、Cuの含有量は0.01〜0.30質量%とする。
不可避不純物
本発明に係るアルミニウム合金は、前記必須成分以外に、残部Alと不可避不純物とからなる。不可避不純物は、Crが0.3質量%以下、Znが0.3質量%以下、Tiが0.1質量%以下、Zrが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下、その他の元素が各々0.05質量%以下の範囲内で許容される。不可避不純物の含有量がこの範囲内であれば、本発明に係るアルミニウム合金板の特性に影響しない。
(アルミニウム合金板の組織)
本発明では、前記した合金組成とした上で、この缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、冷間圧延後に焼付塗装処理された状態にて、サブグレイン面積率を増加させ、成形性を保ったまま高強度化する。
このために、前記焼付塗装処理された後の缶蓋用アルミニウム合金板の、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の板厚中心部の領域(以下、単に板厚中心部と言う)の組織として、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることとする。
これによって、本発明は、従来は兼備させることが困難であった、リベット成形性と高強度化とを両立させることができる。すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の特性として、塗装焼付け処理を模擬した熱処理後の缶蓋用アルミニウム合金板の0.2%耐力と、この板のリベット成形性とを、共に高いレベルとすることができる。
より具体的には、後述する実施例の通り、0.2%耐力が360MPa超でも限界張出高さを1.45mm以上というレベルの高強度、高成形性とすることができる。ここで、板の限界張出高さが1.45mm以上であれば、缶蓋の実成形時にも十分な高さの前記した突起(ボタン)を成形することができ、十分なリベット成形性を有している。
なお、このデータは、後述する実施例の通り、塗装焼付け処理を模擬した255℃×20秒の熱処理後の0.2%耐力と、この板のリベット成形性の評価をφ6mmの微小張出試験を行った際の限界張出高さとした場合の、強度と成形性との関係である。
サブグレイン
以下に、サブグレインの規定につき具体的に説明する。
サブグレインは、亜結晶とも称され、小さな不定形の粒であり、冷延などにより加工歪を与えられて転位を導入された材料(組織)が、与えられた温度、時間、応力のもと、エネルギーの低い構造になろうと回復を進めることによって生じる。
すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の場合、サブグレインは、冷延によって導入された転位が、焼付け塗装などの加熱によって、合体消滅と再配列することにより、転位セル壁や変形帯などの転位密集領域の転位密度が減少して、シャープな境界になることで生じる。前記転位密集領域は、新たに移動してきた転位と合体消滅する確率が高く、加工硬化特性が低下するが、サブグレインの境界は転位の移動を妨げ、加工硬化特性が向上すると考えられる。加工硬化特性が向上すると均一変形能が向上するため、二軸張出変形であるリベット成形性が向上すると考えられる。また、サブグレインは、リベット成形性の向上効果の他に、強度の向上効果もある。
このサブグレインは、図1に示す通り、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により、結晶粒の中に出来る、その境界である外縁形状がシャープ(鮮明で明確)な、内部に転位の全くない、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの不定形の粒として識別できる。したがって、この透過型電子顕微鏡の観察視野面積に対する、個々のサブグレインの計測面積の総計の割合として、規定するサブグレイン面積率を算出することができる。
これに対して、前記転位密集領域と接するか交わっており、その境界が幅を持っており、独立した小さな粒として識別できにくい粒は、本発明では、サブグレインとは見なさず、カウントしない。このような粒は、具体的には、図1に示すような、その一部か多くの部分が、前記転位密集領域と接するか交わっているか、内部に転位があり、全体としてその境界(外縁形状)がシャープでなく幅を持っている粒である。このような粒は、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの粒として識別できにくいので、サブグレインとは見なさず、カウントしない。これら一連の求め方を総称して、本発明では「5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率」と称している。
本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の板厚中心部における、このようなサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下であることとする。
このサブグレイン面積率が平均で10%未満と小さいと、板が高強度となるほど、優れたリベット成形性と高強度とを両立することができない。すなわち、前記合金組成を満たし、前記Mgの固溶量の規定を満たしたとしても、缶蓋用アルミニウム合金板の成形性を保ったまま高強度化できない。
サブグレイン面積率は大きいほどリベット成形性が向上するが、実際の製造限界から、その面積率の上限を平均で90%とする。
したがって、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の板厚中心部における、このようなサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下であることとする。
ちなみに、前記特許文献1は、本発明の缶蓋用アルミニウム合金板と、合金組成やサブグレインの面積率(面積占有率)は重複するものの、その製造条件の違いから、Mgの固溶量が低くなる。前記特許文献1は、板の冷間圧延に、シングル圧延機ではなく、圧延スタンドが直列に並ぶタンデム圧延機を使用しており、強制的に冷却しない限り、必然的に温度が上昇して、圧延時の温度が比較的高温となって、Mgの析出が進み、Mgの固溶量が少なくなる。すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の成形性を保ったまま高強度化できずに、本発明とは、同じ強度レベルで比較した場合の、リベット成形性が低下する。
以上説明した、本発明で規定する板の組織そして特性は、前記した通り、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷延板(冷延後の板)に塗装および塗装焼付け処理を施した後のアルミニウム合金板(プレコート板)の組織と特性か、この板を成形した缶蓋の組織と特性である。また、このような塗装や塗装焼付け処理を施さずとも、あるいは缶蓋に成形せずとも、冷延板に、塗装焼付け処理を模擬した、後述する特定条件での熱処理を施した後の、板の組織と特性であっても良い。これらの組織と特性とは、前記塗装焼付け処理と前記熱処理との条件が同じであれば、同じか、あるいは僅差により同じと見なすことができる組織と特性となる。
(製造方法)
次に、本発明における缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を説明する。
本発明のアルミニウム合金板の製造工程自体は、常法のように、前記組成のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、鋳塊を熱処理により均質化する均熱処理工程と、均質化した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、熱間圧延板を焼鈍することなく冷間圧延する冷間圧延工程によって製造される。
但し、本発明では、サブグレイン面積率とMgの固溶量という冶金的な手段を選択しているので、均熱処理によってのみMgを固溶させ、中間焼鈍を行わない冷間圧延であっても、高い材料強度と十分なリベット成形性とを兼備する缶蓋用アルミニウム合金板を製造することができる。
Mgの固溶量は均熱処理によって確保でき、上流側である均熱処理によってのみMgを固溶させて、鋳塊のMg固溶量を一旦確保すれば、続く熱延や冷延などの下流側で、この確保したMg固溶量を析出によって減らさないようにしてやることによって、最終の冷延板のMgの固溶量を所望の値(レベル)に確保できる。すなわち、均熱処理によってのみMgを固溶させれば、冷延途中の中間焼鈍などでMgを固溶させずとも、最終の冷延板のMgの固溶量を所望の値(レベル)に確保でき、中間焼鈍を省略することが可能となる。そして、この中間焼鈍を行わない冷間圧延でも、中間焼鈍を行う冷間圧延と同様に、冷延板のサブグレイン面積率を制御することができる。
このための好ましい板の製造方法としては、先ず、前記した組成のアルミニウム合金鋳塊を、Mgを固溶させるため、500℃を超え、550℃以下の温度範囲で1時間以上保持する均熱処理を行う。次に、この均熱処理後に、全てのパスの定常速度を25m/分以上とし、かつ、パス間における粗圧延板が最低となる温度を450℃以上とした熱間粗圧延を行い、次いで終了温度を300〜360℃の範囲とした熱間仕上圧延を行って熱延板とする。そして、この熱延板を、中間焼鈍を行わずに、かつ、最終の冷間圧延後のコイルへの巻き取り温度を60〜120℃とし、総圧延率を85%以上とした冷間圧延を行って冷延板とする。
以下に、各製造工程ごとの各々好ましい条件と、その意義について説明する。
まず、アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法により、前記組成のアルミニウム合金を鋳造する。
均熱処理:
次に、この鋳塊表層の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均熱処理(均質化熱処理)を施す。この均熱処理によってのみMgを固溶させて、本発明で規定した前記Mgの固溶量とする。また、内部応力を除去し、鋳造時に偏析した溶質元素を均質化し、鋳造時に晶出した金属間化合物を拡散固溶させて、組織を均質化する。このために、均質化熱処理は500℃を超え、550℃以下の温度範囲で1時間以上保持する条件範囲から、必要とするMgの固溶量に応じて選択する。
均質化熱処理温度が500℃以下の場合又は保持時間が1時間未満の場合、Mgの固溶量が減り、本発明で規定した前記Mgの固溶量とすることができない。また前記均質化効果が低下して、機械的な特性や開缶性が低下する。また、均質化熱処理温度が550℃を超える場合、熱間圧延時にバーニングが生じる。また、保持時間の上限は20時間であり、これを超えても、Mgの固溶量に大差なく、生産性が低下する。
熱間圧延:
この均質化熱処理後、鋳塊を冷却することなく続けて、あるいは所定の開始温度まで冷却して、まず熱間粗圧延し、さらに熱間仕上圧延により、所定の板厚のアルミニウム合金熱間圧延板とする。この際、均熱処理によって確保したMgの固溶量を減らさないように、Mgの析出を抑えて、熱間圧延を行う。
このために、熱間粗圧延は10分以内で行うことが好ましく、このため、全てのパスの定常速度を最低でも25m/分以上とし、かつ、最初のパスから最終のパスのすべてのパス間での板温度を450℃以上とする(パス間における粗圧延板が最低となる温度を450℃以上とする)。
これらのパスのうち、1パスでも、25m/分未満の速度となると、圧延時間が長くなって、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下する。
また、これらのパスのうち、1パスでも、板温度が450℃未満となると、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下する。
また、熱間粗圧延の終了温度が450℃未満となると、熱延を粗圧延と仕上げ圧延とに分けて、かつ、これらの圧延を連続して実施するに際し、熱間粗圧延の終了温度が低くなり過ぎて、次工程の熱間仕上圧延で圧延温度が低くなって、エッジ割れが生じやすくなる。
この熱間粗圧延に続いて、終了温度を、好ましくは300〜360℃以上とした熱間仕上圧延を、Mg−Si系の化合物析出防止のために、遅滞なく、あるいは連続的に行って、熱延板とする。熱間仕上圧延の終了温度が300℃未満では、圧延荷重が高くなって生産性が低下する。一方、加工組織を多く残さず再結晶組織とするために、熱間仕上圧延の終了温度を高くした場合、この温度が360℃を超えると、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなって固溶Mg量が低下する。
冷間圧延:
前記熱間圧延板を、冷間圧延の前や、パス間などの途中で、中間焼鈍を行わずに、冷間圧延する。この冷間圧延は、圧延スタンドがシングル(1スタンド)か、2スタンド以上直列に配置されたタンデム圧延機で、必要なパス数(通板数)の冷延を行う。
冷間圧延率(総圧延率)は85%以上とする。冷間圧延率(総圧延率)が85%以上で、転位密度が高くなり、焼付塗装処理後のサブグレイン面積率が増す。転位を導入することにより、前記筋状の転位がタングル(もつれ、からみ)しやすくなり、林立転位やセル壁やせん断帯などの転位密集領域が多く形成される。そして、その後の焼付け塗装などの熱処理により、転位密集領域からサブグレインが形成され、本発明で規定する範囲のサブグレイン面積率とできる。
一方、冷間圧延率が85%未満の場合、圧延による蓄積歪みが不足し、転位密集領域が少なくなり(不足して)、焼付け塗装後のサブグレイン面積率も減少し、リベット成形性を含む成形性が低下する。
また、最終の冷延後(最終パス後あるいは最終スタンド出側)の材料温度(コイルへの巻取り温度)は60〜120℃の範囲とする。この冷延後の材料温度が120℃を超えて高すぎると、冷延板の転位密度が低下して、その後の焼付塗装処理後のサブグレイン面積率が10%以上にならない。一方、この冷延後の材料温度が60℃未満と低すぎると、冷延板の転位密度が高すぎて、焼付塗装処理中に回復が促進しやすくなり、強度が低下する。
以上の工程で製造した缶蓋用アルミニウム合金板は、クロメート系やジルコン系などの表面処理を施し、エポキシ系樹脂や塩ビゾル系、ポリエルテル系などの有機塗料を塗布し、PMT(Peak Metal Temperature:メタル到達温度)が230〜280℃程度で、塗装焼付け処理して、プレコート板とされた後、缶蓋へと成形される。本発明で、強度とリベット成形性の評価のための、塗装焼付け処理を模擬した、前記熱処理は、この塗装焼付け処理条件範囲より、再現性を持たせるために255℃×20秒のワンポイントとして選択している。
(缶蓋の作製方法)
素材アルミニウム合金板(冷延板)から缶蓋を作製する公知の方法の一例を以下に説明する。
前記したように、予め塗装および焼付塗装処理された素材アルミニウム合金板(プレコート板)を円板形状に打ち抜いた(ブランキング加工)ブランク材を、プレス機で絞り加工し、外周部のカール加工を施した後、カール部にシール用のコンパウンドを塗布して、シェルを作る。
この後、コンバージョン成形として、以下の成形を行う。プレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
次に、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて、飲み口部の溝である、図2、3のスコア3の成形、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字の成形を行う。
更に、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する(これをステイク工程という)。この一体化した缶蓋の平面図を図2に示す。
そして、別途DI成形され、開口部から内容物(飲料、食品)が充填されたアルミニウム合金製の缶胴の開口部に、この缶蓋を巻き締めて封止される。
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材アルミニウム合金板)
表1に示す、No.1〜26の組成の各アルミニウム合金を半連続鋳造法(DC)にて鋳造し、各例とも共通して、表層を面削した鋳塊(スラブ)を作製した。そして、表1に示す通り、この鋳塊の熱間圧延、冷間圧延での諸条件を変えて、前記冷間圧延後に焼付塗装処理された状態での、Mgの固溶量とサブグレイン面積率とを作り分けた。
各例とも共通する製造条件は以下の通りとした。すなわち、各例とも共通して、520℃×4時間の均質化熱処理を施した後、この520℃の温度で熱間粗圧延を開始し、この熱間粗圧延の終了温度を450℃以上とし、熱間粗圧延終了後に、直ちに熱間仕上圧延を開始し、板厚1.2〜4.3mmの熱間圧延板とした。そして、この熱延板を、熱延後あるいは冷延のパス間で中間焼鈍を一切行わずに、圧延スタンド数が2基のタンデム冷間圧延を用いて、板厚0.215mmの缶蓋用冷延板を作成した。
この際、表1に示すように、前記熱間粗圧延における定常速度やパス間における粗圧延板の最低温度、冷延における総圧延率と、最終の冷延後(最終圧延機出側)の材料温度(コイルへの巻取り温度)を潤滑油やクーラントの量などの制御により種々変えて、Mgの固溶量やサブグレイン面積率を制御した。
そして、このように製造した、表1のNo.1〜26のアルミニウム合金板を、塗装・焼付け工程を模擬した、共通して、オイルバスによる255℃×20秒の熱処理を施したものを、以下の組織や特性の測定、評価のための供試材とした。
(Mg固溶量)
前記供試材のMg固溶量(固溶割合)を、以下の要領で測定した。
すなわち、先ず、分解フラスコにフェノールを入れて加熱した後、測定対象となる前記各供試板(板厚中心部)から採取した試料を、この分解フラスコに移し入れて、熱フェノールにより、加熱分解する。次に、メッシュ(捕集粒子径)が0.1μm孔のメンブレンフィルターを用いてろ過し、ろ液をICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置内に導入し、ネブライザーで霧状にして小さなミストのみプラズマ内に吹き込み、Mgの固溶量を測定した。なお、ろ液に0.1μm未満の析出物が含まれていたとしても、前記霧状にした際に大きなミストとして分析されずに排出されるため、分析値には0.1μm未満の析出物も含まれない。そして、このMgの固溶量の、この板のMg含有量に対する割合(%)を計算した。この結果を表1に示す。
(サブグレイン面積率)
前記供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡によりサブグレイン面積率を測定して、測定視野数に応じた平均値にて算出した。
具体的には、前記供試材を機械研磨して、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)とした後、ツインジェット式電解研磨法にて板厚中心から厚さ100nmの薄膜にし、この薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)にて、5万倍の倍率で4視野撮影した。透明のフィルムに撮影画像からサブグレインのみを転写し、画像解析ソフトImage−Pro Plusを用いて撮影範囲内のサブグレインの総面積を測定し、視野面積(撮影面積)に対する、面積率を、前記4視野の平均で算出した。
この際、前記した通り、ここで、サブグレインとは、幅を持たないシャープな境界で囲まれている粒とし、全体としてその境界(外縁形状)がシャープでなく幅を持っており、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの粒として識別できにくい粒は、サブグレインとは見なさず、カウントしなかった。
(0.2%耐力)
前記供試材を、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号引張試験片を作製した。この試験片を用い、JIS−Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適正範囲は300MPa以上であり、この範囲であれば、薄肉化された缶蓋であっても耐圧強度を満足する。
(リベット成形性)
リベット成形性は、前記バブル工程を模擬した試験にてリベット成形性を評価した。すなわち、前記供試材に対し、φ6mmの微小張出試験を行い、くびれや割れが発生しない限界張出高さを求めた。0.2%耐力が高くなるほど通常は限界張出高さが低下するので、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲では限界張出高さを1.60mm超、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲では限界張出高さを1 .50mm以上、0.2%耐力が360MPa超では限界張出高さを1.45mm以上を適正範囲とした。アルミニウム合金板の限界張出高さが1.45mm超であれば、実成形時に十分な高さのボタンを成形することができる。
(開缶荷重)
前記供試材を、204径フルフォーム・エンド金型にてシェル成型、コンバージョン成形、タブのステイクを行った後に、開缶試験を行った。
図2は、開缶試験に用いた缶蓋の平面図である。
図3は、開缶試験に用いた缶蓋のスコア3の断面図である。
図4は、開缶時の荷重を測定する開缶荷重測定機の概要図である。
図4(a)は開缶荷重測定機5の斜視図である。
図4(b)は開缶荷重測定機5の測定時の缶蓋1付近の断面模式図である。
図4(c)は開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置するときの缶蓋1の向きを示す正面模式図である。
缶蓋1をスコア3に対してタブ4が上方となるように、開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置する(図4(c))。缶蓋1のタブ4に掛止具6を引っ掛けて、掛止部7とする(図4(b))。掛止具6を水平方向へ引っ張って3Nの引張荷重を負荷し、その状態で掛止具6を静止させた後、缶蓋1をX方向に回転させた。ロードセルにて荷重を測定し、最も高い荷重を開缶荷重とした。開缶荷重の適正範囲は25N以下とした。
表1に示すように、本発明の規定範囲内のNo.1〜10の発明例は、成分組成が発明範囲内であり、熱間粗圧延は、好ましい定常速度とされて10分以内で終了し、かつ、パス間における粗圧延板の最低温度や仕上げ圧延の終了温度も、そして、冷延における総圧延率や巻き取り温度など、全て好ましい製造条件で製造されている。
このため、Mgの固溶量割合が80%以上であり、板厚中心部は、図1に示す組織となって、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下である。すなわち、これら発明例は 缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、サブグレイン面積率を増加させた組織としている。因みに、この図1は発明例1の例である。
この結果、No.1〜10の発明例は、表1に示すように、0.2%耐力及び開缶荷重が適正で、リベット成形性が優れる。すなわち、成形性を保ったまま高強度化させており、リベット成形性と高強度化とを両立させることができている。
具体的には、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲では限界張出高さを1.60mm超、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲では限界張出高さを1.50mm以上、0.2%耐力が360MPa超でも限界張出高さを1.45mm以上というレベルの高強度、高成形性とすることができている。
従って、No.1〜10のアルミニウム合金板は、肉厚が0.215mmと薄いが、イージーオープン缶蓋用として好適に使用し得る。
一方、表1のNo.11〜26の比較例は、成分組成、Mgの固溶量割合、板厚中心部の組織としてのサブグレイン面積率、のいずれかが本発明の規定範囲内でなく、下記のとおり、0.2%耐力、開缶荷重及びリベット成形性のいずれかが適正値を満たさない。
No.11は、Mg含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶割合は満たし、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が低すぎる。
No.12は、Mg含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が360MPaを超えた範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.45mm超にはならず、リベット成形性が劣り、開缶荷重も比較的大きい。
No.13は、Fe含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、開缶荷重が大きすぎて、開缶性が低い。
No.14は、Fe含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.60mm超にはならず、リベット成形性が劣る。
No.15は、Si含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、開缶荷重が大きすぎて、開缶性が低い。
No.16は、Si含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、Mgの固溶量割合が低く、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.60mm超にはならず、リベット成形性が劣る。
No.17は、Mn含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が低すぎ、開缶荷重も大きすぎ、開缶性が低い。
No.18は、Mn含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、Mgの固溶量割合や、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が360MPaを超えた範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.45mm超にはならず、リベット成形性が劣る。
No.19は、Cuを含有せず、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.60mm超にはならず、リベット成形性が劣る。
No.20は、Cu含有量が上現を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織のサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が360MPaを超えた範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.45mm超にはならず、リベット成形性が劣る。
No.21は、合金組成は本発明範囲内であるものの、熱間粗圧延の定常速度が遅すぎて、Mgの析出を抑制できず、Mgの固溶量割合が少なすぎる。この結果、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.50mm以上にはならず、リベット成形性が低い。
No.22は、合金組成は本発明範囲内であるものの、パス間における粗圧延板の最低温度が450℃未満となっており、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、Mgの析出を抑制できず、Mgの固溶量割合が少なすぎる。この結果、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.50mm以上にはならず、リベット成形性が低い。
No.23は、合金組成は本発明範囲内であるものの、仕上げ圧延の終了温度が高過ぎて、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、Mgの析出を抑制できず、Mgの固溶量割合が少なすぎる。この結果、0.2%耐力が310〜330MPaの範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.60mm超にはならず、リベット成形性が低い。
No.24は、合金組成は本発明範囲内であるものの、冷延における総圧延率が低すぎて、サブグレイン面積率が少なすぎる。この結果、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.50mm以上にはならず、リベット成形性が劣り、高いリベット成形性と高強度とを兼備できていない。
No.25は、合金組成は本発明範囲内であるものの、冷延における最終巻き取り温度が低すぎ、冷延板の転位密度が高すぎて、焼付塗装処理中に回復が促進して0.2%耐力が低すぎ、高いリベット成形性と高強度とを兼備できていない。
No.26は、合金組成は本発明範囲内であるものの、冷間圧延の最終巻き取り温度が高すぎ、Mgの固溶割合やサブグレイン面積率が下限を外れて少なすぎる。この結果、0.2%耐力が330MPaを超え、360MPa以下の範囲での、前記発明例並みの限界張出高さ1.50mm以上にはならず、リベット成形性が劣り、高いリベット成形性と高強度とを兼備できていない。
以上の結果から、高いリベット成形性と高強度とを兼備するための、本発明の各要件や好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
以上、本発明は、従来のように、リベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
このため、缶蓋厚さが薄肉化、高強度化され、より厳しい使用条件での高いリベット成形性と高強度とが要求される缶蓋に用いられるアルミニウム合金板に最適である。
1 缶蓋
2 リベット部
3 スコア
4 タブ
5 開缶荷重測定機
6 掛止具
7 掛止部

Claims (2)

  1. Mg:4.0〜6.0質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.40質量%、Mn:0.01〜0.50質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなり、中間焼鈍を行わない冷間圧延後に焼付塗装処理されたアルミニウム合金板であって、熱フェノールによる残渣抽出法で測定されたMgの固溶量が、前記Mg含有量の80%以上であり、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域の組織として、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることを特徴とする缶蓋用アルミニウム合金板。
  2. 前記缶蓋用アルミニウム合金板が、鋳塊の均熱処理によってのみMgを固溶させたものである、請求項1に記載の缶蓋用アルミニウム合金板。





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