JP2007270281A - ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性良くしごき成形性を向上させ、カール部およびネジ部の肌荒れを防ぐことができるボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法を提供する。
【解決手段】550〜620℃で2時間以上均質化処理を施した後、熱間粗圧延工程において総圧下量を94〜96%、ラスト2パスの圧下量の合計を45〜60%とし、熱間仕上げ圧延での総圧下量を90〜93%、とし、熱間仕上げ圧延の終了温度を300〜400℃とすることによって、結晶粒が十分に微細化され、粒子径0.1〜1.0μmの析出物の分散密度が2400個/mm以下、熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径の平均値が45μm以下の再結晶組織を得て、特には中間焼鈍を行わなくても効率良くしごき成形性を向上させ、カール部およびネジ部の肌荒れを防ぐことができるボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は清涼飲料等の各種飲料缶に使用される飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法に関し、特に缶底部、胴部、飲み口部が一体成形され、リシール可能なボトル型飲料缶に用いられるボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
アルミニウム合金からなる飲料缶としては、缶胴に飲料を充填して缶蓋の巻き締めを行った2ピース缶が多く用いられている。
このアルミニウム合金板は、アルミニウム合金鋳塊に均質化処理を施した後に熱間圧延を行い、その後必要に応じて焼鈍処理を施し、次いで冷間圧延を行うことで製造される。 通常はこれに加えて焼鈍、脱脂、洗浄、潤滑油塗布等の仕上処理が施される。
この2ピース缶は、リシール性がないという点が樹脂ボトルと比較した場合の難点であるとされていた。
この様な課題の認識に基づき、近年、リシール可能なボトル形状のアルミニウム合金からなる飲料缶(以下、「ボトル型飲料缶」とする。)が開発された。このボトル型飲料缶は従来の2ピース缶と同様に絞り・しごき加工によって缶の形状に成形した後、これをトリミングして缶高さをそろえ、さらにその後胴部にネッキング加工を行って口絞りをし、さらにこの口絞りした部分にネジ部の加工をした後、飲み口部に口当たりをよくするためのカール加工を施すという工程を経て製造される。このような工程を経て缶底部・胴部・飲み口部が一体成形されたボトル型飲料缶が製造される。
以上のボトル型飲料缶の製造工程で、絞り・しごき加工によって缶の形状に成形した胴部に施されるネッキング加工は胴体部の径よりもはるかに狭小な口径の飲み口部を成形するための厳しい成形加工であり、さらにその様に厳しい成形加工を施して得られた飲み口部に対してネジ加工やカール加工が施される過程で、得られるネジ部およびカール部に肌荒れが生じることがある。
この様に肌荒れが生じると、その肌荒れによる凹凸のために飲み口部のネジ加工部分とキャップとの密着性が低下し、係るボトル型飲料缶をその用途に供した場合には、特に開封後にリシールした際に中身の液体が漏れ出す恐れが生じる。また肌荒れは缶壁の塗装性に影響し最終製品缶の外観を損なう。
係るボトル型飲料缶に関し、特許文献1にはネッキングによりエンド部の開口部の口径を縮径化させる比率をより高めても、エンド部および開口部で縦スジの発生が抑制される包装容器用アルミニウム合金板を提供するという課題の下に、最大長が8〜15μmであるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度が179個/mm以下であると共に、前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚が30nm以下であり、かつ前記アルミニウム合金板の表面の中心線平均粗さRaが0.30〜0.45μmであることを特徴とする包装容器用アルミニウム合金板が開示された。
さらに係るボトル型飲料缶に関し、特許文献2には口頸部開口端のカール加工性に優れたボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を提供するという課題の下に、重量%でSi:0.1〜0.5%、Fe:0.3〜0.7%、Cu:0.05〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、Mg:0.4〜1.5%、Cr:0.001〜0.05%、Zn:0.05〜0.5%、Ti:0.001〜0.05%を含有し、残部が不可避的不純物を含むAlからなる組成を有するボトル型飲料缶用アルミニウム合金板が開示された。
しかし、以上の特許文献1及び特許文献2のいずれもネジ部およびカール部の肌荒れを防止し、飲み口部とキャップとの密着性を高めるという要請には着目しておらず、その様な課題に向けた技術的な構成は行われていない。
一方、特許文献3及び特許文献4には特にボトル型飲料缶ということではなく一般的な缶用素材としてのアルミニウム合金硬質板に関し、深絞り加工における肌荒れ防止という課題に関し、熱間粗圧延終了後に高温短時間焼鈍を行うことによって再結晶粒が成長することを抑制し、さらに冷間圧延後焼鈍することによって再結晶粒を微細化することを骨子とした深絞りアルミニウム合金硬質板の製造法が開示された。
しかしこの特許文献3及び特許文献4では、特にボトル型飲料缶を対象として検討したものではなく、しかも冷間圧延の前後に2回の中間焼鈍を必要としコスト的に不利であることは明らかである。そこで、ボトル型飲料缶の今後のさらなる普及を図るためにはその様な中間焼鈍を必要としないコスト的に有利である製法が望まれていた。
特開2004−124250号公報 特開2004−10941号公報 特開昭57−54258号公報 特開昭60−155654号公報
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、ネジ部およびカール部の肌荒れを防止し、飲み口部とキャップとの密着性を高めることができ、かつ生産効率向上にも寄与することができるボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明者らは鋭意研究を行った結果、飲み口部とキャップとの密着性を高めるために製造方法を規定し、製造工程特には熱間圧延工程の条件を規定することによって析出物分布および板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径、板厚方向のAlマトリックス再結晶粒数を制御し、熱間圧延後のAlマトリックス再結晶粒径を効率良く微細化して、しごき成形性を向上させることによりネジ部とカール部に肌荒れのないボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を得られることを見いだした。
本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板はボトル形状の飲料缶に用いられるアルミニウム合金板において、Mn0.7〜1.5%、Mg0.8〜1.5%、Cu0.10〜0.35%、Si0.1〜0.4%、Fe0.2〜0.6%を含有し、さらにTi0.01%〜0.15%を単独であるいはB0.0001%〜0.05%とともに含有し、残部Alと不可避不純物からなり、粒子径0.1〜1.0μmの析出物の分散密度が2400個/mm以下であり、熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径の平均値が45μm以下であり、かつ最終板の板厚断面に垂直な直線が通るAlマトリックス再結晶粒の数が80個以上であることを特徴とする。
また、本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法はMn0.7〜1.5%、Mg0.8〜1.5%、Cu0.10〜0.35%、Si0.1〜0.4%、Fe0.2〜0.6%を含有し、さらにTi0.01%〜0.15%を単独であるいはB0.0001%〜0.05%とともに含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を550〜620℃で2時間以上均質化処理を施した後、冷却速度60℃/h以下で熱間圧延開始温度の400〜550℃まで冷却し、熱間粗圧延工程において総圧下量を94〜96%、ラスト2パスの圧下量を45〜60%とし、熱間仕上げ圧延での総圧下量を90〜93%、熱間仕上げ圧延の終了温度を300〜400℃とし、中間焼鈍は行わずに、続いて冷間圧延を行う工程を含むことを特徴とする。
以上の様に本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板は、ネッキング加工によって成形された飲み口部に対してネジ加工やカール加工を施してもネジ部およびカール部に肌荒れが生じることはなく、ボトル型飲料缶として用途に供した場合に飲み口部とキャップとの密着性を高めたボトル型飲料缶を製造するための素材となし得る。
また本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法によれば本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板を中間焼鈍の手間を省き効率よく生産することができる。
以下に本発明のボトル型飲料缶用アルミニウム合金板に関して、合金組成の限定理由を示す。
[Mnの成分範囲:0.7〜1.5%]
Mnは強度ならびにDI成形性の向上に有効な元素であるとともに、しごき成形時に金型との間で固体潤滑作用を生じる高硬度な金属間化合物Al12(Mn,Fe)Si相(α相)を形成させ、ダイスクリーニング効果を得るために必要な元素である。その成分範囲を0.7〜1.5%とする。0.7%未満ではその効果は十分に得られず、潤滑不足によりダイス金型にアルミニウム合金板が凝着する不具合が発生する。さらには、金属間化合物が十分形成されないため、缶胴強度が向上しない。逆に1.5%を超えて含有されると晶出物が粗大化するためにしごき成形性が悪化して、ネッキング性および飲み口部の成形性が低下する。望ましい含有量は0.8〜1.2%である。
[Mgの成分範囲:0.8〜1.5%]
Mgは母相に固溶して再Alマトリックス再結晶粒を微細にして、強度向上に寄与する元素であり、その成分範囲を0.8〜1.5%に設定する。0.8%未満では必要とされる強度を十分に得ることは難しい。また、1.5%を超えて含有されると強度が上昇しすぎてしごき成形性、ネッキング性および飲み口部の成形性が低下する。望ましい含有量は1.0〜1.4%である。
[Cuの成分範囲:0.10〜0.35%]
Cuは強度向上に寄与する元素であるが、0.1%未満ではその効果が十分に得られず、0.35%を超えると強度が上昇しすぎてCuはそれ自体の固溶により缶胴体の強度向上に寄与する元素であるとともに、製缶時の塗装焼付処理において、Al−Cu−Mg系析出物の析出硬化によって強度向上に寄与する元素である。これにより缶胴強度、特にボトム部の強度向上が得られる。 成分範囲は0.1〜0.35%とする。0.1%未満では十分な強度は得られず、0.35%を超えて含有されると強度が高くなり過ぎるため、しごき成形性、ネッキング性および飲み口部の成形性が低下する。
[Siの成分範囲:0.1〜0.4%]
SiはAl12(Mn,Fe)Si相(α相)を形成してしごき成形を向上させる元素である。 その含有量が0.1未満ではしごき成形を向上させる効果が十分に得られず、0.4%を超えると晶出物が粗大化し、しごき成形性、ネッキング性および飲み口部の成形性が低下することに加え、析出物が微細に生じ、熱間圧延後の再結晶を阻害する。
[Feの成分範囲:0.2〜0.6%]
FeはMnやMgとともに強度向上に寄与する元素である。Feの含有量が0.2%未満では強度を向上する効果が十分に得られない。一方、0.6%を超えると晶出物が粗大化するためにしごき成形性、ネッキング性および飲み口部の成形性が低下する。
TiおよびBは鋳塊組織を微細にするために添加する。Ti添加量が0.1%を超え、かつB添加量が0.01%を超えると粗大な晶出物が生じ、しごき成形時に割れやピンホールを生じやすくなる。一方、Tiが0.01%未満で、かつB0.0001%未満である場合には、鋳塊の組織微細化の効果が少ない。また、Tiが0.15%を超えるとTiAlが晶出し成形性を害し、Bが0.05%を超えるとTiBの粗大粒子が混入し成形性を害する。
[不可避的不純物]
その他の不可避的不純物として、Znは0.3%以下、Crは0.3%以下、Zrは0.1%以下、Vは0.1%以下であれば、本発明の効果を損なわない程度で許容できる。
次に本発明のアルミニウム合金板の熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径および板厚方向のAlマトリックス再結晶粒数の規定理由について説明する。
熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径の平均値が45μmを超えると厳しい加工を受けるネジ部およびカール部の表面に肌荒れが生じる。これはAlマトリックス再結晶粒が小さいと応力が分散され肌荒れが抑制されるのに対し、Alマトリックス再結晶粒が大きいと変形時の応力が集中して肌荒れが起こるためである。
また、板厚方向のAlマトリックス再結晶粒数も肌荒れに影響を及ぼし、冷間圧延後の最終板の板厚断面に垂直な直線が通るAlマトリックス再結晶粒の数が80個未満であると肌荒れが生じやすくなることがわかった。よって熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径の平均値を45μm以下、最終板の板厚断面を鉛直方向に横切るAlマトリックス再結晶粒の数が80個以上と規定する。
本発明の製造工程において熱間圧延以降では再結晶処理を行わないため、冷間圧延において板幅の変化はほとんどなく、冷間圧延後の最終板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径は熱間圧延後とほぼ同じである。板幅方向の特定は板表面の圧延のロールが転写された圧延目を見ることにより判別できる。また、圧延によりAlマトリックス再結晶粒は圧延方向に引き伸ばされることから、Alマトリックス再結晶粒を観察することでも判別できる。
次に本発明のアルミニウム合金板の析出物の分散密度の規定理由について説明する。
粒子径0.1〜1.0μmの析出物の分散密度が2400個/mm以下である場合には特に板幅方向のマトリックスのAlマトリックス再結晶粒径を小さくすることができる。
析出物はその分布状態により、熱間圧延終了後の再結晶組織に大きな影響を及ぼす。析出物が高密度に存在すると再結晶を阻害し、最終的に熱間圧延終了後に再結晶するときはきわめて粗大な再結晶粒を形成する。このように再結晶は析出物分布に大きく影響されるため、これらの分布を制御することでAlマトリックス再結晶粒径を制御することができる。
次に本発明のアルミに合金板の製造工程について説明する。
均質化処理
アルミニウム鋳塊を550〜620℃で2時間以上均質化処理を施す。この均質化処理は鋳造時に生じた偏析の均質化の他に過飽和に固溶した溶質元素を析出させるとともに析出物分布を整えて、熱間圧延時にAlマトリックスが再結晶しやすくするために行う。均質化温度が550℃未満、または保持時間が1時間未満ではその効果が十分ではなく、620℃を超えると局所的に溶融が起こり、表面品質が低下する。均質化保持時間についてはある程度長時間保持するべきであり、工業的には生産性やコストの兼ね合いから1〜12hr程度が適当といえる。
均質化処理から熱間圧延開始温度までの冷却
一般に、均質化処理後のアルミニウム鋳塊はいったん常温まで冷却される。
しかしこのように、均質化処理後、室温まで冷却するとその冷却中に新たな過剰な析出物の析出が起こり、その結果、析出物の分散密度、すなわちAlマトリックスの単位容積当たりの析出物の密度が増し、その結果、マトリックスの再結晶粒径が大きくなって強度、成形性共に悪化する。
そこで、本発明のアルミニウム合金板の製造方法では均質化処理後のアルミニウム鋳塊を冷却速度60℃/h以下で熱間圧延開始温度の400〜550℃まで冷却し、引き続き、熱間粗圧延を施す。
冷却速度を60℃/h以下としたのは、冷却中に適度な析出を生じさせて析出物を成長させるためであり、60℃/hより早く冷却すると析出物の適度な成長が得られない。
熱間粗圧延
熱間圧延は熱間粗圧延機を用いて行なわれる。本発明の熱間粗圧延の開始温度は380〜500℃である。熱間粗圧延の開始温度が400℃未満では熱間仕上げ圧延温度の終了温度を目標範囲にすることができずAlマトリックスを再結晶させることができない。熱間粗圧延の開始温度が500℃を超えると熱間仕上げ圧延開始温度を適正範囲にするためには加工発熱させないよう軽圧下で多パスの圧延を施したり、長時間熱間仕上げ圧延開始まで空冷する必要が生じコスト的に不利である上、表面性状が悪化する恐れがある。
熱間粗圧延工程においては総圧下量を94〜96%、ラスト2パスを45〜60%という条件で行う。ラスト2パスの圧下量を45〜60%とするのは、最後の2パスをこの様に強圧下とすることによって特に板厚方向の結晶粒が微細化するためである。
熱間粗圧延の終了温度は結晶粒径制御に非常に重要な条件となる。この発明では低温での熱間圧延を行いかつこれと後述するタンデム式の熱間仕上げ圧延の条件との適合を図ることによって熱間圧延後の再結晶粒径を微細化して、効率良くしごき成形性を向上させ、さらにはネジ加工やカール加工を施してもネジ部およびカール部に肌荒れが生じることを防ぐことができる。
係る低温での熱間圧延の具体的条件として、熱間粗圧延の終了温度の範囲を340℃以上400℃未満とした。熱間粗圧延の終了温度が340℃未満ではいかにその後の圧下率を調整しても再結晶状態とすることができない。一方、400℃以上であると熱間粗圧延過程で蓄積されて熱間仕上げ圧延過程で再結晶粒径を微細化するための駆動力となる残留歪みが不充分となって、結晶粒が十分に微細化しないためしごき成形性が低下し、さらにはネッキング加工後にネジ加工やカール加工を施した場合、ネジ部およびカール部に肌荒れが生じる。
熱間仕上げ圧延
さらに本発明では低温での熱間圧延を行うと共にこれと相俟ってタンデム式の熱間仕上げ圧延の条件を適宜に設定することによって熱間圧延後の再結晶粒径を微細化して、効率良くしごき成形性を向上させ、さらにはネジ加工やカール加工を施してもネジ部およびカール部に肌荒れが生じないようにすることを実現している。そのための熱間仕上げ圧延の条件として、(3タンデム以上のタンデム式の)熱間仕上げ圧延(を施す際のタンデム式圧延機)の総圧下量を90〜93%とする。これによって熱間圧延中に歪みを蓄積し、再結晶を微細化させ、熱間圧延板での板幅方向での再結晶粒を45μm以下とすることができる。
この熱間仕上げ圧延は3タンデム以上のタンデム式圧延機で行い総圧下率を90〜93%としておこなうことができる。この様に3スタンド以上のタンデム式圧延機を用いることによって、パス間の回復を抑えながら90%以上の大圧下を加える事ができる。この場合に総圧下率が90%未満では仕上げ圧延前の熱間粗圧延の終了温度の範囲を340℃以上400℃未満として低温の熱間圧延を行った場合には、Alマトリックスを十分な再結晶組織とすることができない。またこの場合に熱間仕上げ圧延終了温度を高めにして再結晶組織を得ることができたとしても立方体方位が十分に発達せず耳率の悪化を招く。
またこの発明ではタンデム式圧延機を用いて行う熱間仕上げ圧延の最終パスの圧下量を60%以上とする。最終パスの圧下量を60%以上とするのはAlマトリックスを再結晶組織とするのに十分な歪みを与えるためである。最終パスの圧下量が60%未満では仕上げ圧延前の熱間粗圧延の終了温度の範囲を350℃以上380℃未満として低温の熱間圧延を行った場合には、熱間圧延後に得られるアルミニウム合金板のAlマトリックスを再結晶組織とすることができない。
熱間仕上げ圧延の終了温度を300〜330℃とし、好ましくは300〜315℃とする。熱間仕上げ圧延終了温度が300℃未満では熱間仕上げ圧延における圧下量をいかに大きくしてもAlマトリックスを再結晶組織とすることができない。一方熱間仕上げ圧延終了温度が315℃を超えるとAlマトリックス再結晶後の結晶粒が粗大化し、しごき成形性が低下する。また、330℃を超えるとネッキング加工後にネジ加工やカール加工を施した場合、ネジ部およびカール部に肌荒れが生じ、表面性状が低下する。
この発明では以上の様に仕上げ圧延前の熱間粗圧延の終了温度の範囲を340℃以上400℃未満として低温の熱間圧延を行い、さらに3タンデム以上のタンデム式の熱間仕上げ圧延を施すにあたり仕上げ圧延終了温度を300〜330℃とし、その際のタンデム式圧延機の総圧下量を90%以上でかつ最終パスの圧下量を60%以上とすることによって、熱間圧延後の再結晶粒径を微細化し、引き続き特には焼鈍を施すことなく熱間圧延後の素材を室温に放置した後冷間圧延を行い、アルミニウム合金板を製造することによって効率良くしごき成形性を向上させることを実現した。
したがって、冷間圧延前の中間焼鈍を行うことなく冷間圧延工程が行われる。冷間圧延後最終的に必要に応じて焼鈍が行われる。
冷間圧延
上述の様にこの発明では、熱間圧延後引き続いて焼鈍を施すことなく熱間圧延後の素材を室温に放置した後冷間圧延を施し最終板厚とする。その際その冷間圧延における圧延率は83〜88%とする。冷間圧延における圧延率が83%未満では強度が不足し、88%を超えると強度が上昇しすぎしごき成形性やボトムしわ性が低下する。
焼鈍
冷間圧延後の圧延材の残留歪みを加熱により除去し、軟化することを目的として仕上げ焼鈍を行う。この仕上げ焼鈍を施すにあたりその温度範囲は120〜160℃とする。この仕上げ焼鈍の温度範囲が120℃未満では材料の回復が十分ではなくボトムしわ性が低下する。また160℃を超えると材料の回復が大きくなりボトムしわ性は良好になるが同時にAlマトリックスに析出するAl−Cu−Mg系の析出物の影響で加工硬化性が大きくなりしごき成形性が低下する。
処理時間を1hr以上としたのは1hr未満ではその効果が十分ではないためであり、工業的には生産性、コスト面から1〜6hr程度が適当である。
また、この発明では最終冷間圧延のラストパスを120〜160℃の高温で仕上げることによってその過程で残留歪みを除去し、仕上げ焼鈍は省略してもよく、そのような仕上げ焼鈍の省略は生産効率上有利となる。
以下に本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。
表1に示す組成の合金を常法により溶解鋳造し、厚さ500mmとし、鋳塊を作製した。
Figure 2007270281
次にこの鋳塊を面削後、600℃にて4時間の均質化処理を行い、シングルリバースミルによる熱間粗圧延およびタンデム圧延機による仕上げ圧延、冷間圧延を表2に示す条件で行い、中間焼鈍を行わずに最終板を作製した。
Figure 2007270281
最終板の析出物分布密度、熱間圧延板の板幅方向でのAlマトリックス再結晶粒径、最終板の板厚方向でのAlマトリックス再結晶粒数およびボトル形状に製缶した際の肌荒れ発生の有無を表3に示す。
最終板の析出物分布密度はTEM(透過型電子顕微鏡)観察の1万倍で10視野より算出した。試料の厚みは等厚干渉縞から求めた。熱間圧延板の板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径と最終板の板厚方向のAlマトリックス再結晶粒数は光学顕微鏡写真より測定した。肌荒れの発生具合はネジ部とカール部のそれぞれの面積に占める肌荒れ発生部分の面積率を示した。
Figure 2007270281
1〜4番は本発明例であり、板幅方向のAlマトリックス再結晶粒のサイズが小さく、板厚方向のAlマトリックス再結晶粒数が多いために肌荒れは発生していない。
5番では合金組成が本発明の範囲外であり、Mn量が多く添加されているため、微細な析出物が存在しAlマトリックス再結晶粒が微細化されず、カール部でのみ肌荒れが生じた。
6番では均質化温度が低いために、析出物が微細なままであり、再結晶しづらかったために、最終的なAlマトリックス再結晶粒は粗大化し、カール部で肌荒れが生じた。
7番では冷却速度が本発明の範囲よりも速く、析出物が十分に成長することができず、Alマトリックス再結晶粒微細化の効果が十分ではなかったため、ネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
8番は熱間圧延開始温度が高いため熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延終了温度が高くなり、Alマトリックス再結晶粒の粗大化を招いてしまい、カール部で肌荒れが生じた。
9番は熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延終了温度が低く、再結晶の駆動力が低くなってしまい、わずかに生成したAlマトリックス再結晶粒が粗大化してネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
10番はラスト2パスでの圧下量が小さく、板厚方向のAlマトリックス再結晶粒の数が少なく、Alマトリックス再結晶粒の微細化が十分ではなかったためネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
11番はラスト2パスでの圧下量が大きく、粗圧延中に再結晶が起こり、仕上げ圧延での再結晶核が少なくなったため、結果的にAlマトリックス再結晶粒が粗大化し、ネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
12番はこの発明の条件である熱間仕上げ圧延の最終パスの圧下量を60%以上とするという条件を充足せず、最終パス圧下量が52%であって低いため熱間仕上げ圧延終了温度が332℃であってこの発明の条件を充足してもAlマトリックスを再結晶組織として軟化することができず、必要以上に強度が高く、しごき成形性が悪化し、ネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
13番は冷間圧延の圧下率が低いために結晶粒が十分に微細化されず、ネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
14番は冷間圧延の圧下率が大きいために強度が上昇しすぎてしまい、しごき性の低下を招き、結晶粒は十分に微細化されているにも関らず、ネジ部とカール部で肌荒れが生じた。
以上のように本発明によれば、析出物分布とAlマトリックス再結晶粒サイズを制御することでカール部およびネジ部の肌荒れを防ぐことができる。
本発明は清涼飲料等の各種飲料缶の缶胴材として使用されるアルミニウム合金板に関して、ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法として適用することができる。

Claims (2)

  1. Mn0.7〜1.5mass%(以下単に%)、Mg0.8〜1.5%、Cu0.10〜0.35%、Si0.1〜0.4%、Fe0.2〜0.6%、さらにTi0.01%〜0.15%を単独であるいはB0.0001%〜0.05%とともに含有し、残部Alと不可避不純物からなり、粒子径0.1〜1.0μmの析出物の分散密度が2400個/mm以下であり、熱間圧延板における板幅方向のAlマトリックス再結晶粒径の平均値が45μm以下であり、かつ最終板の板厚断面に垂直な直線が通るAlマトリックス再結晶粒の数が80個以上であることを特徴とするボトル型飲料缶用アルミニウム合金板。
  2. Mn0.7〜1.5%、Mg0.8〜1.5%、Cu0.10〜0.35%、Si0.1〜0.4%、Fe0.2〜0.6%を含有し、さらにTi0.01%〜0.15%を単独であるいはB0.0001%〜0.05%とともに含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を550〜620℃で2時間以上均質化処理を施した後、冷却速度60℃/h以下で熱間圧延開始温度の380〜500℃まで冷却し、熱間粗圧延工程において総圧下量を94〜96%、ラスト2パスの圧下量の合計を45〜60%とし、熱間粗圧延の終了温度を340℃以上400℃未満とし、さらに引き続いて3タンデム以上のタンデム式の熱間仕上げ圧延を施すにあたり熱間仕上げ圧延での総圧下量を90〜93%、かつ最終パスの圧下量を60%以上とする熱間仕上げ圧延の終了温度を300〜330℃とし、中間焼鈍は行わずに、続いて圧下量が83〜88%の冷間圧延を行う工程を含むボトル型飲料缶用アルミニウム合金板の製造方法。
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