JP2017166052A - 包装容器タブ用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】薄肉化しても、高強度(高いタブ折れ強度)を保ち、開缶時にタブにちぎれや裂けの発生がない包装容器タブ用アルミニウム合金板の提供。【解決手段】Si:0.05〜0.30質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.05〜0.40質量%、Mg:4.50〜6.00質量%、残部がAl及び不可避不純物からなり、表面に塗膜を有し、板厚方向中央に位置する板面と平行な面のSEMで観察される電子チャネリングコントラスト像から測定される圧延方向の高密度転位壁の間隔の平均値が400〜600nmであるアルミニウム合金板。【選択図】図2
Description
本発明は、飲料、食品用途に使用される缶等の容器、特に飲料缶の蓋部に取り付けて開缶するためのタブに成形加工される包装容器タブ用アルミニウム合金板に関する。
飲料、食品用途に使用される包装容器の1つとして、飲料缶、缶詰等の食品缶が広く流通している。現在、これらの缶の蓋部(エンド)には、缶切り等の器具を使用せずに手で容易に開缶することのできるイージーオープンエンド(EOE)を用いた、いわゆるプルトップ(pull−top)方式が広く用いられている。イージーオープンエンドの蓋部は、缶の上面を構成する蓋材に、その上面(缶の外側)に開缶部材であるタブがその中心より一端寄りを固定して取り付けられて、このタブの他端を手(指)で上方に引っ張って起こすことで、てこの働きにより蓋材が外れて開缶する。イージーオープンエンドには、食品缶に多く適用される、蓋材の周縁以外のほぼ全面が外れて開缶するフルオープンエンド(FOE)と、飲料缶に多く適用される、蓋材の一部が切り取られて飲み口を形成するパーシャルオープンエンド(POE)の2種類がある。パーシャルオープンエンドは、かつて主流であった、タブが蓋材の切り取られた一部(口金)と共に缶本体から離れるプルタブ式(pulltab)に代わり、タブと口金が缶本体から外れないステイオンタブ式(Stay−on tab,SOT)が、安全性及び環境問題の面から普及している。
ステイオンタブ式の蓋部は、図1Aに示すように、蓋材2とタブ1とで構成され、円板状の蓋材2(図1Aでは一部を欠いて示す)の略中心に形成されたリベット部21を、タブ1のリベット孔11にかしめることで、タブ1が蓋材2に取り付けられている。リベット孔11は、タブ1の長手方向中心より一端側に寄せた位置に形成され、他端側には指を掛け易いようにリング状の掛止部12が形成されている。また、タブ1は、図1Bに示すように、板材(アルミニウム合金板)を裁断した外周及び掛止部12の内周の縁を下面側に折り曲げて剛性を高め、かつ安全性を確保している。一方、リベット孔11及びその外側のU字型の孔(スリット)状のインナーランス14が形成された領域を1枚の平板状として、変形し易い構造としている。このようなタブ1の材料としては、プルタブ式が採用されていたときから、成形性や耐食性が考慮されて5182合金等のアルミニウム合金板(冷間圧延板)が広く適用されている。アルミニウム合金板は、表面に塗装、焼付け後、所定の形状に裁断、成形されてタブ1に製造され、タブ1は別の板材を成形してなる蓋材2にリベットにより取り付けられる。蓋材2の、タブ1の前記一端側の延長上には、開缶後に飲み口を形成するための開口領域23がスコア25で囲まれて設けられている。このスコア25は主スコアとその内側の平行な補助スコアとからなり、開口領域23の周囲を完全には一周せず、一箇所(図1Aではタブ1が重なる領域)で不連続となるように形成されている。
開缶においては、タブ1の掛止部12を上方に引っ張ると、図1Cに示すように、これが力点Eとなり、リベット部21近傍が支点Fとなって、リベット部21で固定された領域を残してタブ1が起こされる。詳しくは、タブ1は、インナーランス14で分割されるように、その内側の領域(リベット孔11周辺部)を蓋材2に固定されたまま、掛止部12等の外側の領域が起こされる。そして、タブ1の一端(掛止部12のリベット孔11を挟んだ反対側)が作用点Lとなって、てこの働きで強く下方に押し込まれ、この一端の直下の蓋材2の開口領域23の一部を共に押し下げる。そして、蓋材2は、この押し下げられた部分の近傍からスコア25に沿って亀裂が入り、開口領域23が一部を残して蓋材2の他の部分から切り離されて下方(缶の内部)に押し込まれて、蓋材2に飲み口(開口部)が形成される。開口領域23は蓋材2がスコア25の形成されていない部分で容易に折れ曲がって、蓋材2の他の部分とのつながりを保持し、タブ1はリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間で容易に折れ曲がって、蓋材2の開口領域23外にあるリベット部21に結合している。このため、開口領域23とタブ1は、それぞれ缶本体(缶胴)から離れない。
なお、このような開缶動作は、フルオープンエンドについても同様であり、蓋材の周縁にスコアが一周して形成され、その内側におけるスコアの一部の近傍にタブが、掛止部を蓋材の中心に向けて取り付けられている。開缶においては、タブの掛止部を引っ張って起こすと、タブの作用点の直下である蓋材のスコアの内側における近傍の一点が、下方に押し込まれてこの部分からスコアの一部に亀裂が入る。そして、さらに掛止部を上方に引っ張ると、先の亀裂を起点にスコア全体に沿って亀裂が入って開缶する(図示省略)。この場合は、タブは蓋材に結合されたまま、蓋材ごと缶本体から離れる。
このように、タブは、開缶の際にてことなり、強い外力が掛かる。このため、タブの強度が不足していると、図1Cに示す支点F−力点E間の中心近傍の掛止部12の細い部分や、インナーランス14周辺の細い部分でタブが折れ曲がって(図1C右下部の折れ部4参照)、容易に開缶することが出来なくなったり(タブ折れ)、さらにはちぎれる恐れがある。また、掛止部12等のインナーランス14の外側の領域が起こされる際に、その移動方向に沿ってインナーランス14の端部から裂ける(タブ裂け)恐れがある(図1C右下部の裂け部5参照)。
このように、タブは、開缶の際にてことなり、強い外力が掛かる。このため、タブの強度が不足していると、図1Cに示す支点F−力点E間の中心近傍の掛止部12の細い部分や、インナーランス14周辺の細い部分でタブが折れ曲がって(図1C右下部の折れ部4参照)、容易に開缶することが出来なくなったり(タブ折れ)、さらにはちぎれる恐れがある。また、掛止部12等のインナーランス14の外側の領域が起こされる際に、その移動方向に沿ってインナーランス14の端部から裂ける(タブ裂け)恐れがある(図1C右下部の裂け部5参照)。
また、特にステイオンタブ式エンドにおいては、口金(開口領域23)が飲料缶の内部に十分に深く押し込まれないと飲料缶の中の飲料を取り出す(飲む)際の妨げになる。このため、タブ1(掛止部12)を垂直近傍まで起こして、さらにはそれ以上に大きく起こして(反対側へ倒して)開缶する。さらに開缶後は、起こしたタブ1が飲料缶の中の飲料を飲む際の妨げにならないように、図1Cの破線で示すように、タブ1を元に戻して(倒して)蓋材2の開口領域23のみを内部に押し込んだ状態にするのが一般的である。つまり、タブ1は、リベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の近傍で、90°近傍さらにはそれ以上の角度に曲げられた後に元に戻される(曲げ戻しされる)。その結果、タブ1は、この少なくとも2回の変形に耐えられずに折り曲げ箇所で破断し、ちぎれる恐れがある(図1C右下部の破断部6参照)。
さらに、ステイオンタブ式エンドの中でも飲み口を広く設けたラージオープンエンド(LOE)、またフルオープンエンドにおいては、特に強い外力を開缶に要する。あるいは1回の動作では十分な角度までタブを起こすことができず、完全に開缶するまで起こす角度を大きくしながら曲げ戻し動作を繰り返す繰返し曲げを行うことがある。このため、開缶の際に、いっそう、タブのちぎれや裂けが発生し易い。
さらに、ステイオンタブ式エンドの中でも飲み口を広く設けたラージオープンエンド(LOE)、またフルオープンエンドにおいては、特に強い外力を開缶に要する。あるいは1回の動作では十分な角度までタブを起こすことができず、完全に開缶するまで起こす角度を大きくしながら曲げ戻し動作を繰り返す繰返し曲げを行うことがある。このため、開缶の際に、いっそう、タブのちぎれや裂けが発生し易い。
そのため、タブ材料には、成形性や耐食性だけでなく、高い強度と繰り返し曲げに対する曲げ加工性及び高い耐タブ裂け性が要求される。
一方、特に近年では、コストダウンの観点からタブの薄肉化が進められており、タブとしての剛性が弱くなっている。そのため、タブ折れ強度を確保するために、これまで以上の高い材料強度が必要とされている。また、薄肉化とそれに伴う高強度化により、特に耐タブ裂け性の低下が著しく、耐裂け性の高い材料の要求が高まっている。
一方、特に近年では、コストダウンの観点からタブの薄肉化が進められており、タブとしての剛性が弱くなっている。そのため、タブ折れ強度を確保するために、これまで以上の高い材料強度が必要とされている。また、薄肉化とそれに伴う高強度化により、特に耐タブ裂け性の低下が著しく、耐裂け性の高い材料の要求が高まっている。
従来より、前記要求特性に鑑み、各タブ特性のバランスの取れた包装容器タブ用アルミニウム合金板に関する技術が開発されてきた。
特許文献1には、所定量のMg、Mn、Fe、Siを含み、耐力の値と、特定の形態を有する結晶粒の単位面積当たりの個数を規定した包装容器タブ用アルミニウム合金板が記載されている。このアルミニウム合金板は、均質化熱処理及び熱間圧延後、冷間圧延の途中に焼鈍することなく圧延率80〜92%の冷間圧延を行うことにより製造される。特許文献1によれば、このアルミニウム合金板は、耐繰り返し曲げ性に優れ、開缶時にタブのちぎれが発生しにくい。
特許文献1には、所定量のMg、Mn、Fe、Siを含み、耐力の値と、特定の形態を有する結晶粒の単位面積当たりの個数を規定した包装容器タブ用アルミニウム合金板が記載されている。このアルミニウム合金板は、均質化熱処理及び熱間圧延後、冷間圧延の途中に焼鈍することなく圧延率80〜92%の冷間圧延を行うことにより製造される。特許文献1によれば、このアルミニウム合金板は、耐繰り返し曲げ性に優れ、開缶時にタブのちぎれが発生しにくい。
特許文献2には、所定量のSi、Fe、Cu、Mn、Mgを含み、FeとMnの含有量をそれぞれ[Fe]、[Mn]として表したとき、(0.42<[Fe]+1.07×[Mn])<0.55の関係を満たし、さらに板厚中央部におけるAl−Fe−Mn系晶出物とMg−Si系晶出物の面積率の総和と、これらの晶出物の最大サイズを規定した包装容器タブ用アルミニウム合金板が記載されている。このアルミニウム合金板は、均質化熱処理後、熱間圧延を行って熱間圧延材を300℃以上で巻き取り、中間焼鈍を行うことなく圧延率80〜95%の冷間圧延を行い、冷間圧延材を80〜170℃で巻き取ることにより製造される。特許文献2によれば、このアルミニウム合金板は、開缶時にタブのちぎれや裂けが発生しにくい。
特許文献3には、所定量のMg、Cu、Fe、Si、Mnを含み、FeとMnの含有量をそれぞれ[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42の関係を満たし、板厚中央部における最大長が1μm以上のAl−Fe−Mn系金属間化合物とMg−Si系金属間化合物の合計面積率を規定した包装容器タブ用アルミニウム合金板が記載されている。このアルミニウム合金は、均質化熱処理後の熱間圧延を300℃以上で終了し、焼鈍することなくタンデム方式の圧延機で、総圧延率80〜95%、最終パスの圧延率30%以上、最終パスの終了温度110〜170℃の条件で冷間圧延を行うことにより製造される。特許文献3によれば、このアルミニウム合金板は、薄肉化しても、開缶時にタブのちぎれや裂けが発生しにくい。
近年はコストダウンや省資源化の観点から、包装容器タブ用アルミニウム合金板の薄肉化ニーズがさらに高まっている。しかし、薄肉化した場合に、高いタブ折れ強度、タブ裂け強度、優れた繰り返し曲げ性を得るには、従来技術では不十分であり、アルミニウム合金板の強度、耐裂け性、繰り返し曲げ性を一層向上させる必要がある。
従って、本発明は、包装容器タブ用アルミニウム合金板の薄肉化に際して、高強度(高いタブ折れ強度)を保ち、開缶時にタブにちぎれや裂けの発生がない包装容器タブ用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
従って、本発明は、包装容器タブ用アルミニウム合金板の薄肉化に際して、高強度(高いタブ折れ強度)を保ち、開缶時にタブにちぎれや裂けの発生がない包装容器タブ用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
アルミニウム合金板は、熱間圧延後の冷間圧延において変形組織が形成され、塗装焼付けによってある程度の焼鈍を受けた後も前記変形組織が残留する。この変形組織が微細なほどアルミニウム合金板の耐裂け性が低下し、粗大になるとアルミニウム合金板の強度が低下する。本発明者らは、この知見を元に、前記変形組織を適切に制御することにより、高強度を保ったまま、裂け難いアルミニウム合金板を得ることができると考えた。また、本発明者らは、アルミニウム合金中の各元素を所定の範囲とした上で、冷間圧延を所定の条件で行うことで、アルミニウム合金板の変形組織を適切に制御できることを見出した。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板は、Si:0.05〜0.30質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.05〜0.40質量%、Mg:4.50〜6.00質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板であって、表面に塗膜を有し、板厚方向中央に位置する板面と平行な面のSEM(走査型電子顕微鏡)で観察される電子チャネリングコントラスト像から測定される、圧延方向の高密度転位壁の間隔の平均値が400〜600nmであることを特徴とする。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金は、高強度で、かつ耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性が優れ、現行板厚よりも更に薄肉化した場合でも、開缶時の折れや裂け、ちぎれが生じ難いタブを製造することができる。また、これにより、コスト低減及び省資源化が可能となる。
以下、本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板について、具体的に説明する。
[合金成分について]
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板の組成は、Si:0.05〜0.30質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.05〜0.40質量%、Mg:4.50〜6.00質量%、残部がAl及び不可避不純物からなる。
以下、本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板に含まれる個々の合金成分について、より詳細に説明する。
[合金成分について]
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板の組成は、Si:0.05〜0.30質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.05〜0.40質量%、Mg:4.50〜6.00質量%、残部がAl及び不可避不純物からなる。
以下、本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板に含まれる個々の合金成分について、より詳細に説明する。
(Si:0.05〜0.30質量%)
Siは、アルミニウム合金中にMg−Si系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の原材料に使用できるスクラップ量が減少するとともに、アルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.30質量%を超える場合、熱間圧延までの工程でアルミニウム合金中に微細なAl−Fe−Mn−Si系析出物が多数生じて熱間圧延後の結晶粒が粗大化し、繰り返し曲げ性やタブ裂け強度が低下する。従って、Siの含有量は0.05質量%以上、0.30質量%以下とする。
Siは、アルミニウム合金中にMg−Si系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の原材料に使用できるスクラップ量が減少するとともに、アルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.30質量%を超える場合、熱間圧延までの工程でアルミニウム合金中に微細なAl−Fe−Mn−Si系析出物が多数生じて熱間圧延後の結晶粒が粗大化し、繰り返し曲げ性やタブ裂け強度が低下する。従って、Siの含有量は0.05質量%以上、0.30質量%以下とする。
(Fe:0.05〜0.40質量%)
Feは、アルミニウム合金中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Feの含有量が0.05質量%未満の場合、前記金属間化合物が不足して熱間圧延後の再結晶粒のサイズが不均一となり、成形性が低下する。一方、Feの含有量が0.40質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の金属間化合物が大きく、また過剰に形成され、成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.05質量%以上、0.40質量%以下とする。
Feは、アルミニウム合金中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成し、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Feの含有量が0.05質量%未満の場合、前記金属間化合物が不足して熱間圧延後の再結晶粒のサイズが不均一となり、成形性が低下する。一方、Feの含有量が0.40質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の金属間化合物が大きく、また過剰に形成され、成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.05質量%以上、0.40質量%以下とする。
(Cu:0.10質量%以下)
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.10質量%を超える場合、アルミニウム合金板の加工硬化が過大となり、繰り返し曲げなどの曲げ変形等によりタブがちぎれ易くなる。従って、Cuの含有量は0.10質量%以下とする。
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.10質量%を超える場合、アルミニウム合金板の加工硬化が過大となり、繰り返し曲げなどの曲げ変形等によりタブがちぎれ易くなる。従って、Cuの含有量は0.10質量%以下とする。
(Mn:0.05質量%以上、0.40質量%以下)
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Mnの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分になるとともに、熱間圧延後の再結晶が不十分となる。一方、Mnの含有量が0.40質量%を超える場合、金属間化合物が多量に生成され、タブにおける裂けの起点となる。従って、Mnの含有量は0.05質量%以上、0.40質量%以下とする。
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、熱間圧延後の再結晶を促進させる効果がある。Mnの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分になるとともに、熱間圧延後の再結晶が不十分となる。一方、Mnの含有量が0.40質量%を超える場合、金属間化合物が多量に生成され、タブにおける裂けの起点となる。従って、Mnの含有量は0.05質量%以上、0.40質量%以下とする。
(Mg:4.50〜6.00質量%)
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が4.50質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、タブ折れ強度が不足する。一方、Mgの含有量が6.00質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、成形性が低下する。また、Mgの含有量が増加するにつれ、強度とともに加工硬化が増大するため、繰り返し曲げによりちぎれ易くなる。従って、Mgの含有量は4.50質量%以上、6.00質量%以下とする。
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が4.50質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、タブ折れ強度が不足する。一方、Mgの含有量が6.00質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、成形性が低下する。また、Mgの含有量が増加するにつれ、強度とともに加工硬化が増大するため、繰り返し曲げによりちぎれ易くなる。従って、Mgの含有量は4.50質量%以上、6.00質量%以下とする。
(不可避不純物)
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記合金元素以外に、不可避不純物を含有してもよい。不可避不純物として、Crは0.10質量%以下、Tiは0.15質量%以下、Zrは0.10質量%以下、その他の元素として例えばV、Ni、In、Sn、Gaなどはそれぞれ0.05質量%以下の範囲で含有が許容される。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記合金元素以外に、不可避不純物を含有してもよい。不可避不純物として、Crは0.10質量%以下、Tiは0.15質量%以下、Zrは0.10質量%以下、その他の元素として例えばV、Ni、In、Sn、Gaなどはそれぞれ0.05質量%以下の範囲で含有が許容される。
[組織について]
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板は、板厚方向中央に位置する板面と平行な面をSEMで観察したとき得られる電子チャネリングコントラスト像において、圧延方向の高密度転位壁間隔の平均値が400〜600nmである。本発明では、前記間隔を所定範囲に限定することで、包装容器タブ用アルミニウム合金板の強度を適度に向上させ、同時に耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性を向上させることができる。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板は、板厚方向中央に位置する板面と平行な面をSEMで観察したとき得られる電子チャネリングコントラスト像において、圧延方向の高密度転位壁間隔の平均値が400〜600nmである。本発明では、前記間隔を所定範囲に限定することで、包装容器タブ用アルミニウム合金板の強度を適度に向上させ、同時に耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性を向上させることができる。
アルミニウム合金板を冷間圧延すると、アルミニウム合金中に変形組織が形成される。SEM(走査型電子顕微鏡)により観察される電子チャネリングコントラスト像は、前記変形組織を形成する高密度転位壁を境界とした比較的小さな結晶方位差をグレースケールにて可視化したものである。グレースケールの灰色の濃淡が変化する間隔を測定することで、高密度転位壁の間隔、すなわち変形組織の発達程度を測定することができる。前記間隔の平均値が400nm未満の場合、変形組織が過剰に発達しており、変形したとき剪断帯が発生しやすくなり、タブに成形されたときの耐タブ裂け性が低下し、繰り返し曲げ性も低下する。一方、前記間隔の平均値が600nmを超える場合、導入された転位の密度が小さくなるため、アルミニウム合金板の強度が不十分となり、タブに成形されたときのタブ折れ強度が不足する。従って、アルミニウム合金板の板厚方向中央に位置する板面と平行な面において、前記間隔の平均値を400nm以上、600nm以下とする。
なお、板厚方向中央に位置する板面と平行な面をSEMで観察したとき得られる電子チャネリングコントラスト像において測定される、圧延方向での高密度転位壁の間隔のことを、以下、簡単に「高密度転位壁間隔」という場合がある。
なお、板厚方向中央に位置する板面と平行な面をSEMで観察したとき得られる電子チャネリングコントラスト像において測定される、圧延方向での高密度転位壁の間隔のことを、以下、簡単に「高密度転位壁間隔」という場合がある。
[引張強度について]
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板において、圧延方向に測定した引張強度は、380〜420MPaである。タブの強度は、その形状にも依存するが、素材である包装容器タブ用アルミニウム合金板の強度にも依存する。アルミニウム合金板の引張強度が380MPa未満では、薄板化した場合にタブの剛性が不足し、十分なタブ折れ強度を確保できない。一方、アルミニウム合金板の引張強度が420MPaを超えると、タブの剛性が過大となってしまい、耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性が低下する。従って、包装容器タブ用アルミニウム合金板の引張強度の適性範囲は380MPa以上、420MPa以下である。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板において、圧延方向に測定した引張強度は、380〜420MPaである。タブの強度は、その形状にも依存するが、素材である包装容器タブ用アルミニウム合金板の強度にも依存する。アルミニウム合金板の引張強度が380MPa未満では、薄板化した場合にタブの剛性が不足し、十分なタブ折れ強度を確保できない。一方、アルミニウム合金板の引張強度が420MPaを超えると、タブの剛性が過大となってしまい、耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性が低下する。従って、包装容器タブ用アルミニウム合金板の引張強度の適性範囲は380MPa以上、420MPa以下である。
[製造方法について]
本発明に係るアルミニウム合金板は、鋳造、均質化熱処理、熱間圧延、及び冷間圧延の工程で製造することができ、好ましくは下記の条件で製造することができる。
(鋳造)
鋳造は、例えば公知の半連続鋳造法(DC鋳造)が用いられる。その後、鋳塊表面の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均質化熱処理を施す。
本発明に係るアルミニウム合金板は、鋳造、均質化熱処理、熱間圧延、及び冷間圧延の工程で製造することができ、好ましくは下記の条件で製造することができる。
(鋳造)
鋳造は、例えば公知の半連続鋳造法(DC鋳造)が用いられる。その後、鋳塊表面の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均質化熱処理を施す。
(均質化熱処理)
均質化熱処理は、450〜550℃に1〜10時間保持する条件が好ましい。処理温度が450℃未満では溶質元素の均質化が不十分となり、処理温度が550℃を超えると鋳塊の表面で局部的な溶融(バーニング)が生じるおそれがある。保持時間は1時間以上であれば均質化が可能で、10時間を超えるとエネルギーコストが嵩む。この均質化熱処理は、続く熱間圧延の予備加熱を兼ねる。
均質化熱処理は、450〜550℃に1〜10時間保持する条件が好ましい。処理温度が450℃未満では溶質元素の均質化が不十分となり、処理温度が550℃を超えると鋳塊の表面で局部的な溶融(バーニング)が生じるおそれがある。保持時間は1時間以上であれば均質化が可能で、10時間を超えるとエネルギーコストが嵩む。この均質化熱処理は、続く熱間圧延の予備加熱を兼ねる。
(熱間圧延)
均熱処理工程から冷却することなく熱間圧延を行い、所望の板厚の熱間圧延板とする。熱間圧延板の板厚は、製品板(冷間圧延後のアルミニウム合金板)の板厚から冷間圧延工程における総圧延率(冷間加工率)を逆算して設定する。熱間圧延では、再結晶集合組織を得るため、好ましくは終了温度(巻き取り温度)を300〜370℃とする。巻取り温度が370℃を超えると、板表面に焼付きと呼ばれる表面欠陥が生じ、板表面の性状が悪化するおそれがある。一方、巻き取り温度が300℃以下の場合、熱間圧延板の再結晶率が低下して、冷間圧延後のアルミニウム合金板をタブ形状に成形する際の成形性が低下するおそれがある。従って、熱間圧延の終了温度は300℃以上、370℃以下の範囲とし、同温度範囲で巻き取ることが好ましい。
均熱処理工程から冷却することなく熱間圧延を行い、所望の板厚の熱間圧延板とする。熱間圧延板の板厚は、製品板(冷間圧延後のアルミニウム合金板)の板厚から冷間圧延工程における総圧延率(冷間加工率)を逆算して設定する。熱間圧延では、再結晶集合組織を得るため、好ましくは終了温度(巻き取り温度)を300〜370℃とする。巻取り温度が370℃を超えると、板表面に焼付きと呼ばれる表面欠陥が生じ、板表面の性状が悪化するおそれがある。一方、巻き取り温度が300℃以下の場合、熱間圧延板の再結晶率が低下して、冷間圧延後のアルミニウム合金板をタブ形状に成形する際の成形性が低下するおそれがある。従って、熱間圧延の終了温度は300℃以上、370℃以下の範囲とし、同温度範囲で巻き取ることが好ましい。
(冷間圧延)
熱間圧延板は、焼鈍することなく冷間圧延して、所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。この冷間圧延は複数パスで行い、最終板厚に加工するための最終パス(最後に通過する圧延スタンド)入側の材料温度を60〜120℃、最終パスの圧延率を30〜55%とすることが好ましい。これにより、冷間圧延中の動的回復が促進され、変形組織の発達が抑制され、前記高密度転位壁間隔の平均値が所定の範囲に制御され、強度を維持しつつ、耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性に優れたアルミニウム合金板が製造できる。なお、圧延の1パスとは、一対のワークロール間を板が1回通板し圧延されることをいう。
熱間圧延板は、焼鈍することなく冷間圧延して、所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。この冷間圧延は複数パスで行い、最終板厚に加工するための最終パス(最後に通過する圧延スタンド)入側の材料温度を60〜120℃、最終パスの圧延率を30〜55%とすることが好ましい。これにより、冷間圧延中の動的回復が促進され、変形組織の発達が抑制され、前記高密度転位壁間隔の平均値が所定の範囲に制御され、強度を維持しつつ、耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性に優れたアルミニウム合金板が製造できる。なお、圧延の1パスとは、一対のワークロール間を板が1回通板し圧延されることをいう。
一方、最終パス入側の材料温度が前記範囲より低く、又は最終パスの圧延率が前記範囲より高い場合、前記高密度転位壁間隔の平均値が小さくなりすぎて、耐タブ裂け性及び繰り返し曲げ性が低下するおそれがある。逆に最終パス入側の材料温度が前記範囲より高く、又は最終パスの圧延率が前記範囲より低い場合、前記高密度転位壁間隔が大きくなりすぎるとともに、転位密度が低下し、強度が不足し、タブ折れ強度が不足するおそれがある。また、最終パスの圧延率が高すぎる場合、圧延ロールの湾曲が増加し、圧延後のアルミニウム合金板の平坦度が悪化するおそれもある。
冷間圧延の総圧延率は84〜92%とすることが好ましい。総圧延率が84%未満では強度が不足してタブ折れ強度が低くなるおそれがあり、92%を超えると強度が上がりすぎて、耐タブ裂け性、繰り返し曲げ性が低下するおそれがある。
冷間圧延の総圧延率は84〜92%とすることが好ましい。総圧延率が84%未満では強度が不足してタブ折れ強度が低くなるおそれがあり、92%を超えると強度が上がりすぎて、耐タブ裂け性、繰り返し曲げ性が低下するおそれがある。
[塗装・焼付けについて]
製造されたアルミニウム合金板は、タブに成形される前に、常法どおり、表面に化成処理が行われた後、例えばエポキシ樹脂等の有機被膜の塗装及び焼付けが行われる。焼付けの条件は、220〜270℃×15〜30秒が好ましい。焼付け温度が220℃より低いと、塗膜に十分熱が伝わらず、塗膜の固形化が進まない。焼付け温度が270℃より高いと、アルミニウム合金板が軟化しすぎて強度不足となる。また、焼付け時間が20秒より短いと塗膜に十分熱が加わらず、塗膜の固形化が進まない。一方、焼付け時間が30秒より長いと、熱が過剰に加わり、潤滑性が低下し、成形性が低下する。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板は、塗装焼付け後のアルミニウム合金板、すなわち表面に塗膜(塗料の焼付け層)を有するアルミニウム合金板に関するものである。また、前記高密度転位壁間隔及び引張強度の値も、塗装焼付け後のアルミニウム合金板のものである。
製造されたアルミニウム合金板は、タブに成形される前に、常法どおり、表面に化成処理が行われた後、例えばエポキシ樹脂等の有機被膜の塗装及び焼付けが行われる。焼付けの条件は、220〜270℃×15〜30秒が好ましい。焼付け温度が220℃より低いと、塗膜に十分熱が伝わらず、塗膜の固形化が進まない。焼付け温度が270℃より高いと、アルミニウム合金板が軟化しすぎて強度不足となる。また、焼付け時間が20秒より短いと塗膜に十分熱が加わらず、塗膜の固形化が進まない。一方、焼付け時間が30秒より長いと、熱が過剰に加わり、潤滑性が低下し、成形性が低下する。
本発明に係る包装容器タブ用アルミニウム合金板は、塗装焼付け後のアルミニウム合金板、すなわち表面に塗膜(塗料の焼付け層)を有するアルミニウム合金板に関するものである。また、前記高密度転位壁間隔及び引張強度の値も、塗装焼付け後のアルミニウム合金板のものである。
以上、本発明の実施の形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[供試材作成]
表1に示すアルミニウム合金(実施例1〜5、比較例1〜15)を半連続鋳造法にて鋳造し、鋳塊表層を面削し、500℃で4時間の均質化熱処理を施した後、冷却することなく、熱間圧延を行った。熱間圧延終了温度(巻き取り温度)は350℃とした。得られた熱間圧延板を、中間焼鈍処理を施さずに表2に示す条件で冷間圧延を行うことによって、最終板厚0.25mmの冷間圧延板(アルミニウム合金板)を製造した。
[供試材作成]
表1に示すアルミニウム合金(実施例1〜5、比較例1〜15)を半連続鋳造法にて鋳造し、鋳塊表層を面削し、500℃で4時間の均質化熱処理を施した後、冷却することなく、熱間圧延を行った。熱間圧延終了温度(巻き取り温度)は350℃とした。得られた熱間圧延板を、中間焼鈍処理を施さずに表2に示す条件で冷間圧延を行うことによって、最終板厚0.25mmの冷間圧延板(アルミニウム合金板)を製造した。
続いて、得られたアルミニウム合金板に対し、歪み矯正処理及び化成処理を施した後、エポキシ系塗料を塗布し、表2に示す焼付け温度で連続焼付炉により焼付け処理した。焼付け時間は20秒間とした。
製造した塗装タブ板を供試材とし、以下の方法で引張強度及び前記コントラスト間隔の平均値を測定した。その結果を表2に示す。
(引張強度の測定)
各供試材について、塗膜を発煙硝酸を用いて剥離した後、引張方向が圧延方向と平行になるJIS−5号引張試験片を作製し、JISZ2241の規定に準じて引張試験を行い、引張強度を求めた。引張強度の適性範囲は380MPa以上、420MPa以下である。
各供試材について、塗膜を発煙硝酸を用いて剥離した後、引張方向が圧延方向と平行になるJIS−5号引張試験片を作製し、JISZ2241の規定に準じて引張試験を行い、引張強度を求めた。引張強度の適性範囲は380MPa以上、420MPa以下である。
(高密度転位壁間隔の平均値)
各供試材を、クロスセクションポリッシャー(JEOL社製IB−09010CP)を用いて加速電圧6.0kVで4時間加工し、板厚方向中央に位置する板表面と平行な観察面を作成した。この観察面を、FE−SEM(電界放出形走査型電子顕微鏡)(JEOL社製JSM−7000F)を用い、COMPO(組成像)モードにて加速電圧5kVの条件で観察し、電子チャネリングコントラスト像を得た。
上記方法で、2000倍のSEM写真を各供試材ごとに3枚ずつ撮影し、図2に示すように、各SEM写真に圧延方向と平行な直線を複数描き、直線上の灰色の濃淡の変化の数(直線に沿って灰色の濃淡が変化する回数)を測定した。直線長さの合計は実物寸法で1mm以上とし、測定した灰色の濃淡の変化の数から、灰色の濃淡の間隔の平均値を求め、その値を高密度転位壁間隔の平均値とした。高密度転位壁間隔の適正な平均値は400nm以上、600nm以下である。
各供試材を、クロスセクションポリッシャー(JEOL社製IB−09010CP)を用いて加速電圧6.0kVで4時間加工し、板厚方向中央に位置する板表面と平行な観察面を作成した。この観察面を、FE−SEM(電界放出形走査型電子顕微鏡)(JEOL社製JSM−7000F)を用い、COMPO(組成像)モードにて加速電圧5kVの条件で観察し、電子チャネリングコントラスト像を得た。
上記方法で、2000倍のSEM写真を各供試材ごとに3枚ずつ撮影し、図2に示すように、各SEM写真に圧延方向と平行な直線を複数描き、直線上の灰色の濃淡の変化の数(直線に沿って灰色の濃淡が変化する回数)を測定した。直線長さの合計は実物寸法で1mm以上とし、測定した灰色の濃淡の変化の数から、灰色の濃淡の間隔の平均値を求め、その値を高密度転位壁間隔の平均値とした。高密度転位壁間隔の適正な平均値は400nm以上、600nm以下である。
また、ステイオンタブを成形する金型を用いて、コンバージョン成形により前記供試材(塗装タブ板)からタブ(図1に示す形状のもの)を製作した。製作したタブを用い、以下の方法でタブ折れ強度、タブ裂け強度及び繰り返し曲げ性を測定した。その結果を表2に併せて示す。
(タブ折れ強度の測定)
図3Aに示すように、タブ1のリベット孔11にネジ71を通し、タブ1を蓋材2を模擬した剛体7に螺着してサンプルとした。このサンプルに対し、図3Bに示すリード測器有限会社製開缶試験機(開缶試験機8)を用いて、タブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、このサンプルを、開缶試験機8の支持板82に取り付け、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に剛体7を図3Bの矢印方向に90°回転させた。
タブ1のこの引き上げ動作における開缶試験機8による荷重の推移のチャートを図4に示す。タブ1の引き上げ角度が大きくなるに従い、荷重はある時点まで一定の割合で増加する。タブ1は変形しない剛体7に取り付けられているため、タブ1を90°まで引き上げる間に、図3C又は図3Dに示すように折れ又は裂けが生じる。タブ1がインナーランス14の外側で折れ曲がる場合(図3C)、図4の実線で示すように、折れ曲がり始まる(タブ折れ開始)と荷重の増加率が減少するが、引き続き荷重は増加し、最大値Lbに到達した後緩やかに減少する。一方、タブ1がインナーランス14の端部から裂ける場合(図3D)、図4の破線で示すように、前記タブ折れ開始時の荷重Laより小さい荷重Lsで荷重が減少に転じる。タブ1が裂けることなく、荷重が最大値Lbに到達したときの当該最大値をタブ折れ強度として測定した。各供試材について、タブ折れが生じた10個のタブについてのタブ折れ強度の平均値を算出し、この平均値が30N以上であるものを耐タブ折れ性合格と評価した。
図3Aに示すように、タブ1のリベット孔11にネジ71を通し、タブ1を蓋材2を模擬した剛体7に螺着してサンプルとした。このサンプルに対し、図3Bに示すリード測器有限会社製開缶試験機(開缶試験機8)を用いて、タブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、このサンプルを、開缶試験機8の支持板82に取り付け、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に剛体7を図3Bの矢印方向に90°回転させた。
タブ1のこの引き上げ動作における開缶試験機8による荷重の推移のチャートを図4に示す。タブ1の引き上げ角度が大きくなるに従い、荷重はある時点まで一定の割合で増加する。タブ1は変形しない剛体7に取り付けられているため、タブ1を90°まで引き上げる間に、図3C又は図3Dに示すように折れ又は裂けが生じる。タブ1がインナーランス14の外側で折れ曲がる場合(図3C)、図4の実線で示すように、折れ曲がり始まる(タブ折れ開始)と荷重の増加率が減少するが、引き続き荷重は増加し、最大値Lbに到達した後緩やかに減少する。一方、タブ1がインナーランス14の端部から裂ける場合(図3D)、図4の破線で示すように、前記タブ折れ開始時の荷重Laより小さい荷重Lsで荷重が減少に転じる。タブ1が裂けることなく、荷重が最大値Lbに到達したときの当該最大値をタブ折れ強度として測定した。各供試材について、タブ折れが生じた10個のタブについてのタブ折れ強度の平均値を算出し、この平均値が30N以上であるものを耐タブ折れ性合格と評価した。
(タブ裂け強度の測定)
試験に供する蓋材を、0.235mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度370MPa)から、タブを取り付けるためのリベット部の加工のみを行い作製し、図5Aに示すように、この蓋材2にタブ1をリベット21により取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、図5Bに示すリード測器有限会社製開缶試験機(開缶試験機8)を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、サンプルを、図5Bに示すように開缶試験機8の支持板82に取り付け、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に蓋材2を図5Bの矢印方向に90°回転させた。
タブ1を90°まで引き上げる間に、図5Cに示すようにタブ裂け(インナーランス14の端部から裂ける)が生じた場合、図4の破線に示すように、荷重が最大値Lsに到達した後減少に転じる。タブ裂けが生じたときの荷重の最大値Lsをタブ裂け強度として測定した。各供試材について、タブ裂けが生じた10個のタブについてのタブ裂け強度の平均値を算出し、この平均値が30N以上であるものを耐タブ裂け性合格と評価した。
試験に供する蓋材を、0.235mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度370MPa)から、タブを取り付けるためのリベット部の加工のみを行い作製し、図5Aに示すように、この蓋材2にタブ1をリベット21により取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、図5Bに示すリード測器有限会社製開缶試験機(開缶試験機8)を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、サンプルを、図5Bに示すように開缶試験機8の支持板82に取り付け、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に蓋材2を図5Bの矢印方向に90°回転させた。
タブ1を90°まで引き上げる間に、図5Cに示すようにタブ裂け(インナーランス14の端部から裂ける)が生じた場合、図4の破線に示すように、荷重が最大値Lsに到達した後減少に転じる。タブ裂けが生じたときの荷重の最大値Lsをタブ裂け強度として測定した。各供試材について、タブ裂けが生じた10個のタブについてのタブ裂け強度の平均値を算出し、この平均値が30N以上であるものを耐タブ裂け性合格と評価した。
(繰り返し曲げ性の測定)
試験に供する蓋材(図1に示す蓋材2)を、0.235mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度370MPa)から作製した。ただし、開缶し易くするため、スコア25の残厚は90μmとした。この蓋材2にタブをリベットにより取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、開缶動作を人手にて実施した。
1回目の開缶動作はタブ1を引き上げて蓋材2の開口領域23を完全に下方に押し込んで開缶し(図1C参照)、さらに図6に示すように反対側に完全に倒した(180°近傍まで引き上げる)後、逆方向にタブ1を引き起こして図6に破線で示す開缶前の位置に戻す。2回目の開缶動作は、1回目と同様にタブ1を引き上げて反対側に倒してまた元の位置に戻す。以降、この動作を繰り返し、タブ1のリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間の折り曲げ箇所が破断し(図1C右下部参照)、タブ1が蓋材2から外れるまで行う。タブ1の開缶動作の片道分(180°近傍までの移動)を0.5回としてカウントし、タブ1が蓋材2から外れるまでの動作回数を測定した。各供試材について、この測定を10回行い、動作回数の平均値を求めた。2往復以上(2.0回以上)の繰返し曲げが可能な場合、繰返し曲げ性合格と評価した。
試験に供する蓋材(図1に示す蓋材2)を、0.235mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度370MPa)から作製した。ただし、開缶し易くするため、スコア25の残厚は90μmとした。この蓋材2にタブをリベットにより取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、開缶動作を人手にて実施した。
1回目の開缶動作はタブ1を引き上げて蓋材2の開口領域23を完全に下方に押し込んで開缶し(図1C参照)、さらに図6に示すように反対側に完全に倒した(180°近傍まで引き上げる)後、逆方向にタブ1を引き起こして図6に破線で示す開缶前の位置に戻す。2回目の開缶動作は、1回目と同様にタブ1を引き上げて反対側に倒してまた元の位置に戻す。以降、この動作を繰り返し、タブ1のリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間の折り曲げ箇所が破断し(図1C右下部参照)、タブ1が蓋材2から外れるまで行う。タブ1の開缶動作の片道分(180°近傍までの移動)を0.5回としてカウントし、タブ1が蓋材2から外れるまでの動作回数を測定した。各供試材について、この測定を10回行い、動作回数の平均値を求めた。2往復以上(2.0回以上)の繰返し曲げが可能な場合、繰返し曲げ性合格と評価した。
表1,2に示すように、アルミニウム合金板の組成及び製造条件が本発明の規定範囲内の実施例1〜5は、高密度転位壁間隔及び引張強度の値が本発明の規定範囲内にあり、タブ折れ強度及びタブ裂け強度が高く、繰り返し曲げ性も合格値に達している。
一方、アルミニウム合金の組成が本発明の規定範囲外、又は製造条件が本発明の規定範囲外である比較例1〜15は、高密度転位壁間隔又は引張強度の値が適正範囲外で、タブ折れ強度、タブ裂け強度又は繰り返し曲げ性のいずれか1つ以上が合格値に達しない。以下、比較例1〜15のそれぞれについて、より具体的に説明する。
一方、アルミニウム合金の組成が本発明の規定範囲外、又は製造条件が本発明の規定範囲外である比較例1〜15は、高密度転位壁間隔又は引張強度の値が適正範囲外で、タブ折れ強度、タブ裂け強度又は繰り返し曲げ性のいずれか1つ以上が合格値に達しない。以下、比較例1〜15のそれぞれについて、より具体的に説明する。
比較例1は、Si含有量が過剰なため、熱間圧延板の再結晶粒が粗大化し、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例2は、Fe含有量が過剰なため、金属間化合物が過剰に形成され、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例3は、Cu含有量が過剰なため、引張強度が高く、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例4は、Mn含有量が過剰なため、金属間化合物が過剰に形成され、タブ裂け強度が低下し、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例5は、Mn含有量が不足するため、金属間化合物が少なく、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例2は、Fe含有量が過剰なため、金属間化合物が過剰に形成され、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例3は、Cu含有量が過剰なため、引張強度が高く、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例4は、Mn含有量が過剰なため、金属間化合物が過剰に形成され、タブ裂け強度が低下し、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例5は、Mn含有量が不足するため、金属間化合物が少なく、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例6は、Mg含有量が過剰なため、引張強度が高く成形性が低下して、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例7は、Mg含有量が不足するため、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例8は、冷間圧延の総圧延率が小さすぎたため、高密度転位壁間隔が大きく、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例9は、冷間圧延の総圧延率が大きすぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例10は、冷間圧延の最終パスの入側温度が低すぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例7は、Mg含有量が不足するため、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例8は、冷間圧延の総圧延率が小さすぎたため、高密度転位壁間隔が大きく、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例9は、冷間圧延の総圧延率が大きすぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例10は、冷間圧延の最終パスの入側温度が低すぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例11は、冷間圧延の最終パスの入側温度が高すぎたため、高密度転位壁間隔が大きすぎ、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例12は、冷間圧延の最終パスの圧延率が低すぎたため、高密度転位壁間隔が大きすぎ、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例13は、冷間圧延の最終パスの圧延率が高すぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低い。
比較例14は、塗装焼き付け温度が低く、軟化が進まなかったため、高密度転位壁間隔が小さくなり、引張強度が高すぎ、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例15は、塗装焼き付け温度が高く、強度低下が大きくなったため、高密度転位壁間隔が大きすぎ、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例12は、冷間圧延の最終パスの圧延率が低すぎたため、高密度転位壁間隔が大きすぎ、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
比較例13は、冷間圧延の最終パスの圧延率が高すぎたため、高密度転位壁間隔が小さく、剪断帯が発生しやすくなり、タブ裂け強度が低い。
比較例14は、塗装焼き付け温度が低く、軟化が進まなかったため、高密度転位壁間隔が小さくなり、引張強度が高すぎ、タブ裂け強度が低く、繰り返し曲げ性が劣る。
比較例15は、塗装焼き付け温度が高く、強度低下が大きくなったため、高密度転位壁間隔が大きすぎ、引張強度が低く、タブ折れ強度が低い。
1 タブ
2 蓋材
7 剛体
8 開缶試験機
11 リベット穴
14 インナーランス
21 リベット部
2 蓋材
7 剛体
8 開缶試験機
11 リベット穴
14 インナーランス
21 リベット部
Claims (1)
- Si:0.05〜0.30質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.05〜0.40質量%、Mg:4.50〜6.00質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板であって、その表面に塗膜を有し、板厚方向中央に位置する板面と平行な面のSEMで観察される電子チャネリングコントラスト像から測定される圧延方向の高密度転位壁の間隔の平均値が400〜600nmであることを特徴とする包装容器タブ用アルミニウム合金板。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6578048B1 (ja) * | 2018-09-06 | 2019-09-18 | 株式会社神戸製鋼所 | 缶胴用アルミニウム合金板 |
-
2016
- 2016-03-18 JP JP2016055136A patent/JP2017166052A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6578048B1 (ja) * | 2018-09-06 | 2019-09-18 | 株式会社神戸製鋼所 | 缶胴用アルミニウム合金板 |
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