JP5581254B2 - タブ用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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本発明に係るアルミニウム合金板は、Mg:4.0〜5.5質量%、Cu:0.02〜0.10質量%、Fe:0.15〜0.34質量%、Si:0.05〜0.18質量%を含有し、Mn:0.20質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記Fe,Mnの各含有量(質量%)を、[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42を満足するアルミニウム合金で形成される。
Mgは、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があり、含有量が多くなるにしたがいアルミニウム合金板の強度を増大させて、タブとして必要な強度を付与する。さらに、Mgは、熱間圧延時に蓄積歪みを増大させてその後の自己焼鈍による再結晶を促進させる効果があるため、アルミニウム合金板の成形性を向上させる。Mgの含有量が4.0質量%未満では特に強度向上効果が不足して、十分な強度が得られない。一方、Mgの含有量が多いと、アルミニウム合金の熱間圧延(粗圧延)において、高荷重となる縁(エッジ)近傍でロールコーティングが不均一になって板表面に焼付きが発生し易くなる傾向がある。特にMgの含有量が5.0質量%を超えるとこの傾向が顕著になり、焼付きによる表面不具合を防止するために、1パスの圧下率を低減してパス数を増やしたり圧延速度を低速にする必要を生じる場合があり、生産性が低下する。さらにMgは、含有量が多くなるにしたがい、強度と共にアルミニウム合金板の加工硬化を増大させる効果もあり、5.5質量%を超えると、これら強度等が過大となって、タブの曲げ変形、特に繰返し曲げによってちぎれ易くなる。したがって、Mgの含有量は、4.0質量%以上5.5質量%以下とし、好ましくは5.0質量%以下である。
Cuは、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があるため、前記のMgと共にタブとして必要な強度を付与する。特に本発明では、同様にアルミニウム合金の強度を向上させる効果があるMnは含有量を低く規制されるため、Cuの添加により強度を補う。Cuの含有量が0.02質量%未満では、この効果が不十分である。一方、Cuもアルミニウム合金板の加工硬化を増大させるため、含有量が0.10質量%を超えると、加工硬化が過大となって、タブの曲げ変形等によってちぎれ易くなる。したがって、Cuの含有量は0.02質量%以上0.10質量%以下とする。
Feは、地金不純物としてアルミニウム合金中に含まれ、また、アルミニウム合金中で、Mnと共にAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物を生成し、Mnの含有量が特に少ない場合はAl3Fe等のAl−Fe系金属間化合物を生成する。これらの金属間化合物が適度に分散して晶出することで、熱間圧延後においてこの晶出物を核として再結晶が促進されるため、冷間圧延前の中間焼鈍が不要となる。Feの含有量が0.15質量%未満では、熱間圧延後における晶出物が不足して、前記効果が得られない。一方、Feの含有量が0.34質量%を超えると、前記の金属間化合物が過剰に生成されて、タブにおける裂け等の起点となる。したがって、Feの含有量は、0.15質量%以上0.34質量%以下とし、好ましくは、0.30質量%以下である。
Siも、地金不純物としてアルミニウム合金中に含まれ、また、アルミニウム合金中でMgと共存する場合、Mg−Si系金属間化合物(Mg2Si)を生成する。また、Siは、アルミニウム合金板がタブに製造される際の塗装後の焼付けにおける軟化を抑制する効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満では、この軟化の抑制効果が不十分であるため、焼付け後の強度が不足する。一方、Siの含有量が0.18質量%を超えると、熱間圧延後の結晶粒が粗大化して、繰返し曲げ性が低下する。さらにSiの含有量が多くなると、Mg−Si系金属間化合物の大きなものが多数形成されてタブにおける裂け等の起点となる。したがって、Siの含有量は、0.05質量%以上0.18質量以下%とし、好ましくは、0.15質量%以下である。
Mnは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果があるものの、アルミニウム合金中で、タブにおける裂け等の起点となり易いAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物を生成する。Mnは、本発明におけるアルミニウム合金中の他の成分よりも金属間化合物晶出への影響が大きく、含有量が0.20質量%以上になると多量に生成されて、タブにおける裂け等の起点となる。したがって、Mnの含有量は0.20質量%未満に規制する。
ここで、金属間化合物Al6(Mn,Fe)は、金属間化合物Al6MnにおけるMnの一部がFeに置換したものである。Feの存在によってアルミニウム合金中のMn固溶度が減少し、いっそうAl6(Mn,Fe)等の金属間化合物が生成し易くなる。このように、Mn,Feの両方の含有量に、Al−Mn−Fe系金属間化合物の生成量が影響される。したがって、前記Mn,Feの各含有量の制限と併せて、両者の和を規制することにより、Al−Mn−Fe系金属間化合物の晶出を抑制する。ここで、Mnの方がFeよりも影響が大きいため、1:1の和ではなく7%加算して、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42([Fe]、[Mn]はFe,Mnの各含有量(質量%))とする。
Crは、アルミニウム合金においてMg添加による高強度化を補う効果がある。前記した通り、Mgの含有量が5.0質量%を超えると、さらにアルミニウム合金板の強度が高くなる一方、熱間粗圧延において、焼付きによる表面不具合を防止するために圧下率を低減する等、生産性が低下する。Crを添加することにより、Mgの含有量を5.0質量%以下に抑えても高強度のアルミニウム合金板が得られる。この効果を得るために、Crの含有量は0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Crの含有量が0.15質量%を超えると、強度が過大となって、タブの曲げ変形、特に繰返し曲げによってちぎれ易くなる。したがって、Crの含有量は0.15質量%以下とする。
Ti,Bは、不可避的不純物として含まれている一方、アルミニウム合金の鋳塊組織を微細化する作用があり、このような作用を得るために、通常、質量比でTi:B=5:1、またはTi:B=5:0.2の配合の鋳塊微細化剤(TiB)として、アルミニウム合金の溶湯に添加される。アルミニウム合金板におけるTiの含有量が0.005質量%以上となる量のTiBが添加されることにより、鋳造時に鋳塊の結晶粒が微細化されて、鋳造性、成形性が向上する。さらに、鋳造速度を高速化するためには、Tiの含有量は0.01質量%以上とし、0.015質量%以上とすることが好ましく、また、前記TiBの配合に応じたBが必然的に添加されることとなる。一方、アルミニウム合金板におけるTiの含有量が0.10質量%を超えるTiBが添加されると、鋳造中に溶湯が通過するフィルタが目詰まりし易くなって、鋳造の高速化の効果が損なわれる。したがって、Tiの含有量は0.10質量%以下とし、これに伴い、Bの含有量は不可避的不純物として含まれているものを加味して0.05質量%以下とする。このような含有量のTi,Bであれば、本発明の効果を阻害するものではなく許容される。
(圧延方向断面の板厚方向中心部における最大長1μm以上の金属間化合物の面積率:0.4%以下)
本発明に係るアルミニウム合金板に晶出する金属間化合物は、主にAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物およびMg2Si等のMg−Si系金属間化合物(以下、これらをまとめて適宜「金属間化合物」という)である。アルミニウム合金板において、これらの金属間化合物のうち、ある程度の大きさ以上のものがより密に分布しているほど、タブに製造された後、開缶動作の際に裂けやちぎれが発生し易くなる。具体的には、最大長が1μm以上のAl−Mn−Fe系金属間化合物およびMg−Si系金属間化合物の合計の面積率が0.4%を超えると、裂けやちぎれが発生し易い。
本発明に係るアルミニウム合金板は、タブとしての強度等を確保するために、板厚を0.23mm以上とすることが好ましく、0.25mm以上とすることがさらに好ましい。一方、アルミニウム合金板を厚くしても機械的特性上の問題はないが、原材料のアルミニウム合金を低減するため、またタブが取り付けられた缶を軽量化するために、板厚を0.33mm以下とすることが好ましい。前記の範囲における板厚として下記の機械的特性を満足すれば、その板厚のアルミニウム合金板にて耐タブ裂け性および繰返し曲げ性に優れたタブに製造することができる。
本発明に係るアルミニウム合金板は、タブに製造される際の塗装後の焼付けを模擬すべく、250℃で25秒間の熱処理を行ったものについて、以下の機械的特性を規制する。
タブの強度は、その形状にも依存するが、材料(アルミニウム合金板)強度にも依存し、一定以上の材料強度を有することで、タブに製造された際の強度を向上させる。アルミニウム合金板の0.2%耐力が280MPa未満では、タブの剛性が不足する。一方、0.2%耐力が340MPaを超えると、剛性が過大となって繰返し曲げ性が低下する。したがって、アルミニウム合金板の0.2%耐力は280MPa以上340MPa以下とする。なお、0.2%耐力、ならびに後記の伸びおよび破断時全伸びは、JISZ2241の金属材料引張試験方法に規定された引張試験により測定することができ、引張方向は圧延方向に平行とする。
アルミニウム合金板の伸びは、タブの曲げ加工性に影響し、7%未満では繰返し曲げ性が低下する。したがって、アルミニウム合金板の伸びは7%以上とする。
前記引張試験による伸びは1回の曲げ性の評価指標であり、本発明においては、さらにタブの繰返し曲げ性の評価指標として、タブの曲げ方向に合わせてアルミニウム合金板の圧延方向に垂直な折り目が付くように曲げて戻した後の引張試験による破断時全伸びを規定する。具体的には、アルミニウム合金板から圧延方向を長手として幅15〜30mm程度の試験片を切り出して、長手方向略中心を先端のR0.1mmのポンチで90°のV字に折り曲げた後、試験片を2枚の平板で挟んで元に(180°に)戻す。この曲げ戻し後の折り目の付いた試験片で、引張方向を圧延方向(長手方向)に平行として、曲げ戻しした箇所(折り目)が破断するまで引張試験を行って破断時全伸び(破断限界伸び)を得る。繰返し曲げ性に優れたタブとするために、アルミニウム合金板の曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸びは2%以上とする。
はじめに、アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して厚さ500〜600mm程度の鋳塊とし、必要に応じて面削を行う。
鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理(均熱処理)することが必要である。鋳塊に熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。さらにこの熱処理は、後続の熱間圧延工程のための予備加熱を兼ねるものである。
均熱処理工程において、熱処理温度(鋳塊温度)が450℃未満では、本発明に係るアルミニウム合金板の成分の鋳塊を均質化するためには不十分であり、また、鋳塊が後続の熱間圧延工程における熱間加工(圧延)に必要な温度に到達しない。一方、熱処理温度が540℃を超えると、鋳塊が再溶融して板面の性状を悪化させる。したがって、均熱処理工程において、熱処理温度は450℃以上540℃以下とする。また、熱処理時間は特に規定しないが、2時間未満では鋳塊の均質化が完了していないことがあり、一方、8時間を超える熱処理を行っても効果の向上はなく、生産性が低下する。したがって、熱処理時間は2〜8時間が好ましい。
均熱処理工程から連続して、均質化された鋳塊を熱間圧延する。まず、均熱処理工程の熱処理完了時の温度を保持して鋳塊を粗圧延して、さらに仕上げ圧延により、所望の板厚の熱間圧延板とする。熱間圧延板の板厚は、後記の冷間圧延工程後のアルミニウム合金板としたときの板厚から冷間圧延工程における総圧延率(冷間加工率)を逆算して設定し、具体的には、1.15〜6.6mm程度の範囲が好ましい。
熱間圧延工程の終了時(熱間仕上げ圧延の終了時)で熱間圧延板の巻取り温度が300℃未満では、熱間仕上げ圧延の最終パス後において再結晶の進行が不十分で、再結晶組織が十分に発達しない。このような熱間圧延板は、冷間圧延前に再結晶させるための焼鈍(中間焼鈍)が必要になる。したがって、熱間圧延工程における終了温度が300℃以上となるように熱間圧延を行う。
熱間圧延板は、焼鈍しないで、2〜5基の圧延スタンドが連なったタンデム圧延機で冷間圧延して所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。タンデム方式の圧延機を用いて冷間圧延することで、シングル方式の圧延機による冷間圧延よりも1パスあたりの加工率(圧下率)を大きくして圧延することができる。これにより、冷間圧延工程における総パス数を減らすことができ、また、冷間圧延後の動的回復が促進される。その結果、パスを繰り返す度の硬化を減らせてアルミニウム合金板が過度に硬化することを防止し、また、亜結晶粒生成により均一変形能が向上するため、耐タブ裂け性および繰返し曲げ性に優れたものとなる。
冷間圧延における総圧延率(冷間加工率)は、その後の塗装焼付け条件等との組合せにより、結晶粒のサイズおよび材料強度に影響する。総圧延率が80%未満では強度が不足し、95%を超えると強度が過大となって繰返し曲げ性が低下する。したがって、冷間圧延における総圧延率は80%以上95%以下とする。
冷間圧延による動的回復は、最終パス(タンデム圧延機における最後の1基の圧延スタンドによる)における加工率、すなわち最終パスの圧下率が大きいほど大きくなり、具体的には30%以上で十分な効果が得られる。したがって、冷間圧延における最終パス圧下率は30%以上とする。なお、従来のシングル圧延方式の冷間圧延では、1パスあたりの圧下率を大きくすることが容易でなく、特に最終パスに至ると30%未満で圧延するのが一般的であった。これに対し、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、タンデム圧延機で冷間圧延することにより、最終パスも含めて1パスの圧下率を大きくすることができる。
本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、冷間圧延による動的回復を、タンデム圧延機を用いることで促進させると同時に、冷間圧延後(最終冷間圧延後)には十分な静的回復をさせるようにする。静的回復によっても、亜結晶粒生成によりアルミニウム合金板の均一変形能が向上して、適度な強度、ならびに優れた耐タブ裂け性および繰返し曲げ性が得られる。冷間圧延工程の終了時でアルミニウム合金板の巻取り温度が110℃未満では、冷間圧延後の静的回復が十分になされない。一方、巻取り温度が170℃を超えると回復が進行し過ぎて、アルミニウム合金板の塗装焼付けにより強度の低下が大きくなる。したがって、冷間圧延工程における終了温度が110℃以上170℃以下となるように冷間圧延を行う。
(アルミニウム合金板)
表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、半連続鋳造法を用いて鋳造速度40mm/minで、600mm×2130mm、厚さ600mmの鋳塊を作製し、面削処理を行った。この鋳塊に、表1に示す均熱処理温度で4時間保持することにより均質化してから、冷却しないで連続して、熱間圧延(粗圧延、仕上げ圧延)を施して熱間圧延板とした。熱間圧延板の板厚は、後続の冷間圧延における総圧延率に合わせて設定した。また、熱間圧延板の巻取り温度(熱延終了温度)を表1に示す。さらに、この熱間圧延板に、タンデム圧延機を用いて、表1に示す総圧延率および最終パス圧下率で冷間圧延を施して、板厚0.27mmのアルミニウム合金板とした。ただし、供試材No.21はシングル圧延機を用いた。また、アルミニウム合金板の巻取り温度(終了温度)を表1に示す。また、アルミニウム合金の組成におけるFe,Mnの各含有量(質量%)を[Fe]、[Mn]としたときの[Fe]+1.07×[Mn]=[A]として、表1に併記する。なお、アルミニウム合金板の作製時において、次工程が困難となったものは、タブ用アルミニウム合金板として不適であるとして、後続の工程および評価は行わず、表1に「−」で示した。
アルミニウム合金板を切り出して樹脂埋めし、圧延方向と板厚方向を含む面を研磨して鏡面に仕上げて観察面とした。この観察面の板厚方向1/2の部位を中心とした板厚方向に±0.05mmの範囲内を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、加速電圧20kV、倍率500倍の組成(COMPO)像で20視野(合計1mm2)観察した。母相より白く写る部分をAl−Mn−Fe系金属間化合物と見なし、母相より黒く写る部分をMg−Si系金属間化合物と見なして、画像処理により最大長が1μm以上の金属間化合物の面積の合計を求め、面積率を算出した。アルミニウム合金板の断面の板厚中心部における金属間化合物の面積率を表1に示す。
アルミニウム合金板を切り出して、圧延方向を長手方向としてJIS5号引張試験片を作製した。この試験片をJISZ2241に準じて引張試験を行って、0.2%耐力および伸びを測定した。結果を表1に示す。
アルミニウム合金板を切り出して、圧延方向を長手方向として、幅20mm、長さ100mmの試験片を作製した。この試験片の長手方向略中心を先端のR0.1mmのポンチで90°のV字に折り曲げた後、試験片を2枚の平板で挟んで元に(180°に)戻した。この曲げ戻し後の試験片で、長手方向を引張方向として、折り目が破断するまで引張試験を行って破断時全伸び(破断限界伸び)を測定した。結果を表1に示す。
アルミニウム合金板から、一般的なSTOLLE社タイプのステイオンタブを成形する金型を用いて、コンバージョン成形によりタブを作製した。供試材の各仕様あたり10個のタブで、以下の評価を行った。
0.25mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度320MPa)で、蓋材(図1の蓋材2)を作製した。なお、蓋材2のスコア25(主スコア)の残厚は、開缶状況の厳しい場合を想定するために、市販缶より厚めの100μmとした。この蓋材2に図1に示すようにタブ(タブ1)をリベットにより取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、図2(a)に示すLEAD測器製開缶試験機(開缶試験機)8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、サンプルを、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8の支持板82に取着して、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に蓋材2を図2(b)の矢印方向に90°回転させた。
開缶試験と同様の蓋材2を作製し、タブ1を取り付けてサンプルとした。ただし、開缶し難くするために、蓋材2のスコア25の残厚はさらに厚い110μmとし、また、タブ1は図3に破線で示すように平面に沿って左(または右でも可)に90°回転させた。このサンプルに対して、開缶試験と同様に、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。
タブ1のリベット孔11周辺部により負荷を与えるため、以下のサンプルを用いた。まず、前記開缶試験およびタブ裂け試験と同様にタブ1を蓋材2に取り付けてから、タブ1を損傷させないように蓋材2のリベット部21を破壊してタブ1を蓋材2から外した。このタブ1をリベット孔11で剛体7(図4(a)参照)にネジにて螺着してサンプルとした。このサンプルに対して、前記タブ裂け試験と同様に、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。
開缶試験およびタブ裂け試験と同様の蓋材2を作製し、タブ1を取り付けてサンプルとした。ただし、開缶し易くするため、蓋材2のスコア25の残厚は90μmとした。開缶動作は人手にて実施し、1回目の動作はタブ1を引き上げて蓋材2の開口領域23を完全に下方に押し込んで開缶させて(図1(c)参照)、さらに図6に示すように反対側に完全に倒した(180°近傍まで引き上げる)後、逆方向にタブ1を引き起こして図6に破線で示す開缶前の位置に戻す。2回目の動作は、1回目と同様にタブ1を引き上げて反対側に倒してまた元の位置に戻し、以降、この動作を繰り返して、タブ1のリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間の折り曲げ箇所が破断して(図1(c)右下部参照)蓋材2から外れるまで行う。タブ1の動作の片道分(180°近傍までの移動)を0.5回としてカウントし、タブ1が蓋材2から外れるまでの回数の10個の平均を表1に示す。少なくとも2往復半(2.5点以上)繰返し曲げの可能な仕様を繰返し曲げ性合格とした。
これに対して、供試材No.7〜16は、アルミニウム合金の成分が本発明の要件を満たさない比較例である。供試材No.7はMgが、供試材No.10はCuが、供試材No.14はSiが、それぞれ不足しているため、強度が不足して0.2%耐力が本発明の範囲より低く、その結果、タブが折れ易くなって開缶性が低下した。一方、供試材No.8はMgが、供試材No.11はCuが、それぞれ過剰なため、強度が過大となって、タブの繰返し曲げ性が低下した。また、供試材No.15はSiが過剰なため、熱間圧延板の結晶粒が粗大化して曲げ戻し後の破断限界伸びが劣化し、その結果、タブの繰返し曲げ性が低下した。
また、供試材No.17〜24は、アルミニウム合金の成分は本発明の範囲内であるが、製造条件は本発明の要件を満たさない比較例である。供試材No.23は均熱処理工程における熱処理温度が低いために後続の熱間圧延が困難となり、供試材No.24は均熱処理工程における熱処理温度が高いために鋳塊の表面が再溶融し、それぞれ熱間圧延工程以降は行わなかった。供試材No.22は熱間圧延工程における終了温度が低いために、再結晶が不十分で未再結晶部が残存し、冷間圧延工程以降は行わなかった。
(アルミニウム合金板)
表2に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、実施例1と同様に半連続鋳造法を用いて鋳塊を作製し、面削処理を行った。ここで、鋳造可能なものについては、鋳造速度55mm/minの高速鋳造を行い、それ以外は実施例1と同じ鋳造速度40mm/minとした。表2に鋳造速度を示す。この鋳塊に、均熱処理温度510℃で4時間保持することにより均質化してから、冷却しないで連続して、熱間圧延(粗圧延、仕上げ圧延)を施して熱間圧延板とした。熱間圧延板の板厚は、後続の冷間圧延における総圧延率に合わせて設定した。さらに、この熱間圧延板に、タンデム圧延機を用いて、総圧延率91%および最終パス圧下率48%で冷間圧延を施して、板厚0.27mmのアルミニウム合金板とした。熱間圧延板およびアルミニウム合金板の巻取り温度(熱延終了温度、冷延終了温度)を表2に示す。なお、アルミニウム合金板の作製時において、次工程が困難となったものは、タブ用アルミニウム合金板として不適であるとして、後続の工程および評価は行わず、表2に「−」で示した。
11 リベット孔
12 掛止部
14 インナーランス
2 蓋材
21 リベット部
23 開口領域
25 スコア
Claims (5)
- 成形、塗装、焼付けを施されて、包装容器の蓋部に取り付けられるタブに製造されるタブ用アルミニウム合金板であって、
Mg:4.0〜5.5質量%、Cu:0.02〜0.10質量%、Fe:0.15〜0.34質量%、Si:0.05〜0.18質量%を含有し、Mn:0.20質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記Fe,Mnの各含有量(質量%)を、[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42を満足するアルミニウム合金を圧延にて形成してなり、
前記圧延の圧延方向を含む断面の板厚方向中心部において、最大長が1μm以上のAl−Mn−Fe系金属間化合物と最大長が1μm以上のMg−Si系金属間化合物との合計の面積率が0.4%以下であり、
250℃で25秒間の熱処理後において、0.2%耐力が280〜340MPa、伸びが7%以上、前記圧延の圧延方向に垂直に折り目が付くように1回90°曲げて戻した後の引張試験による破断時全伸びが2%以上であることを特徴とするタブ用アルミニウム合金板。 - 前記アルミニウム合金が、Cr:0.05〜0.15質量%、Ti:0.01〜0.10質量%の少なくとも一種をさらに含有する請求項1に記載のタブ用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金が、Zn:0.25質量%以下をさらに含有する請求項1または請求項2に記載のタブ用アルミニウム合金板。
- 板厚が0.23〜0.33mmである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタブ用アルミニウム合金板。
- 成形、塗装、焼付けを施されて、包装容器の蓋部に取り付けられるタブに製造されるタブ用アルミニウム合金板の製造方法であって、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金を、溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、
前記鋳塊を、450〜540℃で熱処理を行うことにより均質化する均熱処理工程と、
前記均質化した鋳塊を、熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延板を、焼鈍することなく、タンデム方式の圧延機を用いて冷間圧延してタブ用アルミニウム合金板とする冷間圧延工程と、を行い、
前記熱間圧延工程は、終了温度が300℃以上であり、
前記冷間圧延工程は、総圧延率80〜95%、最終パス圧下率30%以上、終了温度110〜170℃であることを特徴とするタブ用アルミニウム合金板の製造方法。
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