JP5581254B2 - タブ用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

タブ用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、飲料、食品用途に使用される缶、特に飲料缶の、蓋部に取り付けて開缶するためのタブに成形加工されるアルミニウム合金板とその製造方法に関する。
飲料、食品用途に使用される包装容器の1つとして、飲料缶、缶詰等の食品缶が広く流通している。現在、これらの缶の蓋部(エンド)には、缶切り等の器具を使用せずに手で容易に開缶することのできるイージーオープンエンド(EOE)を用いた、いわゆるプルトップ(pull-top)方式が広く用いられている。イージーオープンエンドの蓋部は、缶の上面を構成する蓋材に、その上面(缶の外側)に開缶部材であるタブがその中心より一端寄りを固定して取り付けられて、このタブの他端を手(指)で上方に引っ張って起こすことで、てこの働きにより蓋材が外れて開缶する。イージーオープンエンドには、食品缶に多く適用される、蓋材の周縁以外のほぼ全面が外れて開缶するフルオープンエンド(FOE)と、飲料缶に多く適用される、蓋材の一部が切り取られて飲み口を形成するパーシャルオープンエンド(POE)の2種類がある。パーシャルオープンエンドは、かつて主流であった、タブが蓋材の切り取られた一部(口金)と共に缶本体から離れるプルタブ式(pulltab)に代わって、タブおよび口金が缶本体から外れないステイオンタブ式(Stay-on tab,SOT)が、安全性および環境問題の面から普及している。
ステイオンタブ式の蓋部は、図1(a)に示すように、蓋材2とタブ1とで構成され、円板状の蓋材2(図1(a)では一部を欠いて示す)の略中心に形成されたリベット部21を、タブ1のリベット孔11にかしめることで、タブ1が蓋材2に取り付けられている。リベット孔11は、タブ1の長手方向中心より一端側に寄せた位置に形成され、他端側には指を掛け易いようにリング状の掛止部12が形成されている。また、タブ1は、図1(b)に示すように、板材(アルミニウム合金板)を裁断した外周および掛止部12の内周の縁を下面側に折り曲げて剛性を高め、かつ安全性を確保し、一方、リベット孔11およびその外側のU字型の孔(スリット)状のインナーランス14が形成された領域を1枚の平板状として、変形し易い構造としている。このようなタブ1の材料としては、プルタブ式が採用されていたときから、成形性や耐食性が考慮されて5182合金等のアルミニウム合金板(冷間圧延板)が広く適用されている。アルミニウム合金板は、表面に塗装、焼付け後、所定の形状に裁断、成形されてタブ1に製造され、タブ1は別の板材を成形してなる蓋材2にリベットにより取り付けられる。蓋材2の、タブ1の前記一端側の延長上には、開缶後に飲み口を形成するための開口領域23がスコア25で囲まれて設けられている。このスコア25は主スコアとその内側の平行な補助スコアとからなり、開口領域23の周囲を完全には一周せず、一箇所(図1(a)ではタブ1が重なる領域)で不連続となるように形成されている。
開缶においては、タブ1の掛止部12を上方に引っ張ると、図1(c)に示すように、これが力点Eとなり、リベット部21近傍が支点Fとなって、リベット部21で固定された領域を残してタブ1が起こされる。詳しくは、タブ1は、インナーランス14で分割されるように、その内側の領域(リベット孔11周辺部)を蓋材2に固定されたまま、掛止部12等の外側の領域が起こされる。そして、タブ1の一端(掛止部12のリベット孔11を挟んだ反対側)が作用点Lとなって、てこの働きで強く下方に押し込まれ、この一端の直下の蓋材2の開口領域23の一部を共に押し下げる。そして、蓋材2は、この押し下げられた部分の近傍からスコア25に沿って亀裂が入り(図2(c)参照)、開口領域23が一部を残して蓋材2の他の部分から切り離されて下方(缶の内部)に押し込まれて、蓋材2に飲み口(開口部)が形成される。開口領域23は蓋材2がスコア25の形成されていない部分で容易に折れ曲がって、蓋材2の他の部分とのつながりを保持し、タブ1はリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間で容易に折れ曲がって、蓋材2の開口領域23外にあるリベット部21に結合しているため、それぞれ缶本体(缶胴)から離れない。なお、このような開缶動作は、フルオープンエンドについても同様であり、蓋材の周縁にスコアが一周して形成され、その内側におけるスコアの一部の近傍にタブが、掛止部を蓋材の中心に向けて取り付けられている。開缶においては、タブの掛止部を引っ張って起こすと、タブの作用点の直下である蓋材のスコアの内側における近傍の一点が、下方に押し込まれてこの部分からスコアの一部に亀裂が入る。そして、さらに掛止部を上方に引っ張ると、先の亀裂を起点にスコア全体に沿って亀裂が入って開缶する(図示省略)。この場合は、タブは蓋材に結合されたまま、蓋材ごと缶本体から離れる。
このように、タブは、開缶の際に、てことなって強い外力が掛かるため、強度が不足していると、図1(c)に示す支点F−力点E間の中心近傍の掛止部12の細い部分で折れ曲がって(図1(c)右下部参照)容易に開缶することができなかったり、さらにはちぎれる虞がある。また、掛止部12等のインナーランス14の外側の領域が起こされる際に、その移動方向に沿ってインナーランス14の端部から裂ける虞がある(図1(c)右下部参照)。また、特にステイオンタブ式エンドにおいては、口金(開口領域23)が飲料缶の内部に十分に深く押し込まれないと飲料缶の中の飲料を取り出す(飲む)際の妨げになるため、タブ1(掛止部12)を垂直近傍まで起こして、さらにはそれ以上に大きく起こして(反対側へ倒して)開缶する。
さらに開缶後、起こしたタブ1が飲料缶の中の飲料を飲む際の妨げにならないように、図1(c)の破線で示すように、タブ1を元に戻して(倒して)蓋材2の開口領域23のみを内部に押し込んだ状態にするのが一般的である。その結果、タブ1は、リベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の近傍で、90°近傍さらにはそれ以上の角度に曲げられた後に元に戻される(曲げ戻しされる)ため、この少なくとも2回の変形に耐えられずに折り曲げ箇所で破断し、ちぎれる虞がある(図1(c)右下部参照)。さらに、ステイオンタブ式エンドの中でも飲み口を広く設けたラージオープンエンド(LOE)、またフルオープンエンドにおいては、特に強い外力を開缶に要し、あるいは1回の動作では十分な角度までタブを起こすことができず、完全に開缶するまで起こす角度を大きくしながら曲げ戻し動作を繰り返す繰返し曲げを行うことがあり、いっそう、タブのちぎれや裂けが発生し易い。そのため、タブの材料には、成形性や耐食性だけでなく、強度および繰返し曲げに対する曲げ加工性が要求される。
このようなステイオンタブ式エンド等の開缶動作に対応するため、従来の5182合金等に代わるものとして、同じくAl−Mg系合金をベースとしたタブ用のアルミニウム合金板が開発されている。例えば、特許文献1では、Mn,Fe,Siの各含有量を所定以下に抑制し、さらに結晶粒の長さの圧延方向と圧延直角方向との比と、所定長さ以上の結晶粒の単位面積当たりの個数と、耐力とを規定することによって、ちぎれ難くしたとするアルミニウム合金板が開示されている。また、特許文献2では、Mgの他に、Mn,Si,Cr,Fe,Cu,Tiを所定量含有して、均質化処理温度、粗圧延と熱間仕上げ圧延の各終了温度等の製造条件を規制することで、Mn固溶量を所定範囲に規定し、また所定サイズ以上の金属間化合物の単位面積当たりの個数を所定以下に制御して、曲げ加工性を向上させたとするアルミニウム合金板が開示されている。特許文献3では、Mgの他に、Mn,Fe,Si,Cuを所定量含有して、均質化処理温度、熱間仕上げ圧延の終了温度、冷間加工率等の製造条件を規制することで、金属間化合物の面積率と最大長とを抑制して、ちぎれや裂けの発生し難いアルミニウム合金板が開示されている。
特開2001−49377号公報(段落0009〜0022) 特開2004−183045号公報(請求項2、段落0028〜0029) 特許第4256791号公報(請求項1、請求項2、段落0030〜0031)
特許文献1〜3に開示されたアルミニウム合金板は、いずれも現行のタブ用アルミニウム合金板と同じ板厚0.30〜0.35mmとして、ステイオンタブ式エンド等のタブとするために曲げ加工性等を向上させたものである。ここで、缶胴用板材、缶蓋用板材等の飲料缶等の包装容器材料は、飲料等のコスト削減のため、缶を軽量化し、また原材料(アルミニウム合金)を低減するため、薄肉化が進められている。同様に、タブ用のアルミニウム合金板についても薄肉化が望まれている。しかしながら、これらのタブ用のアルミニウム合金板では、板厚0.30mm未満に薄肉化すると、特に1枚の平板状であるリベット孔11およびインナーランス14の形成された領域で、開缶時の裂けや繰返し曲げによるちぎれ等がいっそう生じ易くなる。とりわけ、開缶動作がアルミニウム合金板の圧延方向に平行であることから、薄肉化によって圧延目に沿って裂け易くなるという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、タブに製造されたときに、開缶時に裂け難く(耐タブ裂け性)および繰返し曲げ性をいっそう優れたものとし、0.30mm未満に薄肉化可能なタブ用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、開缶時にタブの裂けやちぎれの起点となり易いアルミニウム合金板中の金属間化合物の晶出をできる限り減らす構成とした。前記特許文献2,3に開示されたアルミニウム合金板においても、それぞれ金属間化合物を規制しているが、本発明ではさらに減らすべく、Al−Mn(−Fe)系金属間化合物を生成するMnを極力抑え、さらに同じく金属間化合物を生成するFeとの和を規制する組成とした。一方、アルミニウム合金の強度を向上させるMnを抑制した代わりに、同じく強度を向上させる効果のあるCuを添加した。また、製造方法において、タブ用アルミニウム合金板とするための冷間圧延工程にて、繰返し曲げ性を優れたものとするためにその前の中間焼鈍を不要になるようにし、圧延による動的回復を促進して適度な強度とするために圧延率を規制し、さらに最終冷間圧延後の静的回復をさせるように、巻取り温度を規制することとし、このような制御が可能なタンデム方式の圧延機を適用することに想到した。
すなわち、本発明は成形、塗装、焼付けを施されて包装容器の蓋部に取り付けられるタブに製造されるタブ用アルミニウム合金板であって、Mg:4.0〜5.5質量%、Cu:0.02〜0.10質量%、Fe:0.15〜0.34質量%、Si:0.05〜0.18質量%を含有し、Mn:0.20質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記Fe,Mnの各含有量(質量%)を、[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42を満足するアルミニウム合金を圧延にて形成してなる。そして、このタブ用アルミニウム合金板は、前記圧延の圧延方向を含む断面の板厚方向中心部において、最大長が1μm以上のAl−Mn−Fe系金属間化合物とMg−Si系金属間化合物との合計の面積率が0.4%以下である。さらに、このタブ用アルミニウム合金板は、250℃で25秒間の熱処理後において、0.2%耐力が280〜340MPa、伸びが7%以上、前記圧延の圧延方向に垂直に折り目が付くように1回90°曲げて戻した後の引張試験による破断時全伸びが2%以上であることを特徴とする。なお、このタブ用アルミニウム合金板の板厚は0.23〜0.33mmであることが好ましい。
このように、所定量のMgを含有するAl−Mg系合金とし、さらに所定量のCuを含有することで、タブとしたときに十分な強度を有するアルミニウム合金板となる。また、Siを含有することで、タブに製造される際の塗装後の焼付けにおける軟化が抑制され、Feを含有することで、適度な大きさの金属間化合物を晶出して、これが核となって熱間圧延後に再結晶が得られ、結晶粒が微細化する。同時に、これらSi,Feの含有量を規制し、さらにMnをFeとの和も含めて極力抑えることで、タブの裂けやちぎれの起点となり易い所定以上の大きさの金属間化合物の晶出が抑制される。さらに本発明に係るアルミニウム合金板は、このような大きさの金属間化合物を面積率で管理する構成とした。また、本発明に係るアルミニウム合金板は、タブ製造における塗装後の焼付け相当の熱処理の後における機械的特性、すなわち0.2%耐力、伸び、そしてタブの開缶動作に相当する曲げ戻し変形後の引張試験による破断時全伸びを管理することで、耐タブ裂け性および繰返し曲げ性の優れたタブ用アルミニウム合金板が得られる。
本発明に係るタブ用アルミニウム合金板は、前記アルミニウム合金がCr:0.05〜0.15質量%、Ti:0.01〜0.10質量%の少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。Crを含有することで、さらに強度が向上するため、Mgの含有量をある程度抑えても高い強度が得られ、Mgを高濃度で含有するアルミニウム合金に発生し易い熱間粗圧延における縁近傍のロールコーティング不良およびそれに伴う表面焼付きを防止することができる。また、Tiを含有することで、鋳造時に鋳塊組織が微細化されて鋳造性が向上する。
本発明に係るタブ用アルミニウム合金板は、前記アルミニウム合金がZn:0.25質量%以下をさらに含有してもよい。Znの含有を許容することにより、製造(溶解)時に例えばブレージングシート用の高Zn含有アルミニウム合金材の屑を配合することが可能となり、原料コストを低減することができる。
なお、本発明に係るタブ用アルミニウム合金板は、板厚が0.23〜0.33mmであることが好ましい。この範囲の板厚のタブ用アルミニウム合金板がタブとして特に適切であり、また前記0.2%耐力等の機械的特性を満足し易い。
また、本発明に係るタブ用アルミニウム合金板の製造方法は、前記成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、この鋳塊を450〜540℃で熱処理を行うことにより均質化する均熱処理工程と、均質化した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、この熱間圧延板を焼鈍することなくタンデム方式の圧延機を用いて冷間圧延する冷間圧延工程とを行い、前記熱間圧延工程は終了温度が300℃以上であり、前記冷間圧延工程は、総圧延率80〜95%、最終パス圧下率30%以上、終了温度110〜170℃であることを特徴とする。
このように、均質化のための熱処理条件を制限することにより鋳塊の金属間化合物の粗大化を抑制し、また、熱間圧延工程における終了温度を所定値以上とすることにより熱間圧延板に再結晶組織が得られて、後続の冷間圧延工程前の中間焼鈍が不要となる。そして中間焼鈍を行わないことで、加工硬化が小さく繰返し曲げ性の優れたアルミニウム合金板が得られる。また、タンデム方式の圧延機を用いて所定の圧延率で冷間圧延することで、圧延による動的回復が促進されて適度な強度になり、さらに終了温度を容易に所定値以上として、最終冷間圧延後の静的回復がなされて、繰返し曲げ性の優れたアルミニウム合金板が得られる。
本発明に係るタブ用アルミニウム合金板によれば、耐タブ裂け性および繰返し曲げ性をいっそう向上させて開缶時に裂けやちぎれの生じ難いタブを製造することができ、さらに0.30mm未満に薄肉化可能なアルミニウム合金板として、コスト低減および省資源化を可能とする。そして、本発明に係るタブ用アルミニウム合金板の製造方法によれば、前記の効果を有するタブ用アルミニウム合金板を生産性よく製造することができる。
ステイオンタブ式の缶の蓋部の外観および開缶動作を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は開缶動作を説明する断面図および要部平面図である。 タブの評価試験方法を模式的に説明する図であり、(a)は試験装置の外観斜視図、(b)は(a)の要部断面図、(c)は開缶性試験の判定方法を説明するサンプルの平面図である。 タブ裂け試験方法を説明するサンプルの斜視図であり、(a)は良品例、(b)は不良例である。 タブ折れ試験方法を説明するサンプルの斜視図であり、(a)は良品例、(b)は不良例である。 タブ折れ試験方法を模式的に説明するチャートである。 タブの繰返し曲げ性試験方法を模式的に説明する断面図である。
以下、本発明に係るタブ用アルミニウム合金板(以下、アルミニウム合金板と称す)を実現するための形態について説明する。
本発明に係るアルミニウム合金板は、後記に規定する成分のアルミニウム合金を鋳造、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延して得られる(製造方法の詳細は後記にて説明する。)。そして、本発明に係るアルミニウム合金板を缶のタブに製造するには、表面にエポキシ系等の塗料を塗装し、焼付けのための230〜270℃、20〜30秒間程度の熱処理を施す。この塗装処理されたアルミニウム合金板を、圧延方向がタブの長手方向になるように、ステイオンタブ(図1(a)、(b)参照)等の所望の形状に裁断、成形する。以下、本発明に係るアルミニウム合金板を構成する各要素について説明する。
〔アルミニウム合金の成分〕
本発明に係るアルミニウム合金板は、Mg:4.0〜5.5質量%、Cu:0.02〜0.10質量%、Fe:0.15〜0.34質量%、Si:0.05〜0.18質量%を含有し、Mn:0.20質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記Fe,Mnの各含有量(質量%)を、[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42を満足するアルミニウム合金で形成される。
(Mg:4.0〜5.5質量%)
Mgは、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があり、含有量が多くなるにしたがいアルミニウム合金板の強度を増大させて、タブとして必要な強度を付与する。さらに、Mgは、熱間圧延時に蓄積歪みを増大させてその後の自己焼鈍による再結晶を促進させる効果があるため、アルミニウム合金板の成形性を向上させる。Mgの含有量が4.0質量%未満では特に強度向上効果が不足して、十分な強度が得られない。一方、Mgの含有量が多いと、アルミニウム合金の熱間圧延(粗圧延)において、高荷重となる縁(エッジ)近傍でロールコーティングが不均一になって板表面に焼付きが発生し易くなる傾向がある。特にMgの含有量が5.0質量%を超えるとこの傾向が顕著になり、焼付きによる表面不具合を防止するために、1パスの圧下率を低減してパス数を増やしたり圧延速度を低速にする必要を生じる場合があり、生産性が低下する。さらにMgは、含有量が多くなるにしたがい、強度と共にアルミニウム合金板の加工硬化を増大させる効果もあり、5.5質量%を超えると、これら強度等が過大となって、タブの曲げ変形、特に繰返し曲げによってちぎれ易くなる。したがって、Mgの含有量は、4.0質量%以上5.5質量%以下とし、好ましくは5.0質量%以下である。
(Cu:0.02〜0.10質量%)
Cuは、アルミニウム合金において固溶強化により強度を向上させる効果があるため、前記のMgと共にタブとして必要な強度を付与する。特に本発明では、同様にアルミニウム合金の強度を向上させる効果があるMnは含有量を低く規制されるため、Cuの添加により強度を補う。Cuの含有量が0.02質量%未満では、この効果が不十分である。一方、Cuもアルミニウム合金板の加工硬化を増大させるため、含有量が0.10質量%を超えると、加工硬化が過大となって、タブの曲げ変形等によってちぎれ易くなる。したがって、Cuの含有量は0.02質量%以上0.10質量%以下とする。
(Fe:0.15〜0.34質量%)
Feは、地金不純物としてアルミニウム合金中に含まれ、また、アルミニウム合金中で、Mnと共にAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物を生成し、Mnの含有量が特に少ない場合はAl3Fe等のAl−Fe系金属間化合物を生成する。これらの金属間化合物が適度に分散して晶出することで、熱間圧延後においてこの晶出物を核として再結晶が促進されるため、冷間圧延前の中間焼鈍が不要となる。Feの含有量が0.15質量%未満では、熱間圧延後における晶出物が不足して、前記効果が得られない。一方、Feの含有量が0.34質量%を超えると、前記の金属間化合物が過剰に生成されて、タブにおける裂け等の起点となる。したがって、Feの含有量は、0.15質量%以上0.34質量%以下とし、好ましくは、0.30質量%以下である。
(Si:0.05〜0.18質量%)
Siも、地金不純物としてアルミニウム合金中に含まれ、また、アルミニウム合金中でMgと共存する場合、Mg−Si系金属間化合物(Mg2Si)を生成する。また、Siは、アルミニウム合金板がタブに製造される際の塗装後の焼付けにおける軟化を抑制する効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満では、この軟化の抑制効果が不十分であるため、焼付け後の強度が不足する。一方、Siの含有量が0.18質量%を超えると、熱間圧延後の結晶粒が粗大化して、繰返し曲げ性が低下する。さらにSiの含有量が多くなると、Mg−Si系金属間化合物の大きなものが多数形成されてタブにおける裂け等の起点となる。したがって、Siの含有量は、0.05質量%以上0.18質量以下%とし、好ましくは、0.15質量%以下である。
(Mn:0.20質量%未満)
Mnは、アルミニウム合金の強度を向上させる効果があるものの、アルミニウム合金中で、タブにおける裂け等の起点となり易いAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物を生成する。Mnは、本発明におけるアルミニウム合金中の他の成分よりも金属間化合物晶出への影響が大きく、含有量が0.20質量%以上になると多量に生成されて、タブにおける裂け等の起点となる。したがって、Mnの含有量は0.20質量%未満に規制する。
(([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42、[Fe]、[Mn]はFe,Mnの各含有量(質量%))
ここで、金属間化合物Al6(Mn,Fe)は、金属間化合物Al6MnにおけるMnの一部がFeに置換したものである。Feの存在によってアルミニウム合金中のMn固溶度が減少し、いっそうAl6(Mn,Fe)等の金属間化合物が生成し易くなる。このように、Mn,Feの両方の含有量に、Al−Mn−Fe系金属間化合物の生成量が影響される。したがって、前記Mn,Feの各含有量の制限と併せて、両者の和を規制することにより、Al−Mn−Fe系金属間化合物の晶出を抑制する。ここで、Mnの方がFeよりも影響が大きいため、1:1の和ではなく7%加算して、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42([Fe]、[Mn]はFe,Mnの各含有量(質量%))とする。
本発明に係るアルミニウム合金板は、Cr:0.05〜0.15質量%、Ti:0.01〜0.10質量の少なくとも一種をさらに含有するアルミニウム合金で形成されることが好ましい。
(Cr:0.05〜0.15質量%)
Crは、アルミニウム合金においてMg添加による高強度化を補う効果がある。前記した通り、Mgの含有量が5.0質量%を超えると、さらにアルミニウム合金板の強度が高くなる一方、熱間粗圧延において、焼付きによる表面不具合を防止するために圧下率を低減する等、生産性が低下する。Crを添加することにより、Mgの含有量を5.0質量%以下に抑えても高強度のアルミニウム合金板が得られる。この効果を得るために、Crの含有量は0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Crの含有量が0.15質量%を超えると、強度が過大となって、タブの曲げ変形、特に繰返し曲げによってちぎれ易くなる。したがって、Crの含有量は0.15質量%以下とする。
(Ti:0.01〜0.10質量%)
Ti,Bは、不可避的不純物として含まれている一方、アルミニウム合金の鋳塊組織を微細化する作用があり、このような作用を得るために、通常、質量比でTi:B=5:1、またはTi:B=5:0.2の配合の鋳塊微細化剤(TiB)として、アルミニウム合金の溶湯に添加される。アルミニウム合金板におけるTiの含有量が0.005質量%以上となる量のTiBが添加されることにより、鋳造時に鋳塊の結晶粒が微細化されて、鋳造性、成形性が向上する。さらに、鋳造速度を高速化するためには、Tiの含有量は0.01質量%以上とし、0.015質量%以上とすることが好ましく、また、前記TiBの配合に応じたBが必然的に添加されることとなる。一方、アルミニウム合金板におけるTiの含有量が0.10質量%を超えるTiBが添加されると、鋳造中に溶湯が通過するフィルタが目詰まりし易くなって、鋳造の高速化の効果が損なわれる。したがって、Tiの含有量は0.10質量%以下とし、これに伴い、Bの含有量は不可避的不純物として含まれているものを加味して0.05質量%以下とする。このような含有量のTi,Bであれば、本発明の効果を阻害するものではなく許容される。
本発明に係るアルミニウム合金板は、前記成分以外に、例えばZn,Zrが不可避的不純物として含まれていると考えられ、これらの含有量は、Zn:0.25質量%以下、Zr:0.15質量%以下であれば、本発明の効果を阻害するものではなく許容される。特にZnは、例えばブレージングシート等のクラッド材用のアルミニウム合金材に高濃度で含有されるため、製造(溶解)時にこのようなアルミニウム合金材の屑を、アルミニウム合金板におけるZnの含有量が前記範囲内になる程度で配合することができ、原料コストを低減することができる。
〔アルミニウム合金板の金属間化合物〕
(圧延方向断面の板厚方向中心部における最大長1μm以上の金属間化合物の面積率:0.4%以下)
本発明に係るアルミニウム合金板に晶出する金属間化合物は、主にAl6(Mn,Fe)等のAl−Mn−Fe系金属間化合物およびMg2Si等のMg−Si系金属間化合物(以下、これらをまとめて適宜「金属間化合物」という)である。アルミニウム合金板において、これらの金属間化合物のうち、ある程度の大きさ以上のものがより密に分布しているほど、タブに製造された後、開缶動作の際に裂けやちぎれが発生し易くなる。具体的には、最大長が1μm以上のAl−Mn−Fe系金属間化合物およびMg−Si系金属間化合物の合計の面積率が0.4%を超えると、裂けやちぎれが発生し易い。
圧延板においては、圧延面すなわち鋳塊表面に近い金属間化合物の方が圧延時に破砕されて微細化し易い。すなわち、板厚方向の中心近傍において、比較的大きな金属間化合物が多く存在(残留)する傾向がある。したがって、本発明に係るアルミニウム合金板においては、板厚方向中心部における金属間化合物の分布を規制する。また、断面の板厚方向中心部とは、具体的には、板厚方向1/2の部位を中心として板厚の55〜70%に相当する範囲を指す。このような領域は、アルミニウム合金板の表面に沿って研磨するよりも、切り出した切断面を観察する方が容易であるので、断面における金属間化合物の面積率で判定する。また、圧延板においては、圧延方向に沿って金属間化合物が長くなる傾向があるため、金属間化合物の最大長は圧延方向に沿った方向の長さとなるものが多い。したがって、本発明に係るアルミニウム合金板は、圧延方向を含む断面の板厚方向中心部における最大長1μm以上の金属間化合物の面積率を0.4%以下とする。このような金属間化合物の分布は、前記Mg,Si,Fe,Mnの各含有量、および後記の製造条件により制御される。
ここで、本発明に係るアルミニウム合金板は、通常、冷間圧延完了時のコイルからタブに製造される際、前記したように、まず、塗装、焼付けを施してから、タブの形状に裁断、成形される。したがって、製造上、アルミニウム合金板の冷間圧延完了時における断面を観察することが容易ではないため、前記のタブの裁断と共に試験片を切り出して金属間化合物の分布を観察してもよい。なお、焼付けによる熱処理の温度では金属間化合物の分布状態への影響は殆どない。
金属間化合物の検出手段には、走査型電子顕微鏡(SEM)の適用が一例として挙げられる。最大長が1μm以上の金属間化合物はSEMの組成(COMPO)像において母相とのコントラストで識別することができ、Al−Mn−Fe系金属間化合物はAl母相より白く写り、Mg−Si系金属間化合物はAl母相より黒く写る。なお、Mnの含有量が特に少ない場合に生成するAl−Fe系金属間化合物も、Al−Mn−Fe系金属間化合物と同様に白く写ってSEMでの識別は困難であり、また同様に裂けやちぎれの起点となり得るため、Al−Mn−Fe系金属間化合物に含めて面積率を測定する。アルミニウム合金板の断面の板厚方向中心部における金属間化合物は、アルミニウム合金板を切り出して、圧延方向と板厚方向を含む切断面を研磨して鏡面に仕上げて観察面とし、アルミニウム合金板の板厚方向1/2の部位を中心とした板厚の55〜70%に相当する範囲を観察する。この範囲の領域から好ましくは複数の視野を合計1mm2以上観察、撮影し、画像処理装置等を用いて最大長が1μm以上の金属間化合物についての面積率を測定することができる。
〔アルミニウム合金板の板厚:0.23〜0.33mm〕
本発明に係るアルミニウム合金板は、タブとしての強度等を確保するために、板厚を0.23mm以上とすることが好ましく、0.25mm以上とすることがさらに好ましい。一方、アルミニウム合金板を厚くしても機械的特性上の問題はないが、原材料のアルミニウム合金を低減するため、またタブが取り付けられた缶を軽量化するために、板厚を0.33mm以下とすることが好ましい。前記の範囲における板厚として下記の機械的特性を満足すれば、その板厚のアルミニウム合金板にて耐タブ裂け性および繰返し曲げ性に優れたタブに製造することができる。
〔アルミニウム合金板の機械的特性〕
本発明に係るアルミニウム合金板は、タブに製造される際の塗装後の焼付けを模擬すべく、250℃で25秒間の熱処理を行ったものについて、以下の機械的特性を規制する。
(0.2%耐力:280〜340MPa)
タブの強度は、その形状にも依存するが、材料(アルミニウム合金板)強度にも依存し、一定以上の材料強度を有することで、タブに製造された際の強度を向上させる。アルミニウム合金板の0.2%耐力が280MPa未満では、タブの剛性が不足する。一方、0.2%耐力が340MPaを超えると、剛性が過大となって繰返し曲げ性が低下する。したがって、アルミニウム合金板の0.2%耐力は280MPa以上340MPa以下とする。なお、0.2%耐力、ならびに後記の伸びおよび破断時全伸びは、JISZ2241の金属材料引張試験方法に規定された引張試験により測定することができ、引張方向は圧延方向に平行とする。
(伸び:7%以上)
アルミニウム合金板の伸びは、タブの曲げ加工性に影響し、7%未満では繰返し曲げ性が低下する。したがって、アルミニウム合金板の伸びは7%以上とする。
(曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸び:2%以上)
前記引張試験による伸びは1回の曲げ性の評価指標であり、本発明においては、さらにタブの繰返し曲げ性の評価指標として、タブの曲げ方向に合わせてアルミニウム合金板の圧延方向に垂直な折り目が付くように曲げて戻した後の引張試験による破断時全伸びを規定する。具体的には、アルミニウム合金板から圧延方向を長手として幅15〜30mm程度の試験片を切り出して、長手方向略中心を先端のR0.1mmのポンチで90°のV字に折り曲げた後、試験片を2枚の平板で挟んで元に(180°に)戻す。この曲げ戻し後の折り目の付いた試験片で、引張方向を圧延方向(長手方向)に平行として、曲げ戻しした箇所(折り目)が破断するまで引張試験を行って破断時全伸び(破断限界伸び)を得る。繰返し曲げ性に優れたタブとするために、アルミニウム合金板の曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸びは2%以上とする。
アルミニウム合金板の曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸び(以下、適宜曲げ戻し後の破断限界伸び)は、当該曲げ戻しすなわち繰返し曲げにより前記の(曲げ戻しのない)引張試験による伸びよりも低下するため、この伸びを7%以上と規定することにより、曲げ戻し後の破断限界伸びを2%以上に保持する。しかし、アルミニウム合金板は、金属間化合物の晶出が多いと、具体的には本発明の規定を超える面積率になると、これらの金属間化合物が起点となって曲げ戻しにて破断し易くなるために、曲げ戻し後の破断限界伸びは低くなる。また、アルミニウム合金板の0.2%耐力の高いもの、そしてアルミニウム合金板の製造時において、Si過剰等により熱間圧延後の結晶粒が粗大化したものや、後記冷間圧延工程にて圧延による動的回復や圧延後の静的回復の不十分なものについても、伸びに対して曲げ戻し後の破断限界伸びが大きく低下する傾向がある。
次に、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法を説明する。本発明に係るアルミニウム合金板は、前記成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、鋳塊を熱処理により均質化する均熱処理工程と、この熱処理後に鋳塊を冷却することなく熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、熱間圧延板を焼鈍することなく冷間圧延する冷間圧延工程によって製造される。以下に、各工程の条件について説明する。
〔鋳造工程〕
はじめに、アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法により鋳造し、アルミニウム合金の固相線温度未満まで冷却して厚さ500〜600mm程度の鋳塊とし、必要に応じて面削を行う。
なお、アルミニウム合金の溶湯に、Ti,Bをワッフル状あるいはロッド状の形態の鋳塊微細化剤(TiB)として、アルミニウム合金板におけるTiの含有量が前記所定の範囲となるように添加することにより、鋳造速度を高速化する、いわゆる高速鋳造が可能となる。溶湯は、はじめに溶解炉、次に設備によっては保持炉を経由して介在物フィルタ、そして脱ガス装置、最後に溶湯流量制御装置(鋳型内)の順で経由されるため、これらのいずれかにおけるスラブ凝固前の溶湯にTiBを添加することができるが、前記フィルタの上流側に添加することが好ましい。フィルタの下流側に添加されると鋳塊組織の微細化効果はより高くなるが、TiB添加に伴って酸化物等が混入したり、TiB自体に含まれている非金属介在物が混入する虞があり、これらが溶湯から除去されないでアルミニウム合金板に製造されると、タブにおける裂け等の起点となる。なお、鋳造速度は、600mm×2130mmのDC鋳造スラブを鋳造する場合において、例えばTiBの添加なしで40mm/min程度であるのが、TiBの添加により55mm/min程度の高速鋳造となる。
〔均熱処理工程〕
鋳塊を圧延する前に、所定温度で均質化熱処理(均熱処理)することが必要である。鋳塊に熱処理を施すことによって、内部応力が除去され、鋳造時に偏析した溶質元素が均質化され、また、鋳造冷却時やそれ以降に析出した金属間化合物が成長する。さらにこの熱処理は、後続の熱間圧延工程のための予備加熱を兼ねるものである。
(熱処理温度:450〜540℃)
均熱処理工程において、熱処理温度(鋳塊温度)が450℃未満では、本発明に係るアルミニウム合金板の成分の鋳塊を均質化するためには不十分であり、また、鋳塊が後続の熱間圧延工程における熱間加工(圧延)に必要な温度に到達しない。一方、熱処理温度が540℃を超えると、鋳塊が再溶融して板面の性状を悪化させる。したがって、均熱処理工程において、熱処理温度は450℃以上540℃以下とする。また、熱処理時間は特に規定しないが、2時間未満では鋳塊の均質化が完了していないことがあり、一方、8時間を超える熱処理を行っても効果の向上はなく、生産性が低下する。したがって、熱処理時間は2〜8時間が好ましい。
〔熱間圧延工程〕
均熱処理工程から連続して、均質化された鋳塊を熱間圧延する。まず、均熱処理工程の熱処理完了時の温度を保持して鋳塊を粗圧延して、さらに仕上げ圧延により、所望の板厚の熱間圧延板とする。熱間圧延板の板厚は、後記の冷間圧延工程後のアルミニウム合金板としたときの板厚から冷間圧延工程における総圧延率(冷間加工率)を逆算して設定し、具体的には、1.15〜6.6mm程度の範囲が好ましい。
(終了温度:300℃以上)
熱間圧延工程の終了時(熱間仕上げ圧延の終了時)で熱間圧延板の巻取り温度が300℃未満では、熱間仕上げ圧延の最終パス後において再結晶の進行が不十分で、再結晶組織が十分に発達しない。このような熱間圧延板は、冷間圧延前に再結晶させるための焼鈍(中間焼鈍)が必要になる。したがって、熱間圧延工程における終了温度が300℃以上となるように熱間圧延を行う。
本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、冷間圧延工程の前または途中で中間焼鈍を行わない。一般に、中間焼鈍を行ったアルミニウム合金板(冷間圧延板)は、結晶粒が微細となり、さらにその後の冷間圧延率が少ないことで加工硬化特性n値が高くなって、1回の曲げ性には優れたものとなるため、その後の曲げ加工により製品強度は高くなる。しかし、タブ用アルミニウム合金板では、製品(タブ)として開缶時に繰返し曲げがなされるため、加工硬化が大きいと過剰に硬化してちぎれ易くなる。したがって、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、中間焼鈍を行わずに冷間圧延を行って、アルミニウム合金板の加工硬化を抑えるため、熱間圧延工程の終了温度を前記のように規定する。
〔冷間圧延工程〕
熱間圧延板は、焼鈍しないで、2〜5基の圧延スタンドが連なったタンデム圧延機で冷間圧延して所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。タンデム方式の圧延機を用いて冷間圧延することで、シングル方式の圧延機による冷間圧延よりも1パスあたりの加工率(圧下率)を大きくして圧延することができる。これにより、冷間圧延工程における総パス数を減らすことができ、また、冷間圧延後の動的回復が促進される。その結果、パスを繰り返す度の硬化を減らせてアルミニウム合金板が過度に硬化することを防止し、また、亜結晶粒生成により均一変形能が向上するため、耐タブ裂け性および繰返し曲げ性に優れたものとなる。
(総圧延率:80〜95%)
冷間圧延における総圧延率(冷間加工率)は、その後の塗装焼付け条件等との組合せにより、結晶粒のサイズおよび材料強度に影響する。総圧延率が80%未満では強度が不足し、95%を超えると強度が過大となって繰返し曲げ性が低下する。したがって、冷間圧延における総圧延率は80%以上95%以下とする。
(最終パス圧下率:30%以上)
冷間圧延による動的回復は、最終パス(タンデム圧延機における最後の1基の圧延スタンドによる)における加工率、すなわち最終パスの圧下率が大きいほど大きくなり、具体的には30%以上で十分な効果が得られる。したがって、冷間圧延における最終パス圧下率は30%以上とする。なお、従来のシングル圧延方式の冷間圧延では、1パスあたりの圧下率を大きくすることが容易でなく、特に最終パスに至ると30%未満で圧延するのが一般的であった。これに対し、本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、タンデム圧延機で冷間圧延することにより、最終パスも含めて1パスの圧下率を大きくすることができる。
(終了温度:110〜170℃)
本発明に係るアルミニウム合金板の製造方法においては、冷間圧延による動的回復を、タンデム圧延機を用いることで促進させると同時に、冷間圧延後(最終冷間圧延後)には十分な静的回復をさせるようにする。静的回復によっても、亜結晶粒生成によりアルミニウム合金板の均一変形能が向上して、適度な強度、ならびに優れた耐タブ裂け性および繰返し曲げ性が得られる。冷間圧延工程の終了時でアルミニウム合金板の巻取り温度が110℃未満では、冷間圧延後の静的回復が十分になされない。一方、巻取り温度が170℃を超えると回復が進行し過ぎて、アルミニウム合金板の塗装焼付けにより強度の低下が大きくなる。したがって、冷間圧延工程における終了温度が110℃以上170℃以下となるように冷間圧延を行う。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔供試材作製〕
(アルミニウム合金板)
表1に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、半連続鋳造法を用いて鋳造速度40mm/minで、600mm×2130mm、厚さ600mmの鋳塊を作製し、面削処理を行った。この鋳塊に、表1に示す均熱処理温度で4時間保持することにより均質化してから、冷却しないで連続して、熱間圧延(粗圧延、仕上げ圧延)を施して熱間圧延板とした。熱間圧延板の板厚は、後続の冷間圧延における総圧延率に合わせて設定した。また、熱間圧延板の巻取り温度(熱延終了温度)を表1に示す。さらに、この熱間圧延板に、タンデム圧延機を用いて、表1に示す総圧延率および最終パス圧下率で冷間圧延を施して、板厚0.27mmのアルミニウム合金板とした。ただし、供試材No.21はシングル圧延機を用いた。また、アルミニウム合金板の巻取り温度(終了温度)を表1に示す。また、アルミニウム合金の組成におけるFe,Mnの各含有量(質量%)を[Fe]、[Mn]としたときの[Fe]+1.07×[Mn]=[A]として、表1に併記する。なお、アルミニウム合金板の作製時において、次工程が困難となったものは、タブ用アルミニウム合金板として不適であるとして、後続の工程および評価は行わず、表1に「−」で示した。
得られたアルミニウム合金板に、歪み矯正処理を施した後、熱処理炉により到達温度250℃、時間25秒で熱処理した。
(金属間化合物の面積率)
アルミニウム合金板を切り出して樹脂埋めし、圧延方向と板厚方向を含む面を研磨して鏡面に仕上げて観察面とした。この観察面の板厚方向1/2の部位を中心とした板厚方向に±0.05mmの範囲内を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、加速電圧20kV、倍率500倍の組成(COMPO)像で20視野(合計1mm2)観察した。母相より白く写る部分をAl−Mn−Fe系金属間化合物と見なし、母相より黒く写る部分をMg−Si系金属間化合物と見なして、画像処理により最大長が1μm以上の金属間化合物の面積の合計を求め、面積率を算出した。アルミニウム合金板の断面の板厚中心部における金属間化合物の面積率を表1に示す。
(機械的特性:0.2%耐力、伸び)
アルミニウム合金板を切り出して、圧延方向を長手方向としてJIS5号引張試験片を作製した。この試験片をJISZ2241に準じて引張試験を行って、0.2%耐力および伸びを測定した。結果を表1に示す。
(機械的特性:曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸び)
アルミニウム合金板を切り出して、圧延方向を長手方向として、幅20mm、長さ100mmの試験片を作製した。この試験片の長手方向略中心を先端のR0.1mmのポンチで90°のV字に折り曲げた後、試験片を2枚の平板で挟んで元に(180°に)戻した。この曲げ戻し後の試験片で、長手方向を引張方向として、折り目が破断するまで引張試験を行って破断時全伸び(破断限界伸び)を測定した。結果を表1に示す。
〔評価〕
アルミニウム合金板から、一般的なSTOLLE社タイプのステイオンタブを成形する金型を用いて、コンバージョン成形によりタブを作製した。供試材の各仕様あたり10個のタブで、以下の評価を行った。
(開缶試験)
0.25mm厚のJISA5182P塗装板(塗装後強度320MPa)で、蓋材(図1の蓋材2)を作製した。なお、蓋材2のスコア25(主スコア)の残厚は、開缶状況の厳しい場合を想定するために、市販缶より厚めの100μmとした。この蓋材2に図1に示すようにタブ(タブ1)をリベットにより取り付けてサンプルとした。このサンプルに対して、図2(a)に示すLEAD測器製開缶試験機(開缶試験機)8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。詳しくは、サンプルを、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8の支持板82に取着して、タブ1の掛止部12に開缶試験機8の掛止具81を掛止し、支持板82と共に蓋材2を図2(b)の矢印方向に90°回転させた。
この引き上げ動作(開缶動作)の後、タブ1が折れたり裂けていないかを観察した。そして、開缶動作により、タブ1に裂けや折れがなく、蓋材2のスコア25に、図2(c)に一点鎖線で示すタブ長手方向延長線を越えてスコア亀裂が伝播した場合を「開缶」とした。それ以外、すなわちスコア亀裂が十分に伝播しなかったもの、あるいはタブ1が折れたり裂けていたものを「半開缶」とした。10個のサンプルすべてについて「開缶」した仕様を開缶性合格として表1に「○」で示し、「半開缶」が1個でもあったものを不合格として表1に「×」で示す。
(タブ裂け試験)
開缶試験と同様の蓋材2を作製し、タブ1を取り付けてサンプルとした。ただし、開缶し難くするために、蓋材2のスコア25の残厚はさらに厚い110μmとし、また、タブ1は図3に破線で示すように平面に沿って左(または右でも可)に90°回転させた。このサンプルに対して、開缶試験と同様に、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。
タブ1の外観を観察して、図3(b)および図1(c)右下部に示すように、インナーランス14の端部から裂けたものを不良とする。これに対して、このように裂けることがなく、図3(a)に示すように、タブ1のインナーランス14外側で折れ曲がることにより、またさらにタブ1の一端が蓋材2を凹ませるように下方に押し込まれることにより、タブ1を90°まで引き上げることができたものを良品とする。不良(裂け)の発生個数を表1に示す。
(タブ折れ試験)
タブ1のリベット孔11周辺部により負荷を与えるため、以下のサンプルを用いた。まず、前記開缶試験およびタブ裂け試験と同様にタブ1を蓋材2に取り付けてから、タブ1を損傷させないように蓋材2のリベット部21を破壊してタブ1を蓋材2から外した。このタブ1をリベット孔11で剛体7(図4(a)参照)にネジにて螺着してサンプルとした。このサンプルに対して、前記タブ裂け試験と同様に、図2(a)、(b)に示すように開缶試験機8を用いてタブ1の引き上げ動作を行った。
この引き上げ動作における開缶試験機8による荷重の推移のチャートを図5に示す。タブ1の引き上げ角度が大きくなるにしたがい、荷重はある時点まで一定の割合で増加する。タブ1は変形しない剛体7に取り付けられているため、90°まで引き上げる間に、次のように折れまたは裂けを生じる。図4(a)に示すようにタブ1がインナーランス14の外側で折れ曲がる場合、図5に実線で示すように、折れ曲がり始まる(タブ折れ開始)と荷重の増加率が減少するが、引き続き荷重は増加し、最大値に到達した後緩やかに減少する。一方、図4(b)に示すように、タブ1がインナーランス14の端部から裂ける(図1(c)右下部参照)場合、図5に破線で示すように前記タブ折れ開始時よりも小さい荷重で荷重が減少に転じる。これは前記タブ裂け試験においても同様である。タブ1が裂けることなく、荷重が最大値に到達した場合の当該最大値を限界荷重として測定した。裂けの発生個数および限界荷重の10個(裂けを生じたものは除く)の平均値を表1に示す。10個のサンプルすべてについて、前記タブ裂け試験およびタブ折れ試験のそれぞれにおいて、タブ1が裂けることなく90°まで引き上げられた仕様を耐タブ裂け性合格とする。また、限界荷重の平均値が25N以上である仕様をタブ折れ性合格とする。
(繰返し曲げ試験)
開缶試験およびタブ裂け試験と同様の蓋材2を作製し、タブ1を取り付けてサンプルとした。ただし、開缶し易くするため、蓋材2のスコア25の残厚は90μmとした。開缶動作は人手にて実施し、1回目の動作はタブ1を引き上げて蓋材2の開口領域23を完全に下方に押し込んで開缶させて(図1(c)参照)、さらに図6に示すように反対側に完全に倒した(180°近傍まで引き上げる)後、逆方向にタブ1を引き起こして図6に破線で示す開缶前の位置に戻す。2回目の動作は、1回目と同様にタブ1を引き上げて反対側に倒してまた元の位置に戻し、以降、この動作を繰り返して、タブ1のリベット孔11周辺部のインナーランス14の両端の間の折り曲げ箇所が破断して(図1(c)右下部参照)蓋材2から外れるまで行う。タブ1の動作の片道分(180°近傍までの移動)を0.5回としてカウントし、タブ1が蓋材2から外れるまでの回数の10個の平均を表1に示す。少なくとも2往復半(2.5点以上)繰返し曲げの可能な仕様を繰返し曲げ性合格とした。
Figure 0005581254
表1に示すように、供試材No.1〜6,25,26は、アルミニウム合金の成分の各含有量および製造方法における各条件が本発明の範囲内の実施例であり、金属間化合物の晶出が抑えられ、機械的特性も本発明の範囲内となった。その結果、タブに製造されたとき、開缶性が良好であり、さらに開缶動作により裂け難く、折れ性が良好であり、繰返し曲げ性に優れていた。
(アルミニウム合金の成分による評価)
これに対して、供試材No.7〜16は、アルミニウム合金の成分が本発明の要件を満たさない比較例である。供試材No.7はMgが、供試材No.10はCuが、供試材No.14はSiが、それぞれ不足しているため、強度が不足して0.2%耐力が本発明の範囲より低く、その結果、タブが折れ易くなって開缶性が低下した。一方、供試材No.8はMgが、供試材No.11はCuが、それぞれ過剰なため、強度が過大となって、タブの繰返し曲げ性が低下した。また、供試材No.15はSiが過剰なため、熱間圧延板の結晶粒が粗大化して曲げ戻し後の破断限界伸びが劣化し、その結果、タブの繰返し曲げ性が低下した。
供試材No.12はFeが不足しているため、熱間圧延後の再結晶が不十分で未再結晶部が残存し、冷間圧延工程以降は行わなかった。一方、供試材No.9はMnが、供試材No.13はFeが、それぞれ過剰なため、また供試材No.16はMnとFeの和([Fe]+1.07×[Mn])が過剰なため、金属間化合物が多く晶出して曲げ戻し後の破断限界伸びが劣化し、その結果、タブの繰返し曲げ性が低下した。
(アルミニウム合金板の製造方法による評価)
また、供試材No.17〜24は、アルミニウム合金の成分は本発明の範囲内であるが、製造条件は本発明の要件を満たさない比較例である。供試材No.23は均熱処理工程における熱処理温度が低いために後続の熱間圧延が困難となり、供試材No.24は均熱処理工程における熱処理温度が高いために鋳塊の表面が再溶融し、それぞれ熱間圧延工程以降は行わなかった。供試材No.22は熱間圧延工程における終了温度が低いために、再結晶が不十分で未再結晶部が残存し、冷間圧延工程以降は行わなかった。
供試材No.17は、冷間圧延工程における総圧延率が不足したために強度が不足し、その結果、タブが折れ易くなって開缶性が低下した。一方、供試材No.18は、冷間圧延工程における総圧延率が過剰なために強度が過大となって、タブの繰返し曲げ性が低下した。また、供試材No.19は、冷間圧延工程において最終パス圧下率が不足し、さらに終了温度が低いために、動的回復および静的回復が不十分で、曲げ戻し後の破断限界伸びが低下し、その結果、タブの繰返し曲げ性が低下した。一方、供試材No.20は、冷間圧延工程において終了温度が高いために静的回復が進行し過ぎて焼付けによる強度の低下が大きく、その結果、タブが折れ易くなって開缶性が低下した。供試材No.21は、冷間圧延工程においてシングル圧延機を用いたために動的回復に劣り、さらに終了温度が低くなったために静的回復が不十分で、伸び、そして曲げ戻し後の破断限界伸びが低下し、その結果、タブの繰返し曲げ性が大きく低下した。
実施例1と同様に、アルミニウム合金板の供試材を作製し、アルミニウム合金の成分による本発明の効果を確認した。
〔供試材作製〕
(アルミニウム合金板)
表2に示す組成のアルミニウム合金を、溶解し、実施例1と同様に半連続鋳造法を用いて鋳塊を作製し、面削処理を行った。ここで、鋳造可能なものについては、鋳造速度55mm/minの高速鋳造を行い、それ以外は実施例1と同じ鋳造速度40mm/minとした。表2に鋳造速度を示す。この鋳塊に、均熱処理温度510℃で4時間保持することにより均質化してから、冷却しないで連続して、熱間圧延(粗圧延、仕上げ圧延)を施して熱間圧延板とした。熱間圧延板の板厚は、後続の冷間圧延における総圧延率に合わせて設定した。さらに、この熱間圧延板に、タンデム圧延機を用いて、総圧延率91%および最終パス圧下率48%で冷間圧延を施して、板厚0.27mmのアルミニウム合金板とした。熱間圧延板およびアルミニウム合金板の巻取り温度(熱延終了温度、冷延終了温度)を表2に示す。なお、アルミニウム合金板の作製時において、次工程が困難となったものは、タブ用アルミニウム合金板として不適であるとして、後続の工程および評価は行わず、表2に「−」で示した。
得られたアルミニウム合金板に、実施例1と同様に、歪み矯正処理を施した後、熱処理炉により到達温度250℃、時間25秒で熱処理した。このアルミニウム合金板について、実施例1と同様に、金属間化合物の面積率、機械的特性(0.2%耐力、伸び、曲げ戻し後の引張試験による破断時全伸び)を測定し、表2に示す。さらに、実施例1と同様に、アルミニウム合金板でタブを作製して、開缶試験、タブ裂け試験、タブ折れ試験、繰返し曲げ試験を行い、結果を表2に示す。また、実施例1の供試材No.1〜6,25,26についても表2に併記する。
Figure 0005581254
表2に示すように、供試材No.27〜31は、Crを本発明の範囲内で添加したことにより強度が高くなって、Cr以外の成分および製造条件が比較的近い実施例1の供試材No.2よりも0.2%耐力が向上して供試材No.3,6と同程度となり、それ以外の機械的特性も本発明の範囲内であり、タブに製造されたときに良好な結果が得られた。さらに、供試材No.27〜31は、Mgの含有量が抑えられたことにより、不具合なく熱間粗圧延することができた。これに対して、供試材No.3,6は、Crを添加せずに強度を高くしたためにMgの含有量が多くなり、特に本発明の範囲の上限に近い供試材No.3は、熱間粗圧延において縁近傍に表面不具合が発生したために圧下率を抑えた条件に修正する必要を生じた。その結果、供試材No.3、およびMgが過剰な供試材No.8(表1参照)は、他の供試材と比較して熱間粗圧延のパス数が19%増となった。一方、供試材No.35は、Crを過剰に添加したため、強度が過大となって、タブの繰返し曲げ性等が低下した。
供試材No.29〜34は、Ti,Znを本発明の範囲内で含有するが、これらの成分を含有しない供試材と比較して、金属間化合物や機械的特性に有意差はなく、タブに製造されたときも本発明の効果を阻害することなく、良好な結果が得られた。さらに、供試材No.30〜33は、Tiを添加したことにより、Tiを含有しない供試材に対して38%増しの高速鋳造が不具合なく実施可能となり、生産性が向上した。一方、供試材No.36は、Tiを過剰に添加したため、鋳造時に介在物フィルタに目詰まりを生じて鋳造継続が困難となり、作製を中断した。
1 タブ
11 リベット孔
12 掛止部
14 インナーランス
2 蓋材
21 リベット部
23 開口領域
25 スコア

Claims (5)

  1. 成形、塗装、焼付けを施されて、包装容器の蓋部に取り付けられるタブに製造されるタブ用アルミニウム合金板であって、
    Mg:4.0〜5.5質量%、Cu:0.02〜0.10質量%、Fe:0.15〜0.34質量%、Si:0.05〜0.18質量%を含有し、Mn:0.20質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、前記Fe,Mnの各含有量(質量%)を、[Fe]、[Mn]として表したとき、([Fe]+1.07×[Mn])≦0.42を満足するアルミニウム合金を圧延にて形成してなり、
    前記圧延の圧延方向を含む断面の板厚方向中心部において、最大長が1μm以上のAl−Mn−Fe系金属間化合物と最大長が1μm以上のMg−Si系金属間化合物との合計の面積率が0.4%以下であり、
    250℃で25秒間の熱処理後において、0.2%耐力が280〜340MPa、伸びが7%以上、前記圧延の圧延方向に垂直に折り目が付くように1回90°曲げて戻した後の引張試験による破断時全伸びが2%以上であることを特徴とするタブ用アルミニウム合金板。
  2. 前記アルミニウム合金が、Cr:0.05〜0.15質量%、Ti:0.01〜0.10質量%の少なくとも一種をさらに含有する請求項1に記載のタブ用アルミニウム合金板。
  3. 前記アルミニウム合金が、Zn:0.25質量%以下をさらに含有する請求項1または請求項2に記載のタブ用アルミニウム合金板。
  4. 板厚が0.23〜0.33mmである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタブ用アルミニウム合金板。
  5. 成形、塗装、焼付けを施されて、包装容器の蓋部に取り付けられるタブに製造されるタブ用アルミニウム合金板の製造方法であって、
    請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金を、溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、
    前記鋳塊を、450〜540℃で熱処理を行うことにより均質化する均熱処理工程と、
    前記均質化した鋳塊を、熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延板を、焼鈍することなく、タンデム方式の圧延機を用いて冷間圧延してタブ用アルミニウム合金板とする冷間圧延工程と、を行い、
    前記熱間圧延工程は、終了温度が300℃以上であり、
    前記冷間圧延工程は、総圧延率80〜95%、最終パス圧下率30%以上、終了温度110〜170℃であることを特徴とするタブ用アルミニウム合金板の製造方法。
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