JP3523687B2 - 曲げ加工性に優れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材およびその製造方法 - Google Patents

曲げ加工性に優れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材およびその製造方法

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JP3523687B2 JP13940394A JP13940394A JP3523687B2 JP 3523687 B2 JP3523687 B2 JP 3523687B2 JP 13940394 A JP13940394 A JP 13940394A JP 13940394 A JP13940394 A JP 13940394A JP 3523687 B2 JP3523687 B2 JP 3523687B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、曲げ加工性に優れ、飲
料缶や食缶のイージーオープンエンドに取付けられるス
テイオンタブ材用アルミニウム合金板材に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、飲料缶や食缶のイージーオープン
エンドには、開缶後のタブの散乱による環境問題から缶
エンドからタブが分離しないステイオンタブが普及して
きた。ステイオンタブ用の材料としては、従来使用され
ていたプルタブ方式のタブ材に比べ、開缶方式の違いに
起因して、より高強度、高剛性で繰返し曲げ加工性の優
れた材料が要求され、従来、Al−Mg系の5082合金、
5182合金がステイオンタブ用の材料として使用されてい
る。
【0003】一方、タブ材には耐食性を付与するために
表面に保護塗膜が形成される。塗膜形成は、通常、溶剤
系塗料を使用して行われ、塗装に先立ち、塗膜とアルミ
ニウム合金表面との密着性を向上させるために、アルカ
リエッチングおよびリン酸クロメート処理などの化成処
理からなる塗装下地処理が施される。工業的には、生産
効率の観点から、アルカリエッチングから塗装焼付けま
ではコイルを用いた連続ラインで処理される。
【0004】タブ材に塗布する溶剤系の塗料としてはエ
ポキシユリア系の高分子樹脂が用いられるが、上記の連
続ラインで連続的に塗装を行うためには比較的高温度が
要求され、エネルギーコスト的に不利となる。塗装温度
を低く設定した場合には、塗膜の密着性が低下して塗膜
剥離が生じ易くなる。また、溶剤系の塗料は作業環境上
好ましくなく、塗装焼付け炉内にヒュームが堆積するた
め、定期的に除去作業が必要となるという難点もある。
【0005】上記の問題点を解決するために、エポキシ
アクリル系水性塗料を使用して塗膜を形成する方法も検
討されている。水性塗料の利点は、塗装作業の環境を改
善し、塗装温度を低くしても密着性が確保でき、塗装焼
付け処理の際のヒュームの発生を防止できる点である。
【0006】従来のタブ用5082合金、5182合金に水性塗
料を適用する場合、溶剤系塗料と同じ温度で焼付け処理
すれば問題を生じないが、水性塗料の利点を生かすため
に焼付け温度を低くすると、従来合金では冷間圧延時に
おける加工硬化が大きく強度が高いために、低温焼付け
では軟化程度が小さく曲げ加工性が劣り、また材料の曲
げ加工部に割れが生じて塗膜剥離を誘発するという問題
点がある。
【0007】ステイオンタブ用アルミニウム合金板材と
して必要な強度を得るためには、加工硬化を利用するこ
とが必要であるが、従来合金のように加工硬化の程度が
大きいものでは、水性塗料を使用する場合の低温の塗装
焼付け処理時の軟化程度が小さくなって曲げ加工性が低
下する。一方、冷間圧延量を小さくすれば曲げ加工性は
改善されるが、そのためには冷間圧延の途中で中間焼鈍
を施すなどの工程が増え製造コストを増加させることと
なる。また必要な強度、剛性も得難くなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルミニウ
ム合金板材に対する水性塗料による塗膜形成における上
記の問題点を解消するために、アルミニウム合金の強
度、成形特性、加工硬化特性と合金組成、内部組織とく
に晶出物、析出物の分布状態との関係について多角的に
検討した結果としてなされたものであり、その目的は、
加工硬化の程度が小さく、低温の焼付け処理により適度
に軟化して曲げ加工性が向上するとともに、ステイオン
タブ材として必要な強度、剛性をそなえ、水性塗料によ
る塗膜を形成するのに適した成形加工用、とくにイージ
ーオープン缶端のステイオンタブ用として好適なアルミ
ニウム合金板材およびその製造方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による曲げ加工性に優れたステイオンタブ
アルミニウム合金板材は、Mg:3.0〜4.0%、M
n:0.4〜0.7%、Fe:0.20〜0.50%を
含み、残部Alおよび不可避的不純物からなり、高分子
樹脂の水性塗料による塗膜を形成し、200〜250℃
の温度範囲で2分以内の時間塗装焼付け処理を行った
ルミニウム合金板であって、板表面におけるサイズが2
μm 以下の第2相化合物およびサイズが6〜15μm の
第2相化合物の分布が、それぞれ1000個/mm2
下および250個/mm2 以下であり、耐力が280M
Pa以上であることを構成上の第1の特徴とし、アルミ
ニウム合金がCu:0.05〜0.2%、Si:0.1
〜0.4%およびTi:0.01〜0.1%のうちの1
種以上を含むこと、前記塗膜は厚さ0.5〜5μm の塗
膜であることを構成上の第2、第3の特徴とする。
【0010】また、本発明による曲げ加工性に優れた
テイオンタブ用アルミニウム合金板材の製造方法は、上
記組成のアルミニウム合金の鋳塊を450〜550℃の
温度に1〜20時間保持することにより均質化処理し、
熱間圧延後加工度60%以上の冷間圧延を施し、アルカ
リエッチングおよび化成処理からなる塗装下地処理を行
い、高分子樹脂の水性塗料による塗装後、200〜25
0℃の温度で2分以内の時間塗装焼付け処理することを
特徴とする。
【0011】本発明の成形加工用アルミニウム合金板
は、成分組成を限定するとともに、組織中に晶出および
析出する第2相化合物の分布状態を限定することによ
り、塗装焼付け処理を低温で行った場合にも所定の強度
と優れた曲げ加工性の組合わせが得られることを特徴と
するもので、各合金成分の意義および限定理由について
説明すると、Mgは、合金材の加工硬化を大きくし軟化
し難くする元素であり、塗装焼付け後の強度維持に寄与
する。好ましい含有範囲は3.0 〜4.0 %であり、3.0 %
未満では塗装後の耐力が280MPa未満となって、とくにス
テイオンタブ材として必要な強度が確保できず、曲げ加
工性の劣化も生じる。Mg量が増加すると、サイズ( 平
均粒径) が2 μm 以下の第2相化合物が増え、低温焼付
け処理後の曲げ加工性が劣る傾向があり、4.0 %を越え
ると、冷間圧延時の加工硬化が大きくなり、低温での塗
装焼付け処理後の材料軟化が小さくなるために曲げ加工
性が劣る。
【0012】Mnは、強度向上に寄与する元素であり、
鋳造時にFeとの間にAl−Fe−Mn系晶出物を形成
し、これを6 〜15μm のサイズに制御することにって、
曲げ加工性も向上させる。好ましい含有範囲は0.4 〜0.
7 %であり、含有量が0.4 %未満ではサイズが6 〜15μ
m のAl−Fe−Mn系晶出物の分布が少なくなって曲
げ加工性が不十分となり、塗装後の耐力も低下する。0.
7 %を越えて含有すると、50μm 以上の粗大なAl−F
e−Mn系晶出物が形成されて曲げ加工性が著しく劣化
し、さらに低温での塗装焼付け処理後の材料の軟化が小
さくなるため曲げ加工性が劣る。また、Al−Mg合金
板の一般的特徴として、絞り加工の際、圧延方向に対し
て0 〜180 °の2方向に耳が生じ易く、この場合、圧延
方向に対して90°方向で採取した材料の曲げ加工性が著
しく劣化する。上記の範囲のMnの添加は、0 〜180 °
方向の耳発生を抑制する効果があり、曲げ加工性向上に
有効に作用する。
【0013】Feは、鋳造時に好ましい分布状態のAl
−Fe−Mn系の化合物を形成して曲げ加工性の向上に
寄与する元素であり、好ましいFeの含有範囲は0.2 〜
0.5%である。Fe量が0.2 %未満ではAl−Fe−M
n系晶出物の好ましい分布が十分に得られないために曲
げ加工性の向上効果が小さく、0.5 %を越えると、50μ
m 以上の粗大なAl−Fe−Mn系晶出物が形成され曲
げ加工性が著しく劣化する。
【0014】選択成分として添加するCuは、強度を向
上させる効果があり、0.05〜0.2 %の範囲内で材料に要
求される強度に応じて適度の量添加する。Cu量が0.05
%未満では強度向上の効果が小さく、0.2 %を越えて添
加すると、曲げ加工性を劣化させる。Siは、アルミニ
ウム合金において不可避的に含まれる元素であるが、塗
装焼付け処理時にMg2 Si相を形成して材料の軟化を
抑える作用をするので、0.1 〜0.4 %の範囲内に制御す
るのが好ましい。0.1 %未満ではその効果が小さく、0.
4 %を越えると曲げ加工性が低下する。Tiは、曲げ加
工性を向上させる元素であり、好ましくは0.01〜0.1 %
の範囲で添加する。0.01%未満ではその効果が小さく、
0.1 %を越えると、造塊時に粗大なAl−Ti系化合物
が形成され曲げ加工性が低下する。
【0015】本発明においては、低温塗装焼付け処理で
良好な曲げ加工性を得るために、合金組織中の第2相化
合物の分布状態を厳密に制御することが必要である。本
発明の板材表面においてサイズが2 μm 以下の化合物
は、冷間圧延時の加工硬化を高め、塗装焼付け処理時の
軟化を抑制する作用をする。好ましい分布条件は板材表
面において1000個/mm2 以下であり、1000個/mm2 を越
える量存在すると、水性塗料を用いて塗装したのち低温
で焼付け処理した場合の曲げ加工性が劣る。
【0016】塗装焼付け処理後の板材の曲げ加工性を、
とくにステイオンタブ用の材料として実用上十分なもの
とするためには、板材表面においてサイズが6 〜15μm
の化合物の分布密度を、板材表面において250 個/mm2
以上にすることが必須の要件となる。250 個/mm2 未満
の密度では十分な曲げ加工性が得られない。また、板材
表面においてサイズが15μm を越える化合物が多くなる
と曲げ加工性が害されるので、サイズが15μm を越える
化合物は板材表面において5 個/mm2 未満に制限するこ
とが好ましい。
【0017】本発明においては、とくにステイオンタブ
として十分な強度とするために、塗装焼付け処理後の耐
力を280MPa以上とすることが必要である。また、本発明
の板材に形成される表面保護塗膜は、エポキシアクリル
系などの高分子樹脂の水性塗料による塗膜が好ましく、
塗膜厚さは0.5 〜5 μm の範囲が望ましい。塗膜厚さが
0.5 μm 未満では曲げ加工時に塗膜割れが生じるおそれ
があり、5 μm を越えても実用上の問題はないが、製造
コストが上昇し好ましくない。なお、水性塗料には加工
性を向上させるためにインナーワックスを添加すること
もできる。
【0018】本発明の成形加工用アルミニウム合金板材
の好ましい製造方法について説明すると、Mg:3.0〜4.
0 %、Mn:0.4〜0.7 %、Fe:0.20 〜0.50%を含み、
残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、
またはこれにCu:0.05 〜0.2 %、Si:0.1〜0.4 %お
よびTi:0.01 〜0.1 %のうちの1種以上を添加してな
るアルミニウム合金の鋳塊を、450 〜550 ℃の温度で1
〜20時間保持することにより均質化処理し、熱間圧延す
る。
【0019】均質化処理は、第2相化合物の分布状態を
制御し、曲げ加工性を向上させるために行われる。本発
明のアルミニウム合金を造塊した状態では、鋳造時に形
成されるAl−Fe−Mn系晶出物に針状部分が多く、
曲げ加工の際、針状晶出物の先端がノッチ効果をもたら
し、材料の割れや破断を誘発する。鋳塊を高温に保持す
ることによって晶出物の形状が針状から粒状に変化し、
曲げ加工性が改善される。また粒界部に偏析していた化
合物がマトリックス中に固溶し、曲げ加工性を向上させ
る。
【0020】工業的製造条件では、均質化処理時の昇温
速度は50℃/h 程度の徐加熱であるため、昇温途中でA
l−Mn系化合物やMg2 Siなどの析出物が形成され
る。高温に保持するとこれらの析出物がサイズ2 μm よ
り大きくなり加工硬化が抑制される。均質化処理の好ま
しい温度範囲は450 〜550 ℃であり、450 ℃未満では所
定の曲げ加工性を得るために長時間の保持が必要となり
工業上不利となる。550 ℃を越えると、共晶融解のおそ
れがあり、熱間圧延時の割れ発生や曲げ加工性の劣化を
まねく。また化合物も大きく成長し粒子数も減少してく
るため、塗装密着性を向上させる効果が小さくなる。均
質化処理の保持時間は1 〜20時間が好ましく、1 時間未
満では2 μm 以下の化合物の分布が多くなって曲げ加工
性が劣り、20時間を越えるとサイズ6 〜15μm の化合物
が減少し曲げ加工性が不十分となる。
【0021】均質化処理、熱間圧延後に行われる冷間圧
延は、材料に加工硬化を与え強度を高める。好ましい加
工度は60%以上であり、加工度が60%未満では、塗装焼
付け処理後の耐力が280MPaに達せず、とくにステイオン
タブとしての強度が不十分となる。冷間圧延の加工度を
高くし過ぎると曲げ加工性が低下するので、工業上は90
%以下とするのが望ましい。
【0022】冷間圧延後、アルカリエッチングおよび化
成処理からなる塗装下地処理を行い、塗装する。塗装下
地処理は、塗膜と塗装される材料との密着性を向上させ
るために行われる処理で、まずアルミニウム合金表面の
酸化物を除去するために、苛性ソーダなどを使用するア
ルカリエッチングが行われ、ついでリン酸クロム酸溶液
などの化成処理槽中に浸漬して皮膜を形成し塗膜との密
着性を向上させる。
【0023】塗装下地処理後、好ましくは前記高分子樹
脂の水性塗料により塗装し、塗装焼付け処理を行って表
面保護塗膜を形成する。塗装焼付けは200 〜250 ℃の温
度範囲で2 分以内の時間行うのが好ましい。焼付け温度
が200 ℃未満では、十分な塗膜性能を得るために長時間
の保持が必要となるから、生産性が低下し、250 ℃を越
えると、溶剤系塗料と比較した場合のエネルギーコスト
メリットが得られなくなる。焼付け時間も工業的生産性
の観点から限定される。
【0024】本発明の好ましい態様を列挙すると以下の
とおりである。 1.Mg:3.0〜4.0%、Mn:0.4〜0.7
%、Fe:0.20〜0.50%を含み、残部Alおよ
び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板、または
これにCu:0.05〜0.2%、Si:0.1〜0.
4%およびTi:0.01〜0.1%のうちの1種以上
を添加したアルミニウム合金板であって、エポキシアク
リル性の水性塗料による塗膜を形成し、200〜250
℃の温度範囲で2分以内の時間塗装焼付け処理を行った
後の板表面におけるサイズが2μm 以下の第2相化合物
およびサイズが6〜15μm の第2相化合物の分布が、
それぞれ1000個/mm2 以下および250個/mm
2 以下であり、耐力が280MPa以上であることを特
徴とする曲げ加工性に優れたステイオンタブ用アルミニ
ウム合金板材。
【0025】2.上記組成のアルミニウム合金の鋳塊を
450〜550℃の温度に1〜20時間保持することに
より均質化処理し、熱間圧延後加工度60%以上の冷間
圧延を施し、アルカリエッチングおよび化成処理からな
る塗装下地処理を行い、エポキシアクリル系の水性塗料
による塗装後、200〜250℃の温度で2分以内の時
間塗装焼付け処理することを特徴とする曲げ加工性に優
れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材の製造方
法。
【0026】
【作用】本発明においては、Al−Mg合金の成分組成
を限定するとともに合金組織中の第2相化合物の分布状
態を規定し、これらの組合わせによって、十分な強度、
剛性をそなえ、且つ加工硬化度を低くして、水性塗料を
使用して低温で塗装焼付け処理を行った場合にも優れた
曲げ加工性を有する成形加工用、とくにステイオンタブ
用として適したアルミニウム合金板材が得られる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。 実施例1 表1に示す組成を有するアルミニウム合金を半連続鋳造
により造塊した。得られた鋳塊を均質化処理し、熱間圧
延後冷間圧延を施して厚さ0.35mmの板材とした。熱間圧
延の仕上げ板厚は、冷間圧延の加工度に応じて調整し
た。冷間圧延後の板材について、塗装下地処理として、
5 %NaOHを含むpH13の60℃の溶液中に20秒浸漬してアル
カリエッチングしたのち、50%CrPO4 、20%AlPO4 、15
%AlO(OH)を含む65℃の溶液中で1 分間処理する化成処
理を行い、湯洗、乾燥し、エポキシアクリル系の水性塗
料(日本ペイント(株)製キャンライナー100 )を使用
して塗膜を形成した。
【0028】塗装焼付け処理は、昇温速度を5 ℃/s と
し、所定の温度に達した時点で5 秒間保持し、ついで約
10℃/s の冷却速度で空冷した。塗膜厚さは3 μm とし
た。均質化処理条件、冷間圧延の加工度、塗装焼付け処
理温度および第2相化合物の分布状態を表2に示す。化
合物の分布状態は、塗装後の板材を脱膜処理し、その表
面を画像解析装置( ニレコ製: ルーゼックスIII U)で
測定することにより求めた。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】塗装前および塗装焼付け後の試料につい
て、JIS 5 号試験片により機械的性質を測定し、塗装焼
付け後の各試料について、塗膜密着性および曲げ加工性
を評価した。塗膜密着性は、半径1mm の治具を用いて試
験片(10mm 幅) を180 °曲げ加工し、試験片の端面を絶
縁塗料で被覆した後、0.1M-NaCl 水溶液中に白金電極と
ともに浸漬し、試験片と白金電極との間に6Vの電圧を負
荷した際に流れる電流値を測定することにより評価し
た。塗膜剥離が生じている場合は数十mAの電流が流れ
る。また、曲げ加工性は、R=1mm の治具で、圧延方向に
対して90°方向に試験片(10mm 幅) を切り出し、180 °
に曲げ、曲げ部の表面性状( 割れ状態) を観察すること
により評価した。評価結果を表3に示す。表3にみられ
るように、本発明による試料は、いずれも塗装焼付け後
280MPa以上の耐力と良好な塗膜密着性、180 °曲げ加工
性をそなえている。なお、本発明の測定範囲内では20μ
m を越える粗大な化合物は認められなかった。
【0032】
【表3】
【0033】比較例1 表4に示す組成を有するアルミニウム合金を実施例1と
同様の方法で鋳造、熱間圧延、冷間圧延して厚さ0.35mm
の板材とし、実施例1と同一の条件で塗装下地処理、塗
装および塗装焼付け処理を行い、実施例1と同じ方法で
機械的性質を測定し、塗膜密着性および曲げ加工性を評
価した。鋳塊の均質化処理条件、冷間加工度、塗装焼付
け処理温度および第2相化合物の分布状態を表5に示
し、性能の評価結果を表6に示す。なお、表4、表5に
おいて本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0034】
【表4】 《表注》合金No.KはCr:0.10 %を含む。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】 《表注》曲げ加工性:割れ無 ○ 微小割れ × 割れ
××
【0037】表6に示されるように、試料No.1は、塗装
温度が200 ℃未満であるため塗膜の密着性がわるくなっ
ている。試料No.2は冷間圧延の加工度が低いため塗装焼
付け後に所定の耐力が得られない。試料No.3は、均質化
処理時間が長過ぎるため、サイズが6 〜15μm の化合物
の分布数が少なく曲げ加工性が劣る。試料No.4は均質化
処理の温度が低いため、2 μm 以下の化合物が多くなり
曲げ加工性が低下する。塗膜の密着性も劣る。試料No.5
は、均質化処理温度が高過ぎて共晶融解が生じ、熱間圧
延の途中で割れが発生したため試験材が得られなかっ
た。試料No.6は、Mn、Feの含有量が多いため粗大な
Al−Fe−Mn系化合物が生成し、曲げ加工性が低下
している。塗膜の密着性もわるい。試料No.7は、均質化
処理時間が短いため2 μm 以下の化合物の分布が多くな
り、曲げ加工性、塗膜密着性が劣る。
【0038】試料No.8はMn量及びFe量が少ないため
6 〜15μm の化合物数が少なくなり、曲げ加工性、塗膜
密着性が劣る。試料No.9はCu量が多いためにサイズが
2 μm 以下の化合物分布数が多くなり、曲げ加工性、塗
膜密着性がわるい。試料No.10 はMg含有量が少ないた
めに所定の耐力が得られない。試料No.11 はFe量が少
ないために適切な第2相化合物の分布が得られず曲げ加
工性が十分でない。試料No.12 は従来の5182合金板材で
あり、また試料No.13 は従来の5082合金板材で、いずれ
もMg量が多く且つMn量が少ないため、第2相化合物
の分布状態が本発明の限定範囲を外れ、水性塗料を使用
する低温焼付け処理では曲げ加工性が著しく劣化してい
る。
【0039】実施例2 実施例1の試料No.1のアルミニウム合金板材において、
塗膜厚さを変化させた試験材を作製した。これらの試験
材の塗膜密着性を実施例1と同じ方法で評価した。結果
を表7に示す。本発明に従う塗膜厚さを有するものは、
電流値が小さく十分な塗膜密着性を示したが、塗膜厚さ
が0.5 μm 未満のものは電流値が大きく塗膜剥離が生じ
た。
【0040】
【表7】
【0041】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、塗装焼
付け処理の温度を低くしても、十分な強度と優れた曲げ
加工性を兼ね備えた成形加工用アルミニウム合金板材が
提供される。この板材を、とくに飲料缶や食缶のイージ
ーオープンエンドのステイオンタブ材として適用した場
合、水性塗料の使用が可能となり、塗装作業環境の改
善、エネルギーコストの低減が達成できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森山 勉 東京都港区新橋5丁目11番3号 住友軽 金属工業株式会社内 (72)発明者 土田 信 東京都港区新橋5丁目11番3号 住友軽 金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−197217(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 21/00 - 21/18 C22F 1/04 - 1/057

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:3.0〜4.0%(質量%、以下
    同じ)、Mn:0.4〜0.7%、Fe:0.20〜
    0.50%を含み、残部Alおよび不可避的不純物から
    なり、高分子樹脂の水性塗料による塗膜を形成し、20
    0〜250℃の温度範囲で2分以内の時間塗装焼付け処
    理を行ったアルミニウム合金板であって、板表面におけ
    るサイズが2μm 以下の第2相化合物およびサイズが6
    〜15μm の第2相化合物の分布が、それぞれ1000
    個/mm2 以下および250個/mm2 以下であり、
    が280MPa以上であることを特徴とする曲げ加工
    性に優れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材。
  2. 【請求項2】 アルミニウム合金がCu:0.05〜
    0.2%、Si:0.1〜0.4%、およびTi:0.
    01〜0.1%のうちの1種以上を含むことを特徴とす
    る請求項1記載の曲げ加工性に優れたステイオンタブ
    アルミニウム合金板材。
  3. 【請求項3】 前記塗膜は厚さ0.5〜5μm の塗膜で
    あることを特徴とする請求項1または2記載の曲げ加工
    性に優れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材。
  4. 【請求項4】 Mg:3.0〜4.0%、Mn:0.4
    〜0.7%、Fe:0.20〜0.50%を含み、残部
    Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金の
    鋳塊を、450〜550℃の温度に1〜20時間保持す
    ることにより均質化処理し、熱間圧延後加工度60%以
    上の冷間圧延を施し、アルカリエッチングおよび化成処
    理からなる塗装下地処理を行い、高分子樹脂の水性塗料
    による塗装後、200〜250℃の温度で2分以内の時
    間塗装焼付け処理することを特徴とする曲げ加工性に優
    れたステイオンタブ用アルミニウム合金板材の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金がCu:0.05〜
    0.2%、Si:0.1〜0.4%、およびTi:0.
    01〜0.1%のうちの1種以上を含むことを特徴とす
    る請求項4記載の曲げ加工性に優れたステイオンタブ
    アルミニウム合金板材の製造方法。
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